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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1266487
審判番号 不服2007-25540  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-18 
確定日 2012-12-10 
事件の表示 特願2003-505939「蛍光X線分光システム及び蛍光X線分光方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月27日国際公開、WO02/103710、平成17年 4月28日国内公表、特表2005-512020〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成14年6月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 平成13年6月19日、米国(US))を国際出願日とする特許出願(2003年特許願505939号。以下、「本件出願」という。)につき、拒絶査定が平成19年6月13日付け(発送日:同月19日)でされたところ、同年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月18日付けで手続補正書が提出され、同年12月11日付けで通知した最後の拒絶の理由に対して、平成20年6月23日付けで誤訳訂正がなされ、同日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
その後、平成21年5月12日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされたところ、この審決に対し、知的財産高等裁判所第3部において審決の取消の判決(平成21年(行ケ)第10289号、平成22年8月31日判決言渡)があったので、本件について更に審理し、当審において平成22年12月24日付けで拒絶の理由を通知したところ、意見書が平成23年7月7日に提出されたものである。

第2 本願発明
本件出願の請求項1?53に係る発明は、平成20年6月23日提出の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?53に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも1つのX線放射源(110/210)と、
少なくとも1つのX線検出器(150/250)と、
サンプルの上の焦点から蛍光X線を集光して、所定の分析物の特徴のあるエネルギーの前記蛍光X線を前記X線検出器に向けるための、前記サンプル(130/230)と前記X線検出器との間に配置された、点SをX線源の位置、点Iを焦点、Rを点Iと点Sを含む集束円の半径として、集束円の面において2Rの曲率半径を有し、セグメントSIに垂直な中間面において2Rと異なる曲率半径を有する、少なくとも1つの二重湾曲回折光学部品を有する少なくとも1つの単色集光光学部品(140/240)と、
前記サンプルの分析物を刺激して蛍光X線を発生させるために、前記X線放射源からX線放射を集光して、該X線放射を前記サンプルの上の前記焦点に集束させるための、前記X線放射源と前記サンプルとの間に配置された少なくとも1つの励起光学部品(120/220)とを備え、
前記二重湾曲回折光学部品は、一重湾曲の光学部品よりも大きな集光立体角で前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たり、ブラッグ角度条件を用いて前記蛍光X線を単色化する二重湾曲単色光学部品を有することを特徴とする波長分散蛍光X線分光システム。」

第3 当審の拒絶理由
一方、当審において平成22年12月24日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本件出願の請求項1?53に係る発明は、本件出願の優先権主張の日前に頒布された、特開平7-280750号公報(以下、「引用刊行物A」という。)、特開平1-141343号公報(以下、「引用刊行物B」という。)、特開2000-155102号公報(以下、「引用刊行物C」という。)、特開平11-133190号公報(以下、「引用刊行物D」という。)及び特開平7-270288号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第4 引用刊行物に記載された発明
(4A)本件出願の優先権主張の日前に頒布された上記引用刊行物Aには、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は、当審で付加したものである。以下、同様である。)
(4A-1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,X線や荷電粒子ビーム等の放射線を試料に照射し,この試料より発生するX線から試料中の元素や原子の結合状態を分析する波長分散型X線分光装置に関するものである。」

(4A-2)「【0002】
【従来の技術】一般に波長分散型X線分光装置では,試料より発生する微弱なX線をできる限り効率よく分光するために,例えば図4に示すような湾曲形状の分光結晶51(分光器)を備えたX線光学系が用いられる(例えば福島啓義著「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞刊P.63)。分光されるX線の波長λは,分光器として結晶格子を用いた場合,
2d・sinθ = n・λ …(1)
で与えられる。ここで,dは結晶格子の間隔,θは試料53からのX線の分光結晶51への入射角である。nは整数(n=1,2,…)であるが,分光されるX線の強度が最も強いn=1で用いられる場合が多い。分光されたX線は,X線検出器52の方向へ出射角θで該分光結晶51から反射する。同図(a)に示すように,分光結晶51,試料53上のX線の発光点53a 及びX線検出器52を同一円周上に配置すると,試料53から発生したX線は,分光結晶51表面のどの場所にも等しい角度で入射し,更にX線検出器52の位置に集光され,当該装置としての効率及び分解能が最大になる。この円周を一般にローランド円と呼ばれている。
【0003】・・・そこで,従来は,例えば上述の「電子線マイクロアナリシス」(P.51)や特公昭57-55184号公報に開示されているように,試料表面を観察して焦点の位置合せを行い得るように光学顕微鏡を設置したものが提案されている。即ち,図5に示す如く,予め光学顕微鏡の焦点位置とX線光学系の焦点位置が一致するように調整されている。従って,試料表面をこの光学顕微鏡で観察しながら該試料を調整してその焦点位置に移動させることにより,上記試料は分光結晶(不図示)の焦点深度領域内にセットされたことになり,正しく分析される。以上の説明はもっぱら結晶X線分光器の場合について述べたが,人工多層膜,回折格子等の回折型X線分光器についても一般に成り立つ。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような光学顕微鏡を設置するには,比較的大きな領域(立体角)を確保する必要があり,特にイオンビーム励起型等のX線分光装置では,試料の多面的分析を行うために,波長分散型X線分光装置以外にも反跳イオン分析器,2次電子検出器,エネルギー分散型X線検出器等を設置しなければならず,前記のような光学顕微鏡を設置する余地がないのが現状である。そこで,本発明は,上記事情に鑑みて創案されたものであり,X線光学系の焦点位置への試料の位置調整を比較的簡単な構成の下に行い得るようにして,コンパクト化,あるいは省スペース化により他の検出機器等の設置をも可能とする波長分散型X線分光装置の提供を目的とするものである。」

