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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B09B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B09B
管理番号 1266545
審判番号 不服2011-18774  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-30 
確定日 2012-11-22 
事件の表示 特願2008-221838「廃棄物焼却処理残渣の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月11日出願公開、特開2010-51922〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成20年8月29日の出願であって、平成22年12月17日付けの拒絶理由が通知され、平成23年2月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月4日付けの最後の拒絶理由が通知され、同年4月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月24日付けで平成23年4月27日付け手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定されたので、同年8月30日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書により明細書及び特許請求の範囲が補正され、平成24年3月21日付けで特許法第164条3項に基づく報告書を引用した審尋がなされ、同年5月21日に回答書が提出されたものである。

第2 平成23年8月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正前及び補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲の補正は請求項1に関するもので、本件補正前の「焼却灰を濾過して」を「焼却灰をフィルタプレスにより濾過して」とすることで濾過手段を特定するものである。
これは、本願の請求項1に係る発明の特定事項を限定するものであり、補正前後の請求項1に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一なので、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に反する新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1?3に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかを、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。
本願補正発明は、次のとおりのものである。
「廃棄物焼却処理後の焼却灰及び又は、澱物を水浸出し、当該焼却灰の塩素含有量を低下させる第1工程と、
前記第1工程で塩素含有量を低下させたスラリー状の前記焼却灰をフィルタプレスにより濾過して濾過澱物を取得する第2工程と、
廃熱を利用して床面を加熱するロードヒーティング乾燥設備をビニールハウス内に備えた乾燥室内の床面に、前記第2工程で取得した濾過澱物を薄く広げる第3工程と、
前記第3工程で薄く広げた前記濾過澱物を攪拌、搬送し、乾燥を促進する第4工程と、
を備えたことを特徴とする廃棄物焼却処理残渣の処理方法。」

2.刊行物に記載された発明
2-1 引用例1について
(1)引用例1の記載事項
本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-319769号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、都市ごみ、産業廃棄物などの焼却灰のセメント原料化に関し、さらに詳しくはこの様な焼却灰に含まれる塩素を除去して、セメント原料として有効利用する技術に関する。」(【0001】段落)
(イ)「実施例1?4および比較例1?3
・・塩素量0.74%の焼却灰微粉部分(5mm未満)に所定量の塩酸を加え、さらに10倍量の水を加えて10分間攪拌し、洗浄した後、濾過し、乾燥した。乾燥灰の残留塩素量とろ液中の重金属量とを測定した。その結果を表2に例えば「比較例1-A」或いは「実施例1-A」として示す。
また、同様の微粉部分(5mm未満)をさらに粒径0.5mm以下に粉砕したものについても、同様にして洗浄し、濾過し、乾燥した後、残留塩素量と炉液中の重金属量とを測定した。その結果を表2に例えば「比較例1-B」或いは「実施例1-B」として示す。」(【0034】【0035】段落)
(ウ)表2を参照すれば、塩素量0.74%の焼却灰微粉部分(5mm未満)(比較例1-A)及び該焼却灰微粉部分(5mm未満)を粒径0.5mm以下に粉砕したもの(比較例1-B)について、水で洗浄、濾過、乾燥することにより、それぞれ、55%及び57%の脱塩素率が達成されていることを確認することができる。
(2)引用例1に記載された発明
記載事項(ア)によれば、引用例1には、産業廃棄物の焼却灰に含まれる塩素を除去してセメント原料化する方法が記載されており、同(イ)(ウ)によれば、比較例1-A、1-Bでは、焼却灰微粉部分を水で洗浄し、濾過、乾燥することで、脱塩素率が55%及び57%の脱塩素処理を行っている。
したがって、引用例1の比較例1-A、1-Bには次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認める。
「産業廃棄物の焼却灰を水で洗浄し、濾過、乾燥することからなる、焼却灰から塩素を除去する方法」

2-2 引用例2について
(1)引用例2の記載事項
同じく、実願昭49-059977号(実開昭50-148160号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(カ)「断熱材から成る断熱基盤上に加熱装置を配設し、該加熱装置の上面を伝熱性のよい材料で伝熱層を層成して糞乾燥場を構成し、該乾燥場の表面を糞撹拌搬送装置を往復動自在に走行し得るようにした家畜用糞尿乾燥装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(キ)「本考案は太陽熱と補助加熱手段を併用した熱効率のよい家畜用糞尿乾燥装置に関する。」(第1頁10?11行)
(ク)「10は乾燥場5を覆う熱透過性の覆いである。」(第2頁17?18行)
(ケ)「本考案は以上の構成になっているので、含水率の高い家畜の糞を糞乾燥場5の一端に供給し、糞撹拌搬送装置7を他端に向つて走行させると糞は撹拌搬送羽根9により撹拌粉砕されながら搬送されるので、覆10内の暖められた空気に接触する面積が多くなり乾燥作用が促進される。」(第2頁19行?第3頁4行)
(2)引用例2に記載された発明
記載事項(カ)(キ)によれば、引用例2には、断熱基盤上に配設した加熱装置と太陽熱を利用して家畜の糞尿を乾燥することが記載されている。そして、同(カ)によれば、該加熱装置の上面の伝熱層が糞乾燥場の表面(床面)を構成しているので、該糞乾燥場は床面を加熱する設備を有しているとすることができ、また、同(ク)によれば、乾燥場は熱透過性の覆いで覆われているのでビニールハウス内に設置されたと同じ状況となり、太陽熱による乾燥作用を受ける。
また、同(ケ)によれば、該乾燥場は糞撹拌搬送装置を走行させることで、糞は撹拌粉砕されながら搬送され、これにより、短期間で糞尿を乾燥することができる。
したがって、引用例2には、次の発明(以下「引用例2発明」という。)が記載されている。
「家畜の糞尿を乾燥するにあたり、床面の加熱設備を備えてビニールハウス内に設置された糞乾燥場において、糞撹拌搬送装置により糞を撹拌粉砕しながら搬送して乾燥する乾燥処理方法。」

