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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2011800051 | 審決 | 特許 |
無効2009800076 | 審決 | 特許 |
無効2013800042 | 審決 | 特許 |
無効2011800177 | 審決 | 特許 |
無効2007800138 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部無効 2項進歩性 A61K 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1267427 |
審判番号 | 無効2012-800042 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-04-02 |
確定日 | 2012-12-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4865958号発明「鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件特許第4865958号の請求項1?4に係る発明は,2001年5月23日に出願され,平成23年11月18日に特許権の設定登録がなされたものである。 これに対し,請求人は平成24年4月2日に無効審判を請求し,被請求人は同年7月9日付けで答弁書を提出した。 そして,同年9月14日に第1回口頭審理が行われ,これに先立ち請求人,被請求人は各々同年8月31日付けで口頭審理陳述要領書を提出した。 [2]本件発明 本件特許第4865958号の請求項1?4に係る発明は,特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである(以下,請求項1?4の各発明を順に「本件特許発明1」?「本件特許発明4」ということがある。)。 『 【請求項1】 スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に、(a)ジクロフェナクナトリウム、(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン、(c)多価アルコール脂肪酸エステル及び(d)クエン酸、酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸、を含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤。 【請求項2】 膏体層中に、(a)ジクロフェナクナトリウムを0.1?5.0重量%、(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドンを0.5?8.0重量%、(c)多価アルコール脂肪酸エステルを0.2?10.0重量%、(d)クエン酸、酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸を0.05?4.0重量%含有するものである請求項1記載の貼付剤。 【請求項3】 粘着膏体基剤が、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を膏体層中10?50重量%、粘着付与剤を膏体層中5?50重量%含有するものである請求項1又は2記載の貼付剤。 【請求項4】 (c)多価アルコール脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルである、請求項1から3のいずれか1項記載の貼付剤。 』 [3]請求人の主張 これに対し,請求人は,「特許第4865958号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,」との審決を求め,証拠方法として以下の書証を提出し,本件特許は, (1)(a) 本件特許発明1,3,4が甲第1号証に記載されたものであって特許法第29条第1項第3号に該当し, (b) 本件特許発明1が甲第2号証に記載されたものであって特許法第29条第1項第3号に該当し, (2) 本件特許発明1?4が, (a)甲第1号証と,甲第2,3,4,7又は8号証との組合わせ, (b)甲第2号証と,甲第1,3,4,7又は8号証との組合わせ, (c)甲第3号証と,甲第1,2,4,7又は8号証との組合わせ, 又は (d)甲第5号証と,甲第1,2,3,4,7又は8号証との組合わせ, に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定に違反しており, (3)(a) 請求項1?4について発明の詳細な説明が特許法第36条第4項に規定の要件を満たしておらず, (b) 請求項1?4が特許法第36条第6項第1号に規定の要件を満たしていない, から,特許法第123条第1項第2号及び第4号の規定により無効とされるべきである旨を主張している。(なお,これら(1)?(3)の詳細は,後記参照。) [証拠方法] ・甲第1号証:特開平5-201879号公報 ・甲第2号証:特開平11-222443号公報 ・甲第3号証:特開平6-205839号公報 ・甲第4号証:特開昭61-280426号公報 ・甲第5号証:特開平11-35458号公報 ・甲第6号証:「Product Line 商品リスト 香粧品用商品版」 2011年3月18日 三洋化成工業株式会社 目次頁,第25?26頁 ・甲第7号証:嘉悦勲監修「ドラッグデリバリーシステム」 第1刷 1986年4月25日 株式会社シーエムシー 第219?221頁 ・甲第8号証:月刊薬事,(1991) Vol.33,No.7 第1339?1344頁 ・甲第9号証:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典 4」 縮刷版第34刷 1993年6月1日 共立出版株式会社 第491?492頁 ・甲第10号証:界面活性剤分析研究会編「界面活性剤分析法」 初版第2刷 昭和52年8月1日 株式会社幸書房 第239?240頁 ・甲第11号証:Nihon Emulsion Co.,Ltd.ホームページ,インターネット(http://www.nihon-emulsion.co.jp/jp/products/list/E-GMS-F.htm) ・甲第12号証:Nihon Emulsion Co.,Ltd.ホームページ,インターネット(http://www.nihon-emulsion.co.jp/jp/products/list/E-KTGfrm.htm) ・甲第13号証:カタログ「難溶性薬剤の溶解剤 NIKKOL Sefsol シリーズ」 1997年8月 日光ケミカルズ株式会社 第1?8頁[当審注:表紙(第1頁とする)及び裏表紙(第8頁とする)を含む。] ・甲第14号証:日本医薬品添加剤協会編「医薬品添加物事典2000」 第1刷 2000年4月28日 株式会社薬事日報社 第283?284頁,用途別索引第374?375頁 ・甲第15号証:特開2010-280634号公報 [4]被請求人の主張 被請求人は,「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め,上記請求人の主張する無効理由はいずれも理由がないと主張し,以下の証拠方法を提出している。 [証拠方法] ・乙第1号証:甲第2号証の特許出願:特願平10-317368号 に係る平成20年11月7日付け意見書 ・乙第2号証:特許第4574961号公報 ・乙第3号証:特許第4660858号公報 ・乙第4号証:特許第4704764号公報 ・乙第5号証:特許第4331984号公報 ・乙第6号証:特許第4939113号公報 [5]当審の判断 1.新規性又は進歩性に関する無効理由について まず,請求人が提示する関連証拠方法(甲第1?8,14,15号証)の各記載事項を摘示し(1-1.),その後,特許発明1?4に対する判断を示す(1-2.?1-3.)。 1-1.関連甲号証の記載事項(下線は,当審による。) (i)甲第1号証 (i-1)第2頁第1欄 請求項1,4 『 【請求項1】 トリエチレングリコールに対する溶解度が相対的に高い薬物とトリエチレングリコールと,テルペン類とを配合したことを特徴とする経皮投与製剤。 ・・・・・・ 【請求項4】 テルペン類がハッカ油,メントール,オレンジ油,テレビン油である請求項1又は2記載の経皮投与製剤。』 (i-2)第3頁第4欄 段落【0015】 『 【0015】・・・意外にもトリエチレングリコールが,テルペン類による経皮吸収促進能を,プロピレングリコールと同等又はそれ以上の割合で相乗的に高めるばかりでなく,プロピレングリコールよりも経時的安定性や安全性に優れており,この性質がトリエチルグリコールに対する溶解度がプロピレングリコールや1,3-ブチレングリコールの汎用グリコールに比較して相対的に高い薬物に共通しており,かつ非水系は勿論・・・含水系においても有効なビヒクルであることを知見して・・・』 (i-3)第4頁第5欄 段落【0022】?【0024】 『 【0022】・・・トリエチレングリコールに対する溶解度が相対的に高い薬物とは・・・ 【0023】・・・ダントロレンナトリウム,インドメタシン,ケトプロフェン,ジクロフェナックナトリウム,フルルビプロフェンなどが挙げられるが,これらのものに限定されない。・・・ 【0024】・・・薬物の使用量は膏体全量に対し0.1?10重量%,好ましくは0.2?5重量%であり・・・』 (i-4)第5頁第7?8欄 段落【0034】?【0036】 『 【0034】貼付基剤は・・・本発明組成物の作用を減殺する基剤以外の全ての一般用貼付基剤が挙げられる。 【0035】粘着成分としては,具体的には天然ゴム,スチレン-ブタジェンゴム(SBR),・・・,スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS),・・・等の天然又は合成ゴムなどが,また・・・高吸水性高分子や・・・親水性高分子が挙げられる。 【0036】ゴムなどは,ラテックスエマルジョンとして使用しうる。また,これらの粘着成分,高吸水性高分子や親水性高分子は適宜組合せて用いることができる。これらに必要により加えられる成分としては,・・・泥状化剤;・・・粉末賦形剤;・・・ロジン,水添ロジン,エステルガムなどの樹脂等の粘着付与成分;ポリブテン,流動パラフィン,・・・等の軟化剤;グリセリルモノステアレートなどのグリセリル脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例えば日光ケミカルズ社:TL-10),ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(例えば日光ケミカルズ社:TS-10)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ソルビタンモノステアレート(日光ケミカルズ社:SS-10)などのソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤;・・・,ジブチルヒドロキシトルエン(BHT),・・・等の防腐乃至酸化(老化)防止剤;酢酸,コハク酸,クエン酸,リンゴ酸,フマル酸,マレイン酸,酒石酸などの有機酸等のpH調整剤(それ自身貼付基剤として有用な特性もある);・・・収斂剤:・・・保湿剤;着香料;薬剤の溶剤;水などが挙げられる。』 (i-5)第5頁第8欄?第6頁第9欄 段落【0037】?【0039】 『 【0037】・・・他の多価アルコール例えばマンニトール,・・・などを保湿剤として,また薬物を溶解する他の溶媒例えばダントロレンナトリウムにおいては N-メチル-2-ピロリドン,エタノール,イソプロパノール,ベンジルアルコール,フェネチルアルコール,マクロゴールや前記保湿剤としても作用するグリセリン類などを加えることを妨げるものではない。 【0038】なお,本発明においては,エタノールおよびイソプロパノールが,薬剤の皮下脂肪層の透過を促進する作用を有していることを確認している。・・・エタノールおよび/またはイソプロパノールの配合により,治療効果を一層高めることができる。 【0039】また,テルペン類が最も好ましい経皮吸収促進剤ではあるが,・・・好ましくは経皮吸収を相加または相乗的に促進するものであれば,他の経皮吸収促進剤を使用することは可能である。そのような経皮吸収促進剤としてはジエチルセバケート,アジピン酸ジイソプロピルなどの二塩基酸ジエチルやミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。』 (i-6)第14頁第25?26欄 段落【0077】?【0079】 『 【0077】実施例7.(ゴム系プラスター基剤,ジクロフェナックナトリウム) ポリブテン18.0部,テルペン樹脂28.5部及び流動パラフィン5.0部を加温して溶解した後,有効成分としてジクロフェナックナトリウム1.0部をトリエチレングリコール10.0部及びオレンジ油10.0の混合物に溶解した溶液を,ジブチルヒドロキシトルエン0.5部と共に加えて混和する。これに合成ゴムSBRラテックス17.0部(固形分)及び天然ゴムラテックス10.0部(固形分)を加えて均等に混和して膏体とし,これを剥離ライナー上に塗布し,温風にて乾燥した。これに不織布またはプラスチックフィルムを貼り合わせて転写してプラスターを得る。 【0078】実施例8.(アクリル系プラスター基剤,ダントロレンナトリウム) ・・・・・・ 【0079】実施例13.(SIS系プラスター基剤,ケトプロフェン) スチレン・イソプレン・スチレン共重合体22.0部,流動パラフィン40.2部及びテルペン樹脂27.5部をN_(2)ガス気流中130?170℃で加熱溶解した後この溶融物を冷却した。この溶融物に有効成分としてケトプロフェン0.3部をトリエチレングリコール5.0部に溶解し,この溶液にl-メントール5.0部を溶解させたものを加えて均一に混合して膏体とし,これをプラスチックフィルムに塗布してプラスターを得る。 実施例12.についても同様。 』 (ii)甲第2号証 (ii-1)第2頁第1欄 請求項4,5,7,10 『 ・・・・・・ 【請求項4】 (a)l-メントールと、(b)ピロリドンまたはその誘導体の少なくとも1種と、(c)生理活性物質とを含むことを特徴とする経皮吸収製剤。 【請求項5】 (b)ピロリドンまたはその誘導体が2-ピロリドンまたはN-メチル-2-ピロリドンである、請求項4記載の経皮吸収製剤。 ・・・・・・ 【請求項7】 (c)生理活性物質が非ステロイド性消炎鎮痛薬である請求項4?6のいずれかに記載の経皮吸収製剤。 ・・・・・・ 【請求項10】 製剤の剤型が硬膏剤またはパップ剤である請求項4?8のいずれかに記載の経皮吸収製剤。』 (ii-2) 第3頁第3欄 段落【0011】 『 【0011】本発明は、従来知られていた経皮吸収促進剤である上記2成分を組み合わせることにより、意外にも単独では得られない優れた経皮吸収促進効果を見出したものである。本発明の組成物が経皮吸収を促進させる作用機構の詳細は解明されていないが、l-メントールによる皮膚角質層バリアー能を低下させる作用と、ピロリドン化合物による薬物溶解作用との相乗効果によって、経皮吸収性が著しく促進するものと推定される。』 (ii-3) 第3頁第3欄?第4頁第5欄 段落【0012】?【0013】 『 【0012】本発明に用いられる生理活性物質(薬物)は、従来公知の薬物の中から任意のものを選択して用いることができる。これらの薬物を例示すると・・・ 【0013】アスピリン、・・・、ジクロフェナク、・・・、インドメタシン、・・・、エテンザミド等の非ステロイド性消炎鎮痛薬。』 (ii-4) 第4頁第5欄 段落【0023】?【0025】 『 【0023】・・・経皮吸収型製剤の剤型は特に限定されず・・・特にゲル剤、液剤、硬膏剤(プラスタ-剤)、パップ剤は優れた効果を示し、好ましい。また、これらの製剤は、本発明による組成物と、製造する剤型に必要な製剤成分、すなわち基剤、補助剤、添加剤等を必要に応じて組み合わせることにより、常法により製造することができる。 【0024】例えば・・・硬膏剤(プラスタ-剤)に使用される基剤としては、粘着剤(例:エチレン酢酸ビニル系粘着剤、アクリル系粘着剤、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等)、粘着付与剤(例:ロジン系、テルペン系、合成石油樹脂系等)等が挙げられ・・・る。 【0025】また、ゲル剤、液剤、硬膏剤(プラスタ-剤)またはパップ剤に用いる補助剤あるいは添加剤としては、界面活性剤(例:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等)、pH調整剤(例:ジイソプロパノールアミン等)、・・・、軟化剤(例:流動パラフィン)、・・・等、一般に外用剤に用いられるものが挙げられる。』 (ii-5) 第5頁第8欄 段落【0046】 『 【0046】「実施例7」トルエンにエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(LEVAPREN 450;バイエル社製)とロジン系粘着付与剤(エステルガム;荒川化学工業社製)を加え攪拌しながら溶解させた後、インドメタシン、l-メント-ル(高砂香料工業社製)、N-メチル-2-ピロリドン(和光純薬工業社製)を加え十分攪拌を行った。この溶液をPET(ポリエチレンテレフタレ-ト)フィルム上に均一に塗工し・・・均一な硬膏剤を調製した。 