(4A-3)「【0012】・・・図3に,本発明の他の実施例に係るX線分光装置Bを示す。この実施例に係るX線分光装置Bは,放射線源20からの放射線27を試料11に照射し,この試料11より発生するX線を分析するようにしたものである。即ち,該X線分光装置Bでは,放射線源20より発生した放射線27がコリメータ21によって細いビームとされ,上記試料11に照射される。放射線27を照射された試料11から発生するX線28を分光結晶31で分光し,半導体検出器29(X線検出器)に導く。上記分光結晶31としては,例えばシリコンやゲルマニウム等の単結晶が用いられる。
【0013】上記放射線源20とコリメータ21との間及び分光結晶31と半導体検出器29との間には,それぞれ軽金属元素薄膜の一例であるアルミニウムを蒸着した高分子薄膜24,25が配設されている。そして,各高分子薄膜24,25に対応して,レーザ光源22(第2の光線照射手段,第2の可視光源),レーザ光源23(第1の光線照射手段,第1の可視光源)がそれぞれ配設されており,レーザ光源22,23からのレーザ光26,35をX線光学系の光軸に導くように構成されている。・・・
【0014】・・・従って,レーザ光源22,23からレーザ光26,35を照射すると,このレーザ光はそれぞれアルミニウムを蒸着した高分子薄膜24,25で反射してX線光学系の光軸に沿って導入される。更に,一方のレーザ光26は,コリメータ21のスリットを通過して試料11に照射される。また,他方のレーザ光35は,鏡面研磨された分光結晶31の表面で反射され,試料11に照射される。両レーザ光26,35はX線光学系の焦点位置で交差するように前述の如く予め調整されていることから,CCDカメラ33で試料表面を観察しつつ,両レーザ光26,35が試料表面を照射する位置が一致するように試料11の位置を調整すると,X線光学系での試料11の焦点位置調整が終了する。引き続き,測定に先立って,回転ステージ32を回動させて,前記式(1)に従って分光しようとするX線の波長に応じた角度に分光結晶31の向きを合わせ,対応する位置に,これと連動してアーム19で支持された半導体検出器29を移動させる。尚このアーム19には,上記半導体検出器29と共に,レーザ光源23,高分子薄膜25も支持されている。」

(4A-4)図3には、1つの放射線源20と、2つのスリットを備えた1つのコリメータ21、1つの分光結晶31及び1つの半導体検出器29(X線検出器)を用いること、及び、分光結晶31が、試料11から発生するX線28を分光する際に、分光結晶31に反射するX線を半導体検出器29(X線検出器)に集光することが描かれている。

上記引用刊行物Aの摘記事項(4A-1)?(4A-4)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「X線を発生する1つの放射線源20と、
1つの半導体検出器29(X線検出器)と、
X線を照射された試料11から発生するX線28を分光し、半導体検出器29(X線検出器)に集光する1つの分光結晶31と、
放射線源20より発生したX線を2つのスリットを介して細いビームにして、試料11に照射する1つのコリメータ21と、
を用いた試料中の元素や原子の結合状態を分析する波長分散型X線分光装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

(4B)本件出願の優先権主張の日前に頒布された上記引用刊行物Bには、次の事項が図面とともに記載されている。
(4B-1)「〔産業上の利用分野〕
本発明はX線分析装置に係り、特に蛍光X線分祈及びX線回折を行なうX線分析装置に関する。
〔従来の技術〕
従来、微細結晶のX線回折を行なうためには、ピンホール型コリメータのピンホールを微細化する方法か、又はガラス細管内壁でのX線全反射を利用したX線導管による方法が提案されていた(日本金属学会会報、第24巻、第11号、939?945頁(1985))。後者の方法は、ガラス細管によってX線を遠方に導くもので、X線の微細化及び集光による高輝度化を目的とする。そして計算機シミュレーションにより、回転放物面集光型X線導管又は回転楕円体型X線導管等が提案されている。」(1頁右下欄19行?2頁左上欄12行)

(4B-2)「〔発明が解決しようとする問題点〕
上記ピンホール型コリメータを用いたX線回折装置では、試料に到達するX線の輝度が低くなる点については配慮されていなかった。これは、X線発生源であるターゲットの焦点に近接してコリメータのX線入射側端部を設置すことが困難であり、X線ターゲットより放射状に放出するX線の一部しかコリメータに入射せず、又そのピンホールから放射されるX線は放射状に発散し、試料への照射領域を絞ることができないためである。従って微小結晶や微小領域のX線回折を行なうことが困難であるという問題があった。
・・・
〔問題点を解決するための手段〕
上記目的は、X線源、該X線源からのX線を集束するためのX線導管、該X線導管の端部に近接し、上記X線によって照射される試料を載置するための試料台及びX線検出器を有し、蛍光X線及びX線回折を行なうことを特徴とするX線分析装置によって達成される。」(2頁左上欄15行?左下欄5行)

(4B-3)「つぎに本発明に用いるX線導管の好ましい一例について説明する。
前記シミュレーションにより提案されている従来のX線導管は、第4図(a)、(b)に示す如く、X線導管2に入射したX線26をその内壁による全反射を利用し、各焦点22に集光することにより、照射X線ビームの微細化と高輝度化を計っている。・・・また管の焦点位置である出射端から20mmの位置ではX線ビームは410μm径に拡大している。」(3頁左上欄20行?右上欄13B行)

(4C)本件出願の優先権主張の日前に頒布された上記引用刊行物Cには、次の事項が図面とともに記載されている。
(4C-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、X線を試料に入射し、試料で反射したX線を検出することにより、試料を非破壊で分析するためのX線測定装置およびその方法に関し、例えば、X線反射率測定やロッキングカーブ測定に好適なX線測定装置およびその方法に関する。」

(4C-2)「【0020】・・・そこで、この発明では、湾曲モノクロメータとともにリフレクタを用いてX線を微小焦点に収束させ、その収束点に試料を配置することで、試料の微小領域に関するX線測定情報を得ることができるようにしてある。」

(4D)本件出願の優先権主張の日前に頒布された上記引用刊行物Dには、次の事項が図面とともに記載されている。
(4D-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微小領域X線分析、X線透過検査、X線顕微鏡、X線露光装置に用いられるX線集光装置、特にX線源から発散されるX線を実質的に点状に集めてX線の強度を増やすX線集光装置に用いるX線回折要素に関する。」

(4D-2)「【0002】
【従来の技術】従来、X線源から発散されるX線を集光するために、X線集光装置において湾曲結晶を用いたX線回折要素が用いられている。そのような湾曲結晶としては、一次元的に湾曲させたsingly-bent型結晶および二次元的に湾曲させたdoubly-bent型結晶がある。
【0003】singly-bent型結晶を用いてX線を集光する場合、点状光源から出たX線は、線状に集められるため、別のsingly-bent型結晶を用いて線状に集められたX線を点状に集める必要がある。これに対して、doubly-bent型結晶を用いてX線を集光する場合、一つの結晶で点状に集光させることができる。
【0004】singly-bent型結晶を2つ組み合わせた光学系では、singly-bent型系に入射するX線の立体角が小さく、X線源から出たX線の大部分を集光できない。また、2つの結晶を用いて2回ブラッグ反射させるため、集められたX線の強度低下が大きい。更に、この光学系は、X線源から集光点までの距離が長くなり、そのため間に存在する空気によって吸収されるX線の量が増えるので、集められたX線の強度は一層弱くなる。このように、singly-bent型結晶を組み合わせた光学系では、X線の集光は可能であるが、集められたX線の強度はそれほど強くない。
【0005】結晶を二次元的に湾曲させたdoubly-bent型結晶を用いる場合、singly-bent型結晶と比べると、結晶に入射するX線の立体角が大きくとれ、また、1回のブラッグ反射で集光できるため、singly-bent型結晶を用いる場合より強いX線強度を達成できる。このようなdoubly-bent型結晶を複数組み合わせてトロイダル形状にすることにより、X線源から出たX線の相当部分を集光できるため、集光したX線の強度を更に強くすることができる。尚、「トロイダル形状」とは、有限長さを有する曲線をそれを含まない軸の回りで360°回転させることにより得られる形状を意味するものとして使用している。
【0006】湾曲結晶の具体的な態様として、図3(a)に示すようなヨハン型形状1、あるいは図3(b)に示すようなヨハンソン型形状2がsingly-bent型結晶用として提案されている。また、ヨハン型またはヨハンソン型形状をX線源(S)と集光点(F)を結ぶ直線を回転軸として部分的に回転させることによりdoubly-bent型形状が得られ、360°回転することによりトロイダル形状を有するdoubly-bent型のX線回折要素が得られる。」

