ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1266503 |
審判番号 | 不服2010-18275 |
総通号数 | 157 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-13 |
確定日 | 2012-11-20 |
事件の表示 | 特願2007-518724「ユーザデータファイルの自動優先順位付け」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月19日国際公開、WO2006/006027、平成20年 2月14日国内公表、特表2008-504624〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2005年5月30日を国際出願日とする出願(優先権主張日;2004年6月30日,米国)であって、出願後の手続きの経緯は次のとおりである。 拒絶理由の通知 (起案日)平成21年9月4日 意見、手続補正 (提出日)平成21年12月14日 拒絶査定 (起案日)平成22年4月13日 同 謄本送達 (送達日)平成22年4月19日 審判請求 (提出日)平成22年8月13日 手続補正 (提出日)平成22年8月13日 前置報告 (作成日)平成22年10月27日 審尋 (起案日)平成24年1月12日 回答 (回答なし) 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年8月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。 「 【請求項1】 ユーザデータファイルのプライオリティ(priority)に基づいてユーザデータファイルを提供する方法であって、サーバが、 (a)各ユーザデータファイルがプライオリティを有する複数のユーザデータファイルをメモリに保存し、 (b)複数のユーザデータファイルの1つあるいは複数のユーザデータファイルに関して、ユーザデータファイルのメモリへの保存に引き続いての当該ユーザデータファイルの複製を含む1つあるいは複数のファイル操作を行い、 (c)複数のユーザデータファイルの1つあるいは複数のユーザデータファイルのプライオリティを前記1つあるいは複数のファイル操作の実行に応じて変更し、 (d)プライオリティ閾値を設定するためのユーザインタフェースであって、複数のタイプのファイル操作のそれぞれの最小回数のユーザ指定を受け取るユーザインタフェースを表示し、 (e)プライオリティ閾値の指定を受け取り、 (f)複数のユーザデータファイルのどのファイルがプライオリティ閾値の上のプライオリティを有するかを決定し、 (g)プライオリティ閾値の上のプライオリティを有する複数のユーザデータファイルを提供する、 ことを含む方法。」 3.引用刊行物 3.1 刊行物1に記載された発明 原審で引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2002-32388号公報(以下、「刊行物1」という。)には図面とともに次の記載がある。 ア.「【0067】図3は文書処理管理システム100をネットワークで接続された複数の装置の集合体として実現する形態を説明するための図である。図3において、300はサーバーマシンとして働く・・・文書保存部111、文書管理情報保存部113、操作履歴情報記憶部115及び体系化情報保存部117としては、共通の大容量記憶301が利用される。…(中略)… 【0069】・・・文書管理情報は、例えば図4に示すような構造である。文書管理情報の各レコード(図中の各行)は保存文書と1対1に対応する。各レコードは、文書の属性である「種類」「作成者」「文書名」「操作履歴」「保存場所」の値が記録される5つのフィールド401?405からなる。 …(中略)…「操作履歴」フィールド404には、文書の操作履歴情報が記述された操作履歴ファイルを特定するための情報(例えばファイル名)が記録される。 【0071】この操作履歴ファイルは個々の文書毎に作成されるもので、例えば図5に示すような内容である。