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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1267975
審判番号 不服2011-18990  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-02 
確定日 2012-12-27 
事件の表示 特願2006- 99012「太陽電池装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-273830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成18年3月31日の出願であって、平成22年11月8日付けで手続補正がなされたが、平成23年6月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月2日付けで拒絶査定不服審判請求がなされ、その後、当審において平成24年7月18日付けで拒絶理由が通知され、同年9月20日に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年9月20日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、補正前(平成22年11月8日付け手続補正後のもの)の特許請求の請求項1につき、
「【請求項1】金属体に半田層が被覆されたタブリードを準備し、
前記タブリードを太陽電池セルの表面側の電極上に当接させ、前記太陽電池セルの裏面側の全面を予熱した状態で、
熱風供給手段から熱風を前記タブリードに対して相対的に移動する状態で付与し、前記タブリードを太陽電池セルの電極に対して半田付けすることを特徴とする太陽電池装置の製造方法。」
とあったものを、
「【請求項1】所定時間停止した後、所定時間移動するという間欠動作により、太陽電池セルを搬送して複数の前記太陽電池セルを直列に接続したストリングを含む太陽電池装置の製造方法であって、
金属体に半田層が被覆されたタブリードを準備し、
搬送の停止期間中に、前記タブリードを太陽電池セルの表面側の電極上に当接させ、前記太陽電池セルの裏面側の全面を予熱した状態で、
前記停止期間中に、熱風供給手段から熱風を前記タブリードに対して相対的に移動する状態で付与し、前記タブリードを太陽電池セルの電極に対して半田付けすることを特徴とする太陽電池装置の製造方法。」
に補正する内容を含むものである。

2 補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1に「所定時間停止した後、所定時間移動するという間欠動作により、太陽電池セルを搬送して複数の前記太陽電池セルを直列に接続したストリングを含む太陽電池装置の製造方法であって」との限定を付加し、あわせて、「前記タブリードを太陽電池セルの表面側の電極上に当接させ、前記太陽電池セルの裏面側の全面を予熱した状態で」、及び、「熱風供給手段から熱風を前記タブリードに対して相対的に移動する状態で付与し」に関して、それぞれに「搬送の停止期間中に」、及び、「前記停止期間中に」との限定を付加するものであるから、上記(1)の本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記1において、補正後のものとして記載したとおりのものと認める。
(2)刊行物の記載及び引用発明
ア 当審における拒絶理由通知に引用された、本願の出願前に頒布された、国際公開第2005/096396号(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「複数のセルを接続部材により電気的に接続して太陽電池を製造する方法であって、
前記セルの表面にフラックスを塗布するフラックス塗布工程と、
前記フラックスが塗布された隣接する前記セルにわたって前記接続部材を配設するタブ配設工程と、
当該接続部材を前記セルに半田付けして接続するタブストリング工程と、 前記接続部材が接続された前記セルを加熱するセル加熱工程とを備えたことを特徴とする太陽電池の製造方法。」(請求の範囲)
(イ)「技術分野
[0001] 本発明は、太陽電池の製造方法に係り、特に複数のセルをタブ又はタブリードと称される接続部材により電気的に接続して成る太陽電池を製造する方法に関するものである。
背景技術
