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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1266661
審判番号 不服2012-3143  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-20 
確定日 2012-11-21 
事件の表示 特願2004-306716「流体制御バルブ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-118593〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年10月21日の出願であって、平成23年11月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けの手続補正書による手続補正がなされたものである。


2.平成24年2月20日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、
「流体の入口および出口を有し、前記入口には弁座を有するバルブ取り付けブロックと、先端に弁体を備えたシリンダーロッドを有し、前記バルブ取り付けブロックに摺動自在に装着される弁体駆動ピストンとからなり、弁体駆動ピストンはシリンダーロッドの弁体を弁座に接触させ、前記入口を閉じて流体の流れを止め、かつシリンダーロッドの弁体を弁座から離して入口を開き、流体を入口から出口に流すように摺動自在に前記バルブ取り付けブロックに装着される流体制御バルブにおいて、前記弁体駆動ピストンとバルブ取り付けブロックの摺動部分をダイヤフラムで覆ってバルブ取り付けブロックの流体の入口から出口に流れる流体を摺動部分に接触させないようにし、摺動部分に潤滑材の使用を可能にして寿命を大幅に延長し、かつ前記流体は食品であって、食品への異物の混入を防止することを特徴とする流体制御バルブ。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「弁体駆動ピストンとバルブ取り付けブロックの摺動部分をダイヤフラムで覆ってバルブ取り付けブロックの流体の入口から出口に流れる流体を摺動部分に接触させないようにする」ことについて、「摺動部分に潤滑材の使用を可能にして寿命を大幅に延長し、かつ流体は食品であって、食品への異物の混入を防止する」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平11-270705号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食品ラインや薬液ラインに好適なバルブに関する。」

・「【0002】
【従来の技術】図9は従来のディスクバルブの要部断面図であり、バルブ100は弁箱101と弁座102と弁体103と弁棒104とからなり、弁棒104で弁体103を上げ下げする形式の弁であり、弁体103がディスク(円盤)であることから、一般にディスクバルブと呼ぶ。
【0003】図10は図9の要部拡大図であり、弁体103はポリ四フッ化エチレン樹脂製ディスクであり、これを凹部105の付いたステンレス製リテーナ106に納め、段付き座金107を介してナット108で弁棒104に固定した構造のものである。
【0004】食品ラインでは、工程切換えなどの際に蒸気でラインを洗浄する。この洗浄は1日に数回実施する。食品の温度は0?25℃であり、蒸気は約120℃である。ポリ四フッ化エチレンの線膨張係数は10×10^(-5)(1/℃)、ステンレスのそれは1.8×10^(-5)(1/℃)であり、両者の線膨張係数に5倍強の開きがある。そこで、120℃における弁体103の外径を基準に凹部105の径を決定する必要がある。そうしないと、弁体103が拘束されて破壊するからである。」

・「【0005】
【発明が解決しようとする課題】すると、通常の0?25℃では、ポリ四フッ化エチレン製弁体103が凹部105より大きく収縮するため、図に示すとおりδ1,δ1,δ2,δ2の隙間が発生する。これらの隙間に食品(液体)が詰り、蒸気洗浄でも除去できないことがある。液体が隙間に長時間溜まると、食品の種類によっては雑菌が繁殖し、食品衛生上問題となる。そこで、本発明の目的は、蒸気洗浄等を実施することで、温度範囲が広いバルブにおいて、温度変化しても隙間が発生しない構造のバルブを提供することにある。」

・「【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1は、弁座を備えた弁箱と、樹脂製弁体と、この弁体を支えるステンレス製弁棒とからなり、弁棒の一端に弁体受け部を備え、この弁体受け部に弁体を載せ、この弁体をステンレス製弁体押し片で押圧する構造のバルブであって、弁体受け部と弁体の接触面並びに弁体と弁体押し片の接触面を、弁棒の軸に対して30?60°の範囲で傾斜させたところの円錐面としたことを特徴とするバルブである。
【0007】弁体受け部と弁体の接触面並びに弁体と弁体押し片の接触面を傾斜させたので、熱膨張、収縮を接触面での相対滑りにより、吸収させることができ、接触面に隙間が発生する心配はない。隙間が無いので、液溜まりを未然に防ぐことができる。」