図5中の各行(1レコード)は1つの文書操作に関する操作履歴情報であり、「操作者」(操作したユーザ名)411、「操作時刻」(操作が終了した年月日時分)412及び「操作内容」413の3項目の情報が記述される。「操作内容」としては例えば「新規保存」「上書き保存」「別名保存」「閲覧」「印刷」の5種類がある。」 イ.「【0072】・・・「別名保存」とは、文書操作装置130で保存文書を開いて編集し、編集後の文書を別の文書名で文書保存部111に保存する操作を意味する。 …(中略)… 【0077】ユーザからの指示が文書操作指示ならば、文書操作処理(ステップS104)が行われ、1つの文書の操作処理が終了すると操作履歴処理(ステップS105)が行われ、ユーザ指示処理(ステップS101)に戻る。 …(中略)… 【0083】また、ユーザは、編集後の文書を別名で保存したいときには、新たな文書名を付与して「別名保存」を指示する。・・・その文書データを文書保存部111に保存するとともに、その文書管理情報を生成して文書管理情報保存部113に保存し、また、その文書に関する操作履歴ファイルを生成する。・・・操作履歴管理部114において、この別名保存操作に関する操作履歴情報を作成し、それを当該文書の操作履歴ファイルに記述する(ステップS105)。」 ウ.「【0087】・・・メニューを表示装置132に表示・・・文書体系化処理の方法が変わる。より具体的には、体系化モードによって、文書体系化処理に利用される操作履歴情報中の項目とその数、複数の項目の利用順序(優先順位)、操作頻度の利用の有無が決まる。すなわち、体系化モードを指定させることによって、文書体系化に利用される操作履歴情報の項目や優先順位などをユーザに間接的に指定させる訳である。」 エ.「【0112】操作履歴情報の3項目の情報を利用した文書体系化処理について説明したが、任意の2項目の情報を利用した文書体系化処理も同様に行われる。このように、操作履歴情報に文書の操作に関する複数項目の情報を含め、文書体系化に利用する項目を指定できるようにすることによって、文書群の利用状況を様々な観点から把握することが可能になる。また、同じ項目情報を利用する場合でも、各項目の優先順位を変更することによって、文書体系化情報の階層構造を柔軟に変更することができる。例えば、前述の3項目を利用する文書体系化であっても、項目の優先順位を変更すれば、図18に示すイメージとは階層構造が異なったイメージが表示されることは明らかである。 【0113】さて、前述のように操作履歴情報と操作頻度とを組み合わせた文書体系化を指定することもできる。その一例として、「操作内容」と操作頻度との組み合わせによる文書体系化処理について、図19のフローチャートを参照し説明する。ただし、「操作内容」に高い優先順位が指定された場合を想定する。 【0114】体系化処理部116は、文書管理情報保存部113に保存されている1つの文書の文書管理情報を参照し、その「操作履歴」フィールドの情報に基づいて、その文書の操作履歴ファイルを読み込む(ステップS300)。次に、同操作履歴ファイルに記述されている全ての操作履歴情報の「操作内容」情報を参照し、「閲覧」の操作回数、「印刷」の操作回数、「上書き保存」の操作回数、及び、それら操作の合計操作回数をカウントする(ステップS301)。そして、その文書を、「閲覧操作回数」の上位Nグループ、「印刷操作回数」の上位Nグループ、「上書き保存回数」の上位Nグループ、「合計操作回数」の上位Nグループに分類する(ステップS302)。・・・同様の分類処理を全ての保存文書について繰り返す。全ての文書の分類処理が終わると(ステップS303,Yes)、分類された文書の文書名を体系的に表示するための体系情報を生成し、それを体系化情報保存部117に保存し(ステップS304)、文書体系化処理を完了する。 【0115】図20は、このような文書体系化処理により生成された体系化情報を表示したイメージの一例を示す。図中のXXXは文書名を意味する。このような体系化情報のイメージを文書操作装置130の表示装置132を表示させることにより、ユーザは、操作内容と操作頻度の観点から保存文書群の利用情報を容易に把握することができる。また、前述のように、この体系化情報のイメージを表示させた画面上で文書を指定する方法によれば、ユーザは、例えば、頻繁に操作した文書などを容易に選択することができる。」 (ア)刊行物1記載のものにおける文書は、イ.の「文書名」「保存」との記載、文書の保存形式としてファイル形式は通常のものである点を加味すると文書は「文書ファイル」とみることができる(以下、「文書」を「文書ファイル」とよぶ場合がある。)。 また、イ.の「操作履歴ファイルは個々の文書毎に作成される」、ウ.の「体系化モードによって、文書体系化処理に利用される操作履歴情報中の項目とその数、複数の項目の利用順序(優先順位)、操作頻度の利用」が決まるとの記載から、各項目の優先順位と操作頻度(操作回数)の利用に基づいて文書体系化がされること、つまり「文書ファイルの優先順位に基づいて」の点がよみとれる。これらと、エ.の「体系化情報のイメージを表示させた画面上で文書を指定する方法によれば、ユーザは、例えば、頻繁に操作した文書などを容易に選択することができる」との記載、当該文書を指定、文書を選択することにより文書ファイルが「提供」できることは自明である点、および、ア.の「サーバーマシン」との記載を合わせると、「文書ファイルの優先順位に基づいて文書ファイルを提供する方法であって、サーバが」の点がよみとれる。 (イ)前記(ア)の「項目の利用順序(優先順位)、操作頻度の利用」と関連する、個々の文書は、エ.の「保存文書」、文書毎に作成された「操作履歴情報ファイル」「操作履歴ファイルを読み込む」、次に、操作履歴ファイルに記述されている全ての操作履歴情報の「操作内容」情報を参照し、「操作回数、及び、それら操作の合計操作回数をカウント」、「文書を」「操作回数」の「上位Nグループ」に「分類」、「分類された文書の文書名を体系的に表示する」(図20参照。閲覧などの操作と頻度により文書名XXXの文書が分類されている。)との記載から、「保存文書」と「操作履歴ファイル」とが対応しており、当該文書に対応する操作履歴ファイルにおける項目の利用順序による優先順位と操作回数により分類されるということは、文書からみれば、文書は当該文書の操作履歴ファイルに基づいて分類される、優先順位を有する文書ファイルとみることができる。また、ア.の「文書保存部」は「共通の大容量記憶」が「利用される」、イ.の「文書」を「文書保存部」に「保存」との記載から、文書ファイルの保存先として共通の大容量記憶(メモリ)であることが記載されている。これらから、「(a)各文書ファイルが優先順位を有する複数の文書ファイルをメモリに保存し」の点がよみとれる。 (ウ)イ.の「「別名保存」とは、保存文書を開いて編集し、編集後の文書を別の文書名で文書保存部111に保存する操作」から、別名保存は「複製」に相当するとともに、「開いて編集する」とは、既にメモリに保存されている保存文書について、これを開いて編集することを意味する。ア.の「閲覧」「上書き保存」「別名保存」等はファイル操作にあたるとともに、前記編集後の別名保存などの操作は「メモリ」に「保存」の後に「引き続いての」「ファイル操作」とみることができる。よって、「(b)複数の文書ファイルの1つあるいは複数の文書ファイルに関して、文書ファイルのメモリへの保存に引き続いての当該文書ファイルの別名保存(複製)を含む1つあるいは複数のファイル操作を行い」がよみとれる。 (エ)ウ.の「文書体系化処理に利用される操作履歴情報中の項目とその数、複数の項目の利用順序(優先順位)、操作頻度の利用」、エ.の「操作履歴情報の「操作内容」情報を参照」「操作回数をカウント」「上位Nグループに分類」、図19のステップ302の「操作内容別に頻度により分類」、図20に示された、閲覧・頻度、印刷・頻度などの操作内容・頻度別に分けられた上位Nグループの文書名XXXの分類状態から、「複数の文書ファイルの1つあるいは複数の文書ファイルの操作頻度を利用した優先順位」がよみとれる。前記操作頻度について、イ.の「文書操作処理(ステップS104)が行われ、1つの文書の操作処理が終了すると操作履歴処理(ステップS105)が行われ、」「その文書に関する操作履歴ファイルを生成」「操作履歴情報を作成し、それを当該文書の操作履歴ファイルに記述」から「文書ファイルの操作の実行に応じて生成」の点がよみとれるとともに、エ.