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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1267508
審判番号 不服2011-24004  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-07 
確定日 2012-12-07 
事件の表示 特願2011- 68400「表示制御プログラム、表示制御装置、表示制御システム、及び、表示制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日出願公開、特開2011-172253〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年1月14日に出願した特願2010-5955号の一部を平成23年3月25日に新たな特許出願としたものであって、平成23年5月13日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年7月15日付けで手続補正がなされ、平成23年8月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月7日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正(審判請求と同時にする補正)がなされたものである。

第2.平成23年11月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月7日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち、請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示し、複数のゲームシーンを有するゲームを実行可能な携帯型表示制御装置であって、
ユーザによる所定の操作部に対する操作を受け付け、当該操作に応じた処理を実行することにより仮想空間に変化をもたらすとともに、2台の仮想カメラで仮想空間を繰り返し撮像することによって取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記表示手段に立体視画像を表示させる処理手段と、
前記携帯型表示制御装置のハウジングに設けられ、ユーザの操作によって所定方向に所定範囲内で可動する機構を有する立体視調整操作部と、
前記処理手段による処理に応じて前記表示手段に前記立体視画像が表示されている間に、前記立体視調整操作部に対するユーザの立体視調整操作を繰り返し受け付け、当該立体視調整操作によって調整された前記立体視調整操作部によって示される位置に応じて前記2台の仮想カメラ間の距離が調整されるように、前記2台の仮想カメラを調整する仮想カメラ調整手段と、を備え、
前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、前記ゲームシーン毎に定められた所定の基準値から前記立体視調整操作部によって示される位置に応じた度合いで調整し、
前記処理手段は、前記仮想カメラ調整手段によって前記2台の仮想カメラが調整された場合に、当該調整された2台の仮想カメラで前記仮想空間を撮像して取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記立体視画像の表示を更新する、携帯型表示制御装置。」

2.補正の適否
この補正は、補正前の請求項1に「立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示させる携帯型表示制御装置」、「前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、所定の基準値から前記立体視調整操作部によって示される位置に応じて調整し」とあるのを、それぞれ、補正後の請求項1では、「立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示し、複数のゲームシーンを有するゲームを実行可能な携帯型表示制御装置」、「前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、前記ゲームシーン毎に定められた所定の基準値から前記立体視調整操作部によって示される位置に応じた度合いで調整し」と限定する補正を行うものである。
したがって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、平成23年改正前特許法という)第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、本願補正発明という)が平成23年改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項に規定された特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記第2.1.の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
ア.これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-107603号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次のイ?エの事項が記載されている。

イ.「【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本実施の形態では、本発明を、レンチキュラレンズ板を用いためがねなしの立体視映像表示装置を備えるゲーム装置に適用する場合について説明するが、これに限定する必要はない。また、説明の簡明の為に、2眼式の立体視映像表示装置に表示するための2種類の画像(右目用、左目用)を生成する場合について説明する。」

