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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1267921 |
審判番号 | 不服2010-18846 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-20 |
確定日 | 2012-12-26 |
事件の表示 | 特願2004-550990「エージェントエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日国際公開、WO2004/044734、平成18年 2月23日国内公表、特表2006-506702〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2003年11月11日(パリ条約による優先権主張2002年11月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、出願後の手続きの経緯は次のとおりである。 拒絶理由の通知 (起案日)平成21年8月18日 意見、手続補正 (提出日)平成21年11月19日 拒絶査定 (起案日)平成22年4月15日 同 謄本送達 (送達日)平成22年4月20日 審判請求 (提出日)平成22年8月20日 手続補正 (提出日)平成22年8月20日 前置報告 (起案日)平成22年11月9日 審尋 (起案日)平成23年4月22日 回答 (提出日)平成23年7月21日 拒絶理由の通知 (起案日)平成24年3月26日 意見、手続補正 (提出日)平成24年5月10日 2.本願発明 本願の請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年5月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項13に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。 「目標を定義する処理と、 前記目標に関連付けられた少なくとも1つのキー性能インジケータを定義する処理と、 規則、アルゴリズム、または関数の内の少なくとも1つを関連付けられる前記キー性能インジケータと連結する処理と、 分析されるべきデータを定義する処理と、 前記目標に対するデータを評価する処理と、 前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つが前記目標を満足させる程度を決定する処理と、 関連付けられる前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つを修正する処理と を有することを特徴とするデータ分析方法。」 3.引用刊行物に記載された発明 3.1 当審で引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2001-526437号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、関連する図面と共に次の事項が記載されている。 A.「【請求項22】 各実エージェントが複数の特性を有し、複数の実エージェントを一体化し、 特性に対応するデータが他のエージェントに明らかにされる度合いを制御するように少なくともいくつかのエージェントを許し、 それら自身を含み、他のエージェントを制御するエージェントを許し、 他のエージェントのアクセスあるいは使用に関してアクセス権あるいは使用権を所有するエージェントを許し、 エージェントの現実のパフォーマンスを測定し、 エージェントの期待されるパフォーマンスを入力し、 エージェントの期待されるパフォーマンスにエージェントの現実のパフォーマンスを比較し、 エージェントの現実のパフォーマンスおよびエージェントの期待されるパフォーマンスの間の相違に基づいてエージェントを変更し、 エージェントがそれら自身について明らかにする制限されたエージェント間の連絡を許し、 マルチプルレベルでの相互作用を最適化するための反復,フィードバック駆動方法。」 B.「 【0031】 この発明の範囲は、反復や再帰の複数のレベルにおいて物理的、精神的及び仮想的なエージェントの簡便化及び増大に関する。すべての物事(及び物事ではないもの)は、複数のエージェントの相互対話又は相互通信を管理支配する複数の関係や複数のルールのファミリーを確立するオブジェクト指向の“コード”の言語において見つけることができ、その言語で取り扱うことができるということがこの発明の基礎である。