(4D-3)「【0015】このような本発明のX線回折要素を使用して、その一方の焦点にX線発散源を配置すると、他方の焦点にX線を効率良く集めることができるだけでなく、X線単色化も改善させることができる。・・・」

(4D-4)図3(b)には、上記(4D-2)の段落【0006】の記載を参照すると、点SをX線源の位置、点Fを点状の集光点、Rを点Sと点Fを含む集束円の半径として、集束円の面において2Rの曲率半径を有し、線分SFに垂直な中間面において、線分SFを回転軸として回転して得られる曲率半径を有する二重湾曲X線回折要素が描かれている。

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
(5-1a)本願発明と引用発明とを対比する。
(i)引用発明の「X線を発生する」「放射線源20」は、その構成・機能からみて、本願発明の「X線放射源(110/210)」に相当する。そして、本願発明の「少なくとも1つのX線放射源(110/210)」は引用発明の「X線を発生する1つの放射線源20」を含むことから、引用発明の「X線を発生する」「放射線源20」の個数と本願発明の「X線放射源(110/210)」の個数とは、「1つ」である点で一致する。

(ii)引用発明の「半導体検出器29(X線検出器)」は、その構成・機能からみて、本願発明の「X線検出器(150/250)」に相当する。そして、本願発明の「少なくとも1つのX線検出器(150/250)」は引用発明の「1つの半導体検出器29(X線検出器)」を含むことから、引用発明の「半導体検出器29(X線検出器)」の個数と本願発明の「X線検出器(150/250)」の個数とは、「1つ」である点で一致する。

(iii)引用発明の「試料11」が、その構成・機能からみて、本願発明1の「サンプル」に相当し、さらに、引用発明では、放射線源20からのX線がコリメータ21の2つのスリットによって細いビームにされて、試料11に照射されることから、引用発明のX線は試料11上の小さな領域に照射されるものである。他方、本願発明の1つの励起光学部品(120/220)が、X線放射源からX線放射を集光して、X線放射をサンプルの上の前記焦点に集束させていることから、本願発明のX線もサンプル上の小さな領域に照射されることになる。
さらに、蛍光X線とは、例えば、特開2000-314709号公報の段落【0014】に、「蛍光X線とは、材料に入射したX線がK殻もしくはL殻に存在する電子を叩き出し、それに伴って発生する特性的なX線を言う。」と記載されており、さらに、上記引用刊行物Aの摘記事項(2A-3)の段落【0012】には「この実施例に係るX線分光装置Bは,放射線源20からの放射線27を試料11に照射し,この試料11より発生するX線を分析するようにしたものである。」と記載されていることから、引用発明の分光結晶31が分光する、X線を照射された試料11から発生するX線28が、蛍光X線であることは明らかである。
そして、上記引用刊行物Aの摘記事項(4A-1)には、「図4に示すような湾曲形状の分光結晶51(分光器)を備えたX線光学系が用いられる・・・試料53から発生したX線は,分光結晶51表面のどの場所にも等しい角度で入射し,更にX線検出器52の位置に集光され,当該装置としての効率及び分解能が最大になる。」と記載されていることから、引用発明の分光結晶31が湾曲形状の分光結晶であり、この湾曲形状の分光結晶を用いて、試料11から発生したX線28を半導体検出器29(X線検出器)に集光できること明らかである。
また、引用発明の「X線を照射された試料11から発生するX線28を分光し、半導体検出器29(X線検出器)に集光する1つの分光結晶31」は、湾曲形状の分光結晶であり、この分光結晶31で分光される試料11から発生するX線28の波長λは、上記引用刊行物Aの摘記事項(2A-2)に記載されているように、
2d・sinθ = n・λ …(1)
の式で表されるX線波長のみであることから、引用発明の分光結晶31は、波長分散型X線分光装置が試料中の元素や原子の結合状態を分析する際に、試料中の元素や原子の結合状態に応じたX線波長のみを半導体検出器29(X線検出器)に集光するための湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品であることになる。
そうすると、引用発明の「X線を照射された試料11から発生するX線28を分光し、半導体検出器29(X線検出器)に集光する1つの分光結晶31」と本願発明の「サンプルの上の焦点から蛍光X線を集光して、所定の分析物の特徴のあるエネルギーの前記蛍光X線を前記X線検出器に向けるための、前記サンプル(130/230)と前記X線検出器との間に配置された、点SをX線源の位置、点Iを焦点、Rを点Iと点Sを含む集束円の半径として、集束円の面において2Rの曲率半径を有し、セグメントSIに垂直な中間面において2Rと異なる曲率半径を有する、少なくとも1つの二重湾曲回折光学部品を有する少なくとも1つの単色集光光学部品(140/240)」とは、「サンプルの上の小さな領域から蛍光X線を集光して、所定の分析物の特徴のあるエネルギーの前記蛍光X線を前記X線検出器に向けるための、前記サンプルと前記X線検出器との間に配置された、湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品」である点で共通する。

(iv)上記(iii)で検討したように、引用発明の「コリメータ21」と本願発明の「励起光学部品(120/220)」とは、X線を「サンプル上の小さな領域に」照射している「励起光学部品」である点で共通するものである。
そして、引用発明の「コリメータ21」は、放射線源20より発生したX線を2つのスリットを介して細いビームにして、試料11に照射していることから、引用発明の「放射線源20より発生したX線を2つのスリットを介して細いビームにして、試料11に照射する1つのコリメータ21」と本願発明の「前記サンプルの分析物を刺激して蛍光X線を発生させるために、前記X線放射源からX線放射を集光して、該X線放射を前記サンプルの上の前記焦点に集束させるための、前記X線放射源と前記サンプルとの間に配置された少なくとも1つの励起光学部品(120/220)」とは、「前記サンプルの分析物を刺激して蛍光X線を発生させるために、該X線放射を前記サンプルの上の小さな領域に照射するための、前記X線放射源と前記サンプルとの間に配置された励起光学部品」である点で共通する。

