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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1267649
審判番号 不服2011-21902  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-11 
確定日 2012-12-20 
事件の表示 特願2001-550820「表面に取り付け可能な発光ダイオード光源および発光ダイオード光源を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月12日国際公開、WO01/50540、平成15年 6月24日国内公表、特表2003-519929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成12年(2000年)12月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年12月30日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その請求項に係る発明は、平成23年10月11日に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし37に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「リードフレーム(10)上にLEDチップ(1)が取り付けられており、リードフレーム(10)は一体の透明なプラスチック成形体(3)で取り囲むように形成されており、その際、
前記リードフレーム(10)は、互いに絶縁された2つのリードフレーム接続部分(11、12)を有しており、
前記LEDチップ(1)は、リードフレーム接続部分の一方(12)の上に配置されており、かつ
前記リードフレーム接続部分の他方(11)は、ボンディングワイヤ(2)によって、LEDチップ(1)と接続されており、
前記プラスチック成形体(3)の少なくとも2個の側面からそれぞれ1つのリードフレーム接続部分(11,12)が突出しており、かつそれぞれのリードフレーム接続部分(11,12)の透明なプラスチック成形体(3)の内部に、チップ取り付け領域(16)から、発光ダイオード光源の取り付け面(13)に向かってS型の湾曲部(14,15)を有する
ことを特徴とする表面に取り付け可能な発光ダイオード光源。」

2 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表平11-500584号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【特許請求の範囲】
1.発光物質が添加されている透明なエポキシ注型樹脂を基材とし、紫外線、青色光或いは緑色光を放出する半導体素体(1)を備えたエレクトロルミネセンス素子のための波長変換する注型材料(5)であって、この透明なエポキシ注型樹脂に、一般式A_(2)B_(5)X_(12):Mを持つ蛍光物質の群からの発光物質顔料(6)を備えた無機の発光物質顔料粉末が分散され、かつこの発光物質顔料が≦20μmの粒子の大きさと平均粒子直径d_(50)≦5μmを持っていることを特徴とする波長変換する注型材料。」(2頁1行?8行)

イ 「この発明は、特に紫外線、青色或いは緑色光を放出する物体を備えたエレクトロルミネセンス素子に使用するための、発光物質が添加されている透明なエポキシ注型樹脂を基材とした波長変換する注型材料に関する。」(5頁3行?5行)

ウ 「この発明による注型材料は放射線を放出する半導体素体、特にGa_(x)In_(1-X)N或いはGa_(x)Al_(1-X)Nからなる活性半導体層或いは層列を備え、動作中に紫外線、青色及び/又は緑色スペクトル範囲の放射線を放出する半導体素体において良好に使用される。注型材料中の発光物質粒子はこのスペクトル範囲から出る放射線をより大きな波長を持つ放射線に変換して、半導体素子がこの放射線と紫外線、青色及び/又は緑色スペクトル範囲からの放射線とからなる混合放射線、特に混合色の光を放出するようにする。即ち、例えば、発光物質粒子は半導体素体から放出された放射線の一部をスペクトル的に選択的に吸収し、長波長範囲で放出する。好ましいことに半導体素体から放出された放射線は波長λが520μm或いはそれ以下において相対的な強度最大値を示し、発光物質粒子からスペクトル的に選択的に吸収された波長範囲はこの強度最大値の外にある。
同様に、好ましいことに、異なる波長で放出する複数の種々の発光物質粒子もまた注型材料に分散される。このことは特に異なるマトリクス格子に異なるドーピングにより達成される。これにより、好ましいことに、素子から放出される光の多種多様な混合及び色温度を作ることが可能である。このことは、全色に適したLEDに特に有利である。
この発明による注型材料の優れた使用方法においては放射線を放出する半導体素体(例えば、LEDチップ)は少なくとも部分的にこの注型材料で包囲されている。注型材料は、この場合、同時に素子の被覆(容器)として利用されるのがよい。この構成による半導体素子の利点は、主として、その製造のために慣用的な、従来の発光ダイオード(ラジアル形発光ダイオード)の製造のために使用されてきた生産ラインが使用できるということにある。素子の被覆には従来の発光ダイオードにおいて使用された透明な合成樹脂に代わってこの注型材料が容易に使用される。
この発明による注型樹脂によれば唯一の色の光源、特に唯一の青色光を放出する半導体を備えた発光ダイオードで、混合色、特に白色光が容易に得られる。例えば、青色光を放出する半導体素体でもって白色光を作るために、半導体素体から放出された放射線の一部が無機の発光物質顔料によって青色のスペクトル範囲から青色に対して補色の黄色のスペクトル範囲に変換される。
白色光の色温度或いは色位置は、その場合、発光物質の粒子の大きさ及び濃度を適切に選択することにより変えることができる。さらに、発光物質を混合して、これにより放出される光の所望の色位置を正確に設定することもできる。」(9頁23行?10頁28行)