・「【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図1は本発明に係るバルブ(第1実施例)の分解図であり、バルブ1は、弁入口2を備えた第1ケース3と、弁座4及び弁出口5を備えた第2ケース6と、弁体受け部7を備えたステンレス製弁棒8と、樹脂製弁体10と、ステンレス製弁体押し片12と、ダイヤフラム14と、中間ブロック16と、シリンダユニット20(中空ピストンロッド21、ピストン22、シリンダ23、蓋24及び蓋締めボルト25からなる。)と、皿ばね26,26と、袋ナット28と、シリンダ23へ第1・第2ケース3,6を締め付けるロングボルト29とからなる。31はパッキン、32はOリングである。ロングボルトは長いボルトを意味する。樹脂製弁体10は、ポリ四フッ化エチレン樹脂が好適であるが、その他の樹脂であってもよい。
【0011】図2は本発明に係るバルブ(第1実施例)の組立図であり、第1ケース3に第2ケース6を組合わせることで弁箱35を構成し、弁棒8の下端の弁体受け部7に弁体10を載せ、上から弁体押し片12、ダイヤフラム14、中間ブロック16を嵌め、この弁棒8にシリンダユニット20のピストンロッド21を被せ、ピストンロッド21から突出た弁棒8の上端に皿ばね26,26を介して袋ナット28を締付けたものである。これで、弁体10は弁体受け部7と弁体押し片12とで挟まれたことになる。
【0012】図は弁閉状態を示すが、シリンダ23に開けた第1ポート36からエアを吹込めば、ピストン22並びにピストンロッド21が上昇し、結果として、弁座4から弁体10が離れて、弁開状態になる。バルブを閉じるには第2ポート37からエアを吹込めばよい。ここで、注目すべき点は、弁入口2を弁座4より上位に設け、弁出口5を弁座4より下位に設けたことと、弁座4の周囲4aや弁体押え片12のくびれ部12aが斜面になっていることである。傾斜角は3°以上である。従って、液が常に一方向に流れ、くびれ部12aなどに液が溜まる心配はない。
【0013】図3は本発明に係る弁体と弁棒の取合いを示す図であり、弁体受け部7と弁体10の接触面41並びに弁体10と弁体押し片12の接触面42を、弁棒8の軸43に対して角度θ1又はθ2で傾斜させたことを特徴とする。この角度θ1,θ2は30?60°の範囲、好ましくは45°とする。その理由を次に述べる。
【0014】挟まれている樹脂製弁体10の線膨張係数は約10×10^(-5)(1/℃)であり、弁体受け部7及び弁体押し片12の線膨張係数は約1.8×10^(-5)(1/℃)である。蒸気殺菌の際に120℃、通常は0?25℃の環境下にあるため、温度変化により弁体受け部7、弁体10、弁体押え片12は各々膨張若しくは収縮する。一方、2枚の皿ばね26,26のスプリング作用で、弁棒8は白抜き矢印の様に弁体押え片12に対して相対的に常に上昇しようとする。この結果、弁体10は上下から適度に押されることになる。
【0015】接触面41,42が角度θ1,θ2だけ傾斜しているため、径方向の相対変位も軸方向の相対変位もともに矢印,の様な滑りに換る。このときに弁体10が軸方向に常に圧縮されているため、接触面41,42に隙間が発生することはない。従って、弁体10廻りに液が溜まる心配はない。」

そして、これら記載事項及び図示内容から、次の事項を認めることができる。
・図2には、弁入口2及び弁出口5を有し、前記弁出口5には弁座4を有する弁箱35、シリンダ23及び蓋24からなるもの(以下、このものを「構造体」という。)が示されている。

・【0011】及び図2の記載によれば、弁棒8の上端に皿ばね26,26を介して袋ナット28を締め付けることによって、弁棒8の弁体受け部7とで弁体10を挟む弁体押し片12が、ピストントンロッド21の延長上に位置してピストン22と一体にされていることから、ピストン22が、先端に弁体10を備えた弁体押し片12を有する態様が示されている。