[0002] ・・・例えば、太陽電池は複数の光電変換セルを備え、これら隣接するセルに銅箔からなるタブを半田付けして相互に電気的に接続することによりストリングが構成されている。・・・」
(ウ)「[0036] ・・・尚、セル12を直列にタブ14で半田付けして接続するために、隣接するセル12は、上面と下面(図示せず)がタブ14で接続される。・・・」
(エ)「[0044] ・・・図2はこの場合の実施例を示す太陽電池のストリング100の製造工程図を示している。・・・
[0045] 実施例のセル12は約10cm角に形成されており、その両面には並行に2条の集電極(幅約2mm)が設けられ、集電極の両側には多数の分岐電極(幅約50μm)が延長して設けられている。係るセル12はパレット(図示せず)の長手方向に一列に並べられて着脱可能に装着され、後の工程の作業が行われる。太陽電池の製造方法は、図2に示すようにセル12を用意し、パレットに載置する(第1工程)。
[0046] 次に、セル12表面の前記集電極の部分、即ち、接続部材としてのタブ14、14を半田付する部分(図中点線)に所定の温度に温められた液状のフラックス(水ベースの物質であり、沸点は約+100℃であり、沸点以上で気化し、約+200℃以上で活性化する。)を塗布する(フラックス塗布工程としての第2工程)。尚、前記タブ14は幅約2mmの導電性を有する銅箔などにて構成されており、その表面には半田が塗布されている。
[0047] 次に、タブ配設工程としての第3工程に移行する。この第3工程移行については図3及び図4を用いて説明する。図3及び図4において、3は無端ベルトから構成された搬送ベルト(搬送手段)であり、所定時間停止した後、所定距離移動すると云う間欠的な動作により、セル12を図3中向かって右方向に搬送するものである。この搬送ベルト3は、図7に示すようにタブストリング工程(半田付け位置)に位置する搬送ベルト3Aと、セル加熱工程に位置する搬送ベルト3Bとから成り、搬送ベルト3Aはセル12下面のタブ14、14を回避した位置に3条設けられ、搬送ベルト3Bは逆にセル12下面のタブ14、14に対応して接触する位置に2条設けられている。
[0048] 4は搬送ベルト3の所定の半田付け位置の上下に配置された押付装置であり、図示しない駆動手段によって上下動される二列の複数のピン4A・・、4B・・から構成されている。尚、このピン4A・・、4B・・は半田が付かないもので構成され、図3、図4に示すように配置される2条のタブ14、14の垂直上方及び下方にそれぞれ対応して配置されている。また、この押付装置4の下方に対応する位置の搬送ベルト3下側には、電気ヒータから構成されたホットプレート(下側加熱手段)6が設けられており、作業中常時通電されている。
[0049] 更に、この押付装置4と同じタブ14、14の垂直上方にそれぞれ対応する位置には、温風ヒータ(温風式加熱手段)7、7が設けられている。各温風ヒータ7、7は、例えば通電されて発熱する電気ヒータと送風機とから構成されており、電気ヒータにて加熱された空気(熱風)を送風機にてタブ14、14部分に集中的に吹き付けるものである。
[0050] 前述の第2工程においてフラックスが塗布されたセル12は次に上記搬送ベルト3Aに載置される。次に、前記集電極に対応してタブ14が搬送ベルト3Aの進行方向における左右に2条配置される(タブ配置工程としての第3工程)。実際には、ストリング100を構成する最初のセル12の下面の集電極に対応してタブ14が2条配置され、その前部(搬送ベルト3の進行方向における前部)半分は進行方向に引き出される。そして、搬送ベルト3が所定距離移動され、セル12は前述した所定の半田付け位置に移動されて所定時間停止する。そこでセル12の上面の集電極に対応してタブ14が配置される。・・・
[0052] このようにセル12の上下面に2条のタブ14、14を当接させ、配置した状態で、この停止時間中、押付装置4の各ピン4A・・、4B・・が降下し、タブ14、14をセル12の上面及び下面に押し付けて浮かないように押さえる。また、タブ14を押圧せずにセル12に半田付けできれば、必ずしも押付装置4は使用しなくても差し支えない。
[0053] このようにセル12にタブ14を押し付けた状態で、温風ヒータ7、7の電気ヒータと送風機に通電して高温の熱風をタブ14、14に集中して吹き付け、タブ14、14の半田を溶融温度(+186℃?+187℃)以上で加熱する。尚、下面のタブ14、14も上面からの熱風吹き付けに伴う温度上昇による熱伝導と下面のホットプレート6からの加熱によって半田が溶融温度まで加熱される(タブストリング工程としての第4工程)。
