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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1267967
審判番号 不服2011-11924  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-06 
確定日 2012-12-27 
事件の表示 特願2001-522507「交通道路網におけるオブジェクトを符号化および復号化する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月15日国際公開、WO01/18769、平成15年 3月11日国内公表、特表2003-509710〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2000年8月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年9月7日、2000年2月26日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成14年3月6日付けで国内書面が提出され、平成22年6月25日付けで誤訳訂正書が提出され、同年6月28日付けで手続補正がなされ、平成23年1月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年12月7日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成24年6月8日に回答書が提出された。

2 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明は、平成23年6月6日付け手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法であって、
該オブジェクトについて情報を各送信機から受信機に伝送し、当該の送信機における前記オブジェクトの符号化と、前記の受信機における復号化とに別個のデータベースを利用することができ、
該データベースは、交通道路網のディジタル地図として構成されている形式の、交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法において、
前記のオブジェクトを、送信機に設けられた符号化器によって符号化し、前記のオブジェクトは、前記の送信機のディジタル地図における座標値によって構成される少なくとも1つずつの座標チェーンを備えており、
該座標チェーンは、少なくとも部分的に、前記の受信機のディジタル地図にも含まれている交通道路上にあり、かつ当該交通道路網の部分の特徴的な特異性を含み、
当該の特徴的な特異性は、際立った道路の経過、または使用されるどのデータベースでも同様に基準化されて格納されている前記のオブジェクトであり、
少なくとも1つの座標チェーンの複数の部分のうちで受信機のデータベースの相応するものがあることが予想される部分にマークを付けることを特徴とする、
交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法。」

3 引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先権主張日前に頒布された国際公開第98/12688号(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「図1には、本第1実施形態の概略構成が示されている。情報センタ10は、河川・海岸線などの地形や、道路・橋梁・ビルディングなどの建造物など、地図を表示するのに必要な情報を記憶する地図データベース12を有している。この地図データベース12は、前記の建造物などに関する情報、たとえば駐車場ならば、その駐車可能台数や、現在の駐車台数の情報に関しても記憶することが可能である。情報センタ10は、後述する端末の情報要求に応じて地図データベース12から情報を読み出す制御部14を有している。制御部14は、端末からある施設に関する情報の要求があった場合に、当該施設の周辺の道路、鉄道、河川など、地図表記上、線形状となる特徴物に関する情報を前記地図データベース12から所定数抽出し、さらに、この周辺特徴物と前記の施設の相対位置に関する情報を前記地図データベース12から読み出す施設位置情報作成部18を有している。また、情報センタ10は、周辺特徴物に関する情報及び施設の位置に関する情報を送信し、また端末22からの情報送信要求を受信する無線通信部20を有している。