・【0012】及び図2の記載によれば、バルブの弁開状態又は弁閉状態への移行に際し、シリンダ23に設けた第1ポート36又は第2ポート37からのエアの吹き込みにより、弁箱35、シリンダ23及び蓋24からなる構造体に対して、ピストン22は相対的に移動し、ピストン22がシリンダ23の内面に対して摺動すると共に、ピストン22のピストンロッド21がシリンダ23及び蓋24に設けられた各穴に対して摺動することは明らかであるから、ピストン22が構造体に摺動自在に装着される態様が示されている。

・【0010】?【0011】、図1及び図2の記載によれば、弁体押し片12とOリング32を収容する中間ブロック16とで、ダイヤフラム14の中央部分が挟まれ、また、弁箱35の第1ケース3とシリンダ23とで、ダイヤフラム14の外周部分が挟まれたことによって、ダイヤフラム14は弁箱35側の液体が流れる流路とシリンダ23側の空間とに仕切るものとなっているから、ピストン22と構造体の摺動部分をダイヤフラム14で覆って構造体の液体の弁入口2から弁出口5に流れる液体を摺動部分に接触させないようにする態様が示されている。
そして、【0001】及び【0005】の記載によれば、液体が食品であることが示されており、この態様は、液体である食品を異物の発生箇所であるピストン22と構造体の摺動部分に接触させないようにすることから、食品への異物の混入を防止するものといえる。

よって、引用例1には、その記載事項及び図示内容を総合すると、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「液体の弁入口2および弁出口5を有し、前記弁出口5には弁座4を有する弁箱35、シリンダ23及び蓋24からなる構造体と、先端に弁体10を備えた弁体押し片12を有し、前記構造体に摺動自在に装着されるピストン22とからなり、ピストン22は弁体押し片12の弁体10を弁座4に接触させ、前記弁出口5を閉じて液体の流れを止め、かつ弁体押し片12の弁体10を弁座4から離して弁出口5を開き、液体を弁入口2から弁出口5に流すように摺動自在に前記構造体に装着されるバルブ1において、前記ピストン22と構造体の摺動部分をダイヤフラム14で覆って構造体の液体の弁入口2から弁出口5に流れる液体を摺動部分に接触させないようにし、前記液体は食品であって、食品への異物の混入を防止するバルブ1。」

(2-2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平11-153235号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0031】主弁体141 の上側には環状で水平の停止面152 があり、その上方対向面には停止面153 があり、停止面152 と停止面153 とにより、主弁体141 の上方位置のストッパーが構成されている。主弁体141 の弁中央孔156 に軸支用のブッシュ150が装着され、主シャフト142 内部の挿通孔154 及びブッシュ150 内に副シャフト128 が挿通されている。挿通孔154 の下端部に環状溝が形成され、この環状溝に装着されたOリング190 によって副シャフト128 の外周と主シャフト142 の挿通孔154 の内周との間が密封されている。 ・・・
【0032】中央孔144 の下端部の大径部には軸支用のブッシュ149 が装着され、中央孔144 の上端部及び中間部には環状溝がそれぞれ形成され、これらの環状溝にOリング192 ・191 が装着されている。中央孔144 の上端部及び中間部の内周面と主シャフト142 の外周面との間が密封されており、 ・・・
【0033】主シリンダ部136 には主ピストン169 が摺動自在に嵌合され、主ピストン169の外周面に形成された環状溝にシール部材193 が装着され、シール部材193 によって主ピストン169 の外周面と主シリンダ部136 との間が密封されている。 ・・・
【0034】主ピストン169 の上部に円筒部173 が形成され、円筒部173 の内面に副シリンダ部174 が形成され、副シリンダ部174 は中央隔壁部170 の上面に延びている。主ピストン169 の上面で円筒部173 の外周側に環状係止部175 が形成され、環状係止部175 と蓋体116 の下面との間にシールスプリング176 が装着されている。シールスプリング176 の弾発力によって主ピストン169 、主シャフト142 、主弁体141 及びダイヤフラムシール151 が下方に向けて付勢され、ダイヤフラムシール151 の内周端部等を主弁座127 に押圧しようとしている。副シリンダ部174 に中空の副ピストン178 が摺動自在に嵌合され、副ピストン178 の外周面に形成された環状溝にシール部材194 が装着され、シール部材194 によって副ピストン178 の外周面と副シリンダ部174 との間が密封されている。 ・・・」