ウ.「【0056】続いて、本実施の形態を実現可能な機能について説明する。図12は、本実施の形態を実現するための機能をブロック構成により表現した一例を示す図である。同図によれば、機能ブロックは、主に、操作部100と、処理部200と、表示部300と、情報記憶媒体400とから構成される。
【0057】操作部100は、プレーヤがゲームにおける自キャラクタの操作や、ゲームの開始/中止の指示、選択画面における選択項目の入力等を実行するためのものであり、図1に示す操作ボタン20が相当する。
【0058】処理部200は、システム全体の制御、システム内の各ブロックへの命令の指示、ゲーム処理、画像処理、音処理等の各種処理を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、あるいはASIC(ゲートアレイ等)等のハードウェアや、所与のプログラムにより実現できる。また、処理部200には、主に、ゲーム演算部220、画像生成部240が含まれる。
【0059】ゲーム演算部220は、ゲームの進行処理、選択画面の設定処理、オブジェクト空間上での各オブジェクトやキャラクタの位置や向きを決定する処理、2つの視点の中心位置や視点方向、視界等を決定する処理等、種々のゲーム処理を、操作部100から入力される操作信号や、情報記憶媒体400から読み出すゲームプログラム420等に基づいて実行する。なお、各種のゲーム処理を実行し、各種座標データ、ゲームにおける得点情報等を決定すると、画像生成部240に出力する。また、ゲーム演算部220は、注視位置制御部222と、視点間隔決定部224とを含む。
【0060】注視位置制御部222は、オブジェクト空間における注目位置に注視位置を設定する処理を実行する。例えば、所与のゲームにおける自キャラクタに常にピントを合わせる場合には、自キャラクタの座標に合わせて注視位置を決定する。あるいは、ゲームプログラム420によって設定される位置に設定することとしてもよい。例えば、ゲームシナリオに沿って、突然敵キャラクタを視界内に登場させる場合には、その敵キャラクタに注目点を設定してもよい。
【0061】視点間隔決定部224は、注視位置制御部222により注視位置の奥行値zDが決定されると、その注視位置の奥行値zDに応じて視点間隔aを決定する。例えば、式(1)や図11に示す視点間隔テーブル130に基づいて視点間隔aを決定する。そして、ゲーム演算部220により決定された2つの視点の中心位置(仮視点)、および視点方向に基づいて、各視点の座標を決定する。そして、各視点の座標を画像生成部240に出力する。
【0062】画像生成部240は、ゲーム演算部220から入力される指示信号、各種座標データに基づき、ゲーム画像を生成する処理を実行するものであり、CPU、DSP、画像生成専用のIC、メモリなどのハードウェアにより構成される。また、画像生成部240は、左目用画像生成部242と、右目用画像生成部244と、インターリーブ部246とを含む。そして、画像生成部240は、視点間隔決定部224から各視点の座標および視点方向を示すデータが入力されると、それぞれの座標データを左目用画像生成部242と、右目用画像生成部244に出力する。
【0063】左目用画像生成部242および右目用画像生成部244は、対応する視点の座標データおよびオブジェクト空間における各種座標データが入力されると、それぞれの画像を生成する処理を実行する。具体的には、前方、後方クリッピングを実行してビューボリュームを決定する処理、各ポリゴンに対する座標変換および視点と光源に基づく輝度計算処理等のジオメトリ処理と、色補間処理、陰面消去処理等のレンダリング処理を実行し、左目用・右目用の画像をそれぞれ生成する。なお、左目用画像生成部242および右目用画像生成部244は、それぞれ生成した画像を記憶するためのバッファ(不図示)を備える。そして、各視点に基づく画像が完成すると、インターリーブ部246に対して各画像が完成した旨を伝える信号を出力する。
【0064】上述ジオメトリ処理は、オブジェクト空間内の各オブジェクトの座標変換をするにあたって、まず仮視点を決定し、当該オブジェクトを仮視点に基づく平面座標系に投影変換する。次に、当該オブジェクトの奥行値と、注視位置の奥行値と、視点の間隔(仮視点と視点との位置関係)とを式(3)に代入することにより、x軸方向の移動量Δxを算出する。さらに、前述仮視点に基づく平面座標系にΔxを加減算することにより当該オブジェクトの描画位置を決定する。
【0065】インターリーブ部246は、右目用画像生成部242および左目用画像生成部244から画像が完成した旨を伝える信号が入力されると、生成された各画像をインターリーブする処理を実行する。そして、立体視画像を生成すると表示部300に出力して表示させる。なお、表示部300は、インターリーブ部246から入力される画像データを表示画面に表示させるものであり、図1に示したディスプレイ40が相当する。」

エ.「【0082】なお、本発明は、上記実施の形態で説明したものに限らず、種々の変形実施が可能である。例えば、本実施の形態では、業務用のゲーム装置に本発明を適用することとして説明したが、これに限定する必要はなく、例えば、立体視映像表示装置を備えるものであれば、携帯型のゲーム装置や、携帯電話機、家庭用のゲーム装置等に適用可能なことは勿論である。また、ゲーム装置に限らず、アミューズメント施設に備えるディスプレイや、医療機器、カーナビゲーター等の機器に適用してもよい。」

オ.刊行物1発明
したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている(括弧内は対応する発明の詳細な説明の段落番号又は図面の番号を示す)。

