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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C30B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C30B
管理番号 1266499
審判番号 不服2009-25965  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2012-11-19 
事件の表示 特願2007-534682「低マイクロパイプの100mm炭化ケイ素ウェハ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月20日国際公開、WO2006/041660、平成20年 5月15日国内公表、特表2008-515749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2005年9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年10月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年10月23日付けで拒絶理由が起案され、平成21年4月28日付けで意見書と特許請求の範囲の記載に係る手続補正書が提出され、同年8月26日付で拒絶査定の起案がなされ、同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに特許請求の範囲の記載に係る手続補正書が提出され、平成23年11月17日付けで特許法第164条第3項の規定に基づく報告書を引用した審尋の起案がなされ、回答書が提出されなかったものである。

第2.平成21年12月28日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正についての補正却下の決定

1.補正却下の結論
平成21年12月28日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正を却下する。

2.理由
(1)平成21年12月28日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正(以下、「本件補正」ということがある。)は、本件補正前の平成21年4月28日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正書により補正された、
「 【請求項1】
SiCの高品質単結晶のウェハを形成する方法であって、
少なくとも100mmの直径を有するSiCブールを形成するステップと、
前記ブールを複数のウェハにスライスし、各ウェハの表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満とするステップと、
その後、前記ウェハを研磨するステップと、
を備える方法。」

「 【請求項1】
SiCの高品質単結晶のウェハを形成する方法であって、
研磨した種ウェハを用いて、少なくとも100mmの直径を有するSiCブールを形成するステップと、
前記ブールを複数のウェハにスライスし、各ウェハの表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満とするステップと、
その後、前記ウェハを研磨するステップと、
を備える方法。」
とすることを含むものである。
この請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1及びこの請求項1を引用して記載された請求項には、「種ウエハ」に係る発明特定事項は記載されていないから、「研磨した種ウェハを用いて」なる発明特定事項の付加は、発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいない。
また、本件補正前の請求項1を引用するいずれの請求項にも、「研磨した種ウェハを用いて」に係る発明特定事項は記載されていないから、請求項の削除ではないし、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれでもないことも明らかである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成21年12月28日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正は却下されたので、本願の請求項1?39に係る発明は、平成21年4月28日付けの特許請求の範囲に係る手続補正書によって補正された請求項1?39に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

【請求項1】
SiCの高品質単結晶のウェハを形成する方法であって、
少なくとも100mmの直径を有するSiCブールを形成するステップと、
前記ブールを複数のウェハにスライスし、各ウェハの表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満とするステップと、
その後、前記ウェハを研磨するステップと、
を備える方法。

第4.引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-221397号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「以下に上記した概略をさらに詳細に説明する。まず、図2(A)に示すように、・・・・・・直径4インチのシリコンウエハ14を用意し、その上に種結晶となる、表面が(110)面方位である立方晶炭化珪素単結晶層15を化学的気相エピタキシャル成長法(CVD)により成長させる。・・・・・。その後、図2(B)に示すように、フッ酸と硝酸の混酸中に浸し、シリコンウエハ14を溶解して除去する。
このように、珪素を溶解する薬液による化学的方法にてシリコンウエハ14が除去される。ここで、シリコンウエハ14(・・・・・・)を除去する方法として、フッ酸と硝酸の混液を用いたが、機械的研磨による方法でもよい。
・・・・・・シリコンウエハ14の除去により露出した(110)面立方晶炭化珪素単結晶層15の表面を黒鉛製ルツボの蓋材4bに接合剤としての接着剤16で接合して、(110)面立方晶炭化珪素単結晶層15を黒鉛製ルツボの蓋材4bに固定する。
・・・・・・
そして、図1に示すように、黒鉛製ルツボの蓋材4bを結晶成長装置20に装着する。・・・・・・。
一方、図1における黒鉛製ルツボ4には炭化珪素原料粉末17が100g充填されている。・・・・・・。
・・・・・・
その後、誘導コイル10に電力を供給して再び温度を上昇させて黒鉛製ルツボ4の温度を2300?2350℃にして炭化珪素原料粉末17の昇華温度にする。・・・・・・。
炭化珪素原料粉末17から昇華したガスは種結晶である炭化珪素単結晶層15との温度差を駆動力として(110)面立方晶炭化珪素単結晶層15まで到達して、結晶成長が進行する。・・・・・・。
・・・・・・
その結果、図2(D)に示すように、種結晶である(110)面立方晶炭化珪素単結晶層15上に(112^(*) 0)面α型炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)19が形成される。(112^(*) 0)面α型炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)19はその厚さが2mm、直径が4インチである。図4に六方晶型結晶の(112^(*) 0)面を示す。さらに、図2(E)に示すように、(112^(*) 0)面α型炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)19を黒鉛製ルツボの蓋材4bから取り外し、得られた結晶をスライス、研磨して半導体基板とする。この基板を500℃の溶解KOH中で10分間エッチングして、エッチピット観察したところ、マイクロパイプ欠陥の存在を示す六角形状の大エッチピットは観察されなかった。このようにして、大口径かつマイクロパイプ欠陥のない炭化珪素単結晶インゴットが得られる。
・・・・・・
・・・・・・(112^(*) 0)面成長ではらせん転位が存在せず、らせん転位に起因するマイクロパイプが発生しない。」(【0029】?【0042】)
(2)「(112^(*) 0)面α型炭化珪素単結晶の製造工程を説明するための断面図である」と説明されている図2(A)?(E)をみると、上記(1)の摘示事項を窺うことができる。