[0054] ここで、温風ヒータ7、7からの熱風はタブ14、14に集中的に吹き付けられるので、それ以外の部分のセル12が過剰に加熱され、温度が異常に高くなってセル12に損傷が生じることは無い。また、この場合搬送ベルト3Aは下面のタブ14、14に接触していないので、このタブ部分の温度を逃がすこと無く、タブ14付近を高温として半田の溶融を促進できる。
[0055] このように押付装置4でタブ14をセル12に押し付けながら温風ヒータ7、7から熱風を所定時間吹き付けた後、温風ヒータ7の電気ヒータ及び送風機は停止される。尚、この熱風吹きつけ後も押付装置4はピン4A・・、4B・・によりタブ14をセル12に押し付けておき、半田が冷えてタブ14がセル12に確実に接続されるまで待つ。
[0056] この間に上面のタブ14、14の後部には前述したようにセル12が載置される。その後、ピン4A・・、4B・・はセル12上から離間する方向に移動する。次に、搬送ベルト3Aが所定距離移動され、この新たに載置されたセル12が半田付け位置に移動されて再びタブ14、14がその上面に載置される。このようにしてタブ14によりセル12を直列に半田付けしてストリング100を製造する。」
(オ)図3は、以下のものである。

(カ)上記(ア)ないし(エ)を踏まえて上記(オ)の図3をみると、押付装置4の下方に対応する位置の搬送ベルト3下側には、電気ヒータから構成された作業中常時通電されているホットプレート(下側加熱手段)6が設けられていて、当該ホットプレート6は搬送ベルト3の進行方向に対して、セル12より長いことがみてとれる。

上記(ア)ないし(カ)によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「複数のセルを接続部材により電気的に接続して太陽電池を製造する方法であって、
前記セルの表面にフラックスを塗布するフラックス塗布工程と、
前記フラックスが塗布された隣接する前記セルにわたって前記接続部材を配設するタブ配設工程と、
当該接続部材を前記セルに半田付けして接続するタブストリング工程と、
前記接続部材が接続された前記セルを加熱するセル加熱工程とを備え、
前記セルは約10cm角に形成されており、その両面には並行に2条の集電極が設けられ、集電極の両側には多数の分岐電極が延長して設けられ、前記セル表面の前記集電極の部分は、接続部材としてのタブを半田付する部分であり、
前記タブは幅約2mmの導電性を有する銅箔などにて構成されており、その表面には半田が塗布されており、
前記太陽電池は複数の光電変換セルを備え、これら隣接するセルに銅箔からなるタブを半田付けして相互に電気的に接続することによりストリングが構成されていて、セルを直列にタブで半田付けして接続するために、隣接するセルは、上面と下面がタブで接続されるものであり、
前記タブ配設工程は、
無端ベルトから構成された搬送ベルト(搬送手段)が、所定時間停止した後、所定距離移動すると云う間欠的な動作により、セルを搬送して、セルは所定の半田付け位置に移動されて所定時間停止し、そこでセルの上面の集電極に対応してタブが配置されるものであり、
前記タブストリング工程は、
前記押付装置の下方に対応する位置の搬送ベルト下側には、電気ヒータから構成されたホットプレート(下側加熱手段)が設けられており、作業中常時通電されていて、
前記セルの上下面に2条のタブを当接させ、配置した状態で、この停止時間中、押付装置の各ピンが降下し、タブをセルの上面及び下面に押し付けて浮かないように押さえ、セルにタブを押し付けた状態で、温風ヒータの電気ヒータと送風機に通電して高温の熱風をタブに集中して吹き付け、タブの半田を溶融温度以上で加熱し、下面のタブも上面からの熱風吹き付けに伴う温度上昇による熱伝導と下面のホットプレートからの加熱によって半田が溶融温度まで加熱されるものであり、
前記温風ヒータからの熱風はタブに集中的に吹き付けられるので、それ以外の部分のセルが過剰に加熱され、温度が異常に高くなってセルに損傷が生じることは無く、
前記セル加熱工程は、
前記押付装置でタブをセルに押し付けながら温風ヒータから熱風を所定時間吹き付けた後、温風ヒータの電気ヒータ及び送風機は停止され、この熱風吹きつけ後も押付装置はピンによりタブをセルに押し付けておき、半田が冷えてタブがセルに確実に接続されるまで待つものであって、
その後、ピンはセル上から離間する方向に移動し、搬送ベルトが所定距離移動され、この新たに載置されたセルが半田付け位置に移動されて再びタブがその上面に載置されるようにしてタブによりセルを直列に半田付けしてストリングを製造し、