実施例7の処方(トルエン除去後の組成重量部) インドメタシン 9.0部 N-メチル-2-ピロリドン 3.0部 l-メント-ル 3.0部 エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂 50.0部 ロジン系粘着付与剤 35.0部 』 (iii)甲第3号証 (iii-1)第2頁第1欄 請求項1 『 【請求項1】・・・支持体の片面表面上に塗布されている感圧性粘着層としての粘着剤・・・上記粘着剤が脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びピロリドン誘導体からなる群から選択された1種以上の経皮浸透促進剤0.1?40重量%と、シリコーン重合体、天然若しくは合成ゴム類及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれた1種以上の粘着樹脂と、粘着層中の含水率が変化するに伴ってそれ自体の溶解度が変化する薬物若しくは前駆薬物0.1?50%とで構成されており、さらに粘着性賦与剤、可塑剤、充填剤、皮膚刺激緩和剤及び酸化防止剤からなる群より選択された1種以上の添加物を含有することを特徴とする経皮投与型薬物用貼付剤。』 (iii-2)第2頁第2欄 段落【0001】 『 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は・・・一定量の薬物(生理的活性物質)を連続的に伝達する徐放的貼付剤に関するものである。特に・・・皮膚と接触している粘着層中に薬物を最大に溶解させ、必要量の薬物を経皮的に伝達し、薬物の経皮浸透を促進する薬物用貼付剤に関する。』 (iii-3)第4頁第6欄 段落【0016】 『 【0016】 【発明が解決しようとする課題】・・・本発明の目的は、第1に、経皮システムに適した感圧性粘着剤を用い、有用なる経皮浸透促進剤と皮膚刺激抑制剤とを含有せしめることにより、(a)消炎鎮痛剤及びその他の薬物を効果的に投与することができるテープの形態であり、(b)・・・』 (iii-4)第6頁第10欄 段落【0028】?【0029】 『 【0028】ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、・・・、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、・・・等が利用でき、また、シリコーン樹脂系粘着剤として・・・ 【0029】上記粘着剤の中には、必要に応じて各種の配合剤、例えばロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、石油系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等の粘着性賦与剤や、・・・粘着性補助剤や、・・・可塑剤や、充填剤、酸化防止剤が添加される。』 (iii-5)第6頁第10欄?第7頁第11欄 段落【0030】?【0032】 『 【0030】・・・感圧性粘着層は、一定の経皮浸透促進剤が含有されていることにより特徴づけられ、そして、この経皮浸透促進剤が感圧性粘着層の本来の粘着力を減じることがないことにより特徴づけられている。・・・ 【0031】薬物の皮膚吸収力を増進させるために、経皮浸透促進剤として用いる物質としては、・・・、高級脂肪酸エステル、・・・、流動パラフィン、・・・、グリセリン脂肪酸エステル、・・・、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、・・・、プロピレングリコールモノラウレート、・・・、ピロリドン誘導体等がある。 【0032】すなわち、本発明者らは、ポリオキシエチレン誘導体やピロリドン誘導体等の経皮浸透促進剤を使用することによって、薬物の経皮浸透率を著しく増加させることができることを明らかにした。・・・ケトプロフェンのような非ステロイド系消炎鎮痛剤に関して特に効果を発揮する・・・本発明の1つの側面は、担体全量を基準にして1?39重量%の割合で経皮浸透促進剤として脂肪酸エステル(例えば、メチルラウレート、イソプロピルミリステート)、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸誘導体、ピロリドン誘導体等からなる群から選ばれた1種以上の化合物を含む担体及び生理的活性成分を含有する経皮投与薬剤組成物が提供されることである。』 (iii-6)第7頁第12欄 段落【0037】 『 【0037】・・・基剤中に配合される薬物は、経皮投与において皮膚を透過し、基剤中の含水率の変化に伴い、溶解度が変化するものであればいずれも可能であり・・・非ステロイド系薬物としては・・・、ケトプロフェン、・・・、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、・・・、ピロキシカム、及びこれらの前駆薬物中より選ばれた薬物学的に有効な化合物がその安全かつ有効な量の範囲内で用いられる。』 (iii-7)第8頁?第9頁第15欄 段落【0046】 『 【0046】実施例3 以下の各成分を以下の割合(重量%)で均一に混合し、貼付剤の形態にて使用するための消炎・鎮痛経皮投与用薬剤組成物を製造した。 ジクロフェナクナトリウム 10 ポリオキシエチレンラウリルエーテル (E.O.=3)^(3)) 10 トコフェロールアセテート 1 ビサボロール 2 亜鉛華 5 アクリル樹脂A 72 全体 100 (注3)E.O.=3:ポリオキシエチレンラウリルエーテル中のエチレンオキサイドのモル数が3であることを意味する。』 (iii-8)第10頁 段落【0057】 『 【0057】実施例10 下記の各成分を下記に示す割合(重量%)で均一に混合し、貼付剤の形態で用いるための消炎・鎮痛経皮投与用薬剤を製造した。 ケトプロフェン 15 ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 5 L-メントール 3 DL-カンファ 2 トコフェロールアセテート 2 亜鉛華 10 ゴム系樹脂C2^(5)) 73 全体 100 (注5)ゴム系樹脂C2 の組成は次の通りである。 スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体 100 水素化ロジン 80 ポリブテン 20 ラノリン 20 BHA 2 このようにして得られた混合物を剥離紙に被覆させ、乾燥した後、生成した物質を伸縮性のある不織布に合紙させ、テープ形態の最終貼付剤を製造した。』 (iv)甲第4号証 (iv-1)第1頁 特許請求の範囲 『 (1)ジクロフェナックナトリウム及び有機酸を含有する感圧性接着材料層を柔軟な支持体上に積層してなる消炎鎮痛用貼付剤。 (2)有機酸がクエン酸である特許請求の範囲第(1)項記載の消炎鎮痛用貼付剤。』 (iv-2)第2頁左上欄第2?19行 『 ・・・皮膚貼付剤にはゴム系やアクリル系の高分子物質が基剤物質として用いられているが、これらは一般に薬物の溶解性が悪く、ジクロフェナックナトリウムの如き塩形態の薬物を均一に溶解保持することが極めて困難であり、たとえ溶解状態にて作成しても保存中に含有薬物の結晶化が生じて薬物の経皮吸収性を阻害する場合があった。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明者らは上記した欠点をなくしてジクロフェナックナトリウムの溶解性及び経皮吸収性を向上させて疾患治療に有効に効果を示す貼付剤について鋭意研究を重ねた結果、ジクロフェナックナトリウムに有機酸を併用して感圧性接着材料層に含有させることによって貼付剤中のジクロフェナックナトリウムの溶解性が向上し、且つ皮膚面への薬物の移行が容易となり、バリヤ一層としての角質層をも容易に透過することが出来ることを見い出した。』 (iv-3)第3頁右上欄第11行?左下欄第11行 『 他の感圧性接着材料としては、たとえば・・・、スチレン-ブタジエン(又はイソプレン)-スチレンブロック共重合体ゴム、・・・、天然ゴムの如きゴム系物質、・・・も使用出来る。 また、上記組成物を使用する際において、凝集力不足のために皮膚貼着後、適用皮膚面に糊残り現象を生じて皮膚面の汚染を起こす恐れがある場合は、皮膚接着性を損なわない程度に適度な化学的架橋処理(架橋性単量体の共重合化や外部架橋剤の添加など)や物理的架橋処理・・・を該組成物に施すことが好ましい。』 (iv-4)第3頁左下欄第12?16行 『 本発明に用いる薬効成分としてのジクロフェナックナトリウムの含有量は、その薬理効果を発揮する量であれば特に制限はないが、上記感圧性接着材料中1?40重量%、好ましくは5?30重量%の範囲であり・・・』 (iv-5)第3頁左下欄第19行?第4頁左上欄第5行 『 また、本発明に用いるジクロフェナックナトリウムは塩形態であるために上記の比較的親油性の高い感圧性接着材料層には多量を溶解保持することが困難であり、たとえ多量に含有させても全薬物量が溶解出来ない場合や、または結晶の析出が生じたりして充分な量の薬物の移行が出来ない場合を生じる。 従って、本発明においてはこれら欠点を解消するために有機酸を共存させたものであり、感圧性接着材料層へのジクロフェナックナトリウムの溶解性が向上し、且つ経皮吸収性も向上する。 この理由は明らかではないが、ジクロフェナックナトリウムに有機酸を共存させることにより、感圧性接着材料層への溶解度が高まり、且つバリヤー機能を有する角質層を容易に透過することが出来るものと考えられる。 このような有機酸としては、ジクロフェナックよりも強酸性のものを使用することが好ましいが、特にカルボン酸が好ましい。具体的には、例えばクエン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、サリチル酸、酢酸などのカルボン酸があげられるが、特にクエン酸を用いた場合に、前記感圧性接着材料層中へのジクロフェナックナトリウムの溶解性や経皮吸収性が更に顕著に向上した。 これら有機酸の含有量は、ジクロフェナックナトリウム100重量部に対して5?100重量部であり、好ましくは10?40重量部である。』 (iv-6)第4頁右上欄第5行?右下欄第18行 『 実施例1 アクリル酸2-エチルヘキシルエステル55部、アクリル酸メトキシエチルエステル30部、酢酸ビニル15部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部を四つ目フラスコに仕込み・・・共重合体溶液を得た。 得られた共重合体溶液に、ジクロフェナックナトリウムおよびクエン酸を乾燥後の含有率がそれぞれ20重量%、4重量%となるように添加混合し、ポリエステル製離型ライナー上に・・・塗布、乾燥して感圧性接着材料層を形成した。 次に、上記感圧性接着材料層をエチレン-酢酸ビニル共重合体・・・を積層した不織布のエチレン-酢酸ビニル共重合体側に転着して本発明の消炎鎮痛用貼付剤を得た。 実施例2 アクリル酸2-エチルヘキシルエステル95部、アクリル酸5部、過酸化ベンゾイル0.2部を四つロフラスコに仕込み・・・共重合体溶液を得た。 得られた共重合体溶液に、ジクロフェナックナトリウムおよびコハク酸を乾燥後の含有率がそれぞれ20重量%、6重量%となるように添加混合し、ポリエステル製離型ライナー上に・・・塗布、乾燥して感圧性接着材料層を形成した。 次に、上記感圧性接着材料層を厚さ30μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体・・・フィルムに転着して本発明の消炎鎮痛用貼付剤を得た。 実施例3 イソプレンゴム(分子量 840000) 100部、ポリブテン(分子量1260) 30部、脂環式飽和炭化水素樹脂(分子量約700.融点100℃)80部をトルエンに溶解混合し、得られた20重量%粘着剤溶液にジクロフェナックナトリウムおよびクエン酸を乾燥後の含有率がそれぞれ10重量%、2重量%となるように添加混合し、厚さ30μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体・・・フィルムに・・・塗布して感圧性接着材料層を形成し、本発明の消炎鎮痛用貼付剤を得た。 比較例1?3 比較例1?3は実施例1?3と対応しており、各実施例から有機酸であるクエン酸またはコハク酸を除いた以外は同様にして消炎鎮痛用貼付剤を作成した。』 (iv-7)第4頁右下欄第19行?左上欄第1行,第1表 『 上記各実施例、及び比較例にて得られた消炎鎮痛用貼付剤をラットに貼着した際の血中濃度を測定した結果を第1表に示した。 』 (iv-8)第5頁右上欄第7行?左下欄第2表 『 さらに人体皮膚面へ貼着した際のジクロフェナックナトリウムの移行率および移行量を測定した結果を第2表に示した。・・・ 』 (v)甲第5号証 (v-1)第2頁第1欄 請求項1,3 『 【請求項1】 ジクロフェナクナトリウム、イソステアリン酸および炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸を粘着基剤に配合してなるジクロフェナクナトリウムの油性外用貼付製剤。 ・・・・・・ 【請求項3】 粘着基剤の構成が、スチレンーイソプレンースチレンブロック重合体の配合量が30?50重量%、粘着付与樹脂の配合量が25?50重量%、酸化防止剤の配合量が0.1?2重量%である請求項1記載のジクロフェナクナトリウムの油性外用貼付製剤。』 (v-2)第2頁第1欄 第21?25行 『 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ジクロフェナクナトリウムの放出性を低下させることなく、皮膚に対する刺激性を低減させた該薬物含有油性外用貼付製剤に関する。』 (v-3)第2頁第2欄第49行?第3頁第3欄第2行 『・・・従って、ジクロフェナクナトリウムを効率よく経皮吸収させ、かつ皮膚刺激等の問題を発生させることのない外用貼付剤の開発が望まれていた。』 (v-4)第3頁第3欄第3?25行 『 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジクロフェナクナトリウムの油性外用貼付製剤において、その粘着基剤に、炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸と共に、イソステアリン酸を配合することによって、該薬物の放出性を低下させることなく、皮膚刺激性が極めて少ない製剤を調製しうることを見いだし本発明を完成した。 【0008】更に詳しくは、ジクロフェナクナトリウムをイソステアリン酸および炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸とクロタミトン、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピルなどの流動油性成分(オイルベース)に溶解(薬液)し、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(以下SISと略す)と粘着付与樹脂を溶解したものに混合し・・・た皮膚貼付用製剤が優れた粘着性と薬物放出性を有し、しかも皮膚刺激性が非常に少ないことを見いだし・・・ 【0009】本発明に用いるジクロフェナクナトリウムの配合量は膏体全量に対して、0.5?6重量%であり、好ましくは2?5重量%、より好ましくは2.5?4.5重量%である。・・・』 (v-5)第3頁第3欄第38?47行 『・・・本発明に用いる炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸としては・・・好ましくはカプリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、特に好ましくはオレイン酸とリノレン酸である。・・・』 (v-6)第3頁第4欄21?31行 『 【0012】本発明に用いる粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が使用できる。・・・本発明に用いるSISの配合量は30?50重量%であることが好ましく、より好ましくは35?45重量%である。・・・』 (v-7)第3頁第4欄第34行?第4頁第5欄第10行 『 【0013】・・・酸化防止剤・・・ジブチルヒドロキシトルエン等が使用でき・・・所望により、流動パラフィン、ワセリン等の油脂類、・・・液状ゴム類等の軟化剤やl-メントール、・・・等の着香料を配合することができる。 【0014】本発明の貼付剤は、例えば・・・ジクロフェナクナトリウムを・・・流動油およびイソステアリン酸とオレイン酸などの炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸の混合物に加温溶解(約70℃)させる。別にトルエンなどでSISの40%溶液を調製し、脂環族飽和炭化水素石油樹脂(粘着付与樹脂)および酸化防止剤を加え溶解させる。この粘着剤溶液にオイルベースを添加し、攪拌混合させ、既知の方法でライナー上に塗工し・・・製品とする。・・・』 (v-8)第4?5頁 【表1】?【表3】 ジクロフェナクナトリウム,イソステアリン酸,ならびに,「炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸」としてのカプリン酸,オレイン酸,リノール酸又はリノレン酸,粘着膏体基剤としてのSIS,及び粘着付与樹脂としての脂環式飽和炭化水素石油樹脂(P115)等を含んでなり,水分を構成成分としていない貼付剤の処方例(実施例1?11)が記載されている。 (vi)甲第6号証 第25?26頁の表「3.ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」中の左下欄には,「モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン」,「ステアリン酸POEソルビタン」,「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」又は「オレイン酸POE(20)ソルビタン」の名称で表される化合物の化学式が記載されている。 (vii)甲第7号証 第219頁第12行?第221頁上段では,「6 経皮吸収促進剤」として,皮膚透過性の低い薬物に対して経皮吸収を促進させる添加剤の研究について紹介されており,特に (vii-1) 「図6.6.3 皮膚透過促進剤」(第221頁上段)中には同剤の例として「2-Pyrrolidone」及び「1-Methl-2-pyrrolidone」が化学式と共に挙げられている。 また,以下のような記載もみられる。 (vii-2)第219頁末行?第220頁第2行 『・・・ピロリドン誘導体のなかで2-pyrrolidoneおよび,N-methylpyrrolidoneに顕著な吸収促進作用があることが各種の薬物について示されている・・・』 (viii)甲第8号証 (viii-1) 第1343頁右欄 表3 『 』 (viii-2)第1343頁 右欄 表3下第6?22行 『 VIII 経皮吸収促進剤 代表的な経皮吸収促進剤を,主に脂質に対して作用するものとキャリアーとして作用するモノに分類し,表3に示した。この異なる作用機構を有する促進剤を組み合わせることで相乗的な促進効果が期待できる。l-メントールとエタノールの組み合わせがその代表例である。・・・薬物の基剤中活量を高める成分も吸収促進に有用である。 すでに外用剤に用いられているl-メントールとエタノールの組み合せに高い効果が確認されたことから,新規化合物より既存成分の組み合わせに研究の目が多く向けられている。しかし,長い年月使用されてきた物質でも,吸収促進作用が主薬に特異的でない以上,安全であるとはかぎらない。 』 (ix)甲第14号証 第283頁右欄?第284頁左欄 「N-メチル-2-ピロリドン」の項 『 N-メチル-2-ピロリドン ・・・・・・ 【用途】 可溶(化)剤 ・・・・・・ 』 (x)甲第15号証 第3頁第19?36行 『 【0003】 【特許文献1】特許第4157018号公報 【特許文献2】特開2007-291118号公報 【特許文献3】特開2008-214337号公報 【特許文献4】WO2006/048939号公報 【特許文献5】特許第3668728号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 熱可塑性弾性体であるゴム系エラストマーなどを使用した場合、ロキソプロフェン又はその付加塩の経皮吸収性が良好で、十分な利用率を有する外用貼付剤を得ることは可能である。しかしながら、ロキソプロフェンの付加塩の粘着基剤に対する溶解性は非常に悪く、更に、ロキソプロフェンナトリウム等の塩形態である薬剤を皮膚からの経皮吸収させることは非常に困難であった。この課題を解決するため、塩形態である非ステロイド系消炎鎮痛剤にpH調節剤としてクエン酸、コハク酸、酒石酸、サリチル酸、酢酸などのオキシ酸類、マレイン酸、フマル酸などの脂肪酸(文献2又は3参照)、リン酸などの無機酸(文献4参照)を添加することにより、粘着基剤中への非ステロイド系消炎鎮痛剤の溶解性を向上させ、かつ経皮吸収性も向上させる方法が提案されている。また、・・・』 1-2.本件特許発明1について 本件特許発明1は,[2]で記載したとおりの,次のものである。 『 【請求項1】 スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に、(a)ジクロフェナクナトリウム、(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン、(c)多価アルコール脂肪酸エステル及び(d)クエン酸、酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸、を含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤。 』 [ 以下,「(a)ジクロフェナクナトリウム」,「(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン」,「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」,「(d)クエン酸・・・から選ばれる有機酸」を順に「成分(a)」,「成分(b)」,「成分(c)」,「成分(d)」ということがある。] 1-2-1.甲第1号証に基づく新規性違反に係る無効理由(1)(a)についての判断 (1)請求人の主張について 請求人は,甲第1号証に開示された製剤に配合される化合物の例示(段落【0023】,段落【0034】?【0037】等)によれば,成分(a)?(d)の組み合わせが開示され,本件特許発明1を特定する事項の全てが記載されているといえるから,本件特許発明1は甲第1号証から新規性がなく,特許法第29条第1項第3号の規定により無効とされるべきものである旨主張している。[審判請求書の第35?36頁ウ(ア)(i)丸数字1,口頭審理陳述要領書の第3頁下から第3行?第4頁第1行等] (2)甲第1号証記載の発明について 甲第1号証には,「トリエチレングリコールに対する溶解度が相対的に高い薬物とトリエチレングリコールと,テルペン類とを配合したことを特徴とする経皮投与製剤」(摘記(i-1)請求項1)について記載されており,同経皮投与製剤の例として,薬物としてのジクロフェナクナトリウムをテルペン樹脂ならびに合成ゴムSBRラテックス及び天然ゴムラテックス等と共に含むプラスター(局所作用型の貼付剤と認められる。)の製造例(「実施例7」)も記載されている(摘記(i-6)の段落【0077】)。そして,同製造例のプラスターはその構成成分において水分を含まない油性のものと認められることから,甲第1号証には 「ジクロフェナクナトリウム,テルペン樹脂,合成ゴムSBRラテックス,天然ゴム,トリエチレングリコール及びテルペン類を含有する油性の局所作用型の貼付剤」 の発明(以下,「引用発明1」ということがある。)が記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 (ア) 本件特許発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「テルペン樹脂」は,本件特許明細書の段落【0013】で「粘着付与剤」の例として挙げられている「ポリテルペン樹脂」に相当し,また,引用発明1の「合成ゴムSBRラテックス」ならびに「天然ゴムラテックス」はいずれも貼付基剤を構成する粘着成分である(摘記(i-4))から,本件特許発明1の「粘着膏体基剤」に相当する。そして,引用発明1の「トリエチレングリコール」及び「テルペン類」は薬物であるジクロフェナクの経皮吸収促進能を高めるためのものである(摘記(i-2))からジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤に相当し,本件特許発明1の成分(b)?(d)の組合せもまた,ジクロフェナクナトリウムの優れた経皮吸収性を促進するためのものである(本件特許明細書の例えば段落【0005】)から,ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤に相当する。さらに,例えば甲第2?4号証のジクロフェナクナトリウム含有消炎鎮痛薬に係る記載(摘記(ii-3),(iii-7),(iv-1))から理解できるとおり,鎮痛抗炎症はジクロフェナクナトリウムの自明な用途である。 以上のことを踏まえると,両者は 「粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に,(a)ジクロフェナクナトリウム,及び経皮吸収促進剤を含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤」 の点で一致するが, 1) 「粘着膏体基剤」に関し,本件特許発明1では,「粘着付与剤」と共に「スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体」を含有するのに対し,引用発明1では粘着付与剤と共に合成ゴムSBRラテックス及び天然ゴムを含有する点(以下,「相違点1(1)ということがある。), 2) 「粘着膏体基剤」中に含まれる経皮吸収促進剤として,本件特許発明1では「(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン,(c)多価アルコール脂肪酸エステル及び(d)クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を併せて含有するのに対し,引用発明1ではトリエチレングリコール及びテルペン類を含有する点(以下,「相違点1(2)」ということがある。), において相違する。 よって,本件特許発明1は,甲第1号証に記載されたものではない。 (イ) なお,例えば甲第1号証の段落【0035】(摘記(i-4))には,「粘着膏体基剤」相当成分として天然ゴム,スチレン-ブタジェンゴム(SBR)等と同様にスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)をも採用し得ることが例示的に挙げられているが,特に「(a)ジクロフェナクナトリウム」を含有する貼付剤の粘着膏体基剤として当該SISを用いることが記載されているわけではない。 さらに,甲第1号証では,本件特許発明1の成分(c)及び(d)に相当する成分である「グリセリルモノステアレート・・・等の界面活性剤」及び「・・・有機酸等のpH調整剤」は,いずれも「必要により加えられる成分」とされており(摘記(i-4)段落【0036】),成分(b)に相当する成分(摘記(i-5)段落【0037】の「N-メチル-2-ピロリドン」)等と同様,引用発明1に係る貼付剤における任意添加成分の一として例示されているに過ぎず,それらの成分の全てを「(a)ジクロフェナクナトリウム」と併せて含有せしめることが記載されているわけでもない。 よって,少なくとも上述のとおり,引用発明1に係る貼付剤において,「粘着膏体基剤」として「スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体」及び粘着付与剤を併せて含有するものを採用すると共に,同基剤中にジクロフェナクに加え更に成分(b)?(d)相当成分を併せて含有せしめること,即ち,引用発明1の貼付剤に対し更に相違点1(2)に係る構成を同1(1)に係る構成と共に具備せしめること,が甲第1号証に記載されているとはいえない。 (4)小括 以上,(3)で述べたとおり,本件特許発明1は,甲第1号証に記載されたものではないから,請求人の上記(1)の主張は認容できず,標記無効理由(1)(a)には理由がない。 1-2-2.甲第1号証を主引例とする進歩性違反に係る無効理由(2)(a)についての判断 (1)請求人の主張について 請求人は,概要以下の(i),(ii)を根拠として,本件特許発明1は,甲第1号証を主引用例として,甲第2,3,4,7又は8号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから進歩性がなく,特許法第29条第2項の規定により無効とされるべきものである旨主張している。[審判請求書第36頁「丸数字2 進歩性について」等] (i) 甲第1号証に記載された発明において,ジクロフェナクナトリウムを溶解する溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを採用することは,甲第2号証や甲第3号証のジクロフェナクナトリウムとN-メチル-2-ピロリドンとの組み合わせに関する開示内容から当業者が容易に想到し得ることである。 (ii) 本件特許発明1によるジクロフェナクナトリウムの放出性及び経皮吸収性の向上に係る効果は,N-メチル-2-ピロリドンに関する甲第1号証の「薬物を溶解する」,甲第3号証の「経皮浸透促進剤」,甲第7号証の「顕著な吸収促進作用がある」,「グリセリン脂肪酸エステル」等に関する甲第3号証の「経皮浸透促進」作用,クエン酸,酒石酸,コハク酸等の有機酸に関する甲第4号証のジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進作用,ならびに,甲第8号証の「異なる作用機構を有する促進剤を組み合わせることで(薬物の)相乗的な(経皮吸収)促進効果が期待できる」,との記載から,容易に予測し得るものである。 なお,本件特許明細書の図2の実施例1,2の結果も,上の甲第8号証の記載から当業者が予測し得る範囲のものである。 (2)甲第1号証記載の発明,ならびに本件特許発明1との対比 甲第1号証に記載された引用発明1,ならびに同引用発明と本件特許発明1との対比については,上の1-2-1.(2)ならびに(3)(ア)のとおりである。 (3)判断 以下,1-2-1.(3)(ア)で挙げた相違点1(1),1(2)に関し,進歩性の観点から検討する。 (ア)甲第1号証の記載に基づく検討 (ア-1)相違点1(1)について 甲第1号証には,特にジクロフェナクナトリウムを薬物とする貼付剤の粘着膏体基剤としてスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を用いることが具体的な組成として記載されているわけではないが,甲第1号証の段落【0035】(摘記(i-4))には「粘着膏体基剤」相当成分として天然ゴム,スチレン-ブタジェンゴム(SBR)等と同様にスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)をも採用し得る旨記載されており,また,当該SISを実際に用いてなるプラスターの調製例も記載されている(摘記(i-6)の段落【0079】)から,単に引用発明1の「粘着膏体基剤」として粘着付与剤と共にスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を採用することだけであれば,当業者が甲第1号証から容易に想到することができるものと考えられる。 (ア-2)相違点1(2)について (i) しかしながら,成分(b)相当成分に関し,甲第1号証では,「・・・薬物を溶解する他の溶媒例えばダントロレンナトリウムにおいては N-メチル-2-ピロリドン,・・・などを加えることを妨げるものではない。」(摘記(i-5)段落【0037】。下線は当審による。)との記載から理解できるとおり,N-メチル-2-ピロリドンについてはあくまでダントロレンナトリウムの溶解剤として例示されているに過ぎず,本件特許明細書の段落【0008】に記載されるような成分(a)の溶解剤,或いは成分(a)の経皮吸収促進剤としてN-メチル-2-ピロリドンを採用することを示唆する記載を甲第1号証中に見出すことはできない。 また,甲第1号証には,当該N-メチル-2-ピロリドンのみならず,エタノール,イソプロパノール,ベンジルアルコール,フェネチルアルコール,マクロゴールやグリセリン類といった,溶解剤としての性質を有する他の成分も選択肢として挙げられている(摘記(i-5)段落【0037】?【0038】)ところ,これら各種の溶解剤の中から,成分(a)の「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の【0004】)に寄与せしめるための溶解剤として特にN-メチル-2-ピロリドンを好ましく選択し採用することについてまでは,甲第1号証中で何ら記載も示唆もされていない。 (ii) 更に,成分(c),(d)相当成分に関し,甲第1号証では,グリセリル脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル等の「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」相当成分は単に「界面活性剤」として例示されているのみであるし(摘記(i-4)段落【0036】),コハク酸,クエン酸,酒石酸といった「(d)クエン酸・・・から選ばれる有機酸」相当成分も単に「pH調整剤」(もしくは「貼付基剤」)として有用である旨例示的に記載されているに過ぎない(摘記(i-4)段落【0036】)。しかも,1-2-1.(3)(イ)でも述べたとおり,そもそも甲第1号証では,上記「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」相当成分,「(d)クエン酸・・・から選ばれる有機酸」相当成分のいずれも,「必要により加えられる成分」(摘記(i-4)段落【0036】),即ち,任意添加成分の一として並記的に挙げられているに過ぎない。 してみると,これら甲第1号証の「界面活性剤」ならびに「pH調整剤」を,特に成分(a)の「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)に寄与せしめるための「経皮吸収促進剤」(本件特許明細書の段落【0009】?【0010】)として共に選択し,成分(a)の「溶解剤」(本件特許明細書の段落【0008】)或いは経皮吸収促進剤としての成分(b)相当成分とさらに組み合わせて採用することについての記載乃至示唆が,甲第1号証中にみられるとはいえない。 (iii) これら(i),(ii)の検討結果からみて,「(a)ジクロフェナクナトリウム」を含有する「粘着膏体基剤」に対し,成分(a)の「良好な放出性及び経皮吸収性」に寄与せしめるために,更に成分(b)?(d)を併せて含有せしめることの動機づけが甲第1号証から得られるとはいえない。 (ア-3) 以上,(ア-1),(ア-2)のとおりであるから,引用発明1に対し,少なくとも相違点1(2)に係る構成を具備せしめることについて,甲第1号証に基づき当業者が容易に想到し得たとはいえないし,ましてや,当該相違点1(2)に係る構成を同1(1)と共に具備せしめることについて,甲第1号証に基づき当業者が容易に想到することができたとは到底いえない。 (イ)甲第2,3,4,7,8号証の記載に基づく検討(相違点1(2)に係る構成を具備せしめることの容易想到性について) 上述の(ア)の検討結果に基づき,甲第1号証のみから得られない上記相違点1(2)に係る構成を具備せしめることへの動機付けを,甲第2,3,4,7,8号証のいずれかもしくは組合せから得ることができるか否か,について,以下の(イ-1)?(イ-6)で検討する。 (イ-1)甲第2号証の記載に基づく検討 甲第2号証には,経皮吸収促進組成物において,l-メントール,ならびに,2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドンに代表される「ピロリドンまたはその誘導体」の少なくとも1種,を含有せしめることにより,同組成物中の生理活性物質(薬物)の経皮吸収性を著しく高めることが記載され(摘記(ii-1)請求項4,5,7,(ii-2)),生理活性物質として非ステロイド性消炎鎮痛薬を採用すること(摘記((ii-1)請求項7),同鎮痛薬としてインドメタシンやジクロフェナク等を採用し得ること(摘記(ii-3)),基剤としてスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を採用し得ること(摘記(ii-4)段落【0024】),ならびに,補助剤あるいは添加剤として「界面活性剤・・・,pH調整剤・・・」等を使用し得ること(摘記(ii-4)段落【0025】)も記載されている。また,剤型を硬膏剤とすることも記載されており(摘記(ii-1)請求項10,(ii-4)),そのような硬膏剤の例として,インドメタシン,l-メントール,N-メチル-2-ピロリドン,ロジン系粘着付与剤及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(摘記(ii-4)で硬膏剤に使用される基剤成分として例示されている粘着剤中の「エチレン酢酸ビニル系粘着剤」に相当する。)を含む,水を含まない油性と認められる硬膏剤も記載されている(摘記(ii-5))。 しかしながら,甲第2号証における非ステロイド性消炎鎮痛薬の経皮吸収促進剤のうち,本件特許発明1の成分(b)?(d)のいずれかに相当するのは,「ピロリドンまたはその誘導体」,即ち「(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン」のみであって,更に(c),(d)に相当する二成分をも併せて含有せしめることについてまでは,甲第2号証中に何ら示唆されていない。なお,仮に,甲第2号証中の「界面活性剤」中に「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」に該当するものが含まれ,同「pH調整剤」中に「(d)クエン酸・・・から選ばれる有機酸」に該当するものが含まれるとしても,それら「界面活性剤」及び「pH調整剤」はいずれも「補助剤あるいは添加剤」として「一般に外用剤に用いられるもの」,即ち任意成分として含有せしめ得ることが記載されているのみであって(摘記(ii-4)段落【0025】),非ステロイド性消炎鎮痛薬の経皮吸収促進のために上記(b)相当成分に加え更に同時に含有せしめることについてまでは,何ら記載も示唆もされていない。 即ち,ジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)のために,本件特許発明1規定の(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて配合することについて,甲第2号証には記載も示唆もない。 (イ-2)甲第3号証の記載に基づく検討 甲第3号証には,「脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びピロリドン誘導体からなる群から選択された1種以上の経皮浸透促進剤」,「シリコーン重合体、天然若しくは合成ゴム類及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれた1種以上の粘着樹脂」及び「粘着層中の含水率が変化するに伴ってそれ自体の溶解度が変化する薬物若しくは前駆薬物」で構成される粘着剤層を構成の一部とし,さらに「粘着性賦与剤、可塑剤、充填剤、皮膚刺激緩和剤及び酸化防止剤からなる群より選択された1種以上の添加物」を含有する経皮投与型薬物用貼付剤について記載されており(摘記(iii-1)),同貼付剤が「薬物を最大に溶解させ,必要量の薬物を経皮的に伝達し,薬物の経皮浸透を促進する」ものであること(摘記(iii-2)),基剤を構成する粘着樹脂としてはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等を採用し得ること(摘記(iii-4)),上記「薬物若しくは前駆薬物」として,鎮痛・抗抗炎症用薬剤として周知のジクロフェナクナトリウムを採用し得ること(摘記(iii-6)),等も記載されている。また,そのような貼付剤の例として,上記「経皮浸透促進剤」としてポリオキシエチレンラウリルエーテル,同「粘着樹脂」としてアクリル樹脂A,及び同「薬物若しくは前駆薬物」としてジクロフェナクナトリウムを併せて含む水不含系,即ち油性の貼付剤の調製例(摘記(iii-7))や,上記「経皮浸透促進剤」としてポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート,同「粘着樹脂」としてスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体や水素化ロジン(摘記(iii-4)段落【0029】で「粘着性賦与剤」の例として「ロジン系樹脂」が挙げられていることから,上記「粘着性賦与剤」に相当するものと認められる。)等で構成されるゴム系樹脂C2,及び同「薬物若しくは前駆薬物」としてケトプロフェンを併せて含む水不含系,即ち油性の貼付剤の調製例(摘記(iii-8))についても記載されている。 しかしながら,特にジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)のために,本件特許発明1規定の(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて配合することについては,甲第3号証にも記載も示唆もない。 (イ-3)甲第4号証の記載に基づく検討 甲第4号証には,ジクロフェナクナトリウムを薬効成分として含む貼付剤において,クエン酸,コハク酸,酒石酸,マレイン酸,フマル酸,サリチル酸,又は酢酸等の有機酸を併せて含有せしめることにより,ジクロフェナクナトリウムの溶解性及び経皮吸収性を向上させることが記載されており(摘記(iv-1)?(iv-5)),実際に有機酸を併用した場合には併用しない場合よりジクロフェナクナトリウムの血中濃度,及び皮膚への移行率・量において格段に優れた結果が得られることを示すデータが記載されている(摘記(iv-6)?(iv-8))。 しかしながら,これらの記載に基づき,引用発明1に係る貼付剤の粘着膏体基剤中に「クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を併せて含有せしめることへの動機付けが得られるとしても,高々(d)相当成分を含有せしめることにとどまり,更に(b)又は(c)に相当する成分を任意添加成分として使用することを示唆する記載すら認められない。 よって,上述の甲第4号証の記載を以て,ジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)のために,本件特許発明1規定の(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて配合することが示唆されているとはいえない。 (イ-4)甲第7号証の記載に基づく検討 甲第7号証には,本件特許発明1の成分(b)に相当する2-ピロリドンやN-メチルピロリドン(摘記(vii-1)のN-メチル-2-ピロリドンと同一化合物と認められる。)に顕著な吸収促進作用があることが各種の薬物について示されている旨の記載がみられる(摘記(vii-2))。 しかしながら,上記「各種の薬物」の中にジクロフェナクナトリウムが含まれる旨の特段の記載はなく,上記ピロリドン類のいずれかを引用発明1に係るジクロフェナクナトリウム含有貼付剤の粘着膏体基剤中に併せて含有せしめることで,特にジクロフェナクナトリウムの溶解性又は経皮吸収性を向上する点についての示唆は見出せない。 また,甲第7号証には,成分(b)に相当する上記ピロリドン類と共に,成分(c),(d)に相当する成分とを併せて用いる旨の記載乃至示唆も見出せない。 よって,これら甲第7号証の記載を以て,ジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)のために,本件特許発明1規定の(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて配合することが示唆されているとはいえない。 (イ-5)甲第8号証の記載に基づく検討 甲第8号証には,経皮吸収促進剤のうち「脂質に作用するもの」の代表として「Azone」,「オレイン酸」,「ミリスチン酸イソプロピル」,「中鎖脂肪酸モノグリセリド」及び「モノテルペン類」である「l-メントール,d-リモネンなど」が,また,「キャリアーとしてはたらくもの」の代表として「エタノール」,「イソプロパノール」,「N-メチル-2-ピロリドン」及び「プロピレングリコール」が挙げられており(摘記(viii-1)),この異なる作用機構を有する促進剤を組み合わせることで(薬物の)相乗的な(経皮吸収)促進効果が期待できることも記載されている(摘記(viii-2))。そして,上記成分のうち「中鎖脂肪酸モノグリセリド」は本件特許発明1の成分(c)に相当し,「N-メチル-2-ピロリドン」は同成分(b)に相当する。 しかしながら,これら摘記(viii-1),(viii-2)を含む甲第8号証の記載をみても,上記経皮吸収促進剤のいずれかの組合せを,特にジクロフェナクナトリウムを薬物とする貼付剤に適用することまで記載乃至示唆されているわけではない。 また,上述の甲第8号証の記載に基づき,成分(b)に相当する「N-メチル-2-ピロリドン」及び成分(c)に相当する「中鎖脂肪酸モノグリセリド」を組み合わせて使用し得るとしても,更に成分(d)相当成分を併せて用いる旨の記載乃至示唆を甲第8号証中に見出すことはできない。 よって,これら甲第8号証の記載を以て,ジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)のために,本件特許発明1規定の(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて配合することが示唆されているとはいえない。 (イ-6)甲第2,3,4,7,8号証のいずれかの組合せについて (i) 上の(イ-1)?(イ-5)で述べたとおり,「(a)ジクロフェナクナトリウム」を粘着膏体基剤中に含有する油性の貼付剤において,当該成分(a)の溶解性或いは経皮吸収促進性を改善し,以て成分(a)の良好な放出性及び経皮吸収性を得るために,基剤中に成分(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて含有せしめることについては,甲第2,3,4,7,8号証のいずれからも,そのような記載乃至示唆を見出すことはできない。 (ii) 尤も,例えば甲第4号証の摘記(iv-2)や甲第5号証の摘記(v-2),(v-3)の記載にみられるとおり,貼付剤においてジクロフェナクナトリウムの溶出性或いは経皮吸収性をより向上させることが技術課題として当業者に既に知られていたことをも踏まえれば,当該課題の解決のため,甲第14号証により医薬品分野において可溶(化)剤,即ち溶解剤としての用途が周知であったと認められるN-メチル-2-ピロリドンを含む,甲第2,3,4,7,8号証のいずれかで挙げられている種々の既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の中から,より適切なものを適宜選択し検討することを通じて,成分(b),(c)及び(d)に相当する成分を個々に選択しつつ,上記溶出性或いは経皮吸収性の一層の向上を企図してそれらの成分を共に組み合わせ適用してみることについて,当業者が動機付けを得ることができたのではないか,との疑義が存在する。 そこで,そのような動機付けを得ることの可否について,以下に検討する。 請求人が提示した証拠方法中の,例えば甲第1号証の第3頁第3欄段落【0009】?【0013】には,同号証の発明により解決しようとする課題について,従来技術を引用しつつ,以下のように記載されている(下線は当審による。)。 『 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 テルペン類は,他の優れた合成経皮吸収促進剤よりも刺激性が少なく,安全性の高い経皮吸収促進剤となりうる可能性がある・・・が,ビヒクルのないそれ単独の製剤では実用上の経皮吸収促進効果を示すまでには至っていない。従って,前記した・・・に限らず,・・・などに開示された特定のテルペン類による特定薬物の経皮吸収促進効果あるいは・・・に開示された特定構造のテルペンによる経皮吸収促進効果もビヒクルのない製剤では充分とはいえない。 【0010】一方,特定テルペンについてエイゾン(ネルソン社の商品名),DMSOなど他の経皮吸収促進剤とを組合せて吸収促進能を高めようとする試みもなされている(・・・)が,薬物や基剤の種類によってはテルペン類による吸収促進能を低下させる場合がある。 【0011】従って,専ら前記の含水エタノールや経皮吸収促進能を高める共溶媒としてのプロピレングリコールが,経皮吸収促進能を有効に発揮させて,かつ製剤化を可能にするビヒクルとして採用されているのが実状である。 【0012】しかしながら・・・薬物やビヒクルの相違によるテルペンの種類によって透過促進能が全く異なってくる。また,含水エタノールでは適用できる薬物が限定されるばかりでなく,溶解性に劣る場合が多く,また経皮吸収促進能を充分に発揮するまでには至っておらず・・・。 【0013】また,プロピレングリコールにおいても,薬物によっては溶解能が不十分なため,経皮投与製剤にはプロピレングリコールを多量に用いる必要があった。しかし,これを多量に用いては・・・経時的に不安定になり・・・プロピレングリコールは皮膚刺激性が強く安全性の面においても問題があった。』 これらの記載によれば,従来から経皮吸収促進剤として知られたテルペン類(なお,甲第8号証の表3中の「モノテルペン類」(摘記viii-1)もこれに含まれるものと認められる。)と他の既知の経皮吸収促進剤,例えばプロピレングリコール(なお,これも甲第8号証の表3(摘記(viii-1))中で挙げられている。)を組み合わせて使用しても,薬物或いは基剤の種類等如何では,必ずしも十分な経皮吸収促進性が得られるわけではなく,むしろ組合せ方によっては経皮吸収性を低下させる場合もあることが,少なくとも本件特許出願前,当業者にとり知られていたものと理解できる。 また,例えば本件特許明細書の段落【0003】で従来技術を示す文献として引用されている甲第2号証では,薬物の経皮吸収促進剤として,成分(b)に相当するピロリドン類とl-メントールを組み合わせて用いることが必須とされており(摘記(ii-1)等),甲第8号証でも,成分(b)に相当するN-メチル-2-ピロリドンと組み合わせ得る吸収促進剤(「脂質に作用するもの」)として「中鎖脂肪酸モノグリセリド」のみならず例えば「l-メントール」も挙げられているが(摘記(viii-1)),本件特許明細書の試験例1,2及びその結果を示す図1,2をみると,実際に成分(b)?(d)のうち成分(b)のみ(2-ピロリドン),及びl-メントールを併せ含む貼付剤(比較例2。これは,上記甲第2号証或いは甲第8号証で相乗的な経皮吸収促進効果を示すとされている,l-メントール及びピロリドン類の組合せに相当する。)は,「(a)ジクロフェナクナトリウム」の溶出性或いは皮膚透過性(経皮吸収性)において,本件特許発明1の成分(b)?(d)を全て含む貼付剤(実施例1,2等)と同様又はそれ以上に優れるどころか,むしろ成分(b)?(d),l-メントールのいずれも含まない貼付剤(比較例5)等と同程度の,不十分な溶解性及び経皮吸収性しか示しておらず,「経皮吸収性は十分満足できるものではなく、さらに優れた外用剤が望まれていた」(本件特許明細書の段落【0004】)のである。 以上の各甲号証の記載,ならびに本件特許明細書の試験例1,2及び図1,2の検討結果からみて,貼付剤等の経皮薬物投与用の製剤分野においては,一般に経皮吸収促進剤として知られるもの同士を組み合わせて適用しても,薬物の種類或いは基剤等によっては,必ずしも薬物の溶出性或いは経皮吸収性を促進し得るとはいえず,特に薬物がジクロフェナクナトリウムの場合もその例外ではない,ということが,本件特許出願当時,当該分野における技術水準又は技術常識として存在していたものと考えられる。 