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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1267261
審判番号 無効2012-800002  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-01-18 
確定日 2012-11-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3172641号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3172641号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。

平成 6年10月28日 特許出願(特願平6-265014号)
平成13年 3月23日 特許権の設定登録(請求項の数7)
平成13年12月 5日 異議申立(異議2001-73253号)
平成15年 4月 8日 取消理由
平成15年 6月 9日 訂正請求書(請求項1を削除。請求項の数6)
平成16年 8月13日 異議決定(訂正を認める。請求項1ないし6に 係る特許を取り消す。)
平成16年 9月12日 東京高等裁判所出訴(平成17年行(ケ)第1 0218号)
平成16年12月 9日 訂正審判請求(訂正2004-39277号。 請求項3を削除。請求項の数5)
平成17年 2月25日 審決(訂正を認める。)
平成17年 4月13日 判決(異議決定を取り消す。)
平成17年 7月29日 異議決定(請求項1ないし5に係る特許を維持 する。)
平成24年 1月18日 本件無効審判の請求
平成24年 4月 6日 審判事件答弁書、訂正請求書
平成24年 5月17日 審判事件弁駁書
平成24年 6月 4日 審理事項通知書
平成24年 7月10日 口頭審理陳述要領書(被請求人。以下「陳述要 領書(被請求人)」という。)
平成24年 7月11日 口頭審理陳述要領書(請求人。以下「陳述要領 書(請求人)」という。)
平成24年 7月24日 口頭審理
平成24年 8月 7日 上申書(請求人)
平成24年 8月28日 上申書(被請求人)

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
平成24年4月6日の訂正請求書において、被請求人が求めた訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許明細書の訂正を求めた平成16年12月9日の請求書に添付された訂正明細書(以下「訂正された本件特許明細書」という。)を、平成24年4月6日の訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるもので、要するに、下記(1)?(5)のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正された本件特許明細書特許請求の範囲の請求項1において、「前記入賞役は、通常遊技状態から該通常遊技状体よりも遊技者に付与する利益が大きい有利遊技状態に移行させるための特定の入賞役を含み、」という構成要件を付加して限定する。

(2)訂正事項2
訂正された本件特許明細書特許請求の範囲の請求項1において、「前記入賞確率テーブルは、入賞役と、当該一の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役と、当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータとを含み、」とあったものを「前記入賞確率テーブルは、前記特定の入賞役と、前記特定の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役と、当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータとを含み、」として記載内容を明瞭にする。

(3)訂正事項3
訂正された本件特許明細書特許請求の範囲の請求項1において、「前記複数の内部的当選役の各々は、前記有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じであり、」という構成要件を付加して限定する。

(4)訂正事項4
訂正された本件特許明細書特許請求の範囲の請求項1において、「前記内部的当選役記憶手段は、前記判定手段で判定された内部的当選役が特定の内部的当選役である場合について、前記可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合には当該内部的当選役に対応する図柄の組合せが揃うまで当該内部的当選役の発生した状態を保持し、」とあったものを「前記内部的当選役記憶手段は、前記判定手段で判定された内部的当選役が前記特定の入賞役を構成する内部的当選役である場合について、前記可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合には当該内部的当選役に対応する図柄の組合せが揃うまで当該内部的当選役の発生した状態を保持し、」として記載内容を明瞭にする。

(5)訂正事項5
訂正された本件特許明細書【発明が解決するための手段】の項及び【作用】の項の記載を、訂正された本件特許明細書特許請求の範囲の請求項1に係る上記訂正事項1?4の訂正内容に整合させる。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正された本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された「入賞役」について、「入賞役」に「特定の入賞役」が含まれることを限定するとともに、その「特定の入賞役」の内容を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正された本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の一つの態様では、乱数値が内部的当選役のいずれかに該当するか否かの判断が、遊技者に付与する利益の大きい内部的当選役から始めて利益の小さい内部的当選役まで順次行われる。」【0025】との記載があるから、遊技者に付与する利益の大きい遊技状態への移行を伴う複数の内部的当選役により構成される「入賞役」なる発明特定事項も、また、遊技者に付与する利益が大きい遊技状態への移行を伴うものといえる。したがって、訂正事項1は、訂正された本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入するものではない。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

なお、請求人は、訂正事項1は新規事項の追加及び独立特許要件についての訂正要件を満たしていない旨主張している(審判事件弁駁書第3ページ16?21行)。
そこで、この点について以下検討する。
新規事項に関して、請求人は、訂正事項1で付加された「遊技者に付与し得る利益」とは、「ゲーム終了時に払い出されるメダル枚数-投入メダル枚数」となり、払い出されたメダルよりも、投入したメダルの方が多かったときには、「利益」といわないため、訂正事項1は、新規事項の追加に該当すると主張する。
しかしながら、訂正事項1で特定された「遊技者に付与し得る利益」の大小とは、メダルの払出量について、通常遊技状態に対して有利遊技状態で得ることのできる相対的な利益の大小のことであることは明らかであり、請求人の主張するような新規事項の追加には該当しない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(2)訂正事項2及び4について
訂正事項2及び4は、訂正事項1で、訂正された本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された「入賞役」に「特定の入賞役」が含まれることを限定したことに伴い、同請求項1の他の箇所の記載を整合させたものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正された本件特許明細書特許請求の範囲請求項1に記載された「入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役」の利益について、「有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じ」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正された本件特許明細書の発明の詳細な説明の【表2】及び段落【0070】?【0076】に、内部的当選役BB[1]([1]は○内に1。以下同様とする。)に対応する入賞組合せ[1]「7-7-7」、または、内部的当選役BB[2]に対応する入賞組合せ[2]「BAR-BAR-7」が揃った場合、BB遊技中にそれぞれ360枚のコイン払い出しが行われることが示されているから、入賞組合せ[1]「7-7-7」と入賞組合せ[2]「BAR-BAR-7」とのBB遊技中に遊技者に付与し得る利益は、例えば、360枚という同一枚数のメダルであり、同じであるといえる。したがって、訂正事項3は、訂正された本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入するものではない。

なお、請求人は、訂正事項3は独立特許要件及び特許請求の範囲の実質拡張・変更についての訂正要件を満たしていない旨主張している(審判事件弁駁書第3ページ22行?第6ページ18行)。
そこで、この点について次に検討する。
独立特許要件に関して、請求人は、「実施例に則して説明すると、『777』が当選したときと、『BARBAR7』が当選し、有利遊技状態に移行したとき、どのような制御を行えば『遊技者に付与し得る利益が同じ』とできるのか、不明である。」(審判事件弁駁書第4ページ第23?25行を参照。)から、訂正された本件特許明細書の記載は、実施可能要件を満たすものでないと主張する。
しかしながら、一般に、科学的事象の比較分析は、通常、比較すべき条件のみを異ならせ、それ以外の条件を全て同一として行われるところである。そこで、本件訂正についてみると、BB入賞役である入賞組合せとして、[1]「7-7-7」、または、[2]「BAR-BAR-7」が揃った場合に、それぞれの入賞組合せに対応した遊技で遊技者に付与し得る利益を求めるには、比較分析すべき入賞組合せのみを異ならせ、入賞組合せ以外の条件を全て同一として行うこととなる。そして、例えば、入賞組合せ以外の条件として、操作方法に着目すると、遊技者が遊技中に例えば360枚という同一のメダル払出し枚数が得られるように同一の操作が行われることを前提として「遊技者に付与し得る利益」を算出することになり、訂正された本件特許明細書の発明の詳細な説明には、そのことが当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。したがって、訂正された本件特許明細書には、本件訂正の請求項1?5に係る発明(以下「本件訂正発明1?5」という。)を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、訂正事項3は、請求人の主張するような独立特許要件違反には該当しない。
また、特許請求の範囲の実質拡張、変更に関して、請求人は、訂正事項3の訂正により、「どの図柄の当選であっても有利遊技では同一の利益を与えることで、どの特定図柄の入賞であっても有利遊技に利益差を設けない、という従来にない新しい解決課題を有している構成である。これは、訂正に伴った新たな請求項により、訂正前の請求項に記載の発明と訂正後の請求項に記載の発明とで解決しようとする課題が異なってしまった発明関係であり、『実質上特許請求の範囲を変更する訂正』に該当するものである。」(審判事件弁駁書第6ページ5?10行)と主張する。しかしながら、訂正事項3により、「入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役」に入賞した有利遊技状態において、遊技者に付与し得る利益が同じであることが特定されても、本願発明の課題である「所定の払出率を維持しつつ、従来よりも遊技者の技術を関与させるようにしてゲームの興趣を向上させた遊技機を提供すること」なる課題を解決するものであることに変わりなく、訂正事項3に係る技術事項を特定することにより新たな課題が解決されたものとまで認められない。したがって、訂正事項3は、請求人の主張するような実質上特許請求の範囲を変更する訂正に該当しない。
ゆえに、請求人の上記主張は採用できない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正された本件特許明細書特許請求の範囲請求項1に係る訂正事項1?4の訂正に伴い、訂正された本件特許明細書【発明が解決するための手段】の項及び【作用】の項の記載を整合させるための訂正であるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き、同条第2項及び同条第3項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正発明1?5は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】複数の図柄を可変表示する可変表示部と、
ゲーム毎にサンプリングされる一の乱数値が遊技機が揃えようとする一の入賞図柄組合せにのみ対応するように予め設定された入賞確率テーブル中のデータと前記乱数値とを照合することにより内部的当選役を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に従い内部的当選役の発生を記憶する内部的当選役記憶手段と、
前記内部的当選役記憶手段に記憶された内部的当選役に対応する図柄の組合せが出現するように前記可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部と、
遊技者の停止操作に応じて前記制御部に前記可変表示動作の停止制御を実行させる信号を発生する可変表示停止手段と、
遊技者に内部的当選をした入賞役を報知する報知手段と、
を備えた遊技機において、
前記入賞役は、通常遊技状態から該通常遊技状態よりも遊技者に付与する利益が大きい有利遊技状態に移行させるための特定の入賞役を含み、
前記入賞確率テーブルは、前記特定の入賞役と、
前記特定の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役と、当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータとを含み、
前記複数の内部的当選役の各々は、前記有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じであり、
前記制御部は、前記入賞確率テーブルを格納する記憶手段を有し、
前記乱数値がサンプリングされた時、その乱数値を前記入賞確率テーブル中のデータと照合して前記複数の内部的当選役のいずれかに該当する場合には、前記可変表示停止手段での前記信号の発生タイミングに応じて当該内部的当選役を示す入賞図柄組合せを表示するように前記可変表示部の動作を制御し、
前記内部的当選役記憶手段は、前記判定手段で判定された内部的当選役が前記特定の入賞役を構成する内部的当選役である場合について、前記可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合には当該内部的当選役に対応する図柄の組合せが揃うまで当該内部的当選役の発生した状態を保持し、
前記報知手段は、前記内部的当選役記憶手段で内部的当選役の発生した状態が保持される場合に、その内部的当選をした入賞役を報知する
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
請求項1の遊技機において、前記制御部は、前記乱数値が前記内部的当選役のいずれかに該当するか否かの判断を、遊技者に付与する利益の大きい内部的当選役から始めて該利益の小さい内部的当選役まで順次行うことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
請求項1の遊技機において、前記可変表示部は外周に複数の図柄を配列した複数の回転リールで構成され、前記報知手段は前記回転リールの内側に設置された発光体で構成されていることを特徴とする遊技機。
【請求項4】
請求項1の遊技機において、前記報知手段は前記制御部からの制御信号に応じて動作する効果音発生手段で構成されていることを特徴とする遊技機。
【請求項5】
請求項1の遊技機において、前記制御部は、前記乱数値が前記内部的当選役のいずれかに該当するとき、前記可変表示動作の停止により前記可変表示部に出現し得る図柄の組合せが特定の入賞図柄でない場合は、予め設定された所定の図柄を出現させるように前記可変表示部を制御することを特徴とする遊技機。」

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「本件特許は、特許法第29条第2項の規定に該当しているので、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきである。」との審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書(請求人)を提出した。そして、証拠方法として、甲第1?21号証を提出している。
請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりのものである。
訂正された本件特許明細書特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、甲第1?23号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。
したがって、本件発明1?5は、特許法第29条第2項の規定に該当するので、本件特許は無効とされるべきものである。
さらに、平成24年7月24日の口頭審理において、当審により、請求人に対して甲第21号証に関係する補充資料の提出を求めたところ、平成24年8月7日の上申書(請求人)において、証拠方法として、甲第28?30号証を追加提出している。

[証拠方法]
甲第 1号証:特開昭59-186580号公報
甲第 2号証:月刊「パチスロ必勝ガイド 平成3年11月号」 白夜書 房平成3年11月1日発行 第47?49ページ
甲第 3号証:月刊「パチスロ必勝ガイド 平成5年12月号」 白夜書 房平成5年12月1日発行 第35?37ページ
甲第 4号証:実願昭60-74971号(実開昭61-191081号 )のマイクロフイルム
甲第 5号証:実願昭60-36593号(実開昭61-151784号 )のマイクロフイルム
甲第 6号証:特開平6-238035号公報
甲第 7号証:特開平4-97765号公報
甲第 8号証:特開平6-7500号公報
甲第 9号証:特開平4-164471号公報
甲第10号証:特開平6-225961号公報
甲第11号証:特開平5-168753号公報
甲第12号証:特開平6-165850号公報
甲第13号証:特開平6-304309号公報
甲第14号証:パチスロ大図鑑2001 第35ページ
甲第15号証:パチスロ大図鑑2001 第56ページ
甲第16号証:パチスロ大図鑑2001 第72ページ
甲第17号証:特開平6-114140号公報
甲第18号証:特開平4-164470号公報
甲第19号証:必勝パチスロファン 平成6年4月号 株式会社日本文芸 社 平成6年4月30日発行 第20?23ページ
甲第20号証:月刊「パチスロ必勝ガイド 平成5年4月号」 白夜書房 平成5年4月1日発行 第6?13ページ
甲第21号証:必勝パチスロファン 1994年増刊7月号 VOL25 日本文芸社 第75?79ページ
甲第22号証:特許第2574912号
甲第23号証:特開平1-198584号公報
甲第28号証:必勝パチスロファン 平成6年4月号 株式会社日本文芸 社 平成6年4月30日発行 第114?115ページ
甲第29号証:パチスロ攻略マガジン 平成6年5月号 株式会社双葉社
平成6年4月7日国立国会図書館所有 第60ページ
甲第30号証:パチスロ攻略マガジン 平成6年7月号 株式会社双葉社
平成6年6月6日国立国会図書館所有 第22ページ

なお、甲第14?16号証は、2001年に発行された図鑑であり、その中に記載された各機種が発行前のいつの時点で公知になったのかについて示すものではない。

2 被請求人主張の概要
これに対して、被請求人は、審判事件答弁書において「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書(被請求人)、及び、上申書(被請求人)を提出した。
そして、口頭審理の結果も総合すると被請求人の主張は、概略、次のとおりである。
本件発明1?5は、甲第1?23号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものではなく、本件特許は無効とされるべきものではない。

第5 甲第1?23号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明
1 甲第1号証(特開昭59-186580号公報)
甲第1号証には、図面とともに以下の記載がある。
ア 「1 スタートレバーの操作により回転駆動される複数のリールと、これらのリールを停止させるリールストツプ手段とを有するスロツトマシンにおいて、前記リールの回転駆動後に、順次発生される乱数列から一つの乱数を特定するサンプリング手段と、前記特定された乱数が確率テーブル中のいかなる群に属するかを比較照合する手段と、前記比較照合の結果を入賞ランク別のリクエスト信号として出力するリクエスト発生手段と、前記リクエスト信号を評価し、前記リールのストツプ位置を設定すると共に、前記リールストツプ手段を制御するリールストツプ制御手段とを備えたことを特徴とするスロツトマシン。
2 前記リールを停止させるべく操作されるストツプボタンを設け、前記リールストツプ制御手段がこのストツプボタンの操作信号によつて起動される特許請求の範囲第1項に記載のスロツトマシン。」(第1ページ下段左欄5行?下段右欄3行)
イ 「第6図は本発明スロツトマシンに利用されるマイクロコンピユータの一例を示すシステムブロツク図である。第6図において破線ブロツクAはメインCPU50、ROM51、RAM52を含むメインコントロール部である。ROM51には前述したシンボルマークとシンボルマークコードとの対応表、入賞に相当するシンボルマークコードおよび入賞メダル支払い枚数表の他、実行されたゲームに関して入賞させるか否かを決定し、入賞させる場合にその入賞の高低に応じたヒツトリクエストを発生させる入賞確率テーブルなどがストアされている。」(第3ページ右下欄第20行?第4ページ左上欄第10行)
ウ 「破線ブロツクBはリール駆動監視ブロツクである。・・・ブロツクCはストツプ操作ブロツクで、・・・ストツプボタンST1?ST3、その押圧操作を検出するストツプ信号発生部65を含む。」(第4ページ右上欄7行?左下欄1行)
エ 「以上のシステム構成によれば、前述してきたフローチヤートにより示した基本的ゲーム進行に関する判断処理は所謂メインCPU50による所定の実行プログラムに従つて行ない得る。」(第4ページ左下欄16?19行)
オ 「次に本発明の特徴であるヒツトリクエストの発生に関して詳述する。ヒツトリクエストの発生は、前述のようにゲーム開始時にサンプリングされる乱数値と、ROM上の入賞テーブルにストアされた入賞を与えるべき数値群との照合の結果得られることになる。」(第4ページ左下欄20行?右下欄5行)
カ 「第9図は発生、更新される乱数値のサンプリング、ヒツトリクエストチエツク処理のフローチヤートである。・・・ゲーム開始後例えばスタートレバーの操作後の所定のタイミング信号・・・により、その時点で乱数値RAM80(第8図)に存在する乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は第9図のフローチヤートに従い、後述する入賞確率テーブルと照合され、大ヒツトに該当する数値であれば大ヒツトリクエスト信号の発生、また中ヒツトに該当する数値であれば中ヒツトリクエスト信号の発生というように小ヒツトまでの判断、処理がなされいずれかのヒツトリクエストが発生されるかあるいはヒツトリクエストなしかがチエツクされることになる。」(第5ページ左上欄12行?右上欄9行)
キ 「第10図は入賞確率テーブルの概念図である。・・・B1、M1、S1それぞれの値が100、500、1000であるとすると、サンプリングされた乱数値が100未満であれば大ヒツト、100以上500未満であると中ヒツト、500以上1000未満なら小ヒツトの各リクエストが発生され、1000以上ではヒツトリクエストなしとなるものである。従つてこの入賞確率テーブルはいわば入賞の確率を決定する機能をもつと言える。」(第5ページ右上欄14行?左下欄13行)
ク 「これまでに述べてきた大、中、小の各ヒツトの例としては、大ヒツトが15枚のメダル支払いの後ボーナスゲームができるようになるもの、中ヒツトが10?15枚のメダル支払い、小ヒツトが2?5枚程度のメダル支払など適宜設定される。ボーナスゲームとしては、例えばメダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされ、このような手順で数回のゲームができるようにすることなどが考えられる。」(第5ページ頁右下欄8?18行)
ケ 「このヒツトリクエストの発生に伴うリールの回転停止制御について述べる。」(第5頁右下欄20行?第6頁左上欄1行)
コ 「まずストツプボタンの操作後、シンボルマークが例えば4個分移動するまでの間にリールを停止させるようにするものとする。そしてストツプボタンが操作された時点でのリールの位置から、これに後続しているシンボルマーク4個までの計5個のシンボルマークが何であるかをチエツクするようにしてある。このようにシンボルマークをチエツクして、すでにセツトアップされたヒツトリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマークがその5個のチエツク範囲内にあればそこでリールを停止させることになる。」(第6ページ左下欄17行?右下欄8行)
サ 「リールの処理は4コマずれを想定して説明してきたが、このためヒツトリクエストに対応したシンボルがその4コマずれの範囲内に存在しないこともあり得る。(特に大ヒツトシンボルは少ないため、充分あり得る。)このような場合にはヒツトリクエストを満足しない結果となつてしまい、設定された入賞確率が低下することになり、特に大ヒツトでその影響が大きくなる。これを適正化するためには、ヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合にはそのヒツトリクエストを次回のゲームまで保存するようにすればよい。」(第9ページ右下欄10行?第10ページ左上欄1行)
シ 「本発明によれば、まずスタートレバーの操作タイミングという任意性のある時点で、乱数値をサンプリングし、このサンプリングされた値を入賞確率テーブルと照合してヒツトリクエストを発生させる。そして、このヒツトリクエストに応じた入賞が得られるように各リールを制御すると共に、このリール制御にゲーム者のストツプボタン操作タイミングという限定条件を加味することによつて、ランダム性と遊戯者の技術とをミツクスすることができることになる。」(第10ページ左上欄11?20行)
ス 第9図のフローチヤートには、「大ヒツト」、「中ヒツト」、「小ヒツト」の順にヒツトリクエストチエツク処理が行われることが示されている。
セ 上記記載事項及び第15図の図示内容によると、入賞シンボルテーブルに、15枚のメダル支払いの後ボーナスゲームができる大ヒツトのシンボルマークの組合せとして「A A A」、「B B B」、「C C C」の3種類が設定されることが示されている。

