ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F |
---|---|
管理番号 | 1266800 |
審判番号 | 不服2011-24626 |
総通号数 | 157 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-15 |
確定日 | 2012-11-29 |
事件の表示 | 特願2006-203824「メタルガスケットによるシール構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月14日出願公開、特開2008- 31872〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成18年7月26日の出願であって、平成22年8月16日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成22年9月29日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成23年3月16日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成23年5月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成23年10月3日付けで補正の却下の決定(平成23年5月10日付けの手続補正について)がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、平成24年5月29日付けで審尋がなされたものである。 第2.平成23年11月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年11月15日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 (1)本件補正の内容 平成23年11月15日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前(すなわち、平成22年9月29日付け)の下記(a)を、下記(b)と補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 複数の気筒形成用凹部と、前記複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路とを備えたエンジン本体におけるシリンダヘッドとシリンダボディとの合面にメタルガスケットを設置することにより前記合面をシールするメタルガスケットによるシール構造であって、 前記メタルガスケットにおける前記気筒形成用凹部と前記冷却水流路との間の略中央に対応する部分に前記合面に向って突出する主ビードを形成するとともに、前記ガスケットにおける前記合面と前記冷却水流路との境界部に対応する部分に前記合面および前記冷却水流路に向って突出する屈曲部を備えた台状の副ビードを形成し、 さらに、前記合面の外部側の縁部に沿う2つの突条からなり端部が開口したハーフビードを形成して、前記冷却水流路の冷却水の前記合面間への浸入を防止することを特徴とするメタルガスケットによるシール構造。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 複数の気筒形成用凹部と、前記複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路とを備えたエンジン本体におけるシリンダヘッドとシリンダボディとの合面にメタルガスケットを設置することにより前記合面をシールするメタルガスケットによるシール構造であって、 前記メタルガスケットにおける前記気筒形成用凹部と前記冷却水流路との間の略中央に対応する部分に前記合面に向って突出する主ビードを形成するとともに、 前記ガスケットにおける前記合面と前記冷却水流路との境界部に対応する部分に前記合面および前記冷却水流路に向って突出する屈曲部を備えた台状の副ビードを形成して、前記台状の副ビードの屈曲部を、前記冷却水流路の内周側に位置する屈曲部と、前記冷却水流路の外周側に位置する屈曲部とで構成し、 さらに、前記合面の外部側の縁部に沿う2つの突条からなり端部が開口したハーフビードを形成して、前記冷却水流路の冷却水の前記合面間への侵入を防止することを特徴とするメタルガスケットによるシール構造。」 なお、下線は請求人が、補正個所を示すために付した。 (2)本件補正の目的 上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「屈曲部を備えた台状の副ビード」について「前記台状の副ビードの屈曲部を、前記冷却水流路の内周側に位置する屈曲部と、前記冷却水流路の外周側に位置する屈曲部とで構成し、」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-112076号(実開平4-71865号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されているといえる。 なお、下線は、発明の理解の一助として当審において付したものである。 (ア)「本考案は内燃機関のシリンダーヘッドガスケットに関し、特に高燃焼圧のシールに対応し得るメタルシリンダーヘッドガスケットに関するものである。」(明細書第1ページ第16ないし19行) (イ)「本考案によるメタルシリンダーヘッドガスケットのシリンダーヘッドとシリンダーブロックとの間の接合面間への装着は、シリンダー穴周縁において要求される面圧を現出するのに十分な締付圧でもって組付けられる。これにより、シール部材のビードは接合面と加圧部材との間で全屈状態となり、高面圧のシール線でもってシリンダー穴周縁を囲繞する。 このとき、面圧補整部材が位置する領域における面圧は、その厚さが加圧部材の厚さよりも適当に薄いことにより、加圧部材が位置する領域におけるよりも適当に小さくなり、締付圧の有効配分を可能にする。」(明細書第4ページ第4ないし16行) (ウ)「本考案の実施例によるメタルシリンダーヘッドガスケットは、シリンダー穴1、水孔2、ボルト孔3等を開口された典型的形体で第1図に示されている。 第1図および第2図に示すように、本考案の実施例によるメタルシリンダーヘッドガスケットは、シリンダー穴1を所定の幅で囲繞するように配置された板状の加圧部材4と、加圧部材4と同一平面上に位置しかつ加圧部材の外周縁を囲繞するように配置された板状の面圧補整部材5と、少なくとも各シリンダー穴3をそれぞれ囲繞するように配置されたビード6を備えたシール部材7とから構成される。 加圧部材4は所定の厚さt_(1)を有し、面圧補整部材5の厚さt_(2)は加圧部材の厚さよりも適当に薄く選定されている。この厚さt_(1)とt_(2)の差は、ガスケットに要求される面圧分布、適用される締付圧等の使用条件によって適宜に選定される。必要ならば、水孔2を囲繞するような別の加圧部材(図示なし)を適用することも可能である。このとき、この別の加圧部材の厚さは加圧部材の厚さt_(1)より薄いが、面圧補整部材の厚さt_(2)よりも厚くなるように選定されるべきである。 シール部材7は、図示の場合、加圧部材4の両面側にそれぞれ配設されており、ビード6は加圧部材4の各面上にそれぞれ位置するように配置される。シール部材7はまた、他の開口、例えば水孔2の周縁やその外周縁にビード6′、6″が設けられて、各部位におけるシール面圧を確保している。このビード6′、6″部位における面圧は、面圧補整部材5の厚さが加圧部材4よりも薄いことにより、ビード6における面圧に比して小さな面圧となる。 本考案の実施例によるメタルシリンダーヘッドガスケットはビードの向きを変更して形成するとも可能である。例えば、第3図に示すように、前述したシール部材7のビード6、6′、6″が加圧部材4または面圧補整部材5に向かって突出して当接するように形成されているのに対し、逆にビード6、6′、6″を加圧部材4または面圧補整部材5から離れる方向へ突出する形体で形成することもできる。」(明細書第4ページ第18行ないし第6ページ第19行) 上記(ア)ないし(ウ)、及び第3図から、以下の事項が分かる。 (エ)「メタルシリンダーヘッドガスケットにおけるシリンダー穴1と水孔2との間の略中央に対応する部分にシリンダーヘッドとシリンダーブロックとの間の接合面に向って突出するビード6を形成するとともに、前記ガスケットにおける前記水孔2の周縁に対応する部分に前記接合面に向って突出する屈曲部を備えた台状のビード6′を形成し、さらに、前記接合面の外部側の縁部に沿う2つの突条からなり端部が開口したビード6″を形成すること。」 ところで、エンジン本体が複数の気筒形成用凹部と前記複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路とを備えること、およびメタルガスケットに開口された水孔が前記冷却水流路と連通することは、当該技術分野の技術常識(必要なら、前置報告書において引用された特開2005-214329号公報の【図16】の記載、同じく前置報告書において引用された特開2002-349345号公報の【図1】の記載、同じく前置報告書において引用された特開平9-152036号公報の【図2】の記載参照。)である。 そして、引用文献に記載された「シール構造」においても、メタルシリンダーヘッドガスケットに開口されたシリンダー穴1および水孔2が、それぞれ複数の気筒形成用凹部および複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路と連通していることは、明らかである。 上記記載事項(ア)ないし(エ)を、上記当該技術分野の技術常識に照らして、本願補正発明の記載に対応させて整理すると、下記事項(i)及び(ii)が記載されていることが分かる。 (i)複数の気筒形成用凹部と、前記複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路とを備えたエンジン本体におけるシリンダーヘッドとシリンダーブロックとの合面にメタルシリンダーヘッドガスケットを設置することにより前記合面をシールするメタルシリンダーヘッドガスケットによるシール構造。(特に、上記記載事項(イ)の下線を付した部分参照。) (ii)メタルシリンダーヘッドガスケットにおける気筒形成用凹部と冷却水流路との間の略中央に対応する部分にシリンダーヘッドとシリンダーブロックとの合面に向って突出するビード6を形成するとともに、前記ガスケットにおける前記合面と前記冷却水流路との境界部に対応する部分に前記合面および前記冷却水流路に向って突出する屈曲部を備えた台状のビード6′を形成し、さらに、前記合面の外部側の縁部に沿う2つの突条からなり端部が開口したビード6″を形成して、前記冷却水流路の冷却水の前記合面間への侵入を防止する。(特に、上記記載事項(ウ)の下線を付した部分、及び上記記載事項(エ)参照。) そうすると、引用文献には、以下の発明が記載されているといえる。 「複数の気筒形成用凹部と、前記複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路とを備えたエンジン本体におけるシリンダーヘッドとシリンダーブロックとの合面にメタルシリンダーヘッドガスケットを設置することにより前記合面をシールするメタルシリンダーヘッドガスケットによるシール構造であって、 前記メタルシリンダーヘッドガスケットにおける前記気筒形成用凹部と前記冷却水流路との間の略中央に対応する部分に前記合面に向って突出するビード6を形成するとともに、前記ガスケットにおける前記合面と前記冷却水流路との境界部に対応する部分に前記合面および前記冷却水流路に向って突出する屈曲部を備えた台状のビード6′を形成し、さらに、前記合面の外部側の縁部に沿う2つの突条からなり端部が開口したビード6″を形成して、前記冷却水流路の冷却水の前記合面間への侵入を防止するメタルシリンダーヘッドガスケットによるシール構造。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。) 3.対比 本願補正発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「シリンダーヘッド」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「シリンダヘッド」に相当し、以下同様に、「シリンダーブロック」は「シリンダボディ」に、「メタルシリンダーヘッドガスケット」は「メタルガスケット」に、「ビード6」は「主ビード」に、「ビード6′」は「副ビード」に、「ビード6″」は「ハーフビード」に、それぞれ相当する。 してみると、両者は、 「複数の気筒形成用凹部と、前記複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路とを備えたエンジン本体におけるシリンダヘッドとシリンダボディとの合面にメタルガスケットを設置することにより前記合面をシールするメタルガスケットによるシール構造であって、 前記メタルガスケットにおける前記気筒形成用凹部と前記冷却水流路との間の略中央に対応する部分に前記合面に向って突出する主ビードを形成するとともに、前記ガスケットにおける前記合面と前記冷却水流路との境界部に対応する部分に前記合面および前記冷却水流路に向って突出する屈曲部を備えた台状の副ビードを形成し、さらに、前記合面の外部側の縁部に沿う2つの突条からなり端部が開口したハーフビードを形成して、前記冷却水流路の冷却水の前記合面間への侵入を防止するメタルガスケットによるシール構造。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願補正発明においては、「前記台状の副ビードの屈曲部を、前記冷却水流路の内周側に位置する屈曲部と、前記冷却水流路の外周側に位置する屈曲部」とで構成するのに対し、 引用文献に記載された発明においては、「前記台状の副ビードの屈曲部」が、平面形体でどのように構成されているのか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。 4.判断 上記[相違点]について検討する。 複数の気筒形成用凹部と、前記複数の気筒形成用凹部を囲むようにして形成された冷却水流路とを備えたエンジン本体におけるシリンダヘッドとシリンダボディとの合面にメタルガスケットを設置することにより前記合面をシールするメタルガスケットによるシール構造において、「ガスケットにおける合面と冷却水流路との境界部に対応する部分に前記合面および前記冷却水流路に向って突出する屈曲部を備えた台状のビードを形成し、前記台状のビードの屈曲部を、前記冷却水流路の内周側に位置する屈曲部と、前記冷却水流路の外周側に位置する屈曲部とで構成する」ことは、周知(例えば、前置報告書において引用された特開2005-214329号公報の段落【0003】、【図1】、及び【図16】の記載、同じく前置報告書において引用された特開2002-349345号公報の段落【0010】、及び【図1】の記載、同じく前置報告書において引用された特開平9-152036号公報の段落【0031】、段落【0032】、及び【図2】の記載、特開平8-121597号公報の段落【0002】、段落【0003】、及び【図3】ないし【図5】の記載、特開平7-253160号公報の段落【0019】ないし【0021】、【図1】、及び【図3】の記載参照、以下「周知技術」という。)である。 そうすると、引用文献に記載された発明において、上記周知技術を適用し、もって、「前記台状の副ビードの屈曲部を、前記冷却水流路の内周側に位置する屈曲部と、前記冷却水流路の外周側に位置する屈曲部とで構成する」ことは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 平成23年11月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成22年9月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2.1.(1)(a)」のとおりのものである。 1.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、及びその記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「屈曲部を備えた台状の副ビード」の限定事項である「前記台状の副ビードの屈曲部を、前記冷却水流路の内周側に位置する屈曲部と、前記冷却水流路の外周側に位置する屈曲部とで構成し、」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4.」に記載したとおり、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-28 |
結審通知日 | 2012-10-02 |
審決日 | 2012-10-16 |
出願番号 | 特願2006-203824(P2006-203824) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02F)
P 1 8・ 575- Z (F02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩▲崎▼ 則昌 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
柳田 利夫 藤原 直欣 |
発明の名称 | メタルガスケットによるシール構造 |
代理人 | 特許業務法人プロスペック特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人プロスペック特許事務所 |