2-3 引用例3について
(1)引用例3の記載事項
同じく、実願昭52-2003号(実開昭53-97765号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(サ)「周囲を太陽熱の透過吸収作用に富んだ被覆カバーで被覆せしめることで形成した乾燥室内に仕切板を敷設して、該仕切板の上部に糞収容室を、又下部に熱風流通路を紆余曲折状に配設した熱風室を区画形成せしめると共に、前記糞収容室には多数の撹拌爪を備えた攪拌機を往復移動自在となるように設置したことを特徴とする家畜糞等の乾燥装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(シ)「要するに本考案は、・・・設置したので、家畜より排せつされた糞を晴天時にあっては強烈な太陽熱を使用して乾燥させることができるのは勿論のこと太陽熱が得られない梅雨時、降雨時或は夜間等にあっても起風された熱風を送風室6内の熱風流通路8に沿い流通せしめることで仕切板4を均等に加熱し攪拌機12の撹拌混合作用と相俟って迅速に乾燥させることができる。」(第5頁10?第6頁4行)
(2)引用例3に記載された発明
記載事項(サ)(シ)によれば、引用例3には、太陽熱と熱風室からの熱により家畜糞等を乾燥することが記載されている。具体的には、糞収容室と熱風室とからなる乾燥室は、太陽熱の透過吸収作用に富んだ被覆カバーで被覆されているので(同(サ))、ビニールハウス内に設置されたと同じ状況で太陽熱の乾燥作用を受け、また、仕切板の上部に糞収容室、下部に熱風室が形成されており(同(サ))、熱風により仕切板を加熱して乾燥しているので(同(シ))、糞収容室は床面加熱されている。
また、糞収容室には多数の撹拌爪を備えた攪拌機を往復移動自在となるように設置されているので(同(サ))、該攪拌機の攪拌混合作用により、家畜糞の乾燥が促進される。
したがって、引用例3には、次の発明(以下「引用例3発明」という。)が記載されている。
「家畜糞を乾燥するにあたり、床面の加熱設備を備えてビニールハウス内に設置された糞収容室において、攪拌機により糞を撹拌混合しながら乾燥する乾燥処理方法」

3.対比と判断
3-1 対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較する。
引用例1発明における「産業廃棄物の焼却灰を水で洗浄」は、これにより焼却灰中の塩素の洗浄除去を目的としているので、本願補正発明における「廃棄物焼却処理後の焼却灰を水浸出し、当該焼却灰の塩素含有量を低下させる第1工程」に相当し、この工程を経たものは「第1工程で塩素含有量を低下させたスラリー状の前記焼却灰」である。また、引用例1発明の「産業廃棄物の焼却灰」は、本願補正発明における「廃棄物焼却処理残渣」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用例1発明との一致点と相違点は、次のとおりとなる。
(1)一致点
廃棄物焼却処理後の焼却灰を水浸出し、当該焼却灰の塩素含有量を低下させる第1工程と、
前記第1工程で塩素含有量を低下させたスラリー状の前記焼却灰を濾過し、乾燥することからなる廃棄物焼却処理残渣の処理方法。
(2)相違点
(i) 本願補正発明の第2工程にあたる濾過が、本願補正発明ではフィルタプレスにより濾過して濾過澱物を取得しているのに対し、引用例1発明では、具体的な濾過手段を明示しない点。
(ii) 本願補正発明では、第3工程において「廃熱を利用して床面を加熱するロードヒーティング乾燥設備をビニールハウス内に備えた乾燥室内の床面に、前記第2工程で取得した濾過澱物を薄く広げ」、第4工程において「第3工程で薄く広げた前記濾過澱物を攪拌、搬送し、乾燥を促進する」こととしているが、引用例1発明では、単に「乾燥する」とするにとどまり、具体的な乾燥方法を明示しない点。