レンチキュラレンズ板を用いためがねなしの立体視映像表示装置を備える携帯型のゲーム装置であって、(【0024】、【0060】、【0082】)
操作部、処理部、表示部、情報記録媒体とから構成され、(【0056】、【図12】)
前記処理部は、ゲーム演算部、画像生成部が含まれ、(【0058】、【図12】)
前記ゲーム演算部は、注視位置制御部、視点間隔決定部を含み、前記操作部から入力される操作信号や前記情報記憶媒体から読み出すゲームプログラム等に基づいて種々のゲーム処理を実行するものであり、(【0059】、【図12】)
前記注視位置制御部は、例えば、ゲームシナリオに沿って、突然敵キャラクタを視界内に登場させる場合には、その敵キャラクタに注目点を設定し、オブジェクト空間における注目位置に注視位置を設定する処理を実行するものであり、(【0060】)
前記視点間隔決定部は、前記注視位置制御部により注視位置の奥行値が決定されると、その注視位置の奥行値に応じて視点間隔を決定するものであり、(【0061】)
前記ゲーム演算部は、前記視点間隔から2つの視点の座標を決定して前記画像生成部に出力し、(【0061】)
前記画像生成部は、前記視点間隔決定部から各視点の座標が入力されると、左目用画像、右目用画像を生成し、生成された各画像をインターリーブして前記表示部に表示させるものである、(【0062】-【0065】)
携帯型のゲーム装置。

カ.また、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平9-201472号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面とともに次のキ?シの事項が記載されている。

キ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、右目用と左目用の2つの映像源の映像をレンチキュラスクリーンに投影し、レンチキュラスクリーン上の各投影像を右目と左目にそれぞれ入射させ視差を与えることにより立体視を体験できるゲーム機、さらに詳しくいえば、プレイヤ自身の両眼に対し、両眼位置にそれぞれ一致するように映像入射位置を調整でき、さらに輻輳点を調整できる装置に関する。」

ク.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記ゲーム機は、実際の立体像を見ているわけではなく装置によって作られた像を立体視しているため通常の平面画面のゲーム機に比較し、プレイヤは疲れやすく、またプレイヤによって個人差がある。そこで、プレイヤ自身が立体像の程度を調整できる装置を備えていれば、各プレイヤにとって疲れを少なくできる最適な立体像を作り出すことができると考えられる。例えば、プレイヤ自らが自己に最も適した輻輳点に変更でき、さらに両眼の目の間隔に個人差があるため左右の映像が入射する間隔を調整して映像をはっきりと見えるようにできる装置が望まれる。
【0005】本発明の課題は、上記要請に応えることができる二眼式立体映像を表示するゲーム機の両眼映像入射位置および輻輳点の調整装置を提供することにある。」

ケ.「【0007】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。図1は本発明による両眼映像入射位置および輻輳点の調整装置を適用したゲーム機のコントロールパネル部分を示す平面図である。図2は図1のゲーム機の背面図である。図1の上方がスクリーン側であり、左右の座席3a,3bに2名のプレイヤが座ることができる。各座席3a,3bの前にはプレイ用のレバー2a,2bが配置されている。レバー2a,2bの間には両眼映像入射位置および輻輳点を調整するための操作ボタン1が設置されている。プレイヤはゲームスタート前またはプレイ中に操作ボタン1を押すことにより両眼映像入射位置および輻輳点を調整できる。」

コ.「【0009】(c)は両眼への映像入射位置の間隔が小さい距離に調整されている状態から入射位置の間隔が広がる方向に変更させる場合で、操作ボタン(C)1cを押すことにより6b,7bの間隔を6a,7aのように広げることができる。
(d)は両眼への映像入射位置の間隔が大きい距離に調整されている状態から入射位置の間隔が小さくなる方向に変更させる場合で、操作ボタン(D)1dを押すことにより6a,7aの間隔を6b,7bのように広げることができる。各ボタンを連続して押し続けた場合には変化しない位置に到達するまで一定量ずつ移動していく。」

サ.「【0015】
【発明の効果】以上、説明したように本発明は、両眼映像入力位置と輻輳点を調整する操作部を設け、操作部の操作によってレンチキュラスクリーン上に投影される右目用と左目用の2つの映像の輻輳点を変化させ、かつプレイヤの両眼に対し、映像入射位置を調整できるように構成してあるので、プレイヤ自らが自己に最も適した輻輳点に変更し、さらに映像をはっきりと見えるような映像入射位置を変更し最適な立体像を作ることができるという効果がある。」