(v)引用発明の分光結晶31は、照射された試料11から発生するX線28を分光し、半導体検出器29(X線検出器)に集光されることから、分光結晶31に向かう照射された試料11から発生するX線28のほとんど全てが分光結晶31に当たるのは明らかであり、さらに、上記(iii)で検討したように、分光結晶31で分光される試料11から発生するX線28の波長λは、
2d・sinθ = n・λ …(1)
の式で表されるX線波長のみであり、この(1)式はブラッグの角度条件に相当することから、引用発明の「X線を照射された試料11から発生するX線28を分光し、半導体検出器29(X線検出器)に集光する1つの分光結晶31」と本願発明の「前記二重湾曲回折光学部品は、一重湾曲の光学部品よりも大きな集光立体角で前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たり、ブラッグ角度条件を用いて前記蛍光X線を単色化する二重湾曲単色光学部品」とは、「前記湾曲回折光学部品は、前記サンプル上の小さな領域から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たり、ブラッグ角度条件を用いて前記蛍光X線を単色化する湾曲単色光学部品」である点で共通する。

(vi)引用発明の「試料中の元素や原子の結合状態を分析する波長分散型X線分光装置」が、本願発明の「波長分散蛍光X線分光システム」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「1つのX線放射源と、
1つのX線検出器と、
サンプルの上の小さな領域から蛍光X線を集光して、所定の分析物の特徴のあるエネルギーの前記蛍光X線を前記X線検出器に向けるための、前記サンプルと前記X線検出器との間に配置された、湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品と、
前記サンプルの分析物を刺激して蛍光X線を発生させるために、該X線放射を前記サンプルの上の小さな領域に照射するための、前記X線放射源と前記サンプルとの間に配置された励起光学部品とを備え、
前記湾曲回折光学部品は、前記サンプル上の前記小さな領域から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たり、ブラッグ角度条件を用いて前記蛍光X線を単色化する湾曲単色光学部品を有する波長分散蛍光X線分光システム。」
である点で一致し、次の相違点(あ)?相違点(う)で相違している。

・相違点(あ)
サンプルの上の小さな領域から蛍光X線を集光する湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品が、本願発明では、サンプルの上の「焦点から」蛍光X線を集光して、「点SをX線源の位置、点Iを焦点、Rを点Iと点Sを含む集束円の半径として、集束円の面において2Rの曲率半径を有し、セグメントSIに垂直な中間面において2Rと異なる曲率半径を有する、少なくとも1つの二重湾曲回折光学部品を有する少なくとも1つの単色集光光学部品」であるのに対して、引用発明では、2つのスリットを備えたコリメータ21で細いビームにされたX線が照射された試料11から発生するX線28を、半導体検出器29(X線検出器)に集光する分光結晶31である点。

・相違点(い)
サンプルの分析物を刺激して蛍光X線を発生させるために、該X線放射を前記サンプルの上の小さな領域に照射するための、前記X線放射源と前記サンプルとの間に配置された励起光学部品が、本願発明では、「X線放射源からX線放射を集光して、該X線放射をサンプルの上の焦点に集束させる」「少なくとも1つの励起光学部品」であるのに対して、引用発明では、放射線源20より発生したX線を2つのスリットを介して細いビームにして、試料11に照射する1つのコリメータ21である点。

・相違点(う)
サンプル上の前記小さな領域から光学部品へ向う蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たる湾曲回折光学部品が、本願発明では、「一重湾曲の光学部品よりも大きな集光立体角で前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たる」「二重湾曲単色光学部品」であるのに対して、引用発明では、X線が照射された試料11から発生するX線28を分光し、半導体検出器29(X線検出器)に集光する1つの分光結晶31である点。

(5-1b)当審の判断
(1)相違点(い)について(最初に、相違点(い)について検討する。)
X線を試料上の照射して試料を分析するX線分析装置において、X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させることは、上記引用刊行物Bの摘記事項(4B-3)又は引用刊行物Cの摘記事項(4C-2)ごとく周知であり、引用発明も上記周知例もともに、光学部品を用いてX線源からのX線を試料上の小さな領域に照射して、試料のX線分析を行う点で共通し、さらに、例えば、特開2000-81399号公報に「【0014】図1は本発明の原理を説明するための模式図である。固定されたX線源9から放射された単一波長の一次X線4は、ほぼ平行ビームとなって照射領域制限手段7を通過し、基板2の上に形成された薄膜1表面の微小領域に照射される。薄膜1による回折X線5は、出射角制限手段8を通過してX線検出器6に導かれる。【0015】 X線源9としては、各種X線管の他、単色化されたシンクロトロン放射光を用いることができる。照射領域制限手段7としては、一つまたは複数のスリットからなるスリットシステム、一つまたは複数のX線反射鏡からなる集光システム、各種コリメーター、キャピラリーを利用したX線導管などを使用することができる。1次X線照射領域の大きさは、これらの照射領域制限手段を適宜使用することにより、数μmから数mmの範囲で選択することができる。・・・」(下線は、当審で付与したものである。以下、同様である。)と記載され、また、特開2001-141675号公報に「【0009】図7に示すように本構成例においては、基板2上に薄膜1が形成された試料3と、試料3に対して単一波長の一次X線4を放射するX線源9と、X線源9から放射された一次X線4の試料3に対する照射領域を制限するための照射領域制限手段8と、試料3における結晶格子面7にて回折された回折X線5の試料3表面に対する出射角αを制限するための出射角制限手段10と、出射角制限手段10を通過した回折X線5を検出するとともに、検出された回折X線5の、一次X線4の入射方向に対する出射角度(以下、回折角2θと称する)及びX線強度を測定して記録するX線検出器6とが設けられている。・・・【0011】照射領域制限手段8には、1つまたは複数のスリットからなるスリットシステムや、1つまたは複数のX線反射鏡からなる集光システムや、各種コリメーターや、キャピラリーを利用したX線導管等が用いられる。照射領域制限手段8にて制限される一次X線4の試料3に対する照射領域は、数μm?数mm程度の範囲で適宜選択される。」と記載されているように、X線分析装置において、X線を試料上の小さな領域に照射する光学部品として、周知の光学部品のうちどのような手段を用いるかは、当業者が必要に応じて適宜採用する選択事項といえることから、引用発明の波長分散型X線分光装置において、放射線源28から発生したX線を試料11上の小さな領域に照射する光学部品として、X線を2つのスリットを細いビームにする備えたコリメータ21を用いる代わりに、引用発明と同じX線分析装置の分野に用いられる、上記周知例のX線を試料上の焦点に集束させる1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を採用して、本願発明のごとく、サンプルの分析物を刺激して蛍光X線を発生させるために、該X線放射を前記サンプルの上の小さな領域に照射するための、前記X線放射源と前記サンプルとの間に配置された1つの励起光学部品が、「X線放射源からX線放射を集光して、該X線放射をサンプルの上の焦点に集束させる」「少なくとも1つの励起光学部品」であるようにすることは当業者が容易になし得るものである。