・「【0039】次に本発明の実施の形態の作用について説明する。図3,図4には、開閉弁108 の左半分は閉位置に位置し、右半分は開位置に位置している状態が示されている。流量調整弁109 は副弁体129 の下端面が副弁座123 に当接した流量最少の位置(絞り位置)にあり、不図示のガス容器がインポート118 に連通され、アウトポート119 が不図示の真空チャンバーに連通されているとする。不活性ガスはガス容器からインポート118 、第1イン通路131 を通って第2イン通路132 に流入するが、開閉弁108 が閉位置にあるときは、それ以上は進めない。なお、ダイヤフラムシール151 及び副シャフトベローズ148 の存在により、不活性ガスは、ボデー113 の内面と主弁体141 ・副弁体129 及びダイヤフラムシール151 ・副シャフトベローズ148 等の金属表面又は固定用のOリングシール160 、主弁座127 、副弁座123 関係の表面にのみ接触し、その他のグリース等の潤滑剤を必要とする摺動用Oリング部分に接触しない。従って、汚染源の要因となるOリングとの接触面積なしとなり、不活性ガスの汚染が防止され、不活性ガスの純度を維持することができる。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを、その機能・作用からみて比較する。
・後者の「液体」は前者の「流体」に相当し、以下同様に、「弁入口2」は「入口」に、「弁出口5」は「出口」に、「弁座4」は「弁座」に、「弁箱35、シリンダ23及び蓋24からなる構造体」は「バルブ取り付けブロック」に、「弁体10」は「弁体」に、「弁体押し片12」は「シリンダーロッド」に、「ピストン22」は「弁体駆動ピストン」に相当する。

・後者の「弁出口5には弁座4を有する弁箱35、シリンダ23及び蓋24からなる構造体」と、前者の「入口には弁座を有するバルブ取り付けブロック」とは、「入口および出口の一方には弁座を有するバルブ取り付けブロック」との概念で共通する。

・後者の「弁出口5を閉じて液体の流れを止め」る態様と、前者の「入口を閉じて流体の流れを止め」る態様とは、「入口および出口の一方を閉じて流体の流れを止め」るとの概念で共通する。
また、後者の「弁出口5を開き、液体を弁入口2から弁出口5に流す」との態様と、前者の「入口を開き、流体を入口から出口に流す」との態様とは、「入口および出口の一方を開き、流体を入口から出口に流す」との概念で共通する。

・後者の「バルブ1」は、弁出口5の開閉により液体の流れが制御されることから、前者の「流体制御バルブ」に相当する。

したがって、両者は、
「流体の入口および出口を有し、前記入口および前記出口の一方には弁座を有するバルブ取り付けブロックと、先端に弁体を備えたシリンダーロッドを有し、前記バルブ取り付けブロックに摺動自在に装着される弁体駆動ピストンとからなり、弁体駆動ピストンはシリンダーロッドの弁体を弁座に接触させ、前記入口および前記出口の一方を閉じて流体の流れを止め、かつシリンダーロッドの弁体を弁座から離して入口および出口の一方を開き、流体を入口から出口に流すように摺動自在に前記バルブ取り付けブロックに装着される流体制御バルブにおいて、前記弁体駆動ピストンとバルブ取り付けブロックの摺動部分をダイヤフラムで覆ってバルブ取り付けブロックの流体の入口から出口に流れる流体を摺動部分に接触させないようにし、前記流体は食品であって、食品への異物の混入を防止する流体制御バルブ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、流体の入口に弁座を有し、入口を閉じて流体の流れを止め、かつ入口を開き、流体を入口から出口に流すようにされているのに対して、引用発明では、流体(液体)の出口(弁出口5)に弁座(弁座4)を有し、出口を閉じて流体の流れを止め、かつ出口を開き、流体を入口から出口に流すようにされている点。