一方、端末22は、自動車などの移動体に設置されている。端末22も、地図データベース24を有しているが、これは情報センタ10の地図データベース12と同一のものでなくとも良い。地図データベースは、その製作会社によって、また同一会社のものであっても仕様によって精度がまちまちであり、地図の詳細度、たとえばどの程度細い道路まで記憶しているかなどにおいてもデータベースごとに異なっている。さらに、端末22は、情報センタ10に対し所望の施設の情報を要求し、この要求に応じて情報センタ10より返信されてくる情報を受信する無線通信部26を有している。無線通信部26で受信された施設に関する情報と、端末の保有する地図データベース24のデータを照合する制御部28が備えられており、制御部28の指示に従って地図などの表示を行う表示部30及び運転者が情報の欲しい施設を選択するなどに使用する操作部32が備えられている。また、情報センタ10から送られてきた情報のうち地図表示上の特徴的な形状の物と、これに相当する端末の地図データベース24の特徴物の形状を比較し、情報センタと端末の地図データベース間のずれ量を算出するマップマッチング演算部34が設けられている。
前述のように、地図データベースは、その種類ごとによってその精度がまちまちであるが、これは以下の理由による。
一つには、地図は本来球面上の形状である地形を平面上に表したものであるので、この変換のときに誤差を含むこととなる。車両用経路誘導装置に用いられる程度の縮尺の地図においては、所定の区画ごとに球面上から平面上への変換を行っており、区画の周辺部においては変換の際の誤差が大きくなる。この誤差の処理が地図データベースごとに異なれば、同じ経度・緯度の地点が、異なるように表される場合がある。また、区画の定め方が地図データベースごとに異なれば、一方の地図データベース上では、区画の中央付近で変換による誤差がわずかな地点が、地方の地図データベースでは区画の周辺であり変換による誤差が大きくなる場合なども、同じ地点が互いのデータベースの間で異なる位置であるように表される。
次には、自動車用経路誘導装置に用いられる地図データベースは、経路誘導が確実に行えることを前提としているために、道路の位置などが実際とは異なる位置に表示するようにしている場合がある。たとえば、実際は半径の大きな緩い曲線路を直線路と表示する場合がある。また、下を一般道、上を自動車専用道が通っており、このまま地図に表せば、二つの道路が全く一致してしまい区別できなくなる場合など、故意に一方を実際とは異なる位置に表示する場合などがある。この表示の仕方に地図データベース間で違いがあると、一方のデータベースでは、道路の右側にある施設が他のデータベースでは道路の左側にあるなどの表示上のずれを生じることがある。
本実施形態においては、以下に説明する方法に従って、異なる地図データベース間での情報の整合を図っている。
図2及び図3には、本実施形態の装置の基本制御に関するフローチャートが示されており、特に図2は情報センタ側の処理のフローチャート、図3は端末側の処理のフローチャートが示されている。さらに、図4には、本実施形態の装置の情報処理に関する説明図が示されている。
まず、端末22からある施設についての情報の要求が発信される。この制御については特に図3のフローチャートに示していないが、移動体の搭乗者が操作部32を操作することによって、所望の施設を選択し、この施設に関する情報の要求を行うことができる。施設は、たとえば駐車場やレストランであり、情報の内容は、駐車場に関して言えば位置、収容台数及び現在の空き状態などであり、レストランならば位置、駐車場の有無、和洋中などの料理の種類などである。
情報センタ10においては、図2に示すように、ある施設の情報の要求が端末22からあったかどうかが監視される(S100)。情報要求があると、当該施設の周辺の地図表示上の特徴物が、施設位置情報作成部18によって地図データベース12より抽出される(S102)。地図表示上の特徴物は、道路、鉄道の線路、河川、海岸線など、その形状が線状のものであって、その線形状の特徴物の一方に存在する施設が他方に表示されては、情報を受信した者が誤解または混乱するようなものである。たとえば、特徴物が道路であれば、進行方向に対して道路の右側に存在する施設が左側に表示された場合、情報を受信したものは当該施設の位置を誤認し、ここに到達できないこともありうる。
