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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1267403
審判番号 不服2011-21293  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-03 
確定日 2012-12-03 
事件の表示 特願2001-161056「シリコンウェーハ表面品質の評価方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 6日出願公開、特開2002-353281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年5月29日の出願であって、平成22年12月9日付けの拒絶理由通知に対して、平成23年2月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月3日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出されたものである。
そして、平成24年1月30日付けの審尋に対して、同年3月8日に回答書が提出されたものである。


第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年10月3日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の段落【0013】を補正するものであり、そのうち、特許請求の範囲の補正の内容は以下のとおりである。

〈補正事項1〉
補正前の請求項1の「該処理液中にキレート剤を加える」との記載を、補正後の請求項1の「該処理液中にキレート剤を1ppb?2000ppm添加する」と補正する。

〈補正事項2〉
補正前の請求項4を削除する。

2.新規事項の有無
上記補正事項1?2は、本願の願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである、と認められる。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3.補正目的の適否
(1)補正事項1について
補正事項1は、「該処理液中」に「添加する」「キレート剤」の量を、「1ppb?2000ppm」に特定するものである。
したがって、補正事項1は、補正前の請求項1の発明特定事項である「該処理液中」の「キレート剤」を、「1ppb?2000ppm」だけ「加える」ことを限定した補正であるから、補正事項1は、特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。以下、同じ。)を目的とする補正に該当する。

(2)補正事項2について
補正事項2は、請求項の削除を目的とする補正に該当する。

(3)補正目的の適否のまとめ
前記(1)及び(2)から、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。

4.独立特許要件
以上のように、補正前の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかを、本件補正後の請求項1に係る発明について検討する。

(1)本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、次のとおりである。

【請求項1】
「アンモニア水、過酸化水素水及び水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に30?120分のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法において、前記処理液のアンモニア濃度が、0.3?3.0wt%、過酸化水素濃度が0.15?0.6wt%であり、該処理液中にキレート剤を1ppb?2000ppm添加することを特徴とするシリコンウェーハ表面品質の評価方法。」

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の根拠となった、平成22年12月9日付けの拒絶理由通知は、以下に示す、「引用文献1」及び「引用文献2」を引用して、「引用文献2のAPM処理液に対し、引用文献1と同様に、金属汚染を防ぐ為のキレート剤を添加することは、当業者には容易に想到しうることである。」としたものである。

引用文献1:森永 均,“ウェット洗浄の物理化学 -液中における極微量金属汚染の振る舞いを追う-”,応用物理,社団法人応用物理学会,2000年5月10日発行,第69巻第5号,P.568?574
引用文献2:特開2000-208578号公報

(3)引用例1及び引用例2の記載と引用発明
(3-1)引用例1の記載
原査定の拒絶の理由において、主たる引用例である「引用文献2」として引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2000-208578号公報(以下「引用例1」という。)には、「シリコンウェ?ハの評価方法及びシリコンウェ?ハ」(発明の名称)に関して、次の記載がある(下線は、参考のため、当審において付したもの。以下、同様。)。

ア.特許請求の範囲
・「【請求項1】 アンモニア、過酸化水素、水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に長時間のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法であり、該処理液中のアンモニアの濃度を過酸化水素の濃度よりも高濃度としたことを特徴とするシリコンウェーハの評価方法。」

・「【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項記載の評価方法により評価した時に観察される0.11μm以上のLPDの個数が5個/cm^(2)以下であることを特徴とするシリコンウェーハ。」

イ.発明の背景
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンウェーハ(以下単にウェーハということがある)の表面品質、特に微小な欠陥を精度良く評価することのできるシリコンの評価方法及び欠陥の少ないウェーハに関する。」

・「【0007】この様にウェーハ表面又は表面近傍において欠陥が少ないかどうかの評価についてアンモニア系洗浄液を用いて評価することが多く、他にもアンモニア系洗浄液を用いた評価方法として、特開平3-276722号公報には、エピタキシャルウェーハを標準試料として、ウェーハ表面のパーティクルを測定することが記載されている。また、特開平3-233955号公報では、微小ピットを検出する方法が記載されている。
【0008】これらの評価方法として用いられているアンモニア系洗浄液(SC-1洗浄と呼ばれる洗浄の組成)は一般に有機物や異物を除去するためのものであり、通常約30重量%のアンモニア水:約30重量%の過酸化水素水:水をおよそ1:1:5の容量比で混合したものが用いられ、上記の評価方法としてもこの組成が用いられている。」

