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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06M
管理番号 1266785
審判番号 不服2011-13509  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-24 
確定日 2012-11-29 
事件の表示 特願2004- 77614「電子歩数計」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開、特開2005-267152〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年3月18日を出願日とする特許出願であって、平成22年4月28日付けで特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成23年3月25日付け(送達日:同年3月29日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年6月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、当該請求と同時に特許請求の範囲についての手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成23年12月12日付けで審尋を行ったところ、請求人より平成24年2月9日付けで回答書が提出された。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に補正することを含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
使用者の歩行を検出して歩行に対応する歩行信号を出力する歩行検出手段と、前記歩行信号に基づいて前記使用者の歩数を算出する算出手段と、各構成要素に電力を供給する電池とを有する電子歩数計において、
前記歩行検出手段からの信号に基づいて前記使用者の歩行の有無を判定する歩行判定手段と、前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える制御手段とを備えて成り、
前記制御手段は、前記電池から前記歩行検出手段への電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えることによって、前記歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換え、
前記間欠動作時に電力を供給されている間は常に連続的に歩行を検出することを特徴とする電子歩数計。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
使用者の歩行を検出して歩行に対応する歩行信号を出力する歩行検出手段と、前記歩行信号に基づいて前記使用者の歩数を算出する算出手段と、各構成要素に電力を供給する電池とを有する電子歩数計において、
前記歩行検出手段からの信号に基づいて前記使用者の歩行の有無を判定する歩行判定手段と、前記使用者が歩行中と前記歩行判定手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した状態へと移行した場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える制御手段とを備えて成り、
前記制御手段は、前記電池から前記歩行検出手段への電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えることによって、前記歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換え、
前記間欠動作時に電力を供給されている間は常に連続的に歩行を検出することを特徴とする電子歩数計。」

なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。

2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「制御手段」について、本件補正前の「前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した場合に、・・・に切り換える制御手段」を本件補正後の「前記使用者が歩行中と前記歩行判定手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した状態へと移行した場合に、・・・に切り換える制御手段」とすることにより、当該「制御手段」が「・・・に切り換える」との制御を行う「場合」についての成立条件を限定するものである。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1、すなわち、上記「1」の「(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1」に記載された以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
使用者の歩行を検出して歩行に対応する歩行信号を出力する歩行検出手段と、前記歩行信号に基づいて前記使用者の歩数を算出する算出手段と、各構成要素に電力を供給する電池とを有する電子歩数計において、
前記歩行検出手段からの信号に基づいて前記使用者の歩行の有無を判定する歩行判定手段と、前記使用者が歩行中と前記歩行判定手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した状態へと移行した場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える制御手段とを備えて成り、
前記制御手段は、前記電池から前記歩行検出手段への電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えることによって、前記歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換え、
前記間欠動作時に電力を供給されている間は常に連続的に歩行を検出することを特徴とする電子歩数計。」

(2)引用発明
(2-1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-143048号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、人体等に装着して歩数を計測し、また消費カロリーを計算するための歩数計に関するものである。」

<記載事項2>
「【0012】そこで、本発明は、歩行速度によらず確実に歩数を検出することができ、低消費電流値を達成することができる歩数計を提供することを目的としたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の発明は、加速度センサーと、情報入力手段と、歩数または消費カロリーを演算する演算手段と、表示器を持つ歩数計であって、X、Y、Zの加速度検出方向各々の加速度センサー出力信号の周波数成分に応じて複数の歩数検出閾値を設けたことを特徴としたものである。
【0014】また、請求項2記載の発明は。加速度センサーと、情報入力手段と、歩数または消費カロリーを演算する演算手段と、表示器を持つ歩数計であって、X、Y、Zの加速度検出方向各々の加速度センサー出力信号の歩行振動非検出時のサンプリング周期と歩行振動検出後のサンプリング周期が異なることを特徴としたものである。
【0015】また、請求項3記載の発明は、加速度センサーと、情報入力手段と、歩数または消費カロリーを演算する演算手段と、表示器を持つ歩数計であって、加速度センサーと加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段とを定期的に駆動するカウンタ及びシステム駆動回路とからなることを特徴としたものである。
【0016】また、請求項4記載の発明は、定期的に駆動されるタイミングが略1秒から5秒であることを特徴としたものである。
【0017】また、請求項5記載の発明は、加速度センサー及び加速度センサー周辺に電磁波及び静電気用のシールド構造を持たせたことを特徴としたものである。」

<記載事項3>
「【0025】次に、本発明の第2の実施形態を図3および図4を用いて、検出波形とサンプリング間隔との関係を説明する。本実施形態は、X、Y、Zの加速度検出方向各々の加速度センサー出力信号の歩行振動非検出時のサンプリング周期と歩行振動検出後のサンプリング周期が異なることを特徴としたものである。
【0026】歩数計の電源をONしたあと、まず歩行振動非検出時にはサンプリング間隔を20msecとする詳細モードになり、X方向、Y方向、Z方向それぞれの加速度センサー出力を検出する。詳細モードのサンプリング間隔は図4(a)に示してあり、常に20msec一定間隔でサンプリングを行う。そして、このとき歩行と判断される振動が検出されたら歩行振動検出後のサンプリング周期である歩数モードに移行する。
・・・・・
【0028】・・・・・再び20msec間隔でサンプリングを行う詳細モードになる。」

