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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1267379
審判番号 不服2011-19930  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-14 
確定日 2012-12-13 
事件の表示 特願2006- 94875「半導体発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-273562〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年3月30日に出願され、平成22年4月7日付け拒絶理由通知に対して、同年6月14日に手続補正がなされ、さらに、同年8月4日付け拒絶理由(最後)に対して、同年10月1日に意見書が提出されたが、平成23年6月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされた後、平成24年7月12日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月14日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成23年9月14日付の手続補正書の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「半導体発光素子を搭載する平面を有する基板と、
前記基板の前記平面に搭載され、紫外光から可視光までの範囲内の光を放出する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を覆って前記基板上に設けられた半径R_(1)、高さR_(2)(ただしR_(2)は1/2(R_(1))<R_(2)<2R_(1)を満たす)の積層構造とを含み、前記積層構造は、
200μm以上の厚さを有する第1の光透過性層と、
前記第1の光透過性層の上に設けられ、前記基板の前記平面に達する端部を有し、粒径が45μm以上70μm以下の蛍光体と基材とを含み、前記蛍光体の形状を反映した凹凸を表面に有する蛍光体層と、
前記蛍光体層の上に設けられ、前記基板の前記平面に達する端部を有する第2の光透過性層とを
具備することを特徴とする半導体発光装置。」

第3 引用文献に記載された発明
1 引用文献に記載の事項
当審拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-87812号公報(以下「引用文献」という。)には図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項4】
平板状の基板と、この基板の一側面に取り付けた発光チップと、この発光チップの周囲に硬化させた屈折率の異なる第1透光性樹脂と、この第1透光性樹脂の周囲に硬化させ波長変換材を混入したモールド樹脂と、このモールド樹脂の周囲に設けた第2透光性樹脂とから構成したことを特徴する発光体。」

(2)「【0002】
【従来の技術】
発光チップの外側に波長変換材を用いて発光波長を変換し、例えば白色や青色等の所望の発光色を得るようにしたものは特開平7-99345号公報や特開平10-56208号公報に代表される先行技術文献に開示されている。」

(3)「【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の発光素子の完成後の断面図、図2は同じく製造過程を示す工程図、図3は同じく応用例を示す断面図である。(1)はその一側面に共通電極と個別電極よりなる配線パターン(図示せず)を形成した平板状の基板、(2)(2)…は前記基板の共通電極と個別電極間に取り付けられワイヤボンディング(3)によって電極と接続した化合物半導体よりなる発光チップ、(4)は前記発光チップ(2)に近い位置となる基板の一側面にスクリーン印刷等によって配置したシリコンやフッ素ポリマーを主成分とする第1撥油性皮膜で、図示していないが平面形状は完全な円形である。(5)は前記第1撥油性皮膜(4)の位置よりも発光チップから離れた位置に配置した第1撥油性皮膜と同じシリコンよりなる第2撥油性皮膜で同様に完全な円形である。」

(4)「【0016】
つづいて図2に示す工程図を見ながら説明する。予め基板(1)の一側面に所定数の発光チップ(2)を載置して取り付け、このチップと配線パターンとをワイヤボンディング(3)により接続すると共に、スクリーン印刷等によりチップに近い位置とこの位置より若干離れた位置に第1撥油性皮膜(4)と第2撥油性皮膜(5)を配置する(図2(イ))
次に波長変換材を混入したモールド樹脂(6)を発光チップ(2)を包囲しながらワイヤ(9)を囲んで硬化させる。この際、モールド樹脂(6)はその周縁が第1撥油性皮膜(4)によって外側に広がるのを阻止し半円形状に形成される。(図2(ロ))
この第1撥油性皮膜の作用を詳記すると、モールド樹脂(6)により発光チップ(2)をモールドした場合に、第1撥油性皮膜により接触角度(n-ヘキサデカン)が大きくなりこの皮膜を越えて流れ出るのを防止する。
【0017】
つづいて、モールド樹脂(6)の周囲に透明な透光性樹脂(8)を塗布して硬化させるわけであるが、この場合も前述のモールド樹脂(6)の硬化と同様に、その周縁が第2撥油性皮膜(5)によって外側に広がるのを阻止し半円形状に形成される。そして、最終的な完成品は図1に示すように各樹脂が安定した形状となる。」

