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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1267493
審判番号 不服2012-13420  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-13 
確定日 2012-12-13 
事件の表示 特願2007-339267「シート搬送装置、及び画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月23日出願公開、特開2009-161261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成19年12月28日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、平成23年12月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「シートの幅方向の中央においてシートの位置合わせを行うシート搬送装置であって、
第1の幅を有するシートと上記第1の幅よりも広い第2の幅を有するシートを載置可能な載置部と、
上記載置部の基準位置に載置されたシートを当該シートの幅方向と直交する所定の搬送方向に搬送する搬送体と、
上記シートの幅を判別するシート幅判別手段と、を具備し、
上記シート幅判別手段は、上記載置部の第1の位置におけるシートの有無を検知する第1検知手段と、上記載置部の第2の位置におけるシートの有無を検知する第2検知手段と、を備え、
上記シートの幅方向において、上記第1の位置は、上記基準位置にシートが載置された状態において上記第1の幅の内側に設定され、上記第2の位置は、上記基準位置にシートが載置された状態において上記第1の幅の外側であって、且つ上記第2の幅の内側に設定され、
上記所定の搬送方向において、上記第2の位置が上記第1の位置よりも上流側に設定されているシート搬送装置。」

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の日前に頒布された刊行物である特開2005-263344号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(a)「【請求項1】
用紙載置部上にセットされた用紙を1枚ずつ繰出し、用紙搬送路に向け給送する為の給紙装置であって、
上記用紙載置部上には、用紙有無判別センサと、複数の用紙幅検出センサとが幅方向に並設され、用紙有無判別センサが複数の用紙幅検出センサよりも用紙搬送方向で下流側に位置することを特徴とする給紙装置。」(【特許請求の範囲】参照)

(b)「【技術分野】
本発明は、原稿や記録紙を1枚ずつ繰出し、用紙搬送路を経て画像読取部や記録部に給送する為の給紙装置に関し、更に詳しくは、ファクシミリ、複写機、プリンタ或いはこれらを複合した所謂複合機における原稿や記録紙の自動給紙装置に関する。」(段落【0001】参照)

(c)「【背景技術】
上記装置においては、画像読取制御や記録制御の為に、給送される原稿や記録紙の有無及びサイズが事前に認識される必要がある。その為、自動原稿送り装置(ADF)の原稿トレイや記録紙用手差しトレイ(フリートレイ)には、用紙有無判別センサと複数の用紙幅検出センサとが並設されており、用紙をこれらトレイにセットした時に、用紙の有無判別及びサイズ検出がなされる。特許文献1は、ファクシミリ装置における原稿幅検出装置に係るものであり、その図3及び図4には、原稿有無センサと複数の原稿幅センサとが原稿セット部(原稿トレイ)上に並設された例が示されている。
【特許文献1】実開平5-9076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に開示された原稿幅検出装置では、1個の原稿有無判別センサと、3個の原稿幅検出センサ(但し、1個は原稿有無判別センサを兼ねる)とが幅方向に直線的に並設されている。原稿有無判別センサは、いずれのサイズの原稿であっても、原稿トレイに置かれ場合は必ずオンとなる位置に設置され、原稿幅検出センサは各原稿サイズに対応する位置に設置されている。従って、原稿幅サイズの判定は、原稿有無判別センサがオンであることが前提となる。この場合、原稿有無判別センサと、最大幅検出センサ(例えば、A3幅検出センサ)とは、原稿トレイの中心線を挟んで最も離れた位置関係に配置されることになる。而して、操作者が、例えばA3原稿を原稿トレイ上に斜めにセットしたような場合、原稿有無判別センサ(A4幅検出センサを兼ねる)及びB4幅検出センサはオンとされるが、A3幅検出センサはオフとなり、A3原稿であるにも拘わらず、原稿幅はB4であると誤った判定がされることがある。」(段落【0002】?【0003】参照)