[相違点2]
本願補正発明は、摺動部分に潤滑材の使用を可能にして寿命を大幅に延長するものであるのに対して、引用発明ではそのような特定はされていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
本願の明細書中には、流体の入口に弁座を有し、入口を閉じて流体の流れを止め、かつ入口を開き、流体を入口から出口に流すようにされていることについて、その技術的意義を説明した記載は見当たらない。
そして、流体制御バルブにおいて、流体の入口に弁座を有することは本願の出願前に慣用技術(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-214547号公報(特に、【0002】?【0006】、【0014】、図1、図6及び図7)、特開昭64-6588号公報(特に、2頁左上欄6?11行及び図面)及び特開2002-310316号公報(特に、【0002】?【0005】、図15及び図16)を参照。)であるから、これを同じ流体制御バルブである引用発明に適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

[相違点2について]
引用例2には、ダイヤフラムシール151 及び副シャフトベローズ148 の存在により、インポート118 からアウトポート119 に流れる不活性ガスが、グリース等の潤滑剤を必要とする摺動用Oリング部分(例えば、Oリング190 によって副シャフト128 の外周と主シャフト142 の挿通孔154 の内周との間が密封される部分、Oリング192 ・191 によって中央孔144 の上端部及び中間部の内周面と主シャフト142 の外周面との間が密封される部分、シール部材193 によって主ピストン169 の外周面と主シリンダ部136 との間が密封される部分、及び、シール部材194 によって副ピストン178 の外周面と副シリンダ部174 との間が密封される部分)に接触しないようにすることで、汚染源の要因となるOリングとの接触面積なしとなり、不活性ガスの汚染が防止されることが記載されている。
すなわち、引用例2には、ダイヤフラム等によって、入口から出口に流れる流体を摺動部分に接触させないようにし、流体への異物の混入を防止するようにした流体制御バルブにおいて、上記摺動部分に潤滑材を使用したものが示されているものと認められる。
そして、引用発明において、弁体駆動ピストン(ピストン22)とバルブ取り付けブロック(弁箱35、シリンダ23及び蓋24からなる構造体)の摺動部分が長寿命化を図るために摩耗対策を要することは内在する課題であるから、上記引用例2に記載の事項に基づき、摺動部分に潤滑材を使用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果は、引用発明、引用例2に記載の事項及び上記慣用技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載の事項及び上記慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)補正却下の決定後の本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年5月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「流体の入口および出口を有し、前記入口には弁座を有するバルブ取り付けブロックと、先端に弁体を備えたシリンダーロッドを有し、前記バルブ取り付けブロックに摺動自在に装着される弁体駆動ピストンとからなり、弁体駆動ピストンはシリンダーロッドの弁体を弁座に接触させ、前記入口を閉じて流体の流れを止め、かつシリンダーロッドの弁体を弁座から離して入口を開き、流体を入り口から出口に流すように摺動自在に前記バルブ取り付けブロックに装着される流体制御バルブにおいて、前記弁体駆動ピストンとバルブ取り付けブロックの摺動部分をダイヤフラムで覆ってバルブ取り付けブロックの流体の入口から出口に流れる流体を摺動部分に接触させないようにすることを特徴とする流体制御バルブ。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「2.[理由](1)」で検討した本願補正発明から「弁体駆動ピストンとバルブ取り付けブロックの摺動部分をダイヤフラムで覆ってバルブ取り付けブロックの流体の入口から出口に流れる流体を摺動部分に接触させないように」することについて、「摺動部分に潤滑材の使用を可能にして寿命を大幅に延長し、かつ流体は食品であって、食品への異物の混入を防止する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.[理由](3)」で抽出した相違点1のみとなるため、前記「2.[理由](4)」での検討を踏まえれば、本願発明は、引用発明及び上記慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-10 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-02 
出願番号 特願2004-306716(P2004-306716)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16K)
P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 一  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 川口 真一
槙原 進
発明の名称 流体制御バルブ  
代理人 染谷 仁  

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