(5)「【0018】
図3は別な実施例を示すもので、発光チップ(2)の周囲に屈折率の異なる第1透光性樹脂(10)を硬化し、ついで波長変換材を混入したモールド樹脂を第1透光性樹脂の周囲に塗布し第1撥油性皮膜(4)によって外側に広がるのを阻止した状態で硬化させ、その後、第2透光性樹脂(8)をモールド樹脂(6)の周囲に塗布し第2撥油性皮膜(5)によって外側に広がるのを阻止した状態で硬化させて工程を完了する。
【0019】
前述の第1透光性樹脂は、発光チップ(2)内部の屈折率により近い屈折率を選定したものである。」

(6)「【0020】
【発明の効果】
以上の様に本発明は、平板状の基板の一側面に取り付けた発光チップの周囲に波長変換材を混入したモールド樹脂を硬化させ、このモールド樹脂の周囲に透光性樹脂を設けたものであるから、波長変換材によって得られた、例えば白色光を広い指向性の光源を得ることが可能となる。
【0021】
また、波長変換材を混入したモールド樹脂をカップ内に充填するものとは異なり、モールド樹脂と透光性樹脂を平板状の基板に取り付けた発光チップの外側に順次硬化させるものであるから、広範囲の領域に硬化でき、その結果、カップや枠等の影響されるものがなく広指向性となる。
【0022】
そして、モールド樹脂は第1撥油性樹脂により、透光性樹脂は第2撥油性樹脂により、それぞれが半円形状に形成され所望の形状を得ることができ、その形状が安定し複数個の発光チップを用いるアレイの様な場合には色調が揃った光源を得ることができる。」

(7)図3を見ると、
発光チップ(2)が第1透光性樹脂(10)からなる層(以下「第1透光性樹脂層」という。)により覆われ、
第1透光性樹脂層がモールド樹脂(6)からなる層(以下「モールド樹脂層」という。)により覆われ、
モールド樹脂層が第2透光性樹脂(8)かなる層(以下「第2透光性樹脂層」という。)により覆われていることが理解できる。

2 引用文献に記載された発明
(1)上記1(3)の「図1は本発明の発光素子の完成後の断面図、図2は同じく製造過程を示す工程図、図3は同じく応用例を示す断面図である。」及び上記1(4)の「モールド樹脂(6)はその周縁が第1撥油性皮膜(4)によって外側に広がるのを阻止し半円形状に形成される。(図2(ロ))」並びに「モールド樹脂(6)の周囲に透明な透光性樹脂(8)を塗布して硬化させるわけであるが、この場合も前述のモールド樹脂(6)の硬化と同様に、その周縁が第2撥油性皮膜(5)によって外側に広がるのを阻止し半円形状に形成される。」との記載に照らせば、
図3は、断面図であり、
発光素子を覆う第1透光性樹脂層、
モールド樹脂層及び
(モールド樹脂層の周囲の)透明な透光性樹脂、すなわち第2透光性樹脂層の、断面は「半円形状に形成されている」といえる。

(2)上記1(3)及び(5)の記載に照らせば、
図3に示された「第1撥油性皮膜(4)」及び「第2撥油性皮膜(5)」は、発光チップ(2)に近い位置となる基板の一側面にスクリーン印刷等によって配置したシリコンやフッ素ポリマーを主成分とする平面形状が完全な円形の被膜である。

(3)上記記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「平板状の基板と、
この基板の一側面に取り付けた発光チップと、
発光チップに近い位置となる基板の一側面にスクリーン印刷等によって配置したシリコンやフッ素ポリマーを主成分とする平面形状が完全な円形の第1撥油性皮膜及び第2撥油性皮膜と、
発光チップを覆う第1透光性樹脂層と、
第1透光性樹脂層の周囲に塗布し第1撥油性皮膜によって外側に広がるのを阻止した状態で硬化させた波長変換材を混入したモールド樹脂からなるモールド樹脂層と、
モールド樹脂層の周囲に塗布し第2撥油性皮膜によって外側に広がるのを阻止した状態で硬化させた第2透光性樹脂層と、から構成し、
第1透光性樹脂層、モールド樹脂層及び第2透光性樹脂層の、断面が半円形状に形成された発光体であって、
波長変換材を混入したモールド樹脂をカップ内に充填するものとは異なり、モールド樹脂と透光性樹脂を平板状の基板に取り付けた発光チップの外側に順次硬化させるものであるから、広範囲の領域に硬化でき、その結果、カップや枠等の影響されるものがなく広指向性となった、
発光体。」

