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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03L
管理番号 1267711
審判番号 不服2010-21003  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-17 
確定日 2012-12-19 
事件の表示 特願2006-544126「利得を自動的に設定する位相ロックループ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月30日国際公開、WO2005/060103、平成19年11月 8日国内公表、特表2007-532045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年12月13日(パリ条約による優先権主張2003年12月12日(GB)英国)を国際出願日とする出願であって、平成22年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月17日に審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年9月17日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「利得を自動的に設定する位相ロックループ(PLL)であり、前記PLLは、
基準発振器周波数を分周して得られた第1の周波数と位相ロックループの電圧制御発振器周波数を分周して得られた第2の周波数の差を表す第1の信号を供給する周波数弁別器と、
前記周波数弁別器に結合された比較器であり、
前記第1の信号を受信し、
前記第1の信号からの情報に基づいて第2の信号を供給し、前記第2の信号は設定する位相ロックループに対する利得設定を表す比較器と、
複数の利得で動作可能であり、前記第2の信号を受信し、前記第2の信号に基づいて位相検出器利得を設定する位相検出器と、
を備える位相ロックループ。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-112817号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 発振信号(CLK)を基準周波数に分周して基準信号(LDR)を出力する基準分周器(1)と、
出力周波数信号(fv)を分周して比較信号(LDP)を出力する比較分周回路(2)と、
基準信号(LDR)と比較信号(LDP)を入力し、両信号(LDR,LDP)の位相差を検出し、位相差信号(φR,φP)を出力する位相比較器
(3)と、
位相比較器(3)から出力された位相差信号(φR,φP)に基づいた電圧信号(Do)を出力するチャージポンプ(4)と、
チャージポンプ(4)から出力された電圧信号(Do)を平滑し高周波成分を除去した制御電圧信号(VT)を出力するローパスフィルタ(5)と、
ローパスフィルタ(5)から出力された制御電圧信号(VT)の電圧値に応じた出力周波数信号(fv)を出力する電圧制御発振器(6)と、
基準分周器(1)の基準信号(LDR)と比較分周回路(2)の比較信号
(LDP)を入力し、その両信号(LDR,LDP)の周波数を比較し、その周波数差が規定値以内のときロック状態を示す信号(LD)を出力する周波数比較判定回路(7)とからなるPLL周波数シンセサイザ回路。
【請求項2】 請求項1に記載のPLL周波数シンセサイザ回路は、第2のチャージポンプ(8)を有し、第2のチャージポンプ(8)は周波数比較判定回路(7)がロック状態を示す信号(LD)を出力するとき休止し、周波数比較判定回路(7)がアンロック状態を示す信号(LD)を出力すると
き、第1のチャージポンプ(4)と協働して電圧信号(Do)を生成するPLL周波数シンセサイザ回路。」

(2)「【0016】
【発明が解決しようとする課題】……
……
【0019】第2の目的はロックアップタイムを短くしチューニングスピードの高速化を図ることができるPLL周波数シンセサイザ回路を提供することにある。」

(3)「【0034】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って詳細に説明する。図2は本実施例のPLL周波数シンセサイザ回路20を示す。
……
【0073】つまり、比較信号LDPと基準信号LDRとの間に周波数の差が生じた時、ロック検出信号LDはLレベルとなり、比較信号LDPと基準信号LDRとの間に周波数の差が生じない時、ロック検出信号LDはHレベルとなる。従って、ロック検出信号LDがHレベルからLレベルになると、ロック状態からアンロック状態になったことがわかる。反対に、ロック検出信号LDがLレベルからHレベルになると、アンロック状態からロック状態になったことがわかる。
……
【0080】従って、アンロック状態にあって、基準信号LDRの位相が比較信号LDPの位相より進んでいる場合、チャージポンプ28とともに第2のチャージポンプ68が動作することになり、その分だけループゲインを上げることができる。その結果、電圧信号Doの電圧は高くなる方向に速く収束制御される。
……
【0083】従って、アンロック状態にあって、基準信号LDRの位相が比較信号LDPの位相より遅れている場合、チャージポンプ28とともに第2のチャージポンプ68が動作することになり、その分だけループゲインを上げることができる。その結果、電圧信号Doの電圧は低くなる方向に速く収束制御される。」

