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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q |
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管理番号 | 1267934 |
審判番号 | 不服2011-12893 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-06-15 |
確定日 | 2012-12-26 |
事件の表示 | 特願2008-309139「可変通信容量を備えるモジュール式基地局」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月28日出願公開、特開2009-118491〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、1999年3月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年3月17日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2000-537330号の一部を平成20年12月3日に新たな特許出願としたものであって、平成22年3月31日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月29日付けで手続補正がなされ、同年22年9月7日付けで2回目の拒絶理由通知がなされ、平成23年1月6日付けで手続補正がなされたが、同年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成23年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔結論〕 平成23年6月15日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 1.補正内容 平成23年6月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)は、特許請求の範囲の請求項1を、下記の<補正前の請求項1>から<補正後の請求項1>に変更する補正事項を含むものである。 <補正前の請求項1> 「 【請求項1】 符号分割多重アクセス(CDMA)加入者ユニットであって、 CDMA基地局からのn個の同期化信号を受信するように構成された電気回路であって、前記n個の同期化信号のそれぞれは、それぞれの時間区画が互いに異なる同期化信号を受信するためのn個の不連続の時間区間において受信される、電気回路を備えることを特徴とするCDMA加入者ユニット。」 <補正後の請求項1> 「 【請求項1】 符号分割多重アクセス(CDMA)加入者ユニットであって、 単一のCDMA基地局からのn個の同期化信号を受信するように構成された電気回路であって、前記n個の同期化信号のそれぞれは、それぞれの時間区画が互いに異なる同期化信号を受信するためのn個の不連続の時間区間において受信される、電気回路を備えることを特徴とするCDMA加入者ユニット。」 2.本件補正に対する判断 本件補正のうちの上記補正事項は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「CDMA基地局からのn個の同期化信号を受信するように構成された電気回路」を、「単一のCDMA基地局からのn個の同期化信号を受信するように構成された電気回路」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに一応は該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。 2-1.本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.」の<補正後の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。 2-2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-261763号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、スペクトル拡散通信を用いた符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)移動体通信システムおよび送受信機に関する。」 「【0020】 【発明の実施の形態】本発明のCDMA移動体通信システムの第1の実施の形態における基地局送信機と移動局受信機の構成を、図1および図2に示す。図1は本発明における基地局送信機の構成例を示す図であり、15は定期的にパイロット・チャネルの送信/停止を行うためのタイミング信号を生成するパイロット送信タイミング生成部、40はパイロット・チャネル送信部、41、42、43は、それぞれ、1番目、2番目、n番目の移動局に対するトラヒック・チャネル送信部である。また、パイロット・チャネル用のデータ発生部1、情報変調部2、パイロット・チャネルのスペクトル拡散変調部3、送信データ4、トラヒック・チャネルのスペクトル拡散変調部5?7は前記図10に示したものと同一であり、その詳細な説明は省略する。 【0021】図1と前記図10とを比較することから明らかなように、本発明における基地局送信機においては、パイロット・チャネル送信部40内にパイロット送信タイミング生成部15が設けられており、その出力がパイロットデータ発生部1、情報変調部2およびスペクトル拡散変調部3に印加されている点で、前記図10の従来技術の基地局送信機と相違している。これにより、従来の基地局送信機においてはパイロット・チャネルの信号を連続的に送信していたのに対し、本発明の基地局送信機は定期的に送信/停止を繰り返すことが可能となる。 【0022】図2は本発明における移動局受信機の第1の実施の形態の構成を示す図であり、この図において、18は送信電力制御のための受信レベル測定部、44はパイロット・チャネル受信部、45はトラヒック・チャネル受信部を示す。また、パイロット・チャネル用の逆拡散部8、トラヒック・チャネル用の逆拡散部9および10、パス検出部11、RAKE合成部12および情報復調部13は前記図11に示したものと同一であり、その詳細な説明は省略する。 【0023】以下では、前記図13に示したセル構成に本発明のCDMA移動体通信システムを適用した場合について説明する。図1の本発明の基地局送信機において、パイロット送信タイミング生成部15は図3に示す時間間隔でパイロット・チャネルの送信/停止を行うためのタイミングを生成する。このタイミングを基にパイロット・チャネル送信部40のパイロットデータ発生部1、情報変調部2、スペクトル拡散変調部3は図3に示す時間間隔でパイロット・チャネルの送信/停止を繰り返す。なお、図1のスペクトル拡散変調部3で用いるパイロット・チャネルの拡散符号は図3に示すパイロット送信区間で1回の周期を持つ拡散符号を用いる。すなわち、本発明における基地局は、時間間隔τ毎に拡散符号1周期分のパイロット・チャネルのデータを送信する。 【0024】この時の各セル間でのパイロット・チャネルの送信タイミングを図4に示す。図4に示すように、各基地局21?24はそれぞれパイロット送信間隔τ毎に断続的にパイロット・チャネルのデータを送信しており、かつ、各基地局21?24のパイロット・チャネル送信開始時刻は、それぞれ固有の時間オフセットだけずらされて、同時に複数の基地局がパイロットを送信することはないようになされている。 【0025】なお、図4に示した例においては、ある基地局がパイロット・チャネルデータを送信した後には、総ての基地局がパイロットを送信しない時間があり、その後、他の基地局がパイロットを送信するようになされている。