第4 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「平板状の基板」は本願発明の「平面を有する基板」に相当し、同様に、
「発光チップ」は「半導体発光素子」に、
「第1透光性樹脂層」は「第1の光透過性層」に、
「第2透光性樹脂層」は「第2の光透過性層」に、
「発光体」は「半導体発光装置」に、それぞれ、相当する。

イ 上記「第3 1(2)」の記載に照らせば、
引用発明の「波長変換材」が「特開平7-99345号公報」や「特開平10-56208号公報」に記載された「発光チップの発光を他の波長に変換する蛍光物質」であることは明らかであるから、
引用発明の「波長変換材」は本願発明の「蛍光体」に相当する。

ウ 本願明細書には、以下の記載がある。
(ア)「図7(a)に示されるように、蛍光体層32は、基材52と、この基材中に分散された蛍光体51とによって構成される。ここでは、基材52として樹脂を用いた場合について述べる。」(【0030】を参照。)

(イ)「蛍光体層32は、蛍光体基材に蛍光体材料を封入することにより構成することができる。蛍光体基材としては、光透過性が高くかつ熱に強い任意の材料を用いることができる。例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、あるいはポリイミド樹脂を、蛍光体基材として使用することができる。特に、入手し易く、取り扱い易く、しかも安価であることから、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂が最適である。」(【0036】を参照。)

(ウ)上記(ア)及び(イ)の記載に照らせば、
引用発明の「モールド樹脂」は本願発明の「基材」に相当するから、引用発明の「波長変換材を混入したモールド樹脂」は本願発明の「蛍光体」と「基材」とを含んだものに相当する。
してみると、引用発明の「モールド樹脂層」と本願発明の「蛍光体層」とは、
「前記第1の光透過性層の上に設けられ、前記基板の前記平面に達する端部を有し、蛍光体と基材とを含む蛍光体層」で共通する。

エ 引用発明が「第1透光性樹脂層、モールド樹脂層及び第2透光性樹脂層の、断面が半円形状に形成された半導体発光装置(発光体)」であることに照らせば、
引用発明の半導体発光素子(発光チップ)の周囲には「半円形状の積層構造」が形成され、半円形状の積層構造においては、高さと半径とが略同じであることは、当業者にとって明らかである。
してみると、引用発明と本願発明は「半導体発光素子を覆って基板上に設けられた半径と高さが略同じ積層構造」を含む点で一致する。

オ 引用発明の「第1の光透過性層(第1透光性樹脂層)」が半導体発光素子を覆うものであることに照らせば、
当該「第1の光透過性層(第1透光性樹脂層)」が所定の厚みを有することは、当業者にとって明らかである。

(2)一致点
本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「半導体発光素子を搭載する平面を有する基板と、
前記基板の前記平面に搭載され、紫外光から可視光までの範囲内の光を放出する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を覆って前記基板上に設けられた半径と高さが略同じ積層構造とを含み、
前記積層構造は、
所定の厚みを有する第1の光透過性層と、
前記第1の光透過性層の上に設けられ、前記基板の前記平面に達する端部を有し、蛍光体と基材とを含む蛍光体層と、
前記蛍光体層の上に設けられ、前記基板の前記平面に達する端部を有する第2の光透過性層とを
具備する、半導体発光装置。」

(3)相違点
本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
第1の光透過性層の厚みに関し、
本願発明は、「200μm以上の厚さを有する」のに対して、
引用発明は、その厚みが不明である点。

<相違点2>
蛍光体層に関し、
本願発明は、「粒径が45μm以上70μm以下の蛍光体と基材とを含み、前記蛍光体の形状を反映した凹凸を表面に有する」のに対して、
引用発明は、蛍光体の粒径が不明であり、蛍光体の形状を反映した凹凸を表面に有するのか否かも不明である点。