周辺特徴物の抽出については、図4に説明されている。図4(a)には、情報センタの地図データベース12上の、情報要求のあった施設50の周辺地図が示されている。経度X_(0)、緯度Y_(0)の地点P_(0)に位置する施設50の周辺には、交差点52で交差する二つの道路54,56が存在する。地図データベース上では、道路54,56は、交差点52により各々二つの道路リンク54a,54b及び56a,56bに分割されている。施設50の周辺の特徴物は、互いに接続するものであって、施設50を挟むように位置している二つであって、かつ施設50に最も近い位置のものと次に近い位置のものの二つが抽出される。図4の例であれば、交差点52(審決注:「50」は「52」の誤記であることが明らかであるので訂正して摘記した。)で接続し、施設50を上下から挟み込むように位置する道路リンク54b,56bが抽出される。
さらに、施設位置情報作成部18において施設位置に関する情報が作成される(S104)。この情報は、ステップS102で抽出された特徴物と施設50の相対的な位置関係を示す情報を含み、具体的には、前記各々の特徴物54b,56b上の地点P_(0)からの最近点A,Bと、これらの点に対する地点P_(0)の位置として表されている。さらに、施設位置に関する情報には、地点P_(0)の経度・緯度を含む。
ステップS102及びステップS104で作成された周辺特徴物及び施設の位置に関する情報は、図4(b)に示すような、道路リンク54b,56bの形状と、当該道路リンク54b,56bと施設50の相対的な位置関係を示す図形情報である。そして、この情報が情報センタ10から送信される(S106)。
端末22では、要求した施設に関する情報、すなわち前記の周辺特徴物及び施設位置に関する情報が、情報センタ10から送信されるのを待ち、これを受信する(S108)。そして、受信した施設の経度・緯度情報を基に、端末の地図データベース24上の施設位置P_(0)′(X_(0),Y_(0))を求める(S110)。この位置は、たとえば図4(c)に示されるように、情報センタの地図データベース12と異なる位置になる場合がある。図4(c)を詳細に説明すれば、情報センタの地図データベース12の道路54,56に相当する道路が、道路64,66で表されており、これらの道路は交差点62で交差している。また、道路64,66は各々交差点62で道路リンク64a,64b及び66a,66bに分割されている。そして、施設の位置を表す経度X_(0)、緯度Y_(0)を、そのまま端末の地図データベース上に表記したのが位置P_(0)′である。この施設位置P_(0)′を基準として、情報センタで抽出された道路リンク54b,56bは、図4(c)の破線の示す位置に存在することになる。
そして、受信した特徴物と端末の地図データベースの特徴物の位置が比較され(S112)、一致した場合(S114)、次式で定められる変換行列Tが定義される(S116)。
・・・(式省略)・・・
この変換行列Tは、実際には座標変換が行われない行列である。一方、図4(c)に示されるように、受信した特徴物と、これに対応する端末の地図データベースの特徴物の位置が一致せず、ずれている場合は、このずれを解消するための変換行列Tが算出される(S118)。すなわち、図4(d)に示されるように、受信した道路リンク54b,56bが、端末の地図上の道路リンク64b,66bに一致するように、変換行列Tが決定される。これは、既知のマップマッチング法により達成され、この演算を行うのがマップマッチング演算部34である。また、変換行列Tは次式にて定められる。
T=T_(P)T_(R)ただし、
・・・(式省略)・・・
すなわち、経度・緯度方向に(a,b)移動する平行移動(T_(P))と、角度θ移動する回転移動(T_(R))によって変換行列Tが定義される。
この変換行列Tによって、受信データに基づき施設位置P_(0)′(X_(0),Y_(0))が変換され地図上の施設位置P_(1)(X_(1),Y_(1))を次式に基づき算出することができる(S120)。
P_(1)=TP_(0)′
そして、表示部30に端末の所有する地図上に施設位置P_(1)が表示される(S122)。」(第7頁第8行?第12頁第6行)
イ 「図5及び図6には、情報センタにおける周辺特徴物の抽出に関する方法の一例を示すフローチャートが示されている。すなわち、図2に示すフローチャートのステップS102の一例が詳細に示されている。また、この方法においては、端末22からの情報要求に際して、当該端末が保有している地図データベース24がどのような種類のものであるかの情報が情報センタ10に送られる。
まず、端末22が、個人の住宅の位置まで分かる程度の詳細な地図(住宅地図)の表示に対応できるかどうかが判定される(S200)。住宅地図表示に対応できる場合は、幅3m以上の道路を検索対象とし(S202)、対応できない場合は、幅5.5m以上の道路を検索対象とする(S204)。そして、検索対象となった道路のうち、施設位置から最近の道路リンクに降ろした垂線の足を点Cとする(S206)。