(2)相違点(あ)について
上記引用刊行物Aの摘記事項(4A-3)に「【0013】上記放射線源20とコリメータ21との間及び分光結晶31と半導体検出器29との間には,それぞれ軽金属元素薄膜の一例であるアルミニウムを蒸着した高分子薄膜24,25が配設されている。そして,各高分子薄膜24,25に対応して,レーザ光源22(第2の光線照射手段,第2の可視光源),レーザ光源23(第1の光線照射手段,第1の可視光源)がそれぞれ配設されており,レーザ光源22,23からのレーザ光26,35をX線光学系の光軸に導くように構成されている。・・・ 【0014】レーザ光源22,23からレーザ光26,35を照射すると,このレーザ光はそれぞれアルミニウムを蒸着した高分子薄膜24,25で反射してX線光学系の光軸に沿って導入される。更に,一方のレーザ光26は,コリメータ21のスリットを通過して試料11に照射される。また,他方のレーザ光35は,鏡面研磨された分光結晶31の表面で反射され,試料11に照射される。両レーザ光26,35はX線光学系の焦点位置で交差するように前述の如く予め調整されていることから,CCDカメラ33で試料表面を観察しつつ,両レーザ光26,35が試料表面を照射する位置が一致するように試料11の位置を調整する」と記載されており、この記載によれば、試料11の位置調整の際に、レーザ光26が放射線源20とコリメータ21との間の高分子薄膜24に照射され、コリメータ21のスリットを通過してX線光学系の焦点位置に照射され、さらに、レーザ光35は、分光結晶31と半導体検出器29との間の高分子薄膜25に照射され、分光結晶31の表面で反射されて試料11上の焦点位置に照射されることから、引用発明の放射線源20からのコリメータ21の2つのスリットを介して細いビームされるX線は、レーザ光26と同様に、コリメータのスリットを通過して試料11上の焦点位置に照射されることは明らかであり、さらに、X線光学系の1つを構成する分光結晶31の焦点位置が、放射線源20からの細いビームのX線が照射される試料11の焦点位置と一致することは明らかである。
ところで、湾曲回折光学部品として、X線源Sの位置と点状の集光点Fを含む集束円の半径とし、集束円の面において2Rの曲げ半径を有し、X線源Sの位置と集光点Fを結ぶ線に垂直な中間面において2Rとは異なる曲げ半径を有する二重湾曲回折光学部品は、上記引用刊行物Dの摘記事項(4D-4)に記載されているように周知(他に、例えば特許第2555592号公報の2頁3欄27?42行、第4図参照)であり、さらに、上記引用刊行物Dの摘記事項(4D-2)の段落【0005】に「doubly-bent型結晶を複数組み合わせてトロイダル形状にする」と記載されていることから、二重湾曲回折光学部品を1つでだけでなく、複数用いることも周知の構成であるといえる。そして、引用発明の試料11からのX線28を集光する分光結晶31も上記周知例の二重湾曲回折光学部品もともに、湾曲回折光学部品に向かうX線を所定の位置へ集光する点で共通し、さらに、二重湾曲回折光学部品を、試料にX線を照射して発生させたX線を検出器へ集光させるのに用いることも、例えば特公平6-72850号公報に「結晶の中心点0における円周Cに切する方向は以下X方向とされる。結晶の上側の境界面は作図されており、紙面上の曲率半径はRである。X方向と垂直な方向は以下Y方向というが、その方向での結晶の上側の境界面のもう一方の主要断面は曲率半径2Rを持ち、従ってそれはその方向でのローランド球とは一致しない。・・・X線管5は試料6を照射する位置にある。それからのX線ビームは入射スリット3で結晶中心点0を通過する主要X線7となり、結晶1で回折され、出射スリット4の後におかれた検出器8によってとらえられる。」(3頁5欄41行?6欄6行)と記載されているように、技術常識であることから、引用発明において、サンプルの上の小さな領域から蛍光X線を集光する湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品として、試料11の焦点位置から発生するX線28を半導体検出器29(X線検出器)に集光する、湾曲状の分光結晶31の代わりに、上記周知例の、X線源Sの位置と点状の集光点F、すなわち、焦点を含む集束円の半径とし、集束円の面において2Rの曲げ半径を有し、X線源Sの位置と集光点Fを結ぶ線に垂直な中間面において2Rとは異なる曲げ半径を有する少なくとも1つの二重湾曲回折光学部品を採用し、本願発明のごとく、サンプルの上の小さな領域から蛍光X線を集光する湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品が、「点SをX線源の位置、点Iを焦点、Rを点Iと点Sを含む集束円の半径として、集束円の面において2Rの曲率半径を有し、セグメントSIに垂直な中間面において2Rと異なる曲率半径を有する、少なくとも1つの二重湾曲回折光学部品を有する少なくとも1つの単色集光光学部品」とすることは当業者が容易になし得るものである。
そして、上記相違点(い)で検討したように、X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる構成を採用すれば、引用発明において、X線等の放射線源20からX線が試料11の焦点に照射されたことにより試料11から発生するX線28を集光する分光結晶31が、試料11の「焦点から」蛍光X線を集光するから、本願発明と同様に、サンプルの上の小さな領域から蛍光X線を集光する湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品が、サンプルの上の「焦点から」蛍光X線を集光することになるのは明らかである。

(3)相違点(う)について
サンプルの上の小さな領域から蛍光X線を集光する湾曲回折光学部品を有する単色集光光学部品が、サンプルの上の「焦点から」蛍光X線を集光することは、上記相違点(あ)で検討したとおりであり、さらに、上記引用刊行物Dの摘記事項(4D-2)に記載されているように、二重湾曲単色光学部品が一重湾曲の光学部品よりも大きな集光立体角で集光できることは技術常識であることから、引用発明において、X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる構成を採用し、湾曲回折光学部品として二重湾曲単色光学部品を採用すれば、本願発明のごとく、サンプル上の前記小さな領域から光学部品へ向う蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たる湾曲回折光学部品が、「一重湾曲の光学部品よりも大きな集光立体角で前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たる」「二重湾曲単色光学部品」となることは明らかである。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであり、格別のものではない。

