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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1267619
審判番号 不服2011-1883  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-26 
確定日 2012-12-20 
事件の表示 特願2008-230331「通信機器、通信履歴表示方法および履歴表示プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月25日出願公開、特開2010- 68060〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年9月8日の出願であって、平成22年10月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年1月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成24年7月19日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年9月20日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月20日付け手続補正書により補正された請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「過去の通信相手の識別情報を含み、通信の履歴を示す履歴情報を記憶する通信履歴記憶手段と、
前記履歴情報に、受け付けられた付加情報を設定する設定手段と、
通信時において、前記記憶された履歴情報のうちから通信相手の識別情報を含む履歴情報を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された履歴情報に前記付加情報が設定されている場合、所定の音の発音、振動および他の機器への情報の転送のうちの少なくとも1つで通知する通知手段と、
前記抽出された履歴情報を表示する表示制御手段と、を備え、
前記付加情報は、連絡の要否を指示する情報であり、
前記表示制御手段は、着信時において、前記抽出された履歴情報に前記付加情報が設定されている場合、該付加情報をさらに表示する、通信機器。」

3.引用例発明
当審で通知した拒絶理由に引用された特表2007-529159号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【0001】
本発明は、携帯端末及び発着信履歴管理方法に関し、より特定的には、相手側端末の電話番号を発着信時刻と共に記憶する機能を有する携帯端末、その発着信履歴を管理する方法、その方法を実行するためのコンピュータ読み取り可能なプログラム及びプログラム記録媒体に関する。」

ロ.「【0027】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る発着信履歴管理方法を用いた携帯端末のソフトウエア構成を説明する図である。図2のROM22に格納されているプログラムは、CPU21に読み取られることによって、発着信検出部61、情報取得部62、着信履歴作成部63、着信履歴記憶部64、着信履歴通知部65、及び応答メッセージ格納部66としての機能を実現する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る発着信履歴管理方法の処理手順を説明するフローチャートである。
【0028】
発着信検出部61は、携帯端末10への電話着信を検出する(ステップS71)。電話の着信を検出すると、発着信検出部61は、その電話の番号(又は所有者名)及びその電話の着信時刻を取得する(ステップS72)。情報取得部62は、発着信検出部61で着信が検出されたことに応じて、この検出に関連する付随情報を取得する(ステップS75)。この第2の実施形態で説明する付随情報とは、着信した電話に対して代替応答した応答メッセージを特定するための情報である。この応答メッセージは、例えば図8に示すような内容の音声であり、ユーザAによって応答メッセージ格納部66に予め格納されている。応答メッセージで対応する場合には、応答メッセージボタン152の押下に応じて図8に示す応答メッセージの選択画面が画面12に表示され、その中から1つの応答メッセージが選択される。なお、マナーモード中に着信があった場合は、自動的に応答メッセージの選択画面が表示されるようにしてもよい。
【0029】
応答メッセージを取得するにあたり、情報取得部62は、発着信検出部61で検出された着信に対して、所定の応答メッセージを流して電話対応されたかどうかを判断する(ステップS74)。ここで、情報取得部62は、応答メッセージを流して電話対応されたと判断した場合、その応答メッセージのIDを応答メッセージ格納部66から取得する(ステップS75)。
【0030】
着信履歴作成部63は、情報取得部62で取得された応答メッセージのIDと、発着信検出部61で検出された電話番号及び着信時刻とを、関連付けた履歴情報を作成する(ステップS76)。そして、着信履歴作成部63は、作成した履歴情報を着信履歴記憶部64に記憶する(ステップS77)。図9は、着信履歴記憶部64に記憶される着信履歴情報の一例を示す図である。図9のデータ91では、2004年7月7日18時半に090-XXXX-XXXX(所有者:SUGI)から着信した電話に対して、「15時まで定例会議です」という応答メッセージで対応したことを示している。この着信履歴情報には、着信電話番号に折り返し電話をかけたか否かを示すリダイヤルフラグ92が設けられている。また、リダイヤルフラグ92は、着信相手から再度着信があった場合にリダイヤル済みとして設定してもよい。なお、応答メッセージで対応しない場合でも、着信電話番号と着信時刻とが着信履歴として記憶されることは周知の通りである。
【0031】
こうして記憶された履歴情報は、例えば着信時に次のように利用される。発着信検出部61において、携帯端末10による電話の着信が検出されて電話番号(又は所有者名)が取得されると(ステップS71、S72)、着信履歴通知部65は、この電話番号に対応した履歴情報が着信履歴記憶部64にすでに記憶されているか否かを確認する(ステップS73)。確認の結果、履歴情報が記憶されている場合には、着信履歴通知部65は、着信履歴記憶部64からその履歴情報を読み出して、画面12やスピーカ13等を介してユーザに情報内容を通知する(ステップS78、S82)。ここで、着信履歴通知部65は、応答メッセージが対応付けられており(ステップS79、Yes)、かつリダイヤルフラグが「0」である(ステップS80、Yes)場合には、その応答メッセージを応答メッセージ格納部66から取得して画面12等を介してユーザに通知する(ステップS81、S82)。図10は、画面12に表示されることで通知される内容の一例である。図10は、前回の着信時に「通勤中。電車の中です」との応答メッセージを流し、通話していない相手(電話番号「090-XXXX-XXXX」)から再度電話がかかってきた場合の、画面表示例である。なお、応答メッセージを文字で画面表示する代わりに、又は画面表示すると共に応答メッセージの内容を音声で再生するようにしてもよい。
【0032】
また、着信履歴を参照して、応答メッセージで対応した相手へこちらから電話発信する場合についても、例えば次のように利用される。図11は、本発明の第2の実施形態に係る発着信履歴管理方法の処理手順を説明する他のフローチャートである。
【0033】
電話をかけたいユーザは、発着信履歴ボタン153を押下げて、図12に示す着信履歴一覧を画面12に表示させる(ステップS111、S112)。ユーザによって1つの着信履歴が選択されると、着信履歴通知部65は、着信履歴記憶部64からその着信履歴の履歴情報を読み出して画面12に表示させ、ユーザに履歴情報の内容を通知する(ステップS113、S117)。このとき、着信履歴通知部65は、応答メッセージが対応付けられており(ステップS114、Yes)、かつリダイヤルフラグが「0」である(ステップS115、Yes)場合には、その応答メッセージを応答メッセージ格納部66から取得して画面12に表示させる(ステップS116、S117)。そして、着信履歴作成部63は、着信履歴の内容を確認したユーザによって引き続いて電話がかけられる場合には(ステップS118、Yes)、リダイヤルフラグに「1」をセットした後(ステップS119)、通話処理を実行する(ステップS120)。
【0034】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る発着信履歴管理方法によれば、応答メッセージを電話着信と結び付けて記憶する。これにより、ユーザは、前回の電話着信の時にどの応答メッセージで対応したかを容易に確認することができるため、次回の通話時において誤った応対をしてしまうことを事前に防止でき、円滑な通話を行うことができる。」