の「操作履歴ファイルに記述されている全ての操作履歴情報の「操作内容」情報を参照し、・・・操作回数、及び、それら操作の合計操作回数をカウントする」との記載から、「操作頻度を利用した優先順位を前記1つあるいは複数の文書ファイル操作の実行に応じて生成された操作内容情報を参照してカウントして上位Nグループに分類し」がよみとれる。これらを合わせると「(c)複数の文書ファイルの1つあるいは複数の文書ファイルの操作頻度を利用した優先順位を前記1つあるいは複数のファイル操作の実行に応じて生成された操作内容情報を参照してカウントして上位Nグループに分類し」がよみとれる。 (オ)ウ.の「メニューを表示装置132に表示」「文書体系化処理に利用される操作履歴情報中の項目とその数、複数の項目の利用順序(優先順位)、操作頻度の利用」「体系化モードを指定させることによって、文書体系化に利用される操作履歴情報の項目や優先順位などをユーザに間接的に指定させる」との記載から「優先順位の設定」「ユーザインターフェース」が、また、エ.の「操作履歴情報の「操作内容」情報を参照し、「閲覧」の操作回数、「印刷」の操作回数、「上書き保存」の操作回数、及び、それら操作の合計操作回数をカウントする」「その文書を、「閲覧操作回数」の上位Nグループ、「印刷操作回数」の上位Nグループ、「上書き保存回数」の上位Nグループ、「合計操作回数」の上位Nグループに分類する(ステップ302)」、図19のステップ302の「操作内容別に頻度により分類」との記載から、「複数のタイプのファイル操作」に係る点がよみとれる。これらをふまえると、「(d)優先順位を設定するためのユーザインタフェースであって、複数のタイプのファイル操作のそれぞれのユーザ指定を受け取るユーザインタフェースを表示し」がよみとれる。 (カ)前記(オ)から、「(e)優先順位の指定を受け取り」がよみとれる。 (キ)前記(オ)の「その文書を、「閲覧操作回数」の上位Nグループ、「印刷操作回数」の上位Nグループ、「上書き保存回数」の上位Nグループ、「合計操作回数」の上位Nグループに分類する」との記載、エ.の「複数の項目の利用順序(優先順位)、操作頻度の利用」「全ての文書の分類処理」との記載、当該記載の「複数の項目の利用順序(優先順位)、操作頻度の利用」の例として、図20をみると、「閲覧・頻度」「印刷・頻度」「上書き保存・頻度」などの項目・頻度の順序(優先順位)の上位の(優先順位における上位Nの)それぞれ操作回数の文書名XXXが分類(操作回数で決定)されている様子が示されており、項目ないし項目・頻度の「上位Nの操作頻度を利用した優先順位を有するかを決定」しているとみることができる。これらの点をふまえると、「(f)複数の文書ファイルのどのファイルが上位の操作頻度を利用した優先順位を有するかを決定し」がよみとれる。 (ク)前記(キ)、及び、エ.の「分類された文書の文書名を体系的に表示する」「図20は、このような文書体系化処理により生成された体系化情報を表示したイメージの一例を示す。図中のXXXは文書名」「文書を指定」から、「(g)上位の優先順位を有する複数の文書ファイルを提供する」がよみとれる。 (ア)?(ク)をふまえると、刊行物1には、ユーザは、操作内容と操作頻度の観点から保存文書群の利用情報を容易に把握するための(エ.参照)次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が示されている。 文書ファイルの優先順位に基づいて文書ファイルを提供する方法であって、サーバが、 (a)各文書ファイルが優先順位を有する複数の文書ファイルをメモリに保存し、 (b)複数の文書ファイルの1つあるいは複数の文書ファイルに関して、文書ファイルのメモリへの保存に引き続いての当該文書ファイルの別名保存(複製)を含む1つあるいは複数のファイル操作を行い、 (c)複数の文書ファイルの1つあるいは複数の文書ファイルの操作頻度を利用した優先順位を前記1つあるいは複数のファイル操作の実行に応じて生成された操作内容情報を参照してカウントして上位Nグループに分類し、 (d)優先順位を設定するためのユーザインタフェースであって、複数のタイプのファイル操作のそれぞれのユーザ指定を受け取るユーザインタフェースを表示し、 (e)優先順位の指定を受け取り、 (f)複数の文書ファイルのどのファイルが上位の操作頻度を利用した優先順位を有するかを決定し、 (g)上位の優先順位を有する複数の文書ファイルを提供する、 ことを含む方法。 