なお、請求人は、平成23年6月23日に提出した意見書において、下記のごとく主張しているが、これらの主張は次の理由で採用できない。
(ア)請求人の「(a-1)相違点(い)について」の主張(意見書2頁8行?3頁6行)
(ア-1)請求人は「審判官殿は、引用発明1では、『X線放射をサンプルの上の小さな領域に照射する』ということを前提にされていると思います。
ここで、『小さな領域』とは、引用発明1においては、線状の領域を意味します。すなわち、引用刊行物Aの図3でいえば、試料11上において紙面に垂直な方向に延びた線状の領域であると考えられます。なぜなら、引用刊行物Aの6欄38?39行には『レーザ光26は,コリメータ21のスリットを通過して』と記載されており、従って、引用刊行物Aの図3において、放射線源20より発生した放射線27も、コリメータ21のスリット(すなわち、細長い穴)を通過することによって、線状の放射線となり、試料11上に照射されると考えられるからです。
これに対し、審判官殿が周知であり、引用刊行物BおよびCに記載されていると指摘されている『X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる』という技術は、X線を『点』に集束させる技術であって、『線』状の領域に集束させる技術ではありません。
よって、「X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる」という技術を、引用発明1に適用する動機づけはありません。」旨の主張している。
しかしながら、例えば、特開2000-314709号公報の段落【0011】に「コリメータ2は、X線源1からのX線ビームを所要の形状に成形するもので、本例では、図2に示すように・・・1辺が数十μmの正方形のビームを作り出すことができるようになっている。」と記載され、また、特開平8-313458号公報の段落【0009】に「図4は、・・・モノクロメータを用いてX線源から放射されたX線を単色化してCuKαを取り出し、さらにそのX線をスリット直径が0.05mm、0.2mm及び0.5mmの3種類のコリメータを通したときのX線強度を測定したときの結果を示している。」と、記載されているようにコリメータのスリットを介して形成される小さな領域が、正方形や円形の点状であることも技術常識であることから、請求人の「引用刊行物Aの図3において、放射線源20より発生した放射線27も、コリメータ21のスリット(すなわち、細長い穴)を通過することによって、線状の放射線となり、試料11上に照射されると考えられる」との主張は採用できないものである。
さらに、上記「(5-1b)当審の判断 」の「(2)相違点(あ)について」において検討したように、上記引用刊行物Aの摘記事項(4A-3)の記載より、試料11の位置調整の際に、レーザ光26が放射線源20とコリメータ21との間の高分子薄膜24に照射され、コリメータ21の2つのスリットを介してX線光学系の焦点位置に照射されることから、引用発明の放射線源20からのコリメータ21のスリットを介した細いビームのX線は、レーザ光26と同様に、コリメータの2つのスリットを介して試料11上の焦点に照射されることは明らかであり、さらに、広辞苑によれば、「焦点」は「〔理〕光学系に於いて光軸に平行な入射光線が像(実像又は虚像)を結ぶ点。」(第5版)と記載されていることから、引用発明の放射線源20からのコリメータ21の2つのスリットを介して細いビームにされたX線は試料11上の焦点、すなわち、点状に照射されるものと推認されるものである。
そうすると、「(5-1b)当審の判断 」の(1)で検討したように、X線分析装置において、X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させることは、上記引用刊行物Bの摘記事項(4B-3)又は引用刊行物Cの摘記事項(4C-2)ごとく周知であり、引用発明の2つのスリットを備えたコリメータ21もX線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる周知例もともに、X線源からのX線を試料上の小さな点状の領域に照射して、試料のX線分析を行うX線分析装置に用いられる光学部品である点で共通するから、放射線源28から発生したX線を試料11上の小さな領域に照射する光学部品として、X線を2つのスリットを細いビームにする備えたコリメータ21を用いる代わりに、引用発明と同じX線分析装置の分野に用いられる、上記周知例のX線を試料上の焦点に集束させる1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を採用することは、当業者が容易になし得るものであって、上記「引用刊行物BおよびCに記載されていると指摘されている『X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる』という技術は、X線を『点』に集束させる技術であって、『線』状の領域に集束させる技術ではありません。よって、「X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる」という技術を、引用発明1に適用する動機づけはありません。」という請求人の主張は採用できないものである。
(ア-1’)仮に、引用発明において、引用発明において、試料11上の小さな領域にコリメータ21を介して照射される細いX線ビームが点状でないとしても、上記「(5-1b)当審の判断」の「(1)」で検討したように、例えば、特開2000-81399号公報や特開2001-141675号公報に記載されているように、X線分析装置において、X線分析装置において、X線を試料上の小さな領域に照射する光学部品として、周知の光学部品のうちどのような手段を用いるかは、当業者が必要に応じて適宜採用する選択事項といえることから、引用発明の波長分散型X線分光装置において、放射線源28から発生したX線を試料11上の小さな領域に照射する光学部品として、X線を2つのスリットを細いビームにする備えたコリメータ21を用いる代わりに、引用発明と同じX線分析装置の分野に用いられる、上記引用刊行物B又は引用刊行物Cに記載された周知例のX線を試料上の焦点に集束させる1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を採用することは、当業者が容易になし得るものであって、請求人の上記「X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる」という技術を、引用発明1に適用する動機づけはありません。」という主張は採用できないものである。