引用例の段落【0028】には、着信に対して応答メッセージで対応する場合には、複数の応答メッセージの中から、1つの応答メッセージが選択されることが記載されており、【0030】には、選択された応答メッセージは履歴情報に関連付けられることが記載されている。したがって、引用例の携帯端末は、「履歴情報に、選択された応答メッセージを関連付ける手段」を備えているといえる。
引用例の段落【0031】には、着信時の動作について、「この電話番号に対応した履歴情報が着信履歴記憶部64にすでに記憶されているか否かを確認する(ステップS73)。確認の結果、履歴情報が記憶されている場合には、着信履歴通知部65は、着信履歴記憶部64からその履歴情報を読み出して、画面12やスピーカ13等を介してユーザに情報内容を通知する(ステップS78、S82)。」と記載されている。
したがって、引用例の携帯端末は、「着信時において、前記記憶された履歴情報のうちから着信のあった電話番号を含む履歴情報を読み出す読出手段」及び「前記読み出された履歴情報を表示する表示手段」を備えているといえる。
また、引用例の段落【0031】には、「ここで、着信履歴通知部65は、応答メッセージが対応付けられており(ステップS79、Yes)、かつリダイヤルフラグが「0」である(ステップS80、Yes)場合には、その応答メッセージを応答メッセージ格納部66から取得して画面12等を介してユーザに通知する(ステップS81、S82)。」と記載されている。
したがって、引用例の携帯端末は、「前記読出手段により読み出された履歴情報に前記応答メッセージが関連付けられている場合、前記応答メッセージを画面表示で通知する通知手段」を備えているといえる。
また、引用例の図8を参照すれば、応答メッセージは、「すぐにかけ直します。」等の情報であることがわかる。

