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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1266633 |
審判番号 | 不服2010-23903 |
総通号数 | 157 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-22 |
確定日 | 2012-11-21 |
事件の表示 | 特願2003-393540「通信装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日出願公開、特開2005-159605〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年11月25日の外国語書面出願であって、平成21年6月19日付けで拒絶理由が通知され、平成22年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月22日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。 第2 本願発明 特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年10月22日付けで手続補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「無線データ通信用の複合的な通信装置であって、 a)固有の識別子を有し、無線ネットワークを介してデータ通信可能な無線通信機器と、 b)ネットワークアクセス用のコンピュータと、 c)短距離通信規格で動作し、データ通信を確立するために、前記無線通信機器とコンピュータとを接続するトランシーバアッセンブリとを備え、 d)前記トランシーバアッセンブリは、前記コンピュータに接続された第1のトランシーバと、前記無線通信機器に接続された少なくとも第2のトランシーバと、所定のパラメータに反応する自動スイッチング機能とを有し、 e)前記自動スイッチング機能は、前記所定のパラメータの確立に基づいて、データ通信を、前記コンピュータによりネットワークを介して行うか、または無線ネットワークを介して行うかを決定するようになっており、 f)前記パラメータの少なくとも1つは、所定の近接範囲を有する通信装置。」 第3 引用発明 原審の拒絶理由に引用された特開2003-18642号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、無線移動通信に関し、特に無線データ通信端末が屋内にあれば屋内無線接続モジュールを介して有線インターネット網へ接続されるようにし、屋外にあれば無線インターネット網へ接続されるようにして使用者の位置に従って接続切替が行われるようにする最適のインターネット網接続及びローミングシステム及び方法に関する。」(3頁3?4欄) ロ.「【0047】以下、図3を参照して本発明の実施形態による屋内/屋外に移動する利用者のための最適のインターネット網接続及びローミングシステムを説明する。図3は、本発明の実施形態による屋内/屋外に移動する利用者のための最適の無線インターネット網接続及びローミングシステムのブロック構成図である。図3に示すように、本発明のシステムは、図1において説明した通り、アクセスポイント22とアンテナ32とルータ40とを有する屋外無線LAN網またはBTS90とBSC91とルータ40とを有する無線パケット網と、屋内ゲートウェイ100を有する屋内網と、位置登録器80と、多数のインターネットサーバーを有するインターネット50と、VoIPゲートウェイ60とPSTN70とからなる外部網とを含んでいる。前記屋外無線LAN網と無線パケット網とは、屋外無線インターネット網である。 【0048】前記において、データ通信端末10はPDAまたはノートブック型PCなどであって、屋内無線接続モジュールAと無線LANカードB(または無線パケット接続モジュール)を組み込んでおり、一つ以上の屋内システムID情報を格納している。そして、屋内ゲートウェイ100は屋内無線接続モジュールCを内蔵しており、自分の固有システムID、即ち屋内システムID情報が割り当てられている。 【0049】従って、データ通信端末10は屋外無線LAN網への接続時、無線LANカードBまたは無線パケット接続モジュール(図示せず)を利用するようになり、屋内ゲートウェイ100と無線通信を行う時には屋内無線接続モジュールAを利用するようになる。 【0050】ここで、屋内無線接続モジュールA、Cはブルートゥースモジュールまたは無線LAN接続モジュールまたは無線パケット接続モジュールの内の一つである。