ウ.発明が解決しようとする課題
・「【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなアンモニア系洗浄液を用いたウェーハの評価や、従来から一般的に行われているウェーハ表面の検査、例えば化学分析法でウェーハ表面の不純物を分析する方法や外観検査によりウェーハの表面のキズを検査する方法で、特に問題がないウェーハであっても、デバイス特性が劣化するという問題が生じていた。例えば特開平4-42893号公報の実施例にあるようなエッチピットが存在しないウェーハでも電気的特性等で不良となることがあった。
【0010】この様に上記した各種の従来の評価方法では、ウェーハ表面品質の評価としては不十分で、これらの評価方法で確認されたウェーハ表面品質ではこれからのデバイス原料としては問題がある。
【0011】特開平4-42893号公報に記載されているエッチピットの評価用薬液はアンモニア系の洗浄液で、その組成は(NH_(4)OH:H_(2)O_(2):H_(2)O=1:1:5)であった。この評価法でエッチピットが存在しなくても不良となる原因について詳しく調査した所、従来技術の実施例にあるようなエッチピットの評価法(NH_(4)OH:H_(2)O_(2):H_(2)O=1:1:5)の組成では、結晶成長時に導入される欠陥(結晶中の微小欠陥:COP)は検出されるものの、ウェーハ加工中の欠陥(研磨加工中に導入される潜傷や金属汚染に起因すると思われる欠陥)の評価までできておらず、その結果不良となったものであることがわかった。
【0012】この様に、ウェーハの評価には結晶成長時に導入される欠陥以外の加工起因の欠陥も評価できることが重要である。つまり、従来の技術で用いられているアンモニア系の洗浄液(1:1:5)では加工起因の欠陥まで評価できておらず、もっと感度の良い方法が必要である。
【0013】本発明者らの検討によれば、ウェーハに欠陥、特に加工起因の欠陥がある場合、所定のアンモニア・過酸化水素系の処理液を用い、一定時間処理するとLPDが急激に増加(異常増加)する現象があることがわかった。
【0014】一方、結晶成長時に導入される欠陥は特開平3-233955号公報にあるように比較的緩やかな増加で、その数も少なく明らかに評価されているものが異なることが予想された。
【0015】このLPDの異常増加について鋭意調査した所、少なくとも金属不純物による影響、また研磨によるダメージ、特に潜傷によるものであることが確認できた。
【0016】鏡面研磨されたウェーハのダメージとしてはスクラッチや潜傷が知られている。スクラッチは目視で判断できる欠陥であるが、潜傷は目視では判断不能であり評価も難しい。また金属汚染についてもウェーハ表面において、電荷の関係等により析出又は析出による微少な欠陥を生じることがわかった。析出した金属は洗浄などで除去可能であるが、析出の影響(重金属による影響)による欠陥は、大変微少であり、評価も難しかった。
【0017】本発明では、この異常増加を検出することにより上記のようなウェーハの微小欠陥、特に加工プロセス起因の欠陥を評価しようとするものである。
【0018】つまり、本発明は、従来のウェーハ評価方法では十分な評価を行うことができなかった、ウェーハ表面品質、特にウェーハ表面の微小な欠陥を精度良く評価する方法を提供すると共に、この評価法により、今まで確認できなかった汚染や欠陥レベルまで確認されたウェーハ、特にデバイス特性が劣化しないシリコンウェーハを提供することを目的としている。」