そして,かかる技術水準又は技術常識を踏まえれば,仮に,引用発明1やその他各甲号証の貼付剤において,貼付剤中のジクロフェナクナトリウムの溶解性や経皮吸収性のより一層の向上が当然の技術課題として認識されており,当該課題の達成のため,引用発明1の貼付剤の粘着膏体基剤中に含有せしめる既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の適切な組み合わせを検討することについて特段の阻害事由がなかったとしても,また,仮に甲第14,15号証の記載を併せて勘案し得たとしても,上述のとおり,特にSIS粘着基剤及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に,ジクロフェナクナトリウムと共に(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて含有せしめることについて特段の記載も示唆もないこれら甲2,3,4,7,8号証を以ては,引用発明1の貼付剤の粘着膏体基剤中に,種々の既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の中から特に成分(b),(c)及び(d)を選択して組合せ併用する点を特徴として具備せしめることで,そうでない場合と比較してジクロフェナクナトリウムの溶出性及び経皮吸収性において顕著な向上が現実にもたらされる(本件特許明細書の試験例1,2及びその結果を示す図1,2),ということは,当業者にとり到底想到し得なかったというべきである。 よって,本件特許出願時において,上述の動機付けが存在したともいえない。 (ウ) 以上の(ア)及び(イ-1)?(イ-6)の検討結果からみて,甲第1号証の引用発明1に対し,少なくとも上記相違点1(2)に係る構成を相違点1(1)に係る構成と共に具備せしめることが,甲第1号証自体の記載,或いは,甲第2,3,4,7,8号証のいずれか一又はそれ以上との組合せに基づいて,当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。 (エ)本件特許発明1の効果について そして,本件特許発明1は,引用発明1に対し上記相違点1(1),1(2)の構成を共に具備することで,本件特許明細書の試験例1,2の結果を示す図1,2から明らかなように,成分(a)の放出性又は経皮吸収性において,成分(b)?(d)のいずれかを含まない態様(比較例1?6)からは予測し得ない,顕著に優れた効果が奏されるものである。 例えば,図1において,成分(b)?(d)のいずれをも含有しない貼付剤(比較例1,5)や,成分(b)?(d)のうちいずれか一又は二のみを含む貼付剤(比較例2?4,6)は,8時間後の成分(a)の溶出率がいずれも約20%かそれ未満であるのに対し,(b)?(d)の三成分を全て含む貼付剤(実施例1?4)は,同溶出率がいずれも80%超であることが示されており,三成分を全て含有せしめることによるこのような溶出率の顕著な向上は各甲号証の記載から予期し得たことではない。また,図2をみても,成分(b)?(d)の全てを含む貼付剤(例えば実施例1)による成分(a)の累積透過量(約120μg/cm^(2))は,成分(b)及び(c)のみを含む貼付剤(比較例6)による同累積透過量(10μg/cm^(2)未満)と成分(d)のみを含む貼付剤(比較例4)による同累積透過量(高々50μg/cm^(2)程度)の総和から予測される程度を大幅に超える顕著な量と認められるものであり,この点についても各甲号証の記載から当業者にとり予測し得た程度の効果であるとは到底いえない。 (4)小括 以上,(3)で述べたとおり,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明,或いは,甲第1号証に記載された発明と甲第2,3,4,7,8号証のいずれか一又は二以上の組合せ,によっては,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,請求人の上記(1)の主張は認容できず,標記無効理由(2)(a)には理由がない。 1-2-3.甲第2号証に基づく新規性違反に係る無効理由(1)(b)についての判断 (1)請求人の主張について 請求人は,甲第2号証の「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」(摘記(ii-4)の段落【0025】)は甲第6号証等に示されるとおり「多価アルコール脂肪酸エステル」に該当することが明らかであること,ならびに,甲第2号証中の「pH調整剤」(摘記(ii-4)の段落【0025】)として「クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」が周知であるという甲第1号証記載の技術常識を踏まえれば,甲第2号証には本件特許発明1に係る貼付剤に配合される成分が全て記載されているといえるため,本件特許発明1は甲第2号証から新規性がなく,特許法第29条第1項第3号の規定により無効とされるべきものである旨主張している。[審判請求書の第36?37頁(ii)丸数字1等] (2)甲第2号証記載の発明について 甲第2号証には,経皮吸収促進組成物において,l-メントール,ならびに,2-ピロリドンまたはN-メチル-2-ピロリドンに代表される「ピロリドンまたはその誘導体」の少なくとも1種,を含有せしめることにより,同組成物中の生理活性物質(薬物)の経皮吸収性を著しく高めることが記載され(摘記(ii-1)請求項4,5,7,(ii-2)),生理活性物質として非ステロイド性消炎鎮痛薬を採用すること(摘記((ii-1)請求項7)も記載されており,剤型を硬膏剤(局所作用型の貼付剤と認められる。)とすることも記載されている(摘記(ii-1)請求項10,(ii-4))。また,そのような硬膏剤の例として,非ステロイド性消炎鎮痛薬即ち鎮痛抗炎症薬物としてのインドメタシン,l-メントール,N-メチル-2-ピロリドン,ロジン系粘着付与剤,及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(摘記(ii-4)で硬膏剤に使用される基剤成分として例示されている粘着剤中の「エチレン酢酸ビニル系粘着剤」に相当する。)を含む,水を含まない油性と認められる硬膏剤も記載されている(摘記(ii-5))。 これらの記載からみて,甲第2号証には 「粘着膏体基剤としてのエチレン酢酸ビニル共重合体中に,l-メントール,2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドンであるピロリドン又はその誘導体,ロジン系粘着付与剤,及び非ステロイド性消炎鎮痛薬を含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤」 の発明(以下,「引用発明2」ということがある。)が記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 (ア) 本件特許発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「ロジン系粘着付与剤」は本件特許発明1の「粘着付与剤」に相当する。また,引用発明2のメントールならびにピロリドン又はその誘導体は,非ステロイド性消炎鎮痛薬の経皮吸収性を促進するものである(摘記(ii-2))から経皮吸収促進剤に相当し,本件特許発明1の成分(b)?(d)の組合せもまた,ジクロフェナクナトリウムの優れた経皮吸収性を促進するためのものである(本件特許明細書の例えば段落【0005】)から,経皮吸収促進剤に相当する。さらに,引用発明2の非ステロイド性消炎鎮痛薬,本件特許発明1の「(a)ジクロフェナクナトリウム」のいずれも,鎮痛抗炎症用薬剤に相当する。 以上の点を踏まえると,両者は 「粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に、鎮痛抗炎症薬剤,及び(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドンを含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤」 の点で一致するが, 1) 「粘着膏体基剤」に関し,本件特許発明1では「粘着付与剤」と共に「スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体」を含有するのに対し,引用発明2ではそのような特定はない点(以下,「相違点2(1)」ということがある。), 2) 「粘着付与剤」及び「ピロリドン又はその誘導体」と共に含まれる「粘着膏体基剤」中の成分に関し,本件特許発明1では,「鎮痛抗炎症薬剤」が「(a)ジクロフェナクナトリウム」に特定されており,かつ,更に「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」及び「(d)クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を含有するのに対し,引用発明2では「鎮痛抗炎症薬剤」がジクロフェナクナトリウムに特定されておらず,かつ,更に「l-メントール」を含有することが規定されているのみで,これにかえて又はこれに加えて上記成分(c)及び(d)に相当する成分を共に含む旨の規定はない点(以下,相違点2(2)ということがある。), において相違する。 よって,本件特許発明1は,甲第2号証に記載されたものではない。 (イ) なお,甲第2号証には,引用発明2の貼付剤に対し,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の「界面活性剤」やジイソプロパノール等の「pH調整剤」を併せて含有せしめ得ること(摘記(ii-4)段落【0025】)等も記載されているが,仮に,甲第2号証記載の「界面活性剤」中に「多価アルコール脂肪酸エステル」に該当するものが含まれるとしても,当該「界面活性剤」を特に成分(a)の経皮吸収促進剤として採用することが記載されているわけではない。さらに,当該「界面活性剤」自体,「補助あるいは添加剤」として「一般に外用剤に用いられるもの」(摘記(ii-4)段落【0025】)の例として挙げられているに過ぎないものである。「pH調整剤」についても,上記「界面活性剤」と同様,特に成分(a)の経皮吸収促進剤として記載されているわけではなく,また,あくまで「補助剤あるいは添加剤」として「一般的に外用剤に用いられるもの」とされているに過ぎない(摘記(ii-4)段落【0025】)。 よって,請求人の主張を参酌しても,引用発明2に係る貼付剤において,「粘着膏体基剤」成分として粘着付与剤と併せ「スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体」を採用し,かつ,鎮痛抗炎症薬剤としてジクロフェナクナトリウムを採用すると共に,基剤中に更に成分(b)に加え成分(c)及び(d)相当成分を含有せしめること,即ち,引用発明2の貼付剤に対し更に相違点2(2)に係る構成を同2(1)に係る構成と共に具備せしめること,が甲第2号証に記載乃至示唆されているとはいえない。 (4)小括 以上,(3)で述べたとおり,本件特許発明1は,甲第2号証に記載されたものではないから,請求人の上記(1)の主張は認容できず,標記無効理由(1)(b)には理由がない。 1-2-4.甲第2号証を主引例とする進歩性違反に係る無効理由(2)(b)についての判断 (1)請求人の主張について 請求人は,概要以下の(i),(ii)を根拠として,本件特許発明1は,甲第2号証を主引用例として,甲第1,3,4,7又は8号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから進歩性がなく,特許法第29条第2項の規定により無効とされるべきものである旨主張している。[審判請求書の例えば第37?38頁「丸数字2 進歩性について」等] (i) 甲第2号証に記載された発明において,pH調整剤として「クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を採用することは甲第1号証から,或いは,ジクロフェナクの経皮吸収を促進させる目的でクエン酸,コハク酸,酒石酸等のカルボン酸を用いることは甲第4号証から,当業者が容易に想到し得ることである。 (ii) 本件特許発明1によるジクロフェナクナトリウムの放出性及び経皮吸収性の向上に係る効果は,甲第4号証のクエン酸,酒石酸及びコハク酸に関する「ジクロフェナックナトリウムに有機酸を共存させることにより,感圧性接着材料層への溶解度が高まり,且つバリヤー機能を有する角質層を容易に透過することが出来る」(第3頁右下欄)といった記載等から容易に予測し得るものである。 なお,本件特許明細書の図2で示される実施例1,2の貼付剤の経皮吸収性も,上の甲第4号証の記載等やN-メチル-2-ピロリドンに関する甲第3号証の「経皮浸透促進剤」との記載,甲第7号証の「顕著な吸収促進作用がある」との記載,「多価アルコール脂肪酸エステル」の一種である「グリセリン脂肪酸エステル」に関する甲第3号証の経皮浸透促進作用の記載,ならびに,甲第8号証の「異なる作用機構を有する促進剤を組み合わせることで(薬物の)相乗的な(経皮吸収)促進効果が期待できる」,との記載から,当業者が容易に予測し得る範囲のものである。 (2)甲第2号証記載の発明,ならびに本件特許発明1との対比 甲第2号証に記載された引用発明2,ならびに同引用発明と本件特許発明1との対比については,上の1-2-3.(2)ならびに(3)(ア)のとおりである。 (3)判断 以下,1-2-3.(3)(ア)で挙げた相違点2(1),2(2)に関し,進歩性の観点から検討する。 (ア)甲第2号証の記載に基づく検討 (ア-1)相違点2(1)について 甲第2号証には,特に「(a)ジクロフェナクナトリウム」を含有する貼付剤の粘着膏体基剤としてスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を用いることが具体的に記載されているわけではないが,甲第2号証の段落【0024】(摘記(ii-4))には「粘着膏体基剤」相当成分としてスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)を採用し得ることも記載されているから,単に引用発明2の「粘着膏体基剤」として粘着付与剤と共にスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を採用することだけであれば,当業者が甲第2号証から容易に想到し得るものと考えられる。 (ア-2)相違点2(2)について しかしながら,更に引用発明2の鎮痛抗炎症薬剤としてジクロフェナクナトリウムを採用することについてのみであれば,摘記(ii-3)の記載に基づき当業者が容易に想到し得るとしても,特に当該ジクロフェナクナトリウムに対し,(l-メントールと共に)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドンを併せて配合することについては,甲第2号証中に特段の記載乃至示唆はみられない。 また,1-2-3.(3)(イ)で述べたとおり,更に(b),(c)相当成分を共に含有せしめることについても甲第2号証中で記載も示唆もされていない点をも踏まえると,引用発明2において,特にジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)のために,本件特許発明1規定の(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて配合することについて,何ら甲第3号証に記載乃至示唆されているとはいえない。 (ア-3) 以上,(ア-1),(ア-2)のとおりであるから,引用発明2に対し,少なくとも相違点2(2)に係る構成を具備せしめることについて,甲第2号証に基づき当業者が容易に想到し得たとはいえないし,ましてや,当該相違点2(2)に係る構成を同2(1)と共に具備せしめることについて,甲第2号証に基づき当業者が容易に想到し得たとは到底いえない。 (イ)甲第1,3,4,7又は8号証の記載,もしくはそれらの組み合わせについて(相違点2(2)に係る構成を具備せしめることの容易想到性について) 上の(ア),ならびに上述の1-2-2.(3)(ア)?(イ)(イ-5)で述べたとおり,油性の貼付剤における粘着膏体基剤中の薬物として「(a)ジクロフェナクナトリウム」を採用するとともに,当該成分(a)の溶解性或いは経皮吸収促進性を改善し,以て成分(a)の良好な放出性及び経皮吸収性を得るために,基剤中に成分(b)?(d)を併せて含有せしめることについては,甲第2号証或いは他の標記各甲号証のいずれからも,そのような記載乃至示唆を見出すことはできない。 