シ.「【0012】図5は、CPUの機能ブロックの実施の形態を示す図である。左目用のCPU11は、各操作信号の入力によりゲームを処理するゲーム処理部16,操作信号の入力を検出するボタン検出部17,ボタン検出部17が輻輳点変更を示す信号を検出した場合にその信号にしたがった量だけ輻輳点を前後にずらすように映像処理を行う輻輳点制御部18,ボタン検出部17が両眼映像入力位置変更を示す信号を検出した場合にその信号にしたがった距離だけ変更するように両眼に入射する映像の内、左目用の映像を処理する両眼視点制御部19の機能ブロックを備えている。右目用のPCBのCPUも同様な機能ブロックを備えている。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明の「レンチキュラレンズ板を用いためがねなしの立体視映像表示装置」は、本願補正発明の「立体視表示可能な表示手段」に相当する。また、刊行物1発明のゲームは、ゲームシナリオに沿って注目点を設定するものであるから、複数のゲームシーンを有するゲームといえる。したがって、刊行物1発明の該立体視映像表示装置を備える携帯型のゲーム装置は、本願発明の「立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示し、複数のゲームシーンを有するゲームを実行可能な携帯型表示制御装置」に相当する。

刊行物1発明は、前記操作部から入力される操作信号や前記情報記憶媒体から読み出すゲームプログラム等に基づいて種々のゲーム処理を実行するものであり、前記ゲーム演算部は、前記視点間隔から2つの視点の(オブジェクト空間における)座標を決定して前記画像生成部に出力し、前記画像生成部は、前記視点間隔決定部から各視点の座標が入力されると、左目用画像、右目用画像を生成し、生成された各画像をインターリーブして前記表示部に表示させるものである。
刊行物1発明における「前記操作部から入力される操作信号」、「オブジェクト空間」は、それぞれ、本願補正発明の「ユーザによる所定の操作部に対する操作」、「仮想空間」に相当する。
また、刊行物1発明において、各視点の座標が入力されると、左目用画像、右目用画像を生成することは、各視点の座標が入力されるたびに各視点からみた画像をそれぞれ画像生成部で生成することであるから、本願補正発明における、2台の仮想カメラで仮想空間を繰り返し撮像することによって、右目用画像と左目用画像を取得することに相当する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示し、複数のゲームシーンを有するゲームを実行可能な携帯型表示制御装置であって、
ユーザによる所定の操作部に対する操作を受け付け、当該操作に応じた処理を実行することにより仮想空間に変化をもたらすとともに、2台の仮想カメラで仮想空間を繰り返し撮像することによって取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記表示手段に立体視画像を表示させる処理手段と、
を備える、携帯型表示制御装置」である点で一致し、その他の点では相違する。

以上をまとめると、本願補正発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示し、複数のゲームシーンを有するゲームを実行可能な携帯型表示制御装置であって、
ユーザによる所定の操作部に対する操作を受け付け、当該操作に応じた処理を実行することにより仮想空間に変化をもたらすとともに、2台の仮想カメラで仮想空間を繰り返し撮像することによって取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記表示手段に立体視画像を表示させる処理手段と、
を備える、携帯型表示制御装置。

(相違点)
本願補正発明は、
「前記携帯型表示制御装置のハウジングに設けられ、ユーザの操作によって所定方向に所定範囲内で可動する機構を有する立体視調整操作部と、
前記処理手段による処理に応じて前記表示手段に前記立体視画像が表示されている間に、前記立体視調整操作部に対するユーザの立体視調整操作を繰り返し受け付け、当該立体視調整操作によって調整された前記立体視調整操作部によって示される位置に応じて前記2台の仮想カメラ間の距離が調整されるように、前記2台の仮想カメラを調整する仮想カメラ調整手段と、を備え、
前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、前記ゲームシーン毎に定められた所定の基準値から前記立体視調整操作部によって示される位置に応じた度合いで調整し、
前記処理手段は、前記仮想カメラ調整手段によって前記2台の仮想カメラが調整された場合に、当該調整された2台の仮想カメラで前記仮想空間を撮像して取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記立体視画像の表示を更新する」
のに対し、刊行物1発明は、そのような立体視調整操作部や仮想カメラ調整手段は備えておらず、該仮想カメラ調整手段によって前記処理手段が表示を更新するものではない点。