上記記載事項ア?シ及び上記ス?セの認定事項によると、甲第1号証には次の発明(以下「甲第1号証の発明」という。)が記載されていると認められる。
「スタートレバーの操作により回転駆動される複数のシンボルマークが付されたリールと、スタートレバーの操作後の所定のタイミング信号により、その時点で乱数値RAM80に存在する乱数値をサンプリングして、そのゲームの乱数値として決定し、決定された乱数値は入賞確率テーブルと照合され、大ヒツトに該当する数値であれば大ヒツトリクエスト信号の発生、または中ヒツトに該当する数値であれば中ヒツトリクエスト信号の発生というように小ヒツトまでの判断、処理がなされいずれかのヒツトリクエストが発生されるかあるいはヒツトリクエストなしかがチエツクされ、前記リクエスト信号を評価し、前記リールのストツプ位置を設定すると共に、リールのストップを制御するリールストツプ制御手段とを備え(上記記載事項ア、カ)たスロツトマシンにおいて、
ヒツトには、15枚のメダル払出し後にボーナスゲームができるようになる大ヒツトを含み、前記リールストツプ制御手段は、ストツプボタンの操作信号によつて起動され、ストツプボタンが操作された時点でのリールの位置から、これに後続しているシンボルマーク4個までの計5個のシンボルマークをチエツクして、すでにセツトアツプされたヒツトリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマークがこの5個のチエツク範囲内にあればそこでリールを停止させる(上記記載事項コ)ものであり、スロツトマシンに利用されるマイクロコンピユータはメインコントロール部A、リール駆動監視ブロツクB、ストツプ操作ブロツクCより成り(上記記載事項イ?ウ)、メインコントロール部AはCPU50、ROM51、RAM52を含み、上記ROM51には、シンボルマークとシンボルマークコードとの対応表、実行されたゲームに関して入賞させるか否かを決定し、入賞させる場合にその入賞の高低に応じたヒツトリクエストを発生させる入賞確率テーブルがストアされており(上記記載事項イ)、15枚のメダル支払いの後ボーナスゲームができる大ヒツトのシンボルマークの組合せには、「A A A」、「B B B」、「C C C」の3種類が設定され(上記記載事項セ)、大ヒツトのヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合にはそのヒツトリクエストを次回のゲームまで保存するようにし(上記記載事項サ)たスロツトマシン。」

2 甲第2号証(月刊「パチスロ必勝ガイド 平成3年11月号」 白夜書房 平成3年11月1日発行)
甲第2号証には、以下の記載がある。
ア 「まずは、役の種類を覚えておこう。ビッグボーナスとレギュラーボーナスはもちろんのこと、外面的にはほかに5種類の小役がある。順にあげると王冠(15枚)、ベル(15枚)、コイン(15枚)、プラム(4枚)、チェリー(2枚)となる。」(第48ページ2段18?27行)
イ 「ありふれた例えではあるが、マジカルベンハーの役の決定システムを『くじ引き』になぞらえてみよう。くじ引きは2回、1回目はプログラムの初期段階に、2回目はレバーのたたかれた瞬間に行なわれる。1本目のくじは予選用、2本目のくじが本選用のものになる。両方のくじが当って初めてなんらかの役がつくわけだ。
いずれのくじも総本数は256、1本1本に0?255の番号が書いてある。用意されている当たりくじは5種類。列挙しよう。『ビッグボーナス』『レギュラーボーナス』『王冠』『ベル・コイン』『プラム・チェリー』。」(第49ページ1段3?16行)
ウ 第48ページ右上の「マジカルベンハー払い出し表」には、ビッグボーナスゲームには、「7 7 7」と「3 3 3」の2種の当たり図柄の組合せが、レギュラーボーナスゲームには、「7 7 3」と「3 3 7」の2種の当たり図柄の組合せが、それぞれあることが示されている。

3 甲第3号証(月刊「パチスロ必勝ガイド 平成5年12月号」 白夜書房 平成5年12月1日発行)
甲第3号証には、第35ページ左下の「ソレックス払い出し表」に、「BIGCHANCE」には「7 7 7」が、「SINGLEBONUS」には「ベル ベル ベル」のそれぞれ1種の当たり図柄の組合せがあることが示されている。

4 甲第4号証(実願昭60-74971号(実開昭61-191081号)のマイクロフイルム)
甲第4号証には、以下の記載がある。
ア 「複数のシンボル列の移動を、ゲーム中に発生された入賞リクエスト信号によって停止制御するようにしたスロットマシンにおいて、
前記入賞リクエスト信号が発生されたことに応答して作動する表示装置を設け、入賞リクエスト信号が発生されたことを報知するようにしたことを特徴とするスロットマシン。」(第1ページ5?11行)
イ 「サンプリングされた乱数値は、カウンタ37にストアされる。リクエスト信号発生回路38は、こうして得られた乱数値をROM39のデータと比較し、一定範囲内のときにはリクエスト信号を出力する。」(第10ページ10?14行)
ウ 「リクエスト信号発生回路38からリクエスト信号が発生されたときには、表示ランプ駆動回路55に駆動信号が出力される。この結果、配当パネル15内に設けられた表示ランプ16が点灯動作してリクエスト信号の発生、すなわちボーナスゲームとなるシンボルの組み合わせが得やすいように、リール4?6が停止制御される状態になっていることを表示する。」(第12ページ4?11行)
エ 「なお、リクエスト信号が発生されたことを表示するために、前記表示ランプ16に代えて発音表示装置を使用してもよい。」(第14ページ18?20行)

5 甲第5号証(実願昭60-36593号(実開昭61-151784号)のマイクロフイルム )
甲第5号証には、以下の記載がある。
ア 「本考案はスロットマシンにおけるリール装置の改良に関する。」(第1ページ16?17行)
イ 「照明具20のランプ21は勝ちゲームに該当するシンボル19を照明するように構成され、例えば第2図において中央のライン7上のシンボル19の組合せが勝ちゲームのときには、それに対応する各ランプ21が発光して、これらシンボル19が照明により浮き上り、プレイヤーに直接且つ強烈にアピールできるようになっている。」(第6ページ1?7行)

6 甲第6号証(特開平6-238035号公報)
甲第6号証には、以下の記載がある。
ア 「図2は、このボーナスゲームの設定例を示すもので、数字「7」のシンボル49の組合せが成立したときは、投入メダル1枚につき15枚のメダルが払い出された後、5回のボーナスゲームが実行できるようになっている(以下これを「ボーナスゲームA」という)。
またリンゴのシンボル50の組合せが成立したときは、投入メダル1枚につき8枚のメダルが払い出された後、2回のボーナスゲームが実行できるようになっており(以下これを「ボーナスゲームB」という)、パイナップルのシンボル51の組合せが成立したときは、投入メダル1枚につき5枚のメダルが払い出された後、1回のボーナスゲームが実行できるようになっている(以下これを「ボーナスゲームC」という)。一方、サクランボのシンボル52の組合せが成立したときは、メダルの払出が行われずにボーナスゲームへ移行し、4回のボーナスゲームが実行できるようになっている(以下これを「ボーナスゲームD」という)。」(段落【0015】?【0016】)
イ 「前記ボーナスゲームA?Dにかかる各シンボル49?52の組合せは、それぞれ制御部による引込み停止制御(詳細は後述する)により有効ライン上に成立するよう、それぞれの出現確率a,b,c,d(単位はいずれも%)が設定されている。これらの出現確率は、具体的には後述する乱数発生器29が出力する乱数値の範囲を割り当てることにより設定されるもので、図中の「当り条件」の欄には、各ボーナスゲームA?Dごとに乱数値の範囲が設定される。
通常のゲームにおけるメダルの払出枚数の期待値を一定値に保つためには、前記ボーナスゲームA,B,Cの出現確率a,b,cは固定する必要があるが、ボーナスゲームDについては、シンボル52の組合せの成立に対してメダルの払出が行われないため、その出現確率dを自由に変更できるのである。」(段落【0018】?【0019】)
ウ 「メダルの投入がありかつ始動レバー7が操作されると、前記リール制御部30にはスタート信号が入力され、リール制御部30はスタート指令を発してリール駆動部23を作動させる。
前記スタート信号は、CPU16内の抽選部31にも与えられる。この抽選部31はいずれかのボーナスゲームA?Dにかかるシンボルの組合せが成立するよう引込み停止制御を行うか否かを決定するためのもので、スタート信号を受けて前記乱数発生器29の出力した乱数値を取り込み、この乱数値がROM17内に記憶させた乱数値の範囲に含まれるか否かを各ボーナスゲームA?D毎に判断し、その結果をリール制御部30に出力する。」(段落【0027】?【0028】)

7 甲第7号証(特開平4-97765号公報)
甲第7号証には、以下の記載がある。
ア 「複数のリール1、2、3は複数のシンボルが外周に配列されており、その中には少なくとも当該ゲームの入賞を構成する第1シンボル(第1キャラクタ)と、入賞を妨げる第2シンボル(第2キャラクタ)か含まれている。以下に説明する実施例では第1シンボルとして“7B”、“5B”、“AB”(“7B”又は“5B”)、第2シンボルとして“BL”(空白)を使用している。これらのリール1、2、3の停止位置は乱数発生手段4から発生される複数の乱数値により決定される。すなわち、乱数発生手段4は、制御手段9の指示により、リール1、2、3に対して乱数N_(R1)、N_(R2)、N_(R3)を発生し、これらの乱数か1つずつ各リールに割り当てられる。それぞれの乱数は各リールの停止位置のいずれか1つに対応しており、停止位置には1つのシンボルが対応しているので、各乱数により各リールにおける1つのシンボルが決定される。例えば、乱数N_(R1)、N_(R2)、N_(R3)により、“7B-5B-BL”などのシンボル組合せが定まる。
本発明では、コイン投入後の最初の乱数により決定されたシンボル組合せを“基準シンボル組合せ”とし、この基準シンボル組合せと第1記憶手段5に記憶された第1内部リールストリップおよび第4記憶手段8に記憶された入賞テーブルを参照して、入賞の有無を決定している。そのため、制御手段9は乱数N_(R1)、N_(R2)、N_(R3)に基づき第1内部リールストリップを参照して基準シンボル組合せを決定し、入賞テーブルに基づき入賞の有無、種類を判定する。
この場合、基準シンボル組合せを構成する全てのシンボルか同一でない場合(例えば、7B-7B-5B)には、第2記憶手段6に記憶された第2内部リールストリップに基づき、再度、乱数を発生させる。そして、2回目に発生された乱数により決定されたシンボル組合せが、基準シンボルにより第1内部リールストリップに基づくコイン支払い量と合致する場合には、このシンボル組合せをゲーム結果として表示、すなわち、その出目か表れるようにリール1、2、3の停止位置を制御する。
また、基準シンボル組合せに第2シンボルが含まれている為に、入賞に該当しない場合、制御手段9は第3記憶手段7に記憶された第3内部リールストリップに基づき、再度、乱数を発生させる。
そして、2回目に発生された乱数により決定されたシンボル組合せが、基準シンボルにより第1内部リールストリップに基づくコイン支払い量と合致する場合には、このシンボル組合せをゲーム結果として表示、すなわち、その出目か表れるようにリール1、2、3の停止位置を制御する。」(第8ページ右上欄3行?右下欄13行)
イ 「第3図は上述したスロットマシンのリール外周に巻かれるリールテープの概要とそのシンボル組合せを示すものである。このリールテープは7B、5B、AB、BLのシンボルを含み、それぞれのシンボルに停止位置が対応している。この場合、リールが停止可能な位置は全部で6か所あり、停止位置の奇数番号にシンボルが配置されている。前述した乱数発生部23から出力される乱数は1対1の関係で上記停止位置と対応する。例えば、“7B-5B-BL”のシンボル組合せを出す場合、リールの停止位置は1、3、6になる(第3図(a)参照)。
この実施例によると、当り組合せは5種類存在し、そのシンボル組合せにより支払われるコイン量は20、10、5倍になっている。一方、ハズレ組合わせはBLを含み、その組合せは5種類になっている。そのシンボル組合せにより支払われるコイン支払い量(P/O)は0である(同図(b)参照)。この実施例において、BLは入賞構成を単独で阻害するシンボルとして機能する。したがって、例えば“7B-7B-BL”や“5B-BL-7B”はハズレ組合せになるが、BLか単独(1つ)ではない場合(例えば“BL-BL-BL”)には当り組合せにしてもよい。」(第5ページ左上欄17?20行)
ウ 「第5図乃至第7図は前述したROM30に記憶された内部リールストリップの一例を示すもので、第8図は本実施例に係るスロットマシンの遊戯方法を示すものである。まず、各々のリール15、16、17に対応する乱数か乱数発生部23により選定される(ステップ101)。この場合、リール数は3つなので、3個の乱数が選定される。次に、これらの乱数を第1内部リールストリップに適用し(ステップ102)、各リール上のシンボルを特定する。例えば、3回のゲームを行った結果、[1]1-2-1(第1ゲーム)、[2]1-5-1(第2ゲーム)、[3]1-5-10(第3ゲーム)の乱数を得たと仮定する。この場合、第1ゲームは“7B-7B-7B”、第2ゲームは“7B-5B-7B”、第3ゲームは“7B-5B-BL”という基準シンボル組合せを得たことになる。次に、ゲーム毎に基準シンボル組合せを入賞テーブル(第3図(b)参照)と比較し、当りかハズレかを判定する(ステップ103)。」(第5ページ右下欄11行?第6ページ左上欄9行)
エ 第3図(b)には、シンボル組合せ“7B-7B-5B”、“5B-5B-7B”、“AB-AB-AB”の場合に支払われるコイン量がいずれも5倍になることが示されている。

8 甲第8号証(特開平6-7500号公報)
甲第8号証には、以下の記載がある。
ア 「【作用】本発明では各リールの停止位置をコントロールするのではなく、絵柄の組合せおよび配当を直接に乱数で決定するようにしている。したがって、配当テーブルにおける絵柄の組合せを任意に設定することができ、一定の返還割合を維持しつつも、たとえば高配当の絵柄の組合せを多くしたり(このばあい入賞確率は小さくなるよう乱数と配当テーブルとの対応関係が選定される)、あるいは逆に低配当の絵柄の組合せを多くしたりすることが可能となる。」(段落【0011】)
イ 「ハンドル2が引かれると、スイッチ4がONとなり信号を発するが、この信号はチヤタリングやノイズを含んでいるため波形成形部5で波形を成形したのちタイマ6に送られる。スイッチ4と波形成形部5とタイマ6とはハンドル信号検出部7を構成している。
タイマ6の出力信号は乱数発生回路8のラツチ9にデータラツチ信号として入力される。一方ラッチ9には、発振器10のフリーランにより常にフリーランの状態になっているカウンタ11からの高速で更新されているデータ信号が入力されている。このようにフリーランの状態のデータが常に入力されているラツチ9に前記タイマ6からのハンドル信号が入力すると、ハンドル信号の入力時のデータに基づく乱数情報(配当テーブルメモリ13のアドレス情報)がラツチ9から比較演算部12に送られる。
比較演算部12は、絵柄の組合せおよびそれに対応する配当のテーブルがストアされている配当テーブルメモリ13から、乱数情報にアドレスにストアされている絵柄の組合せおよび配当を読み取る。
つぎにリールの絵画の位置検出機構について図2および図3に基づいて説明する。図3はリール2a、2b、2cにそれぞれ配設されているストップディスク14と1対のフオトセンサ15a、15bおよび16a、16bとから構成されている公知の絵柄位置検出装置の概略斜視図である。ディスクの周囲には各絵柄に対応した溝17が設けられており、さらに中心寄りに各絵柄に対応した孔18が配列されている。この孔18のうちの1つのさらに中心寄りに基準用の孔19が1個設けられている。フオトセンサ15a、15bは孔18に照準が合わされており、フオトセンサ16a、16bは基準孔19に照準が合わされている。
ディスク14が回転し始めるとフオトセンサ15a、15bにより通過した絵柄のコマ数だけコマパルス信号が生ずる。このコマパルス信号は絵柄位置検出部20の波形成形部21に送られ波形が成形されたのち、カウンタ22に入力される。一方、基準孔19がフオトセンサ16a、16bを通過するごとに基準パルス信号が生じ、波形成形部23に送られ波形を成形したのちカウンタ22に入力される。カウンタ22では基準パルス信号が入力されるごとにコマパルス信号を零に戻す。したがってカウンタ22からの出力には現在フオトセンサ15a、15bを通過している絵画が基準の絵柄から何番目であるかという絵柄位置情報が含まれている。この絵柄情報は前記比較演算部12に送られる。
比較演算部12で前記乱数によりランダムに決定された絵柄の組合せ情報と絵柄位置検出部20からの現在位置情報とを比較演算し、リール停止位置情報をリール停止部24のダウンカウンタ25に出力する。
すなわち、停止ボタン3a、3b、3cの押圧により生じた信号を停止信号部34の波形成形部35で波形を成形したのち比較演算部12に停止信号を送る。停止信号が入力されると比較演算部12では、停止信号入力時現在の絵柄から所定コマ数内(所定コマ数は停止信号入力時現在の絵柄も含めて通常5コマ程度に設定される。あまりコマ数を多くとりすぎると遊技者の意思を加えたことにならないからである。)に前記乱数によって決定された絵柄があるか否かを比較し、もしその絵柄があるならその位置でリールを停止させるためのリール停止位置情報をダウンカウンタ25に出力する。一方、もし所定コマ数内に目的とする絵柄がないときは、たとえば常に2コマ目に停止させるとか、または乱数により定められた所定コマ数内のコマの位置に停止させる、リール停止位置情報をダウンカウンタ25に出力する。なお、後者のばあいは、最終的には入賞できないことになるが、このばあいは最終的に入賞できない確率も考慮して全体として所定の配当率となるように配当テーブルを作成しておく必要がある。」(段落【0017】?【0023】)