屋内ゲートウェイ100としては、HGと統合接続装備(IAD:integrated access device:以下‘IAD’と称する)などがあるが、HGは主に宅内に設置されて使用され、IADはビル、建物内に設置されて使用される。 【0051】このような屋内ゲートウェイ100は、データ通信端末10と屋内無線接続モジュールA、Cに連結されてホームネットワークまたはSOHO網とインターネットまたはPSTNに利用者が接続することができるようにし、屋内システムID情報を屋内無線接続モジュールCを介して一定時間の間隔に送信し、屋内に位置した無線インターネット端末10が屋内システムID情報を分かるようにする。 【0052】位置登録器80は、モバイルIPプロトコルに基づいて動作して移動通信加入者の現在位置を記録するホームエージェント(HA)または訪問エージェント(FA)である。 【0053】位置登録器80に格納される位置情報は、データ通信端末10が屋外にあれば位置領域に対する情報であり、屋内にあれば屋内システムID情報である。以下、図4を参照して図3に示された本発明のシステムを利用して無線インターネット電話通話中、屋外から屋内に利用者が移動する場合における位置移動時の無線インターネット網の接続切替方法を説明する。」(7頁12欄?8頁13欄) ハ.「【0099】図7に示すように、PDA10が初期化されて電源が供給されると(S60)、PDA10は屋内システムID情報を受信するようになり(S61)、それにより屋外無線LANを利用して位置登録器80から認証を受けて位置登録する(S62)。 【0100】PDA10は、位置登録の認証を受ければブルートゥースモードを設定し(S63)、ブルートゥースモジュールを介して屋内ゲートウェイ100と連結される(S64)。 【0101】以後に、利用者がデータ通信をするようになれば、PDA10から伝送されるデータは、屋内ゲートウェイ100を介してインターネット50に接続され、インターネットから提供されるサービスは、屋内ゲートウェイ100で受信を受けてブルートゥースモジュールC,Aを介してPDA10に伝達される(S65、S66)。 【0102】従って、利用者は、インターネットから提供される情報を利用することができるようになる。次に、利用者が、インターネット50から情報の提供を受ける最中、または、そうでない状態において屋内から屋外に移動すれば、PDA10は屋内システムID情報を受信することができなくなり、それにより現在の位置を屋外無線インターネット網を介して位置登録器80から承認を受けて登録する(S67、S68、S69)。 【0103】次いで、PDA10は、ブルートゥースモードを屋外通信モードに切り替えて設定し、屋外無線LANを利用してインターネット50へ接続した後、インターネットデータサービスの提供を受ける(S70、S71)。 【0104】前記のように、屋内とは、建物内、ビル内または宅内などのある建物の内を意味することができ、特に、データ通信端末10に登録された屋内システムIDと同一の屋内システムID情報を受信することができる半径以内を意味することができる。即ち、データ通信端末10により屋内システムID情報を受信することができない地域を屋外といい、屋内システムID情報を受信することができる地域を屋内ということができる。」(10頁18欄?11頁19欄) 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ロ.の【0047】、【0048】の記載、及び図3によれば、インターネット接続及びローミングシステムは、データ通信端末(PDA)(10)と、屋内ゲートウェイ(100)とを備えている。また、データ通信端末(PDA)(10)は、屋外無線LANを介してデータ通信可能である。 また、上記摘記事項ロ.の【0051】における「屋内ゲートウェイ100は、データ通信端末10と屋内無線接続モジュールA、Cに連結されてホームネットワークまたはSOHO網とインターネットまたはPSTNに利用者が接続することができるようにし」との記載、及び図3によれば、屋内ゲートウェイ(100)は、ネットワークアクセスが可能である。 また、上記摘記事項ロ.の【0048】における「データ通信端末10はPDAまたはノートブック型PCなどであって、屋内無線接続モジュールAと無線LANカードB(または無線パケット接続モジュール)を組み込んでおり、・・・屋内ゲートウェイ100は屋内無線接続モジュールCを内蔵しており」との記載、及び図3によれば、データ通信端末(10)は、屋内無線接続モジュール(A)を組み込み、屋内ゲートウェイ(100)は、屋内無線接続モジュール(C)を内蔵している。ここで、屋内無線接続モジュール(A)及び(C)は、データ通信端末(10)及び屋内ゲートウェイ(100)にそれぞれ接続されていることは自明である。 また、上記摘記事項ロ.