<記載事項4>
「【0029】次に、第3の実施形態を図5、図6を用いて説明する。本実施形態は加速度センサーと加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段と、Y成分判別手段とZ成分判別手段とを定期的に駆動するカウンタ及びシステム駆動回路からなることを特徴としている。
【0030】まず、図5のブロック図で構成を説明すると、システム21はX方向、Y方向、Z方向のすべてあるいは一部の方向の加速度を検出する加速度センサー1、加速度センサー1を駆動するための駆動回路3、駆動する時間間隔を決めるタイマー5、加速度センサー1が検出したX方向、Y方向、Z方向の加速度センサー出力信号をそれぞれ判別するX成分判別手段7、Y成分判別手段9、Z成分判別手段11、そして、歩数の積算等を行う演算部13とから構成されており、これらの他には歩数等の表示を行う表示器15、表示の切換等を行う情報入力手段17と、インターバル時間約1?5秒を計測するカウンタ25、システム21を駆動するシステム駆動回路23によって構成されている。
【0031】詳細モードにおいて、歩行として判断される振動検出がない状態が続いた場合には、演算部13がスタンバイ状態になる省電モードに移行する。省電モードにおいては、カウンタ25によって約1から5秒の定期的なインターバル時間をつくり、システム駆動回路23によってこの間隔でシステム21を動作させるものであり、省電モードの間に歩行による振動を検出したら、演算部13からカウンタ25にカウンタを停止する信号を出し、詳細モードに移行する。
【0032】ここで、カウンタ25によって計測される定期的な時間の決め方としては、ゆっくり歩いた速度を1km/hとしたとき、0.28m/sであり、歩幅を1mと仮定すると、一歩に約3.6秒かかる。また、速く歩いたときの速度を5km/hとしたとき、1.39m/sであり、歩幅を1.5mと仮定すると、一歩に約1.08秒かかる。従って、ゆっくり歩く速度を1km/h以下、速く歩いたときの速度を5km/h程度とすると、略1?5秒の間加速度センサーを休めておいても歩数計測にはほとんど影響を与えないと考える。」

<記載事項5>
「【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のうち請求項1に記載の発明は、加速度センサーと、情報入力手段と、歩数または消費カロリーを演算する演算手段と、表示器を持つ歩数計であって、X、Y、Zの加速度検出方向各々の加速度センサー出力信号の周波数成分に応じて複数の歩数検出閾値を設けたことを特徴としたものであるので、歩数検出精度が非常に優れている。
【0036】また、請求項2記載の発明は、加速度センサーと、情報入力手段と、歩数または消費カロリーを演算する演算手段と、表示器を持つ歩数計であって、X、Y、Zの加速度検出方向各々の加速度センサー出力信号の歩行振動非検出時サンプリング周期と歩行振動検出後のサンプリング周期が異なることを特徴としたものであるので、歩数検出精度の向上を達成できる。
【0037】また、請求項3記載の発明は、加速度センサーと、情報入力手段と、歩数または消費カロリーを演算する演算手段と、表示器を持つ歩数計であって、加速度センサーと加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段とを定期的に駆動するカウンタ及びシステム駆動回路とからなることを特徴としたものであるので、低消費電流値を達成できる。
【0038】また、請求項4記載の発明は、定期的に駆動されるタイミングが略1秒から5秒であることを特徴としたものであるので、低消費電流値を達成できる。
【0039】また、請求項5記載の発明は、加速度センサー及び加速度センサー周辺に電磁波及び静電気用のシールド構造を持たせたことを特徴としたものであるので、外来ノイズに強く、歩数検出精度が非常に優れている。」

<記載事項6>
「【図面の簡単な説明】
・・・・・
【図6】本発明の歩数計のサンプリング間隔を示す図である。」

(2-2)引用発明
ア 引用刊行物には、上記記載事項1に記載されるように「人体に装着して歩数を計測するための歩数計」に関する発明が記載されており、その目的は、上記記載事項2に記載されるように「歩行速度によらず確実に歩数を検出することができ、低消費電流値を達成することができる歩数計を提供する」ことである。
そして、上記発明に関して、上記記載事項2に示されるように請求項1記載の発明ないし請求項5記載の発明が記載されており、実施形態として、第1の実施形態ないし第4の実施形態が記載されている。
上記記載事項2及び記載事項5の記載からみて、上記「低消費電流値を達成することができる歩数計を提供する」との目的を達成する発明は、請求項3記載の発明及び請求項4記載の発明であり、上記記載事項4の記載も勘案すると、上記両発明に対応する実施形態は第3の実施形態である。

そこで、引用刊行物に記載された「人体に装着して歩数を計測するための歩数計」に関する発明を認定するに当たり、請求項3記載の発明及び請求項4記載の発明並びに当該両発明に対応する第3の実施形態に関して記載された技術事項に基づいて、以下、上記発明を認定する。