この総ての基地局がパイロットを送信しない時間をマルチパスの遅延時間よりも大きく設定することによって、遅延波が次にパイロットを送信する基地局のパイロットに重なることを防止することが可能となる。なお、無線LANの場合のように基地局との距離が短く遅延時間が小さい場合には、このような時間を設けなくてもよい。 【0026】図2に示した本発明の移動局受信機におけるパイロット・チャネル受信部44の逆拡散部8において、各基地局21、22、23、24から送信されたパイロット・チャネルの信号は逆拡散される。この時、各基地局からの信号の逆拡散結果は図5(a)?(d)に例示するような波形となり、逆拡散部8の出力は図5(a)?(d)を重畳した形で得られる。この図に示すように、本発明においては、移動局25の属する基地局21のパイロット送信タイミングでは、他の基地局22、23、24はパイロット・チャネルを送信しない。従って、移動局25の属する基地局21のパイロット・チャネルの送信タイミングにおいては、移動局25の属さない基地局22、23、24のパイロット・チャネルの信号が基地局21の信号に雑音成分として重畳して受信されることはなく、S/N比が劣化することは無い。」 そして、その段落【0026】の記載によれば、引用例における「移動局受信機」が、「CDMA基地局からのn個のパイロット・チャネルの信号を受信するように構成された電気回路であって、前記n個のパイロット・チャネルの信号のそれぞれは、それぞれの時間区画が互いに異なるパイロット・チャネルの信号を受信するためのn個の不連続の時間区間において受信される、電気回路」に相当するものを有していることは明らかである。 したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。 「符号分割多重アクセス(CDMA)移動局受信機であって、 CDMA基地局からのn個のパイロット・チャネルの信号を受信するように構成された電気回路であって、前記n個のパイロット・チャネルの信号のそれぞれは、それぞれの時間区画が互いに異なるパイロット・チャネルの信号を受信するためのn個の不連続の時間区間において受信される、電気回路を備えるる移動局受信機。」 2-3.本願補正発明と引用例記載発明との対比 本願補正発明と引用例記載発明とを対比すると、以下のことがいえる。 (1)一般に、「パイロット・チャネルの信号」と呼ばれる信号は、移動局と基地局の動作を同期させるために使用されるのが通常であり、引用例記載発明でいう「パイロット・チャネルの信号」もそのような通常の「パイロット・チャネルの信号」と異なるものであるとはされていない。したがって、引用例記載発明の「パイロット・チャネルの信号」も、移動局と基地局の動作を同期させるために使用される通常の「パイロット・チャネルの信号」であると解するのが妥当であり、それは本願発明の「同期化信号」に相当するものということができる。 (2)一般に、「移動局受信機」は、加入者の使用に供されるのが通常であり、引用例記載発明の「移動局受信機」もそのような通常の「移動局受信機」と異なるものであるとはされていない。したがって、引用例記載発明の「移動局受信機」も、加入者の使用に供される通常の「移動局受信機」であると解するのが妥当であり、それは本願発明の「同期化信号」に相当するものということができる。 したがって、本願補正発明と引用例記載発明は、下記「(一致点)」の点で一致し、下記「(相違点)」の点で一応は相違する。 (一致点) 「符号分割多重アクセス(CDMA)加入者ユニットであって、 CDMA基地局からのn個の同期化信号を受信するように構成された電気回路であって、前記n個の同期化信号のそれぞれは、それぞれの時間区画が互いに異なる同期化信号を受信するためのn個の不連続の時間区間において受信される、電気回路を備えることを特徴とするCDMA加入者ユニット。」 である点。 (相違点) 本願補正発明の「電気回路」は、「単一のCDMA基地局からのn個の同期化信号を受信する」ように構成されたものであるのに対し、引用例記載発明の「電気回路」は、「単一のCDMA基地局からのn個の同期化信号を受信する」ように構成されたものではない点。 2-4.判断 特許権の効力が及ぶ範囲等を考慮すると、「特許出願に係る発明」が特許法第29条第1項第3号でいう「刊行物に記載された発明」に該当しないためには、「特許出願に係る発明」と「刊行物に記載された発明」との間に、構成上の相違があることが必要であるというべきであり、「特許出願に係る発明」が物の発明の場合には、その製造方法や用途が「刊行物に記載された発明」と相違しているだけでは足りず、その物としての構成が、「刊行物に記載された発明」の物としての構成と相違していることが必要であるというべきである。 以上を前提に、上記相違点について検討するに、上記相違点は、「電気回路」が受信する「同期化信号」の発信元である「CDMA基地局」が「単一か否か」という相違点であり、これを本願補正発明と引用例記載発明とで共通する発明の対象物である「CDMA加入者ユニット」の観点から見れば、該「CDMA加入者ユニット」の用途についての相違点(「CDMA加入者ユニット」が、「複数の『同期化信号』が単一の基地局から発信されるような環境」において使用されるものか否かという相違点)に過ぎず、構成上の相違ではないといわざるを得ない。 このことは、引用例記載発明に基地局の位置についての限定がないこと、さらには、引用例の図13等に示される複数の基地局がたとえ相互に同じ場所に設けられていたとしても、同引用例の移動受信機は、その構成からみて、複数の同期化信号(パイロット・チャネルの信号)を問題なく受信できると考えられること、等から明らかである。 したがって、上記相違点は、引用例記載発明との関係において、本願補正発明を特許法第29条第1項第3号でいう「刊行物に記載された発明」に該当しないものとする相違点ではない。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号でいう「刊行物に記載された発明」に該当する「引用例に記載された発明」であり、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成23年1月6日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項1>の項に転記したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2」の「2.」の「2-2.」の項に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、限定事項の一部を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」の「2.」の項に記載したとおり、引用例に記載された発明であるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明である。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の拒絶理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-07-18 |
結審通知日 | 2012-07-24 |
審決日 | 2012-08-13 |
出願番号 | 特願2008-309139(P2008-309139) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清水 祐樹、中元 淳二 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 江口 能弘 |
発明の名称 | 可変通信容量を備えるモジュール式基地局 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |
復代理人 | 濱中 淳宏 |
復代理人 | 渡邉 直幸 |