3.2 刊行物2に記載された事項 同じく、原審で引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2001-125841号公報(以下、「刊行物2」という。)には図面(特に図13、図24参照)とともに次の記載がある。 a.「【要約】 【課題】受信メールは利用者ごとに管理されるので、受信したメールの本文、ヘッダに記載されている履歴を見ることはできるが、ある一連のテーマに関して受送信されたメールに添付された文書がどのように参照され、更新されたかを参照できないという課題がある。 …(中略)… 【特許請求の範囲】 【請求項1】データに参照回数と更新回数を対応づけて保持し、入力した更新回数に関する検索条件を満たすデータを検索することを特徴とする検索方法。 …(中略)… 【請求項3】請求項1に記載の検索方法において、更新回数または参照回数のいずれか一つをデータに対応付けて保持し、入力した更新回数または参照回数の少なくともいずれかに対応づけられた検索条件に基づいて検索することを特徴とする検索方法。」 b.「【0022】・・・図13の検索条件で検索した結果、メールが200件ヒットした場合に、図24の検索画面で、「メールの往復回数が5往復?10往復した案件で、しかも添付文書が10回?20回更新されて案件を探す」という検索条件を追加することによって、絞り込むことが可能である。 【0023】・・・文書検索・表示プログラム120は、検索条件により案件またはメールまたは文書のいずれかを特定した場合に、検索結果として案件の一覧を表示する。」 b.の「更新回数または参照回数」「検索条件を追加することによって、絞り込む」との記載から、更新回数または参照回数は案件絞り込みのための優先順位を与えているとみることができる。また、「入力された更新回数または参照回数」、図24の入力された更新回数「10回」?「20回」は、優先順位の最小回数の「閾値」と最大回数の「閾値」とみることができる。 4.対比・判断 4.1 対比 刊行物1発明と本願発明とを対比する。 A.刊行物1発明の「文書ファイル」「優先順位」は本願発明の「ユーザデータファイル」「プライオリティ(priority)」に相当する。刊行物1発明の「文書ファイルの優先順位に基づいて文書ファイルを提供する方法であって、サーバが」と本願発明の「ユーザデータファイルのプライオリティ(priority)に基づいてユーザデータファイルを提供する方法であって、サーバが」とに実質的な差異はない。 B.刊行物1発明の「(a)各文書ファイルが優先順位を有する複数の文書ファイルをメモリに保存し」と本願発明の「(a)各ユーザデータファイルがプライオリティを有する複数のユーザデータファイルをメモリに保存し」とに実質的な差異はない。 C.刊行物1発明の「(b)複数の文書ファイルの1つあるいは複数の文書ファイルに関して、文書ファイルのメモリへの保存に引き続いての当該ユーザデータファイルの別名保存を含む1つあるいは複数のファイル操作を行い」は、前記A.の「文書ファイル」が「ユーザデータファイル」に相当する点をふまえれば、本願発明の「(b)複数のユーザデータファイルの1つあるいは複数のユーザデータファイルに関して、ユーザデータファイルのメモリへの保存に引き続いての当該ユーザデータファイルの複製を含む1つあるいは複数のファイル操作を行い」とに実質的な差異はない。 D.刊行物1発明の「(c)複数の文書ファイルの1つあるいは複数の文書ファイルの操作頻度を利用した優先順位を前記1つあるいは複数のファイル操作の実行に応じて生成された操作内容情報を参照してカウントして上位Nグループに分類し」は、当該「ファイル操作の実行に応じて生成」が「ファイル操作の実行に応じて変更し」ているとまではいえないまでも、上位概念では「ファイル操作の実行に応じて処理し」ているとみることができ、本願発明の「(c)複数のユーザデータファイルの1つあるいは複数のユーザデータファイルのプライオリティを前記1つあるいは複数のファイル操作の実行に応じて変更し」における当該「ファイル操作の実行に応じて変更」も上位概念では「ファイル操作の実行に応じて処理し」ているとみることができる。