(イ)請求人の「(a-2)相違点(あ)について」の主張(意見書3頁7?35行)
(イ-1)請求人は「ここで審判官殿がいう周知例・・・の光学部品は、いずれも点から発生した放射線等を回折するものです。
・・・引用発明1の光学部品は、線から発生した放射線等を回折するものです。
よって、引用発明1において、分光結晶31の代わりに、審判官殿がいう上記周知例の光学部品を採用すれば、分光結晶31を用いていた際に想定していた回折とは全く異なる回折が起こり、誤検出等の予期せぬ結果が生じるおそれがあります。
したがって、引用発明1において、分光結晶31の代わりに、審判官殿がいう上記周知例の光学部品を採用することには阻害事由が存在します。また、当業者が、そのような不利益を伴うそのような採用を行うとは考えられません。
よって、引用発明1において、分光結晶31の代わりに、審判官殿がいう上記周知例の光学部品を採用することが当業者にとって容易であったとはいえません。」旨の主張している。
しかしながら、上記(ア-1)において検討したように、引用発明の放射線源20からのコリメータ21の2つのスリットを介して形成された細いビームのX線は試料11上の焦点、すなわち、点状に照射されるものと推認されるものであり、さらに、上記「(2)相違点(あ)について」において検討したように、引用発明の半導体検出器29(X線検出器)に集光する1つの分光結晶31の焦点位置は、放射線源20からの細いビームのX線が試料11上に照射される焦点位置と一致することから、引用発明の分光結晶31は、放射線源20からの細いビームのX線が試料11上に照射される焦点位置から発生するX線を半導体検出器29(X線検出器)に集束させるものであり、さらに、周知の二重湾曲回折光学部品も同じく点状の焦点位置からのX線を点状の集光点に集束するものであるから、引用発明の分光結晶31の代わりに、周知の二重湾曲回折光学部品を採用したとしても、何ら阻害事由は存在しないことは明らかである。
(イ-2)また、上記「(1)相違点(い)について」において検討したように、X線を試料上の小さな領域に照射する光学部品として、周知の光学部品のうちどのような手段を用いるかは、当業者が必要に応じて適宜採用する選択事項といえることから、引用発明の波長分散型X線分光装置において、放射線源28から発生したX線を試料11上の小さな領域に照射する光学部品として、X線を2つのスリットを細いビームにする備えたコリメータ21を用いる代わりに、引用発明と同じX線分析装置の分野に用いられる、上記周知例のX線を試料上の焦点に集束させる1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を採用したとしても、1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品は、X線を試料上の焦点に集束させていることから、引用発明の分光結晶31の代わりに周知の二重湾曲回折光学部品を採用したとしても、何ら阻害事由は存在しないものであり、請求人の主張は採用できないものである。

(ウ)請求人の「(b)技術分野の相違による動機づけの欠如の観点から」の主張(意見書3頁36行?4頁26行)
(ウ-1)請求人は「波長分散型の蛍光X線分光システムにおいて、「X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる」という技術事項を導入する必要性を示唆する記載は、引用刊行物A?Eのいずれの箇所にも見当たりません。
よって、波長分散型の蛍光X線分光システムにおいて、「X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる」という技術事項を導入する動機づけは存在せず、従って、引用発明1において、本願発明1の相違点(い)に係る構成を備えるようにすることが当業者にとって容易であったとはいえません。」旨の主張している。
しかしながら、上記引用刊行物Bの摘記事項(4B-2)及び(4B-3)には、「ピンホール型コリメータを用いたX線回折装置(X線分析装置)」では、試料に到達するX線の輝度が低くなる」ので、「微小結晶や微小領域のX線回折を行なうことが困難であるという問題」を解決するために、「X線源からのX線を集束するためのX線導管」を用いることにより、「試料」に「照射」される「照射X線ビームの微細化と高輝度化を計っている。」ことが記載されていることから、引用刊行物Bには、X線分析装置において、試料に到達するX線の輝度が低いコリメータによる困難となる問題点を解決するために、コリメータの代わりに照射するX線を集束して試料に照射されるX線ビームを高輝度にして容易に分析を行えるようにすることが記載されている。
そして、上記引用刊行物BのX線分析装置と同様に、引用発明の波長分散型X線分光装置においても、容易に分析を行えるようにしようとする共通の課題は存在するから、引用発明の2つのスリットを備えた1つのコリメータ21を用いたことによる試料に到達するX線の輝度が低くなる問題点を解決するために、スリットを備えた1つのコリメータ21の代わりに、引用発明と同じX線分析装置の分野に用いられる、上記周知例の試料に照射されるX線を高輝度にすることができるX線を試料上の焦点に集束させる1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を採用して、試料に照射されるX線を高輝度にして容易に分析を行えるようにすることは当業者であれば容易に想到しうることから、波長分散型の蛍光X線分光システムにおいて、「X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる」という技術事項を導入する動機づけは存在するものであり、請求人の主張は採用できない。
(ウ-2)また、当審で拒絶の理由において提示した特開2001-124711号公報に、「【0029】・・・図3は、本発明の第2の実施の形態に用いる波長分散型蛍光X線分析装置の概念的構成図であり、X線源11、X線源11からの一次X線12を平行化或いは集光するX線ミラー13、集光した一次X線12中の散乱成分を除去するスリット14、測定対象の試料15、試料15からの蛍光X線16の内の所定の放射角を有する蛍光X線16のみを波長固定型分光器22に導くスリット21、波長固定型分光器22からの回折X線の内、所定の方向に回折されたX線のみを検出器20に導くスリット23によって構成する。」と記載されているように、波長分散型X線分光装置のようなX線分析装置においても、X線を集光する光学部品を用いることが知られていることから、引用発明の波長分散型X線分光装置のコリメータ21の代わりに、引用発明と同じX線分析装置の分野に用いられる、上記周知例の試料に照射されるX線を高輝度にすることができるX線を試料上の焦点に集束させる1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を採用する動機づけが存在することは明らかである。

(エ)請求人の「主引用発明と副引用発明の目的の相違による阻害事由の観点から(その1)」の主張(意見書4頁27行?5頁8行)
請求人は「審判官殿のいう周知技術の目的(試料に照射するX線をより強くすること)を減殺する方向で、引用発明1と審判官殿のいう周知技術との組合せを当業者が行うことは考えられません。よって、引用発明1のコリメータ21に代えて、審判官殿のいう周知技術(X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させること)を採用することを当業者が容易に想到し得たとは考えられません。」旨の主張をしている。
しかしながら、上記(ウ)において検討したように、引用刊行物Bには、X線分析装置において、試料に到達するX線の輝度が低いコリメータによる困難となる問題点を解決するために、コリメータの代わりに照射するX線を集束して試料に照射されるX線ビームを高輝度にして容易に分析を行えるようにすることが記載されており、この引用刊行物Bでは、X線分析装置において、試料に到達する輝度が減殺する方向のコリメータの代わりに、照射するX線を集束して試料に照射されるX線ビームをより強くして、高輝度にして容易に分析を行えるようにしていることから、請求人の「審判官殿のいう周知技術の目的(試料に照射するX線をより強くすること)を減殺する方向で、引用発明1と審判官殿のいう周知技術との組合せを当業者が行うことは考えられません。」旨の主張は採用できないし、さらに、引用発明の波長分散型X線分光装置において、2つのスリットを備えた1つのコリメータ21を用いたことによる試料に到達するX線の輝度が低くなる問題点を解決するために、スリットを備えた1つのコリメータ21の代わりに、引用発明と同じX線分析装置の分野に用いられる、上記周知例の試料に照射されるX線を高輝度にすることができるX線を試料上の焦点に集束させる1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を採用することに何ら阻害事由は存在しないことは明らかである。

