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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1267600
審判番号 不服2011-16918  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-05 
確定日 2012-12-17 
事件の表示 特願2006-536877「電気光学ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月 6日国際公開、WO2005/041160、平成19年 4月12日国内公表、特表2007-509379〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成16年(2004年)10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年10月24日、2003年10月27日、2003年11月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項に係る発明は、平成23年8月5日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「カプセル封入された電気泳動ディスプレイを作成するプロセスであって、
懸濁流体内に分散されて電界の印加時に該懸濁流体内で移動しうる複数の荷電粒子をそれぞれ含む複数の別個の液滴(104)をポリマー・バインダ(106’)内に備える電気泳動媒体を準備する段階と、
少なくとも1つの電極を有するバックプレーン(110)を提供する段階と、
前記電気泳動媒体を前記バックプレーン(110)に積層する段階とを有するディスプレイの形成プロセスにおいて、
前記ポリマー・バインダ(106’)が流動する温度で前記電気泳動媒体を前記バックプレーン(110)に直接接触するようにし、前記バックプレーン(110)に前記電気泳動媒体を固定させることを特徴とする、ディスプレイの形成プロセス。」

2 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用した、本願の優先日前の平成15年(2003年)9月25日に頒布された刊行物である特開2003-270673号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示パネルに係り、特に、電界の印加により移動する電気泳動粒子を用いた表示パネルに関する。」

(2)「【0020】<実施例1>まず、テトラクロロエチレン溶媒100部に、溶液中で負に帯電するポリエチレン樹脂で表面被覆した平均粒径3μmの酸化チタン60部と、溶液中で正に帯電するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4.0μmのカーボンブラック40部とが分散された分散液を作成した。
【0021】この分散液40部を、40℃に調整された水80部にゼラチン10部と乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.1部を配合した水溶液と混合し、液温を40℃に保ちながらホモジナイザーを用いて攪拌、O/Wエマルションを得た。
【0022】次いで、得られたO/Wエマルションと、40℃に調整された水80部にアラビアゴム10部を配合した水溶液とをディスパーを用い混合し、液温を40℃に保ちながら、酢酸を用いて溶液のpHを4に調製、コアセルベーションによりマイクロカプセル壁を形成した。
【0023】次に、液温を5℃に調整、37重量%ホルマリン溶液1.9部を加え、水酸化ナトリウムを用いて溶液のpHを9に調整した。
【0024】そして、攪拌しながら液温を50℃に調整することでマイクロカプセル壁を硬化させ、白色及び黒色の粒子が分散した分散液を封入したマイクロカプセルを作成した。
【0025】このようにして作成したマイクロカプセルの径をふるい分けにより、40μmに揃えた。
【0026】得られたマイクロカプセル100部と、ポリウレタン樹脂溶液(ニッポラン5037,日本ポリウレタン工業社製)100部と硬化剤(コロネートHL,日本ポリウレタン工業社製)5部とを混合して、マイクロカプセル塗工液を作成した。このマイクロカプセル塗工液を、全面にITOの電極が設けられた透明ガラス基板上にアプリケーターを用いて塗布し、70℃で30分間乾燥し、膜厚50μmのマイクロカプセル層を得た。
【0027】次に、このマイクロカプセル層上に真空蒸着法により、膜厚50nmの酸化珪素被膜からなるバリア層を形成した。
【0028】さらに、このバリア層上に、ポリエステル樹脂(エリーテルUE-3220,ユニチカ社製)40部とトルエン60部とを混合して作成した接着剤塗工液をアプリケーターを用いて塗布し、70℃で20分間乾燥し、膜厚20μmの接着層を得た。
【0029】このようにして作成した前面板を、透明ガラス基材上にITOによる縦110μm×横110μmのパターンが20μmの間を空けて繰り返し形成されている画素電極及びマトリクス電極(図示せず)、スイッチング素子(図示せず)が形成されている背面板と、80℃の熱プレスにより貼り合わせ、表示パネルを得た。
【0030】また、同様に作成した前面板を20℃60%の環境下で6ヶ月間保存した。その後、同様に背面板と貼り合わせ、表示パネルを得た。
【0031】得られたそれぞれの表示パネルに±30Vの電圧を印加し、応答速度を評価したところ、20℃60%の環境下で6ヶ月間保存した前面板を用いた表示パネルの応答速度は、保存前の前面板を用いた表示パネルと同じく白表示および黒表示とも1.5秒と変化は認められず、表示特性が保持されていることが確認された。
【0032】<実施例2>実施例1と同様のマイクロカプセル塗工液を用い、全面にITO電極が設けられた透明ガラス基板上にアプリケーターを用いて塗布し、70℃で30分間乾燥し、膜厚50μmのマイクロカプセル層を得た。
【0033】そして、真空蒸着法により、膜厚50nmの酸化珪素被膜からなるバリア層を設けた膜厚38μmのポリエチレンテレフタラート(以下PETと略す)基材とラミネートにより貼り合わせ、前面板を作成した。
【0034】このようにして得られた前面板を、実施例1と同様の背面板と、バリア層を設けたPET基材を剥がした後80℃の熱プレスにより貼り合わせ、表示パネルを得た。
【0035】また、同様に作成した前面板を20℃60%の環境下で6ヶ月間保存した。その後、同様に背面板と貼り合わせ、表示パネルを得た。
【0036】得られたそれぞれの表示パネルに±30Vの電圧を印加し、応答速度を評価したところ、20℃60%の環境下で6ヶ月間保存した前面板を用いた表示パネルの応答速度は、保存前の前面板を用いた表示パネルと同じく白表示および黒表示とも1.5秒と変化は認められず、表示特性が保持されていることが確認された。」