エ 「図1のルミネセンス半導体素子においては、半導体素体1は導電性の接続手段、例えば金属蝋材或いは接着剤によりその裏側の接触11で第一の電気端子2に固定されている。表側の接触12はボンディングワイヤー14により第二の電気端子3に接続されている。
半導体素体1の自由表面及び電気端子2及び3の部分領域は、硬化された、波長変換する注型材料5で直接包囲されている。この注型材料は特に次の組成を持っている。即ち、エポキシ注型樹脂80?90重量%、発光物質顔料(YAG:Ce)≦15重量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル≦2重量%、テゴプレン6875-45≦2重量%、エアロシル200≦5重量%。
この発明による半導体素子の図2に示された実施例は、半導体素体1と電気端子2及び3の部分領域が波長変換する注型材料の代わりに透明な被覆15で包囲されている点で、図1のものと異なる。この透明な被覆15は半導体素体1から放出された放射線の波長変換の作用はせず、例えば発光ダイオードの技術分野で従来使われているエポキシ、シリコーン或いはアクリル樹脂、或いは例えば無機ガラスのような他の適当な透光性物質からなる。
この透明の被覆15上には、図2に示すように、波長変換する注型材料からなり、被覆15の全表面を覆う層4が被着されている。この層4はこの表面の部分領域のみを覆うようにすることも同様に考えられる。層4は、例えば、発光物質粒子6を添加されている透明なエポキシ樹脂からなる。この場合も、白色光を発する半導体素子の発光物質としてはYAG:Ceが特に適している。
図3に示した、この発明による注型材料を備えた特に好ましい素子においては、第一及び第二の電気端子2、3が空所9を備えた透明な、必要に応じて既製の基本容器8に埋め込まれている。ここで「既製」とは、容器8が、半導体素体が端子2に取り付けられる前に、既に端子2、3に例えば射出成形により形成されていることを意味する。容器8は、例えば透光性の樹脂からなり、空所9はその形状に関して半導体素体によって動作中放出される光の反射体17として(場合によっては、空所9の内壁に適当に被膜することにより)形成されている。このような容器8は特にプリント板に表面実装可能な発光ダイオードにおいて使用される。容器は半導体素体を組み立てる前に、電気端子2、3を備えている帯導体(リードフレーム)に、例えば射出成形によりる取り付けられる。
空所9は注型材料5で満たされ、この注型材料の組成は図1の説明と関連して上記に挙げたものに一致する。」(13頁18行?14頁21行)

オ 図1は次のものである。


上記図1から、第一の電気端子2及び第二の電気端子3は、注型材料5の左右の側面からそれぞれ突出していることが見てとれる。

カ 図3は次のものである。


(2)刊行物2
同じく、実願昭57-102839号(実開昭59-6839号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