イ 人体に装着して歩数を計測するための歩数計は、通常、電池を電源とするものである。
また、上記記載事項2には、請求項3記載の発明に関して、「請求項3記載の発明は、加速度センサーと、情報入力手段と、歩数または消費カロリーを演算する演算手段と、表示器を持つ歩数計であって、加速度センサーと加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段とを定期的に駆動するカウンタ及びシステム駆動回路とからなることを特徴としたものである。」と記載されている。

したがって、これらのことから、「加速度センサーと、情報入力手段と、歩数を演算する演算手段と、表示器と、電源である電池とを有する人体に装着して歩数を計測するための歩数計において、前記加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段と、前記加速度センサーと前記加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段とを定期的に駆動するカウンタ及びシステム駆動回路とを備える」との技術事項が読み取れる。

ウ 上記「イ」の「加速度センサー」は、人体に装着して歩数を計測するための歩数計が備える加速度センサーであるから、使用者の歩行に応じた加速度信号を出力するものであることは明らかである。

したがって、「使用者の歩行に応じた加速度信号を出力する加速度センサー」との技術事項が読み取れる。

エ 上記「イ」の「加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段」の「加速度センサーの出力を判別する」について検討する。
上記記載事項4及び図5の記載からみて、使用者の歩行に応じた加速度信号を出力する加速度センサー1の出力を受けて、X成分判別手段7とY成分判別手段9とZ成分判別手段11が判別結果を出力し、これを受けて、演算部13が歩数の積算を行うことが読み取れる。
したがって、上記「X成分判別手段7とY成分判別手段9とZ成分判別手段11」が加速度センサー1の出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別して判別結果を出力し、これを受けて、演算部13が歩数の積算を行うことは明らかである。
よって、上記「加速度センサーの出力を判別する」は、「加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別する」ことを意味する。

以上のことから、「加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段」との技術事項が読み取れる。

オ 上記「エ」において指摘したように、使用者の歩行に応じた加速度信号を出力する加速度センサー1の出力を受けて、X成分判別手段7とY成分判別手段9とZ成分判別手段11が、その判別結果を出力し、これを受けて、演算部13が歩数の積算を行うのであるから、演算部13が加速度信号に基づいて歩数の積算を行うことは明らかである。

したがって、「加速度信号に基づいて歩数の積算を行う演算部」との技術事項が読み取れる。

カ 第3の実施形態に関する上記記載事項4には、「詳細モードにおいて、歩行として判断される振動検出がない状態が続いた場合には、演算部13がスタンバイ状態になる省電モードに移行する。省電モードにおいては、カウンタ25によって約1から5秒の定期的なインターバル時間をつくり、システム駆動回路23によってこの間隔でシステム21を動作させるものであり、省電モードの間に歩行による振動を検出したら、演算部13からカウンタ25にカウンタを停止する信号を出し、詳細モードに移行する。・・・・・ゆっくり歩く速度を1km/h以下、速く歩いたときの速度を5km/h程度とすると、略1?5秒の間加速度センサーを休めておいても歩数計測にはほとんど影響を与えないと考える。」と記載されている。

(i)ここで、上記「詳細モード」については、これが具体的にどのようなモードであるのか、その内容については第3の実施形態に関する上記記載事項4には何も記載されてはいない。

そこで、引用刊行物の他の記載を参酌すると、第2の実施形態に関する記載事項3において、「詳細モード」に関して、「歩数計の電源をONしたあと、まず歩行振動非検出時にはサンプリング間隔を20msecとする詳細モードになり、X方向、Y方向、Z方向それぞれの加速度センサー出力を検出する。詳細モードのサンプリング間隔は図4(a)に示してあり、常に20msec一定間隔でサンプリングを行う。・・・・・再び20msec間隔でサンプリングを行う詳細モードになる。」(上記記載事項3)と記載されているほかは、第1の実施形態、第4の実施形態も含めて、「詳細モード」について述べた記載はない。

してみると、第3の実施形態に関する上記記載事項4における「詳細モード」とは、その直前の第2の実施形態に関する記載事項3に記載された「詳細モード」と同一内容のモードであるとみるのが自然である。

そこで、第2の実施形態に記載された「詳細モード」についてみると、上記「歩数計の電源をONしたあと、まず歩行振動非検出時にはサンプリング間隔を20msecとする詳細モードになり、X方向、Y方向、Z方向それぞれの加速度センサー出力を検出する。詳細モードのサンプリング間隔は図4(a)に示してあり、常に20msec一定間隔でサンプリングを行う。」との記載からみて、「詳細モード」とは、歩数計の電源がONの状態、すなわち、加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態で、加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msecでサンプリングするモードである。

したがって、上記記載事項4、すなわち、第3の実施形態における上記「詳細モード」も、加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態で、X方向、Y方向、Z方向それぞれの加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msecでサンプリングするモードである。

(ii)上記記載事項4には、「詳細モードにおいて、歩行として判断される振動検出がない状態が続いた場合には、演算部13がスタンバイ状態になる省電モードに移行する。」と記載されている。

この記載からみて、明記はないものの、詳細モードにおいて、歩行として判断される振動検出がない状態が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には、演算部13がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる何らかの手段(以下、「判定移行手段」という。)を備えているはずである。