・・・また、反復又は再帰の複数のレベルにおいて複数のエージェントの相互対話又は相互通信を含み;その複雑な振る舞いは、上記相互対話又は相互通信を管理支配する、繰り返し、帰納又は再帰、帰還、臨界的な集合又は大部分、及び特定の“遺伝子コード”(ルール、アルゴリズム)として出現する。」 C.「【0051】 設計プロセスを助けるには、ユーザの要求に従い、三層のソフィスティケーション(sophistication)を提供する、商業上で入手可能なソフトウェア・スイートが有用である。最も簡単なレベルでは、目標の仕様を入力することが可能で、上記ソフトウェアが解法を設計してくれるであろう。あるいは、異なるパネル材料の特性を条件設定し、異なる設計の態様が変更される、また、結論が評価されるという’起こり得る事態’の高度な分析を実施することにより、設計プロセスを一層徹底して調べることが可能となる。」 D.「【0067】・・・「エージェント(動作主客、または機能体)」・・・これらすべてのエージェントは規則によって行為を行い、簡便化されている。 …(中略)… 【0070】 システムは更に、システムにおいて真のエージェントを表す仮想エージェントを形成するための手段を含み、各エージェントは代表された真のエージェントのある特性に相当するデータを含む。・・・ 【0071】 システムは更に、少なくともいくつかのエージェントが、特性に相当するデータが他のエージェントに表示される程度を制御することを可能にする手段を有する。再帰(チーム、集団または組織等)のより高度な基準での人間およびエージェントは明らかにこの性能を有しており、コンピュータは多かれ少なかれデータを他のエージェントに表示するソフトウェアエージェント(例えば、オブジェクトまたはアプレットなど)を形成するようにプログラミング処理可能である。 …(中略)… 【0078】 システムはまた、エージェントの実際の性能を測定するための手段を有する。・・・測定は例えば量または測定値など・・・ 【0079】 システムはまた、エージェントの期待性能を入力するための手段を有する。該入力手段は、データインターフェースを計算する人間、ソフトウェアオブジェクト間の通信、生化学的通信、目標および対象の陳述手段であってもよい。 【0080】 そのシステムは、実際の契約者のパフォーマンスと期待された契約者のパフォーマンスとの差異に基づく契約者を変形するための手段をも含む。又、これは、別の契約者または生化学の契約者または人間の変化契約者に変更するためにコンピュータコードをコピーできるコンピュータであることを意味する。人間、チーム、グループおよび組織は、契約者組成の構成、つまり“電子”環境で使用されるスチームのメンバーまたはオブジェクトを変化させることにより、モデルおよび他の契約者を変更する。」 E.「【0106】 図1に示した1回の反復において、ステップS1で、システムで潜在的に使用される一群のエージェントが識別される。・・・ 【0107】 ステップS2において、これらのエージェントに作業が行われる。本発明の実施態様において、この作業には、所定レベルの機能を備えた特定のエージェントあるいは本発明の動作を促進するように設計された他の創造的要素の選択が含まれる。所定のレベルは反復の範囲に左右される。例えば、特定の問題が、特定グループのエージェントに対し解決されるように企てられると、問題やグループの性質により適当なレベルが提案される。加えて、本発明の実施態様は、反復-特殊情報の使用を変えられるジェネリック断面の発達を支持する要因を含む。 …(中略)… 【0111】 ステップS5において、システム内のユーザあるいはエージェントは作業を行う。エージェントによって行われる作業には、・・・反復に固有の問題の確認や詳細な定義を促進するためにデザインされた様々なタスクあるいは課題も含まれる。課題やタスクには、情報収集、任務遂行、ゲーム遊び、研究、分析、3次元のオブジェクトや道具を使用した報告、モデル構築、課題の図示、及び、他の問題解明作業が含まれる。 【0112】 ステップS3,S4,S5のプロセスの結果として、ドキュメント、コンピュータプログラム、身近にある課題に類似した問題のアプローチ案、提案された解決策等の新しいエージェントが作成される。ステップS6において、複雑な決定プロセスが発生し、これについては、図2及び以下に詳しく記載されている。・・・ 【0113】・・・ステップS12において、変化したエージェントは、図2を参照して詳述されるステップS6と同様な複雑な決定プロセスにおいて評価される。この決定プロセスの結果、新しく変更されたエージェントをステップS7を介して現在の反復にフィードバックするか、反復からエージェントを出力する。 …(中略)… 【0126】 決定ステップS6は、複雑なプロセスであり、図1に示す全てのプロセスを完全に反復するプロセスを含んでいる。図2に示すように、このプロセスは、以下の工程を含んでいる。ステップS20では、反復に手近に適用可能なオリジナル状態モデルが入力され、ステップS21ではカレント状態モデルが入力される。ステップS22では、これらのモデル間の微分又は増分を算出するために、これらのモデルが比較される。ステップS23では、反復の開始に適用可能な、行列と一連の公式が算出される。ステップS24では、行列と一連の公式が増分とともに入力される。ステップS25では、行列と一連の公式の第1の組合せが増分に適用される。ステップS26では、増分の仮の解答が出るまで、行列と一連の公式の次の組合せが、増分に繰り返し適用される。このプロセスは、図1に関して記載されているように、エージェント、環境、そして、仕事の実行を含んでいる。ステップS27では、行列と公式の組合せにより作成されたエージェントが仮の解答を算出するために適用される。ステップS27では、このエージェントは、現在の反復に戻されるか、又は新しい環境へ送り出されるか、あるいは両方へと送られる。」 F.「【0186】 上述のように、本発明は、特に、発明者のシステムと関連して使用される共同ワークスペースを最適化する装置と方法、及びエージェント(人、機械、グループ、機関、それらの組み合わせ)の間の通信や他の相互作用を容易にして、個々のエージェント間のフィードバック、学習、自己調整できるようにし、これにより極めて短時間で緊急なグループワークを容易にする相互作用(環境、ツール、プロセスからなるもの)の環境を形成する方法を提供する。」 (A)C.の「目標の仕様を入力」、「設計プロセス」、D.の「モデル」との記載において、前記仕様を入力することは仕様を入力することにより「定義する」とみることができる点を加味すれば、モデルの設計に関し「目標を定義する処理」がよみとれる。 (B)D.の「エージェントの期待性能を入力するための手段」「該入力手段は、・・・目標および対象の陳述手段であってもよい」から、目標に期待性能が含まれるか、関連付けられるものであることがよみとれる。加えて、目標に関する前記(A)で言及した「目標の仕様を入力」「設計プロセス」「モデル」とから、「前記目標に関連付けられた少なくとも1つの期待性能(データ)を定義する処理」がよみとれる。ここで、前記「目標」「期待性能」はそれぞれ「目標データ」「期待性能データ」とみることができる。 (C)D.の「エージェントの期待性能を入力」「エージェントの実際の性能を測定」、A.の「エージェントの期待されるパフォーマンスにエージェントの現実のパフォーマンスを比較」、図2のステップ25のルール(規則)をデルタ(パフォーマンスの相違)に適用(連結)、E.の「エージェントは作業を行う。エージェントによって行われる作業には、・・・反復に固有の問題の確認や詳細な定義を促進するためにデザインされた様々なタスクあるいは課題も含まれる。課題やタスクには、情報収集、任務遂行、ゲーム遊び、研究、分析、3次元のオブジェクトや道具を使用した報告、モデル構築、課題の図示、及び、他の問題解明作業」との記載から、「エージェントの期待性能」は「エージェントの実際の性能」「エージェントの作業」に係る性能と関連していると解される。エージェントの作業には、例えば、アルゴリズムや関数からなることが自明の前記「分析」「問題解明」作業が含まれる。よって、「規則、アルゴリズム、または関数の内の少なくとも1つを関連付けられる前記期待性能と連結する処理」がよみとれる。 (D)D.の「各エージェントは代表された真のエージェントのある特性に相当するデータを含む」、「エージェントが、特性に相当するデータが他のエージェントに表示される程度を制御する」、「エージェントは」この「性能」を有しており、コンピュータは多かれ少なかれ「データ」を他のエージェントに表示するソフトウェアエージェント(例えば、「オブジェクト」またはアプレットなど)を形成するように「プログラミング処理」可能である、との記載、一般的に、「プログラミング処理」においてエージェントまたはオブジェクトが当該エージェントまたはオブジェクトで処理されるべきデータが定義されていることは技術的常識である点を加味すると、エージェント(エージェントの作業、分析)について「分析されるべきデータを定義する処理」がよみとれる。 (E)A.の「エージェントの期待されるパフォーマンスにエージェントの現実のパフォーマンスを比較し」(パフォーマンスは性能と同義語。以下、パフォーマンスを性能と呼ぶことがある。)、C.の「結論が評価されるという’起こり得る事態’の高度な分析を実施」、E.