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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B81C
管理番号 1267284
審判番号 不服2011-4549  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-28 
確定日 2012-12-06 
事件の表示 特願2003-435063「エピタキシャルリアクタにおいて表面マイクロマシニングされた構造物を解放する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日出願公開、特開2004-230546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本件発明
本願は平成15年12月26日の出願(パリ条約に基づく優先権主張2002年12月30日、アメリカ合衆国)であって、平成21年12月11日付拒絶理由通知に対して同22年6月18日に意見書と手続補正書が提出されたが、同22年10月21日付で拒絶査定されたものである。これに対して平成23年2月28日に本件審判が請求されるとともに明細書に対する手続補正書が提出され、当審の同23年4月21日付審尋に対して同23年10月27日に回答書が提出され、当審の同23年12月12日付拒絶理由通知に対して同24年6月15日に意見書と手続補正書が提出されている。
本願の請求項1ないし34に係る発明は、平成24年6月15日付手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし34に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明は次のとおりである。
「少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントを製造する方法において、
基板層と、犠牲層と、機能層とを提供し、犠牲層が基板層の少なくとも第1の部分の上に位置しており、機能層が犠牲層の少なくとも第1の部分の上に位置しており、機能層がシリコンを含んでおり、犠牲層が二酸化ケイ素から成り、
犠牲層の少なくとも第2の部分を露出させるために機能層をエッチングし、このエッチングが少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントのアウトラインを形成し、
気体水素を600℃?1400℃の高温に加熱し、
少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントと基板層との間の犠牲層の少なくとも第3の部分を、該犠牲層の第3の部分を、気体水素が犠牲層の第3の部分の材料に結合できるような高温に加熱された気体水素に曝露することによって機能層を解放するために除去することを特徴とする、少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントを製造する方法。」(以下、「本件発明」という。)

2.当審が通知した拒絶理由の概要
当審が平成23年12月12日付で通知した拒絶理由は、概略、以下のとおりである。
[理由1]
本願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項: 1,2,4?6,8?10,12?16,20?25,
27?29,31,32,37,38
・刊行物1: 特開平7-99326号公報
刊行物2: 特開平9-306865号公報
[理由2]
本願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由3]
本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由4]
本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3.刊行物に記載された発明または事項
平成23年12月12日付拒絶理由通知において引用された刊行物1及び2には、それぞれ以下の記載が認められる。