(d)「原稿載置部2と、ピックアップローラ3及び原稿分離手段4とにより、本発明の給紙装置Aが構成されるが、これを図2により更に詳細に説明する。原稿載置部2の一側辺部(白抜矢示の原稿給送方向に向かって右側)には原稿ガイド壁2cが突設され、その内面(左側面)が基準面2dとされている。即ち、本給紙装置Aは、右側基準タイプであり、原稿Dはこの基準面2dに添うよう原稿載置部2上にセットされる。原稿載置部2上の基準面2dの近傍位置には原稿(用紙)有無判別センサ19が、また、基準面2dより幅方向に離れた位置に3個の原稿(用紙)幅検出センサ20、21、22がこの順序で並設されている。
図例の原稿載置部2は、扱える原稿の最大サイズが、A3縦又はA4横であることを示し、ここにおいて、原稿幅検出センサ20はA4縦(A5横)原稿の検出センサ、原稿幅検出センサ21はB4縦(B5横)原稿の検出センサ、原稿幅検出センサ21はA3縦(A4横)原稿の検出センサであることを夫々示す。前記原稿幅検出センサ20は基準面2dから210mm内の位置に、原稿幅検出センサ21は基準面2dから256mm内の位置に、原稿幅検出センサ22は基準面2dから297mm内の位置に、夫々配置されている。したがって、基準面2dに添うよう原稿トレイ2b上に置かれた原稿による各センサ19?22のオン・オフパターンに基づき、以下のように原稿の幅サイズが判定される。すなわち、
(1)センサ19がオフの場合、原稿がまだ置かれていない、
(2)センサ19がオン、その他のセンサがオフの場合、A4縦又はA5横より小さい原稿である、
(3)センサ19及びセンサ20がオン、その他のセンサがオフの場合、A4縦又はA5横原稿である、
(4)センサ19、センサ20及びセンサ21がオン、センサ22がオフの場合、B4縦又はB5横原稿である、
(5)全てのセンサがオンの場合、A3縦又はA4横原稿である、
と判定される。」(段落【0018】?【0019】参照)

(e)「因みに、図2の想像線で示す位置S1、S2、S3は、原稿幅検出センサ20、21、22に対応する従来のセンサの設置位置であり、原稿有無判別センサ19と横一直線状に並んでいることを示す。この場合、図のようにA3縦(A4横)原稿Dが斜めに置かれると、S1、S2に対応するセンサはオンとなるが、S3に対応するセンサはオフのままとなる場合がある。従って、原稿Dは、B4縦若しくはB5横原稿と判定されてしまうことになる。図例のように片側(右側)基準の場合は、センタ基準の場合に比べ、原稿有無判別センサと最大原稿(A3)幅検出センサとの距離が大きくなり、原稿が斜めに置かれたことによる誤ったサイズ判定の発生頻度が高くなるが、原稿有無判別センサ19を下流側にずらせておけば、このようなトラブル発生を未然に防ぐことができ、センタ基準の場合はもとより、片側基準の原稿載置部を備えた給紙装置において特に有効である。」(段落【0022】参照)

以上の記載によると、引用例には、
「用紙載置部上にセットされた用紙を1枚ずつ繰出し、用紙搬送路に向け給送する為の給紙装置であって、
上記用紙載置部上には、用紙有無判別センサと、複数の用紙幅検出センサとが幅方向に並設され、用紙有無判別センサが複数の用紙幅検出センサよりも用紙搬送方向で下流側に位置する給紙装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「給紙装置」、「用紙」及び「用紙載置部」は、それぞれ本願発明の「シート搬送装置」、「シート」及び「載置部」に相当し、
引用発明は、複数の用紙幅の検出を行う給紙装置であるので、その用紙載置部は、第1の幅を有する用紙と上記第1の幅よりも広い第2の幅を有する用紙を載置可能なものと認められ、
引用発明は、用紙載置部上にセットされた用紙を1枚ずつ繰出し、用紙搬送路に向け給送するものであるから、本願発明でいう「載置部に載置されたシートを当該シートの幅方向と直交する所定の搬送方向に搬送する搬送体」を具備することは明らかである。
また、引用発明の「用紙有無判別センサ」及び複数の「用紙幅検出センサ」は、何れも用紙の有無を検出し、本願発明のシートの幅を判別する「シート幅判別手段」を構成し、
上記記載事項(d)も参酌すると、引用発明の「用紙有無判別センサ」は、複数の「用紙幅検出センサ」が検出の対象としているそれぞれの用紙より小さい用紙(本願発明の「第1の幅を有するシート」に相当。)の幅の内側に配置され、複数の「用紙幅検出センサ」は、検出の対象としているそれぞれの用紙(本願発明の「第2の幅を有するシート」に相当。)の幅の内側に配置されているものと認められる。ここで、本願発明でいう「基準位置」について検討すると、本願明細書の段落【0051】及び図3の記載からすると、原稿が斜めではなく適正に載置部に載置される位置をいうものと認められることから、上記認定した引用発明での「用紙有無判別センサ」及び複数の「用紙幅検出センサ」の配置は、何れも本願発明でいう「基準位置」に用紙が載置された状態で設定されたものといえる。
そして、引用発明において、「用紙有無判別センサ」が複数の「用紙幅検出センサ」よりも用紙搬送方向で下流側に位置することから、引用発明の「用紙有無判別センサ」及び複数の「用紙幅検出センサ」のいずれか1つは、それぞれ本願発明の「第1検知手段」及び「第2検知手段」に相当し、また、それぞれ本願発明でいう「第1の位置」及び「第2の位置」に備えられているといえる。
よって、両者は、
「シート搬送装置であって、
第1の幅を有するシートと上記第1の幅よりも広い第2の幅を有するシートを載置可能な載置部と、
上記載置部の基準位置に載置されたシートを当該シートの幅方向と直交する所定の搬送方向に搬送する搬送体と、
上記シートの幅を判別するシート幅判別手段と、を具備し、
上記シート幅判別手段は、上記載置部の第1の位置におけるシートの有無を検知する第1検知手段と、上記載置部の第2の位置におけるシートの有無を検知する第2検知手段と、を備え、
上記シートの幅方向において、上記第1の位置は、上記基準位置にシートが載置された状態において上記第1の幅の内側に設定され、上記第2の位置は、上記基準位置にシートが載置された状態において上記第1の幅の外側であって、且つ上記第2の幅の内側に設定され、
上記所定の搬送方向において、上記第2の位置が上記第1の位置よりも上流側に設定されているシート搬送装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点;本願発明では、搬送装置が、シートの幅方向の中央においてシートの位置合わせを行うものであるのに対し、引用発明では、給紙装置は、用紙の位置合わせの基準についての特定がない点。