2 判断
(1)上記<相違点1>について検討する。
ア 本願発明の「200μm以上」の技術的意義について検討する。
本願明細書には、以下の記載がある。
(ア)「【0034】
第1の光透過性層31の基板に対して垂直な断面における外周の形状は、半円弧状、放物線形状、U字形状、または2本以上の直線を含む形状のいずれかとすることができる。第1の光透過性層31の厚さは、半導体発光素子2を完全に覆う大きさ以上であれば特に制限されない。基板4と接触している半導体発光素子2を含む底面の幅は、200μmから500μmであることが好ましい。また、その高さは、底面の幅の0.25倍から1倍以内であることが望ましい。こうした範囲内であれば、半導体発光素子2から蛍光体層32および第2の光透過性層33の外(デバイス外)への光取り出し効率を、十分に高めることができる。」

(イ)「【0082】
上述した例においては、第1の光透過性層31、蛍光体層32、および第2の光透過性層33の厚さは、それぞれ600μm、100μm、および300μmとしたが、これに限定されるものではない。半導体発光素子2のサイズ等に応じて、適宜変更することができる。例えば、半導体発光素子2のサイズが400μmと大きい場合には、第1の光透過性層31、蛍光体層32、および第2の光透過性層33の厚さは、それぞれ、800μm、50μm、および600μmに変更することができる。この場合には、高い歩留まりで容易に製造できるという利点がある。しかも、得られる半導体発光装置の発光効率は、さらに高められる。一方、半導体発光素子2のサイズが200μmと小さい場合には、第1の光透過性層31、蛍光体層32、および第2の光透過性層33の厚さは、それぞれ、400μm、100μm、および100μmに変更することができる。この場合には、発光輝度をよりいっそう高めることができる。半導体発光素子2を完全に覆う厚さであって、前述の1/2(R_(1))<R_(2)<2R_(1)の範囲内であれば、第1の光透過性層31、蛍光体層32、および第2の光透過性層33の厚さは特に制限されない。」

(ウ)上記(ア)及び(イ)の記載に照らせば、
本願発明における「第1の光透過性層の厚さ」は、半導体発光素子のサイズ等に応じて適宜変更することができるものであり、
「200μm以上」の技術的意義は、半導体発光素子を完全に覆うことにあるものと解される。

イ 一方、引用発明の「第1の光透過性層(第1透光性樹脂層)」も、半導体発光素子を覆うものであることに照らせば、
本願発明と引用発明とは「第1の光透過性層」の技術的意義は一致しており、その具体的な厚みは、当業者がその実施に際して、半導体発光素子のサイズ(幅や高さなど)等を考慮して適宜設定し得るべきところ、幅や高さが200μm以上の半導体発光素子が、本願出願前に周知であることを踏まえると、
その厚さを「200μm以上」とすることに、何ら困難性は認められない(例えば、以下の文献を参照。
(ア)特開2006-13347号公報の【0003】を参照。
LEDチップは、一辺の長さが「0.5mm程度」の略6面体である旨記載されている。

(イ)特開2004-111882号公報の【0026】を参照。
LEDの高さとして「0.25mm」が示されている。

(ウ)特開平10-173241号公報の図4及び図7を参照。
図4、7より、チップ厚みが「0.3mm」であることが読み取れる。)。

ウ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点1>に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(2)上記<相違点2>について検討する。
ア 本願発明の「(蛍光体の粒径が)45μm以上70μm以下」の技術的意義について検討する。
本願明細書には、以下の記載がある。
(ア)「【0059】
また、蛍光体層32に含有される蛍光体の粒径を変更することによって、所望の効果を得ることができる。例えば、10?20μm(平均粒子直径15μm)の蛍光体を用いた場合には、均一な蛍光体層を容易に作製することができるので、層の厚さや形状のコントロールが容易である。20?45μm(平均粒子直径30μm)の蛍光体を用いた場合には、発光強度および発光効率が特に高められる。場合によっては、さらに粒径の大きな蛍光体を用いることもできる。45?70μm(平均粒子直径50μm)の蛍光体の場合は、粒径が大きいことに起因して蛍光体の吸収率が向上し、蛍光体個数が減ることになる。このため、再吸収が低減されて、発光効率が高められる。
【0060】
また、蛍光体材料としてYAG:Ceが用いられる場合には、ナノ粒子(50nm以下)を用いることによって、蛍光体による散乱が低減されて、効率が高められる。」