(4)判断
相違点について検討する。

刊行物2の装置は、右目用と左目用の2つの映像源の映像をレンチキュラスクリーンに投影し、レンチキュラスクリーン上の各投影像を右目と左目にそれぞれ入射させ視差を与えることにより立体視を体験できるゲーム機であるから、「立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示し、ゲームを実行可能な表示制御装置」といえ、また、該装置は、プレイ用のレバーを操作してゲームを行うものであるから、「ユーザによる所定の操作部に対する操作を受け付け、当該操作に応じた処理を実行することにより、右目用画像と左目用画像とを用いて、前記表示手段に立体視画像を表示させる処理手段」を備えているといえる。

刊行物2の装置では、コントロールパネルに配置されたプレイ用のレバーの間に、両眼映像入射位置を調整するための操作ボタンが配置されている。この操作ボタンは、映像がはっきりと見えるように映像入射位置を変更し最適な立体像を作るためのものであるから、「前記表示制御装置のハウジングに設けられた立体視調整操作部」といえる。

刊行物2の装置は、プレイ中に操作ボタンを押すことにより両眼映像入射位置を調整できるものであり、操作ボタンは繰り返し操作できることは明らかである。また、前記両眼映像入射位置の調整は、「2台の仮想カメラ間の距離が調整されるように、前記2台の仮想カメラを調整する」ことであるといえるから、刊行物2の装置は、「前記処理手段による処理に応じて前記表示手段に前記立体視画像が表示されている間に、前記立体視調整操作部に対するユーザの立体視調整操作を繰り返し受け付け、当該立体視調整操作によって調整された値に応じて前記2台の仮想カメラ間の距離が調整されるように、前記2台の仮想カメラを調整する仮想カメラ調整手段」を備えているといえる。

刊行物2の装置において、操作ボタンによる調整が行われる値には調整前のデフォルトの所定の基準値といえるもの(例えば、【図3】(c)における6bや7b)があることは明らかであるから、刊行物2の装置は、「前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、所定の基準値から前記立体視調整操作部によって調整された値に応じて調整」するものであるといえる。

刊行物2の装置は、各操作信号の入力により両眼映像入力位置変更を示す信号を検出した場合にその信号にしたがった距離だけ変更するように両眼に入射する映像の内、左目用の映像、あるいは、右目用の画像を処理する両眼視点制御部を備えているから、「前記処理手段は、前記仮想カメラ調整手段によって前記2台の仮想カメラが調整された場合に、当該調整された2台の仮想カメラで前記仮想空間を撮像して取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記立体視画像の表示を更新する」ものであるといえる。

したがって、本願補正発明の文言を用いて記載すると、刊行物2には、
「立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示し、ゲームを実行可能な表示制御装置であって、
ユーザによる所定の操作部に対する操作を受け付け、当該操作に応じた処理を実行することにより、右目用画像と左目用画像とを用いて、前記表示手段に立体視画像を表示させる処理手段と、
前記表示制御装置のハウジングに設けられた立体視調整操作部と、
前記処理手段による処理に応じて前記表示手段に前記立体視画像が表示されている間に、前記立体視調整操作部に対するユーザの立体視調整操作を繰り返し受け付け、当該立体視調整操作によって調整された値に応じて前記2台の仮想カメラ間の距離が調整されるように、前記2台の仮想カメラを調整する仮想カメラ調整手段と、を備え、
前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、所定の基準値から前記立体視調整操作部によって調整された値に応じて調整し、
前記処理手段は、前記仮想カメラ調整手段によって前記2台の仮想カメラが調整された場合に、当該調整された2台の仮想カメラで前記仮想空間を撮像して取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記立体視画像の表示を更新する、表示制御装置。」
が記載されているといえる。