の【0050】における「屋内無線接続モジュールA、Cはブルートゥースモジュールまたは無線LAN接続モジュールまたは無線パケット接続モジュールの内の一つである。」との記載、及び図3によれば、前述の屋内無線接続モジュール(A)及び屋内無線接続モジュール(C)は、ブルートゥース規格で動作するものである。ここで、これらを屋内無線接続モジュールアッセンブリと称することは任意である。 また、上記摘記事項ハ.の【0100】における「PDA10は、位置登録の認証を受ければブルートゥースモードを設定し(S63)、ブルートゥースモジュールを介して屋内ゲートウェイ100と連結される(S64)。」との記載、及び図7によれば、ブルートゥースモジュール、すなわち、屋内無線接続モジュールアッセンブリは、データ通信を確立するためのものである。 また、上記摘記事項ハ.の【0102】の記載、ハ.の【0103】における「PDA10は、ブルートゥースモードを屋外通信モードに切り替えて設定し、屋外無線LANを利用してインターネット50へ接続した後、インターネットデータサービスの提供を受ける(S70、S71)。」との記載、及び図7によれば、データ通信端末(PDA)(10)は、屋内から屋外に移動すれば、屋外通信モードに切り替えており、これを切り替え機能ということができる。ここで、上記摘記事項ハ.の【0104】における「屋内とは、建物内、ビル内または宅内などのある建物の内を意味することができ、特に、データ通信端末10に登録された屋内システムIDと同一の屋内システムID情報を受信することができる半径以内を意味することができる。」との記載によれば、屋内は、屋内システムIDを受信することのできる半径以内である。そうすると、前述の切り替え機能は、受信することのできる半径に反応して切り替えているということができる。 また、上記摘記事項ハ.の【0102】、【0103】の記載、図3及び図7によれば、データ通信端末(PDA)(10)が、屋内から屋外に移動する場合、屋内システムIDを受信したかの判断(ステップS68)をして、屋外通信モードに切り替え(ステップS70)ている。すなわち、前述の切り替え機能は、受信することのできる半径の判断に基づいて、データ通信を、屋内ゲートウェイ(100)によりネットワークを介して行うか、または、屋外無線LANを介して行うか決定していることが読み取れる。 また、前述の受信することのできる半径は、近接範囲であることは技術常識である。 したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「インターネット接続及びローミングシステムであって、 (α)屋外無線LANを介してデータ通信可能なデータ通信端末(10)と、 (β)ネットワークアクセス用の屋内ゲートウェイ(100)と、 (γ)ブルートゥース規格で動作し、データ通信を確立するために、前記データ通信端末(10)と屋内ゲートウェイ(100)を接続する屋内無線接続モジュールアッセンブリとを備え、 (δ)前記屋内無線接続モジュールアッセンブリは、前記屋内ゲートウェイ(100)に接続された屋内無線接続モジュール(C)と、前記データ通信端末(10)に接続された屋内無線接続モジュール(A)とを有し、前記データ通信端末(10)は、受信することのできる半径に反応する切り替え機能を有し、 (ε)前記切り替え機能は、前記受信することのできる半径の判断に基づいて、データ通信を、前記屋内ゲートウェイ(100)によりネットワークを介して行うか、または、屋外無線LANを介して行うか決定するようになっており、 (ζ)前記受信することのできる半径は、近接範囲であるインターネット接続及びローミングシステム。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「屋外無線LAN」は、「無線ネットワーク」に含まれる。 b.引用発明の「データ通信端末(10)」、「ブルートゥース規格」、「屋内無線接続モジュールアッセンブリ」、「屋内無線接続モジュール(C)」、及び「屋内無線接続モジュール(A)」は、本願発明の「無線通信機器」、「短距離通信規格」、「トランシーバアッセンブリ」、「第1のトランシーバ」、及び「第2のトランシーバ」にそれぞれ相当する。 c.引用発明の「屋内ゲートウェイ(100)」と、本願発明の「コンピュータ」とは、いずれも、「特定の中継装置」という点で一致する。 d.引用発明の「受信することのできる半径」と、本願発明の「所定のパラメータ」とは、いずれも、「特定の要素」という点で一致する。 e.引用発明の「切り替え機能」は、自動的に切り替える機能であるから、「自動スイッチング機能」ということができる。 f.引用発明の「判断に基づいて」と、本願発明の「確立に基づいて」とは、いずれも、「処理に基づいて」という点で一致する。 g.引用発明の「インターネット接続及びローミングシステム。」