(3)「【0061】
【図面の簡単な説明】
・・・
【図2】
図2は本発明の一実施の形態の表示パネルの断面構成図。
・・・
【符号の説明】
1…透明ガラス基材
2…透明電極
3…マイクロカプセル層
31…黒色粒子と白色粒子を封入したマイクロカプセル
32…白色粒子
33…黒色粒子
34…透明分散媒
35…バインダ材
4…バリア層
・・・
6…画素電極
7…透明ガラス基材
8…ポリエチレンテレフタレート基材
・・・
200…表示パネル」

(4)図2は次のものである。


3 引用発明
(1)上記2(3)を踏まえて引用刊行物の図2をみると、バリア層4とともにポリエチレンテレフタレート基材8をはがす様子が示されていることが理解でき、上記2(2)の「このようにして得られた前面板を、実施例1と同様の背面板と、バリア層を設けたPET基材を剥がした後80℃の熱プレスにより貼り合わせ、表示パネルを得た。」(【0034】)との記載に照らすと、同図は、上記2(2)の【0032】?【0034】に記載される実施例2の内容を示すものと認められ、同図において、上記【0032】に記載の「ITO電極」、「透明ガラス基板」、「マイクロカプセル層」、【0033】に記載の「酸化珪素被膜からなるバリア層」、「ポリエチレンテレフタラート(以下PETと略す)基材」、【0034】に記載の「実施例1と同様の背面板」に係る【0029】に記載の「透明ガラス基板」及び「画素電極」が、それぞれ、「透明電極2」、「透明ガラス基材1」、「マイクロカプセル層3」、「バリア層4」、「ポリエチレンテレフタレート基材8」、「透明ガラス基材7」及び「画素電極6」として示されていると認められる。
そして、同図には、前記「マイクロカプセル層」に関して、【0020】?【0026】に記載の「マイクロカプセル」、「(溶液中で負に帯電するポリエチレン樹脂で表面被覆した平均粒径3μmの酸化チタンの)白色粒子」、「(溶液中で正に帯電するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4.0μmのカーボンブラックの)黒色粒子」、「分散液」及び「マイクロカプセル塗工液を乾燥させたマイクロカプセル層におけるマイクロカプセルの外側の部分」が、それぞれ、「黒色粒子と白色粒子を封入したマイクロカプセル31」、「白色粒子32」、「黒色粒子33」、「透明分散媒34」及び「バインダ材35」として示されていると認められる。