第5.引用例1に記載された発明
ア 引用例1の(1)の「(112^(*) 0)面α型炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)19を黒鉛製ルツボの蓋材4bから取り外し、得られた結晶をスライス、研磨して半導体基板とする。」との記載をみると、引用例1では、炭化珪素単結晶インゴットをスライス、研磨して半導体基板を得ているといえ、この半導体基板は炭化珪素、すなわち、SiC半導体基板であることは明らかである。
イ 引用例1の(1)の「(112^(*) 0)面α型炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)19はその厚さが2mm、直径が4インチである。」との記載をみると、引用例1の炭化珪素単結晶インゴットの直径は4インチであるといえる。
ウ 引用例1の(1)の「半導体基板とする。この基板を500℃の溶解KOH中で10分間エッチングして、エッチピット観察したところ、マイクロパイプ欠陥の存在を示す六角形状の大エッチピットは観察されなかった。」との記載をみると、引用例1の半導体基板はマイクロパイプ欠陥がないといえる。
エ 上記ア?ウの検討を踏まえ、本願発明の記載ぶりに則して引用例1の記載を整理すると、引用例1には、
「SiC半導体基板を得る方法であって、
4インチの直径を有する炭化珪素単結晶インゴットを形成し、
前記炭化珪素インゴットをスライスし研磨してマイクロパイプ欠陥がないSiC半導体基板を得る方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