次に、端末22が、VICS(Vehicle Information and Communication System)推進協議会が定める地図(VICS地図)に対応可能かどうかが判断される(S208)。対応可能な場合、VICS地図にて定められた道路リンクの始点を検索対象に設定し(S210)、対応できない場合は、一般都道府県道以上の道路どうしの交差点を検索対象に設定する(S212)。そして、検索対象となった道路リンクの始点または交差点のうち、施設位置から最近の始点または交差点を点Dとする(S214)。
そして、点Cから点Dまでの経路を求め、この経路を構成するリンク列を点Cに近い方からリンク1、リンク2、…、リンクnとする(S216)。
点D(リンクnの端点)は地図データベースの種類によらず一意に定まる点であるから、点Cから点Dまでの経路(リンク1?リンクn)により、点Cの位置を一意に定めることができる。」(第12頁第24行?第13頁第17行)
ウ 「上述のようにして、情報センタ130から送信した相対位置指定において使用したリンクが車両110側の地図データベース116に存在しない場合には、他のリンクを用いて、相対位置指定が行われる。しかし、ポイントPの位置指定には、最初に使用したリンクが最適のものである。そして、ポイントPに行くためには、最初に指定したリンクを通ることが好ましい。そこで、2度目の送信あるいは車両110からの要求に応じて、車両110の地図データベース116に存在しないリンクのデータを提供することが好ましい。例えば、図16に示すようなデータを情報センタ130が車両110に提供し、車両110がこのデータにより地図データベース116を更新することで、車両110の表示装置118において、当該リンクが表示できるようになる。すなわち、2次メッシュコード、リンク番号、始点ノード番号及び座標、終点ノード番号及び座標、補完点数、補完点についての座標(補完点数だけ繰り返し)からなるリンクのデータを送信する。これによって、始点から終点まで、補完点を通る線で、当該リンクが定義される。なお、このリンクが、車両110の地図データベース116に存在するリンクを始点とするものでない場合には、これらの中間のリンクについてのデータも送信する。」(第18頁末行?第19頁第15行)

エ 上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「地図を表示するのに必要な情報を記憶する地図データベース12を有している情報センタ10は、端末の情報要求に応じて地図データベース12から情報を読み出す制御部14を有しており、前記制御部14は、端末からある施設に関する情報の要求があった場合に、当該施設の周辺の道路、鉄道、河川など、地図表記上、線形状となる特徴物に関する情報を前記地図データベース12から所定数抽出し、さらに、この周辺特徴物と前記の施設の相対位置に関する情報を前記地図データベース12から読み出す施設位置情報作成部18を有しており、
前記情報センタ10は、周辺特徴物に関する情報及び施設の位置に関する情報を送信し、また端末22からの情報送信要求を受信する無線通信部20を有しており、
端末22は、情報センタ10の地図データベース12と同一のものでなくとも良い地図データベース24を有しており、
情報センタ10に対し所望の施設の情報を要求し、この要求に応じて情報センタ10より返信されてくる情報を受信する無線通信部26を有しており、
無線通信部26で受信された施設に関する情報と、端末の保有する地図データベース24のデータを照合する制御部28が備えられており、制御部28の指示に従って地図などの表示を行う表示部30及び運転者が情報の欲しい施設を選択するなどに使用する操作部32が備えられており、
情報センタ10から送られてきた情報のうち地図表示上の特徴的な形状の物と、これに相当する端末の地図データベース24の特徴物の形状を比較し、情報センタと端末の地図データベース間のずれ量を算出するマップマッチング演算部34が設けられており、
端末22からある施設についての情報の要求、たとえば駐車場に関して言えば位置などであり、レストランならば位置などの情報の要求が発信されると、
情報センタ10においては、当該施設の周辺の地図表示上の特徴物が、施設位置情報作成部18によって地図データベース12より抽出され、地図表示上の特徴物は、道路など、その形状が線状のものであって、その線形状の特徴物の一方に存在する施設が他方に表示されては、情報を受信した者が誤解または混乱するようなものであり、
地点P_(0)に位置する施設50の周辺の特徴物は、たとえば、交差点52で接続し、施設50を上下から挟み込むように位置する道路リンク54b,56bが抽出され、
施設位置情報作成部18において抽出された特徴物と施設50の相対的な位置関係を示す情報が作成され、具体的には、前記各々の特徴物54b,56b上の地点P_(0)からの最近点A,Bと、これらの点に対する地点P_(0)の位置として表され、さらに、地点P_(0)の経度・緯度を含み、