したがって、引用例には、技術常識を考慮すると、
「着信のあった電話番号を含み、着信の履歴を示す履歴情報を記憶する着信履歴記憶部と、
前記履歴情報に、選択された応答メッセージを関連付ける手段と、
着信時において、前記記憶された履歴情報のうちから着信のあった電話番号を含む履歴情報を読み出す読出手段と、
前記読出手段により読み出された履歴情報に前記応答メッセージが関連付けられている場合、前記応答メッセージを画面表示で通知する通知手段と、
前記読み出された履歴情報を表示する表示手段と、を備え、
前記応答メッセージは、「すぐにかけ直します。」等の情報であり、
前記表示手段は、着信時において、前記読み出された履歴情報に前記応答メッセージが関連付けられている場合、該応答メッセージをさらに表示する、携帯端末。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願明細書の段落【0021】には、「通信は、着信及び発信の少なくともいずれか一方を含む。」と記載されているように、引用発明の「着信」は本願発明の「通信」に含まれるものである。
引用発明の「着信のあった電話番号」は、本願発明の「過去の通信相手の識別情報」に相当する。
引用発明の「着信の履歴を含む履歴情報」は、本願発明の「通信の履歴を含む履歴情報」に相当する。
引用発明の「着信履歴記憶部」は、本願発明の「通信履歴記憶手段」に相当する。
引用発明の「応答メッセージ」は履歴情報に関連付けられるものであるから、履歴情報の「付加情報」であるといえる。
引用発明の「選択された応答メッセージ」は、本願発明の「受け付けられた付加情報」に相当するので、引用発明の「前記履歴情報に、選択された応答メッセージを関連付ける手段」は、本願発明の「前記履歴情報に、受け付けられた付加情報を設定する設定手段」に相当するといえる。
引用発明の「着信時」は、本願発明の「通信時」に相当する。
引用発明の「着信のあった電話番号を含む履歴情報を読み出す読出手段」は、本願発明の「通信相手の識別情報を含む履歴情報を抽出する抽出手段」に相当する。
引用発明の「前記読み出された履歴情報を表示する表示手段」は、本願発明の「前記抽出された履歴情報を表示する表示制御手段」と実質的に一致している。
引用発明の『「すぐにかけ直します。」等の情報』と、本願発明の「連絡の要否を指示する情報」とは、「連絡に関する情報」である点で共通している。
引用発明の「携帯端末」は、本願発明の「通信機器」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「過去の通信相手の識別情報を含み、通信の履歴を示す履歴情報を記憶する通信履歴記憶手段と、
前記履歴情報に、受け付けられた付加情報を設定する設定手段と、
通信時において、前記記憶された履歴情報のうちから通信相手の識別情報を含む履歴情報を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された履歴情報に前記付加情報が設定されている場合、通知する通知手段と、
前記抽出された履歴情報を表示する表示制御手段と、を備え、
前記付加情報は、連絡に関連する情報であり、
前記表示制御手段は、着信時において、前記抽出された履歴情報に前記付加情報が設定されている場合、該付加情報をさらに表示する、通信機器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「通知手段」に関して、本願発明では、「所定の音の発音、振動および他の機器への情報の転送のうちの少なくとも1つで通知する」のに対して、引用発明では、「画面表示で通知する」点。
[相違点2]
「連絡に関連する情報」に関して、本願発明では、「連絡の要否を指示する情報」であるのに対して、引用発明では、『「すぐにかけ直します。」等の情報』である点。

5.当審の判断
[相違点1]について
引用例の段落【0031】には、「なお、応答メッセージを文字で画面表示する代わりに、又は画面表示すると共に応答メッセージの内容を音声で再生するようにしてもよい。」と記載されており、応答メッセージの内容を画面表示すると共に、音声で再生すること、すなわち「所定の音の発音」で通知することが示唆されている。
したがって、相違点1に係る構成を採用することに困難性は認められない。
[相違点2]について
引用発明において、着信に「すぐにかけ直します。」との応答メッセージで応答した場合は、その相手に連絡を要することは当然のことであるから、「すぐにかけ直します。」等の情報を、「連絡の要否を指示する情報」とすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-18 
結審通知日 2012-10-23 
審決日 2012-11-05 
出願番号 特願2008-230331(P2008-230331)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 菅原 道晴
山本 章裕
発明の名称 通信機器、通信履歴表示方法および履歴表示プログラム  
代理人 中川 雅博  

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