の「決定プロセスにおいて評価」との記載から、「エージェントの期待性能に対する現実の性能を比較し、評価する処理」がよみとれる。 (F)決定ステップS6(図1)、図2の決定プロセスに関して、A.の「エージェントの現実のパフォーマンスおよびエージェントの期待されるパフォーマンスの間の相違に基づいてエージェントを変更し、」、E.の「ステップS25では、行列と一連の公式の第1の組合せが増分(当審注;前記パフォーマンスの間の相違)に適用される。ステップS26では、増分の仮の解答が出るまで、行列と一連の公式の次の組合せが、増分に繰り返し適用される」と記載されている。これらの決定に係る記載において、各繰り返し適用ごと(繰り返しの1つのサイクルごと)にみると、パフォーマンスの増分の程度がマトリクスおよびルール適用(図2ステップ25)により満足させる程度の仮の解答であるか否か判断し、判断の結果が目標(期待される性能データ)を満足させる「程度」によりエージェントを変更しているとみることができる。当該「程度」の点について更に言及すると、「程度」は、繰り返し学習に付随する自明の技術的事項であって、B.の「 ;その複雑な振る舞いは、上記相互対話又は相互通信を管理支配する、繰り返し、帰納又は再帰、帰還、臨界的な集合又は大部分、及び特定の“遺伝子コード”(ルール、アルゴリズム)として出現する」、F.の「フィードバック、学習、自己調整」との繰り返し学習に係る記載からも、「程度」(度合い)を読み取ることができる。よって、「前記性能(パフォーマンス)が前記目標(期待性能)を満足させる程度を決定する処理」がよみとれる。 (G)A.の「エージェントを変更し、 エージェントがそれら自身について明らかにする制限されたエージェント間の連絡を許し、」から、「エージェントを変更する処理」がよみとれる。 (H)A.の「マルチプルレベルでの相互作用を最適化するための反復,フィードバック駆動方法」、C.の「目標の入力」「結論が評価されるという’起こり得る事態’の高度な分析」、E.の「エージェントは作業を行う」「エージェントによって行われる作業には、・・・分析・・・が含まれる」との記載から、「マルチプルレベルでの相互作用を最適化するための反復,フィードバック駆動による性能データ分析を含む方法」がよみとれる。 (A)ないし(H)をふまえると、引用刊行物1には、エージェントの間の通信や他の相互作用を容易にして、個々のエージェント間のフィードバック、学習、自己調整ができるようにした(F.参照)次の発明(以下「刊行物1の発明」という。)が示されている。 目標を定義する処理と、 前記目標に関連付けられた少なくとも1つの期待性能を定義する処理と、 規則、アルゴリズム、または関数の内の少なくとも1つを関連付けられる前記性能と連結する処理と、 分析されるべきデータを定義する処理と、 エージェントの期待性能に対する現実の性能を比較し、評価する処理と、 前記性能が前記目標(期待性能)を満足させる程度を決定する処理と、 エージェントを変更する処理と、 マルチプルレベルでの相互作用を最適化するための反復,フィードバック駆動による性能データ分析を含む方法。 3.2 原審で引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である、岩山知三郎著「ハイペリオンが日本市場に投入したデータウェアハウスの次世代活用ツール」Computopia、株式会社コンピュータ・エージ社、2002年01月01日、第36巻、第424号、pp.122-124(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a.「KPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)を定義して視覚的に表現する…(中略)…モデルに基づくアクティビティ・ベースの業績分析と改善シナリオ評価、ROI(投資リターン)分析などを行うことができる」(122頁2ないし8行) b.「長期目標…(中略)…短期目標と現状のパフォーマンスをKPIとして表示し評価できる」(122頁右欄6?12行) 3.3 当審で引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2002-132261号公報(公開日;2002年5月9日)(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。 「【要約】 【構成】 ディスプレイ24に表示される自律エージェントの振動リズムはグラフィックエンジン16によって生成され、被験者がマウス12を動かして発した振動リズムはリズム入力装置14によって入力される。CPU20は、まず自律エージェントの振動リズムと被験者の振動リズムとのリズム共有度を1周期毎に判定する。