9 甲第9号証(特開平4-164471号公報)
甲第9号証には、以下の記載がある。
ア 「各リールの遮光片1a、2a、3aがフォトセンサー17、18、19を通過することにより、全てのリールより1回のリセットパルスが発生される。そして、ステップ52においてリール1、2、3の停止位置がランダムに決められ、それぞれのリールのコードナンバーがRAM32内へ記憶される。ステップ53において前記RAM32内へ記憶されたコードナンバーより、リール停止位置(リール窓部13)に現れるシンボルが何であるかROM31内のシンボルデータ(9図に示す如く、各リール毎にコードナンバーとシンボルナンバーが一対一で対応する)と照合されると共に入賞の組合せ(第10図)が照合される。結果が(NO)はずれの場合には、そのまま停止位置に設定されたコードナンバーに従って、ステップ59のリール停止処理がなされゲームエンドになる。ステップ53において(YES)当たりの組合せに該当の場合は、ステップ54にて0?16383の範囲の乱数がサンプリングされる(これをJとする)。ステップ55において第10図6項の入賞確率値Hとペイアウト係数(RAM32内に記憶されている)が乗じられた入賞値Kが算出され、ステップ56において、前記サンプリングされた乱数値Jと算出された入賞値Kと照合される。
結果が、KがJより大きい場合(NO)当たりとなり、ステップ57で入賞フラグが設定され、ステップ52で停止位置に設定されたコードナンバーに従って、ステップ59にてリール停止処理が行われゲームエンドになり、第6図のフローチャートに従い、ステップ61で入賞フラグがチェックされ(YES)の場合は、ステップ62においてホッパー46よりメダルの払出しがなされ、ステップ63で払出しの完了が確認されると、ゲームオーバーとなる。」(第5ページ右上欄16行?右下欄9行)
イ 「第10図のそれぞれの項について述べると、1?3項についてはシンボルの種類により組合せがそれぞれ決められており、7、Vスーパー、バーの組合せ等、大当たりの分野に入るもの、ベル、プラム、オレンジ等の組合せで、中当たりの分野に入るもの、またチェリーの組合せの小当たりの分野と、大別されており、これに従いオッズが設定され大当たり、中当たり、小当たりの順に一般的に、オッズが小さくなるように設定されている。4項は、オッズによって決まる組合せ毎のペイアウトの期待値Fが示されている。期待値Fの合計は、190%近くになっている。このことは、なんの制御もなしにこのスロットマシンを稼働した場合は、期待値Fの合計どおり、190%近いペイアウト率になり、このスロットマシンは稼働できない、なお、通常、営業に供されるスロットマシンの平均ペイアウト率は、85%?95%の範囲内のものが多く使用されている。しかし、この合計の期待値(入賞の組合せの数、種類、オッズによって決まる)を高く設定するのは、本発明の目的を達成するための手段であって、機械式(シンボルの出現率がコントロールできない)にあっては、実施不可能な大当たりのシンボル等(本実施例では7、Vスーパー、バー)も各リール毎に、2?3個づつ配されており(第9図参照)大当たりのシンボルの組合せの出現率を高く構成することで、プレイヤーに視覚的にもアピールの効果が期待出来ると共に、後述の、配分期待値G、および入賞確率値HのROM31内のデータを変更するのみで、入賞の組合せの出現率等、容易に変更ができるスロットマシンを構成できる。5項は以上の目的を達成するための1つの要項である配分期待値Gで、4項の期待値Fを、データの処理上で計算をし易くする目的で、配分期待値Gの合計を100%に圧縮調整したものである。この処理の段階で、それぞれの入賞組合せのシンボル毎の配分期待値Gを、4項のそれぞれの入賞の組合せの期待値Fを越えない範囲内で、適宜配分する。これは、4項の期待値Fをオーバーした配分期待値Gを設定しても、ランダムに、偶然には、4項の期待値F以上には組合せは発生せず、設定値を満足しないことになる。
以上の条件内で、入賞の組合せ同士で適宜配分することで、大当たりが多く出る傾向のスロットマシン、中当たりの発生率が高いスロットマシン等、任意の特徴を持たせたスロットマシンが、5項の配分期待値G、5および後述の6項の入賞確率値Hの変更により可能となる。続いて、6項であるが、各入賞に該当するシンボルの入賞を決定するための入賞確率値Hであって、4項の期待値Fと、5項の配分期待値Gの比に対して、入賞の組合せ発生によりサンプリングされる0?16383の範囲の乱数値に対応して算出される入賞確率値Hで、これにスロットマシン全体のペイアウト係数が掛けられる処理がなされた後、入賞の組合せ発生により、0?16383の範囲の乱数列よりサンプリングされた数値Jと照合し判定される。
前記6項の入賞確率値Hは、ROM31内にストアされている。
前述の第10図内に示されているデータは、一実施例であって、第9図のコードナンバー及びシンボル等を示す概念図と共に、種々変更が可能である。通常、営業に供されるスロットマシンの平均払い出し率は、85%?95%の範囲内のものが多く使用されている。本発明では、ペイアウト率を適宜に設定出来るように、85%?95%まで2%刻みに、6段階の設定が可能になっている。」(第9ページ左下欄6行?第10ページ右上欄12行)
ウ 第10図には、入賞役の全てが別抽選であると共に、組合せ図柄「Vスーパー」と「バー」とが組合せ数27で同一であり、組合せ図柄「ベル」と「プラム」とが組合せ数36で同一であり、組合せ図柄「7」と「3連チェリー」とが組合せ数18で同一であり、組合せ図柄「オレンジ」が組合せ数54であり、組合せ図柄「2連チェリー」が組合せ数114であり、組合せ図柄「単チェリー」が組合せ数722であり、全シンボルの組合せ数が10648であることが示されている。

10 甲第10号証(特開平6-225961号公報)
甲第10号証には、以下の記載がある。
ア 「役が決定すると、その役が出るようにフォトセンサー27,28,29とカウンター49による監視の下でリール21,22,23の回転を制御して適宜停止させて前記入賞ライン5上に役をつくる。そして役とメダル投入数に応じた配当の数だけメダルを払い出す。」(段落【0037】)
イ 「さらに配当を変えたいときは、変更後の配当で計算した基本テーブルA,Bの払出率a%,b%を前記54%と145 %の代わりに用いればよい。
例えば前記[表2]のうちスリーANYBAR(BAR の種類に関係なく入賞ラインにBAR が3つ並ぶ場合)の配当を5枚としていたが、これを6枚に変更した場合は基本テーブルAの払出率は59%、基本テーブルBの払出率は151%となるので、第1段階のテーブル選択作業における基本テーブルAの選択される確率を(151-r)/(151-59)に基本テーブルBの選択される確率を(r-59)/(151-59)に変更するだけでよく、テーブルを新たに作成する必要がない。なおホッパー46による払出すメダルの数は当然に変えておく。」(段落【0042】?【0043】)
ウ 「次に第2の実施例について説明する。いま[表5]に示すように役がスリー7、スリーバー、スリーオレンジの3種類でその配当が[表5]のように100 ,20,2と設定され、払出率100 %の基本テーブルが1つ作成されている。
そして役毎に払出率r%に対するテーブル作成関数F7(r),FB (r),FO (r)が[数1]のように定められている。
したがって任意の払出率r%が設定されると、前記各テーブル作成関数にrを入れてこの関数値と前記基本テーブルの対応する確率との演算にて新たな払出率r%のテーブルが作成され、該テーブルにしたがって役の抽選がなされる。
この全体の払出率r%の変化に対する役毎の払出率の変化をグラフにしてみると図4のようになる。配当の低いスリーオレンジの払出率は全体の払出率rにかかわりなく一定の40%であり、スリーバーの払出率は全体の払出率r=50%で10%、r=140 %で46%と変化し、スリー7の払出率はr=50%では0%であり、r=140 %で54%と変化する。
このように全体の払出率rによって役毎の払出率を変えることができ、この役毎の払出率の変化は予め希望する形に設計することができる。すなわち例えば図4に示す変化を希望する場合は[数1]に示すテーブル作成関数にすればよく、別の変化を希望する場合はその変化に応じたテーブル作成関数をつくればよい。また配当を変更した場合も、基本テーブルの払出率が変わるだけなので、テーブル作成関数の所定箇所を変更後の払出率に変えておけばよく簡単である。」(段落【0046】?【0050】)
エ 【表1】には、配当2の「スリーオレンジ」は配当割合の如何に関わらず5/100であるものの、配当5の「---」と配当10の「777」とが配当の割合が高くなるにつれて大きくなっている。具体的には、
払出率 70%では、「777」が4/100、「---」が4/100
払出率 80%では、「777」が5/100、「---」が4/100
払出率 90%では、「777」が5/100、「---」が6/100
払出率100%では、「777」が6/100、「---」が6/100
となることが示されている。
オ 【表2】には、「777」は配当が100、「≡≡≡」は配当が50、「===」は配当が30、「---」は配当が10であることが示されている。
カ 【表3】には、基本テーブルAでは払出率が54%であり、基本テーブルBでは払出率が145%となっていることが示されている。
また、分母を65536とした場合の分子が、
「777」は、基本テーブルAでは50、基本テーブルBでは400、
「≡≡≡」は、基本テーブルAでは50、基本テーブルBでは300、
「===」は、基本テーブルAでは100、基本テーブルBでは300、
「---」は、基本テーブルAでは200、基本テーブルBでは400、
「3連ANYBAR 」は、基本テーブルAでは3000、基本テーブルBでは3800、
「BLANK」は、基本テーブルAでは4000、基本テーブルBでは4000、
と設定されなることが示されている。

11 甲第11号証(特開平5-168753号公報)
甲第11号証には、以下の記載がある。
ア 「上記した可変表示装置4と始動口装置13と可変入賞球装置18との関係について簡単に説明すると、発射された打玉が始動受口14又は可変始動口15に入賞すると、可変表示装置4の第2可変表示器6が可変表示を開始し、一定時間(例えば、6秒)が経過すると順次停止する。そして、第2可変表示器6の停止時の図柄6a?6cの組合せが所定の特定図柄(例えば、同一数字又は文字のゾロ目)となったときに、特定遊技状態となり、可変入賞球装置18の開閉板20を所定期間(例えば、20秒経過するまで、あるいは10個の入賞玉が発生するまで)開放するように設定され、その開放している間遊技領域3を落下する打玉を入賞領域19内に受け入れるようになっている。そして、受け入れられた打玉が特定入賞口22に設けられる特定入賞玉検出器23をONさせると、継続権が成立して再度上記した開放状態を繰り返し、開放状態中において特定入賞玉検出器23がONする毎に上記した開放状態を連続して最高16回繰り返すことができるように設定されている。
ところで、第2可変表示器6に表示される3つの図柄6a?6cとして、0?9までの10個の数字と、C、F、J、L、P、Uの6個の英文字とが順次可変表示可能となっており、停止時の表示結果が同一数字のゾロ目又は同一英文字のゾロ目となったときに、前記した特定遊技状態となるが、本実施例においては、その特定遊技状態となる確率は、ほぼ一定の値に定められるものの、その特定遊技状態となるためのそれぞれのゾロ目の出現する確率が予め定められた異なる確率に基づいて表示制御されるようになっている。例えば、0のゾロ目が出て特定遊技状態となる確率は、2.8%に設定され、6のゾロ目が出て特定遊技状態となる確率は、11.1%に設定され、Jのゾロ目が出て特定遊技状態となる確率は、4.2%に設定される。以下、特定遊技状態となる図柄のゾロ目の出現確率を特定遊技状態の出現確率と区別するために選択率と言い表す。そして、本実施例においては、上記したように各図柄の選択率が異なることを遊技場が遊技者に対して所定のサービス(例えば、特定遊技状態終了後に遊技場で用意された予め定めたサービス、具体的には、その特定遊技状態で獲得した景品玉を使用して当該パチンコ遊技機での遊技の継続を認めるサービス、以下これを継続遊技サービスという)を付与するために利用するものである。例えば、所定のサービスの提供を多くしたい場合には、選択率の高い図柄(例えば、6)をラッキーナンバーとして提供し、所定のサービスの提供を少なくしたい場合には、選択率の低い図柄(例えば、0)をラッキーナンバーとして提供することにより、遊技場の意図した頻度でサービスの提供の増減を図ることができる。」(段落【0011】?【0012】)
イ 「図3において、打玉が始動受口14又は可変始動口15に入賞して始動入賞玉検出器17をONさせると始動信号S1が導出される。そして、その始動信号S1の立ち下がり時にランダムAから1つの値が抽出されて格納され、その後、T1時間(例えば、0.004秒)後にランダムBから1つの値が抽出格納され、更にその後、T2時間(例えば、0.004秒)後にランダム1?3からそれぞれ1つの値が抽出格納される。
ここで、ランダムAは、図4に示すように、当り(特定遊技状態となるための図柄が表示されること)か否かを決定するための第1段階のランダム数であり、0?15の16通りの数値が刻々と変化しているものである。また、ランダムBも当りか否かを決定するための第2段階のランダム数であり、0?15の16通りの数値が刻々と変化しているものである。そして、ランダムAで抽出された値が予め定めた数値(例えば、1)であり且つランダムBから抽出された値も予め定めた数値(例えば、1)のときに当りとされる。したがって、特定遊技状態となる確率は、1/256である。
更に、ランダム1?3は、第2可変表示器6の図柄6a?6cに表示される図柄を決定するためのランダム数であり、ランダム1は、0?71の72通りの数値が刻々と変化しており、ランダム2、3は、0?15の15通りの数値が刻々と変化している。この場合、抽出されたランダム数と図柄との対応関係は、図5に示すようになっているが、前記ランダムA及びBによって当りと判断されたときには、図4に示すように、図柄6a?6cに表示される図柄は、ランダム1によって抽出された値に対応する図柄で統一されるようになっている。逆に、ランダムA又はBによって外れと判断されたときには、ランダム1?3で抽出された値に対応する図柄がそのまま表示される。ただし、ランダム1?3で抽出された値がたまたま当りを表示するものとなったときには、抽出されたランダム1?3のいずれか1つの値に1を加算して外れが表示されるようにしている。
ところで、ランダム数と図柄との対応関係は、図5に示すようになっている。まず、ランダム2、3においては、0?15のランダム数が16種類の図柄にそれぞれ対応している。これに対し、ランダム1においては、0?71の72通りの数値が図5に示すように割り当てられている。具体的には、2つのランダム数0と1が図柄0に割り当てられ、4つのランダム数2?5が図柄1に割り当てられる。以下、図5において同様な見方をすれば、16種類の図柄にいくつのランダム数が割り当てられているかが分かる。しかして、各図柄毎に割り当てられるランダム数の数が異なるため、ランダム1において抽出される図柄の選択率が異なることになり、このことは、特定遊技状態となったときの図柄の選択率にそのまま影響する。したがって、遊技場において、特定遊技状態を出現させる図柄の選択率を参考にして、サービス提供のラッキーナンバーを決めることにより、サービス提供の増減を意図的に設定することができる。」(段落【0019】?【0022】)
ウ 【図5】には、ゾロ目図柄の選択率として、組合せ図柄「3」、「7」は1/72、組合せ図柄「6」、「L」は8/72と同一の選択率で選択することが図示されている。

12 甲第12号証(特開平6-165850号公報)
甲第12号証には、以下の記載がある。
ア 「図4において、始動入賞によって可変入賞球装置20の玉受部材25a,25bが1回又は2回開閉動作を行い、その開閉動作中に受け入れられた入賞玉が特定入賞領域38に導かれて特定入賞玉検出器40をONさせたときには、大当り遊技状態が発生すると共に、開成回数表示器27が変動し、一定時間が経過すると停止する。そして、その停止時の図柄が「7」であるときには、継続回数が「16」回と定められ、停止図柄が「F」であるときには、継続回数が「8」回と定められ、停止図柄が「3」であるときには、継続回数が「3」回と定められ、停止図柄が上記以外であるときには、継続回数が「2」回と定められている。しかして、それぞれの図柄が出現する確率は、前記設定スイッチ62の設定によって異なるようになっている。即ち、図4に示すように、設定スイッチ62が「1」に設定されている場合には、図柄「7」「F」「3」が出現する確率は、それぞれ5/55であり、それ以外の図柄が出現する確率は、40/55である。また、設定スイッチ62が「2」に設定されている場合には、図柄「7」「F」「3」が出現する確率は、それぞれ4/55であり、それ以外の図柄が出現する確率は、43/55である。更に、設定スイッチ62が「3」に設定されている場合には、図柄「7」「F」「3」が出現する確率は、それぞれ3/55であり、それ以外の図柄が出現する確率は、46/55である。
このように、大当り遊技状態が発生した時点で表示される図柄によって継続回数が異なるように設定され、しかも、その図柄の出現確率が設定スイッチ62の設定により変更可能であるため、特定遊技状態における出玉率を変化させることができると共に、その変化も出玉率を確実に下げる又は上げるように設定できるので、弾球遊技機全体の出玉率を所望の値に近づけることができ、これによって技術的に難しい始動入賞口4、5a,5b及び玉受部材25a,25b近傍の障害釘の調整が多少あまくても所望の出玉率を得ることができる。
なお、本実施例においては、図5に示すように1回目の大当り遊技状態が終了すると、その終了時点からT1時間が経過するまでの間、最高継続回数に対応する図柄「7」の出現確率が大幅に向上する高確率状態となる。例えば、図4に示すように、図柄「7」の出現確率が設定スイッチ62の設定値に関係なく50/55となる。したがって、T1時間内に次回の大当り遊技状態が発生した場合には、次回の大当り遊技状態は、最高継続回数による大当り遊技状態となる可能性が高い。なお、図5の実施例では、T1時間を2回目の大当り遊技状態が発生する前の時間間隔として示したが、T1時間を次回の大当り遊技状態が発生するまでとしても良い。また、高確率となるタイミング、及び高確率から低確率に戻るタイミングは、任意に設計すれば良い。更に、高確率時においても、設定スイッチ62の値によって最高継続回数に対応する図柄の出現確率が異なるように設定しても良い。」(段落【0022】?【0024】)