ところで、第3の実施形態において、使用者の歩行の状態について判別するものは、上記「エ」において指摘したように、「加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段」である。

そうすると、上記判定移行手段は、詳細モードにおいて、「加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段」の判別結果を受けて、使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる手段である。

(iii)上記「省電モード」については、「演算部13がスタンバイ状態になる省電モードに移行する。省電モードにおいては、カウンタ25によって約1から5秒の定期的なインターバル時間をつくり、システム駆動回路23によってこの間隔でシステム21を動作させるものであり、省電モードの間に歩行による振動を検出したら、演算部13からカウンタ25にカウンタを停止する信号を出し、詳細モードに移行する。・・・・・ゆっくり歩く速度を1km/h以下、速く歩いたときの速度を5km/h程度とすると、略1?5秒の間加速度センサーを休めておいても歩数計測にはほとんど影響を与えないと考える。」と記載されている。

上記記載からみて、カウンタ25とシステム駆動回路23は、省電モードにおいて、約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、システム21の動作と停止を繰り返させるものである。

ここで、システム21とは、上記記載事項4の「システム21はX方向、Y方向、Z方向のすべてあるいは一部の方向の加速度を検出する加速度センサー1、加速度センサー1を駆動するための駆動回路3、駆動する時間間隔を決めるタイマー5、加速度センサー1が検出したX方向、Y方向、Z方向の加速度センサー出力信号をそれぞれ判別するX成分判別手段7、Y成分判別手段9、Z成分判別手段11、そして、歩数の積算等を行う演算部13とから構成されており」と記載されているから、加速度センサー1を含む各部のことである。
また、カウンタ25とシステム駆動回路23は、上記「イ」において指摘した「前記加速度センサーと前記加速度センサーの出力を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段とを定期的に駆動するカウンタ及びシステム駆動回路」である。

したがって、「省電モードにおいて、約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、加速度センサーを含む各部の動作と停止を繰り返させるカウンタ及びシステム駆動回路」との技術事項が読み取れる。

(iv)上記(i)?(iii)を踏まえると、
「加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態で、X方向、Y方向、Z方向それぞれの加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msecでサンプリングする詳細モードにおいて、加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段の判別結果を受けて、使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる判定移行手段と、
省電モードにおいて、約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、加速度センサーを含む各部の動作と停止を繰り返させるカウンタ及びシステム駆動回路とを備える」との技術事項が読み取れる。

キ 上記記載事項4の「第3の実施形態を図5、図6を用いて説明する。」、上記記載事項6の「本発明の歩数計のサンプリング間隔を示す図である。」との記載からみて、図6は、第3の実施形態の歩数計のサンプリング間隔を示す図である。
そして、図6の記載をみると、1?5秒のインターバル時間間隔をおいて、間欠的にサンプリングが行われる各期間が示され、この各期間では、1?5秒に比べて精細なサンプリングが行われていることが看て取れる。

このことと、上記記載事項4の「省電モードにおいては、カウンタ25によって約1から5秒の定期的なインターバル時間をつくり、システム駆動回路23によってこの間隔でシステム21を動作させるものであり、省電モードの間に歩行による振動を検出したら、演算部13からカウンタ25にカウンタを停止する信号を出し、詳細モードに移行する。
【0032】ここで、カウンタ25によって計測される定期的な時間の決め方としては、ゆっくり歩いた速度を1km/hとしたとき、0.28m/sであり、歩幅を1mと仮定すると、一歩に約3.6秒かかる。また、速く歩いたときの速度を5km/hとしたとき、1.39m/sであり、歩幅を1.5mと仮定すると、一歩に約1.08秒かかる。従って、ゆっくり歩く速度を1km/h以下、速く歩いたときの速度を5km/h程度とすると、略1?5秒の間加速度センサーを休めておいても歩数計測にはほとんど影響を与えないと考える。」との記載からみて、「省電モードにおいて、1?5秒のインターバル時間間隔をおいて、間欠的にサンプリングが行われる各期間では、加速度センサーは使用者の歩行に応じた加速度信号を出力しており、その加速度信号を1?5秒に比べて精細なサンプリング間隔でサンプリングする」ことが読み取れる。

ク 以上のことから、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「使用者の歩行に応じた加速度信号を出力する加速度センサーと、情報入力手段と、前記加速度信号に基づいて歩数を演算する演算手段と、表示器と、電源である電池とを有する人体に装着して歩数を計測するための歩数計において、
前記加速度センサーの出力に基づいて前記使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段と、
前記加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態で、X方向、Y方向、Z方向それぞれの前記加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msecでサンプリングする詳細モードにおいて、前記加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段の判別結果を受けて、使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる判定移行手段と、
省電モードにおいて、約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、前記加速度センサーを含む各部の動作と停止を繰り返させるカウンタ及びシステム駆動回路とを備え、
前記約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔をおいて、間欠的にサンプリングが行われる各期間では、加速度センサーは使用者の歩行に応じた加速度信号を出力しており、その加速度信号を前記インターバル時間間隔に比べて精細なサンプリング間隔でサンプリングすることを特徴とする
人体に装着して歩数を計測するための歩数計。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(3-1)
引用発明の「加速度センサー」は、「使用者の歩行に応じた加速度信号を出力する」から、本願補正発明の「歩行検出手段」と同様に「使用者の歩行を検出して歩行に対応する歩行信号を出力する」ものである。
したがって、引用発明の「使用者の歩行に応じた加速度信号を出力する」は、本願補正発明の「使用者の歩行を検出して歩行に対応する歩行信号を出力する」に相当し、引用発明の「加速度センサー」は、本願補正発明の「歩行検出手段」に相当する。