エ.課題を解決するための手段
・「【0019】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために、本発明のシリコンウェーハの評価方法は、アンモニア、過酸化水素、水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に長時間のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法であり、該処理液中のアンモニアの濃度を過酸化水素の濃度よりも高濃度としたことを特徴とする。
【0020】特に精度良く測定するにはアンモニア系処理液の組成、エッチング速度が大きく影響することがわかった。
【0021】つまり、上記処理液のウェーハに対するエッチング速度が1.0?4.0nm/minであるのが好適である。例えば該処理液中のアンモニア濃度を0.3?3.0重量%、過酸化水素濃度0.15?0.6重量%とし、アンモニア濃度を過酸化水素濃度の2倍以上、好ましくは2?5倍程度とすればよく、特にアンモニア濃度3.0重量%、過酸化水素濃度0.6重量%の組成が好ましい。
【0022】前記エッチング処理の時間としては、30分以上が用いられるが、特に30分?45分程度が好ましい。
【0023】本発明方法によって、シリコンウェーハの表面品質を高感度に測定するには、はじめにシリコンウェーハ表面の酸化膜を除去することが好ましい。酸化膜が付いていると、アンモニア、過酸化水素、水よりなる処理液のエッチング速度が遅くなり、シリコンウェーハに存在する欠陥自体をエッチングするまでに時間的なズレが起こり、正確な評価ができない。
【0024】シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去するのは、その後の処理液でのエッチング速度を安定させるためである。エッチング速度を安定化させないと、検出される欠陥のバラツキが大きくなり好ましくない。
【0025】シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去する方法は、金属汚染のされていない高純度のHF溶液で行なってもよく、また金属汚染のない研磨等で除去することもできる。
【0026】このように、シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去した後、特定の組成のアンモニア、過酸化水素、水よりなる処理液を用いて、シリコンウェーハの表面を一定時間処理し、ウェーハ表面の微小欠陥を検出すれば、より精度の高いシリコンウェーハの表面品質の評価を行うことができる。」

オ.実施例
・「【0064】従って、工程内の汚染を確認しても、ウェーハ内部への汚染のされやすい工程、されにくい工程があり、どのような工程で入った欠陥や汚染でも評価できることが重要である。例えば、今回の汚染の手法で汚染の少ない溶液に短時間浸漬したようなウェーハでも正確に評価し、ウェーハ自体の特性を正確に把握することが重要である。
【0065】金属汚染以外の欠陥としては、単結晶製造時に入る欠陥、加工工程で入る欠陥、研磨ダメージ等が考えられる。
【0066】本発明では、アンモニア、過酸化水素、水系の処理液でウェーハへの汚染はもとより、汚染以外の欠陥の存在等をもっと敏感に検出し、デバイス工程において最適なシリコンウェーハを製造できないか更に詳しく検討した。」

・「【0067】(実施例1?4及び比較例1?3:処理液の検討)比較実験例2ではCu500ppmの汚染の場合のみ、LPDの異常増加が認められた。しかし、酸化膜耐圧の結果などから500ppb未満のCu汚染でも欠陥は形成されている可能性が十分にある。しかし、比較実験例2で用いた処理液の組成では欠陥が検出できなかった。」

・「【0071】これらのウェーハを表1に示した種々の組成で、長時間の処理を行った。組成は、アンモニア、過酸化水素、水からなる処理液で、その濃度がそれぞれ組成a(比較例1)、組成b(比較例2)、組成c(比較例3)、組成d(実施例1)、組成e(実施例2)、組成f(実施例3)、組成g(実施例4)で行った。各組成の処理液のエッチング速度をあわせて表1に示した。
【0072】
……(中略)……
【0073】比較例1?3は過酸化水素の割合を多く、又は同じにした処理液であり、実施例1?4は、アンモニアの割合を多くした処理液である。これらの処理液は市販のアンモニア水、過酸化水素水と純水を混合して調整した。」

・「【0082】一方、本発明では、アンモニア濃度を過酸化水素濃度より濃くすることにより、積極的に欠陥を評価できる組成としている。
【0083】ウェーハの評価は迅速にできることが好ましいことから、微小欠陥に対する選択性の強い処理液を用い、正確及び迅速に行えることが重要である。すなわち、ウェーハを評価するためには本発明方法のようなアンモニア濃度の割合が多い処理液を用いることが有効であるといえる。
【0084】特にアンモニア濃度が0.3?3.0重量%、過酸化水素濃度が0.15?0.6重量%であり、アンモニア濃度が過酸化水素濃度の2?5倍程度が好ましい。
【0085】処理時間は、30分以上で長時間処理を行なえば異常が明白になるので、長ければ長いほど好ましい。しかし、ウェーハ表面のヘイズ等を考慮すると30分から45分程度が適当である。」

