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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1266759
審判番号 不服2012-4885  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-14 
確定日 2012-11-26 
事件の表示 特願2008-228495「包装用容器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 58830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年9月5日の特許出願であって、平成24年1月4日付けで拒絶査定がなされ、同年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書、特許請求の範囲、及び、図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「発泡層を有する樹脂シートが熱成形されて形成された容器本体が備えられており、該容器本体が、底面部と該底面部の外周から起立する周壁部と該周壁部の上端から外方へ延出したフランジ部とを備えている包装用容器であって、
前記フランジ部は、上面が曲面をなして突出し下面が凹入した突条を備え、該突条は、周方向に沿って延在してなり、該突条の下面側の一部には、凹入深さを浅くすべく補強凸部が形成されていることを特徴とする包装用容器。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-210334号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【請求項1】
合成樹脂シートを圧空または真空成形することにより、底壁と、これから立ち上がる側壁と、この側壁の上端に一体成形されるフランジ部とを有した包装用容器であって、
前記側壁の上部に、他の部分より薄い薄肉部を形成したことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記フランジ部の上端面を湾曲させたことを特徴とする請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
前記合成樹脂シートは発泡させたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
前記フランジ部の外端下面に、外側に向けかつ外方に傾斜する傾斜面を形成したことを特徴とする請求項1?請求項3のいずれかに記載の包装用容器。
【請求項5】
前記包装用容器を長方形状のものとするとともに、その少なくとも短側壁側に前記薄肉部を形成したことを特徴とする請求項1?請求項4のいずれかに記載の包装用容器。」

・「【0003】
このような包装用容器は、合成樹脂シートによって一体成形されるものであり、これに蓋が被せられることもあるが、一般的には、蓋の代わりとなる「ラップ」により包み込んで内容物を保護することが行われている。つまり、スーパーやコンビニエンスストア等では、仕入れてきた肉や魚等を小分けして包装用容器内に詰めてから、その全体にラップを掛けるという作業を行っているのである。」

・「【0006】
そこで、特許文献1にて提案されているように、「側壁に凹部および/または凸部を有する合成樹脂製発泡体製箱」が考えられ、これらの凹部および/または凸部により側壁の剛性を高められたと考えられる。また、特許文献2にて提案されているような「発泡樹脂製容器」のように、「開口部の4つの角部の下方に、容器の側面をくぼませて形成した4つの湯溜まりを有する」ものが案出され、この「湯溜まり」によっても、側壁の剛性が高められたと考えられる。」

・「【0013】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施の形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「合成樹脂シートを圧空または真空成形することにより、底壁11と、これから立ち上がる側壁12と、この側壁12の上端に一体成形されるフランジ部13とを有した包装用容器10であって、
側壁12の上部に、他の部分より薄い薄肉部14を形成したことを特徴とする包装用容器10」
である。」

・「【0018】
このような薄肉部14を形成した包装用容器10の側壁12を指で挟んで片持ちした場合には、図11に示すように、フランジ部13の外側を伸ばし内側を縮ませる力が働き、結果として、図6に示すように、薄肉部14の近傍を外側へ押し出そうとする力が加わることになる。ところが、本発明の包装用容器10では、このような力が加わる部分に薄肉部14が形成してあるから、この薄肉部14を中心として外側に膨らもうとし、またこの薄肉部14が存在することによって当該部分の剛性が低下して弾性変形が可能となっている。このため、フランジ部13から受ける力は、この薄肉部14で吸収されることになり、結果として、フランジ部13には、図10に示したような割れや亀裂が発生しないのである。
【0019】
勿論、当該包装用容器10の底壁11上に肉等を詰めてからラップを掛けるとき、このラップからの力は上述した薄肉部14の外側への膨張あるいは縮みによって吸収されるから、ラップからの力によってフランジ部13に割れや亀裂は発生しないのである。
【0020】
従って、この請求項1の包装用容器10は、合成樹脂シートによって圧空または真空成形することができて、かつ、側壁12を摘んで片持ちしたり、ラップ掛けを強く行ったとしても、部分的な割れや亀裂が入らないものとなっているのである。
【0021】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の包装用容器10について、
「フランジ部13の上端面を湾曲させたこと」
である。
【0022】
すなわち、この請求項2の包装用容器10では、図2?図9に示すように、そのフランジ部13の上端面を湾曲させたものであり、これにより、当該フランジ部13の上面が滑らかなものとなって、当該フランジ部13の剛性を高めながら、ラップが掛けられたときに、このラップが破損しないようにしているものである。
【0023】
従って、この請求項2の包装用容器10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、フランジ部13の剛性を高めているだけでなく、このフランジ部13が手で持ったときの引っ掛かり部分となり得て、肉等の詰め込み作業を素早く行えるものとなっているのである。
【0024】
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記の請求項1または請求項2に記載の包装用容器10について、
「前記合成樹脂シートは発泡させたものであること」
である。
【0025】
すなわち、この請求項3の包装用容器10を構成している合成樹脂シートとして、例えばポリスチレンペーパー等からなるシートを発泡させたものを採用しているのであり、これにより、当該包装用容器10全体の剛性を高めて、合成樹脂シートの圧空または真空成形を容易にしているだけでなく、薄肉部14を形成するための内側段部14aと外側段部14b、2つの食い込み段部14c、あるいは大きな三角凹部14dの形成を非常に簡単にしているのである。」