は、無線データを通信する際に、屋外無線LAN及び屋内無線接続モジュール(A)、(C)を複合的に利用するから、「無線データ通信用の複合的な通信装置」の一種である。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「無線データ通信用の複合的な通信装置であって、 a)無線ネットワークを介してデータ通信可能な無線通信機器と、 b)ネットワークアクセス用の特定の中継装置と、 c)短距離通信規格で動作し、データ通信を確立するために、前記無線通信機器と特定の中継装置とを接続するトランシーバアッセンブリとを備え、 d)前記トランシーバアッセンブリは、前記特定の中継装置に接続された第1のトランシーバと、前記無線通信機器に接続された少なくとも第2のトランシーバとを有し、 e)自動スイッチング機能は、特定の要素の処理に基づいて、データ通信を、前記特定の中継装置によりネットワークを介して行うか、または無線ネットワークを介して行うかを決定するようになっており、 f)前記特定の要素の少なくとも1つは、所定の近接範囲を有する通信装置。」 <相違点1> 「a)無線ネットワークを介してデータ通信可能な無線通信機器」に関し、 本願発明は、「固有の識別子を有す」るのに対し、引用発明は、「固有の識別子を有す」るか不明な点。 <相違点2> 「特定の中継装置」に関し、 本願発明は、「コンピュータ」であるのに対し、引用発明は、「屋内ゲートウェイ(100)」である点。 <相違点3> 「d)前記トランシーバアッセンブリ」の態様に関し、 本願発明は、「所定のパラメータに反応する自動スイッチング機能を有す」るのに対し、引用発明は、「前記データ通信端末(10)」が、「受信することのできる半径に反応する切り替え機能を有す」る点。 <相違点4> 「e)自動スイッチング機能」における「特定の要素の処理に基づいて」に関し、 本願発明は、「所定のパラメータの確立に基づいて」いるのに対し、引用発明は、「受信することのできる半径の判断に基づいて」いる点。 第5 判断 そこで、まず、上記相違点1について検討する。 無線通信において、無線ネットワークを介してデータ通信する際に無線通信機器が、固有の識別子を用いることは周知であるから、引用発明に周知技術を適用して、本願発明のように「固有の識別子を有す」ることは当業者が容易になし得ることである。 次に、上記相違点2について検討する。 無線通信において、無線通信機器を中継するネットワークアクセス用のコンピュータを用いることは、例えば、特開2003-209637号公報(段落39、図1)、特開2003-47064号公報(段落16、図1)に開示されているように周知であるから、引用発明に周知技術を適用して、引用発明の「屋内ゲートウェイ(100)」に換え、本願発明のように「コンピュータ」とすることは当業者が容易になし得ることである。 次に、上記相違点3について検討する。 引用発明は、「データ通信端末(10)」が、「受信することのできる半径に反応する切り替え機能を有す」るところ、受信することができる半径は、長さに係る変数であり、所定のパラメータということができるから、「受信することのできる半径に反応する切り替え機能」は、本願発明のように「所定のパラメータに反応する自動スイッチング機能」と称することができることは当然である。そして、引用発明の「屋内無線接続モジュールアッセンブリ」(トランシーバアッセンブリ)は、通信機能における主体であり、また、機能を統合することは常套手段であるから、本願発明のように「トランシーバアッセンブリ」が「所定のパラメータに反応する自動スイッチング機能を有す」ることは当業者が適宜なし得ることである。 次に、上記相違点4について検討する。 引用発明は、「受信することのできる半径の判断に基づいて」いるところ、上記相違点3についての検討を踏まえると、「受信することのできる半径」は、「所定のパラメータ」といえ、また、「判断に基づいて」は、「確立に基づいて」といえるから、本願発明のように「所定のパラメータの確立に基づいて」ということができることは当然である。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-21 |
結審通知日 | 2012-06-26 |
審決日 | 2012-07-10 |
出願番号 | 特願2003-393540(P2003-393540) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中木 努 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 神谷 健一 |
発明の名称 | 通信装置及び方法 |
代理人 | 竹沢 荘一 |
代理人 | 中馬 典嗣 |
代理人 | 森 浩之 |