刊行物2の装置は、立体視を体験できるゲーム機は作られた像を立体視しているためにプレイヤは疲れやすく、またプレイヤによって両眼の目の間隔に個人差があるという課題を解決し、左右の映像が入射する間隔を調整して映像をはっきりと見えるようにすることを目的として、上記のような立体視調整操作部を備えて調整をするものである(上記(2)ク.サ.を参照)。
刊行物1発明も、立体視映像を表示するゲーム装置に関するものであるから、刊行物2の装置のように、プレイヤは疲れやすく、またプレイヤによって両眼の目の間隔に個人差があるという課題を解決し、左右の映像が入射する間隔を調整して映像をはっきりと見えるようにするという目的を想定することができ、この目的のために、同様の立体視調整操作部を備えて調整をすることは当業者が容易に想到し得ることである。その際の操作部の構成として、普通に用いられているスライド式のボリューム(本願補正発明の「ユーザの操作によって所定方向に所定範囲内で可動する機構を有する」操作部に相当)を用いて、操作部によって示される位置に応じて調整することは当業者が適宜なし得ることにすぎない。
刊行物1発明は、ゲームシナリオに沿って注目点を設定し、視点間隔を決定するもの、すなわち、ゲームシーン毎に所定の(2台の仮想カメラ間の距離の)基準値が定められるものであり、また、所定の基準値から調整をするときに基準値からの変化の度合いを調整することは普通に行われることであるから、刊行物1発明に刊行物2の技術を適用する場合、前記ゲームシーン毎に定められた所定の基準値から立体視調整操作部によって示される位置に応じた度合いで調整することとなるのは自然なことである。
したがって、刊行物1発明において、刊行物2に記載された技術および周知技術を適用し、「前記携帯型表示制御装置のハウジングに設けられ、ユーザの操作によって所定方向に所定範囲内で可動する機構を有する立体視調整操作部と、前記処理手段による処理に応じて前記表示手段に前記立体視画像が表示されている間に、前記立体視調整操作部に対するユーザの立体視調整操作を繰り返し受け付け、当該立体視調整操作によって調整された前記立体視調整操作部によって示される位置に応じて前記2台の仮想カメラ間の距離が調整されるように、前記2台の仮想カメラを調整する仮想カメラ調整手段と、を備え、前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、前記ゲームシーン毎に定められた所定の基準値から前記立体視調整操作部によって示される位置に応じた度合いで調整し、前記処理手段は、前記仮想カメラ調整手段によって前記2台の仮想カメラが調整された場合に、当該調整された2台の仮想カメラで前記仮想空間を撮像して取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記立体視画像の表示を更新する」ことは、当業者が容易に想到し得ることである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)まとめ
以上により、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成23年改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成23年11月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年7月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
立体視表示可能な表示手段に立体視画像を表示させる携帯型表示制御装置であって、
ユーザによる所定の操作部に対する操作を受け付け、当該操作に応じた処理を実行することにより仮想空間に変化をもたらすとともに、2台の仮想カメラで仮想空間を繰り返し撮像することによって取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記表示手段に立体視画像を表示させる処理手段と、
前記携帯型表示制御装置のハウジングに設けられ、ユーザの操作によって所定方向に所定範囲内で可動する機構を有する立体視調整操作部と、
前記処理手段による処理に応じて前記表示手段に前記立体視画像が表示されている間に、前記立体視調整操作部に対するユーザの立体視調整操作を繰り返し受け付け、当該立体視調整操作によって調整された前記立体視調整操作部によって示される位置に応じて前記2台の仮想カメラ間の距離が調整されるように、前記2台の仮想カメラを調整する仮想カメラ調整手段と、を備え、
前記仮想カメラ調整手段は、前記2台の仮想カメラ間の距離を、所定の基準値から前記立体視調整操作部によって示される位置に応じて調整し、
前記処理手段は、前記仮想カメラ調整手段によって前記2台の仮想カメラが調整された場合に、当該調整された2台の仮想カメラで前記仮想空間を撮像して取得された右目用画像と左目用画像とを用いて、前記立体視画像の表示を更新する、携帯型表示制御装置。」

2.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記第2.2.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.2.で検討した本願補正発明の限定事項(上記第2.2.の下線部)を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2.2.(5)に記載したとおり、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項2ないし17について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-12 
結審通知日 2012-10-15 
審決日 2012-10-26 
出願番号 特願2011-68400(P2011-68400)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 千葉 輝久
渡邊 聡
発明の名称 表示制御プログラム、表示制御装置、表示制御システム、及び、表示制御方法  
代理人 石原 盛規  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

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