・図3及び図4には、包装用容器を構成する容器本体10が、底壁11と該底壁11から立ち上がる側壁12と該側壁の上端から外方へ延出したフランジ部13とを備えている点が示されている。そして、フランジ部13の上端面を湾曲させて突出させ、下面を凹状に湾曲させた湾曲面を備え、かつ、該湾曲面は、周方向に沿って延在している点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「発泡させた樹脂シートが圧空または真空成形されて形成された容器本体が備えられており、該容器本体が、底壁11と該底壁11から立ち上がる側壁12と該側壁の上端から外方へ延出したフランジ部13とを備えている包装用容器であって、
前記フランジ部は、上端面を湾曲させて突出し、下面を凹状に湾曲させた湾曲面を備え、該湾曲面は、周方向に沿って延在している包装用容器。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「発泡させた樹脂シート」が前者の「発泡層を有する樹脂シート」に相当し、後者の「発泡させた樹脂シートが圧空または真空成形されて形成された容器本体」と
前者の「発泡層を有する樹脂シートが熱成形されて形成された容器本体」とは、
「発泡層を有する樹脂シートが成形されて形成された容器本体」なる概念で共通する。

(イ)後者の「底壁11」が前者の「底面部」に相当し、以下同様に、
「底壁11から立ち上がる側壁12」が「底面部の外周から起立する周壁部」に、
「側壁の上端から外方へ延出したフランジ部13」が「周壁部の上端から外方へ延出したフランジ部」に、それぞれ相当する。

(ウ)本願の図3に示される形状を踏まえると、後者の「上端面を湾曲させて突出し、下面を凹状に湾曲させた湾曲面」は前者の「上面が曲面をなして突出し下面が凹入した突条」に相当するといえる。

(エ)後者の「湾曲面は、周方向に沿って延在して」いる態様が前者の「突条は、周方向に沿って延在して」に相当するといえることから、
後者の「湾曲面は、周方向に沿って延在している」態様と
前者の「突条は、周方向に沿って延在してなり、該突条の下面側の一部には、凹入深さを浅くすべく補強凸部が形成されている」態様とは、
「突条は、周方向に沿って延在している」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「発泡層を有する樹脂シートが成形されて形成された容器本体が備えられており、該容器本体が、底面部と該底面部の外周から起立する周壁部と該周壁部の上端から外方へ延出したフランジ部とを備えている包装用容器であって、
前記フランジ部は、上面が曲面をなして突出し下面が凹入した突条を備え、該突条は、周方向に沿って延在している包装用容器。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
発泡層を有する樹脂シートを成形する手法に関し、本願発明では、「熱」成形であるのに対し、引用発明では、圧空または真空成形である点。

[相違点2]
周方向に沿って延在してなる突条に関し、本願発明では、「突条の下面側の一部には、凹入深さを浅くすべく補強凸部が形成されている」のに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