・「【0092】(実施例6)本来の目的は、デバイスプロセスで問題とならないウェーハを製造することが重要である。デバイスで問題とならないウェーハがこの評価法ではどのように評価されるか観察した。
……(中略)……
【0096】ここで、結晶欠陥を十分に少なくすることは重要なことではあるが、最終ウェーハの品質は研磨加工に導入される欠陥に特に注意する必要がある。特に欠陥として検出されずらい金属汚染や研磨による潜傷に注意すればよい。
【0097】そこでウェーハ加工の工程では、各工程での金属不純物の管理を十分行うことも重要であり、また洗浄により十分に金属不純物を除去する必要がある。更に積極的に金属汚染や研磨時のダメージ(潜傷)を除去する必要がある。
【0098】具体的には、研磨剤としてモノアミンとキレート剤を添加し、研磨中にも汚染が起こらないように製造する。」

カ.発明の効果
・「【0104】
【発明の効果】以上述べたごとく、本発明方法によれば、従来のウェーハ評価方法では十分な評価を行うことができなかった、ウェーハ品質、特にウェーハ表面の微小な欠陥を精度良く評価できるという効果が達成される。本発明のシリコンウェーハは、今まで確認できなかったウェーハ表面及び内部の汚染や欠陥レベルまで確認されており、特にデバイス特性が劣化しないという効果を奏する。」

(3-2)引用発明
前記「(3-1)引用例1の記載」のウにおける、「この評価法でエッチピットが存在しなくても不良となる原因について詳しく調査した所、従来技術の実施例にあるようなエッチピットの評価法(NH_(4)OH:H_(2)O_(2):H_(2)O=1:1:5)の組成では、結晶成長時に導入される欠陥(結晶中の微小欠陥:COP)は検出されるものの、ウェーハ加工中の欠陥(研磨加工中に導入される潜傷や金属汚染に起因すると思われる欠陥)の評価までできておらず、その結果不良となったものであることがわかった。」及び「本発明では、この異常増加を検出することにより上記のようなウェーハの微小欠陥、特に加工プロセス起因の欠陥を評価しようとするものである。」との記載から、引用例1には、「従来」の「エッチピットの評価法」が評価してきた「結晶成長時に導入される欠陥」以外に、「加工プロセス起因の欠陥を評価しようとする」ことが記載されていると認められる。

したがって、前記「(3-1)引用例1の記載」のア?カによれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「アンモニア水、過酸化水素水、水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に30分?45分程度のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法であり、前記処理液のアンモニア濃度を0.3?3.0重量%、過酸化水素濃度を0.15?0.6重量%とすることで、アンモニア濃度を過酸化水素濃度より濃くした前記処理液を用いて、結晶成長時に導入される欠陥以外に、前記ウェーハの加工プロセス起因の欠陥を評価しようとすることを特徴とするシリコンウェーハの評価方法。」

(3-3)引用例2の記載
原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である、森永 均,“ウェット洗浄の物理化学 -液中における極微量金属汚染の振る舞いを追う-”,応用物理,社団法人応用物理学会,2000年5月10日発行,第69巻第5号,P.568?574には、次の記載がある。

ア.「プロセス中の基板や膜表面には,最新鋭のクリーンルームといえども,さまざまな経路から汚染が襲いかかる.フォトレジスト由来の残留異物,装置・配管部材に由来する金属汚染,反応生成物の付着,あるいはウエハーケースの脱ガス成分に由来する有機物汚染などである.これらの汚染は,デバイスの歩留まりや電気特性を劣化させるため,次工程にもち込む前に確実に除去する必要がある.そこで用いられるのがウエット洗浄プロセスである.」(第568頁左欄第5?12行)

イ.「汚染はその形態から主としてパーティクル(微粒子),金属,有機物,意図しない自然酸化膜に分類される.基板表面の原子オーダーの平たん度を維持しながら,これらの汚染を徹底的に除去することが洗浄には求められる.
現在のウエット洗浄法は,1970年にRCA社のW.KernとD.A.Puotinenによって発表された,いわゆるRCA洗浄法を基本としている^(1)).表1に典型的な洗浄シーケンスと個々の洗浄剤の特徴を示す.洗浄には金属不純物がppt(ppmの百万分の1)レベルの超高純度薬品と超純水が用いられる.SPM,HPM,APMに共通して加えられているH_(2)O_(2)は,強い酸化剤であり,汚染を酸化・分解して除去しやすくするとともに,Si基板の表層1nm程度を酸化(SiO_(2)化)して薄い保護膜を形成する働きがある.……(中略)……唯一のアルカリ成分であるNH_(4)OHは,有機物を溶解するとともに,不溶性のパーティクルを除去する働きがある.
RCA洗浄を基本とする洗浄法の最大の問題点は,ある汚染種を除去している間に別の汚染種が基板に再付着する,すなわち副作用(表1)がある点である.例えば,APM洗浄はパーティクルや有機物汚染の除去にはきわめて効果的であるが,液中に微量でも金属が混入すると基板表面に再付着してしまう問題がある.」(第568頁右欄6第行?第569頁左欄第14行)