次に、リズム共有度判定結果および被験者のリズム発生状況を複数の適応条件と照合して、被験者のリズム適応能力を判別する。リズム適応能力が判別されると、各周期で得られるリズム共有度判定結果と被験者のリズム適応能力とに基づいて、被験者のリズム発生状況を判別する。グラフィックエンジン16は、リズム発生状況の判別結果に応じて自律エージェントの振動リズムを変更する。」 4.対比・判断 4.1 対比 刊行物1発明と本願発明とを対比する。 ア.刊行物1発明と本願発明とは「目標を定義する処理」を有する点で一致する。 イ.刊行物1発明の「期待性能(データ)」はキー性能インジケータとまではいえないまでも、上位概念では「性能データ」であり、本願発明の「キー性能インジケータ」も上位概念では「性能データ」とみることができる(以下、刊行物1発明の「期待性能データ」については同様であり言及を省略する)。刊行物1発明の「前記目標に関連付けられた少なくとも1つの期待性能データを定義する処理」と本願発明の「前記目標に関連付けられた少なくとも1つのキー性能インジケータを定義する処理」とは「前記目標に関連付けられた少なくとも1つの性能データを定義する処理」で共通する。 ウ.刊行物1発明の「規則、アルゴリズム、または関数の内の少なくとも1つを関連付けられる前記性能と連結する処理」と本願発明の「規則、アルゴリズム、または関数の内の少なくとも1つを関連付けられる前記キー性能インジケータと連結する処理」とは「規則、アルゴリズム、または関数の内の少なくとも1つを関連付けられる前記性能データと連結する処理」で共通する。 エ.刊行物1発明と本願発明とは「分析されるべきデータを定義する処理」を有する点で一致する。 オ.刊行物1発明の「期待性能」データは(B)で言及のように「目標」データであるとみることができる。また、「現実の性能データ」は「データ」の下位概念である。刊行物1発明のエージェントの「期待性能(データ)に対する現実の性能(データ)を比較して評価する処理」と本願発明の「前記目標に対するデータを評価する処理」と実質的な差異はない。 カ.刊行物1発明の「前記性能」が前記目標(期待性能)を満足させる程度を決定する処理は、当該「性能」は、「前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つ」とまでは言えないまでも、「性能の内の少なくとも1つ」と言うことができ、本願発明の「前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つが前記目標を満足させる程度を決定する処理」における「前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つ」も上位概念では「性能データ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つ」であって、当該発明特定事項は「性能(データ)の内の少なくとも1つ」を包含していて、両者はこの点で実質的な差異はない。 キ.刊行物1発明の「エージェントを変更する処理」は当該「変更」と「修正」の点では技術的に格別な差異は認められない点をふまえると、いずれも上位概念では「修正する処理」とみることができる。本願発明の「関連付けられる前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つを修正する処理」も、上位概念では「修正する処理」であるから、両者は「修正する処理」で共通する。 ク.刊行物1発明の「性能データ分析を含む方法」と本願発明の「データ分析方法」と実質的な差異はない。 以上のア.ないしク.の対比によれば、本願発明と刊行物1発明とは、次の点で一致し、そして、相違する。 〈一致点〉 目標を定義する処理と、 前記目標に関連付けられた少なくとも1つの性能データを定義する処理と、 規則、アルゴリズム、または関数の内の少なくとも1つを関連付けられる前記性能データと連結する処理と、 分析されるべきデータを定義する処理と、 前記目標に対するデータを評価する処理と、 前記性能データが前記目標を満足させる程度を決定する処理と、 修正する処理と を有することを特徴とするデータ分析方法。 〈相違点1〉 少なくとも1つの性能データを定義する処理、連結する処理、決定する処理、修正する処理に係る「性能データ」が、本願発明は「キー性能インジケータ」であるのに対し、刊行物1発明は性能データであるか不明である点。 〈相違点2〉 性能データが目標を満足させる程度を決定するものが、本願発明は「前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つ」であるのに対し、刊行物1発明は「性能データ」である点。 