前記ホットプレートは搬送ベルトの進行方向に対して、前記セルより長い太陽電池の製造方法。」

イ 当審における拒絶理由通知に引用された、本願の出願前に頒布された、特開2006-66570号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
表面に表面電極及び集電電極を備え、裏面に裏面電極を備えた太陽電池素子をタブリード線の半田付けにより電気的に接続するに際し、前記タブリード線上を、半田を溶融させるための加熱と、溶融した半田を固化させるための冷却とからなる単位操作を繰り返しながら移動させることにより、連続的又は断続的に接続することを特徴とする太陽電池素子の接続方法。」
(イ)「【技術分野】
【0001】本発明は、太陽電池素子を複数個、直列及び並列接続して太陽電池モジュールを形成するための太陽電池素子の接続方法に関し、更に詳しくは、極薄の太陽電池素子を使用しても該素子の破損や反りを減少させ歩留まりを向上させるとともに、安価な太陽電池素子を提供し得る接続方法に関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】しかしながら、上記特許文献1に記載された技術における接続タブは、互いに分離され、且つ太陽電池素子との接続面を形成するための平坦面を有する複数の接続部と、これら接続部を太陽電池素子との接続面から離間して接続している連結部を有してなり、接続面の面積を小さくすることによって、接続タブと太陽電池素子との熱膨張率の差に起因して発生する素子の損傷を回避する技術ではあるが、接続タブの加熱及び冷却を、接続タブの全長に亘って同時に加熱し、また、接続タブの全長に亘って同時に冷却しているため、熱ストレスによる素子の破損や反りの発生が避けられず、モジュール化の各工程でのハンドリングや加圧により破損し歩留りが低下するという問題をはらんでいる。」
(エ)「【0013】本発明は、かかる実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決するもので、これまでのような高価で特殊な接続タブを使うことなく、市販されている安価な標準品である平角状の半田付きタブリード線を使用できるとともに、太陽電池素子に不要な熱ストレスを生起させず、該素子の割れや反りを防止し、太陽電池素子の歩留まりを向上させるとともに安価な太陽電池素子の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】上記目的を達成するために、本発明の請求項1は、表面に表面電極及び集電電極を備え、裏面に裏面電極を備えた太陽電池素子をタブリード線の半田付けにより電気的に接続するに際し、前記タブリード線上を、半田を溶融させるための加熱と、溶融した半田を固化させるための冷却とからなる単位操作を繰り返しながら移動させることにより、連続的又は断続的に接続することを特徴とする太陽電池素子の接続方法を内容とする。」
(オ)「【発明の効果】
【0025】本発明は、太陽電池のモジュールを形成するに際し、一方の太陽電池素子表面の集電電極と、これに隣接する他方の素子の裏面電極とをタブリード線の半田付けにより、加熱と冷却とからなる単位操作を繰り返しながら移動させることにより溶着・接続することによって、素子に不要な熱ストレスの発生を防止し、素子の割れや反りを防止して歩留まりを大巾に向上させることができる。
また、タブリード線を加熱して半田を溶融させた後、溶融した半田を固化させるために、冷却操作を繰り返しながらタブリード線上を移動させることにより連続的又は断続的に接続することによっても、上記方法よりも若干効果は低下するが、同様の効果を得ることができる。
【0026】本発明により、かかる効果が奏される理由については、従来技術のようにリード線全長に亘って同時に加熱、冷却するのではなく、半田を加熱溶融した後、速やかに冷却溶着する操作の結果、加熱によって一度膨張しかけたリード線部分が直ちに冷却されることで収縮に転じ局部的に膨張収縮がバランスを保ち、これがリード線全長に亘って連続的又は断続的に形成されるので、リード線が室温まで冷却されても熱ストレスが抑制又は緩和され、割れや反りが減少するものと考えられる。」
(カ)「【0037】実施態様1
本発明の実施態様を図3に基ずいて説明する。なお、図3においては、図の煩雑をさけるため、素子1の輪郭と集電電極の位置だけを示し、表面電極等を省略している。また、下記に説明する装置のノズルについても2列形成されている集電電極の一方側だけを示し、他方側を省略して説明する。以下の実施態様においても同様である。