3.1 刊行物1
3.1.1 刊行物1の記載事項
a.(特許請求の範囲、請求項1)
「【請求項1】 シリコン基板(1)からなる支持体と、このシリコン基板(1)に被覆されたシリコンからなるエピタクシー層(5)とからなり、このエピタクシー層(5)の一部がエッチング工程により少なくとも1つのマイクロメカニック変位部分(12?15、30、36)として開放されており、この部分が支持領域の少なくとも一方でシリコン基板(1)と連結されており、かつセンサ(16)に力が作用するとほかのセンサ構造に対して変位可能であり、この変位を評価する手段を有するマイクロメカニックセンサ(16)において、開放された変位部分(12?15、30、37)が多結晶のシリコンからなり、このシリコンが支持領域のシリコン基板(1)への連結部分で単結晶のシリコンに移行していることを特徴とするマイクロメカニックセンサ。」
b.(同、請求項9,10)
「【請求項9】 請求項1から8までのいずれか1項記載のマイクロメカニックセンサを製造する方法において、マイクロメカニック変位部分(12?15、30、36)を開放すべきであるシリコン基板(1)に酸化珪素層(2)を被覆し、その際この酸化珪素層(2)の周囲にシリコン基板(1)に対する接触窓開口(3、4)を製造し、酸化珪素層(2)および接触窓開口(3、4)にシリコンからなるエピタクシー層(5)を析出させ、このエピタクシー層を酸化珪素層(2)上では多結晶で(領域8)および接触窓開口(3、4)の領域ではシリコン基板(1)への直接連結部分として単結晶で(領域6、7)成長させ、犠牲層としての、多結晶のエピタクシー層領域(8)の下側の酸化珪素層(2)をエッチング工程により除去することを特徴とするマイクロメカニックセンサの製造方法。
【請求項10】 酸化珪素層(2)を除去する前にトレンチング工程で、トレンチ(11)としての狭いエッチング溝の形の変位部分(12?15、30、36、37)の横方向の構造境界部を異方性のプラズマエッチング技術を使用して多結晶のエピタクシー層(8)を貫通させてエッチングにより除去する請求項9記載の方法。」
c.(同、請求項14)
「【請求項14】 酸化珪素層(2)の除去をフッ化水素酸を使用して実施する請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。」
d.(発明の詳細な説明、段落1)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シリコン基板からなる支持体と、このシリコン基板に被覆されたシリコンからなるエピタクシー層とからなり、このエピタクシー層の一部がエッチング工程により少なくとも1つのマイクロメカニック変位部分として開放されており、この部分が支持領域の少なくとも一方でシリコン基板と連結されており、かつセンサに力が作用するとほかのセンサ構造に対して変位可能であり、この変位を評価する手段を有する、特に振動、傾き、加速度または圧力を測定するためのマイクロメカニックセンサから出発する。」
e.(同、段落9,10)
「【0009】
【実施例】本発明を図面により詳細に説明する。
【0010】図1にはシリコン基板からなる支持体1が示されており、この基板に酸化珪素層2が被覆され、この酸化珪素層2の周囲にシリコン基板1に対する接触窓開口3,4が製造されている。」
f.(同、段落13)
「【0013】図1bによりほかの工程で支持体1または酸化珪素層2および接触窓開口3,4にシリコンからなるエピタクシー層5を析出する。エピタクシーはシリコンからなる単結晶の層を製造するためのそれ自体公知の特別の工程である。本発明による工程においては、エピタクシー層5は支持領域6,7でのみシリコン基板1上に単結晶で成長する。これに対して、酸化珪素層2上に、領域8に矢印9の幅にほぼ相当してエピタクシー層が多結晶で成長する(ハッチングにより示される)。」
g.(同、段落17?20)
「【0017】
領域8内の多結晶のエピタクシー層からマイクロメカニック変位部分を開放する。そのために、1cに示されるように、トレンチング工程で多結晶のエピタクシー層8を貫通して深く狭いエッチング溝、いわゆるトレンチを掘る。そのために、たとえばレジストとして相当するマスクが必要である。トレンチの製造は、高い異方性を有する乾燥エッチング工程として異方性のプラズマエッチング技術を使用して行う。図示された5個のトレンチ11により、4個の舌状の変位部分12,13,14,15の横方向の構造限界部をエッチングにより除去する。
【0018】ほかの工程で犠牲層としての酸化珪素層2を除去する。この除去はフッ化水素酸(HF)を使用したシリコンに比べて高い選択性をもって実施される。
【0019】従って、図1dから明らかなように、マイクロメカニックセンサ16が多結晶のシリコンからなる変位部分12,13,14,15とともに製造可能であり、これらの部分は支持領域でシリコン基板1への連結部分で単結晶のシリコンに移行している。センサに力が作用するとこれらの変位部分12,13,14,15はほかのセンサ構造、特にシリコン基板1に対して変位する。この変位を測定目的のために容量式にまたはピエゾ抵抗により評価することができる。
【0020】明らかなように、上記の方法は酸化珪素層2、ほかの層10およびエピタクシー層5を交互に被覆することにより幾重にも重ね合わせて使用することができ、従って相当するエッチング工程により変位部分12,13,14,15の多くの層が重ね合わせて製造可能である。そのような構成は特に容量式の加速度センサに適している。」

3.1.2 刊行物1記載の発明
以上の記載事項を、本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には次の発明が記載されているということができる。
「少なくとも1つのマイクロメカニックセンサを製造する方法において、
シリコン基板からなる支持体と、犠牲層として酸化珪素層と、一部がマイクロメカニック変位部分とされるエピタクシー層とを提供し、酸化珪素層が支持体の少なくとも第1の部分の上に位置しており、エピタクシー層が酸化珪素層の少なくとも第1の部分の上に位置しており、エピタクシー層がシリコンを含んでおり、
酸化珪素層の少なくとも第2の部分を露出させるためにエピタクシー層をエッチングし、このエッチングが少なくとも1つのマイクロメカニックセンサの横方向の構造境界部を形成し、
少なくとも1つのマイクロメカニックセンサと支持体との間の酸化珪素層の少なくとも第3の部分を、該酸化珪素層の第3の部分を、フッ化水素酸に曝露することによってエピタクシー層を解放するために除去する、少なくとも1つのマイクロメカニックセンサを製造する方法。」