〈相違点3〉 修正する処理が、本願発明は、「関連付けられる前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つを修正する処理」であるのに対し、刊行物1発明は、そのような修正する処理ではない点。 4.2 当審の判断 〈相違点1〉について 引用刊行物2には、モデルに基づくアクティビティ・ベースの業績分析と改善シナリオ評価、投資リターン分析において、長期目標、短期目標と現状のパフォーマンスをKPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)として表示し評価する技術が記載されている。 引用刊行物1の少なくとも1つの性能データを定義する処理、連結する処理、決定する処理に係る「性能データ」、ないし修正する処理について、「性能データ」を「キー性能インジケータ」とすることは、前記引用刊行物2の事項を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。 〈相違点2〉について 「性能データ」を「キー性能インジケータ」とすることは、前記「〈相違点1〉について」で言及したとおりである。また、刊行物3には、リズム発生状況の判別結果に応じて自律エージェントの振動リズムを変更する技術が記載されており、この技術は、リズム発生状況(性能指標)がディスプレイ24に表示される自律エージェントの振動リズム(目標)を満足させる程度を判別(決定)する技術に相当する。すなわち、「内の少なくとも1つ」は内の任意の択一的な1つを含む点をふまえると、性能指標、規則、アルゴリズム、及び関数の内の少なくとも1つが目標を満足させる程度を決定する技術が示されている。よって、「性能データ」を「キー性能インジケータ」とすることにより、前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つが前記目標を満足させる程度を決定する処理と成すことは、前記キー性能インジケータ(刊行物2のKPI)、刊行物3の前記事項を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。 〈相違点3〉について 「関連付けられる前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つを修正する処理」の技術は、本願優先権主張日前周知の技術である。例えば、特開平9-311895号公報には「マッチングの度合いを、習熟度関数の学習を目標値としてシステムオペレータが任意に設定」(【0017】段落)、「学習後の習熟度関数にシステムオペレータが修正を加えて・・・習熟度関数を決定」(【0019段落】)と記載され、特開平8-50612号公報には「基本配分アルゴリズムを修正して、個々の需要を考慮し、最適の・・・スケジュールを作成」(【0068】段落)と記載され、特開平7-167402号公報には「目標仕様を一つでも満足しない場合には・・・メンバシップ関数及び調整ルール25を用いてファジー推論によりパラメータ修正係数を算出・・・パラメータ修正係数の修正の度合いを定義するのが図7に示す調整ルールであり、」(【0033】?【0035】段落)と記載されており、前記修正する処理の技術が示されている。 刊行物1発明において、「関連付けられる前記キー性能インジケータ、前記規則、前記アルゴリズム、及び前記関数の内の少なくとも1つを修正する処理」を有することは、前記周知技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明の構成により奏する効果も、引用刊行物1ないし引用刊行物3に記載された事項及び周知技術から当然予測される範囲内のもので、格別顕著なものとは認められない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明、及び、引用刊行物2ないし3に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-07-26 |
結審通知日 | 2012-07-31 |
審決日 | 2012-08-13 |
出願番号 | 特願2004-550990(P2004-550990) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多胡 滋 |
特許庁審判長 |
山崎 達也 |
特許庁審判官 |
酒井 伸芳 原 秀人 |
発明の名称 | エージェントエンジン |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 実広 信哉 |