【0038】図3に示したように、装置の搬送ベルト(図示せず)上に、図1で説明した表面電極3及び集電電極5と、裏面に裏面電極4を備えた太陽電池素子1がセットされた後、2列に形成された細長い集電電極5の上部にタブリード線7が配設される。続いて、これら集電電極5とタブリード線7の相対位置関係を保持するために、リード線押さえ機構部8のフィンガー部8Aが、タブリード線7(集電電極5)に直交する方向から延出され、タブリード線7の上から押さえ付けるように一時的に固定する。
【0039】この後、タブリード線7の上に、適宜間隔をおいて配設された装置の複数のノズル9にその一端から他端に向かって順次加熱気体(加熱空気)をタブリード線7に向かって噴射加熱して半田を溶融させ、次いで、順次冷却気体(冷却空気)に切り替え溶融した半田を固化し、連続的又は断続的に接続するか、又はタブリード線7に半田が溶融するまで加熱気体(加熱空気)を噴射加熱した後、タブリード線7上をその一端から順次冷却気体に切り替えてノズル9から冷却気体(空気)をタブリード線7に向かって噴射冷却し、半田を固化してタブリード線7と集電電極5とを溶着させる。続いて、タブリード線7の上から一時的に押さえ付けていたフィンガー部8Aが後退して、一連の接続動作が完了する。
【0040】ノズル9は、その先端を半田で被覆されたタブリード線7の下側部分の半田を集中的に溶融するように工夫したものを用いることができる。また、加熱気体を供給した後、冷却気体を供給する代わりに、そのまま放冷(大気に接触させて自然冷却)するようにしてもよい。また、上記ノズルを2列並設してそれぞれを加熱列と冷却列としこれらを切り替えることによりタブリード線を加熱冷却してもよい。尚、図3ではノズルのみを図示し、該ノズルに連結する加熱気体や冷却気体の供給チューブや供給源等は省略されている。
【0041】実施態様2
図4に示したように、本実施態様において、装置の搬送ベルト(図示せず)上に太陽電池素子1がセットされる点、集電電極5の上部にタブリード線7が配設される点、及びリード線押さえ機構部8のフィンガー部8Aが延出され、タブリード線7の上から押さえ付ける状態で一時的に固定する点は、前述の実施態様1の場合と同じである。
【0042】本実施態様2では、タブリード線7上に一組の、加熱空気を供給する加熱ノズル10と、冷却空気を供給する冷却ノズル11とが配設されている。そして、タブリード線7の上に配設され、且つ装置の移動ユニット(図示せず)に連結された一組の加熱ノズル10と冷却ノズル11から、隣接するフィンガー部8A間のタブリード線7に加熱空気と冷却空気とが別々に供給されるように構成されている。
【0043】先ず、加熱ノズル10からの加熱空気によって、タブリード線7に被覆されている半田を溶融し、しかる後に、冷却ノズル11からの冷却空気によって溶融した半田を冷却して固化する。これら一組の加熱ノズル10と冷却ノズル11は、ユニットとして、タブリード線7上を順次移動しながらタブリード線7と集電電極5とを順次溶着する。続いて、タブリード線7の上から一時的に押さえ付けていたフィンガー部8Aが後退して、一連の接続動作が完了する。」
(キ)図3は、以下のものである。

上記(ア)ないし(キ)によれば、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「表面に表面電極及び集電電極を備え、裏面に裏面電極を備えた太陽電池素子をタブリード線の半田付けにより電気的に接続する工程と、前記タブリード線上を、半田を溶融させるための加熱と、溶融した半田を固化させるための冷却とからなる単位操作を繰り返しながら移動させる工程により、連続的又は断続的に接続する太陽電池素子の接続方法であって、
前記表面に表面電極及び集電電極を備え、裏面に裏面電極を備えた太陽電池素子をタブリード線の半田付けにより電気的に接続する工程は、
搬送ベルト上に、表面電極及び集電電極と、裏面に裏面電極を備えた太陽電池素子がセットされた後、2列に形成された細長い集電電極の上部にタブリード線が配設され、リード線押さえ機構部のフィンガー部が、タブリード線に直交する方向から延出され、タブリード線の上から押さえ付けるように一時的に固定し、タブリード線と集電電極とを溶着させ、タブリード線の上から一時的に押さえ付けていたフィンガー部が後退して、一連の接続動作が完了するものであり、
前記タブリード線上を、半田を溶融させるための加熱と、溶融した半田を固化させるための冷却とからなる単位操作を繰り返しながら移動させる工程は、