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「発振信号(CLK)を基準周波数に分周して基準信号(LDR)を出力する基準分周器(1)と、
出力周波数信号(fv)を分周して比較信号(LDP)を出力する比較分周回路(2)と、
基準信号(LDR)と比較信号(LDP)を入力し、両信号(LDR,LDP)の位相差を検出し、位相差信号(φR,φP)を出力する位相比較器
(3)と、
位相比較器(3)から出力された位相差信号(φR,φP)に基づいた電圧信号(Do)を出力するチャージポンプ(4)と、
基準分周器(1)の基準信号(LDR)と比較分周回路(2)の比較信号
(LDP)を入力し、その両信号(LDR,LDP)の周波数を比較し、その周波数差が規定値以内のときロック状態を示す信号(LD)を出力する周波数比較判定回路(7)とからなり、
第2のチャージポンプ(8)を有し、第2のチャージポンプ(8)は周波数比較判定回路(7)がロック状態を示す信号(LD)を出力するとき休止
し、周波数比較判定回路(7)がアンロック状態を示す信号(LD)を出力するとき、第1のチャージポンプ(4)と協働して電圧信号(Do)を生成し、その分だけループゲインを上げることができるPLL。」

4.対比
引用発明は、周波数比較判定回路(7)がアンロック状態を示す信号(LD)を出力するとき、ループゲインを上げることができるPLLであるか
ら、本願発明と同様に、利得を自動的に設定する位相ロックループ(PL
L)といえるものである。
引用発明の発振信号(CLK)を基準周波数に分周した基準信号(LD
R)は、本願発明の「基準発振器周波数を分周して得られた第1の周波数」の信号に、引用発明の出力周波数信号(fv)を分周した比較信号(LD
P)は、本願発明の「位相ロックループの電圧制御発振器周波数を分周して得られた第2の周波数」の信号に、それぞれ対応し、引用発明の「周波数比較判定回路(7)」は、「基準分周器(1)の基準信号(LDR)と比較分周回路(2)の比較信号(LDP)を入力し、その両信号(LDR,LD
P)の周波数を比較し、その周波数差が……」とするものであるから、本願発明の「基準発振器周波数を分周して得られた第1の周波数と位相ロック
ループの電圧制御発振器周波数を分周して得られた第2の周波数の差を表す第1の信号を供給する周波数弁別器」と、同様の機能を有するものである。
また、引用発明の「周波数比較判定回路(7)」は、「……その周波数差が規定値以内のときロック状態を示す信号(LD)を出力する」ものであ
り、「ロック状態を示す信号(LD)」を出力するとき第2のチャージポンプ(8)の分だけループゲインを上げることができるものであるから、本願発明の「前記周波数弁別器に結合された比較器であり、前記第1の信号を受信し、前記第1の信号からの情報に基づいて第2の信号を供給し、前記第2の信号は設定する位相ロックループに対する利得設定を表す比較器」と、同様の機能も有する。
引用発明の「位相比較器」と、本願発明の「位相検出器」とは、位相ロックループ(PLL)の位相検出器である点では共通する。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

「利得を自動的に設定する位相ロックループ(PLL)であり、前記PLLは、
基準発振器周波数を分周して得られた第1の周波数と位相ロックループの電圧制御発振器周波数を分周して得られた第2の周波数の差を表す第1の信号を供給する周波数弁別器と、
前記周波数弁別器に結合された比較器であり、
前記第1の信号を受信し、
前記第1の信号からの情報に基づいて第2の信号を供給し、前記第2の信号は設定する位相ロックループに対する利得設定を表す比較器と、
位相検出器と、
を備える位相ロックループ。」

また次の点で相違する。

相違点
位相ロックループの利得設定を、本願発明は、「複数の利得で動作可能であり、前記第2の信号を受信し、前記第2の信号に基づいて位相検出器利得を設定する位相検出器」で行うのに対して、引用発明は、「第2のチャージポンプ(8)を有し、第2のチャージポンプ(8)は周波数比較判定回路
(7)がロック状態を示す信号(LD)を出力するとき休止し、周波数比較判定回路(7)がアンロック状態を示す信号(LD)を出力するとき、第1のチャージポンプ(4)と協働して電圧信号(Do)を生成し、その分だけループゲインを上げること」で行っている点。

5.相違点に対する判断
位相ロックループの利得設定を、そのループ内のいずれの箇所で行っても良いことは、当業者に明らかなことであり、引用発明においてチャージポンプにより利得設定する点を、本願発明のような位相検出器とすることに困難な点はない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-20 
結審通知日 2012-07-24 
審決日 2012-08-07 
出願番号 特願2006-544126(P2006-544126)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 智佐藤 聡史  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 小曳 満昭
近藤 聡
発明の名称 利得を自動的に設定する位相ロックループ  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 野河 信久  
代理人 村松 貞男  
代理人 勝村 紘  
代理人 峰 隆司  
代理人 佐藤 立志  
代理人 砂川 克  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 白根 俊郎  
代理人 河野 哲  
代理人 岡田 貴志  
代理人 河野 直樹  
代理人 山下 元  
代理人 堀内 美保子  
代理人 中村 誠  
代理人 竹内 将訓  
代理人 市原 卓三  

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