(2)上記(1)及び上記2(2)の【0032】?【0034】の記載によれば、引用刊行物には、
「全面にITO電極が設けられた透明ガラス基板上に、実施例1と同様のマイクロカプセル塗工液を塗布して、マイクロカプセル層を得、酸化珪素被膜からなるバリア層を設けたポリエチレンテレフタラート基材とラミネートにより貼り合わせて、前面板を作成し、得られた前面板を、実施例1と同様の背面板と、バリア層を設けたポリエチレンテレフタラート基材を剥がした後80℃の熱プレスにより貼り合わせて表示パネルを得る表示パネルの作成方法。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「表示パネル」は、上記2(1)の記載に照らして、「電界の印加により移動する電気泳動粒子を用いた表示パネル」であると認められる。
また、引用発明における「(実施例1と同様のマイクロカプセル塗工液を塗布して得られる)マイクロカプセル層」は、上記2(2)の【0020】?【0026】の記載に照らして、「(溶液中で負に帯電するポリエチレン樹脂で表面被覆した平均粒径3μmの酸化チタンの)白色粒子及び(溶液中で正に帯電するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4.0μmのカーボンブラックの)黒色粒子が分散した分散液を封入したマイクロカプセル100部とポリウレタン樹脂溶液100部と硬化剤5部とを混合して得たマイクロカプセル塗工液を透明ガラス基板上にアプリケーターを用いて塗布し、70℃で30分間乾燥したマイクロカプセル層」であると認められ、引用発明において、電気泳動粒子は、白色粒子及び黒色粒子としてマイクロカプセルに封入されているものと認められるから、引用発明の「表示パネルの作成方法」は、本願発明と同様に「カプセル封入された電気泳動ディスプレイを作成するプロセス」といえる。
そして、引用発明の「マイクロカプセル層」に含まれる「((溶液中で負に帯電するポリエチレン樹脂で表面被覆した平均粒径3μmの酸化チタンの)白色粒子及び(溶液中で正に帯電するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4.0μmのカーボンブラックの)黒色粒子が分散した分散液を封入したマイクロカプセル中の)分散液」及び「マイクロカプセル層におけるマイクロカプセルの外側の部分(引用刊行物の図2においてバインダ材35として示されているもの)」が本願発明の「懸濁流体内に分散されて電界の印加時に該懸濁流体内で移動しうる複数の荷電粒子をそれぞれ含む複数の別個の液滴(104)」及び「ポリマー・バインダ(106’)」にそれぞれ相当するところであり、引用発明の「マイクロカプセル層」は、本願発明の「電気泳動媒体」に相当すると認められるから、引用発明は、本願発明と同様に「懸濁流体内に分散されて電界の印加時に該懸濁流体内で移動しうる複数の荷電粒子をそれぞれ含む複数の別個の液滴(104)をポリマー・バインダ(106’)内に備える電気泳動媒体を準備する段階」を有する「ディスプレイの形成プロセス」といえる。

(2)引用発明の「実施例1と同様の背面板」は、「画素電極及びマトリクス電極、スイッチング素子が形成されている背面板」であるから、本願発明の「少なくとも1つの電極を有するバックプレーン(110)」に相当するところであり、引用発明は、本願発明と同様に「少なくとも1つの電極を有するバックプレーン(110)を提供する段階」を有する「ディスプレイの形成プロセス」といえる。

(3)引用発明は、前面板からバリア層を設けたポリエチレンテレフタラート基材を剥がした後に背面板を貼り合わせるものであるから、マイクロカプセル層と背面板を貼り合わせるものであり、本願発明と同様に「前記電気泳動媒体を前記バックプレーン(110)に積層する段階を有するディスプレイの形成プロセス」といえる。
そして、引用発明は、マイクロカプセル層と背面板の貼り合わせを80℃の熱プレスにより行うものであり、また、そのマイクロカプセル層は、「マイクロカプセル100部とポリウレタン樹脂溶液100部と硬化剤5部とを混合して得たマイクロカプセル塗工液を透明ガラス基板上にアプリケーターを用いて塗布し、70℃で30分間乾燥した」ものであるところ、本願発明の「ポリマー・バインダ」について、本願明細書の【0048】には、「接着剤なしプロセスにおいて使用されるポリマー・バインダが、ポリウレタンであることが一般に好ましい」と記載されていることに照らせば、マイクロカプセル層におけるマイクロカプセルの外側の部分(引用刊行物の図2におけるバインダ材35)がポリウレタンで構成されている引用発明は、本願発明と同様に「前記ポリマー・バインダ(106’)が流動する温度で前記電気泳動媒体を前記バックプレーン(110)に直接接触するようにし、前記バックプレーン(110)に前記電気泳動媒体を固定させる」「ディスプレイの形成プロセス」であると認められる。

(4)以上のとおりであって、本願発明と引用発明との間に格別の相違は認められない。
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であると認められる。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
よって、審決のとおり結論する。
 
審理終結日 2012-07-26 
結審通知日 2012-07-27 
審決日 2012-08-07 
出願番号 特願2006-536877(P2006-536877)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 北川 創
吉野 公夫
発明の名称 電気光学ディスプレイ  
代理人 森 徹  
代理人 浅村 肇  
代理人 白江 克則  
代理人 浅村 皓  

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