5.判断
[相違点1]について
包装用容器の成形において、熱成形は常套手段であり(例えば、特開2004-168408号公報の【0046】に、「シートの容器成形は、慣用の方法、例えば、真空成形、吹き込み成形、圧空成形、マッチドモールド成形などの熱成形法を利用して行うことができる。」と記載されている。)、そのような成形方法とすることにより、格別な効果が生じるとは出願当初の明細書にも記載されていない。
そうすると、引用発明に上記常套手段を採用することにより相違点1に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点2]について
本願発明において、突条は、周方向に沿って延在してなり、突条の下面側の一部には、凹入深さを浅くすべく補強凸部が形成されていることによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0032】の「本実施形態の容器本体1においては、前記フランジ部30の突条の下面側の一部に凹入深さを浅くして前記容器本体1の他の部位より厚肉とした前記補強凸部13が形成されており、該補強凸部13が他部よりも厚肉に形成されていることから、ラップフィルムを包装する際に前記フランジ部30に対して上下方向又は内向きや外向きの力が作用したとしても、この前記補強凸部13によってフランジ部30の変形を防ぐ高い強度が発揮され得る。即ち、外力が加えられた際においては、前記補強凸部13を形成する樹脂シートの引張弾性又は圧縮弾性による対抗力を発生させることができ、前記フランジ部30に加えられた力に対抗する優れた強度が前記補強凸部13によって発揮されることとなる。」なる記載によれば、フランジ部30に加えられた力に対抗する強度を向上するものであるものと解することができる。
一方、例えば、原審の拒絶の理由に引用された特開2002-193235号公報の【0034】には、「上述した各実施形態では、リブ16、16aが、垂下部15の下端位置に至る高さを有しているが、これに限定されるものではなく、各リブ16、16aは、その下端が垂下部15の下端位置よりも上方に位置するものであってもよい。ただし、リブ16、16aの下端が垂下部15の下端位置に至る高さを有している場合は、垂下部15だけでなく、リブ16、16aによってもフランジ部14をリテーナ41に支持することができるので、フランジ部14の保形性が向上する(「フランジ部30に加えられた力に対抗する強度を向上する」に相当)という効果が得られることは上述したとおりである。」と記載されており、図3に胴部12,フランジ部14、及び垂下部15により円周方向の溝(「突条は、周方向に沿って延在」している態様に相当)を設け、フランジ部14の下部(「突条の下面側」に相当)にリブ16を設ける(「凹入深さを浅くすべく補強凸部が形成」された態様に相当)点が示されているように、突条は、周方向に沿って延在してなり、突条の下面側の一部には、凹入深さを浅くすべく補強凸部が形成されている点は、周知の技術にすぎない。
そして、引用例の【0022】に、「この請求項2の包装用容器10では、図2?図9に示すように、そのフランジ部13の上端面を湾曲させたものであり、これにより、当該フランジ部13の上面が滑らかなものとなって、当該フランジ部13の剛性を高めながら、ラップが掛けられたときに、このラップが破損しないようにしているものである。」と記載されているように、フランジ部の剛性を高めることが示唆されているといえる。
そうするとフランジ部30に加えられた力に対抗する強度を向上するという一般的な課題を解決するために、引用例の上記の示唆を踏まえて、引用発明に上記周知の技術を採用することにより相違点2に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

なお、請求人は、平成24年7月13日付けのファックスにおいて、以下の主張を行っている。
「『薄肉部14』を設けることでフランジ部に易変形性を持たせるという機能を利用する主引例の発明において、フランジ部に剛性を持たせるという思想は全くなく、むしろこの思想とは全く逆の機能を発揮させるといえる技術事項を採用させることは当業者にとってやはり困難な事項である。」

しかしながら、引用例には、以下の点が記載されている。
・「【請求項1】
合成樹脂シートを圧空または真空成形することにより、底壁と、これから立ち上がる側壁と、この側壁の上端に一体成形されるフランジ部とを有した包装用容器であって、前記側壁の上部に、他の部分より薄い薄肉部を形成したことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記フランジ部の上端面を湾曲させたことを特徴とする請求項1に記載の包装用容器。」

・「【0020】
従って、この請求項1の包装用容器10は、合成樹脂シートによって圧空または真空成形することができて、かつ、側壁12を摘んで片持ちしたり、ラップ掛けを強く行ったとしても、部分的な割れや亀裂が入らないものとなっているのである。
【0021】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の包装用容器10について、「フランジ部13の上端面を湾曲させたこと」である。
【0022】
すなわち、この請求項2の包装用容器10では、図2?図9に示すように、そのフランジ部13の上端面を湾曲させたものであり、これにより、当該フランジ部13の上面が滑らかなものとなって、当該フランジ部13の剛性を高めながら、ラップが掛けられたときに、このラップが破損しないようにしているものである。」

すなわち、引用例の請求項1に係る発明においては、請求人が主張するように、「側壁の上部に、他の部分より薄い薄肉部を形成した」ことにより、上記【0020】記載のように「側壁12を摘んで片持ちしたり、ラップ掛けを強く行ったとしても、部分的な割れや亀裂が入らない」という機能を奏するものであるといえる。
そして、さらに、引用例の請求項2に係る発明は、請求項1を引用するものであり、「フランジ部の上端面を湾曲させた」ことにより、上記【0022】記載のように「フランジ部13の剛性を高めながら、ラップが掛けられたときに、このラップが破損しないようにしている」という機能を奏するものであるといえる。してみると、主引例には、フランジ部の変形を防止するために薄い薄肉部を形成したものにおいて、さらに、当該フランジ部の剛性を高めるという思想が開示されていると認められる。
なお、引用例の【0039】には、「側壁12の上端とこれに一体成形してあるフランジ部13との境界部分に、他の部分より薄い薄肉部14を形成」すると記載されているように、「薄肉部14」は「側壁12」と「フランジ部13」との境界部であることが記載されているので、「『薄肉部14』を設けることでフランジ部に易変形性を持たせるという機能を利用する主引例の発明」との請求人の主張を採用することができない。

従って、請求人の上記の主張を採用することができない。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、上記周知の技術、及び、上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知の技術、及び、上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-04 
結審通知日 2012-10-05 
審決日 2012-10-16 
出願番号 特願2008-228495(P2008-228495)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
河原 英雄
発明の名称 包装用容器  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 藤本 昇  

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