(イ)「【0076】
次に、蛍光体層32を形成した。蛍光体基材としてはシリコーン樹脂を使用し、この蛍光体基材に平均粒子直径が30μmの黄色の蛍光体材料(Sr,Ca,Ba)_(2)SiO_(4):Euを75wt%の濃度で加えて、蛍光体層原料を得た。第1の光透過性層31が形成された基板4を150℃で加熱しつつ、蛍光体層原料をディスペンサを使用して滴下し、硬化させた。これによって、断面の外周形状が放物線形状で、厚さが100μmの蛍光体層32を製作した。」

(ウ)上記(ア)及び(イ)の記載に照らせば、
本願発明の「(蛍光体の粒径が)45μm以上70μm以下」の技術的意義は、粒径が大きいことに起因して蛍光体の吸収率が向上し、蛍光体個数が減ることになるため、再吸収が低減されて、発光効率が高められることにあると解されるが、本願明細書には、粒径を「45μm以上70μm以下」とした実施例は開示されておらず、臨界的な技術的意義を有するものではない。

イ そして、変換効率の向上や外部への蛍光の取り出しを向上させるために、粒径の大きい蛍光体を利用することは、本願出願前に周知である(例えば、
(ア)特開2005-232311号公報の【0056】を参照。
蛍光体の中心粒径は1?100μmの範囲が好ましいこと、「5?50μm」の粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高く、発光層を形成しやすいこと等が記載されている。

(イ)特開2002-359404号公報の【0019】及び【0020】を参照。
中心粒径としては1?100μmの範囲が好ましいこと、より好ましくは「5μm?50μm」であること、大粒径の蛍光体は光学的に優れた特徴を有すること等が記載されている。

(ウ)特開2002-241586号公報の【0014】、【0063】ないし【0068】を参照。
発光素子を覆っている波長変換材料層に大きい粒径の蛍光物質を使用することにより、蛍光体の粒子間に光の経路が確保され、発光素子から蛍光を外部へ取り出しやすくなること、蛍光体の粒径が100μmを超えると蛍光体の塗布状態が悪化することから、平均粒径は「10μm以上50μm以下」であることが望ましいこと等が記載されている。

(エ)特開2002-118293号公報の【0050】及び【0051】を参照。
平均粒径は1?100μmが好ましく、5?50μmがより好ましいこと、大粒径蛍光物質は光学的に優れた特徴を有すること等が記載されている。
以下「周知技術」という。)。

ウ してみれば、引用発明において、
変換効率の向上や外部への蛍光の取り出しを向上させるために、粒径の大きい蛍光体を利用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。
また、その具体的な粒径は、当業者がその実施に際して適宜設定し得るべきところ、粒径を「45μm以上70μm以下」とした点に何ら困難性は認められない。

エ 次に、本願発明の「(蛍光体層が)蛍光体の形状を反映した凹凸を表面に有する」点について検討する。

引用発明の「蛍光体層(モールド樹脂層)」は、蛍光体(波長変換材)を混入した基材(モールド樹脂)を第1の光透過性層(第1透光性樹脂層)の周囲に塗布し第1撥油性皮膜によって外側に広がるのを阻止した状態で硬化させたものであることに照らせば、
塗布された基材は、硬化されるまでの間に、第1の光透過性層の表面を流れ出して外側に広がるような性質のものであるから、第1の光透過性層の頂部においては、塗布してから硬化するまでの間に、蛍光体の上を覆う基材の量が減少し、蛍光体層の表面に蛍光体の形状を反映した凹凸を生じることは、当業者にとって明らかである。

オ したがって、引用発明も本願発明と同様、モールド樹脂層が波長変換材の形状を反映した凹凸を有するものと解されるから、この点は、実質的な相違点ではない。

カ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点2>に係る構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(3)効果
本願発明の奏する効果も、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。

3 進歩性についてのまとめ
本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-10 
結審通知日 2012-10-16 
審決日 2012-10-29 
出願番号 特願2006-94875(P2006-94875)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 勝久  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 吉野 公夫
星野 浩一
発明の名称 半導体発光装置  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 峰 隆司  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  

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