よって、両発明は上位概念において「(c)複数のユーザデータファイルの1つあるいは複数のユーザデータファイルのプライオリティを前記1つあるいは複数のファイル操作の実行に応じて処理し」ている点で共通する。 E.刊行物1発明の「優先順位」を設定、および「ファイル操作のそれぞれのユーザ指定」は「プライオリティ閾値」を設定、および「ファイル操作のそれぞれの最小回数のユーザ指定」とまではいえないまでも上位概念では「優先順位関連情報」を設定、および、「ファイル操作のそれぞれの関連情報のユーザ指定」とみることができるとともに、本願発明の「プライオリティ閾値」を設定、および、「ファイル操作のそれぞれの最小回数のユーザ指定」も上位概念では「プライオリティ関連情報」を設定および「ファイル操作のそれぞれの関連情報のユーザ指定」とみることができる。よって、両発明は「(d)プライオリティ関連情報を設定するためのユーザインタフェースであって、複数のタイプのファイル操作のそれぞれの関連情報のユーザ指定を受け取るユーザインタフェースを表示し」で共通する。 F.優先順位「閾値」については、前記E.で言及したことと同様のことが言える。刊行物1発明の「(e)優先順位の指定を受け取り」と本願発明の「(e)プライオリティ閾値の指定を受け取り」とは「(e)プライオリティ関連情報の指定を受け取り」で共通する。 G.優先順位「閾値」については、前記E.F.で言及したことと同様のことが言える。刊行物1発明の「(f)複数の文書ファイルのどのファイルが上位の優先順位を有するかを決定し」は、プライオリティ「閾値」の上のプライオリティを有するかを決定しとまではいえないまでも「上位の優先順位を有するかを決定し」ており、上位概念では本願発明の「(f)複数のユーザデータファイルのどのファイルがプライオリティ関連情報の上のプライオリティを有するかを決定し」と共通する。 H.優先順位「閾値」については、前記E.F.G.で言及したことと同様のことが言える。刊行物1発明の「(g)上位の優先順位を有する複数の文書ファイルを提供する」と本願発明の「(g)プライオリティ閾値の上のプライオリティを有する複数のユーザデータファイルを提供する」とは、上位概念では「(g)プライオリティ関連情報の上のプライオリティを有する複数のユーザデータファイルを提供する」で共通する。 以上の対比によれば、本願発明と刊行物1発明とは、次の事項を有する発明である点で一致し、そして、相違する。 〈一致点〉 ユーザデータファイルのプライオリティ(priority)に基づいてユーザデータファイルを提供する方法であって、サーバが、 (a)各ユーザデータファイルがプライオリティを有する複数のユーザデータファイルをメモリに保存し、 (b)複数のユーザデータファイルの1つあるいは複数のユーザデータファイルに関して、ユーザデータファイルのメモリへの保存に引き続いての当該ユーザデータファイルの複製を含む1つあるいは複数のファイル操作を行い、 (c)複数のユーザデータファイルの1つあるいは複数のユーザデータファイルのプライオリティを前記1つあるいは複数のファイル操作の実行に応じて処理し、 (d)プライオリティ関連情報を設定するためのユーザインタフェースであって、複数のタイプのファイル操作のそれぞれの関連情報のユーザ指定を受け取るユーザインタフェースを表示し、 (e)プライオリティ関連情報の指定を受け取り、 (f)複数のユーザデータファイルのどのファイルがプライオリティ関連情報の上のプライオリティを有するかを決定し、 (g)プライオリティ関連情報の上のプライオリティを有する複数のユーザデータファイルを提供する、 ことを含む方法。 〈相違点1〉 (c)の、複数のファイル操作の実行に応じた「処理」が、本願発明は、ファイル操作の実行に応じて「変更し」ているのに対し、刊行物1発明はそのように変更しているものではない点。 〈相違点2〉 (d)の「プライオリティ関連情報」の設定、および、ファイル操作のそれぞれの「関連情報のユーザ指定」が、本願発明は、プライオリティ「閾値」を設定、および、ファイル操作のそれぞれの「最小回数のユーザ指定」であるのに対し、刊行物1発明はそのような設定、および指定ではない点。 