ウ.「RCA洗浄法を基本とした典型的な半導体ウエット洗浄法(洗浄シ-ケンスの順)と個々の洗浄剤の洗浄目的,ならびに副作用」をまとめた表1には、その3行目に、「洗浄剤」が「NH_(4)OH/H_(2)O_(2)/H_(2)O(APM)」であり、「おもな洗浄目的」が「パーティクル,有機物」であり、「副作用(汚染の再付着)」が「金属」であることが、記載されている。

エ.「極微量金属汚染の洗浄に必要な機能は,次の三つに集約される^(8-10)).パーティクルなど,他の汚染種の洗浄においても,基本的な考え方は同じである.
機能1)汚染を基板から引き離す機能(可溶性金属の場合は溶解機能.不溶性の金属酸化物粒子などの場合にはリフトオフ機能)
機能2)液中汚染の基板表面への再付着防止機能
機能3)膜のエッチング機能(膜中に取り込まれた汚染,あるいは膜表面と強固に化学結合している汚染の場合)」(第569頁左欄下から第4行目?同頁右欄第6行)

オ.「6.金属汚染の付着機構
ウエットプロセスにおいて特に重要な付着は,貴金属の電気化学的付着とアルカリ液中における金属付着である.」(第570頁右欄第10?12行)

カ.「6.2 アルカリ液中における金属付着
APMのようなアルカリ性溶液中や中性の純水中では貴金属以外のFe,Alなどでも容易に付着が起こる(図4参照).」(第571頁右欄第1?4行)

キ.「7.2 アルカリ液中における金属付着の防止
すでに述べたようにアルカリ液中では金属水酸化物が基板表面への付着種となっているため,その生成防止が付着防止につながる.金属水酸化物の生成防止にはキレート剤の添加が有効であり,APMなどのアルカリ洗浄剤に添加することが提案されている^(11,19-21)).キレートとはギリシャ語でカニのはさみを意味する言葉で,カニが獲物をはさみこむように金属イオンを取り込んで,金属錯体を作り可溶化する性質をもつ化合物である。従来より化学工業の分野ではEDTAなどのキレート剤が広く用いられてきたが,これらはFeやCaなどの限られた金属の水酸化物析出防止が目的であつた.一方,半導体ウェット洗浄では,キレートと結合しにくいAlも含む,Fe,Zn,Cu,Co,Niなどの広範な金属の付着防止が求められる.さらに,キレート剤そのものの純度やプロセスに混入した場合の影響評価も重要であるため,近年半導体ウエットプロセス用のキレート剤が新たに設計され,用いられている^(11,21)).
図10に金属汚染(1ppb)されたAPMから基板への金属付着の防止に対するキレート剤添加の効果を示す.通常のアンモニア水を用いたAPM洗浄では,Fe,Al,Cu,Znなどの金属が多量に付着するのに対し,キレート剤添加アンモニア水を用いると,A1のような付着しやすい金属でも2桁以上,他の金属では検出下限以下に抑制できることがわかる^(ll)).」(第572頁右欄第24行?第573頁右欄第6行)

ク.「8.金属汚染の除去
これまで述べた,金属の溶解機能(機能1)と再付着防止機能(機能2)があれば,化学平衡論的には基板表面上の汚染は除去できる.後は時間の問題であり,反応時間,すなわち洗浄時間の短縮には,反応する化学種を活性化するために温度を上げる,あるいは汚染と化学種の出合う確率を上げるために化学種の濃度を濃くする,液を流動させる,基板を高速で回転するなどの工夫が必要となる.それでも汚染が除去しきれない場合,その汚染は膜の内部に取り込まれていることが疑われる.CuやAlはSiやSiO_(2)の内部に拡散しやすく,室温のウエットプロセス中でも容易に膜の内部に侵入する^(9,22)).これらの汚染の除去には当然のことながら膜のエッチング(機能3)が必要である.例えば,SiO_(2)膜表層のエッチングにはDHFやAPMが有効であるが,ここで再び重要となるのが前述した汚染金属の溶解機能と再付着防止機能である.エッチングの最中に膜中の汚染金属を確実に溶解し,再付着防止しなければ,エッチングしても期待する効果は得られない^(8,9)).三つの機能がーつの洗浄に集約されることが重要である.近年,新たに提案されているDHF/H_(2)O_(2)^(23)),DHF/HCl^(24)),DHF/O_(3),キレート添加APMは,添加剤濃度によって除去能力に差はあるものの,ともに上記の3機能を兼ね備えた洗浄剤である.」(第573頁右欄第7?28行)