(オ)請求人の「主引用発明と副引用発明の目的の相違による阻害事由の観点から(その2)」の主張(意見書5頁9行?5頁8行)
(オー1)請求人は「引用発明1は、従来の光学顕微鏡を用いた構成では比較的大きな領域を確保する必要があるという問題点を解決するもの、すなわち、コンパクト化、省スペース化を図り、他の検出機器等の設置をも可能とすることを目的とするものです(引用刊行物Aの段落【0004】をご参照ください)。
このような引用発明1において、コリメータ21に代えて、審判官殿のいう周知技術(X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる構成)を採用すれば、コリメータを用いた場合に比べて装置が大きくなってしまい、従って、コンパクト化、省スペース化を図り、他の検出機器等の設置をも可能とするという引用発明1の目的に反することになってしまいます。
・・・
したがって、引用発明1のコリメータ21に代えて、審判官殿のいう引用刊行物B、C等に記載の周知技術を採用することには阻害事由があるといえます。よって、引用発明1のコリメータ21に代えて、審判官殿のいう周知技術を採用することを当業者が容易に想到し得たとはいえません。」旨の主張をしている。
しかしながら、上記引用刊行物の摘記事項(4A-2)には「【0003】・・・図5に示す如く,予め光学顕微鏡の焦点位置とX線光学系の焦点位置が一致するように調整されている。従って,試料表面をこの光学顕微鏡で観察しながら該試料を調整してその焦点位置に移動させることにより,上記試料は分光結晶(不図示)の焦点深度領域内にセットされたことになり,正しく分析される。・・・【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような光学顕微鏡を設置するには,比較的大きな領域(立体角)を確保する必要があり,特にイオンビーム励起型等のX線分光装置では,試料の多面的分析を行うために,波長分散型X線分光装置以外にも反跳イオン分析器,2次電子検出器,エネルギー分散型X線検出器等を設置しなければならず,前記のような光学顕微鏡を設置する余地がないのが現状である。そこで,本発明は,上記事情に鑑みて創案されたものであり,X線光学系の焦点位置への試料の位置調整を比較的簡単な構成の下に行い得るようにして,コンパクト化,あるいは省スペース化により他の検出機器等の設置をも可能とする波長分散型X線分光装置の提供を目的とするものである。」と記載され、さらに、摘記事項(4A-3)に「【0013】上記放射線源20とコリメータ21との間及び分光結晶31と半導体検出器29との間には,それぞれ軽金属元素薄膜の一例であるアルミニウムを蒸着した高分子薄膜24,25が配設されている。そして,各高分子薄膜24,25に対応して,レーザ光源22(第2の光線照射手段,第2の可視光源),レーザ光源23(第1の光線照射手段,第1の可視光源)がそれぞれ配設されており,レーザ光源22,23からのレーザ光26,35をX線光学系の光軸に導くように構成されている。・・・ 【0014】・・・従って,レーザ光源22,23からレーザ光26,35を照射すると,このレーザ光はそれぞれアルミニウムを蒸着した高分子薄膜24,25で反射してX線光学系の光軸に沿って導入される。更に,一方のレーザ光26は,コリメータ21のスリットを通過して試料11に照射される。また,他方のレーザ光35は,鏡面研磨された分光結晶31の表面で反射され,試料11に照射される。両レーザ光26,35はX線光学系の焦点位置で交差するように前述の如く予め調整されていることから,CCDカメラ33で試料表面を観察しつつ,両レーザ光26,35が試料表面を照射する位置が一致するように試料11の位置を調整すると,X線光学系での試料11の焦点位置調整が終了する。」と記載されていることから、引用発明は、X線光学系の焦点位置への試料の位置調整を、比較的大きな領域を確保する必要となる光学顕微鏡を用いて行う代わりに、X線光学系の焦点位置で交差するように調整され、光学顕微鏡に比べて必要とする領域がわずかなレーザ光源22,23の比較的簡単な構成を用いることにより、波長分散型X線分光装置のコンパクト化、あるいは省スペース化を行うものであって、X線光学系の、例えば、照射領域制限手段が必要とする領域を小さくすることにより、コンパクト化,あるいは省スペース化を図ることを目的とするものではないことは明らかである。
そして、上記「相違点(い)について」において検討したように、光学部品を用いてX線源からのX線を試料上の小さな領域に照射して、試料のX線分析を行うX線分析装置において、X線を試料上の小さな領域に照射する際に用いられる照射領域制限手段として、一つまたは複数のスリットからなるスリットシステム、一つまたは複数のX線反射鏡からなる集光システムの何れかを用いることは当業者が適宜採用する選択事項であり、さらに、照射領域制限手段として一つまたは複数のスリットからなるスリットシステム、1つまたは複数のX線反射鏡からなる集光システム等照射領域制限手段を選択する際にはそれぞれの特徴を見極めた上で、当業者が所望の特徴を有する照射領域制限手段を適宜採用するものであり、また、一般に、どのX線分析装置においても、コンパクト化,あるいは省スペース化は共通の目的であるから、上記「(1)相違点(い)について」において提示した、特開2000-81399号公報や特開2001-141675号公報のX線分析装置においても、コンパクト化,あるいは省スペース化という共通の目的を持ちつつも、照射領域制限手段を選択する際に、一つまたは複数のスリットからなるスリットシステムを採用するか、1つまたは複数のX線反射鏡からなる集光システムを採用するかを選択しているのである。
そうすると、上記引用刊行物Aに「本発明は,上記事情に鑑みて創案されたものであり,X線光学系の焦点位置への試料の位置調整を比較的簡単な構成の下に行い得るようにして,コンパクト化,あるいは省スペース化により他の検出機器等の設置をも可能とする波長分散型X線分光装置の提供を目的とするものである。」と記載されていたとしても、上記のごとく、引用発明は、X線光学系の焦点位置への試料の位置調整を、比較的大きな領域を確保する必要となる光学顕微鏡を用いて行う代わりに、比較的簡単な構成からなり、光学顕微鏡に比べて必要とする領域がわずかなX線光学系の焦点位置で交差するように調整されたレーザ光26とレーザ光35を用いることにより、波長分散型X線分光装置のコンパクト化、あるいは省スペース化を行うものであって、X線光学系の、例えば、照射領域制限手段が必要とする領域を小さくすることにより、コンパクト化,あるいは省スペース化を図ることを目的とするものではないから、引用発明において、スリットを備えたコリメータの代わりに、周知例のように1つ又は2つのX線反射鏡からなる光学部品を選択することが、阻害要因となるとはいえないものであり、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-01 
結審通知日 2011-08-05 
審決日 2011-08-16 
出願番号 特願2003-505939(P2003-505939)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 横井 亜矢子
郡山 順
発明の名称 蛍光X線分光システム及び蛍光X線分光方法  
復代理人 新開 正史  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 梅田 幸秀  
復代理人 窪田 郁大  

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