そして,仮に,引用発明2やその他各甲号証の貼付剤において,貼付剤中のジクロフェナクナトリウムの溶解性や経皮吸収性のより一層の向上が当然の技術課題として当業者に認識されており,当該課題の達成のため,引用発明2の貼付剤の粘着膏体基剤中に含有せしめる既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の適切な組み合わせを検討することについて,特段の阻害事由がなかったとしても,また,仮に甲第14,15号証の記載を併せて勘案し得たとしても,上述のとおり,特にSIS粘着基剤及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に,ジクロフェナクナトリウムと共に(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて含有せしめることについて特段の記載も示唆もない甲1,3,4,7,8号証を以ては,引用発明2の貼付剤の粘着膏体基剤中の「鎮痛抗炎症薬剤」として成分(a)を採用すると共に,種々の既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の中から特に成分(b),(c)及び(d)を選択して組合せ併用する点を特徴として具備せしめることで,当該成分(a)の溶出性及び経皮吸収性において顕著な向上が現実にもたらされる,ということは,上記1-2-2.(3)(イ)(イ-6)で引用発明1を主引例とした場合について述べたのと同様,当業者にとり到底想到し得なかったというべきである。 (ウ)本件特許発明1の効果について そして,1-2-2.(3)(エ)で述べたとおり,本件特許発明1は,引用発明2に対し,特に上記相違点2(2)に係る構成を同2(1)に係る構成と共に具備することで,本件特許明細書の試験例1,2の結果としての図1,2から明らかなように,成分(b)?(d)のいずれかを含まない場合(比較例1?6)と比較して,成分(a)の放出性又は経皮吸収性において,顕著に優れた効果を奏するものである。 (4)小括 以上,(3)で述べたとおり,本件特許発明1は,甲第2号証に記載された発明,或いは,甲第2号証に記載された発明と甲第1,3,4,7,8号証のいずれか一又は二以上の組合せ,によっては,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,請求人の上記(1)の主張は認容できず,標記無効理由(2)(b)には理由がない。 1-2-5.甲第3号証を主引例とする進歩性違反に係る無効理由(2)(c)についての判断 (1)請求人の主張について 請求人は,概要以下の(i),(ii)を根拠として,本件特許発明1は,甲第3号証を主引用例として,甲第1,2,4,7又は8号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから進歩性がなく,特許法第29条第2項の規定により無効とされるべきものであると主張している。[審判請求書の第38?39頁「(iii)甲第3号証との対比 丸数字1 進歩性について」等] (i) 甲第3号証記載の発明は,「クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を含有することが具体的に特定されていない点においてのみ本件特許発明1と相違するものであるところ,皮膚に適用されるテープ剤の膏体をpH調整することは甲第2号証の記載から明らかなごとく必要に応じて当業者が適宜行う事項に過ぎず,その際のpH調整剤として甲第1号証に示されるごとく周知の上記いずれかの「有機酸」を採用することは,当業者が容易に想到し得ることである。或いは,甲第3号証記載の発明において,ジクロフェナクナトリウムの経皮浸透を促進させる目的で,甲第4号証に記載されるクエン酸,コハク酸,酒石酸等のカルボン酸を用いることは,当業者が容易に想到し得ることである。 (ii) 本件特許発明1によるジクロフェナクナトリウムの放出性及び経皮吸収性の向上に係る効果は,甲第4号証のクエン酸,酒石酸及びコハク酸に関する「ジクロフェナックナトリウムに有機酸を共存させることにより,感圧性接着材料層への溶解度が高まり,且つバリヤー機能を有する角質層を容易に透過することが出来る」といった記載等から容易に予測し得るものである。 なお,本件特許明細書の図2で示される実施例1,2の貼付剤の経皮吸収性も,上の甲第4号証の記載等やN-メチル-2-ピロリドンに関する甲第7号証の「顕著な吸収促進作用がある」との記載,「多価アルコール脂肪酸エステル」の一種である「グリセリン脂肪酸エステル」に関する甲第3号証の経皮浸透促進作用の記載,ならびに,甲第8号証の「異なる作用機構を有する促進剤を組み合わせることで(薬物の)相乗的な(経皮吸収)促進効果が期待できる」との記載から,当業者が容易に予測し得る範囲のものである。 (2)甲第3号証記載の発明について 甲第3号証には,「脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びピロリドン誘導体からなる群から選択された1種以上の経皮浸透促進剤」,「シリコーン重合体、天然若しくは合成ゴム類及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれた1種以上の粘着樹脂」及び「粘着層中の含水率が変化するに伴ってそれ自体の溶解度が変化する薬物若しくは前駆薬物」で構成される粘着剤層を構成の一部とし,さらに「粘着性賦与剤、可塑剤、充填剤、皮膚刺激緩和剤及び酸化防止剤からなる群より選択された1種以上の添加物」を含有する経皮投与型薬物用貼付剤について記載されており(摘記(iii-1)),その例として,上記「薬物若しくは前駆薬物」としてジクロフェナクナトリウムを採用してなる水不含系,即ち油性の,貼付剤形態用の消炎・鎮痛経皮投与用薬剤組成物の製造例も記載されている(摘記(iii-7))ことから,甲第3号証には 「 粘着樹脂中に,ジクロフェナクナトリウムと共に,脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン誘導体,グリセリン脂肪酸エーテル,プロピレングリコール脂肪酸エステル及びピロリドン誘導体からなる群から選択された1種以上の経皮浸透促進剤,及び,粘着性賦与剤、可塑剤、充填剤、皮膚刺激緩和剤及び酸化防止剤からなる群より選択された1種以上の添加物を含有する,油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤」 の発明(以下,「引用発明3」ということがある。)が記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 (ア) 本件特許発明1と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「粘着樹脂」は本件特許発明1の「粘着膏体基剤」に相当すること,引用発明3の「経皮浸透促進剤」と本件特許発明1の成分(b)?(d)の組合せが共にジクロフェナクナトリウムの優れた経皮吸収性を促進するものであること(本件特許明細書の例えば段落【0005】),及び,引用発明3の「粘着性賦与剤」が本件特許発明1の「粘着付与剤」に相当するものであることを踏まえると,両者は 「粘着膏体基剤中に,(a)ジクロフェナクナトリウム及び経皮吸収促進剤を含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤」 である点で一致するが, 1) 「粘着膏体基剤」成分として,本件特許発明1では「スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体」及び「粘着付与剤」を必須成分として含有する旨規定されているのに対し,引用発明3では「粘着付与剤」を「可塑剤」,「充填剤」,「皮膚刺激緩和剤」及び「酸化防止剤」と共に構成される群からの選択肢の一として含有し得る旨規定されているのみである点(以下,相違点3(1))ということがある。), 2) 「経皮吸収促進剤」に関し,本件特許発明1では「(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン,(c)多価アルコール脂肪酸エステル及び(d)クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を併せて含有することが必須とされているのに対し,引用発明3では「脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びピロリドン誘導体からなる群から選択された1種以上」を含有するとされている点(以下,相違点3(2)ということがある。), において,相違する。 (イ) 以下,上記相違点3(1),3(2)について検討する。 (イ-1)甲第3号証の記載に基づく検討 (i) 相違点3(1)について 甲第3号証の摘記(iii-4)の記載に基づき,引用発明3の貼付剤において粘着膏体基剤の構成成分としてスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及び粘着付与剤を併せて採用することだけなら,当業者が甲第3号証から容易に想到し得るものと考えられる。 (ii) 相違点3(2)について しかしながら,1-2-2.(3)(イ)(イ-2)でも述べたとおり,仮に,引用発明3における「ピロリドン誘導体」(摘記(iii-1))として,甲第2号証,甲第8号証或いは甲第14号証に記載された溶解剤又は経皮吸収促進剤である2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドンが採用され,同「脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン誘導体,グリセリン脂肪酸エーテル,プロピレングリコール脂肪酸エステル及びピロリドン誘導体からなる群から選択された1種以上」(摘記(iii-1))として,摘記(iii-5)のグリセリン脂肪酸エステル,プロピレングリコールモノラウレート或いは摘記(iii-8)のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートといった「多価アルコール脂肪酸エステル」に相当する化合物成分が採用され得るのだとしても,当該「ピロリドン誘導体」と「多価アルコール脂肪酸エステル」相当成分とを同時に選択することについては甲第3号証中に特段の記載乃至示唆はなく,ましてや,ジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書の段落【0004】)のために,経皮吸収促進剤として前記「ピロリドン誘導体」及び「多価アルコール脂肪酸エステル」相当成分と共に更に「クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を併せ配合することについて,何ら具体的に示唆する記載もない。 (iii) 以上,(i),(ii)で述べたとおりであるから,少なくとも相違点3(2)に係る構成を具備せしめることについて,甲第3号証に基づき当業者が容易に想到し得たとはいえないし,ましてや,当該相違点3(2)に係る構成を同3(1)と共に具備せしめることについて,甲第3号証に基づき当業者が容易に想到し得たとは到底いえない。 (イ-2)甲第1,2,4,7,8号証の記載に基づく検討(相違点3(2)に係る構成を具備せしめることの容易想到性について) 上の(イ-1),ならびに1-2-2.(3)(ア)?(イ)(イ-5),1-2-4.(3)(ア)で検討したとおり,油性の貼付剤における粘着膏体基剤中の薬物として「(a)ジクロフェナクナトリウム」を採用するとともに,当該成分(a)の溶解性或いは経皮吸収促進性を改善し,以て成分(a)の良好な放出性及び経皮吸収性を得るために,基剤中に成分(b)?(d)を併せて含有せしめることについては,甲第3号証或いは他の標記各甲号証のいずれからも,そのような記載乃至示唆を見出すことはできない。 そして,仮に,引用発明3やその他各甲号証の貼付剤において,貼付剤中のジクロフェナクナトリウムの溶解性や経皮吸収性のより一層の向上が当然の技術課題として当業者に認識されており,当該課題の達成のため,引用発明3の貼付剤の粘着膏体基剤中に含有せしめる既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の適切な組み合わせを検討することについて,特段の阻害事由がなかったとしても,また,仮に甲第14,15号証の記載を併せて勘案し得たとしても,上述のとおり,特にSIS粘着基剤及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に,ジクロフェナクナトリウムと共に(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて含有せしめることについて特段の記載も示唆もない甲1,2,4,7,8号証を以ては,引用発明3の貼付剤の粘着膏体基剤中に,種々の既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の中から特に成分(b),(c)及び(d)を選択して組合せ併用する点を特徴として具備せしめることで,成分(a)の溶出性及び経皮吸収性において顕著な向上が現実にもたらされる,ということは,1-2-2.(3)(イ)(イ-6)や1-2-4.(3)(イ)で引用発明1或いは引用発明2を主引例とした場合について述べたのと同様,当業者にとり到底想到し得なかったというべきである。 (ウ)本件特許発明1の効果について そして,1-2-2.(3)(エ)で述べたとおり,本件特許発明1は,引用発明3に対し,特に上記相違点3(2)に係る構成を同3(1)に係る構成と共に具備することで,本件特許明細書の試験例1,2の結果としての図1,2から明らかなように,成分(b)?(d)のいずれかを含まない場合(比較例1?6)と比較して,成分(a)の放出性又は経皮吸収性において,顕著に優れた効果を奏するものである。 (4)小括 以上,(3)で述べたとおり,本件特許発明1は,甲第3号証に記載された発明,或いは,甲第3号証に記載された発明と甲第1,2,4,7,8号証のいずれか一又は二以上の組合せ,によっては,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,請求人の上記(1)の主張は認容できず,標記無効理由(2)(c)には理由がない。 1-2-6.甲第5号証を主引例とする進歩性違反に係る無効理由(2)(d)についての判断 (1)請求人の主張について 請求人は,概要以下の(i),(ii)を根拠として,本件特許発明1は,甲第5号証を主引用例として,甲第1,2,3,4,7又は8号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから進歩性がなく,特許法第29条第2項の規定により無効とされるべきものであると主張している。[審判請求書の第39?40頁「(iv)甲第5号証との対比 丸数字1 進歩性について」等] (i) 甲第5号証記載の発明において,ジクロフェナクナトリウムを効率よく経皮吸収させる目的で,甲第3号証に経皮浸透促進剤として開示されるピロリドン誘導体(甲第7号証より,2-ピロリドン又はN-メチルピロリドンであることは明白)及びグリセリン脂肪酸エステルを用いること,或いは,各種薬剤の経皮吸収促進剤として周知(例えば甲第7号証)であるN-メチル-2-ピロリドンを用い,さらに,N-メチル-2-ピロリドンとの相乗的な促進効果が得られることが甲第8号証より周知である中鎖脂肪酸モノグリセリドを併用することは,当業者が容易に想到し得ることである。 また,薬物含有油性貼付性剤の膏体をpH調整することは甲第1号証に示されるごとく必要に応じて当業者が適宜行う事項に過ぎず,その際のpH調整剤として周知の「クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を採用すること,或いは,ジクロフェナクナトリウムの経皮浸透を促進させる目的で,甲第4号証に記載されるクエン酸,コハク酸,酒石酸等を用いることは,当業者が容易に想到し得ることである。 (ii) 本件特許発明1によるジクロフェナクナトリウムの放出性及び経皮吸収性の向上に係る効果は,ピロリドン誘導体及びグリセリン脂肪酸エステルの各々に関する甲第3号証の経皮浸透促進剤としての開示,クエン酸,酒石酸,コハク酸等に関する甲第4号証のジクロフェナックナトリウムの経皮浸透促進剤としての記載,ならびに,甲第8号証の「異なる作用機構を有する促進剤を組み合わせることで(薬物の)相乗的な(経皮吸収)促進効果が期待できる」との記載から,当業者が容易に予測し得る相乗的な経皮吸収促進効果の範囲内のものである。 なお,本件特許明細書の図2で示される実施例1,2の貼付剤の経皮吸収性も,上の甲第3,4,8号証の記載等から当業者が容易に予測し得る相乗的な経皮吸収促進効果の範囲内のものである。 (2)甲第5号証記載の発明について 粘着基剤としてスチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体を含む油性外用貼付製剤(摘記(v-1)請求項3),ならびに,粘着付与樹脂としての脂環族飽和炭化水素石油樹脂(摘記(v-7))等を併せて配合してなる同貼付製剤の処方例の記載(摘記(v-8))からみて,甲第5号証には 「スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及び粘着付与樹脂を含む粘着膏体基剤に,ジクロフェナクナトリウム,イソステアリン酸及び炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸を配合してなる,油性の局所作用型の貼付剤」 の発明(以下,単に「引用発明5」ということがある。)が記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 (ア) 本件特許発明1と引用発明5とを対比する。 引用発明5の「粘着付与樹脂」は「本件特許発明1の「粘着付与剤」に相当する。また,引用発明5の「イソステアリン酸および炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸」と本件特許発明1の成分(b)?