〈相違点3〉 (e)のプライオリティ「関連情報」の指定を受け取るのが、本願発明はプライオリティ「閾値」を受け取るのに対し、刊行物1発明はそうであるか不明である点。 〈相違点4〉 (f)のプライオリティ「関連情報」の上のプライオリティを有するかの決定が、本願発明は、プライオリティ「閾値」の上のプライオリティを有するかの決定であるのに対し、刊行物1発明はそうであるか不明である点。 〈相違点5〉 (g)のプライオリティ「関連情報」の上のプライオリティを有する複数のユーザデータファイルを提供するのが、本願発明はプライオリティ「閾値」の上のプライオリティに係る提供であるのに対し、刊行物1発明はそうであるのか不明である点。 4.2当審判断 〈相違点1〉について ファイル操作の実行に応じてこれに対応する属性を「変更し」ている技術は、本願優先権主張日前周知の技術にすぎない。例えば、特開平9-106334号公報【0027】?【0031】段落には「アイコンに優先度を設定」「優先度の設定には」「アイコンの起動回数をカウントし、そのカウント数の大きさを元に3段階に配分「当然のことながら、アイコン303よりアイコン305のアクセス回数が多い場合は、自動的に起動時のファイルの配置がアイコン303とアイコン305とが入れ代わる」と記載されており、ファイルにアイコンが対応しており、アイコンの起動(実行)に応じて起動回数がカウント(カウント(アップ)即ち更新は変更に含まれる)により変更される技術が示されている。また、特開2004-46796号公報【0066】段落には「ファイルを閲覧もしくはコピーした回数を各ファイルに残るようにすることにより、ファイルの重要度の目安や、ひいてはオリジナルファイルの作成者の評価という観点から履歴情報を活用することもできる。」と記載され、ファイルの閲覧、コピー(ファイル操作)に応じて回数が変更される技術が示されている。 刊行物1発明における複数のファイル操作の実行に応じた「処理」を、ファイル操作の実行に応じて「変更」するように成すことは、前記周知の技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。 〈相違点2〉ないし〈相違点5〉について 刊行物2には、「更新回数または参照回数」「案件絞り込み」が記載され、「更新回数または参照回数」は案件絞り込みにかかる優先順位(プライオリティ)を与えているとみることができる。また、入力された(ユーザ指定された)更新回数または参照回数である、図24の更新回数「10回」?「20回」は、優先順位の最小回数と最大回数にあたる「閾値」とみることができる。 してみれば、〈相違点2〉ないし〈相違点5〉の(d)ないし(g)にかかるプライオリティ「関連情報」を、プライオリティ「閾値」と成すことは、前記事項を参酌することにより当業者が容易になし得る設計変更であり、〈相違点2〉ないし〈相違点5〉に係る本願発明の構成は、該設計変更に伴う自明の構成にすぎない。 そして、本願発明の構成により奏する効果も、刊行物1に記載された発明、及び、刊行物2記載の事項、ないし周知の事項から当然予測される範囲内のもので、格別顕著なものとは認められない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び、刊行物2記載の事項、ないし周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-22 |
結審通知日 | 2012-06-25 |
審決日 | 2012-07-06 |
出願番号 | 特願2007-518724(P2007-518724) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩田 淳 |
特許庁審判長 |
山崎 達也 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 原 秀人 |
発明の名称 | ユーザデータファイルの自動優先順位付け |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 那須 威夫 |
代理人 | 大塚 文昭 |