(3-2)
引用発明の「前記加速度信号に基づいて歩数を演算する演算手段」は、本願補正発明の「前記歩行信号に基づいて前記使用者の歩数を算出する算出手段」に相当する。

(3-3)
引用発明の「電源である電池」は、本願補正発明の「各構成要素に電力を供給する電池」に相当する。

(3-4)
引用発明の「人体に装着して歩数を計測するための歩数計」は、その構成からみて電子回路より構成されるものであるから、本願補正発明の「電子歩数計」に相当する。

(3-5)
引用発明の「加速度センサーの出力に基づいて歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段」は、本願補正発明の「歩行検出手段からの信号に基づいて使用者の歩行の有無を判定する歩行判定手段」に相当する。

(3-6)
引用発明の「前記加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段の判別結果を受けて、使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には」と
本願補正発明の「前記使用者が歩行中と前記歩行判定手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した状態へと移行した場合に」とを対比する。

引用発明において、「使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には」とあるように、上記「場合」になったと判断する成立条件として、使用者の歩行が無いとの判別結果が1回出ただけで成立したとするのではなく、上記判別結果が続いたと判定した場合に成立したとしているのは、判別結果が1回出ただけで成立したと判断すれば、実際には歩行を行っているにもかかわらず、歩行が一瞬滞ったり歩行の速度が変わったりした過渡状態や外部ノイズの影響があった場合などに、使用者の歩行が無いと誤った判断をするおそれがあり、これを防止して歩行が無いことを確実に検出するためであることは明らかである。

したがって、引用発明の「前記加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段の判別結果を受けて、使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には」は、実質的に「前記加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段の判別結果を受けて、使用者の歩行が無いと判定した場合には」と等価である。

よって、上記対比については、両者は、ともに、
「使用者が歩行を行っていないと判定した状態になった場合に」の点で共通するといえる。

(3-7)
引用発明の「前記加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態で、X方向、Y方向、Z方向それぞれの前記加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msecでサンプリングする詳細モードにおいて、・・・・・場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる判定移行手段と、
省電モードにおいて、約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、前記加速度センサーを含む各部の動作と停止を繰り返させるカウンタ及びシステム駆動回路とを備え」と、
本願補正発明の「・・・・・場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える制御手段とを備えて成り」とを対比する。

引用発明の「詳細モード」は、「前記加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態」において、「前記加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msec」という精細なサンプリング間隔、すなわち、上記記載事項4に示されるように、速く歩いたとしても一歩が1.08秒という歩行周期に比べて精細なサンプリング間隔で「サンプリングする」モードであるから、詳細モードにおいて、加速度センサーを、「連続的に歩行を検出する連続動作」させているといえる。

(因みに、本願補正発明も、本願明細書の以下の記載に示されるように、歩行検出手段の出力をCPUに入力しているから、引用発明と同様に歩行検出手段の出力をサンプリングするものである。
「【0026】・・・加速度センサ107は使用者の歩行を検出して、該歩行に対応する信号(歩行信号)を増幅回路106に出力する。増幅回路106は、加速度センサ107からの前記歩行信号を増幅し、歩行信号としてCPU101に出力する。
【0027】
CPU101は、増幅回路106から歩行信号が入力されたか否かを判断し(ステップ22)、増幅回路106から信号が入力されたと判断した場合には、ステップ213の歩数計測処理を行い、ステップ22に戻る。ステップ213の歩数計測処理では、CPU1
01は、増幅回路106を介して入力される加速度センサ107からの歩行信号に基づいて使用者の歩数を算出し、累積した歩数が表示部108で表示される。ここで、CPU101は算出手段を構成している。
【0028】
CPU101は、ステップ22において、増幅回路106からの信号が入力されていないと判断した場合には、分周回路103からの信号を計時してRAM110に記憶された第一休眠移行時間が経過したか否かを判断し(ステップ23)、第一休眠移行時間が経過していないと判断した場合にはステップ22に戻る。尚、ステップ23における経過時間は増幅回路106の出力信号が無くなってからの時間を計測する。本実施の形態では、前記第一休眠移行時間として5分としている。ここで、CPU101は計時手段として機能する。
【0029】
CPU101は、ステップ23において、第一休眠移行時間が経過したと判断した場合には、電池112から増幅回路106への電源供給を停止して、増幅回路106の動作を停止させる(ステップ24)。この時点から、第一休眠状態となると共に第1の期間としての第二休眠移行時間に入る。前記第1休眠状態では、CPU101は、第1周期としての第一休眠時間(例えば、20秒)間隔で増幅回路106が間欠動作(第1間欠動作)を行なうように制御する。尚、通常は、前記第二休眠移行時間には複数の第一休眠時間が含まれることになる。
【0030】
この状態で、CPU101は、第一休眠時間が経過したか否かを判断し(ステップ25)、前記第一休眠時間が経過したと判断すると、電池112から増幅回路106に駆動電力を供給して増幅回路106を動作状態にする(ステップ26)。ここで、CPU101は計時手段として機能する。
【0031】
次に、CPU101は、増幅回路106の出力信号の有無を確認する(ステップ27)。増幅回路106から歩行信号が出力された場合は、ステップ213に進み歩数計測処理を行い、ステップ22に戻る。CPU101は、ステップ27において、増幅回路106から歩行信号が出力されない場合は、第二休眠移行時間(第一休眠状態に入った直後の所定時間)が経過したかを判断する(ステップ28)。ここで、CPU101は計時手段として機能する。」)

また、引用発明は、「省電モードにおいては、前記カウンタと前記システム駆動回路により、約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、前記加速度センサーを含む各部の動作と停止を繰り返させる」から、省電モードにおいて、加速度センサーを、「所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作」させているといえる。

そうすると、引用発明の上記「前記加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態で、X方向、Y方向、Z方向それぞれの前記加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msecでサンプリングする詳細モードにおいて、・・・・・場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる判定移行手段と、
省電モードにおいて、約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、前記加速度センサーを含む各部の動作と停止を繰り返させるカウンタ及びシステム駆動回路とを備え」は、
「加速度センサーを連続的に歩行を検出する連続動作させる詳細モードにおいて、・・・・・の場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる判定移行手段と、
省電モードにおいて、加速度センサーを、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作させるカウンタ及びシステム駆動回路とを備え」にほかならない。

そこで、この「加速度センサーを連続的に歩行を検出する連続動作させる詳細モードにおいて、・・・・・の場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる判定移行手段と、
省電モードにおいて、加速度センサーを、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作させるカウンタ及びシステム駆動回路とを備え」(前者)と、
本願補正発明の上記「・・・・・場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える制御手段とを備えて成り」(後者)とを対比すると、
前者の「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」よりなる手段は、これらの機能をまとめると、「加速度センサーを連続的に歩行を検出する連続動作させる詳細モードにおいて、・・・・・の場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させ、省電モードにおいて、加速度センサーを、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作させる」手段であるから、
上記「(3-6)」も勘案すると、前者と後者は、
「使用者が歩行を行っていないと判定した状態になった場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える手段とを備えて成り」の点で共通し、
切り換える「場合」において相違するとともに、切り換える手段が、後者では、単一の「制御手段」であるのに対し、前者では、「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」である点で相違する。

(3-8)
本願補正発明の「前記制御手段は、前記電池から前記歩行検出手段への電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えることによって、前記歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換え」は、「制御手段」の機能を特定するものである。

一方、引用発明の「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」よりなる手段の機能については、上記「(3-7)」において指摘したように、「加速度センサーを連続的に歩行を検出する連続動作させる詳細モードにおいて、・・・・・の場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させ、省電モードにおいて、加速度センサーを、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作させる」というものである。

したがって、引用発明の「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」よりなる手段と、本願補正発明の「前記制御手段は、前記電池から前記歩行検出手段への電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えることによって、前記歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換え」とを対比すると、両者は、ともに、
「前記切り換える手段は、前記歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換え」の点で共通する。

(3-9)
引用発明の「前記約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔をおいて、間欠的にサンプリングが行われる各期間では、加速度センサーは使用者の歩行に応じた加速度信号を出力しており、その加速度信号を上記インターバル時間間隔に比べて精細なサンプリング間隔でサンプリングする」と、
本願補正発明の「前記間欠動作時に電力を供給されている間は常に連続的に歩行を検出する」とは、上記「(3-7)」、「(3-8)」を踏まえると、
「前記間欠動作時のうちの動作している期間に常に連続的に歩行を検出する」点で共通する。

(3-10)
以上のとおりであるから、本願補正発明と引用発明の両者は、

「使用者の歩行を検出して歩行に対応する歩行信号を出力する歩行検出手段と、前記歩行信号に基づいて前記使用者の歩数を算出する算出手段と、各構成要素に電力を供給する電池とを有する電子歩数計において、
前記歩行検出手段からの信号に基づいて前記使用者の歩行の有無を判定する歩行判定手段と、前記使用者が歩行を行っていないと判定した状態になった場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える手段とを備えて成り、
前記切り換える手段は、前記歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換え、
前記間欠動作時のうちの動作している期間に常に連続的に歩行を検出することを特徴とする電子歩数計。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
歩行検出手段の動作を連続動作から間欠動作に切り換える場合に関して、本願補正発明では、「使用者が歩行中と歩行判定手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した状態へと移行した場合」であるのに対し、引用発明では、「加速度センサーの出力に基づいて使用者の歩行の有無を判別するX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段の判別結果を受けて、使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合」とあるように、X成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段が判定の主体ではなく、歩行中と判定した状態から歩行を停止したと判定した状態へと移行した場合との特定もない点。