第6.本願発明と引用発明との対比・判断
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
イ 引用発明の「炭化珪素単結晶インゴット」、「SiC半導体基板」は、それぞれ、本願発明の「SiCブール」、「SiCの単結晶ウェハ」に相当するから、引用発明の「SiC半導体基板を得る方法」は、「SiC単結晶のウェハを形成する方法」とみることができる。
ウ 引用発明の「炭化珪素単結晶インゴット」は4インチ、すなわち、101.6(=4×25.4)mmの直径を有しているから、引用発明の「4インチの直径を有する炭化珪素単結晶インゴットを形成し」は、一つの「ステップ」といえ、本願発明の「少なくとも100mmの直径を有するSiCブールを形成するステップ」に相当する。
エ 引用発明の「炭化珪素インゴットをスライスし・・・・・・SiC半導体基板を得る」ことは、一つの「ステップ」といえる。
また、引用例1の(1)に「(炭化珪素単結晶インゴット)19はその厚さが2mm」と記載され、スライスして半導体基板、すなわち、SiCウェハを得ているから、スライスに当たり、複数枚の半導体基板を得ていることは明らかである。
オ そうすると、本願発明と引用発明は、
「SiCの単結晶のウェハを形成する方法であって、
少なくとも100mmの直径を有するSiCブールを形成するステップと、
前記ブールを複数のウェハにスライスするステップ、
を備える方法。」である点で一致し、次の点で一応相違している。
相違点1:本願発明は、「前記ブールを複数のウェハにスライスし、各ウェハの表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満とするステップと、その後、前記ウェハを研磨するステップと、を備え」ているのに対し、引用発明は、「前記炭化珪素インゴットをスライスし研磨してマイクロパイプ欠陥がないSiC半導体基板を得」ている点
相違点2:SiC単結晶のウェハに関し、本願発明は「高品質」であるのに対し、引用発明はかかる事項が記載されていない点
カ そこで、これら相違点について検討する。
・相違点1について
本願発明の「前記ブールを複数のウェハにスライスし、各ウェハの表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満とするステップと、その後、前記ウェハを研磨するステップ」について、本願明細書の記載をみてみると、その【0028】に、「本発明は、・・・・・・別の態様として、種結晶を用いた昇華システムで、高品質の炭化ケイ素バルク単結晶を製造する方法であり、・・・・・・少なくとも約100mmの直径を有し、約20cm^(-2)未満のマイクロパイプ密度を有するSiCブールを成長させ、その後、好ましくは機械的に、SiCブールをウェハにスライシングすることを含み、各ウェハは、表面上に約20cm^(-2)未満のマイクロパイプ密度を有する。」と記載されており、マイクロパイプ密度はSiCブールもウェハも同じであるから、SiCブールを複数のウェハにスライスすることによってマイクロパイプ密度は変化しないといえる。
また、マイクロパイプは、バーガーズベクトルがc軸に沿った中空孔の大型らせん転位であるから、研磨によって消滅するものでもないことは明らかである。
そうすると、本願発明の「前記ブールを複数のウェハにスライスし、各ウェハの表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満とするステップと、その後、前記ウェハを研磨するステップ」とは、「マイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満の前記ブールを複数のウェハにスライスするステップと、その後、前記ウェハを研磨するステップを経て、表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満のウェハとする」こととみることができる。
一方、引用発明は、マイクロパイプ欠陥がないのであるからウェハ表面上及び炭化珪素インゴットのマイクロパイプ密度は30cm^(-2)未満であることは明らかであり、このことは、引用例1の(1)の「得られた結晶をスライス、研磨して半導体基板とする。この基板を500℃の溶解KOH中で10分間エッチングして、エッチピット観察したところ、マイクロパイプ欠陥の存在を示す六角形状の大エッチピットは観察されなかった。このようにして、大口径かつマイクロパイプ欠陥のない炭化珪素単結晶インゴットが得られる」ことからいえることである。
そして、引用発明の「前記炭化珪素インゴットをスライスし研磨してマイクロパイプ欠陥がないSiC半導体基板を得」ていることは、「マイクロパイプ欠陥のない炭化ケイ素インゴットをスライスし研磨してマイクロパイプ欠陥のない複数のSiC半導体基板を得ているもの」であるから、言い換えると、「マイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満のSiCブールを複数のウェハにスライスするステップと、その後、前記ウェハを研磨するステップを経て、表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満の複数のウェハとする」ことであり、本願発明の「前記ブールを複数のウェハにスライスし、各ウェハの表面上のマイクロパイプ密度が30cm^(-2)未満とするステップと、その後、前記ウェハを研磨するステップ」に実質的に相当するといえる。
よって、相違点1は形式的なものである。
・相違点2について
本願発明の「SiCの高品質単結晶のウェハ」と「マイクロパイプ密度」について、本願明細書の記載をみてみる。
「30cm^(-2)未満のマイクロパイプ密度」についての記載は見当たらないが、その【0019】に「本発明は、その一態様として、・・・・・・約25cm^(-2)未満、より好ましくは約20cm^(-2)未満、最も好ましくは約10cm^(-2)未満のマイクロパイプ密度とを有するSiCの高品質単結晶ウェハである。」との記載がなされており、この記載をみると、「SiCの高品質単結晶のウェハ」とは、マイクロパイプ密度が低いSiCの単結晶のウェハということができる。
一方、上記相違点1の検討のところで述べたように引用例1の半導体基板(すなわち、SiC単結晶のウェハ)はマイクロパイプを有していない。
そうすると、引用例1の半導体基板(すなわち、SiC単結晶のウェハ)も高品質であるといえる。
よって、相違点2も形式的なものである。
キ そうすると、本願発明と引用発明は実質的に同一であり、相違するところがない。

第7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2012-06-22 
結審通知日 2012-06-26 
審決日 2012-07-09 
出願番号 特願2007-534682(P2007-534682)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C30B)
P 1 8・ 57- Z (C30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鮎沢 輝万  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 木村 孔一
田中 則充
発明の名称 低マイクロパイプの100mm炭化ケイ素ウェハ  
代理人 大日方 和幸  
代理人 清水 邦明  
代理人 浅村 肇  
代理人 岩見 晶啓  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 林 鉐三  
代理人 畑中 孝之  
代理人 浅村 皓  

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