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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25B |
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管理番号 | 1266669 |
審判番号 | 不服2010-4262 |
総通号数 | 157 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-26 |
確定日 | 2012-12-11 |
事件の表示 | 特願2004-174395「電解装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月22日出願公開、特開2005-350745〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年 6月11日の出願であって、平成21年 8月 6日付けで拒絶理由通知がなされ、平成21年10月16日(受付日)付けで特許請求の範囲及び明細書について手続補正がなされ、平成21年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年 2月26日(受付日)付けで拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、特許請求の範囲及び明細書について手続補正がなされ、平成23年 6月28日付けで当審によって拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、平成23年 8月 5日(受付日)付けで、意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成23年 8月 5日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「無隔膜式の電解装置において、電極の電流密度を2mA/mm^(2)以上とし、被処理水を流速は、0.3mm^(3)/mA・sec(単位電流流速)以上で流通させるようにした、電解装置」 3.引用刊行物記載の発明 (1)引用刊行物 当審拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭52-149269号公報(以下、「引用例」という。)には、「次亜塩素酸塩生成用電解槽」(発明の名称)が記載され、図面とともに以下の記載がある。 (引ア)「本発明は、海水または塩水を電気分解して次亜塩素酸塩を生成する電解槽に関し、さらに詳しくは、電流効率が向上するように電極を改良した次亜塩素酸塩生成用電解槽に関するものである。」(2頁左上欄2?6行) (引イ)「以下図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。 第1図は無隔膜単極式電解槽の断面図である。円筒状の槽外板1の上下に電解槽上蓋2と、電解槽下蓋3が取り付けられ、電解槽を構成している。電解槽上蓋2には出口4が、また電解槽下蓋3には入口5がそれぞれ形成されて、入口5から送られた海水が内部で電気分解されて次亜塩素酸塩を生成し、この次亜塩素酸塩を含む海水が出口4から吐き出されるようになっている。 前記槽外板1の内部に、陽極6、陰極7が交互に配置されている。槽外板1は、陽極6に対向しており、陰極として使用される。この陽極6には白金属をメッキしたチタンが使用される。陰極7には、クロム合金またはクロムメッキを施した軟鋼が使用される。」(2頁左下欄15行?右下欄11行) (引ウ)「次に、電極としてクロム合金またはクロムメッキを施した軟鋼を用いた本発明と、チタンを用いた従来の塩素酸塩電解槽の実験例について説明する。第2図に示すように、貯層8に20lの塩水を仕込み、ポンプ9で循環させながら次亜塩素酸塩電解槽10で電気分解してNaClO濃度を高めた。ヨード法による化学分析でNaClO濃度を測定し、理論値との比から電流効率を求めた。 陽極に白金属をメッキしたチタンを用い、陰極に軟鋼、チタン、SUS 410(クロム系ステンレス鋼、Cr 11.5%)、SUS 304(ニッケル・クロム系ステンレス鋼、Cr 18%)、クロムメッキ軟鋼、AISI 501(クロム鋼 Cr 4?6%)を用いた。電極寸法は幅50mm、高さ200mmであり、極間距離は3mmである。電流密度は20A/dm^(2)である。電解液としてNaCl 30g/lの食塩水を温度20℃±2℃に保って電極間を1m/秒で流した。」(2頁右下欄12行?3頁左上欄10行) 上記の記載によると、引用例には、 「無隔膜単極式電解槽において、陽極6、陰極7を交互に配置し、電流密度を20A/dm^(2)とし、NaCl 30g/lの食塩水を流速1m/秒で流して電気分解する無隔膜単極式電解槽」(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。 4.対比・判断 (1)引用文献記載の発明について ア.電流密度について 電解槽の各種動作条件と示される因子において、「電流密度」を挙げる場合、通常、特段の説明がない限り、「電極」の電流密度である。 そして、引用文献記載の発明の電流密度の単位を変更すると、 1(A)=1×10^(3)(mA)であり、1(dm)=1×10^(2)(mm)であるから、引用発明の電流密度20(A/dm^(2))は、(20×10^(3))/(10^(2))^(2)=2(mA/mm^(2))となる。 イ.単位電流流速について 「単位電流流速」とは、本願の明細書の段落【0010】に「単位電流流速」とは、流速(mm/sec)を電極表面の電流密度(A/mm^(2))で除したものである。」と記載されている。 この記載に従うと、引用文献記載の発明の単位電流流速は、 1(m/秒)/20(A/dm^(2))となる。 単位を変更すると、1(m)は1×10^(3)(mm)であり、20(A/dm^(2))は、2×10^(-3)(A/mm^(2))であるから、引用発明の単位電流流速は、(1×10^(3))/(2×10^(-3)) = 0.5×10^(6) (mm^(3)/A・sec)となる。 そして、さらに単位を変更すると、1(A)=1×10^(3)(mA)であるから、引用文献記載の発明の単位電流流速は、(0.5×10^(6))/(1×10^(3) )(mm^(3)/mA・sec)、すなわち、0.5×10^(3) (mm^(3)/mA・sec)となる。 ウ.上記ア及びイから、引用文献記載の発明は、下記のように整理することができる。 「無隔膜単極式電解槽において、陽極6、陰極7を交互に配置し、電極の電流密度を2mA/mm^(2)とし、NaCl 30g/lの食塩水を流速0.5×10^(3) mm^(3)/mA・sec(単位電流流速)で流して電気分解する無隔膜単極式電解槽」(以下、「引用発明」という。) (2)対比・判断 本願の請求項1に係る発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「無隔膜単極式電解槽」及び「食塩水」は、本願の請求項1に係る発明の「無隔膜式の電解装置」及び「被処理水」にそれぞれ相当する。 一方、本願の明細書の段落【0021】には、以下のように記載されている。 「上記結果から、単位電流流速を大きくする(一般的には流量、流速も大きくなる)ことにより、Cl2の生成効率は向上することが理解できる。特に、単位電流流速0.3を境に飛躍的に効率がよくなることが分かる。 このような結果となる理由は、流速が速いことにより二次反応が抑制されることにあると考えられる。」 この記載によれば、二次反応が抑制され、効率がよくなる「単位電流流速」には、上限はなく、特定の値(0.3mm^(3)/mA・sec)より大きな値であればいいものと解される。 そうすると、本願の請求項1に係る発明と引用発明とは、 「無隔膜式の電解装置において、電極の電流密度を2mA/mm^(2)以上とし、被処理水を流速は、0.3mm^(3)/mA・sec(単位電流流速)以上で流通させるようにした、電解装置」である点で一致し、両者に差異は見出せない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3項に該当し、特許を受けることができないものであって、本願は拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-30 |
結審通知日 | 2011-09-06 |
審決日 | 2011-09-20 |
出願番号 | 特願2004-174395(P2004-174395) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川崎 良平、福島 和幸 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
田村 耕作 川端 修 |
発明の名称 | 電解装置 |
代理人 | 峯 唯夫 |