(d)の組合せとは,共にジクロフェナクナトリウムの経皮吸収を促進するものである((摘記(v-2)?(v-4),本件特許明細書の例えば段落【0005】)。そして,例えば甲第2?4号証のジクロフェナクナトリウム含有消炎鎮痛薬に係る記載(摘記(ii-3),(iii-7),(iv-1))から理解できるとおり,鎮痛抗炎症はジクロフェナクナトリウムの自明な用途である。 以上のことを踏まえると,両者は 「スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に,(a)ジクロフェナクナトリウム,及び経皮吸収促進剤をを含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤」 である点で一致するが, 「経皮吸収促進剤」として,本件特許発明1では「(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン,(c)多価アルコール脂肪酸エステル及び(d)クエン酸,酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」を含有するのに対し,引用発明5では「イソステアリン酸および炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸」を含有する, という点(以下,単に「相違点5」ということがある。)において相違する。 (イ) 以下,上記相違点5について検討する。 (イ-1)甲第5号証の記載に基づく検討 甲第5号証において,引用発明5のジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤として採用することが記載されているのは「イソステアリン酸および炭素数10?18の常温で液状の脂肪酸」(摘記(v-1),(v-4),(v-5),(v-7),(v-8))であって,これらにかえて,或いはこれらに加えて,ジクロフェナクナトリウムの「良好な放出性及び経皮吸収性」(本件特許明細書段落【0004】)のために,(b)?(d)に相当する三成分を全て同時に組み合わせ含有せしめることについては,甲第5号証中で何ら記載も示唆もされていない。 よって,引用発明5に対し,少なくとも上記相違点5に係る構成を具備せしめることについて,甲第5号証に基づき当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (イ-2)甲第1,2,3,4,7,8号証の記載に基づく検討 上の(イ-1),ならびに1-2-2.(3)(ア)?(イ)(イ-5),1-2-4.(3)(ア),1-2-5.(ア)?(イ)(イ-1)で検討したとおり,油性の貼付剤における粘着膏体基剤中の薬物として「(a)ジクロフェナクナトリウム」を採用するとともに,当該成分(a)の溶解性或いは経皮吸収促進性を改善し,以て成分(a)の良好な放出性及び経皮吸収性を得るために,基剤中に成分(b)?(d)を併せて含有せしめることについては,甲第5号証或いは他の標記各甲号証のいずれからも,そのような記載乃至示唆を見出すことはできない。 そして,仮に,引用発明5やその他各甲号証の貼付剤において,貼付剤中のジクロフェナクナトリウムの溶解性や経皮吸収性のより一層の向上が当然の技術課題として当業者に認識されており,当該課題の達成のため,引用発明5の貼付剤の粘着膏体基剤中に含有せしめる既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の適切な組み合わせを検討することについて,特段の阻害事由がなかったとしても,また,仮に甲第14,15号証の記載を併せて勘案し得たとしても,上述のとおり,特にSIS粘着基剤及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に,ジクロフェナクナトリウムと共に(b)?(d)に相当する三成分を全て組み合わせて含有せしめることについて特段の記載も示唆もない甲1,2,3,4,6,8号証を以ては,引用発明5の貼付剤の粘着膏体基剤中に,種々の既知の溶解剤或いは経皮吸収促進剤の中から特に成分(b),(c)及び(d)を選択して組合せ併用する点を特徴として具備せしめることで,そうでない場合と比較して成分(a)の溶出性及び経皮吸収性において顕著な向上が現実にもたらされる,ということは,1-2-2.(3)(イ)(イ-6),1-2-4.(3)(イ)或いは1-2-5.(3)(イ)(イ-2)で引用発明1,2或いは3を主引例とした場合について述べたのと同様,当業者にとり到底想到し得なかったというべきである。 (ウ)本件特許発明1の効果について そして,1-2-2.(3)(エ)で述べたとおり,本件特許発明1は,引用発明5に対し,特に上記相違点5に係る構成を具備することで,本件特許明細書の試験例1,2の結果としての図1,2から明らかなように,成分(b)?(d)のいずれかを含まない場合(比較例1?6)と比較して,成分(a)の放出性又は経皮吸収性において,顕著に優れた効果を奏するものである。 (4)小括 以上,(3)で述べたとおり,本件特許発明1は,甲第5号証に記載された発明,或いは,甲第5号証に記載された発明と甲第1,2,3,4,7,8号証のいずれか一又は二以上の組合せ,によっては,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,請求人の上記(1)の主張は認容できず,標記無効理由(2)(d)には理由がない。 1-3.本件特許発明2?4について 請求人は (1) 本件特許発明3,4が甲第1号証に記載されたものであるから新規性がなく,特許法第29条第1項第3号の規定により無効とされるべきものである(1-2-1.(1)で主張されている無効理由(1)(a)と同趣旨。), とも主張する([3])。[審判請求書の第48頁(ウ)(i)中の「丸数字1 新規性について」,同第52頁(エ)(i)中の「丸数字1 新規性なし」等] また,請求人は (2) 本件特許発明2?4が, (a)甲第1号証と,甲第2,3,4,7又は8号証との組合わせ, (b)甲第2号証と,甲第1,3,4,7又は8号証との組合わせ, (c)甲第3号証と,甲第1,2,4,7又は8号証との組合わせ, (d)甲第5号証と,甲第1,2,3,4,7又は8号証との組合わせ, のいずれかに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるからいずれも進歩性がなく,特許法第29条第2項の規定により無効とされるべきものである(1-2-2.(1),1-2-4.(1),1-2-5.(1),1-2-6(1)で主張されている無効理由(2)(a),(2)(b),(2)(c),(2)(d)と同趣旨。), とも主張する([3])。[審判請求書の第40?56頁中の(イ)(i)?(iv),(ウ)(i)「丸数字2 進歩性について」?(iv),(エ)(i)「丸数字2 進歩性なし」?(iv)等] しかしながら,本件特許の請求項2?4は,いずれも請求項1,又は請求項1を引用した請求項を引用したものであって,本件特許発明2?4は本件特許発明1の発明特定事項をそのまま,又はこれを限定して含むものであるから,1-2-1.,1-2-2.,1-2-4.?1-2-6.において検討したのと同様の理由により,本件特許発明2?4に係る上記無効理由(1),(2)については,いずれも理由がない。 2.記載要件に係る無効理由について 2-1.関連甲号証の記載,及び請求人の主張 (1)関連甲号証の記載事項(下線は,当審による。) (1-1)甲第9号証 (1-1-1)第491頁左欄下から第2行?右欄第20行 『 しぼうさん 脂肪酸[・・・] カルボキシル基1個をもつカルボン酸RCOOHのうち鎖式構造をもつものと総称して脂肪酸という.直鎖構造のものとアルキル基に側鎖のあるものとがあり,また飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある. 存在 パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸など,炭素数の多い酸はグリセリンエステルとして油脂を構成し,広く動物脂肪や植物油の成分として算出する.・・・もっと炭素数の少ない脂肪酸も遊離酸の状態で,あるいは塩やエステルとして天然に存在するものが多い. ・・・ 』 (1-1-2)第492頁表「脂肪酸(直鎖構造をもつ代表的な酸)」 表上段には「飽和脂肪酸 CH_(3)(CH_(2))_(n)COOH」の例として「ギ酸(式:HCOOH)」から「ラクセル酸(式:C_(31)H_(63)COOH」まで,(1-1-1)で例示された「パルミチン酸(式:C_(15)H_(31)COOH」や「ステアリン酸(式:C_(17)H_(35)COOH)」を含む27種の脂肪酸がその化学式や沸点或いは融点等の物性と共に挙げられており,下段には「不飽和脂肪酸」の例として「アクリル酸(式:CH_(2)=CHCOOH)」や(1-1-1)で例示された「オレイン酸(式:C_(17)H_(33)COOH(cis)」を含む15種類の脂肪酸がその化学式や不飽和結合の位置,ならびに沸点又は融点と共に記載されている。 (1-2)甲第10号証 第239頁下から第6行?第240頁第2段落 『 5.3 非イオン界面活性剤 5.3.1 多価アルコールの脂肪酸エステル (1)グリセリン誘導体 ・・・・・・ グリセリンの脂肪酸エステルとしては,モノ脂肪酸エステルの他に,ジ脂肪酸エステル(ジグリセリド)とトリ脂肪酸エステル(トリグリセリド)があるが両者とも水に対する溶解性が悪く,一般に界面活性剤としてのグリセリン脂肪酸エステルをいう場合はモノ脂肪酸エステルをさす.』 (1-3)甲第11号証 日本エマルジョン株式会社の製品「EMALEX GMS-F」について,その「組成」が「親油型モノステアリン酸グリセリン」であり,「特徴・主用途」が「親油性乳化剤」であること等が記載されている。 (1-4)甲第12号証 日本エマルジョン社の製品「EMALEX KTG」について,その「組成」が「トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン」であり,「特徴・主用途」が「油相原料」であること等が記載されている。 (1-5)甲第13号証 (1-5-1)第2頁上段第3?10行 『 NIKKOL Sefsolは,難溶性薬剤の溶解剤として開発された多価アルコール中鎖脂肪酸エステルです。エステル化度によりさまざまな極性をもっており,天然油脂やワセリン,流動パラフィンに比べ,薬剤の溶解性に優れています。またNIKKOL Sefsolの種類によりクリームからの薬剤放出性をコントロールすることができます。 NIKKOL Sefsol-218,228,220はプロピレングリコール脂肪酸エステルとして,NIKKOL Sefsol-318,618,668はグリセリン脂肪酸エステルとして,さらにNIKKOL Sefsol-418はソルビタン脂肪酸エステルとして食品添加物公定書に収載されている中鎖脂肪酸エステルです。』 (1-5-2)第2頁下段「I.NIKKOL Sefsolの特徴」 『 ・難溶性薬剤の溶解性に優れています。 ・薬剤の放出性をコントロールすることができます。 ・各種油相成分や溶剤との相溶性に優れています。 ・飽和脂肪酸エステルのため酸化安定性に優れています。 ・低粘性で延展性に優れています。 ・さまざまな極性の品種があるため目的に応じて選択することができます。』 (1-5-3)第3頁 表1「NIKKOL Sefsolの種類と性状」 「Sefsol-218」(モノカプリル酸プロピレングリコール),「Sefsol-228」(ジカプリル酸プロピレングリコール」,「PDD(Sefsol-220)」(ジカプリン酸プロピレングリコール),「Sefsol-318」(モノカプリル酸グリセリン),「Sefsol-418」(モノカプリル酸ソルビタン),「Sefsol-618」(モノカプリル酸テトラグリセリン),及び「Sefsol-668」(ヘキサカプリル酸テトラグリセリン)について,その5℃,25℃での各性状やIOB(Inorganic Organic Balance)値等が記載されている。 (1-5-4)第4頁上?中段「IV.NIKKOL Sefsolの各種溶媒との相溶性」 表2「NIKKOL Sefsolの相溶性」には,上記7種類の「Sefsol」製品について,流動パラフィン,大豆油,ミリスチン酸イソプロピル,無水エタノール,プロピレングリコール,グリセリン,水を溶媒とした場合の相溶性に関する観察結果が記載されており,「NIKKOL Sefsol-218,228,318が流動パラフィンやエタノールに相溶すること,,NIKKOL Sefsol-218,318,618がプロピレングリコールに相溶すること等が示されている。 (1-5-5)第4頁下段?第5頁中段「V.NIKKOL Sefsolに対する各種薬剤の溶解度」 表3「NIKKOL Sefsolの薬剤溶解性(重量%)」には,サリチル酸,プレドニゾロン,インドメタシン等12種類の様々な薬剤の上記7種類の「Sefsol」に対する溶解性についての試験結果が記載されており,各「NIKKOL」製品が広範な薬剤に対して良好な溶解性を示すこと,特にNIKKOL Sefsol-218,318,418は溶解性の悪いプレドニゾロンを含め,試験を行った全ての薬剤を溶解することができる旨記載されている(第4頁下段下から第4?2行) (2)請求人の主張について 請求人は,上の甲第9?13号証を提示するとともに,概要以下の(i)?(iii)の主張(審判請求書第56?59頁ウ(ア),口頭審理陳述要領書第17?19頁イ(ア)?(エ))を理由として,本件特許の請求項1?4については当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず(無効理由(3)(a)),同請求項1?4はサポート要件を満たしていない(無効理由(3)(b)),としている([3])。 (i) 請求項1に記載される「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」に関し,特許明細書の発明の詳細な説明では「・・・当該多価アルコール脂肪酸エステルは,ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤として作用するものであり・・・」(特許明細書段落【0009】とされているところ,甲第9?12号証の記載のとおり,当該「多価アルコール脂肪酸エステル」としては,多価アルコール部位の構造や脂肪酸部位の構造の相違により極めて多種類の化合物がこれに含まれ,同じ「多価アルコール脂肪酸エステル」であっても,エステル結合する脂肪酸の種類や数等が異なれば化学物質としての性質は大きく異なることは,当業者にとり技術常識である。 そうすると,請求項1の「多価アルコール脂肪酸エステル」に包含されるあらゆるものが「ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤として作用するもの」に該当するとはいえない。 (ii) また,そのような「ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤として作用する」多価アルコール脂肪酸エステルとしては,薬物の経皮吸収促進剤として周知である中鎖脂肪酸モノグリセリド(甲第8号証)ぐらいしか認めることができない。 (iii) 仮に,請求項1に係る発明が解決しようとする課題が,「(b)2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン,(c)多価アルコール脂肪酸エステル及び(d)クエン酸、酒石酸及びコハク酸から選ばれる有機酸」の3種の組合せによる「(a)ジクロフェナクナトリウム」の経皮吸収性の予期せぬ向上等であるとしても,そのような予期せぬ課題を解決した実施例としては,成分(b)として2-ピロリドン,成分(c)としてグリセリン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ製)である「セフソール」(甲第13号証からみて「Sefsol-318」のモノカプリル酸グリセリンのことである。),及び成分(d)としてクエン酸の組合せ例が唯一特許明細書中に開示されているに過ぎず,かかる組合せ以外を用いた態様については,当業者にとってもその範囲が自ずと特定できるものではない。 よって,請求項1に包含される発明中,上記唯一の組合せ以外の態様については,発明を実施することができるように特許明細書が記載されているとは認められず,また,そのような態様を包含する請求項1に係る発明が,ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収性の予期せぬ向上をなる課題を解決できるとも認められない。 2-2.請求項1に係る無効理由(3)(a)及び(3)(b)について (1)はじめに 本件特許明細書における,請求項1に係る発明の目的,即ち同発明により解決されるべき技術課題は,例えば段落【0004】の記載にみられるとおり,「ジクロフェナクナトリウムの良好な放出性及び経皮吸収性の両者を具備した貼付剤を提供すること」である。 そして,本件特許明細書の例えば段落【0005】?【0006】の記載から理解できるとおり,また,上の例えば1-2-2.(3)(イ)(イ-6)の検討結果からも理解できるとおり,当該技術課題を解決するための本件特許発明1の特徴は,例えば成分(b)?(d)中のいずれか一の特定成分の選択にあるのではなく,特にSIS粘着基剤及び粘着付与剤を含有する粘着膏体基剤中に配合する成分として,溶解剤又は吸収促進剤として公知又は周知であった様々な化合物成分群の中から特定の成分(b)?