(4)対比
(4-1)本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「アンモニア水、過酸化水素水、水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に30分?45分程度のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法」は、本件補正発明の「アンモニア水、過酸化水素水及び水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に30?120分のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法」に相当する。

イ.引用発明の「前記処理液のアンモニア濃度を0.3?3.0重量%、過酸化水素濃度を0.15?0.6重量%とする」ことは、本件補正発明の「前記処理液のアンモニア濃度が、0.3?3.0wt%、過酸化水素濃度が0.15?0.6wt%であ」ることに相当する。

ウ.引用発明の「シリコンウェーハの評価方法」は、「リコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う」ものであるから、本件補正発明の「シリコンウェーハ表面品質の評価方法」に相当する。

(4-2)一致点及び相違点
そうすると、本件補正発明と引用発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。

《一致点》
「アンモニア水、過酸化水素水及び水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に30?120分のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法において、前記処理液のアンモニア濃度が、0.3?3.0wt%、過酸化水素濃度が0.15?0.6wt%であることを特徴とするシリコンウェーハ表面品質の評価方法。」

《相違点》
本件補正発明は、「該処理液中にキレート剤を1ppb?2000ppm添加する」のに対して、引用発明は、「前記処理液」にキレート剤を添加しない点。

(5)相違点についての判断
ア.引用発明は、「前記処理液のアンモニア濃度を0.3?3.0重量%、過酸化水素濃度を0.15?0.6重量%とすることで、アンモニア濃度を過酸化水素濃度より濃くした前記処理液を用いて、結晶成長時に導入される欠陥以外に、前記ウェーハの加工プロセス起因の欠陥を評価しようとする」ものである。
引用発明の前記「ウェーハの加工プロセス起因の欠陥」とは、引用例1の段落【0011】に記載されるように、「研磨加工中に導入される潜傷や金属汚染に起因すると思われる欠陥」のことである。

イ.そして、引用例1には、以下の記載がある。
・「【0015】このLPDの異常増加について鋭意調査した所、少なくとも金属不純物による影響、また研磨によるダメージ、特に潜傷によるものであることが確認できた。」
・「【0023】本発明方法によって、シリコンウェーハの表面品質を高感度に測定するには、はじめにシリコンウェーハ表面の酸化膜を除去することが好ましい。酸化膜が付いていると、アンモニア、過酸化水素、水よりなる処理液のエッチング速度が遅くなり、シリコンウェーハに存在する欠陥自体をエッチングするまでに時間的なズレが起こり、正確な評価ができない。
……(中略)……
【0025】シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去する方法は、金属汚染のされていない高純度のHF溶液で行なってもよく、また金属汚染のない研磨等で除去することもできる。
【0026】このように、シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去した後、特定の組成のアンモニア、過酸化水素、水よりなる処理液を用いて、シリコンウェーハの表面を一定時間処理し、ウェーハ表面の微小欠陥を検出すれば、より精度の高いシリコンウェーハの表面品質の評価を行うことができる。」

前記「シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去する方法は、金属汚染のされていない高純度のHF溶液で行なってもよく、また金属汚染のない研磨等で除去することもできる。」という記載は、「金属不純物による影響、また研磨によるダメージ」による欠陥を「高感度に測定する」ための「シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去する」工程で、逆に「金属汚染」を引き起こすのは好ましくない、という意味であると解される。
したがって、引用例1には、「金属汚染」は「LPDの異常増加」をもたらすこと、そして、「金属汚染に起因すると思われる欠陥」を含む「シリコンウェーハ」の「欠陥」を「評価」するに際して、該「評価」方法の途中の工程で、「シリコンウェーハ」が新たに「金属汚染」されることは防止すべきであること、が記載されていると認められる。