「半導体素子下面より下の方にリード曲げ部を有し、該リード曲げ部の一部が封止材中にあり、残部が封止材面に埋設されほぼ該封止材面と同一面上にリード端面が露出していることを特徴とする半導体装置。」(1頁5行?9行)、
「まず、第1図、第2図(a),(b)を用いて従来技術によるTAB ICの例を説明する。従来は、テープキャリア11の金属リード12に半導体素子13の電極14を熱圧着し、その後電気テスト等を行ない樹脂封止して第1図に示すような個々のICとしていた。その後第2図(a),(b)のように成形金型にて成形する。この時、リード曲り、樹脂われ、成形不足等の不良を発生する。
第3図、第4図(a),(b)に本考案の実施例を示す。すなわち、テープキャリア31の金属リード32に半導体素子33の電極34を熱圧着し、その後、外部リード36が、半導体素子33の底面より下(100?300μm)になる様に該、金属リード32を成形し、成形された外部リード36部分を樹脂封止の底面となる様にシリコン、エポキシ等の樹脂35で封止する。その後、切断して、個々のICとする。この様に切断するだけで製品として使用でき、従来より発生した不良を無くすことができる。」(3頁1行?18行)

(3)刊行物3
同じく、特開平6-97349号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項2】 半導体チップの電極にインナーリードの内端が接続され、
上記インナーリードの外端の表面が上記半導体チップを封止する封止樹脂の表面に露出せしめられて外部端子とされたことを特徴とする樹脂封止型半導体装置」、
「【0002】
【従来の技術】図7は樹脂封止型半導体装置の従来例を示す断面図である。図面において、aはダイパッドで、当初リードフレームの一部を成していたものであり、この表面に接着剤bを介して半導体チップcがダイボンディングされている。
【0003】dは内端がワイヤeを介して半導体チップcの電極に接続されたリードで、内端部を除くほとんどが封止樹脂fの外部に露出せしめられている。そして、該リードdの外端部が配線基板の配線膜に接続されることになる。
【0004】尚、半導体チップcをベアのまま保管し配線基板の配線にバンプを介してフェイスダウンボンディングし、その後、半導体チップと配線基板との間の部分に樹脂を封止する方法、即ちフリップチップ実装方法もある。図8はこのような実装例を示す断面図である。同図においてgは配線基板、hは配線膜、iはバンプである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図7に示した従来の樹脂封止型半導体装置には下記のような問題点があった。樹脂封止型半導体装置全体の占有面積に占めるリードの封止樹脂fから露出した部分の占有面積の割合が大きく、そのことが樹脂封止型半導体装置の実装の高密度化を制約する要因となる。
【0006】また、各リードdの封止樹脂fから露出した部分を曲折し、その先端を配線基板の配線膜に接続するので、リードdの曲り折げ具合によってリードd先端の高さにバラツキが生じ、接続不良が生じる可能性がある。しかも、従来においてリードフレームを利用して組み立てる場合、樹脂封止後封止樹脂漏れ防止用タイバーをカットする必要があるが、リードの微細化、リードピッチの微小化に伴ってそのタイバーカットが難しくなる段階に至っている。具体的にはタイバーカット用金型の製造が難しくなっているのである。」