(d)の組合せを見出した点にあるものと認められる。 さらに,本件特許明細書には,そのような特徴を具備する請求項1に係る発明の例として,実施例1,2等の貼付剤が,成分(b)?(d)のいずれか又は二以上を含有しない比較対照の貼付剤(比較例1?6)と比較して,成分(a)即ちジクロフェナクナトリウムの溶出性或いは経皮吸収性(皮膚透過性)において顕著に向上したことが具体的に示されている(図1,2)。 以上の本件特許明細書及び図面の記載を踏まえると,本件の請求項1に係る発明について本件特許明細書及び図面の記載が請求人のいう実施可能要件ならびにサポート要件に係る記載要件を満たしているか否かの判断は, (1-1) 請求項1に包含される成分(b)?(d)の組合せ方のうち,上記実施例と同様の成分(a)の溶出性或いは経皮吸収性の向上をもたらし得る,同実施例で採用されている以外の成分(b)?(d)の組合せ方を採用することを,発明の詳細な説明の記載,及び要すれば出願時の技術常識に基づき,当業者が理解しかつ実施し得たといえるか否か(実施可能要件), ならびに, (1-2) 請求項1に包含される成分(b)?(d)の組合せ方のうち,上記実施例で採用されている以外の組合せ方を採用した場合でも上述の発明の技術課題が解決できることが,要すれば出願時の技術常識に照らし,発明の詳細な説明の記載により当業者が認識し得たといえるか否か(サポート要件), によることとなる。 そこで,これら(1-1),(1-2)の観点から,以下,成分(b)?(d)に関する発明の詳細な説明の記載ならびに本件出願当時の技術常識等について検討し((2),(3)),それら検討の結果を踏まえ判断する((4))。 (2)発明の詳細な説明の記載 (2-1) 成分(b)について 本件特許明細書には,『 ・・・本発明は、粘着膏体基剤中に、ジクロフェナクナトリウム、ピロリドン又はその誘導体、多価アルコール脂肪酸エステル及び有機酸を含有する油性の鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤を提供するものである。』,との記載がみられ(段落【0006】),ここでいう「ピロリドン又はその誘導体」として『・・・2-ピロリドン及びN-アルキル-2-ピロリドンが挙げられ、特に2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンが好ましい。これらのピロリドン又はその誘導体は、ジクロフェナクナトリウムの溶解剤として作用するものであり、膏体層中に0.5?8.0重量%、特に1.0?5.0重量%含有させるのが好ましい。』,とも記載されている(段落【0008】)。 即ち,発明の詳細な説明には,成分(a)の溶解剤である成分(b)として,実施例で採用されている2-ピロリドンのみならずN-メチル-2-ピロリドンも好ましく使用できることが,使用時の好ましい配合割合と共に,具体的に記載されているといえる。 (2-2) 成分(c)について 本件特許明細書には,『多価アルコール脂肪酸エステルとしては、2?4価アルコールの脂肪酸エステル、例えばグリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。より具体的にはグリセリンモノC_(6)-C_(18)脂肪酸エステル、エチレングリコールモノC_(6)-C_(18)脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノC_(6)-C_(18)脂肪酸エステル、ソルビタンモノC_(6)-C_(18)脂肪酸エステル、プロピレングリコールジC_(6)-C_(18)脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラC_(6)-C_(18)脂肪酸エステル等が挙げられる。このうち、グリセリン脂肪酸エステル(例えばトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル)、エチレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル(例えばテトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えばモノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール)がより好ましい。このうち、さらにプロピレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。また市販品としてはセフソール(日光ケミカルズ社)が挙げられる。当該多価アルコール脂肪酸エステルは、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤として作用するものであり、これらは2種以上を併用してもよく、膏体層中に0.2?10.0重量%、特に0.5?5.0重量%含有させるのが好ましい。』(段落【0009】),といった記載もなされている。 即ち,発明の詳細な説明には,成分(a)の経皮吸収促進剤である「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」として,実施例で採用されている「セフソール」或いは甲第8号証の「中鎖脂肪酸モノグリセリド」以外にも,同様の経皮吸収促進性を付与し得る他の種々の化合物成分を採用し得ることが,当該他の化合物の種々の例ならびに使用時の好ましい配合割合と共に,具体的に記載されているといえる。 (2-3) 成分(d)について 本件特許明細書には,『有機酸としては、炭素数3?6のジ又はトリカルボン酸が挙げられ、具体的にはクエン酸、酒石酸、コハク酸が好ましい。当該有機酸は、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収促進剤として作用するものであり、これらは2種以上を併用してもよく、膏体層中に0.05?4.0重量%、特に0.1?2.0重量%含有させるのが好ましい。 ・・・多価アルコール脂肪酸エステルと有機酸の重量比は1:20?200:1、特に1:4?50:1とするのが好ましい。また、これら多価アルコール脂肪酸エステルと有機酸の合計含有量は、膏体層中、0.25?14重量%、特に0.6?7重量%が好ましい。』(段落【0010】?【0011】),とも記載されている。 即ち,発明の詳細な説明には,成分(a)の経皮吸収促進剤である成分(d)として,実施例で採用されているクエン酸のみならず酒石酸又はコハク酸も好ましく使用できることが,その好ましい配合割合や成分(c)との好ましい配合比と共に,具体的に記載されているといえる。 (3)成分(b)?(d)に関する技術常識等について (3-1) 成分(b)について 特に「(a)ジクロフェナクナトリウム」用としてではないものの,成分(b)のうち,実施例で採用されている2-ピロリドンのみならずN-メチル-2-ピロリドンもまた,単独又は他成分との併用下で溶解剤或いは経皮吸収促進剤としての性質を有することは,例えば請求人が提示した甲第2,8,14号証(摘記(ii-1)?(ii-2),(viii-1)?(viii-2),(ix))の記載にみられるとおり,本件特許出願時当業者にとり技術常識であったと認められる。 (3-2) 成分(c)について そもそも,「多価アルコール脂肪酸エステル」については,その「多価アルコール」部位,「脂肪酸」部位,及び両者の結合部位である「エステル」部位のいずれも,一般に各部位に該当する化学構造の各範囲を当業者が容易に把握し得るものであることから,それら各部位を含む全体の「多価アルコール脂肪酸エステル」としてどのような化学構造の化合物がこれに包含されるかは,元々当業者が容易に理解できることである。 また,例えば第8号証の「中鎖脂肪酸モノグリセリド」(請求人の主張(1)(ii)),甲第13号証の「Sefsol-318」(モノカプリル酸グリセリン)(請求人の主張(1)(iii))以外にも,同甲第13号証にプロピレングリコール脂肪酸エステルである「Sefsol-218」(モノカプリル酸プロピレングリコール)等が記載されており(表1),また,甲第3号証に「・・・グリセリン脂肪酸エステル,プロピレングリコール脂肪酸誘導体・・・」が挙げられている(上の摘記(iii-5)段落【0032】)等,本件特許明細書の段落【0009】で例示されている化合物とも重複する「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」に相当する成分についても,様々なものが経皮吸収促進剤として,本件特許出願時当業者にとりよく知られていたものとも認められる。 しかも,同甲第3号証には,例えば段落【0032】において単に「グリセリン脂肪酸エステル」と記載されている一方,その例として「グリセロールモノオレエート(グリセリンモノオレエート)」(第8頁段落【0045】「実施例2」,第10頁段落【0056】「実施例9」)が採用されており,段落【0032】において単に「プロピレングリコール脂肪酸誘導体」と記載されている一方,その例として「プロピレングリコールモノラウレート」(第8頁段落【0044】「実施例1」,第9?10頁段落【0055】「実施例8」)や「プロピレングリコールモノオレエート」(第9頁段落【0054】「実施例7」)が採用されていることから,多価アルコール部位或いは脂肪酸部位の構造が厳密に規定されていなくとも,それら「・・・ポリオキシエチレン誘導体,グリセリン脂肪酸エステル,プロピレングリコール脂肪酸誘導体・・・」で規定される範囲内の成分で,経皮吸収促進という点においてある程度共通するものがあることも,本件特許出願時以前から,当業者にとり既に認識されていたことであったと理解できる。 (3-3) 成分(d)について さらに,成分(d)についても,ジクロフェナクナトリウムに対する経皮吸収促進性を有することは甲第4号証に記載されているとおり既に知られていたことであるし,また,特に第3頁右下欄中段の「・・・ジクロフェナックナトリウムに有機酸を共存させることにより、感圧性接着材料層への溶解度が高まり、且つバリヤー機能を有する角質層を容易に透過することが出来るものと考えられる。」(上の摘記(iv-5))との記載から,有機酸を共存させることによりジクロフェナクナトリウムが親油性であるジクロフェナク(フリー体)となって経皮透過性が高まるのであろう,といった,請求項1の「(d)クエン酸・・・から選ばれる有機酸」により共通して奏される作用機序が存在すると推測されることも,本件特許出願時において当業者が容易に理解し得たことである。 (4)判断 (4-1) 実施可能要件について 本件特許明細書及び図面における実施例に係る記載,及び上の(2)で挙げた事項を含む発明の詳細な説明の記載,ならびに,要すれば上の(3)で挙げた(b)?(d)相当成分に関する本件特許出願時の技術常識等を併せて勘案すれば,請求項1に含まれる貼付剤のうち,本件特許明細書の実施例で採用されている以外の成分(b)?(d)の組合せに係るものであっても,本件特許明細書中で挙げられているような,実施例で採用されているものと化学構造及び性状等において各々類似する成分同士を組み合わせて採用すれば,実施例の貼付剤におけると同様の成分(a)の放出性又は経皮吸収性の向上がみられるであろうことは,当業者にとり十分に理解し得たことであるし,また,そのような理解に基づき,実施例で採用されている成分(b)?(d)と同様の溶解性或いは経皮吸収促進性を付与し得ると推測される化合物成分の組合せ態様を検討,選択し採用することで,実施例の貼付剤と同様のジクロフェナクナトリウムの放出性及び経皮吸収性を示す貼付剤を提供することは,当業者が許容される程度を超える試行錯誤等を伴うことなく実施し得たことというべきである。 特に,成分(c)については,仮に,第9?12号証を引用してなる上記(1)(i)の請求人主張のとおり,「多価アルコール脂肪酸エステル」に含まれる化合物として化学構造や性状等において様々に異なるものが存在するとしても,本件特許明細書中の実施例で採用されている「セフソール(グリセリン脂肪酸エステル)」以外のもの,或いは,請求人が挙げている(1)(ii)の「中鎖脂肪酸モノグリセリド」や(1)(iii)の「Sefsol-318」(モノカプリル酸グリセリン)以外のもので,同様の成分(a)の溶解性或いは経皮吸収性への寄与を行わせしめ得る「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」に相当する化合物成分を選択し採用することは,上記(2-2)及び(3-2)の検討結果からみると,当業者にとり過度の試行錯誤等を要したことともいえない。 よって,発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしていない,とはいえない。 (4-2) サポート要件について また,本件特許明細書及び図面の実施例の項で調製されているもの以外の成分(b)?(d)の組合せに係るものであっても,上の(2)で挙げた事項を含む発明の詳細な説明の記載,ならびに,要すれば上の(3)で挙げた(b)?(d)相当成分に関する本件特許出願当時の技術常識等を踏まえつつ,実施例で採用されているものと化学構造及び性状等において各々類似する成分同士を組み合わせて採用すれば,実施例の貼付剤と同様,「ジクロフェナクナトリウムの良好な放出性及び経皮吸収性を具備した貼付剤の提供」(本件特許明細書の段落【0004】),という技術課題は達成し得るものと考えるのが相当である。そして,そのように考えることが不合理であるとする特段の理由も見出せない。。 よって,本件特許明細書及び図面がサポート要件を満たしていない,ともいえない。 2-3.請求項2?4に係る無効理由(3)(a)及び(3)(b)について 請求項2は,請求項1の貼付剤における成分(a)?(d)の各含有割合を特定の範囲に限定したものであるところ,そのような各含有割合を採用することについては,特許明細書の段落【0007】?【0010】に記載されており,特に成分(c)と(d)の好ましい含有比及び合計含有量についても,段落【0011】に記載されている(2-2.(2)(2-1)?(2-3)も参照のこと。)。 請求項3は,請求項1又は2の貼付剤におけるスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ならびに粘着付与剤の各含有割合を特定の範囲に限定したものであるところ,そのような各含有割合を採用することについては,特許明細書の段落【0012】?【0013】に記載されている。 さらに,請求項4は,請求項1?3のいずれかの貼付剤における成分(c)を「グリセリン脂肪酸エステル,エチレングリコール脂肪酸エステル,ペンタエリスリトール脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステル」に限定したものであるところ,2-2.(2)で検討したとおり,これら特定の「(c)多価アルコール脂肪酸エステル」を採用することについては,特許明細書の段落【0009】に記載されている(2-2.(2)(2-2)も参照のこと。)。 そして,これら請求項2?4の限定要件に関する上述の各段落の記載,及びそれら限定要件の全てを満たす実施例1?4の組成に関する記載(段落【0020】の表1)を含む本件特許明細書及び図面の記載,ならびに,2-2.の請求項1に関する記載要件についての検討・判断を踏まえれば,請求項1に係る貼付剤の構成成分に関しより好ましく明確な限定が付されたものである請求項2?4についてもまた,請求項1についてと同様,本件特許明細書及び図面の記載が実施可能要件及びサポート要件を満たすものであることは明らかである。 2-4.小括 以上,2-2.?2-3.で検討・判断したとおり,2-1.の請求人の主張(i)?(iii)はいずれも認容できず,本件請求項1?4に係る無効理由(3)(a),(3)(b)については,いずれも理由がない。 3.むすび 以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明の特許を無効とすることができない。また,他にこれら発明の特許を無効にすべき理由を発見しない。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2012-10-31 |
出願番号 | 特願2001-154008(P2001-154008) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Y
(A61K)
P 1 113・ 536- Y (A61K) P 1 113・ 537- Y (A61K) P 1 113・ 113- Y (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平林 由利子、前田 佳与子 |
特許庁審判長 |
内田 淳子 |
特許庁審判官 |
大久保 元浩 岩下 直人 |
登録日 | 2011-11-18 |
登録番号 | 特許第4865958号(P4865958) |
発明の名称 | 鎮痛抗炎症局所作用型の貼付剤 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 佐野 惣一郎 |
代理人 | 新山 雄一 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 北村 明弘 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |