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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1267503
審判番号 不服2010-5839  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-17 
確定日 2012-12-07 
事件の表示 特願2007-503889「栄養補助食品及び消化器系関連障害の治療方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日国際公開、WO2005/094234、平成19年10月25日国内公表、特表2007-529220〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2004年3月17日,米国 2004年9月22日,米国)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由通知に応答して平成21年10月19日付けの手続補正書と意見書が提出されたが、平成21年11月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月17日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がなされた(以下、当該手続補正を「平成22年3月17日付けの手続補正」ともいう。)ものであり、その後、前置報告書を用いた審尋に応答し、平成23年11月28日付けの回答書が提出されたものである。

2.平成22年3月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」ともいう。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
補正前(平成21年10月19日付けの手続補正書参照)の
「【請求項1】
消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用栄養補助食品であって、
天然源から単離され、極性脂質及び酸化防止剤の相当量を含む極性脂質補助食品、
天然起源から分画された、少なくとも1つの健康に有益な作用を与える可溶性β-グルカン繊維源、
消化器系に少なくとも1つの有益な作用を与える少なくとも1つのアミノ酸を含む栄養補助食品。」から、
補正後の
「【請求項1】
天然源から単離され、極性脂質及び酸化防止剤の相当量を含む極性脂質補助食品、
天然起源から分画された、少なくとも1つの健康に有益な作用を与える可溶性β-グルカン繊維源、
消化器系に少なくとも1つの有益な作用を与える少なくとも1つのアミノ酸であって、代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンと、筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンとを含有するアミノ酸、
を含む、消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用栄養補助食品。」(下線は、原文のとおり。)
とする補正を含むものである。

この補正は、補正前後の発明特定事項を対比すると、
(ア)請求項1に係る発明を特定するために必要な事項であるアミノ酸について、「であって、代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンと、筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンとを含有するアミノ酸」と限定されたものであり、また、
(イ)「消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用栄養補助食品であって、」との発明特定事項を削除し、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である末尾の「栄養補助食品」について、「消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用」と特定するものである。

(ア)の補正については、限定的減縮であると認められる。
(イ)の補正については、単に「消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用栄養補助食品」との特定を頭書の位置から末尾の位置へ移したにすぎず、実質的な変更を伴うものではない。

してみると、本件補正は、少なくとも、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「平成18年改正前特許法」ともいう。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2001-514523号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開2002-241784号公報(以下、「引用例2」という。)、特表2002-510317号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

[引用例1]
(1-i)「1.(a)加水分解タンパク質、アミノ酸およびそれらの混合物より選ばれたアミノ窒素源;および
(b)全食物繊維ブレンド、該繊維ブレンドは調合物1L当たり3?15gの濃度であり、該繊維ブレンドは可溶性/非発酵性の繊維並びに不溶性/非常発酵性の繊維、可溶性/発酵性の繊維およびそれらの混合物から選ばれた少なくとも一つの繊維を含み;該全食物繊維ブレンドの濃度(g/l)を(T)、10?40重量%の範囲であってよい可溶性の全食物繊維のパーセントを(S)、および20?80の範囲であってよい該可溶性/非発酵性の繊維である可溶性繊維の重量パーセントを(C)としたとき、式:
8.473‐0.39167×T‐0.37357×S+0.08099×C+0.01167×T×S+0.00139×C×S‐0.00119×C^(2)+0.00302×S^(2)が3.0に等しいかまたはそれ以下でなければならない
を含む、物理的安定性の改善された低粘度の液体栄養調合物。
2.脂質、炭水化物、ビタミン、およびミネラルよりなる群から選ばれた少なくとも一つの成分をさらに含む、請求項1に記載の低粘度の液体栄養調合物。
3. ・・・中略・・・
4.該アミノ窒素源が、遊離のアミノ酸、加水分解したダイズタンパク質、加水分解したカゼイネート、加水分解したホエーおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の低粘度の液体栄養調合物。
5.該繊維ブレンドが、加水分解カルボキシメチルセルロースと、カラスムギ外皮繊維、アラビアゴム、グアールガム、カンキツ属ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、オオムギグルカン、カラスムギグルカン、エンドウ外皮繊維、ダイズ外皮繊維、ダイズ子葉繊維、テンサイ繊維およびトウモロコシふすまよりなる群から選ばれた少なくとも一つの繊維との混合物である、請求項1に記載の低粘度の液体栄養調合物。
6.?11. ・・・中略・・・
12.該脂質が、ダイズ油、ココヤシ油、ココヤシ油のフラクション、トウモロコシ油、ベニバナ油、高オレインベニバナ油、落花生油、パームオレイン油、オリーブ油、マリン油、卵黄油、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、カノラ油、菜種油、キノコ油およびラードおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれたものである、請求項2に記載の低粘度の液体栄養調合物。
13.・・・中略・・・
14.疝痛、下痢、短腸症候群、腸機能障害、クローン病、胃腸管の不耐および吸収不良から選ばれる疾患を患うヒトの治療方法であって、治療を要する該ヒトに低粘度の液体栄養調合物を腸内投与することを含み、該調合物が、下記のものを含む:
(a)加水分解タンパク質、アミノ酸およびそれらの混合物より選ばれたアミノ窒素源;および
(b)全食物繊維ブレンド、該繊維ブレンドは調合物1L当たり3?15gの濃度であり、該繊維ブレンドは可溶性/非発酵性の繊維並びに不溶性/非常発酵性の繊維、可溶性/発酵性の繊維およびそれらの混合物から選ばれた少なくとも一つの繊維を含み;該全食物繊維の濃度(g/l)を(T)、10?40重量%の範囲であってよい可溶性の全食物繊維のパーセントを(S)、および20?80の範囲であってよい該可溶性/非発酵性の繊維である可溶性繊維の重量パーセントを(C)としたとき、式:
8.473‐0.39167×T‐0.37357×S+0.08099×C+0.01167×T×S+0.00139×C×S‐0.00119×C^(2)+0.00302×S^(2)が3.0に等しいかまたはそれ以下でなければならない
ことを特徴とする方法。
15.該調合物が、脂質、炭水化物、ビタミン、およびミネラルをさらに含む、請求項14に記載のヒトの治療方法。
16. ・・・中略・・・
17.該アミノ窒素源が、遊離のアミノ酸、加水分解したダイズタンパク質、加水分解したカゼイネート、加水分解したホエーおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれたものである、請求項14に記載のヒトの治療方法。
18.該繊維ブレンドが、加水分解カルボキシメチルセルロースと、カラスムギ外皮繊維、アラビアゴム、グアールガム、カンキツ属ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、オオムギグルカン、カラスムギグルカン、エンドウ外皮繊維、ダイズ外皮繊維、ダイズ子葉繊維、テンサイ繊維およびトウモロコシふすまよりなる群から選ばれた少なくとも一つの繊維との混合物である、請求項14に記載のヒトの治療方法。
19. ・・・中略・・・
20.該脂質が、ダイズ油、ココヤシ油、ココヤシ油のフラクション、トウモロコシ油、高オレインベニバナ油、落花生油、パームオレイン油、オリーブ油、マリン油、卵黄油、高オレインヒマワリ油、カノラ油、菜種油、キノコ油およびラードおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれたものである、請求項15に記載のヒトの治療方法。」(第2頁?第5頁の【特許請求の範囲】の1.?12.,14.?20.参照)
(1-ii)「可溶性食物繊維源の代表例は、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアールガム、カンキツ属ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、オオムギグルカン、カラスムギグルカン、カラギーナンおよびオオバコ種子である。数多くの市販源の可溶性食物繊維を利用できる。」(第15頁2?5行参照)
(1-iii)「本明細書および請求の範囲において加水分解タンパク質なる語は、動物および植物源からの加水分解タンパク質、アミノ酸およびそれらの混合物などの、当該技術分野で知られたアミノ窒素の食物源を意味する。しかしながら、加水分解の程度は変わるものであり、本発明の一つの側面は、タンパク質が栄養組成物中で安定化剤または乳化剤として機能する能力を実質的に失うまでタンパク質分子を分解してあることである。それゆえ、本発明の方法により、エマルジョン(物理的)安定性の向上した要素(elemental)(アミノ酸のみ)またはタンパク質加水分解調合物を製造することができる。」(第19頁11?18行参照)
(1-iv)「実際の使用に際しては、本発明の調合物は、疝痛を患う小児や長期のチューブ摂食者などの増加レベルの食物繊維を摂取することで利益を蒙りうる個体によって消費される。小児および成人用の代表的な調合物を表IIに示す。

」(第22頁16行?第23頁参照)

[引用例2]
(2-i)「【請求項1】 イネ科植物から抽出されたβグルカンを含有することを特徴とするβグルカン含有油脂組成物。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照)
(2-ii)「【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】βグルカンは、近年その優れた生体調節機能性、例えば、脂質代謝改善作用、整腸作用、血糖値上昇抑制等が解析され、利用が注目されている素材である。このような素材を加工食品にて広く利用することは、加工食品の機能性増強(高付加価値化)に寄与するのみならず、広く国民の健康維持への貢献が期待され、極めて有用なことである。βグルカンは、イネ科植物に含まれているが、このイネ科植物由来のβグルカンは、例えば、大麦やオーツ麦では、主に種子の胚乳細胞壁を構成する成分でほぼ全体に分布している。その含有量は、大麦粉では、部位や種によって差はあるが、概ね3?10重量%である。構造は、1-3,1-4-β-D-グルコピラノース結合を主成分とするグルコースの重合体である。
【0003】このようなβグルカンを添加あるいは増強した加工食品を製造する場合、例えば、大麦βグルカンを添加・増強した食品の製造では、1)大麦粒や大麦粉を添加するという方法、2)大麦糠、大麦粒から抽出したβグルカンをそのまま添加する方法が考えられる。1)の方法では、従来の菓子製造過程で用いられる小麦粉を主成分とする生地原料に大麦粒や大麦粉を添加することにより比較的簡単にβグルカンを増強することが可能であるが、βグルカンの含有量は、添加した大麦粒や粉の10重量%程度であり、食品全体としてβグルカンの増強する量が制限されること、大麦粒や粉による食味、食感の低下や焼けムラ等の製品価値の低下等の問題点が多い。また、βグルカン及びその他の機能性成分が多く含まれる大麦糠を添加することも考えられるが、糠は、大麦粒や大麦粉を配合する以上に、食味、食感の低下や焼けムラ等の製品価値の低下を招き問題点が多い。また、油脂等の液状物質に添加する場合、大麦粒、大麦粉、大麦糠は、均一に混合、分散させることは難しく、これらを配合し食用油脂組成物として使用することは非常に困難である。
【0004】これに対して、2)の抽出したβグルカンの利用では、加工食品においてβグルカンの含有量を任意に調節できる利点があり有用である。しかし、大麦βグルカンは吸水性が大きく、例えば、小麦粉を主成分とする生地原料にそのまま添加し、水を加えて混捏すると、βグルカンがダマになり、生地全体の中で不均一化を引き起こし、食味食感の低下、品質の低下につながるという問題点が発生する。また、予め水に溶解してから生地原料(主に粉体)に添加することで比較的均一に分散したβグルカン含有食品を得ることができるが、溶解させるのに時間がかかるのと同時に水溶液は粘性を呈し、均一な水溶液を得るのが容易ではなく、製造現場では作業性を損ない実際的ではないという欠点があった。そこで、大麦を始めイネ科由来のβグルカンを含有する抽出物を添加した食品を製造するにあたり、βグルカンを均一に分散でき、かつ簡便に同加工食品を製造する方法が、あるいは、そのようなイネ科植物由来βグルカン材料の開発が待たれていた。」(段落【0002】?【0004】参照)
(2-iii)「【0015】イネ科植物の例としては、米類、小麦類、トウモロコシ類、モロコシ類、ヒエ類、アワ類、キビ類、大麦類、オーツ麦類(カラス麦類)、ライ麦類等の穀類を挙げることができる。抽出には、植物全体を原料とできるが、βグルカンの含有量の比較的高い種子を用いるのが好ましい。全体を粉砕したもの(全粒粉)をはじめ、穀類の精製工程で得られる糠、フスマ、麦芽、胚芽、胚乳部位のいずれを用いてもよい。好ましくは大麦類やオーツ麦類の全粒粉や穀粒を外周部よりと搗精した胚乳部分やその際発生する糠、米糠、小麦やトウモロコシ類のフスマや胚芽等であり、更に好ましくは大麦類やオーツ麦類の全粒粉や穀粒を外周部より搗精した胚乳部分やその際発生する糠である。」(段落【0015】参照)
(2-iv)「【0020】本発明において、イネ科植物から抽出されたβグルカンを分散させる油脂又は油脂組成物は、食用に供することができれば特に制限されない。例えば、米油、菜種油、大豆油、綿実油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ油、魚油、牛脂、豚脂、カカオ脂、あるいはそれらを必要に応じ加工した硬化油、微水添油、異性化水添油、エステル交換油、分別油又はこれらの2種以上の加工を行なった油、並びにこれらの油脂の2種以上を混合した油脂等の何れも使用可能である。更に、これらの食用油脂の乳化物(W/O乳化物、あるいはO/W乳化物、更には、O/W/O乳化物、W/O/Wの2重乳化物、又はそれ以上の高次乳化構造のエマルジョンを含む)や懸濁物等、油脂を分散媒又は分散質とする分散系を使用することができる(以下、本明細書中では該分散系も油脂とする)。」(段落【0020】参照)

[引用例3]
(3-i)「1.ヒトに投与するための基本医用食であって、
(a)該食の全カロリー含量の38?56%を含む炭水化物成分;
(b)該食の全カロリー含量の38?50%を含む脂質成分であって、該脂質成分は高オレインベニバナ油、分別したココヤシ油、エステル化したグリセリンおよびダイズ油のブレンドであるもの;および
(c)該食の全カロリー含量の10?20%を含むアミノ酸成分であって、該アミノ酸成分は本質的にL-グルタミン酸およびL-アスパラギン酸を含まないもの
を含む基本医用食。
2.該炭水化物成分が該食の全カロリー含量の38?56%を含み、該脂質成分が該食の全カロリー含量の38?50%を含み、該アミノ酸成分が該食の全カロリー含量の10?20%を含む、請求項1に記載の基本医用食。
3.該アミノ酸成分が、2.3?3.2重量%のL-ヒスチジン;5.9?8.5重量%のL-イソロイシン;9.5?14.0重量%のL-ロイシン;6.6?9.7重量%のL-バリン;5.2?7.6重量%のL-リジン;2.2?3.2重量%のL-メチオニン;4.9?7.1重量%のL-フェニルアラニン;3.8?5.7重量%のL-トレオニン;1.4?2.2重量%のL-トリプトファン;3.0?4.2重量%のL-アラニン;5.3?7.7重量%のL-アルギニン;8.6?12.4重量%のL-アスパラギン一水和物;1.1?1.9重量%のL-シスチン二塩酸塩;11.0?15.8重量%のL-グルタミン;2.3?3.2重量%のグリシン;3.0?4.1重量%のL-プロリン;3.0?4.2重量%のL-セリン;および5.0?7.1重量%のL-チロシンからなる、請求項1に記載の基本医用食。」(【特許請求の範囲】の1.?3.参照)
(3-ii)「7.該脂質成分の全重量に基づいて、37?41%の高オレインベニバナ油;28?35%の分別したココヤシ油;24?30%のダイズ油および0.5?8%のエステル化グリセリンを含む、請求項1に記載の基本医用食。
8.ヌクレオシド、ヌクレオチド、抗酸化系、天然の香味料、人工香味料、人工甘味料、主要な微量ミネラル及び極微量ミネラル、ミネラル、ビタミンおよびm-イノシトールよりなる群から選ばれた少なくとも一つの要素をさらに含む、請求項1に記載の基本医療」(【特許請求の範囲】の7.?8.参照)
(3-iii)「16.重篤な食物アレルギー、短腸症候群、嚢胞性繊維症、膵臓疾患、胃腸炎、炎症性腸疾患、難治性の下痢、栄養不良、タンパク質の消化不良、壊死性全腸炎、感染性疾患、代謝亢進、外傷、好酸性胃腸炎および胃食道の逆流よりなる群から選ばれた疾患を患うヒトに栄養学的サポートを付与する方法であって、該ヒトへの調合物の投与を含み、該調合物が、
(a)該食の全カロリー含量の38?56%を含む炭水化物成分;
(b)該食の全カロリー含量の38?50%を含む脂質成分であって、該脂質成分は高オレインベニバナ油、分別したココヤシ油、エステル化したグリセリンおよびダイズ油のブレンドであるもの;および
(c)該食の全カロリー含量の10?20%を含むアミノ酸成分であって、該アミノ酸成分は本質的にL-グルタミン酸およびL-アスパラギン酸を含まないものを含むものである、方法。」(【特許請求の範囲】の16.参照)
(3-iv)「発明の技術分野
本発明は、改良された腸用低アレルギー誘発性(hypoallergenic)栄養調合物に関し、さらに詳しくは、味のよい低アレルギー誘発性調合物に関する。さらに、本発明は、複数の食物アレルギー、短腸症候群(short gut syndrome)、嚢胞性繊維症、膵臓疾患、胃腸炎、炎症性腸疾患、難治性の下痢、栄養不良、タンパク質の消化不良、感染性疾患を患う個体、または火傷や外傷の犠牲者や癌患者などの代謝亢進を有する患者のための、栄養学的に完璧な低アレルギー誘発性食品を提供する。
発明の背景技術
低アレルギー誘発性調合物または組成物(基本調合物とも称する)は、免疫学的に非反応性のタンパク質加水分解産物または遊離のアミノ酸を含むことを特徴とする。タンパク質加水分解産物は、たとえば、牛乳やダイズタンパク質ベースの調合物に見出されるような完全なタンパク質の代わりに短いペプチド断片および/または遊離のアミノ酸を含む。これら短いペプチド断片および遊離のアミノ酸は、完全なタンパク質に比べて免疫原性またはアレルギー誘発性が小さいことがわかっている。」(第7頁3?18行参照)
(3-v)「本発明の他の重要な側面は、脂質成分の酸化を低減するための抗酸化剤系の使用に関係する。当業者であれば、粉末基本製品中での不飽和油の使用が特別の問題を引き起こすことが評価されるであろう。粉末製品中の油の酸化を克服するために、本発明はその一つの好ましい態様において、パルミチン酸アスコルビル、ベータカロテンおよびクエン酸を含む抗酸化剤系を使用する。」(第14頁15?19参照)
(3-vi)「 商業スケール
実施例2で利用した臨床製品を商業スケールで製造した。上記方法を用いて1,00kgのバッチを製造し、表VIIに示すラベル組成物(label composition)が貯蔵寿命以上であることを保証した。

」(第25頁下から4行?第26頁参照)

(3)対比、判断
引用例1には、上記「(2)」の引用例1の摘示(1-i)の記載(特に、1.の液体栄養調合物をベースに、2.、4.、5.、12.の各成分の摘示と14.の疾患を勘案する)によれば、次の発明(引用例1発明)が記載されているものと認められる。
「疝痛、下痢、短腸症候群、腸機能障害、クローン病、胃腸管の不耐および吸収不良から選ばれる疾患を患うヒトの治療に用いる調合物であって、治療を要する該ヒトに低粘度の液体栄養調合物を腸内投与することを含み、
該液体調合物が、
(イ)加水分解タンパク質、アミノ酸およびそれらの混合物、
(ロ)全食物繊維ブレンド、該繊維ブレンドは調合物1L当たり3?15gの濃度であり、該繊維ブレンドは可溶性/非発酵性の繊維並びに不溶性/非常発酵性の繊維、可溶性/発酵性の繊維およびそれらの混合物から選ばれた少なくとも一つの繊維を含み;該全食物繊維ブレンドの濃度(g/l)を(T)、10?40重量%の範囲であってよい可溶性の全食物繊維のパーセントを(S)、および20?80の範囲であってよい該可溶性/非発酵性の繊維である可溶性繊維の重量パーセントを(C)としたとき、式:
8.473‐0.39167×T‐0.37357×S+0.08099×C+0.01167×T×S+0.00139×C×S‐0.00119×C^(2)+0.00302×S^(2)が3.0に等しいかまたはそれ以下でなければならない、
該繊維ブレンドが、加水分解カルボキシメチルセルロースと、カラスムギ外皮繊維、アラビアゴム、グアールガム、カンキツ属ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、オオムギグルカン、カラスムギグルカンであり、
(ハ)脂質、炭水化物、ビタミン、およびミネラルよりなる群から選ばれた少なくとも一つの成分
を含む、物理的安定性の改善された低粘度の液体栄養調合物。」

そこで、本願補正発明と引用例1発明を対比する。
(a)本願補正発明の「消化障害並びに消化器系に関連する疾患」とは、例えば「消化器系疾患が、潰瘍、大腸炎、過敏性大腸症候群、憩室症、憩室炎、クローン病、粘膜炎及び口内炎からなる群から選択される」(本願補正後の請求項25参照)ものであり、下痢を招くものも含まれること(本願明細書段落【0007】、【0009】など参照)、及び、引用例1発明の「調合物」とは「栄養調合物」であることに鑑みると、引用例1発明の「疝痛、下痢、短腸症候群、腸機能障害、クローン病、胃腸管の不耐および吸収不良から選ばれる疾患を患うヒトの治療に用いる調合物」は、本願補正発明の「消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用栄養補助食品」に対応し、両者の疾患について多くの重複があることから、両者は、「消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療用栄養補助食品」で一致する。
なお、引用例1発明が液体であることは、本願補正発明の「栄養補助食品」が「液体」でも良いとされていること(本願補正後の請求項23参照)に鑑みて、相違点ではない。
(b)引用例1発明の「加水分解タンパク質、アミノ酸およびそれらの混合物」は、本願補正発明で用いる「アミノ酸」に相当する。
(c)引用例1発明の「全食物繊維ブレンド」は、本願補正発明の「天然起源から分画された、少なくとも1つの健康に有益な作用を与える可溶性β-グルカン繊維源」に対応し、「繊維源」で一致する。
なお、引用例1発明では、繊維の量について、「該全食物繊維ブレンドの濃度(g/l)を(T)、10?40重量%の範囲であってよい可溶性の全食物繊維のパーセントを(S)、および20?80の範囲であってよい該可溶性/非発酵性の繊維である可溶性繊維の重量パーセントを(C)としたとき、式:
8.473‐0.39167×T‐0.37357×S+0.08099×C+0.01167×T×S+0.00139×C×S‐0.00119×C^(2)+0.00302×S^(2)が3.0に等しいかまたはそれ以下でなければならない」と特定されているが、本願補正発明では、繊維(可溶性β-グルカン繊維)の量について特定されていないことから、実質的な相違点とはなり得ない。
(d)引用例1発明の「脂質、炭水化物、ビタミン、およびミネラルよりなる群から選ばれた少なくとも一つの成分を含む」は、本願補正発明の「天然源から単離され、極性脂質及び酸化防止剤の相当量を含む極性脂質補助食品」に対応し、「脂質」で一致する。

してみると、両発明は、
「脂質、
繊維源、
アミノ酸、
を含む、消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療用栄養補助食品。」
で一致し、次の相違点A?Dの点で一応相違する。
<相違点>
A.脂質について、本願補正発明では、「天然源から単離され、極性脂質及び酸化防止剤の相当量を含む極性脂質補助食品」と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点
B.繊維源について、本願補正発明では、「天然起源から分画された、少なくとも1つの健康に有益な作用を与える可溶性β-グルカン繊維源」と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点
C.アミノ酸について、本願補正発明では、「消化器系に少なくとも1つの有益な作用を与える少なくとも1つのアミノ酸であって、代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンと、筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンとを含有するアミノ酸」と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点
D.治療用について、本願補正発明では、「治療及び予防用」と特定されているのに対し、引用例1発明では、治療用とされているものの「予防用」との説明がされていない点

そこで、これらの相違点について検討する。
(i)相違点Aについて
引用例1には、脂質として、「ダイズ油、・・・、トウモロコシ油、・・・、パームオレイン油、オリーブ油、・・・、ヒマワリ油、・・・、菜種油、・・・なる群から選ばれたものである」(摘示(1-i)の請求項12参照)とされている。そして、これらの植物油が、「天然源から単離され」たものであることは、論ずるまでもなく明らかであるし、補助食品に該当することも明らかである。
これに対し、本願補正発明でも、「極性脂質補助食品は、オート麦油、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、パーム油、トウモロコシ油、菜種油、亜麻仁油からなる群から選択される少なくとも一種からなる」(補正後の段落【0102】の(3)参照、なお当初の請求項3も参照)とされ、「極性脂質の良好な源でもある他の油は、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、パーム油、トウモロコシ油、菜種油、亜麻仁油等である。」(段落【0051】参照)とされていて、例示された植物油の多くが引用例1の前記列記された油と一致しているし、また、「極性脂質は、天然に植物油に生じる」(本願明細書段落【0049】参照)とされている。
ところで、本願明細書では、「好ましい実施形態では、オート麦油が単位容量あたり他のいずれの極性脂質源よりも多くの極性脂質を有しているという事実から、オート麦油が用いられる。」(段落【0051】参照)と説明されているが、本願補正発明が、該好ましい態様(オート麦油)に限定されるものではないことは明らかであるし、前記摘示した如く極性脂質の良好な源として他の油でも良いことを否定するものでもない。そして、前記例示された例えば大豆油には、リン脂質とトコフェロールが多いことが知られている(廣田博著、「化粧品用油脂の科学」、フレグランスジャーナル社、平成13年4月10日第1版第2刷発行、第13?14頁の大豆油の項を参照、また、大豆油の成分組成を示す表2-5に、リン脂質1.5?2.5%、遊離脂肪酸0.3?0.7%、トコフェロール0.15?0.21%と示されている。)ところ、該知られていることは、前記本願の説明と合致している。そして、「相当量」については、本願明細書にどの程度の量か具体的数値での説明はなく、植物油に含まれている程度の量でも良いと解する他ないから、「相当量」との特定によって量に関し実質的に相違すると解することはできない。
してみると、「天然源から単離され、極性脂質の相当量を含む極性脂質補助食品」である点において、両発明に実質的な差異があるとは言えない。
次に、酸化防止剤の相当量を含むことについては、引用例1にはそれらの列挙された植物油に含まれることは明示はされていないが、そもそも大豆油やトウモロコシ油などはビタミンE(ビタミンEは本願明細書段落【0023】に酸化防止栄養分として明示されている)も比較的多く含んでいることが知られている(例えば、五十嵐脩ほか2名編集代表、「丸善食品総合辞典」、丸善株式会社、平成10年3月25日発行、第642頁の大豆油の項、第756頁のとうもろこし油の項など参照)のであるし、本願明細書でも、列挙された植物油に含まれていることが前提とされていることは明らかである(例えば、段落【0050】の「植物油は、トコフェロール及びトリエノールを含み、それは強力な酸化防止剤であり、系からフリーラジカルを追い出す。」を参照、なお、トコフェロールはビタミンEのことである。)から、当然に含まれていると解すべきであって、実質的な相違点とはなり得ない。また、「相当量」については、上記と同様である。
したがって、相違点Aは実質的な相違点ではない。

(ii)相違点Bについて
引用例1では、繊維ブレンドについての具体例について、可溶性のオオムギグルカンやカラスムギグルカンが選択肢として明示されている(摘示(1-ii)参照)。
一方、引用例2には、その含有量を任意に調節できるようにβ-グルカンを分離し、油脂に配合すること(摘示(2-i)、(2-ii)の段落【0004】)が記載されていて、また、オーツ麦類(カラス麦類)などのイネ科植物に存在するグルカンが、β-グルカンであることが明らか(摘示(2-i)?(2-iv)参照)であり、可溶性であることも説明されている(摘示(2-ii)の段落【0004】「予め水に溶解してから・・・・添加することで・・βグルカン含有食品を得る」を参照)のであるから、引用例1で採用できるオオムギグルカンやカラスムギグルカンは、「可溶性β-グルカン」ということができ、「天然起源から分画された」ものであることも明らかであり、それらを配合することにより、胃腸障害に有効であることも明らかにされている(摘示(2-ii)参照)のであるから、「少なくとも1つの健康に有益な作用を与える」ものということもできる。
そうすると、引用例1発明において、繊維源として、「天然起源から分画された」、「少なくとも1つの健康に有益な作用を与える」、「可溶性β-グルカン」を採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められない。

(iii)相違点Cについて
本願補正発明で特定する、「消化器系に少なくとも1つの有益な作用を与える少なくとも1つのアミノ酸であって、代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンと、筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンとを含有するアミノ酸」とはどのようなものか不明瞭であるところ、本願明細書の記載を検討すると、「トレオニン」と「グルタミン」が例示されている(段落【0032】参照)にすぎず、「トレオニン」については、代謝及び栄養の吸収を加勢する(段落【0033】参照)とされていることから、「代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシン」に相当するものと解することができ、また、「グルタミン」については、筋肉燃料であり腸の粘膜の免疫細胞に窒素を供給する(段落【0034】参照)とされていることから、「筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシン」に相当するものと解することができる。

これに対し、引用例1には、アミノ酸(遊離のアミノ酸)を含有することが特定されている。しかし、どのようなアミノ酸を含有するのかは言及されていない。
一方、引用例3には、「・・、短腸症候群、・・、胃腸炎、炎症性腸疾患、難治性の下痢、栄養不良、・・、壊死性全腸炎、感染性疾患、代謝亢進、・・、好酸性胃腸炎および胃食道の逆流よりなる群から選ばれた疾患を患うヒトに栄養学的サポートを付与する」のに用いる調合物として、脂質及びトレオニンやグルタミンなどのアミノ酸と脂質を含有する基本医用食が記載されている(摘示(3-i)、(3-iii)参照)し、ダイズ油など植物油の他にグルタミンやトレオニンなどのアミノ酸を配合した具体的処方例も示されている(摘示(3-vi)参照)。
そして、引用例3における基本医用食の対象とされている「短腸症候群、・・、胃腸炎、炎症性腸疾患、難治性の下痢、栄養不良、・・、壊死性全腸炎、感染性疾患、代謝亢進、・・、好酸性胃腸炎」は、引用例1発明(及び本願補正発明)でもその対象とされている下痢、短腸症候群などと重複するものであることを勘案すると、引用例1発明で用いるアミノ酸として引用例3に具体的に記載されたもの、即ちグルタミンやトレオニンを含むものを採用することは、当業者が適宜に又は容易になし得たものといえる。
すなわち、引用例1発明において、「消化器系に少なくとも1つの有益な作用を与える少なくとも1つのアミノ酸であって、代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンと、筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンとを含有するアミノ酸」(具体的にはグルタミンとトレオニン)を採用することは当業者が容易になし得たことというべきである。
ちなみに、アミノ酸として、グルタミンとトレオニンを含むものを採用できるのであるから、それらグルタミンとトレオニンの役割として、「消化器系に少なくとも1つの有益な作用を与える」や「代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシン」、「筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシン」のような作用機能の表現を付加したところで、単なる機能を明らかにしただけにずぎす、容易想到性の判断を左右できるものではない。

ところで、請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献3の引用発明は低アレルギー誘発性医用食に関する発明であり、アミノ酸成分は単に低アレルギーの栄養分(栄養学的サポート)として添加されるものであり、引用文献3の引用発明においては、栄養源として“完全なタンパク質”の代わりに“アミノ酸成分”を用いているに過ぎない(7頁15?16行)。とすれば、消化疾患に対する効果を期待して引用文献3からアミノ酸のみを抽出し、それを引例1・2に適用して本発明を完成させることは必ずしも容易でなかったはずである。」と主張している。
しかし、引用例1発明においても、「(イ)加水分解タンパク白質、アミノ酸およびそれらの混合物」とされているのであるから、引用例3(引用文献3)において完全なタンパク質の代わりにアミノ酸成分を用いること(摘示(3-iv)参照)は、軌を一にするものであって、上記のとおり対象疾患も重複していることも併せ鑑みれば、引用例1発明において引用例3に記載のようなアミノ酸を採用することの動機付けはあるというべきであるから、請求人の前記主張は失当であり、採用できるものではない。

(iv)相違点Dについて
本願補正発明では「治療及び予防用」と記載されているが、本願明細書を検討すると、段落【0001】では「治療及び/又は予防」とされ、段落【0014】では「予防又は治療する」とされていて、段落【0024】、【0027】、【0041】、【0099】では「治療及び/又は予防」とされているし、また、段落【0004】?【0013】、【0016】?【0023】、【0033】、【0043】、【0084】?【0098】、【0101】では「治療」についてのみ記載されていることに鑑みると、他の段落に「治療及び予防用」との記載があったとしても、該「治療及び予防用」との記載は、「治療又は予防用」との趣旨と解するのが相当である。
仮に、「治療及び予防用」が「治療」と「予防」の両方の意味であったとしても、予防できたとすると治療を要しないものである(治療を要するのであれば予防できていないことになる)から、同時に両立し得ないものである。そうであるから、前記のように解する外ない。
よって、相違点Dは、「治療用」の点では一致するものであり、「及び予防用」との点を勘案すべき理由はない。
なお、治療に用いる食品であるから、疾患が予想される場合に、予防的に用いる程度のことも格別の創意工夫が必要であったとは認められない。

(v)作用効果について
本願明細書を検討しても、本願補正発明に係る栄養補助食品の実施例も処方例も記載されておらず、どのような利点(作用効果)があるのかを確認できる記載は見いだせない。
なるほど、本願明細書には、種々の作用や機能が記載されているし、相乗効果があるとの記載もあるが、それらの記載を担保できる実験データはおろか、具体的な根拠は何等示されておらず、従来のものに比べてどの程度優れているのかを把握することができないものであって、格別に優れていると解することが出来ないものである。

(vi)まとめ
以上のとおりであり、相違点A?Dに係る本願補正発明の発明特定事項を併せ採用すること(なお、相違点AとDは実質的な相違点ではない)も当業者が容易に想到し得たものであって、格別に予想外の作用効果を奏し得たものとも認められない。
よって、本願補正発明は、引用例2,3の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成23年11月28日付け回答書において、食物ヌクレオチドをさらに含むことを特定する補正案や、各成分の量を数値限定する補正案を提示し、補正の機会を希望している。
しかし、特許法では審判請求に際して補正できる期間を定めているところ、既にその期間内に手続補正書を提出しているのであるから、それ以上の補正の機会を与えることは、法律の想定するところではない。また、仮にそれらの補正案を検討してみたところで、食物ヌクレオチドをさらに含ませることは引用例3に記載されている(例えば摘示(3-ii)参照)し、また、各成分の量を特定することは、実施にあたり当然検討すべき事項にすぎず、本願明細書を検討しても格別予想外の臨界的意義があると解すべきデータが示されていないのであるから、補正案でする各成分の数値限定を加えたところで、上記容易性の判断の結果を左右できるものではない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年3月17日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?50に係る発明は、平成21年10月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?50に記載された事項により特定されるとおりのもと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、前記「2.」の「[理由] (1)」の補正前として摘示したとおりのものである。(再摘示は省略する。)

(2)引用例
原査定の拒絶理由に引用される引用例と周知例、およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比、判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項の「アミノ酸」について、その限定事項である「であって、代謝及び栄養吸収を助ける第1の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンと、筋肉の燃料であり、消化器系の免疫機能をサポートする第2の界面活性アミノ酸ベースニュートリシンとを含有するアミノ酸」との発明特定事項を省いたものである。ところで、本願発明は、本願補正発明の発明特定事項の末尾の「栄養補助食品」について、その限定事項である「消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用」との発明特定事項を削除し、頭書に「消化障害並びに消化器系に関連する疾患の治療及び予防用栄養補助食品であって、」との発明特定事項を追加するものであるが、かかる点は単なる表現の修正にすぎない。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例2,3の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例2,3の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-13 
結審通知日 2012-07-17 
審決日 2012-07-30 
出願番号 特願2007-503889(P2007-503889)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 光本 美奈子  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 秋月 美紀子
▲高▼岡 裕美
発明の名称 栄養補助食品及び消化器系関連障害の治療方法  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 中村 充利  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  

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