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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1266799
審判番号 不服2011-24206  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-09 
確定日 2012-11-29 
事件の表示 特願2010- 99622「発光装置および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月22日出願公開、特開2010-160526〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年11月30日に出願した特願2005-345299号(以下「原出願」という。)の一部を平成22年4月23日に新たな特許出願としたものであって、平成23年4月22日に手続補正がなされ、同年8月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月9日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、その後、平成24年5月14日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年7月13日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年11月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年11月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成23年11月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。
「基板上に、発光素子と、電源線と前記発光素子との間に電気的に接続された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと前記発光素子とを電気的に接続する素子導通部と、前記第1のトランジスタのゲート電極と前記第1のトランジスタのドレインとの間に電気的に接続された第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタのゲート電極と前記第2のトランジスタのソースまたはドレインとを電気的に接続する接続部と、を有し、
前記電源線は、第1の方向に延在する第1の部分と、前記第1の方向とは交差する第2の方向に延在する第2の部分と、を有し、
前記電源線、前記素子導通部および前記接続部は、同層に設けられており、
平面視において、前記接続部は、前記第1の部分と前記第2の部分とで区画された領域内に位置していることを特徴とする発光装置。」

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2003-167533号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1a)「【0009】また、本発明は、基板上に配置される複数の走査線と前記走査線に略直交して配置される複数の信号線と、前記走査線に接続するゲート電極および前記信号線に接続するソース電極とを備えた第1トランジスタと、一対の電極間に誘電体膜を備え、一方の電極が前記第1トランジスタのドレイン電極と接続する第1キャパシタと、前記第1キャパシタの他方の電極に接続するゲート電極および第1電源線に接続するソース電極を有する第2トランジスタと、一対の電極間に誘電体膜を備え、一方の電極が前記第2トランジスタのゲート電極と接続し、他方の電極が前記第2トランジスタの前記ソース電極に接続する第2キャパシタと、ゲート電極が第1制御線と接続し、ソース電極が前記第2トランジスタのドレイン電極に接続し、ドレイン電極が前記第2トランジスタのゲート電極に接続する第3トランジスタと、ゲート電極が第2制御線と接続し、ソース電極が前記第2トランジスタのドレイン電極と接続する第4トランジスタと、一対の電極間に光変調層を備え、一方の電極が前記第4トランジスタのドレイン電極と接続する表示素子を備え、前記第1キャパシタを構成する誘電体膜と前記第2キャパシタを構成する誘電体膜とは同一であることを特徴とする表示装置を提供する。」
(1b)「【0016】図1は、本発明の実施形態に係る表示装置を概略的に示す回路図である。本実施形態では、表示素子が有機EL表示素子である場合を例に説明する。 【0017】図1に示す表示装置1は、有機EL表示装置であって、ガラス基板のような基板2と、基板2上にマトリクス状に配列された複数の表示画素3と、それら表示画素3の行と列とに沿ってそれぞれ延在した複数本の走査線4及び複数本の信号線5と、これら走査線4及び信号線5をそれぞれ駆動する走査線ドライバ8及び信号線ドライバ9とを備えている。各表示画素3は、表示素子11と、駆動制御素子12と、保持キャパシタ13と、画素スイッチ14と、キックキャパシタ15と、出力スイッチ16と、リセットスイッチ17とを含んでいる。なお、ここでは、駆動制御素子12、画素スイッチ14、出力スイッチ16、及びリセットスイッチ17のそれぞれにトランジスタを使用することとする。例えば、画素スイッチ14をN型トランジスタ、駆動制御素子12、出力スイッチ16、及びリセットスイッチ17をP型トランジスタで構成する。
【0018】表示素子11と出力スイッチトランジスタ16と駆動制御素子12とは、一対の電源線DVDD,DVSS間で電源線DVSS側から電源線DVDD側に向けて順に直列に接続されている。画素スイッチトランジスタ14とキックキャパシタ15とは信号線5と駆動制御素子12のゲート電極との間で信号線5側から駆動制御素子12側に向けて順に直列に接続されており、画素スイッチトランジスタ14のゲート電極は走査線4に接続されている。保持キャパシタ13は電源線DVDDと駆動制御素子12のゲート電極との間に接続され、リセットスイッチトランジスタ17は出力スイッチトランジスタ16の駆動制御素子12側で出力スイッチトランジスタ16と駆動制御素子12のゲート電極との間に接続されている。また、出力スイッチトランジスタ16及びリセットスイッチトランジスタ17のゲート電極は制御線6,7にそれぞれ接続されている。」
(1c)「【図1】



これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「基板上に配置される複数の走査線と前記走査線に略直交して配置される複数の信号線と、前記走査線に接続するゲート電極および前記信号線に接続するソース電極とを備えた第1トランジスタと、一対の電極間に誘電体膜を備え、一方の電極が前記第1トランジスタのドレイン電極と接続する第1キャパシタと、前記第1キャパシタの他方の電極に接続するゲート電極および第1電源線に接続するソース電極を有する第2トランジスタと、一対の電極間に誘電体膜を備え、一方の電極が前記第2トランジスタのゲート電極と接続し、他方の電極が前記第2トランジスタの前記ソース電極に接続する第2キャパシタと、ゲート電極が第1制御線と接続し、ソース電極が前記第2トランジスタのドレイン電極に接続し、ドレイン電極が前記第2トランジスタのゲート電極に接続する第3トランジスタと、ゲート電極が第2制御線と接続し、ソース電極が前記第2トランジスタのドレイン電極と接続する第4トランジスタと、一対の電極間に光変調層を備え、一方の電極が前記第4トランジスタのドレイン電極と接続する有機EL表示素子を備えた有機EL表示装置。」(以下「引用発明」という。)

3.対比
補正発明と引用発明を比較する。
(1)引用発明の「基板」及び「第1電源線」は、それぞれ、補正発明の「基板」及び「電源線」に相当する。
また、引用発明の「有機EL表示素子」は補正発明の「発光素子」に相当し、同様に「有機EL表示装置」は「発光装置」に相当する。
(2)引用発明の「第2トランジスタ」はソース電極が第1電源線に接続され、ドレイン電極が第4トランジスタを介して有機EL表示素子と接続されていることから、補正発明の「第1のトランジスタ」とは「電源線と発光素子との間に配置された第1のトランジスタ」である点で共通する。
(3)引用発明の「第3トランジスタ」はドレイン電極が第2トランジスタのゲート電極に接続され、ソース電極が第2トランジスタのドレイン電極に接続されているから、補正発明の「第2のトランジスタ」に相当する。ここで第3トランジスタのソース電極と第2トランジスタのドレイン電極とを電気的に接続する「接続部」が存在することは自明である。

してみると、両者は、
「基板上に、発光素子と、電源線と前記発光素子との間に配置された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのゲート電極と前記第1のトランジスタのドレインとの間に電気的に接続された第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタのゲート電極と前記第2のトランジスタのドレインとを電気的に接続する接続部と、を有する発光装置。」
の点で一致し、次の各点で相違している。
(相違点1)
補正発明は第1のトランジスタが発光素子と電気的に接続され、第1のトランジスタと前記発光素子とを電気的に接続する素子導通部を有するのに対して、引用発明は第4トランジスタを介して発光素子と接続されている点。
(相違点2)
電源線が、補正発明では第1の方向に延在する第1の部分と、前記第1の方向とは交差する第2の方向に延在する第2の部分とを有しているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。
(相違点3)
補正発明は、電源線、素子導通部および接続部が同層に設けられているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。
(相違点4)
補正発明が、平面視において、接続部は、前記第1の部分と前記第2の部分とで区画された領域内に位置しているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
アクティブマトリクス方式の発光装置において、発光素子を引用発明のように第4トランジスタを介して駆動することも、補正発明のように当該トランジスタを介さずに駆動することも、ともに、ごく普通に用いられる周知の技術である(特開2003-5709号公報の図11及び図17参照)。
そして、そのどちらを選択するかは、必要とされる制御の正確さやコスト等の種々の要因を総合的に勘案して、当業者が適宜選択しうる事項である。
してみると、引用発明において第4トランジスタを用いずに、補正発明の第1のトランジスタに相当する第2トランジスタと発光素子とを直接接続し、これらを電気的に接続する素子導通部を有するように構成することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点2について)
アクティブマトリクス方式の発光装置において、電源線の電気抵抗を低減するために電源線(第1の部分)の延在する方向(第1の方向)と直角な方向(第2の方向)に延在する補助電源線(第2の部分)を設けることは、ごく普通に行われる周知技術であり(原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-108068号公報の補助電源線Vdd2参照)、引用発明に該周知技術を用いることにより相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点3について)
複数の工程で複数の層構造を形成する構造のアクティブマトリクス方式の発光装置において、複数の要素を同工程で形成することにより同層に設けることは、ごく普通に行われている周知技術(引用文献1参照)であり、どの要素を同層にするかは回路構成や製造コスト等の種々の要因を総合的に勘案して、当業者が適宜決定しうる事項である。
そして、引用発明に素子導通部を設けるに際して、電源線、素子導通部および接続部を同層に設けることに格別の技術的困難性も阻害要因もない。
してみると、相違点3に係る構成はその必要に応じて当業者が適宜採用しうる事項である。
(相違点4について)
引用発明の電源線に補助電源線を設け、電源線と補助電源線を互いに直角な方向に延在させれば、これらの線によって素子が区画されることは自明であり、接続部と電源線及び補助電源線が同層に設けられている場合に、接続部が当該区画された領域内に位置することは、極めて自然なことである。
してみると、引用発明に相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成23年11月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年4月22日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「基板上に、発光素子と、電源線と前記発光素子との間に電気的に接続された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと前記発光素子とを電気的に接続する素子導通部と、前記第1のトランジスタのゲート電極と前記第1のトランジスタのドレインとの間に電気的に接続された第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタのゲート電極と前記第2のトランジスタのソースまたはドレインとを電気的に接続する接続部と、を有し、
前記電源線は、第1の方向に延在する第1の部分と、前記第1の方向とは交差する第2の方向に延在する第2の部分と、を有し、
前記第1の部分、前記素子導通部および前記接続部は、同層に設けられており、
平面視において、前記接続部は、前記第1の部分と前記第2の部分とで区画された領域内に位置していることを特徴とする発光装置。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物
引用文献1及びその記載事項は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
前記「第2」で検討した補正発明は、少なくとも、本願発明の「同層に設けられ」る構成について(電源線の)「第1の部分」とあったものを(第1の部分と第2の部分を含む)「電源線」に限定したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-26 
結審通知日 2012-10-02 
審決日 2012-10-15 
出願番号 特願2010-99622(P2010-99622)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 久則  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 金高 敏康
森林 克郎
発明の名称 発光装置および電子機器  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 須澤 修  
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