前記作成された周辺特徴物及び施設の位置に関する情報は、情報センタ10から送信され、端末22では、要求した施設に関する情報、すなわち前記の周辺特徴物及び施設位置に関する情報を受信し、表示部30に端末の所有する地図上に施設位置P_(1)が表示される方法であって、
施設位置から最近の道路リンクに降ろした垂線の足を点Cとし、端末22が、VICS推進協議会が定める地図(VICS地図)に対応可能な場合、VICS地図にて定められた道路リンクの始点を検索対象に設定し、対応できない場合は、一般都道府県道以上の道路どうしの交差点を検索対象に設定し、検索対象となった道路リンクの始点または交差点のうち、施設位置から最近の始点または交差点を点Dとし、点Cから点Dまでの経路を求め、この経路を構成するリンク列を点Cに近い方からリンク1、リンク2、…、リンクnとすると、点D(リンクnの端点)は地図データベースの種類によらず一意に定まる点であるから、点Cから点Dまでの経路(リンク1?リンクn)により、点Cの位置を一意に定めることができる方法。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「『施設位置情報作成部18』で作成され送信される情報」、「情報センタ10」、「端末22」、「『地図データベース12』及び『地図データベース24』」及び「施設位置情報作成部18」は、それぞれ本願発明の「オブジェクト」、「送信機」、「受信機」、「データベース」及び「符号化器」に相当する。
(2)引用発明は「地点P_(0)に位置する施設50の周辺の特徴物は、たとえば、交差点52で接続し、施設50を上下から挟み込むように位置する道路リンク54b,56bが抽出され、施設位置情報作成部18において抽出された特徴物と施設50の相対的な位置関係を示す情報が作成され、具体的には、前記各々の特徴物54b,56b上の地点P_(0)からの最近点A,Bと、これらの点に対する地点P_(0)の位置として表され、さらに、地点P_(0)の経度・緯度を含み、前記作成された周辺特徴物及び施設の位置に関する情報は、情報センタ10から送信され、端末22では、要求した施設に関する情報、すなわち前記の周辺特徴物及び施設位置に関する情報を受信し、表示部30に端末の所有する地図上に施設位置P_(1)が表示される」ものであり、「端末22は、情報センタ10の地図データベース12と同一のものでなくとも良い地図データベース24を有して」いるから、引用発明は、交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法であって、該オブジェクトについて情報を各送信機から受信機に伝送し、当該の送信機における前記オブジェクトの符号化と、前記の受信機における復号化とに別個のデータベースを利用することができ、該データベースは、交通道路網のディジタル地図として構成されている形式の、交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法といえる。
(3)一般に、地図データベースのリンクは、ノードをつないだものであり、刊行物1のウに記載のように、ノードは、座標を有していることが当業者に自明であるから、引用発明は、前記のオブジェクトを、送信機に設けられた符号化器によって符号化し、前記のオブジェクトは、前記の送信機のディジタル地図における座標値によって構成される少なくとも1つずつの座標チェーンを備えているものといえる。
(4)引用発明は「施設位置から最近の道路リンクに降ろした垂線の足を点Cとし、端末22が、VICS推進協議会が定める地図(VICS地図)に対応可能な場合、VICS地図にて定められた道路リンクの始点を検索対象に設定し、対応できない場合は、一般都道府県道以上の道路どうしの交差点を検索対象に設定し、検索対象となった道路リンクの始点または交差点のうち、施設位置から最近の始点または交差点を点Dとし、点Cから点Dまでの経路を求め、この経路を構成するリンク列を点Cに近い方からリンク1、リンク2、…、リンクnとすると、点D(リンクnの端点)は地図データベースの種類によらず一意に定まる点であるから、点Cから点Dまでの経路(リンク1?リンクn)により、点Cの位置を一意に定める」ものであるから、座標チェーンは、少なくとも部分的に、受信機のディジタル地図にも含まれている交通道路上にあり、かつ当該交通道路網の部分の特徴的な特異性を含み、当該の特徴的な特異性は、際立った道路の経過、または使用されるどのデータベースでも同様に基準化されて格納されているオブジェクトであるといえる。
(5)(1)ないし(4)より、本願発明と引用発明とは、