3 引用発明
前記2(1)エの図1に関する記載及びオによれば、刊行物1には、
「半導体素体1が導電性の接続手段によりその裏側の接触11で第一の電気端子2に固定され、半導体素体1の表側の接触12はボンディングワイヤー14により第二の電気端子3に接続されており、半導体素体1の自由表面及び電気端子2及び3の部分領域は、硬化された、波長変換する注型材料5で直接包囲され、第一の電気端子2及び第二の電気端子3は、注型材料5の左右の側面からそれぞれ突出しているルミネセンス半導体素子」が記載されているものと認められる。
ここで、同ア及びイの記載によれば、前記「波長変換する注型材料5」は、「発光物質が添加されている透明なエポキシ注型樹脂」を基材とするものであると認められる。
また、同ウの記載によれば、前記「半導体素体1」には、例えば、LEDチップが採用され、前記「ルミネセンス半導体素子」は、「発光ダイオード」を用いた光源として構成されるものであると認められる。
以上によれば、刊行物1には、
「LEDチップが導電性の接続手段によりその裏側で第一の電気端子に固定され、LEDチップの表側はボンディングワイヤーにより第二の電気端子に接続されており、LEDチップ及び第一の電気端子及び第二の電気端子の部分領域は、硬化された、発光物質が添加されている透明なエポキシ注型樹脂を基材とする注型材料で直接包囲され、第一の電気端子及び第二の電気端子は、注型材料の左右の側面からそれぞれ突出している発光ダイオードを用いた光源」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明を対比するに、引用発明の「LEDチップ」、「第一の電気端子」、「第二の電気端子」、「硬化された、発光物質が添加されている透明なエポキシ注型樹脂を基材とする注型材料」、「ボンディングワイヤー」及び「発光ダイオードを用いた光源」が、それぞれ、本願発明の「LEDチップ(1)」、「リードフレーム接続部分の一方(12)」、「リードフレーム接続部分の他方(11)」、「透明なプラスチック成形体(3)」、「ボンディングワイヤ(2)」及び「発光ダイオード光源」に相当する。
よって、両者は、
「リードフレーム(10)上にLEDチップ(1)が取り付けられており、リードフレーム(10)は一体の透明なプラスチック成形体(3)で取り囲むように形成されており、その際、
前記リードフレーム(10)は、互いに絶縁された2つのリードフレーム接続部分(11、12)を有しており、
前記LEDチップ(1)は、リードフレーム接続部分の一方(12)の上に配置されており、かつ
前記リードフレーム接続部分の他方(11)は、ボンディングワイヤ(2)によって、LEDチップ(1)と接続されており、
前記プラスチック成形体(3)の少なくとも2個の側面からそれぞれ1つのリードフレーム接続部分(11,12)が突出している発光ダイオード光源」
である点で一致し、
「本願発明は、『それぞれのリードフレーム接続部分(11,12)の透明なプラスチック成形体(3)の内部に、チップ取り付け領域(16)から、発光ダイオード光源の取り付け面(13)に向かってS型の湾曲部(14,15)を有する、表面に取り付け可能な発光ダイオード光源』であるのに対し、引用発明は、このようなものでない点」(以下「相違点」という。)
で相違するものと認められる。

5 判断
刊行物1には、「プリント基板に表面実装可能な発光ダイオード」について記載され(14頁17行、前記2(1)エの第3図に関する記載を参照。)、その図3には、電気端子2及び3の外側端が樹脂の容器8の底面に一致するように容器8の外部で曲げられている様子が示されているから、引用発明についても、表面実装可能なものとするべく、その第一の電気端子及び第二の電気端子をその図3に示されるように湾曲したものとすることは、当業者に当然に想起されるところ、硬化された注型材料から電極端子が突出した構造において、その電極端子を硬化された注型材料の外側で湾曲させることには、刊行物2や刊行物3に記載されるような問題があることが明らかであって、このような問題を解決する手段として、刊行物2や刊行物3に記載されるように、電極端子の湾曲部を硬化された注型材料の内部に位置するような構成とすることが周知であるから、引用発明における第一の電気端子及び第二の電気端子について、その外側端が硬化された注型材料の底面と一致するように湾曲させるとともに、その湾曲部が硬化された注型材料内に位置するようして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
また、本願発明が奏する効果についても、刊行物1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が予測可能なものであって、格別のものとはいえない。

6 むすび
以上によれば、本願発明は、引用発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-23 
結審通知日 2012-07-25 
審決日 2012-08-07 
出願番号 特願2001-550820(P2001-550820)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 知久  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 北川 創
松川 直樹
発明の名称 表面に取り付け可能な発光ダイオード光源および発光ダイオード光源を製造する方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 高橋 佳大  
代理人 篠 良一  
代理人 星 公弘  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  

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