4.判断
そこで、上記相違点について検討すると、
引用例には、その実施例等として用紙をその片側に合わせる「片側基準」の場合が記載されているものの、「センタ基準の場合はもとより、片側基準の原稿載置部を備えた給紙装置において特に有効である」(上記記載事項(e)参照)と記載されているように、「センタ基準」の場合、すなわちシートの幅方向の中央においてシートの位置合わせを行う場合にも引用発明を用いることができることが示唆されていること及び、原稿幅の検出を行う給紙装置において、「センタ基準」とすることは、引用例の従来技術としても記載されている(上記記載事項(c)参照)ように周知の技術でもあるので、
引用発明の給紙装置を、シートの幅方向の中央においてシートの位置合わせを行うものとし、上記相違点の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

なお、平成23年12月22日付け意見書の第2頁に「一方、引用発明では、上記中央位置は、引用文献1の図2より、ピックアップローラ3の幅方向における中央です。すると、引用発明では、上記中央位置に対して幅方向の外側に位置する原稿有無判別センサ19が、幅方向の内側に位置する原稿幅検出センサ20、21よりも搬送方向の下流側に配置されています。また、引用文献1の図2では、原稿幅検出センサ22は原稿有無判別センサ19よりも搬送方向の上流側に配置されていますが、原稿有無判別センサ19と原稿幅検出センサ22とは上記中央位置から距離が同一であり、上記中央位置からの距離に相違がある本発明とは異なります。」(注;本願発明においての「内側」及び「外側」は、シートの「幅」に対してものであり、上記のように「中央位置」からの距離として規定されているものではでもないので、上記一致点の判断となる。)と記載されているが、これは、引用例の「片側基準」である実施例に係る指摘であって、「センタ基準」の場合には、「用紙有無判別センサ」の用紙の幅方向における配置は、取り扱う最小の幅の用紙についても検出する必要がある機能上、用紙の幅方向において用紙載置部の中央部寄りとしなければならないことは、例えば、特開昭59-147361号公報(「センサ10c」、第3図参照)及び、引用例において従来技術とされている実願平3-63368号(実開平5-9076号)のCD-ROM(「原稿有無判別センサDS1」、図4参照)にも記載されているように技術常識であるので、引用発明を「センタ基準」とした場合には、「用紙有無判別センサ」は、本願の実施例と同様に用紙の幅方向において用紙載置部の中央部寄りに配置されることになるので、上記指摘は適切ではない。また、そもそも各センサの用紙の幅方向における内外の位置判断は、用紙の配置基準から判断するべきもので、本願発明のように「センター基準」の場合は、上記意見書でいうように用紙載置部の「中央位置」でよいが、引用例の「片側基準」である実施例においては、配置基準となる原稿ガイド壁2cの「基準面2d」からの距離を基準として内外を判断しなければ技術的な意味はない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-09 
結審通知日 2012-10-16 
審決日 2012-10-29 
出願番号 特願2007-339267(P2007-339267)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 仁木 浩
一ノ瀬 薫
発明の名称 シート搬送装置、及び画像読取装置  

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