13 甲第13号証(特開平6-304309号公報)
甲第13号証には、以下の記載がある。
ア 「上記した遊技制御回路によって制御される動作のうち、権利発生遊技状態の発生と回転振分装置18の回転盤20と図柄表示LED36との関係について図6乃至図8を参照して説明する。図6は、それらの関係を示すタイムチャートであり、図7は、図柄表示LED36の各設定値における低確率及び高確率の一覧表図であり、図8は、図柄表示LED36に表示される特定表示結果(特定図柄)の設定値に対応する出現確率の一覧表図である。
図において、電源投入後、打玉が特別入賞口46に入賞して特別領域スイッチ47をONして特別信号Q1が導出されると、図柄表示LED36の確率が低確率から高確率に変動される。この確率変動状態は、変動後最初の権利発生遊技状態の終了時に変動表示開始される図柄表示LED36の変動が停止し、その表示結果が「77」以外の値となったときまで継続する。また、図示するように確率変動の継続を高確率時において、再度打玉が特別入賞口46に入賞して特別信号Q2が導出されるまでとしても良い。なお、本実施例において高確率と低確率の組合せは、図7に示すようになっており、例えば、設定2を設定する場合には、モード設定スイッチ54をモード1に設定した状態で調整スイッチ55を「2」の値に設定する。これにより設定2が設定されるが、更に確率変動時の値を「B」に設定する場合には、モード設定スイッチ54をモード2に設定した状態で調整スイッチ55を「2」の値に設定する。これにより、低確率時の値が1/6で高確率に変動したときの値が3/6という条件が設定される。・・・遊技が進行して2回目の権利発生信号R2が導出され、それに基づく2回目の権利発生遊技状態が実行され、それが終了したときにも図柄表示LED36が変動を開始し、微少時間後に停止する。そして、その停止時の表示結果が特定図柄(奇数のゾロ目)となったときには、予め定めた所定条件が成立したとして回転振分装置18の回転盤20(ロータと表示)の回転方向が右回転から左回転に変更され、このため、回転振分装置18に導かれた打玉が特定領域31に誘導され易くなる。つまり、権利発生遊技状態の発生確率を向上させることとなる。そして、このロータ20の権利発生遊技状態の発生確率を向上させる左回転は、次に図柄表示LED36の表示結果が特定図柄以外の表示結果となるまでである。図示の実施例では、3回目の権利発生信号R3に基づく権利発生遊技状態の終了時における変動表示結果も特定図柄「33」であるため、依然としてロータ20は、左回転を継続し、4回目の権利発生信号R4に基づく権利発生遊技状態の終了時における変動表示結果が特定図柄以外の表示結果「59」であるため、ロータ20の回転が右回転に変更され、権利発生遊技状態の発生確率を低い通常の状態に戻される。
また、本実施例においては、2回目の権利発生信号R2に基づく権利発生遊技状態の終了時における変動表示結果が特定図柄のうちの「77」であるため、図柄表示LED36における確率変動が生じる。したがって、特定図柄のうち「77」が表示されたときには、ロータ20の左回転と、図柄の高確率への移行とが同時に行われ、次回の権利発生遊技状態の発生確率の向上が図れると共にその権利発生遊技状態の終了時における図柄表示LED36の表示結果が特定図柄となる確率の向上が図れる。つまり、図示するように、「77」が表示されると、ロータ20の左回転がその後2回の権利発生遊技状態(R3,R4に基づくもの)が終了するまで継続される可能性が極めて高いため、結果的に3回の権利発生遊技状態(R2,R3,R4に基づくもの)が短い時間間隔で連続して出現する可能性がある。一方、「77」以外の通常の特定図柄が表示された場合には、ロータ20の左回転は生じるものの、図柄の高確率への移行がないので、結果的に2回の権利発生遊技状態(例えば、R3,R4に基づくもの)が短い時間間隔で連続して出現する可能性がある。更に、特定図柄以外が表示された場合(換言すれば所定条件が成立しない場合)には、ロータ20の左回転も図柄の高確率への移行も共にないので、結果的に権利発生遊技状態が連続して出現する可能性は極めて低いものとなっている。
なお、特定図柄のうち「77」を出現させる確率は、図8に示すように、モード設定スイッチ54と調整スイッチ55とによって変化させることが可能である。即ち、モード設定スイッチ54をモード3に設定した状態で調整スイッチ55を設定1に設定した場合には、「77」の出現確率が14/50で他の特定図柄の出現確率が各々9/50となり、調整スイッチ55を設定2に設定した場合には、「77」の出現確率が10/50で他の特定図柄の出現確率も各々10/50となり、調整スイッチ55を設定3に設定した場合には、「77」の出現確率が6/50で他の特定図柄の出現確率が各々11/50となる。」(段落【0021】?【0026】)
イ 【図8】に、設定1、設定2、設定3の場合における、確率変動図柄である「77」と、他の「11」「33」「55」「99」との当選確率について、
「77」は、設定1で14/50、設定2で10/50、設定3で6/50、
「11」は、設定1で9/50、設定2で10/50、設定3で11/50、
「33」は、設定1で9/50、設定2で10/50、設定3で11/50、
「77」は、設定1で9/50、設定2で10/50、設定3で11/50、
「77」は、設定1で9/50、設定2で10/50、設定3で11/50、
と設定されることが示されている。

14 甲第14号証(パチスロ大図鑑2001 第35ページ)
甲第14号証には、以下の記載がある。
ア 「スーパーバニーガール」という機種では、小役の当選図柄である「オレンジ」、「青リンゴ」、「ベル」、「プラム」が共に、配当が8枚となっていることが示されている。
イ 小役Aのグループにベル・プラムが属し、小役Cのグループに青リンゴ、オレンジ、連チェリーが属することが示されている。

15 甲第15号証(パチスロ大図鑑2001 第56ページ)
甲第15号証には、以下の記載がある。
ア 「ガルーダ」という機種では、小役の組合せ図柄である「赤星」、「ベル」が共に別抽選であり、かつ配当が15枚となっていることが示されている。
イ 「ガルーダ」という機種では、ビッグボーナスの組合せ図柄である「7」とレギュラーボーナスの組合せ図柄である「BAR」との抽選確率が各設定で同一となっていることが示されている。
ウ 「リスキーダック」という機種では、組合せ図柄である「ベル」、「スイカ」、「紫柿」、「3連チェリー」が共に別抽選であり、かつ配当が13枚となっていることが示されている。
エ 「リスキーダック」という機種では、ビッグボーナスの組合せ図柄である「7」とレギュラーボーナスの組合せ図柄である「BAR」との抽選確率が各設定で同一となっていることが示されている。

16 甲第16号証(パチスロ大図鑑2001 第72ページ)
甲第16号証には、以下の記載がある。
ア 「リノ」という機種では、子役の組合せ図柄である「コイン」、「リンゴ」、「レモン」、「トマト」の配当が共に10枚であることが示されている。
イ 「リノ」という機種では、子役の組合せ図柄である「コイン」、「リンゴ」、「レモン、トマト」が共に別抽選であることが示されている。
ウ 「通常時の小役確率」として、「高確率状態」と「低確率状態」の表がそれぞれ示されている。
「高確率状態」も「低確率状態」も共に、子役の組合せ図柄である「銀貨」について同一当選確率となるものの、他の小役の組合せ図柄は「高確率状態」よりも「低確率状態」の方が低い当選確率となることが示されている。
また、「ベット数」については、「低確率状態」での小役の組合せ図柄「リンゴ」はベット数に関わらず同一当選確率であるものの、小役の組合せ図柄「銀貨」を除く他の小役はベット数が増加すると高当選確率となることが示されている。
高確率状態の3枚掛けでは、小役の組合せ図柄「リンゴ」、「レモン、トマト」の確率が1/3.8、1/3.6となっていることが示されている。
エ 「リノ」という機種では、ビッグボーナスの組合せ図柄である「7」とレギュラーボーナスの組合せ図柄である「ドル袋」との当選確率が、設定1?4では異なるが、設定5?6では同一であることが示されている。

17 甲第17号証(特開平6-114140号公報)
甲第17号証には、以下の記載がある。
ア 「次にS66に進み、格納されているランダム値R(図6参照)を用いて所定の演算を行なう処理がなされる。このランダムカウンタのランダム値Rは、前述したように、1賭けの場合には1つの値であるが2賭けの場合には2つの値を有し、3賭けの場合には3つの値を有する。ゆえに、1賭けの場合にはその1つの値を用いて所定の演算を行なうことになるが、2賭けの場合には2つの値を用いて所定の演算を行ない、3賭けの場合には3つの値を用いて所定の演算を行なうことになる。その所定の演算とは、ランダム値R同士を加算したり減算したり乗じたり除したりあるいは所定の関数に代入して答えを算出したりする演算である。ゆえに、このランダムカウンタのランダム値Rの数が多いほどすなわち1枚賭けよりも2枚賭けあるいは2枚賭けよりも3枚賭けの場合ほどS66による演算結果の値がランダムな値となる。次にS67により、その演算結果を各当選の判定値と比較する処理が行なわれる。この各当選の判定値は、ビッグボーナスゲーム当選の判定値,ボーナスゲーム当選の判定値,小役当選の判定値,再ゲーム当選の判定値の4種類がある。なお、この各当選の判定値は、テーブルの形でROM47に記憶され、賭数が多いほどその当選判定値の範囲(領域)が広くなって当選しやすいように構成されている。つまり、1賭けの場合が最も当選しにくく、3賭けの場合が最も当選しやすくなっており、3賭けの場合には、1賭けの場合よりも少なくとも3倍以上当選しやすくなっている。また、ビッグボーナス当選の判定値とボーナス当選の判定値は遊技状態にかかわらず一定であり、確率設定スイッチによる設定変更によってのみ変化するようになっている。一方小役当選の判定値は遊技状態に応じて変化するが、確率設定スイッチによる設定変更によっては変化しないようになっている。」(段落【0042】)
イ 「S76では、前記S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がビッグボーナス当選許容値に含まれているか否かの判断がなされ、含まれている場合にはS77に進み、ビッグボーナス当選フラグがセットされてS80に進む。一方、前記S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がビッグボーナス当選許容値ではないがボーナス当選許容値に含まれている場合には、S78によりYESの判断がなされてS79に進み、ボーナス当選フラグがセットされてS80に進む。S80では、遊技効果ランプ24(図1参照)を点灯開始させる処理がなされ、次にS85に進む。S80の処理により、ビッグボーナスあるいはボーナス当選した旨の報知が行なわれる。なお、S80による遊技効果ランプ24の点灯に代えて、専用の表示器を設けてビッグボーナス当選あるいはボーナス当選が生じた旨を報知するようにしてもよく、また、スピーカ28から所定の音を発生させて報知するようにしてもよい。このS80の処理の結果、遊技者がビックボーナス当選あるいはボーナス当選したことを認識する状態となるが、後述するように、可変表示状態の停止制御中にリーチ状態となったとしてもビッグボーナス当選あるいはボーナス当選していない限りリーチ音の発生が行なわれないために(S108?S110)、ビックボーナスゲームあるいはボーナスゲームとなる可能性がないにもかかわらずリーチ状態の報知が行なわれることによる遊技者の不快感を防止得る。
S78によりNOの判断がなされた場合にS81に進み、S67の比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果が再ゲーム当選許容値に含まれているか否かの判断がなされ、含まれていない場合にはS83に進むが、含まれている場合にはS82に進み、再ゲーム当選フラグがセットされてS85に進む。このS82による再ゲーム当選フラグのセットにより、後述するように、コインを投入することなくスタート操作により自動的に可変表示装置が可変開始されて再ゲームできるように制御される。S83では、S67の比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果が各小役当選許容値に含まれているか否かの判断がなされ、含まれていない場合にはそのままS85に進むが、含まれている場合にはS84に進み、含まれている小役の種類に相当する当選フラグがセットされてS85に進む。」(段落【0044】?【0045】)
ウ 「一方、S104によりNOの判断がなされた場合にはS108に進み、停止しているいずれか2つのリールにより表示されている図柄がリーチ状態の図柄になっているか否かの判断がなされる。リーチ状態とは、複数の可変表示部5L,5C,5Rのうちのいずれか1つがまだ可変表示している段階で、既に停止している可変表示部の表示結果が、「AAA」,「BBB」等の特定の識別情報の組合せとなる条件を満たす所定表示状態となっている場合を意味する。そして、S108によりリーチ状態でないと判断された場合にはS87に進むが、リーチ状態であると判断された場合にはS109に進み、ビッグボーナス当選フラグまたはボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断がなされ、いずれもセットされていない場合にはS87に進むが、いずれかがセットされている場合にはS110に進み、リーチ音をスピーカ28から発生させた後にS87に進む。このリーチ音が発せられることにより、遊技者が現在可変表示している可変表示部の停止時の表示結果次第で前記特定の識別情報の組合せが成立するかもしれないという遊技者の期待感を効果的に盛り上げることができる。なお、スピーカ28からリーチ音を発生させることに加えてあるいはそれに代えてリーチ状態が発生した旨の表示を行なうようにしてもよい。また、ビッグボーナス当選フラグセット時にのみリーチ時の報知を行なうようにしてもよいし、どちらかの当選フラグがセットされている方のリーチ時にのみ報知を行なうようにしてもよい。」(段落【0050】)

18 甲第18号証(特開平4-164470号公報)
甲第18号証には、以下の記載がある。
ア 「各リール9?11はその外周に、例えば「ベル」、「チェリー」、「7」、「BAR」等の種々のシンボルが配列されており、これらのシンボルは前面パネル8に形成された3個の窓12?14を通して観察することができる。これらの窓12?14を横切るように、複数の入賞ライン15が描かれており、この入賞ライン15は投入したメダルの枚数に応じて、有効化される本数が増減する。
この有効化された入賞ライン15上に例えば、「7,7,7」、「BAR,BAR,BAR」、「ベル,ベル,ベル」、「チェリー,チェリー,チェリー」のように同一シンボルが並ぶと入賞となり、各入賞に対応した数のメダルは、スロットマシン2の下部に設けられた受け皿16に払い出される。」(第2ページ左下欄11行?右下欄6行)
イ 「前記システムコントローラ20には乱数発注器35が接続されており、この乱数発生器35は乱数発生信号により0?9999の乱数を発生する。この乱数発生器35にはスタート信号によりサンプリングを行うサンプリング回路36が接続されており、このサンプリング回路36でサンプリングされた乱数「N」はシステムコントローラ20に送られる。システムコントローラ20には0?9999の各数に対応させたシンボルの組み合わせ例えば、0?9は「7,7,7」、10から49は「BAR,BAR,BAR」、50?249は「ベル,ベル,ベル」、250?1499は「チェリー,チェリー,チェリー」、1500?9999は[異なるシンボルの組み合わせ」を記録した入賞確率テーブル37や、各シンボルの組み合わせに配当メダル数を対応させた配当テーブル38がそれぞれ接続されている。
この入賞確率テーブル37は乱数「N」が入力されると、それに対応した信号例えばシンボル信号「7」、シンボル信号「BAR」、シンボル信号「ベル」、シンボル信号「チェリー」、シンボル信号「ハズレ」を出力する。」(第3ページ右上欄5行?左下欄6行)

19 甲第19号証(必勝パチスロファン 平成6年4月号 株式会社日本文芸社 平成6年4月30日発行)
甲第19号証には、以下の記載がある。
ア 第22ページ左上の表には、3枚掛けの場合の「ベル」、「プラム」、「チェリー」の当選確率を見ると、通常Bでは、各々1/162、1/143、1/14.2と設定され、通常Aでは、各々1/ 14.9、1/ 14.8、1/ 8.1と設定されることが表示されている。
イ 「ボーナス判定では、始めにビッグ判定を行う。ここで合格すると、フラグをセットして終了する。不合格ならば、シングル判定を行う。
シングルの判定でも不合格のときは、ベル、プラム、リプレイの条件値を決定する。条件値はビッグ中、払出しなどによる状態とメダル掛け枚数により変化する。これにより合格する確率が違ってくる。通常のAとBは、ここで決まるのだ。
条件値が決まるとリプレイ、ベル、プラムの順に判定していく。合格すればフラグを立てて終了。不合格なら次に進んでいく。プラムの判定でも不合格の場合、チェリーの条件値を決定する。
チェリーの条件値は状態、メダル掛け枚数、設定により変化する。ここでも不合格だと、何のフラグも立てずにハズレとなる。
これらの判定は、乱数を使用して決めている。乱数は1?16384までの16385種類あり、非常に速いスピードで変化している(第22ページ3列13行?4列16行)。

20 甲第20号証(月刊「パチスロ必勝ガイド 平成5年4月号」 白夜書房 平成5年4月1日発行)
甲第20号証には、以下の記載がある。
ア 「主なリーチ目は6つ!「信頼度」に注意せよ
さてリーチ目についてだが、現在までに発覚しているのは下の6つの目だ。いずれもビッグ、集中共通の目だが、それぞれリーチ目としての「信頼度」が違うので注目してもらいたい。」(第7ページ2段?3段)
イ 「これだけ覚えりゃ大丈夫 チェリーバーのリーチ目
[1]ラインに関係なく、図のように「ベル・ベル・チェリーBAR」が揃えば、100%ビッグか集中だ。」(第7ページ右下囲み)
ウ 「リールのフラッシュとランプでフラグ判別!
4号機ならではの、隠されたもう1つのリーチ目とは-ビッグボーナスフラグ成立時に起こるリールの「フラッシュ」だ。実はこの実機、レバーを叩いた後の抽選でビッグボーナスのフラグが立つと、3つのボタンを全て押し終わった瞬間に、中央ラインが左から右に向かって一瞬点滅する仕組みになっているのだ。」(第8ページ1段?2段)
エ 第11ページ左上の囲みに表示された「ビッグ・集中・小役の判定の流れ」表には、「ビッグボーナス中」でなく、かつ、「ビッグボーナスフラグ成立」でもない通常ゲームのとき、「集中の抽選」が行われ、この抽選結果が不成立の場合には、「チェリー→ベル→プラム→スイカ→CHANCE→シングル」の順に抽選が行われることが示されている。
オ 第12ページ下段囲みに表示された「チェリーバー小役確率表」には、「3枚掛け設定1?5」のときのプラムとスイカの当選確率が、遊技状態に応じて
ビッグ中 プラム 1/ 1.78、 スイカ 1/ 1.78
集中時 プラム 1/14.3、 スイカ 1/102.4
平常時 プラム 1/14.3、 スイカ 1/102.4
に設定されることが示されている。
また、「平常時」に比べて「集中時」は、3枚かけ時の「シングル」の当選確率が10倍となることが示されている。

21 甲第21号証(必勝パチスロファン 1994年増刊7月号 VOL25 日本文芸社)
甲第21号証には、以下の記載がある。
ア 「フラグ成立を知らせる方法は大きく分けて5つある。リーチ目が出る、バックライトが走る、ランプが点灯する、音が鳴る、リールがスベる、だ。それぞれにいい点・困る点があり、どれが一番いいかは一概にはいえない。それこそ、個人の好き嫌いによるだろう。
では、それぞれの特徴を詳しく説明していこう。」(第78ページ2段)
イ 「●リーチ目
通常時には絶対に、あるいはほとんど出ないが、ボーナスに入ると頻繁にあらわれるようになる出目。リーチ目が出ると打ち手は「何かはいっているな…」とわかる。
リーチ目はメーカーによってさまざまな形がある。左リールにポツンとチェリーだったり、7とBARの組合せだったり、やたらと複雑だったり…。
自分が打つ機種のリーチ目は、最低3?4つは頭に入れておかないと、フラグ成立を見逃すこととなる。
4号機からは、お知らせ機能がリーチ目のみという機種は減ってしまった。残念なことである。」(第78ページ2段)
ウ 「●バックライトが走る
ボーナスフラグが成立して、そのゲームで絵柄をそろえられないと、3本目のリールを止めた瞬間、リールを照らしているライト(バックライトがパッパッと走るように見える。ホントのことをいえば、ライトが1つづつ一瞬消えていくので、光が走るように見えるのだ。
光の走り方にもいろいろなパターンがあり、縦や十字、往復するものまである。
普通に打っていればわかるサインだが、ふと集中力が切れて見落とすこともある。そこがこの合図の弱点といえば弱点だが、そんな時のために、どの機種にも一応リーチ目があるので念のために覚えておこう。」(第78ページ3段)
エ 「●ランプが点灯する
コインを投入してレバーを叩いた瞬間、ボーナスフラグが成立すると、ボディのどこかが点灯して知らせてくれるタイプ。
これは絵柄がそろうまでずっと点灯しているので、見落とすことは少ないだろう。
ただ、ホールによってはこのランプの電源を切っていることもある。このタイプを採用している機種にもリーチ目は存在するので、そういうホールで打つ時は覚えておく必要がある。」(第78ページ3段)
オ 「●音が鳴る
スタートレバーを叩いた瞬間、まるでホールの客全員に教えてあげるというような大きな音が鳴る。それがボーナスフラグ成立の合図なのだ。
これはどんな初心者といえども、気づかないなんてことはないだろう。親切といえば親切である。
だが、いかんせん音が大きすぎる。はっきりいって恥ずかしいのだ。
プレイヤーには賛否両論だが、やや否の方が多いようだ。」(第78ページ3?4段)
カ 「●リールがスベる
リールがスベるというのは、ストップボタンを押すと、リールが通常時より遅れて止まる。それがまるでズズッとスベったように感じるのだ。
音や光は他の客にも気づかれてしまうが、リールのスベりは自分だけしか気がつかない。目押しができなくて四苦八苦しても、誰も笑わないからうれしい。
4号機でこのお知らせ方式を使っているのはスーパーヘビーメタルAのみ。」(第78ページ4段)
キ 第79ページには、
「これぞ正当派!リーチ目のみの機種」として、ニューパルサー、ジャックポットII、イブXが示され、
「一瞬の閃光!!バックライトが走る機種」として、オリエンタルII、ソレックス、チェリーバーが示され、
「これなら見落としナシ!!ランプが点灯する機種」として、プレイガールV、ベガスガール、ペガサスワープGが示され、
「ちょっとハズかしい!?音が鳴る機種」として、ザンガスI、ロイヤルタカシーRTが示され、
「自分だけの快感!!リールがスベる機種」として、スーパーヘビーメタルAが示されている。

22 甲第22号証(特許第2574912号)
甲第22号証には、図面とともに以下の記載がある。
ア 「1.スタート手段の操作により回転される複数のリールを備え、これらのリールが停止したときに表示窓に現れた絵柄の組み合わせで入賞の有無を表示するスロットマシンにおいて、
1ゲームごとに乱数をサンプリングし、サンプリングされた乱数に対応して複数種類の入賞のうちのいずれかを決め、その入賞の種類に応じたリクエスト信号を発生するリクエスト発生手段と、このリクエスト信号に基づいてリクエスト信号に対応した種類の入賞が得られるように前記リールを停止制御するリールストップ制御手段と、リールストップ制御手段によりリールが停止した後にリールの停止位置を読み取り、前記リクエスト信号に対応した種類の入賞が得られたか否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記リクエスト信号に対応した種類の入賞が得られないときに当該リクエスト信号を次回のゲームまで保存する手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【特許請求の範囲】)
イ 「〔作用〕
サンプリングされた乱数によって入賞を予定したリクエスト信号が発生され、これに基づいてリールの停止制御が開始される。そして、リールの停止制御を行った結果、前記リクエスト信号を満足する入賞が得られない場合には、前記リクエスト信号は次回のゲーム以降に持ち越されるから、そのリクエスト信号を有効に生かすことができるようになる。」(第4欄35?42行)

23 甲第23号証(特開平1-198584号公報)
甲第23号証には、図面とともに以下の記載がある。
ア 「このようなゲームマシンでは、サンプリングされた乱数値が、入賞テーブルとの対照の結果入賞に該当しているものであることが識別されたときには、入賞が得やすい入賞処理モードでゲーム処理を行わせるための入賞要求フラグがセットされる。ところが、入賞要求フラグがセットされていながら、例えばストップボタン等の操作タイミングが極端にずれたりしたような場合には、必ずしも入賞とならないことがある。こうした場合には、ペイアウト率を一定に維持するために、その入賞要求フラグを次回以降のゲームに持ち越し、引続き入賞処理モードでゲーム処理を行うようにしている。」(第2ページ左上欄15行?右上欄7行)

24 甲第28号証(必勝パチスロファン 平成6年4月号 株式会社日本文芸社 平成6年4月30日発行)
甲第28号証には、甲第21号証に示された「ザンガスI」という機種について以の記載がある。
ア 「ボーナスフラグ成立時は、ランプの点灯と音で知らせてくれる。これは両ボーナス共通でそろうまで続く。」(第114ページ右上囲み文)
25 甲第29号証(パチスロ攻略マガジン 平成6年5月号 株式会社双葉社 平成6年4月7日国立国会図書館所有)
甲第29号証には、甲第21号証に示された「オリエンタルII」という機種について以下の記載がある。
ア 「ボーナスシグナルは3パターンあった!!
当初から1つしかないと思われていたボーナスシグナルが、なんとびっくりの3パターンあることが最近になって確認された。確認といっても、それほど回数をこなしていないんで、100%とはいいきれないことがあるが、おおむねこの通りだと思う。
まず、左から始まって、右→左と一往復するパターン。これはほぼ間違いなくビッグボーナス。逆に右から始まって一往復するパターンはレギュラーである。もうひとつは、両方を合わせたような一往復半のパターン。これはビッグ・レギュラー共通だ。」(第60ページ中央左の箇所。)

26 甲第30号証(パチスロ攻略マガジン 平成6年7月号 株式会社双葉社 平成6年6月6日国立国会図書館所有)
甲第30号証には、甲第21号証に示された「オリエンタルII」という機種について以下の記載がある。
ア 第22ページのボーナスフラッシュ判別法の表には、左から右へ1往復だとBIGであることが判別され、左から右へ1往復半だとBIGorREGであることが判別され、右から左に1往復だとREGであることが判別されることが示されている。

第6 当審における対比及び判断
1 本件訂正発明1
(1)対比
本件訂正発明1と甲第1号証の発明とを対比すると、甲第1号証の発明における「回転駆動される複数のシンボルマークが付されたリール」は本件訂正発明1における「複数の図柄を可変表示する可変表示部」に相当し、同様に、「大ヒツト」は「特定の入賞役」に、「スロツトマシン」は「遊技機」に、それぞれ相当しており、さらに甲第1号証の発明について以下のことがいえる。
ア 甲第1号証の発明は、「スタートレバーの操作後の所定のタイミング信号により、その時点で乱数値RAM80に存在する乱数値をサンプリングして、そのゲームの乱数値として決定」するもので、上記「サンプリング」は「スタートレバーの操作」により開始されるゲーム毎に行われるものであるから、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における「ゲーム毎にサンプリングされる」「乱数値」の構成に相当する構成を備えている。
イ 甲第1号証の発明は、「決定された乱数値は入賞確率テーブルと照合され、大ヒツトに該当する数値であれば大ヒツトリクエスト信号の発生、または中ヒツトに該当する数値であれば中ヒツトリクエスト信号の発生というように小ヒツトまでの判断、処理がなされいずれかのヒツトリクエストが発生されるかあるいはヒツトリクエストなしかがチエツクされ」るものである。そして、甲第1号証の発明における、上記の「(乱数値を)入賞確率テーブルと照合」することは、実質上「入賞確率テーブル」中のデータと「照合」することであり、また、上記の「大ヒツトリクエスト」、「中ヒツトリクエスト」、「小ヒツトリクエスト」は本件訂正発明1における「内部的当選役」に対応するとともに、「いずれかのヒツトリクエストが発生されるかあるいはヒツトリクエストなしか」を「チエツク」する手段は、本件訂正発明1における「内部的当選役を判定する判定手段」に相当しているといえる。そうすると、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における「予め設定された入賞確率テーブル中のデータと乱数値とを照合することにより内部的当選役を判定する判定手段」の構成に相当する構成を備えているといえる。
ウ 甲第1号証の発明は、「大ヒツトのヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合にはそのヒツトリクエストを次回のゲームまで保存するようにし」たもので、上記「ヒツトリクエスト」の「発生」は、本件訂正発明1における「判定手段の判定結果に従」った「内部的当選役の発生」に相当しており、同じく「保存」は、訂正発明1における「記憶(手段)」に相当するものといえるから、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における「判定手段の判定結果に従い内部的当選役の発生を記憶する内部的当選役記憶手段」の構成に相当する構成を備えているといえる。
エ 甲第1号証の発明は、「リールストツプ制御手段」により、「すでにセツトアツプされたヒツトリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマークがチエツク範囲内にあればそこでリールを停止させる」ものである。そして、上記ウに記載したように甲第1号証の発明における上記「ヒツトリクエスト」(「内部的当選役」)は「保存」(「記憶」)されるものであり、上記「すでにセツトアツプされ」た「ヒツトリクエスト」(「内部的当選役」)は、本件訂正発明1における「内部的当選役記憶手段に記憶された内部的当選役」に実質的に相当するということができる。また、上記「リールストツプ制御手段」は「シンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマークがチエツク範囲内にあればそこでリールを停止させる」ものであり、該構成は、本件訂正発明1における「図柄の組合せが出現するように前記可変表示部の可変表示動作を停止制御する」構成に相当している。そして、甲第1号証の発明において、上記した「リールストツプ制御」を実行するのは、「メインコントロール部A、リール駆動監視ブロツクB、ストツプ操作ブロツクCより成」る「マイクロコンピユータ」(上記記載事項イ?ウ)であるということができ、該「マイクロコンピユータ」は、本件訂正発明1における「制御部」に相当しているということができる。そうすると、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における「内部的当選役記憶手段に記憶された内部的当選役に対応する図柄の組合せが出現するように前記可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部」の構成に相当する構成を備えているといえる。
オ 甲第1号証の発明における上記「リールストツプ制御手段」は、遊技者の「ストツプボタンの操作」に応じて発生する、「ストツプボタンの操作信号」により「起動され」て、「リールストツプ制御」を実行するものである。そして上記エに記載したとおり、「リールストツプ制御手段」を備えるのは「マイクロコンピユータ」(本件訂正発明1における「制御部」に対応している)であるから、上記した「ストツプボタンの操作信号」は「マイクロコンピユータ」(「制御部」)に対して「リールストツプ制御」を実行させるための信号であるということができる。そうすると、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における「遊技者の停止操作に応じて制御部に可変表示動作の停止制御を実行させる信号を発生する可変表示停止手段」に相当する構成を実質的に備えているといえる。
カ 甲第1号証の発明における「ヒツトには、15枚のメダル払出し後にボーナスゲームができるようになる大ヒツトを含」むことは、「ボーナスゲーム」が、メダル払出量について、通常遊技状態に対して、得ることのできる相対的な利益が大きい有利な遊技状態であるといえることから、本件訂正発明1における「入賞役は、通常遊技状態から該通常遊技状態よりも遊技者に付与する利益が大きい有利遊技状態に移行させるための特定の入賞役を含」むことに相当する。
キ 上記したとおり、甲第1号証の発明における「マイクロコンピユータ」は、本件訂正発明1における「制御部」に相当しており、該「マイクロコンピユータ」は、「乱数値をサンプリングし」て「入賞確率テーブルと照合」し、「ヒツトリクエスト信号」を「発生」させるかどうかの「判断、処理」をし、さらに「リクエスト信号を評価し」、「ヒツトリクエスト」が「セツトアツプされ」ている時には、「ストツプボタンの操作信号」に応じて、「ヒツトリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマーク」が「チエツク範囲内にあればそこでリールを停止させる」ように制御するものである。そうすると、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における、「制御部は、入賞確率テーブルを格納する記憶手段を有し、乱数値がサンプリングされた時、その乱数値を入賞確率テーブル中のデータと照合して内部的当選役に該当する場合には、可変表示停止手段での信号の発生タイミングに応じて当該内部的当選役を示す入賞図柄組合せを表示するように可変表示部の動作を制御」することに相当する構成を実質的に備えているといえる。
ク 上記記載事項ウに記載したように、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における「判定手段の判定結果に従い内部的当選役の発生を記憶する内部的当選役記憶手段」の構成に相当する構成を備えている。そして、甲第1号証の発明における「大ヒツトのヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合には」の構成は、本件訂正発明1における「判定手段で判定された内部的当選役が特定の内部的当選役である場合について、可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に相当する図柄の組合せとは異なる場合には」の構成に実質上相当するものといえる。そうすると、甲第1号証の発明は、本件訂正発明1における「内部的当選役記憶手段は、判定手段で判定された内部的当選役が特定の内部的当選役である場合について、可変表示停止手段に基づく可変表示結果が内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合には」及び「当該内部的当選役の発生した状態を保持」することに相当する構成を備えているといえる。
そうすると、本件訂正発明1と甲第1号証の発明とは次の一致点及び相違点を有するものと認められる。

[一致点]
「複数の図柄を可変表示する可変表示部と、ゲーム毎にサンプリングされる乱数値と予め設定された入賞確率テーブル中のデータとを照合することにより内部的当選役を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に従い内部的当選役の発生を記憶する内部的当選役記憶手段と、前記内部的当選役記憶手段に記憶された内部的当選役に対応する図柄の組合せが出現するように前記可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部と、遊技者の停止操作に応じて前記制御部に前記可変表示動作の停止制御を実行させる信号を発生する可変表示停止手段と、を備えた遊技機において、
前記入賞役は、通常遊技状態から該通常遊技状態よりも遊技者に付与する利益が大きい有利遊技状態に移行させるための特定の入賞役を含み、
前記制御部は、前記入賞確率テーブルを格納する記憶手段を有し、前記乱数値がサンプリングされた時、その乱数値を前記入賞確率テーブル中のデータと照合して前記内部的当選役のいずれかに該当する場合には、前記可変表示停止手段での前記信号の発生タイミングに応じて当該内部的当選役を示す入賞図柄組合せを表示するように前記可変表示部の動作を制御し、前記内部的当選役記憶手段は、前記判定手段で判定された内部的当選役が特定の内部的当選役である場合について、前記可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合には当該内部的当選役の発生した状態を保持する遊技機。」である点。

[相違点A]
本件訂正発明1は、入賞確率テーブルが、特定の入賞役と、特定の入賞役を構成し、当選確率を同じくし、かつ、各々が有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じである複数の内部的当選役と、当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータとを含み、該データが、一の乱数値が遊技機が揃えようとする一の入賞図柄組合せにのみ対応するように予め設定されており、前記複数の内部的当選役の各々は、前記有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じであり、入賞確率テーブル中のデータとの照合が、前記複数の内部的当選役のいずれかに該当するか否かによる照合であるのに対して、甲第1号証の発明は、入賞確率テーブルが、特定の入賞役(「大ヒツト」、「中ヒツト」、「小ヒツト」)と、特定の入賞役とそれぞれ一対一に対応するデータを含んでおり、特定の入賞役は、当選確率を同じくし、かつ、各々が有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じである複数の内部的当選役を含んでおらず、また、当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータを含んでおらず、該データが、一の乱数値が遊技機が揃えようとする一の入賞役にのみ対応するように予め設定されており、入賞確率テーブル中のデータとの照合が、入賞役のいずれかに該当するか否かによる照合である点。

[相違点B]
本件訂正発明1は、遊技者に内部的当選をした入賞役を報知する報知手段を備えており、前記報知手段は、前記内部的当選役記憶手段で内部的当選役の発生した状態が保持される場合に、その内部的当選をした入賞役を報知するものであるのに対して、甲第1号証の発明は遊技者に内部的当選をした入賞役を報知する報知手段を備えていない点。

[相違点C]
内部的当選役の発生した状態の保持が、請求項1の発明は、当該内部的当選役に対応する図柄の組合せが揃うまで保持するものであるのに対して、甲第1号証の発明は次回のゲームまで保存(保持)するようにしたものであり、次回以降、大ヒツト(内部的当選役)に対応する図柄の組合せが揃うまで大ヒツト(内部的当選役)の発生した状態を保存(保持)するものであるか否か明らかではない点。

(2)判断
上記相違点Aに関して甲第1号証の発明をさらにみると、同甲第1号証の発明では、特定の入賞役である、15枚のメダル払出し後にボーナスゲームができるようになる「大ヒツト」を構成するシンボルマークの組合せとして「A A A」、「B B B」、「C C C」の3種類が設定されている(甲第1号証の上記記載事項セ)が、これらの各シンボルマークの組合せは入賞確率テーブルにおいて複数の内部的当選役を構成するものではなく、まして、当選確率を同じくし、かつ、各々が有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じである複数の内部的当選役を構成するものではない。また、入賞確率テーブルにおけるデータは、「大ヒツト」、「中ヒツト」、「小ヒツト」に一対一に対応するデータ(前記第5 1の記載事項キを参照。)であって、上記の各シンボルマークの組合せのそれぞれに一対一に対応するデータは設定されていない。そして入賞確率テーブル中のデータとの照合も、上記の各シンボルマークの組合せに対応して個別に行うものではなく、各シンボルマークを包括して「大ヒツト」に該当するか否かを照合するものである。
そうすると、甲第1号証の発明において、上記の各シンボルマークの組合せのそれぞれが入賞確率テーブルにおいて複数の内部的当選役を構成し、しかも、それぞれの内部的当選役の当選確率が同じとなるように設定し、入賞確率テーブルが、入賞役と、当該一の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役と、当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応するシンボルマークの組合せを示すデータを含むようにするとともに、該データが、一の乱数値が遊技機が揃えようとする一のシンボルマークの組合せにのみ対応するように予め設定し、さらに入賞確率テーブル中のデータとの照合が、各シンボルマークの組合せに対応した、複数の内部的当選役のいずれかに該当するか否かによる照合として、上記(A)の相違点に係る構成を得ることは当業者にとって容易なこととはいえない。
また、上記(A)の相違点に関して甲第2?21、28」?30号証を検討すると、甲第2号証には、ビツグボーナスゲームに「7 7 7」と「3 3 3」の2種の当たり図柄組合せを、また、レギユラーボーナスゲームに「7 7 3」と「3 3 7」の2種の当たり図柄組合せを、それぞれ備えているが、これらの2種ずつの当たり図柄組合せが入賞確率テーブルにおいて複数の内部的当選役を構成することは記載されておらず、まして、当選確率を同じくする複数の内部的当選役を構成すること、かつ、各々が有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じであることは記載も示唆もされていない。
同様に、入賞確率テーブルにおけるデータが、上記の2種ずつの当たり図柄に一対一に対応するデータであることは同甲第2号証に記載がなく、入賞確率テーブル中のデータとの照合が、上記の2種ずつの当たり図柄のいずれかに該当するか否かによる照合であることも記載も示唆もされていない。
甲第3号証には、「BIGCHANCE」及び「SINGLEBONUS」がそれぞれ1種ずつの当たり図柄しか備えていないことが記載されている。
甲第4号証には「表示ランプ16」または「発音表示装置」により内部的当選を報知することが記載されている。
甲第5号証には「照明具20のランプ21」により「勝ちゲームに該当するシンボル19を照明する」スロットマシンが記載されている。
甲第6号証には、払出しメダル枚数の異なるボーナスゲームA?Dを出現確率a?dで別々に抽選すること、出現確率のうち、出現確率dを自由に変更できることが記載されている。
甲第7号証の上記記載事項イ?エ(前記第5 7を参照。)には、5倍払出しの図柄組合せが「7B-7B-5B」、「5B-5B-7B」、「AB-AB-AB」の3種類ある遊戯装置について記載されている。しかしながら、甲第7号証に開示されている遊戯装置は、上記記載事項ア(前記第5 7を参照。)によると遊戯者が停止操作できるストップボタン等を有するものではなく、遊戯者による停止操作が介在することなく、乱数発生手段4で定められた乱数に対応したシンボル組合せがゲーム結果として表れるようにリール1、2、3の停止位置を制御するものである(前記第5 7の記載事項アを参照。)
甲第8号証の上記記載事項ア?イ(前記第5 8を参照。)には、配当テーブルメモリ13から、乱数情報にストアされている絵柄の組合せ及び配当を読み取ることができるスロットマシンについて記載されている。
甲第9号証の上記記載事項イ?ウ(前記第5 9を参照。)には、「Vスーパー」と「バー」との組合せ数、「ベル」と「プラム」との組合せ数、「7」と「3連チェリー」との組合せ数を同一としたスロットマシンについて記載されている。しかしながら、甲第9号証に開示されているスロットマシンは、上記記載事項ア(前記第5 9を参照。)によると遊技者が停止操作できるストップボタン等を有するものではなく、遊技者による停止操作が介在することなく、乱数などで設定されたコードナンバーに対応したシンボルが表れるように停止制御するものである。
甲第10号証の上記記載事項イ?カ(前記第5 10を参照。)、及び、【表1】、【表3】の表示内容によると、複数の役の確率を同一としたメダルゲーム装置について示されている。しかしながら、甲第10号証におけるメダルゲーム装置は、上記記載事項ア(前記第5 10を参照。)によると遊技者が停止操作できるストップボタン等を有するものではなく、遊技者による停止操作が介在することなく、役が出るようにフォトセンサ27、28、29とカウンター49による監視の下でリール21、22、23の回転を制御して適宜停止させて入賞ライン5上に役を作るものである。
甲第11号証の上記記載事項ア?ウ(前記第5 11を参照。)には、ゾロ目図柄「3」、「7」と、「6」、「L」の選択率を同一とした遊技機について記載されている。しかしながら、甲第11号証における遊技機は、パチンコ遊技機に関するものであって、遊技者が「内部的当選役」に対応する図柄の組合せを揃えようとする装置でない。
甲第12号証の上記記載事項ア(前記第5 12を参照。)には、複数の当選役を同一確率とし、別抽選すること、また、図柄「7」、「F」、「3」が出現する確率が、4/55と同一とした弾球遊技機について記載されている。しかしながら、甲第12号証における遊技機は、パチンコ遊技機に関するものであって、遊技者が「内部的当選役」に対応する図柄の組合せを揃えようとする装置でない。
甲第13号証上記記載事項ア?イ(前記第5 13を参照。)には、特定図柄「11」、「33」、「55」、「99」の出現確率を同一とした弾球遊技機について記載されている。しかしながら、甲第13号証における遊技機は、パチンコ遊技機に関するものであって、遊技者が「内部的当選役」に対応する図柄の組合せを揃えようとする装置でない。
甲第14号証の上記記載事項ア?イ(前記第5 14を参照。)には、同一の8枚配当である「ベル」と「プラム」からなる小役A、及び、「青リンゴ」と「オレンジ」からなる小役Cのうち、小役Aの「ベル」と「プラム」の出現確率を同一とし、小役Cの「青リンゴ」と「オレンジ」の出現確率を同一としたスロットマシンについて記載されている。
甲第15号証の上記記載事項ア?エ(前記第5 15を参照。)には、「ガルーダ」という機種で、ビッグボーナスである「7」とレギュラーボーナスである「BAR」との抽選確率を同一とするとともに、「リスキーダック」という機種で、子役である「ベル」、「スイカ」、「紫柿」、「3連チェリー」の配当を共に13枚としたことが記載されている。
甲第16号証の上記記載事項ア?エ(前記第5 16を参照。)には、子役の「コイン」、「リンゴ」、「レモン、トマト」を別抽選とし、「レモン、トマト」を同一確率で抽選することが示されている。
甲第17号証の上記記載事項ア?ウ(前記第5 17を参照。)には、ランダム値に対応して、ビッグボーナス当選、ボーナス当選、再ゲーム当選、各小役当選が判断されることが記載されている。
甲第18号証の上記記載事項ア?イ(前記第5 18を参照。)には、システムコントローラ20が、0?9999の各数に対応させたシンボルの組み合わせ、例えば、
0? 9は「7,7,7」、
10? 49は「BAR,BAR,BAR」、
50? 249は「ベル,ベル,ベル」、
250?1499は「チェリー,チェリー,チェリー」、
1500?9999は[異なるシンボルの組み合わせ」を記憶した入賞確率テーブル37を有するスロットマシンについて記載されている。
しかしながら、甲第18号証におけるスロットマシンは、遊技者が停止操作できるストップボタン等を有するものではなく、遊技者による停止操作が介在することなく入賞確率テーブル37で定められた確率通りに図柄の組合せが表示される装置である。
甲第19号証の上記記載事項ア?イ(前記第5 19を参照。)には、乱数値を用いて、「ビッグボーナス」、「シングルボーナス」、「リプレイ、ベル、プラム」の順に、当選の判定を行うことが記載されている。
甲第20号証の上記記載事項ア?オ(前記第5 20を参照。)には、チェリー→ベル→プラム→スイカ→CHANCE→シングル→ビッグの順に抽選を行うことで、子役の判定を行うことが記載されている。
甲第21号証の上記記載事項ア?キ(前記第5 21を参照。)には、遊技者に内部的当選をした入賞役を報知する報知方法として、「ランプが点灯する」、「音が鳴る」、「リールがすべる」、「リーチ目」、「バックライトが走る」の5種類の報知方法が示され、このうち「リーチ目」、「バックライトが走る」は、「全てのリールの回転停止後に行われる報知」であることが記載されている。
甲第22?23号証には、入賞要求信号を次回以降のゲームに持ち越すスロットマシンについて記載されている。
そうすると、甲第7、9?13、18号証に示された技術事項は、遊技者が停止操作できるストップボタン等を有せず、遊技者による停止操作という技術介入を必要としないものであるから、図柄の停止に遊技者の技術介入を必要とする甲第1号証の発明とは、その前提が異なるものであり、甲第1号証の発明に適用することはできない。
また、甲第14?16号証に示された技術事項は、本件出願前にスロットマシンの技術分野において慣用的に行われていた一つの入賞役を構成する複数の内部的当選役の当選確率をほぼ同一とすることを示すものである。
さらに、請求人が平成24年8月7日上申書において提出した甲第28?30号証には、甲第21号証に示された「ザンガスI」、「オリエンタルII」について、ビッグボーナスとレギュラーボーナスのボーナスフラグ当選時に、共通の報知を行うことが示されている。しかしながら、これらの報知は、遊技性が異なる2種類の入賞役BB及びRBを共通報知するが、共通報知することによって、BBに当選しているのか、RBに当選しているのかを確定的に報知することができるものではない。
ゆえに、これら甲第1号証の発明及び甲第2?23、28?30号証に記載された技術事項のいずれも、本件訂正発明1の「特定の入賞役と、特定の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役と、当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータとを入賞確率テーブルが含み、入賞確率テーブル中のデータとの照合を、複数の内部的当選役のいずれかに該当するか否かにより行うことにより、複数の内部的当選役を特定の入賞役に対応させる」発明特定事項を開示しておらず、また示唆してもいない。
そして、本件訂正発明1は、上記(A)の相違点に係る構成に伴って、「サンプリングされる乱数値」と「入賞確率テーブル中のデータとの照合」を、「特定の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役」と「それぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータ」との「照合」により行い、「内部的当選役」が発生し、「可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合」には、上記(C)の相違点に係る構成に伴って、「当該内部的当選役に対応する図柄の組合せが揃うまで当該内部的当選役の発生した状態を保持」し、上記(B)の相違点に係る構成に伴って、「内部的当選役記憶手段で内部的当選役の発生した状態が保持される場合に、その内部的当選をした入賞役を報知する」ものであり、これらの各相違点に係る構成が相俟って、本件の明細書に記載された、「一の入賞組合せに対して一の内部的当選役が設定された状態で複数の入賞組合せが設けられていることから、入賞までのゲーム数を増やして遊技者の技術がゲームに与える影響を大きくすることができる。一方、当初の出玉率を維持することで、結果的に内部的当選が発生したゲームにおいて入賞しないとき、その後のゲームで入賞するまで当該内部的当選が発生した状態にする一の入賞役における内部的当選確率も上げることができる。また、表面上の入賞図柄組合せと内部的当選役とが一致しているので、遊技者に信頼感を与えることができる。」「また、遊技者に内部的当選状態をした入賞役を報知する報知手段を設けることにより、遊技者に入賞への期待感を持たせ、ゲームの興趣を一層高めることも可能である。」という作用効果を奏するものである。
さらに、本件訂正発明は、被請求人が、平成24年8月28日の上申書(被請求人)で主張する「遊技者の狙いを複数の内部的当選役(例えば、BB[1]及びBB[2])の各々に対して均等化し、その結果、報知によって遊技者を落胆させることはあり得ず、遊技者に安心感を必ず与えて有利遊技状体に移行させることができる。」(第9ページ5行?8行を参照。)なる作用効果も奏するものである。
したがって、上記(B)及び(C)の相違点についてさらに検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲第1号証の発明及び甲第2?23、28?30号証の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

2 本件訂正発明2?5について
本件訂正発明2?5は、本件訂正発明1をさらに限定するものであるから、上記「第6 1 本件訂正発明1」に記載した理由により、甲第1?23、28?30号証の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件訂正発明1?5についての特許を無効とすることはできない。
また、他に、本件訂正発明1?5を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の図柄を可変表示する可変表示部と、
ゲーム毎にサンプリングされる一の乱数値が遊技機が揃えようとする一の入賞図柄組合せにのみ対応するように予め設定された入賞確率テーブル中のデータと前記乱数値とを照合することにより内部的当選役を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に従い内部的当選役の発生を記憶する内部的当選役記憶手段と、
前記内部的当選役記憶手段に記憶された内部的当選役に対応する図柄の組合せが出現するように前記可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部と、
遊技者の停止操作に応じて前記制御部に前記可変表示動作の停止制御を実行させる信号を発生する可変表示停止手段と、
遊技者に内部的当選をした入賞役を報知する報知手段と、
を備えた遊技機において、
前記入賞役は、通常遊技状態から該通常遊技状態よりも遊技者に付与する利益が大きい有利遊技状態に移行させるための特定の入賞役を含み、
前記入賞確率テーブルは、前記特定の入賞役と、
前記特定の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役と、
当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータとを含み、
前記複数の内部的当選役の各々は、前記有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じであり、
前記制御部は、
前記入賞確率テーブルを格納する記憶手段を有し、
前記乱数値がサンプリングされた時、その乱数値を前記入賞確率テーブル中のデータと照合して前記複数の内部的当選役のいずれかに該当する場合には、前記可変表示停止手段での前記信号の発生タイミングに応じて当該内部的当選役を示す入賞図柄組合せを表示するように前記可変表示部の動作を制御し、
前記内部的当選役記憶手段は、前記判定手段で判定された内部的当選役が前記特定の入賞役を構成する内部的当選役である場合について、前記可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合には当該内部的当選役に対応する図柄の組合せが揃うまで当該内部的当選役の発生した状態を保持し、
前記報知手段は、前記内部的当選役記憶手段で内部的当選役の発生した状態が保持される場合に、その内部的当選をした入賞役を報知する
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
請求項1の遊技機において、前記制御部は、前記乱数値が前記内部的当選役のいずれかに該当するか否かの判断を、遊技者に付与する利益の大きい内部的当選役から始めて該利益の小さい内部的当選役まで順次行うことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
請求項1の遊技機において、前記可変表示部は外周に複数の図柄を配列した複数の回転リールで構成され、前記報知手段は前記回転リールの内側に設置された発光体で構成されていることを特徴とする遊技機。
【請求項4】
請求項1の遊技機において、前記報知手段は前記制御部からの制御信号に応じて動作する効果音発生手段で構成されていることを特徴とする遊技機。
【請求項5】
請求項1の遊技機において、前記制御部は、前記乱数値が前記内部的当選役のいずれかに該当するとき、前記可変表示動作の停止により前記可変表示部に出現し得る図柄の組合せが特定の入賞図柄でない場合は、予め設定された所定の図柄を出現させるように前記可変表示部を制御することを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)などの電子回路により遊技態様を制御する遊技機、特に複数の図柄(シンボル)を可変表示する可変表示部を備えたスロットマシン、いわゆるパチスロ、及びパチンコ機等の弾球遊技機を含む遊技機に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロコンピュータにより遊技状態を電子的に制御する遊技機として、例えば、特公平3-72313号公報に記載されているスロットマシンが知られている。このスロットマシンのように回転リール式の可変表示部を備えた遊技機においては、外周にシンボルを配列したリールをステッピングモータで駆動するようになっており、このステッピングモータの駆動がマイコンで制御される。また、ビデオ式の可変表示部(例えばCRTが用いられる)を備えた遊技機では、シンボルパターンのグラフィックデータを一定の配列順序に従ってシンボルROMに格納し、マイコンがこのシンボルROMから可変表示部に表示すべきシンボルパターンのデータを読み出すようになっている。いずれにせよ、これらの遊技機は、可変表示部に表示される複数のシンボル列の移動をマイコンで停止制御するものである。
【0003】
このような遊技機においては、上記公報にも記載されているように、乱数発生器と入賞確率テーブルとを用いることにより払出(ペイアウト)率を適当な値に維持することができる。この払出率とは、スロットマシンに投入されたメダル又はコイン、あるいは弾球遊技機におけるパチンコ球等の遊技媒体の総数と、遊技により払い出されたメダル等の遊技媒体の総数との比率であり、通常は100%未満に設定され、その設定値を維持するように調整される。
【0004】
具体的には、ゲームが開始される毎に、マイコンに含まれ又はマイコンとは別に設けた乱数発生器から1個の乱数がサンプリングされ、マイコンにおいて当該乱数の数値が入賞確率テーブルと照合される。入賞確率テーブルには、乱数発生器で発生される数値をその大きさにより「大ヒット」、「中ヒット」、「小ヒット」、「ハズレ」の各範囲にグループ分けしたデータが格納され、サンプリングされた乱数がどのグループ(範囲)に属する数値であるかにより、入賞か否かが(入賞の場合はその種類も)判定される。この判定を行った結果、サンプリングされた乱数が大ヒットに属する数値であると、大ヒットのリクエスト信号が発生する。このリクエスト信号が発生すると、可変表示部がリール式のものでは、マイコンはリール表示窓に大ヒットとなるシンボルの組合せが得られるようにリールの停止制御を行う。これによれば、入賞確率テーブルのデータ設定に応じた確率のもとで各種の入賞(ヒット)が発生するので、遊技者の技量に極端に左右されることなく、例えば1日の営業期間内でのトータル的な払出率をほぼ一定に維持することができる。
【0005】
なお、ビデオ式の可変表示部すなわちCRT、LED、液晶等の表示装置を用いる遊技機においても、上記リールの代わりにCRT等の表示装置とシンボルROMとを用いるだけで、基本的な制御は共通している。
【0006】
ところで、一般に、スロットマシンの表示窓には1リールあたり3個のシンボルが表示されるようになっており、3リール式では合計9個のシンボルが表示される。そして、この表示窓には複数本の入賞ライン(例えば横3本、斜め2本)が用意されており、ゲーム開始時に遊技者が投入したコインの枚数に応じてその有効化本数が決まるようになっている。従って、これらの入賞ラインの全てが有効化されている場合には、リールの停止制御を行う際、これらの入賞ラインの全てについてチェックを行い、リクエスト信号で決められた種類以外の入賞が生じないような処理を行う必要がある。
【0007】
例えば、1リールあたり21個のシンボルが配列された3リール式のスロットマシンでは、第1のリールについては、リクエスト信号の種類に応じた所定のシンボルがいずれかの入賞ライン上で停止するような制御を行えばよいが、第2のリールの停止制御時には、第1リールの所定のシンボルが停止しているのと同じ入賞ライン上に同種のシンボルを停止させるような処理を行うだけでなく、その他の入賞ライン上でどのようなシンボルの組合せが生じるかをチェックしておく必要がある。このため、第2リールについて21通りの停止位置を想定し、各々の停止位置について、各入賞ライン毎に第1リールのシンボルとの組合せがチェックされる。このチェック処理に際しては、入賞となるシンボルの組合せと、これに対応して入賞の種類、コインの払い出し枚数等のデータが書き込まれた入賞シンボル組合せテーブルが参照される。そして、各入賞ライン毎のシンボルの組合せがどのような入賞の構成要素になっているかを判定し、それらのデータが入賞の種類を示すフラグと共にマイコンの記憶部であるRAMに格納される。
【0008】
上記のチェック処理を行った後、リクエスト信号を満足するシンボルの組合せ要素がいずれかの入賞ライン上に並ぶように第2リールが停止される。第2リールが停止した後には、同様に第3のリールについて21通りの停止位置を想定し、全ての入賞ライン上で最終的にどのようなシンボルの組合せになるのかがチェックされる。そして、リクエスト信号の種類に対応した入賞となるシンボルの組合せがいずれの入賞ライン上に得られ、しかも他の入賞ライン上にはハズレとなるシンボルの組合せが並ぶように第3リールが停止される。
【0009】
一方、上述のようにマイコンを利用した最近のスロットマシンでは、大ヒットが得られたときには通常のゲームモードからビッグボーナス(BB)ゲームモードに移行し、その間のゲームで大量のコイン払い出しが受けられるような機能をもっているものが多い。このようなスロットマシンでは、大ヒットが得られるか否かが遊技者にとって大きな関心事となる。そこで、大ヒットのリクエスト信号が発生したときには、大ヒットのリクエスト信号が発生した状態になっていることを遊技者に示唆することが興趣を高める上で非常に効果的である。
【0010】
大ヒットのリクエスト信号が発生した状態になっていることを遊技者に知らせるには、別設のランプ等を用いることもできるが、スロットマシンのシンボル表示そのものを利用することが部品点数を減らし、また、シンボル表示に対して遊技者の興味をひきつける上でも有利である。
【0011】
例えば“7-7-7”が大ヒットのシンボルの組合せであるとき、マイコンは、この大ヒットシンボルの組合せが入賞ライン上に並ぶように可変表示部を停止制御するが、実際に可変表示が停止した時に大ヒットのシンボルの組合せになるかどうかは、遊技者の停止操作のタイミングに依存する。従って、“7-7-7”の大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていても、遊技者がその大ヒットシンボルの組合せを入賞ライン上に並ばせることができなかった場合には、入賞ライン上に“7-7-α”(αは“7”以外の特定のシンボル)のような組合せのシンボル表示を行うように制御すると、大ヒットが近いという状態を表すのに好適である。このように大ヒットが近いことを示すシンボルの組合せは、「リーチ目」と称されている。
【0012】
以上のように電子制御される可変表示部を備えた遊技機のうちスロットマシンでは、大ヒットや中ヒットの入賞の種類(入賞役)として、例えば次の2つが設定される。
【0013】BB(ビッグボーナス)…通常より大きい値の払出率であるゲームモード。NB(ノーマルボーナス)…BBより小さく、通常より大きい払出率のゲームモード。
【0014】そして、各入賞役になるシンボルの組合せ(入賞図柄の組合せ)が、下記の表1に示されるように2つ(あるいは3以上)ある場合、ゲーム開始後にサンプリングされた乱数値が、上記入賞役に一対一対応して設定される内部的当選役(マイコンの場合、プログラム上で定められる当選役)に該当したときは、次のように処理される。
【0015】
【表1】

内部的当選役が“BB”の場合:入賞ライン上のシンボルの組合せが、▲1▼7-7-7,▲2▼BAR-BAR-7のいずれかであれば、遊技媒体であるメダル又はコイン(以下「メダル」という記載には、コインその他の遊技媒体を含む。)の払出しが行われる。
【0016】
内部的当選役が“NB”の場合:入賞ライン上のシンボルの組合せが、▲1▼7-7-BAR,▲2▼BAR-BAR-BARのいずれかであれば、メダルの払出しが行われる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなスロットマシン等の遊技機においては、一の入賞役に対する内部的当選役が一つに限定されているため、内部的当選確率が低く、しかも、一の内部的当選役に対して2以上(つまり複数)の入賞組合せが設定されているので、1回の内部的当選により、入賞組合せとなるシンボル配列が得られ易く、内部的に当選してから入賞するまで行われる遊技の回数(ゲーム数)が少なくなる。このため、遊技者個人の技術(目押し等)の影響が少なくなり、ゲームとしての面白味が少なくなるという問題点があった。
【0018】
従って、本発明の目的は、所定の払出率を維持しつつ、従来よりも遊技者の技術を関与させるようにしてゲームの興趣を向上させた遊技機を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の図柄を可変表示する可変表示部と、
ゲーム毎にサンプリングされる一の乱数値が遊技機が揃えようとする一の入賞図柄組合せにのみ対応するように予め設定された入賞確率テーブル中のデータと前記乱数値とを照合することにより内部的当選役を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に従い内部的当選役の発生を記憶する内部的当選役記憶手段と、
前記内部的当選役記憶手段に記憶された内部的当選役に対応する図柄の組合せが出現するように前記可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部と、
遊技者の停止操作に応じて前記制御部に前記可変表示動作の停止制御を実行させる信号を発生する可変表示停止手段と、
遊技者に内部的当選をした入賞役を報知する報知手段と、
を備えた遊技機において、
前記入賞役は、通常遊技状態から該通常遊技状態よりも遊技者に付与する利益が大きい有利遊技状態に移行させるための特定の入賞役を含み、
前記入賞確率テーブルは、前記特定の入賞役と、
前記特定の入賞役を構成し、当選確率を同じくする複数の内部的当選役と、
当該内部的当選役とそれぞれ一対一に対応する入賞図柄組合せを示すデータとを含み、
前記複数の内部的当選役の各々は、前記有利遊技状態において遊技者に付与し得る利益が同じであり、
前記制御部は、
前記入賞確率テーブルを格納する記憶手段を有し、
前記乱数値がサンプリングされた時、その乱数値を前記入賞確率テーブル中のデータと照合して前記複数の内部的当選役のいずれかに該当する場合には、前記可変表示停止手段での前記信号の発生タイミングに応じて当該内部的当選役を示す入賞図柄組合せを表示するように前記可変表示部の動作を制御し、
前記内部的当選役記憶手段は、前記判定手段で判定された内部的当選役が前記特定の入賞役を構成する内部的当選役である場合について、前記可変表示停止手段に基づく可変表示結果が前記内部的当選役に対応する図柄の組合せとは異なる場合には当該内部的当選役に対応する図柄の組合せが揃うまで当該内部的当選役の発生した状態を保持し、
前記報知手段は、前記内部的当選役記憶手段で内部的当選役の発生した状態が保持される場合に、その内部的当選をした入賞役を報知する
ことを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記のように可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部を備えたスロットマシン等の遊技機を対象としているが、その中でも、遊技者の停止操作のタイミングに応じて可変表示を停止制御する遊技機(パチスロ)に好適に適用される。すなわち、前記可変表示停止手段は、例えば、遊技者が操作する停止ボタンと、これが操作されたとき制御部へ停止信号を送る停止信号回路とから成る。
【0021】
本発明の具体的態様では、制御部は乱数値が内部的当選役のいずれかに該当するか否かの判断を、遊技者に付与する利益の大きい内部的当選役から始めて利益の小さい内部的当選役まで順次行う。また、可変表示部は、外周に複数の図柄を配列した複数の回転リールで構成される。
本発明の別の態様では、報知手段は、回転リールの内側に設置された発光体で構成される。あるいは、報知手段は、制御部からの制御信号に応じて動作する駆動回路及びスピーカ等の発音装置を含む効果音発生手段で構成される。
【0022】
更に別の態様では、上記制御部は、乱数値が内部的当選役のいずれかに該当するとき、可変表示動作の停止により可変表示部に出現し得る図柄の組合せが特定の入賞図柄(例えば「大ヒット」のシンボル組合せ)でない場合は、予め設定された所定の図柄(例えば、前述した「リーチ目」)を出現させるように可変表示部を制御する。
【0023】
【作用】
本発明の遊技機においては、制御部は、ゲーム毎に乱数をサンプリングし、その乱数値を予め設定された入賞確率テーブル中のデータと照合することで入賞態様(入賞か否か、そして入賞の場合は、その種類)を判定し、その判定結果により可変表示部の可変表示動作を停止制御する。
【0024】
詳細には、判定の基準となる入賞確率テーブルは、内部的当選が発生したゲームにおいて入賞しないとき、その後のゲームで入賞するまで当該内部的当選が発生した状態にする一の入賞役(例えば、ビッグボーナス)に対して設定された複数の入賞図柄の組合せ(例えば、後述の表2に示された“7-7-7”及び“BAR-BAR-7”)を示すデータと該入賞図柄の組合せとそれぞれ一対一に対応して設定された当選確率を同じくする複数の内部的当選役を示すデータとを含んで、記憶手段に格納される。すなわち、そのような入賞役に対応する入賞図柄の組合せが複数設けられ、その各々と一対一で内部的当選役が設定される。
制御部は、乱数値がサンプリングされた時、その乱数値を前記入賞確率テーブル中のデータと照合して入賞図柄の組合せとそれぞれ一対一で対応して設定された前記複数の内部的当選役のいずれかに該当するか否かを判断し、その判断結果が前記内部当選役のいずれかに該当する場合には、前記可変表示停止手段での前記信号の発生タイミングに応じて当該内部当選役を示す特定の入賞図柄組合せを表示するように前記可変表示部の動作を制御する。
従って、制御部が、例えば“7-7-7”と一対一に対応して設定された内部的当選役に該当すると判断した場合には、遊技者は、“7-7-7”を狙って停止操作を行うことで、ビッグボーナスとなる入賞図柄組合せが得られるが、“BAR-BAR-7”を狙って停止操作を行ったとしても、ビッグボーナスとなる入賞図柄組合せは得られない。このため、ビッグボーナスの入賞となる(入賞図柄組合せが得られる)までのゲーム回数を従来よりも増やすことができ、遊技者の技術による影響を大きくできる。その一方で、一の入賞役に対する内部的当選確率を上げることができるので、ゲームとしての面白味が増す。
【0025】
また、報知手段は、内部的当選役記憶手段で内部的当選役の発生した状態が保持される場合に、内部的当選をした入賞役を報知する。
【0026】
本発明の一つの態様では、乱数値が内部的当選役のいずれかに該当するか否かの判断が、遊技者に付与する利益の大きい内部的当選役から始めて利益の小さい内部的当選役まで順次行われる。
【0027】
また、上記パチスロにおいては、「大ヒット」のような特定の入賞図柄に対応する内部的当選役に当っているとき、可変表示が停止した時にその特定の入賞図柄になるかどうかは、可変表示を停止させる遊技者の操作タイミングに応じて決定されるが、可変表示の停止により可変表示部に出現し得る図柄の組合せが特定の入賞図柄でない場合は、前述の「リーチ目」を出現させることにより、遊技者に内部的当選が特定の入賞であることを知らせることができる。
【0028】
上記のような報知により、遊技者は入賞の期待を持って遊技を行うことができ、ゲームの興趣が一層向上する。
【0029】
【実施例】
図1は、本発明の一実施例のスロットマシンの外観を示す正面図である。このスロットマシン1の本体中央部には、各々の外周面に複数種類のシンボルが配列された3個のリール2,3,4が回転自在に設けられて可変表示部を形成している。各リール2,3,4のシンボルは、本体1の正面の表示窓5,6,7を通して、それぞれ3個ずつ観察できるようになっている。
【0030】
図2に示すように、表示窓5?7には、横3本(中央及び上下)の入賞ラインL1,L2A,L2Bと、斜め2本の入賞ラインL3A,L3Bが設けられている。ゲーム開始に先立って、遊技者がメダル投入口8から1枚のメダルを投入したときは中央の入賞ラインL1だけが有効化され、2枚投入したとき、これに上下の入賞ラインL2A,L2Bが加わり、3枚投入したときは、全ての入賞ラインが有効化される。このような入賞ラインの有効化は、各入賞ラインに対応した番号▲1▼,▲2▼,▲3▼を表示する有効化ライン表示ランプ9が点灯することにより、遊技者に表示される。
【0031】
上記の可変表示部には、後述のように入賞の種類に応じて遊技者に払い出されるメダルの枚数を表示する枚数表示部10が設けられている。この表示部10は、表示する数値の桁数に応じた個数の7セグメントLEDで構成されている。
【0032】
この実施例では、遊技者がメダル投入口8からメダルを投入した後、正面の左端部に設置されたスタートレバー11を操作することにより、3つのリール2,3,4が一斉に回転する。そして、これらの回転が一定の速さに達した時、各リールに対応して設けられたストップボタン12,13,14の操作が有効化されるので、遊技者はこれらのボタンを押圧操作することで、対応するリールの回転を停止させることができる。このとき、上記のように有効化されている入賞ライン上で停止したシンボルの組合せが入賞組合せに該当していれば、その入賞の種類に応じた枚数のメダルが受皿15に払い出される。
【0033】
図3は、上記スロットマシンにおける遊技処理動作を制御する制御部と、これに電気的に接続する周辺装置(アクチュエータ)とを含む回路構成を示す。
【0034】
この場合、制御部は、マイコン20を主な構成要素とし、これに乱数サンプリングのための回路を加えて構成されている。マイコン20は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPU21と、記憶手段であるROM22及びRAM23とを含み、そのCPU21に、基準クロックパルスを発生するクロックパルス発生回路24及び分周器25と、後述のようにサンプリングされる乱数を発生する乱数発生器26及び乱数サンプリング回路27とが接続されている。マイコン20のROM22は、入賞確率テーブル、シンボルテーブル、入賞シンボル組合せテーブル及びシーケンスプログラムを格納するように区分された記憶部22a,22b,22c,22dを備えている。これらの記憶部に格納されるテーブル等の内容については、後述する。
【0035】
図3の回路において、マイコン20からの制御信号により動作が制御される主要なアクチュエータとしては、前述のリール2,3,4をそれぞれ回転駆動するステッピングモータ2S,3S,4Sと、遊技媒体のメダルを収納するホッパー(払い出しのための駆動部を含む)30と、前述の枚数表示部10と、有効化ライン表示ランプ9とがあり、有効化ライン表示ランプ9以外は、それぞれインタフェース回路31,32,33を介してCPU21の出力部に接続されている。これらのインタフェース回路31,32,33は、それぞれCPU21から出力される駆動指令などの制御信号を受けて、ステッピングモータ2S,3S,4Sへの駆動パルスを生成するモータ駆動回路、ホッパー30への駆動信号を生成するホッパー駆動回路、枚数表示部10を駆動する表示部駆動回路(具体的には、メダルの枚数を計数するカウンタ)を構成している。
【0036】
また、マイコン20が制御信号を生成するために必要な入力信号を発生する主な入力信号発生手段としては、メダル投入口8から投入されたメダルを検出する投入メダルセンサ8Sと、前記スタートレバー11の操作を検出するスタートスイッチ11Sと、前述のように各リール2,3,4が一回転する毎にパルスを発生するリール回転センサ(図3では、各リール2,3,4に含まれている)と、前述のストップボタン12,13,14と、ホッパー30から払い出されるメダルの数を計数するメダル検出部34とがあり、リール回転センサ、ストップボタン12,13,14及びメダル検出部34は、それぞれインタフェース回路35,36,37を介してCPU21の入力部に接続されている。
【0037】
ここで、インタフェース回路35は、リール回転センサからのパルス信号を受けて各リールの位置を検出するための信号をCPU21へ供給するリール位置検出回路、インタフェース回路36は、ストップボタン12,13,14が押されたことを検出するための信号をCPU21へ供給するリール停止信号回路、インタフェース回路37は、メダル検出部34及び前述の表示部駆動回路33からの計数信号を受けて、メダル検出部34の計数値(ホッパー30から払い出されたメダルの数)が表示部駆動回路33からの計数信号で表わされる枚数データに達した時メダル払出し完了を検知するための信号をCPU21へ供給する払出し完了信号回路を、それぞれ構成している。なお、上記のストップボタン12,13,14とリール停止信号回路36とは、遊技者の停止操作に応じてCPU21に可変表示部の停止制御を実行させる信号を発生する可変表示停止手段を構成している。
【0038】
図3の回路において、乱数発生器26は、一定の数値範囲に属する乱数を発生し、サンプリング回路27は、スタートレバー11が操作された後の適宜のタイミングで1個の乱数をサンプリングする。こうしてサンプリングされた乱数は、ROM22内の記憶部22aに格納されている入賞確率テーブルにおいて、どの入賞グループに属する値になっているかが判定される。このため、概念的に図4に示したようなデータが、入賞確率テーブル記憶部22aに格納されている。
【0039】
図4において、B1?B3,M1?M3,S1?S3は予め設定された数値であり、投入メダルの枚数に応じて“B1-M1-S1”,“B2-M2-S2”,“B3-M3-S3”のいずれかが決定される。なお、これらの数値は、サンプリングされた乱数値を大ヒット、中ヒット、小ヒットのいずれかにグループ分けするためのものである。
【0040】
乱数発生器26から発生した乱数の値が0?N(所定の数)であるとすると、投入メダル数が1の場合には、大ヒットの確率が“B1/N”、中ヒットの確率が“M1/N”、小ヒットの確率が“S1/N”となる。例えば、B1,M1,S1の値がそれぞれ“100”,“500”,“1000”であったとすると、サンプリングされた乱数の値が100未満であれば大ヒット、100以上500未満であれば中ヒット、500以上1000未満であれば小ヒットとなって、それぞれの種類に対応した入賞リクエスト信号が発生し、さらに1000以上である場合には入賞なし(ハズレ)のリクエスト信号が発生する。
【0041】
リール2?4の回転が開始された後、ステッピングモータ2S?4Sの各々に供給される駆動パルスの数が計数され、その計数値はRAM23の所定エリアに書き込まれる。リール2?4からは一回転毎にリセットパルスが得られ、これらのパルスはリール位置検出回路35を介してCPU21に入力される。こうして得られたリセットパルスにより、RAM23で計数されている駆動パルスの計数値が“0”にクリアされる。これにより、RAM23内には、各リール2?4について一回転の範囲内における回転位置に対応した計数値が格納される。
【0042】
上記のようなリール2?4の回転位置とシンボルとを対応づけるために、概念的に図5に示したようなシンボルテーブルが、ROM22の記憶部22bに格納されている。このシンボルテーブルでは、前述したリセットパルスが発生する回転位置を基準として、各リールの一定の回転ピッチ毎に順次付与されるコードナンバーと、それぞれのコードナンバー毎に対応して設けられているシンボルを示すシンボルコードとが対応づけられている。図5の例では、第1のリール2が基準位置からコードナンバー“12”の回転位置で停止したときは、表示窓5の中央に“A”のシンボルが表示され、その上下にはそれぞれ“E”,“G”のシンボルが現れることになる。
【0043】
更に、ROM22の記憶部22c内には、概念的に図6のように表わされる入賞シンボル組合せテーブルが格納されている。この入賞シンボル組合せテーブルでは、入賞となるシンボルの組合せ及び前述の「リーチ目」を構成するシンボルの組合せと、入賞のメダル配当枚数と、その入賞を表わす入賞判定コードとが対応づけられている。入賞判定コードは、例えば、“AH”が大ヒット、“BH”が中ヒット、“CH”が小ヒット、“RH”がリーチ目を表している。
【0044】
なお、リーチ目は配当枚数は0であり、通常の入賞とは異なるが、リールの停止制御処理においては、入賞の一形態として扱われる。また、リーチ目を配当枚数を有する形としてもよく、この場合、リーチ目は大ヒットのシンボルの組合せと同一でなければよい。更に、リーチ目は、“A-E-D”のようにシンボル間に何ら関連性のない組合せであってもよい。
【0045】
上記の入賞シンボル組合せテーブルは、第1リール2,第2リール3,第3リール4の停止制御時、及び全リール停止後の入賞確認を行うときに参照されるが、入賞の種類によって有効として扱われる入賞ラインが予め決められている。すなわち、メダルを3枚投入した場合には、入賞ラインL1,L2A,L2B,L3A,L3Bの全てが有効化されるが、入賞の種類によっては、そのシンボルの組合せが所定の入賞ライン以外で得られたとしても無効となる。これが、ラインデータ(所定データ)“FL”,“AL”,“BL”,“CL”として示されている。
【0046】
上記のラインデータ“FL”が付された“AH”,“BH”,“CH”の各ヒットは、全ての入賞ライン上で有効に扱われるが、リーチ目“RH”となるシンボルの組合せの一部は、入賞ラインL2A,L3A上に並んだときだけ有効(ラインデータ“AL”)となり、他の一部は入賞ラインL2B,L3B上に並んだときだけ有効(ラインデータ“BL”)、更に他の一部は入賞ラインL1上に並んだときだけ有効(ラインデータ“CL”)となる。図6の入賞シンボル組合せテーブルの左欄に示した列ナンバーは、このテーブルが参照される順序を表し、第19列で終了する。
【0047】
ROM22の記憶部22d内には、このスロットマシンでゲームが実行される際のプログラム(シーケンスプログラム)が格納されている。
【0048】
上記実施例の回路構成によれば、前述のようにスタートレバー11が操作されると、その操作を検出するスタートスイッチ11Sからの信号に応じて、CPU21はモータ駆動回路31に駆動信号を送り、ステッピングモータ2S,3S,4Sによるリール2,3,4の回転駆動を行わせる一方、適宜のタイミングで乱数発生器26から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、ROM22内の入賞確率テーブル22aでどの入賞グループに属するかを判定する。入賞と判定された場合には、CPU21は、前記可変表示停止手段からの信号、すなわち遊技者がストップボタン12,13,14を操作した時にリール停止信号回路36から送られる停止信号に応じて、入賞の種類に対応したシンボル表示位置にリール2,3,4を停止制御する信号をモータ駆動回路31に送ると共に、入賞の種類に対応したメダル払出しデータを表示部駆動回路33に供給して表示部10にメダル払出し数を表示し、且つ、払い出し指令信号をホッパー駆動回路32に供給してホッパー30から所定個数のメダルの払出しを行う。その際、メダル検出部34は、ホッパー30から払い出されるメダルの枚数を計数し、その計数値が表示部駆動回路33からの枚数データに達した時点で、払出し完了信号回路37がCPU21に払い出し完了信号を入力する。これにより、CPU21は、ホッパー駆動回路32を介してホッパー30の駆動を停止し、メダルの払い出し処理を終了する。
【0049】
以上が遊技処理動作の概略である。なお、図3の回路構成では、乱数サンプリングのための手段として、マイコン20とは別の回路である乱数発生器26及び乱数サンプリング回路27を用いるようにしているが、マイコン20内で、すなわちCPU21の動作プログラム上で乱数サンプリングを実行するように構成してもよい。その場合、乱数発生器26及び乱数サンプリング回路27は省略可能であり、或いは、乱数サンプリング動作のバックアップ用として残しておくことも可能である。
【0050】
次に、本発明の特徴的部分を具体的に説明する。
【0051】
スロットマシンにおける入賞役の例としては、上記の「大ヒット」、「中ヒット」及び「小ヒット」があるが、以下の例では、「大ヒット」及び「中ヒット」に前述のBB及びNBをそれぞれ対応させる。そして、これら2つの入賞役には、表2に示すように各々2種類の内部的当選役(▲1▼及び▲2▼)が設定され、各内部的当選役は、個々の入賞図柄の組合せ(BBに対して▲1▼7-7-7,▲2▼BAR-BAR-7、NBに対して▲1▼7-7-BAR,▲2▼BAR-BAR-BAR)に一対一対応させる。すなわち、ゲームスタート後にサンプリングされる一の乱数の値は、遊技機が揃えようとする一の入賞組合せにのみ対応し得るようにする。
【0052】
【表2】

上記のような設定のスロットマシンでは、図3のマイコン20において行われる入賞判定(内部的抽選)の結果がRAM23に格納される。そのため、RAM23は、例えば図7に示すような8ビット構成のメモリ領域を有する。このメモリ領域では、“7”?“4”のビットに上記表2の内部的当選役BB▲1▼,BB▲2▼,NB▲1▼,NB▲2▼を対応させ、“3”?“0”のビットにその他の役を対応させている。
【0053】
内部的抽選処理は、図8及び図9に示すフローチャートに従って実行される。具体的には、マイコン20のCPU21が、前述のようにゲームスタート後に乱数値をサンプリングして、ROM22の記憶部22aに格納されている入賞確率テーブルと照合することにより、以下の抽選処理を実行する。
【0054】
まず、図8に示すように、サンプリングされた乱数値をBB▲1▼の当選幅(入賞組合せ“7-7-7”に対する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST1)、BB▲1▼に該当するか否かを判定する(ST2)。その結果、該当する場合には、内部的当選が達成され、例えば8ビット構成のRAM23においてBB▲1▼に対応するビット(7)にフラグを立て(ST3)、抽選処理を終了する。
【0055】
一方、乱数値がBB▲1▼に当選しない場合には、当該乱数値を次の内部的当選役BB▲2▼の当選幅(入賞組合せ“BAR-BAR-7”に対応する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST4)、BB▲2▼に該当するか否かを判定する(ST5)。その結果、該当する場合には内部的当選が達成されて、RAM23においてBB▲2▼に対応するビット(6)にフラグを立て(ST6)、抽選処理を終了する。
【0056】
乱数値がBB▲2▼にも当選しない場合には、図9に示すように、乱数値を次の内部的当選役NB▲1▼の当選幅(入賞組合せ“7-7-BAR”に対応する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST7)、NB▲1▼に該当するか否かを判定する(ST8)。その結果、該当する場合には内部的当選が達成されて、RAM23においてNB▲1▼に対応するビット(5)にフラグを立て(ST9)、抽選処理を終了する。
【0057】
一方、乱数値がNB▲1▼に当選しない場合には、当該乱数値を次の内部的当選役NB▲2▼の当選幅(入賞組合せ“BAR-BAR-BAR”に対応する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST10)、NB▲2▼に該当するか否かを判定する(ST11)。その結果、該当する場合には内部的当選が達成されて、RAM23においてNB▲2▼に対応するビット(4)にフラグを立て(ST12)、抽選処理を終了する。
【0058】
最後に、乱数値がNB▲2▼にも当選しない場合には、その他の役の抽選処理を行う(ST13)。ここで、どの役にも該当しなければ、「ハズレ」になることは従来と同様である。
【0059】
最終的には、上記のような抽選処理の結果得られたRAM23上のデータに基づいて、可変表示部のリールの駆動制御が行われる。
【0060】
以上の制御がなされるスロットマシンを従来のものと比較すると、各々の内部的当選確率等の値は、次のようになる。
(1)BB、NBが内部当選してから入賞する(入賞組合せになる)までの遊技数は、従来のもので平均10回に対し、本実施例では平均19回である。
(2)従来機においては、入賞役BBに対する内部的当選役が1個であるため、その当選確率は、例えば1/303であるが、本実施例においては、入賞役BBに対する内部的当選役が2つ存在するため、その当選確率は1/293と高くなる。この現象は、入賞役NBに対しても同様である。以上をまとめると、

このように、本実施例では、従来機よりも遊技数が増加し且つ内部的当選確率が大きくなる。これは、以下の理由による。
【0061】
(1)一の入賞組合せに対して一対一対応する内部的当選役を設けることにより、入賞までのゲーム数が増加する点。
【0062】
従来のスロットマシンにおいて、複数個のリールがあり、一つのリール上の個々の図柄が他のリール上の個々の図柄と並び得る図柄配置がa通りあり、そのa通りのうち、リールの滑りを考慮した上で、BBに該当し得る図柄組合せが2b通りあるとすると、当選フラグが立っている状態で入賞図柄が揃う確率は、2b/aである。すなわち、当選フラグが立ってから入賞図柄が実際に揃うまでに要する平均のゲーム数は、a/2bである。
【0063】
一方、本発明の実施例では、前掲の表2に示すように、BBに該当する入賞図柄の組合せ(例えば7-7-7)が内部的当選役(例えばBB▲1▼)に一対一対応しているので、複数個のリールがあり、一つのリール上の個々の図柄が他のリール上の個々の図柄と並び得る図柄配置がa通りあり、そのa通りのうち、リールの滑りを考慮した上で、BBに該当し得る図柄組合せ(表2より、この図柄組合せには一対一対応する内部的当選役が存在するため、BB▲1▼又はBB▲2▼のいずれかに該当し得る図柄組合せとなる)が2b/2=b通りであるとすると、当選フラグが立っている状態で入賞図柄が揃う確率はb/aである。すなわち、当選フラグが立ってから入賞図柄が実際に揃うまでに要する平均のゲーム数は、a/bである。
【0064】
具体的な数値を用いて説明すると、次のとおりである。
【0065】
従来のものでは、1本のリール上の図柄が21で、同様なリールが3本ある場合、上記aの値は、a=21^(3)=9261(通り)。ここで、リール制御により入賞図柄の組合せに引き込まれ得る図柄組合せの数が、2b=1000(通り)であるとすると、BBに入賞するまでの平均遊技数は、9261/1000≒9.26(ゲーム)である。
【0066】
一方、本実施例においても、a=9261(通り)。しかし、入賞し得る図柄組合せに対して内部的当選役が一対一対応しているので、BB▲1▼に該当し得る図柄組合せは、1000/2=500(通り)。同様に、BB▲2▼に該当し得る図柄組合せも、1000/2=500(通り)。従って、本実施例でBBに入賞するまでの平均遊技数は、9261/500≒18.52(ゲーム)である。
【0067】
このように、従来機よりも、入賞までの遊技数を増やすことができる。
【0068】
(2)一の入賞組合せに対して一対一対応する内部的当選役を設けることにより、結果として内部当選確率を高くすることができる点。
【0069】
出玉率を、設計目標である100%に近づけることによる。出玉率は、投入メダル数に対する払出しメダル数の割合であり、次式で表わされる。
【0070】
【数1】

=[{(通常ゲーム数)×(1ゲームにかけるメダル数)×(通常の払出し率)}
+{(BBフラグ間のゲーム数)×(1ゲームにかけるメダル数)
×(通常の払出し率)+(BB中の払出し枚数)}×(BBの出現回数)
+{(NBフラグ間のゲーム数)×(1ゲームにかけるメダル数)
×(通常の払出し率)+(NB中の払出し枚数)}×NBの出現回数]
÷[{(通常ゲーム数)×(1ゲームにかけるメダル数)}
+{(BBフラグ間のゲーム数)×(1ゲームにかけるメダル数)
+(BB中の投入枚数)}×(BBの出現回数)
+{(NBフラグ間のゲーム数)×(1ゲームにかけるメダル数)
+(NB中の投入枚数)}×(NBの出現回数)] …(1)
上式において、「通常ゲーム数」とはゲームが成立する乱数領域の大きさ若しくは幅を意味する。
【0071】
ここで、上式(1)に具体的な数値を代入して、出玉率(%)を計算する。
【0072】
従来機の場合
{(16384×3×0.5)+(9.261×3×0.5+360)×54
+(9.261×3×0.5+120)×64}
÷{(16384×3)+(9.261×3+36)×54+(9.261×3+12)×64}
=0.968 …(2)
すなわち、出玉率は96.8%である。
【0073】
実施例の場合上記(1)で示したように、本実施例では、BB入賞するまでのゲーム数は18.52である。そこで、この値を式(1)に代入して出玉率を計算すると、以下のようになる。
【0074】
[(16384×3×0.5)+{(18.52×3×0.5+360)×58/2
+(18.52×3×0.5+360)×58/2}
+{(18.52×3×0.5+120)×68/2
+(18.52×3×0.5+120)×68/2}]
÷[(16384×3)+{(18.52×3+36)×58/2+(18.52×3+36)×58/2}
+{(18.52×3+12)×68/2+(18.52×3+12)×68/2}]
=0.967 …(4)
すなわち、96.7%という当初の(従来機と同様の)出玉率を維持することにより、結果的にBBの出現回数とNBの出現回数が増加する。具体的には、BBの出現回数は、従来機の“54”に対して“58”、BBの出現回数は、従来機の“64”に対して“68”にそれぞれ増加している。
【0075】
以上のように、従来機では入賞役BBに対する内部的当選確率は、54/16384≒1/303であるのに対し、本実施例においては、入賞図柄組合せと内部的当選役とを一対一対応させることにより入賞までのゲーム数を増加させた。更に、当初の出玉率を維持させるため、BB及びNBの出る回数を増加させている。この結果、入賞役BBに対する内部的当選確率を、次のように上げることができる。
【0076】
【数2】

次に、他の実施例について説明する。
【0077】
(i)上述の実施例において、内部的抽選処理は、上記のようにBB▲1▼等の大役から当たりの小さいNB▲2▼等の役へと順序よく処理されているが、必ずしもこの順序で処理を行う必要はなく、例えば小役からBB▲1▼等の大役へというように、当たりの大きい役へ順序よく処理してもよいし、また、大役、小役の全てから任意の役について次々に処理してもよい。
【0078】
処理の順序はどのようであっても、遊技数を増やして内部的当選確率を上げることができることに変わりはなく、ゲームの興趣を高めることができる。
【0079】
(ii)ゲームスタート後、サンプリングされた乱数値が内部的当選役に該当した場合、その内部的当選を遊技者に知らせる報知手段を設けてもよい。
【0080】
この報知手段としては、例えば各リール2,3,4の内側に取り付けられているバックライト(照明)を利用することができる。すなわち、遊技がスタートして乱数がサンプリングされ、入賞確率テーブルとの照合により内部的当選に該当する場合は、このバックライトを点滅又は点灯させることによって、遊技者に内部的当選を知らせる。これにより、遊技者は「当たり」への期待感を持つことができる。
【0081】
具体的には、図10及び図11に示すように、3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ(LED、電球などの発光体)41を縦方向に配列した基板42を設置し、これら3列のランプ41を、図3のCPU21により、例えばストップボタン12が押された直後に、図12(A),(B),(C)に示すような種々のパターンで点滅又は点灯するように制御する。なお、図12において、(A)は全てのランプを点灯又は点滅するパターン、(B)は上下及び中心部のランプを点灯又は点滅するパターン、(C)はランプを所定の方向に順次点灯又は点滅する動作を繰り返すパターンを示す。勿論、パターンはこれらのみに限らない。
【0082】
また、内部的当選の種類に応じて上述の点灯パターンを変えることにより、どの種類の入賞役に当たり易い状態であるかを遊技者に知らせることもできる。
【0083】
更に、上記のようなバックライトの利用に加えて又はバックライトを利用する代わりに、スピーカのような発音装置から適当な音を発生することによっても、内部的当選を遊技者に知らせることができる。
【0084】
(iii)内部的当選の後、リールの回転停止操作によって出現し得る図柄組合せが「大ヒット」のような特定の入賞図柄でない場合には、「リーチ目」を出現させることにより、遊技者に対し内部的当選を知らせるようにしてもよい。これはマイコン20のプログラムで実現できるが、これに代えて、或いはこれと共に、上記(ii)で説明したリールのバックライトや音声を利用する報知手段を用いてもよい。
【0085】
【発明の効果】
上記のとおり、本発明によれば、一の入賞組合せに対して一の内部的当選役が設定された状態で複数の入賞組合せが設けられていることから、入賞までのゲーム数を増やして遊技者の技術がゲームに与える影響を大きくすることができる。一方、当初の出玉率を維持することで、結果的に内部的当選が発生したゲームにおいて入賞しないとき、その後のゲームで入賞するまで当該内部的当選が発生した状態にする一の入賞役における内部的当選確率も上げることができる。また、表面上の入賞図柄組合せと内部的当選役とが一致しているので、遊技者に信頼感を与えることができる。
【0086】
また、遊技者に内部的当選状態をした入賞役を報知する報知手段を設けることにより、遊技者に入賞への期待感を持たせ、ゲームの興趣を一層高めることも可能である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-09-24 
結審通知日 2012-09-27 
審決日 2012-10-10 
出願番号 特願平6-265014
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
登録日 2001-03-23 
登録番号 特許第3172641号(P3172641)
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人タス・マイスター国際特許事務所  
代理人 黒田 博道  
代理人 金木 章郎  
代理人 金木 章郎  
代理人 特許業務法人タス・マイスター国際特許事務所  

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