[相違点2]
歩行検出手段の動作を連続動作から間欠動作に切り換える手段に関して、本願補正発明では、単一の「制御手段」であるのに対し、引用発明では、「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」よりなる手段であり、本願補正発明の制御手段が、「前記電池から前記歩行検出手段への電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えることによって」、歩行検出手段を連続動作から間欠動作に切り換えるのに対して、引用発明には、そのような特定がなく、また、本願補正発明が、間欠動作時に「電力を供給されている間は」常に連続的に歩行を検出するのに対し、引用発明には、そのような特定がない点。

(4)当審の判断
上記相違点1及び2について検討する。
(4-1)相違点1について
引用発明の「使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には」が、実質的に「使用者の歩行が無いと判定した場合には」と等価であることは、上記「(3-6)」において指摘したとおりである。
したがって、引用発明は、「使用者の歩行が無いと判定した場合には、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させる」ものである。

そして、このように、「使用者の歩行が無いと判定した場合」が起こり得るケースとして想定されるのは、使用者が歩行中であると判定したが、その後歩行を停止したと判定した場合や、歩数計の電源をONしてこのような判定を開始して以後ずっと使用者が歩行を停止していると判定した場合等である。
したがって、引用発明において、使用者が歩行中であると判定したが、その後歩行を停止したと判定した場合に、すなわち、本願補正発明と同様に、「使用者が歩行中と判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと判定した状態へと移行した場合」に、演算部がスタンバイ状態になる省電モードに移行させるようにすることは、単に、「使用者の歩行が無いと判定した場合」として想定されるケースの中から1つを選択したことにすぎない。

また、一般に、各技術的手段の機能の分担をどのようなものとするかは、必要に応じて当業者が適宜定める設計的事項にすぎないから、引用発明において、「判定移行手段」の判定機能を「X成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段」に移行して、「X成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段」が、使用者が歩行中と判定したり、使用者が歩行を停止したと判定するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

よって、引用発明において、「使用者の歩行が無いとの判別結果が続いたか否かを判定し、続いたと判定した場合には」を、「使用者が歩行中とX成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記X成分判別手段とY成分判別手段とZ成分判別手段が判定した状態へと移行した場合」とすること、すなわち、上記相違点1に係る本願補正発明のごとく構成することは当業者が容易になし得ることである。

(4-2)相違点2について
引用発明の「詳細モード」は「加速度センサーを含めた各部へ電力が連続的に供給されている状態で、X方向、Y方向、Z方向それぞれの前記加速度センサーの出力をサンプリング間隔20msecでサンプリングする」モードであるから、詳細モードにおいては、加速度センサーに電力が連続的に供給されている。

そして、引用発明の「省電モード」においては、「約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔で、前記加速度センサーを含む各部の動作と停止を繰り返させ」、「前記約1から5秒の定期的なインターバル時間間隔をおいて、間欠的にサンプリングが行われる各期間では、加速度センサーは使用者の歩行に応じた加速度信号を出力しており、その加速度信号を前記インターバル時間間隔に比べて精細なサンプリング間隔でサンプリング」しており、前記インターバル時間間隔では、「加速度センサーを休めておいても歩数計測にはほとんど影響を与えない」(上記記載事項4)のであるから、加速度センサーに定期的なインターバル時間間隔をおいて電力を間欠的に供給すればよいことは明らかである。

したがって、引用発明において、詳細モードから省電モードへ移行させるに当たり、加速度センサーへの電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えるようにし、この切り換えを実行する主体については、詳細モードから省電モードへの移行及び省電モードでの動作を制御しているのが「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」であることに鑑みて、これらに上記切り換えについても実行させるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、このような切り換えによって、加速度センサーが、詳細モードにおける連続動作から省電モードにおける間欠動作に切り換えられることになること、また、間欠動作時に電力を供給されている間は常に連続的に歩行を検出することになることは明らかである。

また、一般に、どのような機能をどのような技術的手段により実現するかは、当業者が適宜選択する設計的事項にすぎないから、引用発明において、「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」が実行する機能を、単一の「制御手段」に実行させるようにすることは当業者が適宜選択する設計的事項にすぎない。

以上のとおりであるから、引用発明において、「判定移行手段」及び「カウンタ及びシステム駆動回路」を単一の「制御手段」とし、制御手段が、電池から加速度センサーへの電力供給を連続供給から間欠供給に切り換えることによって、加速度センサーを連続動作から間欠動作に切り換えるようにし、間欠動作時に電力を供給されている間は常に連続的に歩行を検出するようにすること、すなわち、上記相違点2に係る本願補正発明のごとく構成することは当業者が容易になし得たことである。

なお、引用刊行物には、加速度センサーの出力を増幅回路で増幅することは記載されてはいないが、微弱な加速度センサーの出力を増幅回路で増幅することが通常であるから、加速度センサー及び増幅回路を歩行検出手段とすることには何ら困難性はない。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用発明から予測し得る範囲内のものであって格別のものではない。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、平成23年6月24日付け審判請求書の請求の理由及び平成24年2月9日付け回答書において、概ね以下のような主張をしている。