ウ.一方、引用例2には、以下の事項が記載されている。
・半導体のウェット洗浄に用いる「APM」は、「NH_(4)OH/H_(2)O_(2)/H_(2)O」の成分を有する「洗浄剤」であること(表1参照)。
・「APM洗浄はパーティクルや有機物汚染の除去にはきわめて効果的であるが,液中に微量でも金属が混入すると基板表面に再付着してしまう問題がある.」こと(「(3-3)引用例2の記載」のイ参照)。
・「金属イオンを取り込んで,金属錯体を作り可溶化する性質をもつ化合物」である「キレート剤」を「APMなどのアルカリ洗浄剤に添加する」ことにより、「アルカリ液中における金属付着の防止」が図れること、そして、「金属汚染(1ppb)されたAPMから基板への金属付着の防止に対するキレート剤添加の効果」は、図10に示すように、「表面金属汚染濃度」を「A1のような付着しやすい金属でも2桁以上,他の金属では検出下限以下に抑制できる」こと(同キを参照)であること。
・「キレート添加APMは,添加剤濃度によって除去能力に差はあるものの,ともに上記の3機能を兼ね備えた洗浄剤である」こと(同クを参照。なお、前記記載における「添加剤」とは「キレート剤」であることは明らかである。また、前記記載は「8.金属汚染の除去」の項におけるものであるから、前記「除去能力」とは、「金属汚染の除去」の「能力」であることも明らかである。)

したがって、引用例2には、引用発明の「アンモニア水、過酸化水素水、水よりなる処理液」と成分が同じである「APM」の洗浄液を使用すると、当該洗浄「液中に微量でも金属が混入すると基板表面に再付着してしまう問題がある」が、「金属イオンを取り込」む働きを持つ「キレート剤」を「金属汚染」された前記「APM」に「添加する」と、「基板表面」への「金属付着の防止」が図れること、「キレート添加APM」の「金属汚染」の「除去能力」は、添加される「キレート剤」の「濃度」によって「差」があること、が記載されている。

エ.ところで、引用例1には、
「【0096】ここで、結晶欠陥を十分に少なくすることは重要なことではあるが、最終ウェーハの品質は研磨加工に導入される欠陥に特に注意する必要がある。特に欠陥として検出されずらい金属汚染や研磨による潜傷に注意すればよい。
【0097】そこでウェーハ加工の工程では、各工程での金属不純物の管理を十分行うことも重要であり、また洗浄により十分に金属不純物を除去する必要がある。更に積極的に金属汚染や研磨時のダメージ(潜傷)を除去する必要がある。
【0098】具体的には、研磨剤としてモノアミンとキレート剤を添加し、研磨中にも汚染が起こらないように製造する。」、
と記載されている。
上記の記載は、「デバイスプロセスで問題とならないウェーハ」の発明である引用例1の請求項6に係る発明の実施例である、「(実施例6)」についての記載であり、引用発明の「シリコンウェーハの評価方法」についての記載ではない。
しかしながら、外部から導入される「金属不純物」を「除去」するために「キレート剤」を「添加」することは、引用例1に記載されている。

オ.以上から、「結晶成長時に導入される欠陥以外に、前記ウェーハの加工プロセス起因の欠陥を評価しようとする」引用発明において、外部から導入される「金属不純物」を除去して「前記ウェーハの加工プロセス起因の欠陥」を正しく「評価」できるように、「アンモニア水、過酸化水素水、水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に30分?45分程度のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べる」に際して、前記「アンモニア水、過酸化水素水、水よりなる処理液」中に微量でも混入した金属による「LPDの異常増加」がもたらされないように、引用例2に記載されるように、前記「アンモニア水、過酸化水素水、水よりなる処理液」にキレート剤を添加することにより、金属汚染された前記「処理液」から「シリコンウェーハ」表面への金属付着を防止しようとすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