「交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法であって、
該オブジェクトについて情報を各送信機から受信機に伝送し、当該の送信機における前記オブジェクトの符号化と、前記の受信機における復号化とに別個のデータベースを利用することができ、
該データベースは、交通道路網のディジタル地図として構成されている形式の、交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法において、
前記のオブジェクトを、送信機に設けられた符号化器によって符号化し、前記のオブジェクトは、前記の送信機のディジタル地図における座標値によって構成される少なくとも1つずつの座標チェーンを備えており、
該座標チェーンは、少なくとも部分的に、前記の受信機のディジタル地図にも含まれている交通道路上にあり、かつ当該交通道路網の部分の特徴的な特異性を含み、
当該の特徴的な特異性は、際立った道路の経過、または使用されるどのデータベースでも同様に基準化されて格納されている前記のオブジェクトである、
交通道路網におけるオブジェクトを符号化する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]本願発明は「少なくとも1つの座標チェーンの複数の部分のうちで受信機のデータベースの相応するものがあることが予想される部分にマークを付ける」と特定されているのに対し、引用発明は、端末22(受信機)の表示部30に端末の所有する地図上に施設位置P_(1)が表示されるものの、どのような表示がなされるか明らかでない点。

5 判断
(1)上記相違点について検討する。
引用発明は「地点P_(0)に位置する施設50の周辺の特徴物は、たとえば、交差点52で接続し、施設50を上下から挟み込むように位置する道路リンク54b,56bが抽出され、施設位置情報作成部18において抽出された特徴物と施設50の相対的な位置関係を示す情報が作成され、具体的には、前記各々の特徴物54b,56b上の地点P_(0)からの最近点A,Bと、これらの点に対する地点P_(0)の位置として表され、さらに、地点P_(0)の経度・緯度を含み」、「施設位置から最近の道路リンクに降ろした垂線の足を点Cとし、端末22が、VICS推進協議会が定める地図(VICS地図)に対応可能な場合、VICS地図にて定められた道路リンクの始点を検索対象に設定し、対応できない場合は、一般都道府県道以上の道路どうしの交差点を検索対象に設定し、検索対象となった道路リンクの始点または交差点のうち、施設位置から最近の始点または交差点を点Dとし、点Cから点Dまでの経路を求め、この経路を構成するリンク列を点Cに近い方からリンク1、リンク2、…、リンクnとすると、点D(リンクnの端点)は地図データベースの種類によらず一意に定まる点であるから、点Cから点Dまでの経路(リンク1?リンクn)により、点Cの位置を一意に定めることができる」ものであるから、特徴物との相対的な位置関係を示す情報が作成された施設位置は、座標チェーンの部分であるといえ、端末22(受信機)の地図データベース24(データベース)上の相応するものがあることが予想される部分に表示されることは明らかである。地図データ上に場所を表す表示としてどのような表示をするかは当業者が必要に応じ適宜選択し得ることであり、引用発明において、施設位置をマークで表示することは設計事項にすぎない。
(2)よって、引用発明において本願発明の上記相違点に係る構成を採用することは当業者が容易になし得る程度のことである。
(3)以上のとおりであるから、本願発明の上記相違点に係る構成は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-26 
結審通知日 2012-08-01 
審決日 2012-08-16 
出願番号 特願2001-522507(P2001-522507)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 言一  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 黒瀬 雅一
鈴木 秀幹
発明の名称 交通道路網におけるオブジェクトを符号化および復号化する方法  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 高橋 佳大  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  
代理人 篠 良一  

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