(5-1)
引用刊行物では、明細書の段落【0025】?【0028】及び図4(a),(b)に記載されているように、歩行中は間欠動作(歩数モード)にして、停止判定後は連続動作(詳細モード)にしていて、この点については、本願発明と逆であり、大きく相違している。
引用刊行物では、明細書に記載されているように、歩行以外の振動を拾うことを問題にしており、このため、歩行検出がされたら、その直後から300msecの間隔分マスクをして振動を拾わないようにしている。
本願発明では、引用刊行物と問題にしていることが異なり、歩行中に連続動作にすることで必要な信号の検出もれをなくし、歩行していない場合に間欠動作することにより低消費化を行っている。

(5-2)
引用刊行物の記載内容のいずれの部分を詳細に検討しても、「測定精度を劣化させることなく、消費電力を節約することによって電池寿命を延ばすことが可能になり、また、測定精度を劣化させることなく、電池寿命を延ばすことによって電池交換あるいは充電の回数を低減させ、電池交換あるいは充電の手間を少なくすることが可能になる電子歩数計を提供する」という技術的課題を解決する意図のもとに、本願発明のような、「前記歩行検出手段からの信号に基づいて前記使用者の歩行の有無を判定する歩行判定手段と、前記使用者が歩行中と前記歩行判定手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した状態へと移行した場合に、前記歩行検出手段の動作を、連続的に歩行を検出する連続動作から、所定周期で動作と停止を繰り返す間欠動作に切り換える制御手段とを備えて成る構成」という構成の実現の起因ないし動機づけとなるような記載は見当たらない。

(5-3)
引用刊行物では、歩数計測精度を維持して歩数計測に影響を与えないことを重視しており、その限界が5秒であると考えられる。
しかし、引用刊行物に引用文献4に示されるような電源を間欠供給する省電技術を適用して、増幅回路への電力供給を間欠供給に切り換えると、加速度センサー1が検出したX方向、Y方向、Z方向の加速度センサー出力信号をそれぞれ判別するX成分判別手段7、Y成分判別手段9、Z成分判別手段11の初期設定に時間がかかることになり、正常な計測が行えるまでに増幅回路への電力供給から更に1?2秒の時間が必要になり、歩数計測に影響を与えます。
従って、引用刊行物に対して引用文献4に示されるような電源を間欠供給する省電技術を組合せることは技術的に無理がある。

上記主張について検討する。

(5-1)の主張について
上記「(2-2)引用発明」の「ア」において指摘したように、引用刊行物において、本願補正発明と同様に、消費電力の節約を目的とした実施形態は、第3の実施形態である。
一方、請求人の主張は、引用刊行物の第2の実施形態に関する記載に基づくものであり、当該第2の実施形態は、消費電力の節約を目的とするものではなく、本願補正発明と関連性がない実施形態であることは明らかである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5-2)の主張について
上述のごとく、引用刊行物において、本願補正発明と同様に、消費電力の節約を目的とする実施形態は、第3の実施形態である。
そして、第3の実施形態並びにこれに対応する請求項3記載の発明及び請求項4記載の発明に関する記載から、上記「(2)」の「ク」に示したとおりの引用発明を認定することができ、上記「(4)」において説示したように、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5-3)の主張について
引用刊行物には、X成分判別手段7、Y成分判別手段9、Z成分判別手段11の初期設定に関する記載はなく、正常な計測が行えるまでに増幅回路への電力供給から更に1?2秒の時間が必要になるとの記載もない。
また、低消費電流値を達成することができる歩数計を提供することを目的とするとの第3の実施形態の趣旨からみて、第3の実施形態において、間欠駆動による省電により歩数計測に支障をきたすほどの大きな影響がでるとは考えられない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(6)小括
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2」の「1」の「(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」に記載されたとおりのものである。

第4 引用例の記載事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項及び引用発明は、上記「第2」の「2」の「(2)」に記載したとおりのものである。

第5 本願発明についての判断
本願発明は、上記「第2」の「2」で検討した、本願補正発明を特定するために必要な事項である「制御手段」について、「前記使用者が歩行中と前記歩行判定手段が判定した状態から前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した状態へと移行した場合に、・・・に切り換える制御手段」を、「前記使用者が歩行を停止したと前記歩行判定手段が判定した場合に、・・・に切り換える制御手段」へと変更することにより、当該「制御手段」が「・・・に切り換える」との制御を行う「場合」についての成立条件を拡張するものである。
そうすると、本願発明の発明を特定するために必要な事項をすべて含み、さらに、「制御手段」が「・・・に切り換える」との制御を行う「場合」についての成立条件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「2」の「(4)」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし9に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-26 
結審通知日 2012-10-02 
審決日 2012-10-15 
出願番号 特願2004-77614(P2004-77614)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06M)
P 1 8・ 575- Z (G06M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀史森 竜介  
特許庁審判長 下中 義之
特許庁審判官 森 雅之
▲高▼木 真顕
発明の名称 電子歩数計  
代理人 木村 信行  
代理人 内野 則彰  
代理人 久原 健太郎  

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