3.2 刊行物2
3.2.1 刊行物2の記載事項
a.(特許請求の範囲、請求項2)
「【請求項2】 第1導電型の半導体基板上に形成された絶縁膜にこの半導体基板主面が露出した開口部を形成する工程と、
前記半導体基板を熱処理することにより前記開口部側面の断面形状を逆テーパ状に成形する工程と、
前記絶縁膜上及び前記開口部内の前記半導体基板上に第2導電型の半導体層を成長させる工程とを備え、
前記半導体層は、前記半導体基板上では単結晶であり、前記絶縁膜の上では多結晶が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。」
b.(同、請求項4,5)
「【請求項4】 前記熱処理は、水素元素を含む非酸化性ガスの雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいづれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】 前記非酸化性ガスは、水素ガス、シラン及びジシランのいづれかから選ばれることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。」
c.(発明の詳細な説明、段落12,13)
「【0012】エピタキシャル成長層は、このような断面逆テーパ状の絶縁膜2の開口部21に成長するのでエピタキシャル成長層の側面と絶縁膜開口部との隙間は無く両者は密着する。したがって、エピタキシャル成長層/半導体基板間の接合不良リークは著しく減少する。次に、図2乃至図5を参照して前記半導体装置の製造方法を説明する。まず、n型半導体基板(シリコンウェーハ)1の上にCVD法などによりシリコン酸化膜からなる絶縁膜2を形成する(図2)。この絶縁膜2の上にフォトレジスト(図示せず)を被覆しこれをパターニングする。パターニングされたフォトレジストをマスクとしてウエットエッチング法などにより等方性エッチングを行ない絶縁膜2に開口部21を形成する(図3)。絶縁膜厚は、200nm程度が適当であり、絶縁膜種は、選択エピタキシャル成長層が成長し易い材料を選ぶ必要があるのでSiO_(2)膜などが好ましい。エッチングは異方性エッチングを用いることによりパターン変換差を抑制できるがRIE等を用いる場合半導体基板中にダメージが発生することがあるので、このダメージ層をウェットエッチング等で取り除く必要がある。
【0013】次に、半導体基板1を後工程のエピタキシャル成長層が形成される真空室で熱処理する。処理条件は、水素ガス(H_(2))雰囲気中、1000℃、10Torr、300sec、流量15000cm^(3)/minである。この条件で半導体基板1は熱処理されて絶縁膜2の開口部21は断面逆テーパ状になる(図4)。熱処理に用いるガスには、水素元素を含む非酸化性ガスが用いられ、水素ガス以外にシラン(SiH_(4))、ジシラン(Si_(2)H_(6))、トリシラン(Si_(3)H_(8))などが適当である。前記水素元素を含む非酸化性ガスでも塩素を含むガスは環境上好ましくない。処理条件の内熱処理温度は、920℃から1200℃の範囲が適当であり、とくに熱処理時間は100秒から600秒の範囲が適当である。処理時間は、処理温度が高いほど短くて済む。」
d.(同、段落17,18)
「【0017】従来半導体基板表面の酸化膜やパーティクルを除去して清浄にすることは普通に行われていることである。そしてこのように表面処理を行った半導体基板上にエピタキシャル成長を形成するために真空室内に載置された後も自然酸化膜が形成されるので成長前にこれを取り除いていた。本発明では、開口部の成形時に自然酸化膜も除去されるので、自然酸化膜を除去する処理をそれだけ独立して行う必要はない。まして、真空室に半導体基板を載置する前に表面処理を行うことを省略することもできる。
(丸1) 水素(H_(2) )ガスで熱処理を行う場合。
酸化膜が薄くても厚くても水素ガスは原子化し酸化膜に吸着する。吸着した水素原子は酸化膜と反応して水蒸気とシリコン原子が生成される。水蒸気は離脱し、シリコン原子は酸化膜に吸着する。この反応は次式(1)、(2)のように表わされる。
H_(2)→2H (1)
SiO_(2) +4H→2H_(2)O+Si (2)
自然酸化膜のような薄い酸化膜を処理する場合は反応(1)、(2)に加えて次式(3)のような反応も同時に進行する。
【0018】
すなわち、半導体基板のシリコンと酸化膜とが反応して一酸化シリコンガスとなって半導体基板から離脱する。もしくは逆にこのガスが反応して酸化膜とシリコンが生成される。
Si+SiO_(2) ←→2SiO (3)
(以下省略)」

3.2.2 刊行物2記載の事項
以上を整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。
「半導体基板上のSiO_(2)からなる絶縁膜を、920℃?1200℃の処理温度で、水素ガス雰囲気に暴露して熱処理することによって逆テーパ状に成形すること。」