3-2 判断
3-2-1 相違点(i)について
塩素を含有する廃棄物に水を添加して廃棄物中の塩素を溶出させ、これを濾過し、乾燥してセメント原料に使用するにあたり、該濾過をフィルタープレスにより行うことは、本願出願前に周知の技術である(必要なら、特開平11-100243号公報の【0001】、【0023】段落、特開2007-105692号公報の【0001】、【0027】?【0030】段落を参照)。
そして、本願補正発明における濾過も塩素を含有する焼却灰を水浸出した後に行われるものなので、これをフィルタプレスにより行うことは単なる周知技術の採用にすぎない。このため、当業者が適宜採用することにすぎず、その効果も格別のこととすることはできない。

3-2-2 相違点(ii)について
(1)上記したように、引用例2及び引用例3発明は、次のとおりである。
引用例2発明:「家畜の糞尿を乾燥するにあたり、床面の加熱設備を備えてビニールハウス内に設置された糞乾燥場において、糞撹拌搬送装置により糞を撹拌粉砕しながら搬送して乾燥する乾燥処理方法。」
引用例3発明:「家畜糞を乾燥するにあたり、床面の加熱設備を備えてビニールハウス内に設置された糞収容室において、攪拌機により糞を撹拌混合しながら乾燥する乾燥処理方法」
両者は、家畜糞を乾燥するにあたり、床面加熱設備を備えてビニールハウス内に設置された乾燥室において、攪拌機により糞を撹拌混合しながら乾燥する乾燥処理方法という点で共通する。
そして、攪拌機により家畜糞は攪拌されつつ乾燥されるので、家畜糞は加熱された床面上を搬送されることになり、このため、該床面加熱設備はロードヒーティング乾燥設備に相当するといえる。また、床面加熱を廃熱を利用して行うことは通常行われることである(必要ならば、特開2001-104933号公報参照)。
したがって、「廃熱を利用して床面を加熱するロードヒーティング乾燥設備をビニールハウス内に備えた乾燥室内の床面に」、家畜糞等を薄く広げ(本願補正発明の第3工程に相当)、前記工程で薄く広げた家畜糞等を「攪拌、搬送し、乾燥を促進する」こと(同第4工程に相当)は、家畜糞の乾燥方法としては、本願出願前に周知の技術であったといえる。

(2)そこで、引用例2、3に記載された周知技術を、引用例1に適用することが容易であるかを検討する。
これに関し、引用例2、3に記載された家畜糞尿の乾燥処理技術は、水分含有物に対する一般的な乾燥処理技術として理解することができ、その場合には、これを濾過澱物の乾燥処理に適用してみようとすることは、被処理物の乾燥について検討する当業者であれば格別の困難なく想到しうるところである。
また、フィルタープレス等の濾過処理を受けた濾過澱物は、これを受けていない糞尿とは水分含有量が格段に少ないといえるが、請求人が回答書に添付して提出した「フィルタープレスにより濾過して得られるケーキの例を示す画像」からも明らかなとおり、乾燥室内の床面に薄く広げることは可能である。さらに、濾過澱物においても、床面加熱と太陽光加熱により乾燥を行うことができる点で、家畜糞尿と異なるところはないし、撹拌と搬送により乾燥が促進されることも、家畜糞尿の乾燥と異なるところはない。
このため、水分含有物に対する一般的な乾燥処理技術を濾過澱物の乾燥処理に適用するにあたり、特段の阻害要因があるとすることもできない。
したがって、引用例1発明においてフィルタープレスにより形成した濾過澱物を乾燥処理するにあたり、引用例2、3に記載された周知の乾燥処理技術を適用してみようとすることは、当業者が容易に想到するところであり、その効果も乾燥を促進するという以上の格別のものとすることはできない。

4.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成23年8月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成23年2月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「廃棄物焼却処理後の焼却灰及び又は、澱物を水浸出し、当該焼却灰の塩素含有量を低下させる第1工程と、
前記第1工程で塩素含有量を低下させたスラリー状の前記焼却灰を濾過して濾過澱物を取得する第2工程と、
廃熱を利用して床面を加熱するロードヒーティング乾燥設備をビニールハウス内に備えた乾燥室内の床面に、前記第2工程で取得した濾過澱物を薄く広げる第3工程と、
前記第3工程で薄く広げた前記濾過澱物を攪拌、搬送し、乾燥を促進する第4工程と、
を備えたことを特徴とする廃棄物焼却処理残渣の処理方法。」

2.進歩性の判断
本願発明は、上記第2[理由]で検討した本願補正発明の「スラリー状の前記焼却灰をフィルタプレスにより濾過」について、「フィルタプレスにより」との特定事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の[理由]3、3-2」に記載したとおり、引用例1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-24 
結審通知日 2012-09-25 
審決日 2012-10-10 
出願番号 特願2008-221838(P2008-221838)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B09B)
P 1 8・ 121- Z (B09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富永 泰規  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官
豊永 茂弘
斉藤 信人
発明の名称 廃棄物焼却処理残渣の処理方法  
代理人 片山 修平  

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