カ.そして、本願明細書には、
・段落【0015】に「本発明におけるキレート剤の添加量は特に制限はないが、汚染金属の種類や含有量、アンモニア系水溶液の液組成などによって決定される。例えば、事前に処理槽を酸洗浄したり高純度の薬液を使用することで、通常は含有されている汚染金属は1ppb以下と大変微量であるため、キレート剤の添加量は1ppb程度添加すればよい。」と、「本発明におけるキレート剤の添加量は特に制限はない」ことが明記されていること、
・段落【0016】に「クエン酸などの酸性のキレート剤を添加する場合、添加量が多すぎると処理液のエッチング速度が遅くなるなどの影響が出てくるため、1ppb?2000ppm程度が好適である。」と記載され、「処理液中にキレート剤を1ppb?2000ppm添加」した場合に、好適な「エッチング速度」が得られるのは、当該「キレート剤」が、単なる「キレート剤」でなく、「クエン酸などの酸性のキレート剤」である場合であること、
・「キレート剤添加」した「処理液」の実施例は、段落【0031】に記載される一つのみであること、
が、それぞれ、記載されている。
したがって、本願明細書の記載によれば、本件補正発明において「該処理液中にキレート剤を1ppb?2000ppm添加する」のは、「汚染金属の種類や含有量」等に応じて、該「添加」の量を適宜「決定」した結果であると認められる。
そして、本件補正発明において、「キレート剤を1ppb?2000ppm添加する」ことに、仮に、該「添加」が好適な「エッチング速度」を得るためであるとしても、臨界的な意義が存するとは認められない。

キ.一方、上記オのように引用発明の「アンモニア水、過酸化水素水、水よりなる処理液」にキレート剤を添加したとき、添加したキレート剤の「金属汚染」の除去能力は、上記ウにおいて示したように、添加したキレート剤の「濃度」に依存すると認められる。
そして、引用例2には、「(3-3)引用例2の記載」のキで摘記したように、本願明細書の段落【0015】に記載された「汚染金属は1ppb以下」のケースと同じである「APM」が「金属汚染(1ppb)された」場合の「APMから基板への金属付着の防止に対するキレート剤添加の効果」について記載されている。
よって、キレート剤を「処理液」中に1ppb?2000ppm添加することは、必要とされる「金属汚染」の「除去能力」に応じて、当業者であれば、適宜選択しえた設計的な事項であると認められる。

ク.以上のとおりであるから、引用発明において、「前記処理液」中にキレート剤を1ppb?2000ppm添加することは、引用例2に記載の事項を参酌すれば、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(6)独立特許要件の検討のまとめ
したがって、引用発明において、上記相違点に係る構成とすることは、引用例2の記載事項を参酌すれば、当業者が容易に想到できたものである。
よって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.小括
以上の次第で、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
以上のとおり、本件補正(平成23年10月3日に提出された手続補正書による補正)は却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成23年2月9日に提出された手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

【請求項1】
「アンモニア水、過酸化水素水及び水よりなる処理液を用いてシリコンウェーハ表面に30?120分のエッチング処理を施し、該シリコンウェーハ表面に形成されたLPDの個数を調べることによりシリコンウェーハの評価を行う方法において、前記処理液のアンモニア濃度が、0.3?3.0wt%、過酸化水素濃度が0.15?0.6wt%であり、該処理液中にキレート剤を加えることを特徴とするシリコンウェーハ表面品質の評価方法。」

2.引用例1及び引用例2の記載と引用発明
引用例1及び引用例2の記載については、「第2.補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「(3)引用例1及び引用例2の記載と引用発明」における、「(3-1)引用例1の記載」及び「(3-3)引用例2の記載」において、摘記したとおりである。
また、引用発明については、同「(3)引用例1及び引用例2の記載と引用発明」における、「(3-2)引用発明」において認定したとおりである。

3.対比・判断
前記「第2.補正却下の決定」の「3.補正目的の適否」の「(1)補正事項1について」で検討したとおり、本件補正発明は、本願発明の発明特定事項である「該処理液中」に加える「キレート剤」を、「1ppb?2000ppm」添加することを限定したものである。
逆に言えば、本願発明は、本件補正発明から、上記の限定をなくしたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本件補正発明が、「第2.補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「(1)本件補正発明」?「(6)独立特許要件の検討のまとめ」で検討したとおり、引用発明及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4.結言
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-09 
結審通知日 2012-10-10 
審決日 2012-10-23 
出願番号 特願2001-161056(P2001-161056)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 滝谷 亮一  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 近藤 幸浩
小野田 誠
発明の名称 シリコンウェーハ表面品質の評価方法  
代理人 石原 進介  
代理人 石原 進介  

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