4.対比
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「マイクロメカニックセンサ」が「マイクロメカニカルエレメント」とも呼ぶことができるものであることは明白であり、後者の「シリコン基板からなる支持体」、「犠牲層として酸化珪素層」、「一部がマイクロメカニック変位部分とされるエピタクシー層」および「横方向の構造境界部」が、前者の「基板層」、「犠牲層」、「機能層」及び「アウトライン」にそれぞれ相当することは明白である。また、後者の「フッ化水素酸」は、犠牲層をこれに暴露することによって除去するエッチング剤である限りにおいて、前者の「高温に加熱された気体水素」と共通する。
そうすると、両者の間には以下の一致点と相違点を認めることができる。
[一致点]
「少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントを製造する方法において、
基板層と、犠牲層と、機能層とを提供し、犠牲層が基板層の少なくとも第1の部分の上に位置しており、機能層が犠牲層の少なくとも第1の部分の上に位置しており、機能層がシリコンを含んでおり、
犠牲層の少なくとも第2の部分を露出させるために機能層をエッチングし、このエッチングが少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントのアウトラインを形成し、
少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントと基板層との間の犠牲層の少なくとも第3の部分を、該犠牲層の第3の部分を、エッチング剤に曝露することによって機能層を解放するために除去する、少なくとも1つのマイクロメカニカルエレメントを製造する方法。」である点。
[相違点1]
酸化珪素層は、前者では二酸化ケイ素から成るのに対し、後者では二酸化ケイ素であるのか、明記されていない点。
[相違点2]
犠牲層の除去は、前者では気体水素を600℃?1400℃の高温に加熱し、犠牲層の第3の部分を、気体水素が犠牲層の第3の部分の材料に結合できるような高温に加熱された気体水素に曝露することによるのに対し、後者では犠牲層の第3の部分をフッ化水素酸に暴露することによる点。

5.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

5.1 [相違点1]について
酸化珪素としては通常、二酸化ケイ素のほかに一酸化ケイ素も考えられるが、一酸化ケイ素は常温では不安定であってケイ素と二酸化ケイ素とに不均化することが一般的に知られているため、刊行物1の記載中の「酸化珪素」とは「二酸化ケイ素」を指すと考えるのが相当である。
したがって、[相違点1]は、実質的な相違ではない。

5.2 [相違点2]について
刊行物2には、SiO_(2)すなわち二酸化ケイ素からなる絶縁膜を、920℃?1200℃の処理温度で、水素ガス雰囲気すなわち気体水素に暴露して熱処理することによって逆テーパ状に成形することが記載されている。ここで、二酸化ケイ素からなる絶縁膜を逆テーパ状に成形することは、二酸化ケイ素膜を一部除去することにほかならない。また、熱処理の最中は、気体水素も処理温度と同程度の高温に加熱されると考えることが相当であるから、処理温度が920℃?1200℃であれば、気体水素の温度も、下限は600℃を下回ることなく、およそ900℃?1200℃に加熱されると考えるべきである。
そうしてみると、刊行物2には、二酸化ケイ素の層を、900℃?1200℃の高温に加熱された気体水素に曝露することによって除去することが記載されているということができ、この温度範囲が、気体水素が二酸化ケイ素に結合できるような高温であることは明らかである。
刊行物2記載の事項は、二酸化ケイ素膜を除去する方法にかかわるという点において、刊行物1記載の発明で二酸化ケイ素からなる犠牲層を除去することと共通するため、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明における犠牲層の除去に適用し、[相違点2]に係る発明特定事項を本件発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
なお、請求人は平成24年6月15日提出の意見書において、「犠牲層の除去のために気体水素を用いることは、犠牲層の除去に使用されたエッチング液を十分に排除する必要性を認識していたとしても、容易に想到し得るものではありません。例えば、機能層を解放させるためには、エッチングプロセスは、上側に位置する材料(ここでは機能層)をエッチングすることなく、下側に位置する材料(ここでは犠牲層)を選択的にエッチングする必要があります。さらに、機能層を解放するためのエッチングは、エッチング速度の制御が要求され、さらに均一なエッチングが要求されます。 このように、単にエッチング液を気体水素に換えれば済むというものではなく、機能層を開放するための犠牲層のエッチングには特別な技術が要求されるものです。したがって、本願発明は、引用発明1,2に基づいて容易になし得るものではありません。」と主張している。しかしながら、本願の明細書にも図面にも「特別な技術」についての記載は見当たらず、また、基板層と同様にシリコンを主成分とする機能層が、基板層と同様に高温の気体水素によってエッチングされないことは自明であるため、刊行物2記載の事項を犠牲層の除去に適用することを妨げる事由があるとは認められないから、上記主張を採用することはできない。

5.3 まとめ
本件発明の作用効果には、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づいて普通に予測される範囲を超える格別のものを見出すこともできない。
したがって、本件発明は刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるため、請求項2ないし34に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
.
 
審理終結日 2012-07-03 
結審通知日 2012-07-11 
審決日 2012-07-24 
出願番号 特願2003-435063(P2003-435063)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B81C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
長屋 陽二郎
発明の名称 エピタキシャルリアクタにおいて表面マイクロマシニングされた構造物を解放する方法  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 二宮 浩康  
代理人 星 公弘  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 高橋 佳大  
代理人 篠 良一  
代理人 久野 琢也  

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