前記タブリード線の上に、適宜間隔をおいて配設された装置の複数のノズルにその一端から他端に向かって順次加熱気体(加熱空気)をタブリード線に向かって噴射加熱して半田を溶融させ、そのまま放冷(大気に接触させて自然冷却)して溶融した半田を固化するものである
太陽電池素子の接続方法。」
(3)対比・判断
ア 対比
(ア)本願補正発明と引用発明1を対比すると、
引用発明1の「セル」、「(幅約2mmの導電性を有する銅箔などにて構成されており、その表面には半田が塗布されている)タブ」及び「太陽電池の製造方法」は、本願補正発明の「太陽電池セル」、「(金属体に半田層が被覆された)タブリード」及び「太陽電池装置の製造方法」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明1は、「太陽電池は複数の光電変換セルを備え、これら隣接するセルに銅箔からなるタブを半田付けして相互に電気的に接続することによりストリングが構成されていて、セルを直列にタブで半田付けして接続するために、隣接するセルは、上面と下面がタブで接続されるものであり」、「無端ベルトから構成された搬送ベルト(搬送手段)が、所定時間停止した後、所定距離移動すると云う間欠的な動作により、セルを搬送して、セルは所定の半田付け位置に移動されて所定時間停止し、そこでセルの上面の集電極に対応してタブが配置されるものであ」るから、「所定時間停止した後、所定距離移動すると云う間欠的な動作により、セルを搬送して」、「隣接するセルに銅箔からなるタブを半田付けして相互に電気的に接続することによりストリングが構成され」、「セルを直列にタブで半田付けして接続する」ものであるといえる。
したがって、引用発明1は、本願補正発明の「所定時間停止した後、所定時間移動するという間欠動作により、太陽電池セルを搬送して複数の前記太陽電池セルを直列に接続したストリングを含む太陽電池装置の製造方法」との構成を備える。
(ウ)引用発明1の「タブ」は、「幅約2mmの導電性を有する銅箔などにて構成されており、その表面には半田が塗布されて」、「無端ベルトから構成された搬送ベルト(搬送手段)が、所定時間停止した後、所定距離移動すると云う間欠的な動作により、セルを搬送して、セルは所定の半田付け位置に移動されて所定時間停止し、そこでセルの上面の集電極に対応してタブが配置されるものであ」るから、引用発明1は、本願補正発明の「金属体に半田層が被覆されたタブリードを準備」するとの構成を備える。
(エ)引用発明1は、「押付装置の下方に対応する位置の搬送ベルト下側には、電気ヒータから構成されたホットプレート(下側加熱手段)が設けられており、作業中常時通電されていて」、「セルの上下面に2条のタブを当接させ、配置した状態で、この停止時間中、押付装置の各ピンが降下し、タブをセルの上面及び下面に押し付けて浮かないように押さえ、セルにタブを押し付けた状態で、温風ヒータの電気ヒータと送風機に通電して高温の熱風をタブに集中して吹き付け、タブの半田を溶融温度以上で加熱し、下面のタブも上面からの熱風吹き付けに伴う温度上昇による熱伝導と下面のホットプレートからの加熱によって半田が溶融温度まで加熱されものであ」る。
したがって、引用発明1は、搬送ベルトの「停止時間中」に、「セルの上下面に2条のタブを当接させ、配置した状態で」、「電気ヒータから構成されたホットプレート(下側加熱手段)が」、「作業中常時通電され」、「下面のタブも上面からの熱風吹き付けに伴う温度上昇による熱伝導と下面のホットプレートからの加熱によって半田が溶融温度まで加熱され」、「温風ヒータの電気ヒータと送風機に通電して高温の熱風をタブに集中して吹き付け、タブの半田を溶融温度以上で加熱」するものであるから、本願発明1の「搬送の停止期間中に、前記タブリードを太陽電池セルの表面側の電極上に当接させ、前記太陽電池セルの裏面側を予熱した状態で、前記停止期間中に、熱風供給手段から熱風を前記タブリードに対して付与し、前記タブリードを太陽電池セルの電極に対して半田付けする」との構成を備える。

以上によれば両者は、
「所定時間停止した後、所定時間移動するという間欠動作により、太陽電池セルを搬送して複数の前記太陽電池セルを直列に接続したストリングを含む太陽電池装置の製造方法であって、
金属体に半田層が被覆されたタブリードを準備し、
搬送の停止期間中に、前記タブリードを太陽電池セルの表面側の電極上に当接させ、前記太陽電池セルの裏面側を予熱した状態で、
前記停止期間中に、熱風供給手段から熱風を前記タブリードに対して付与し、前記タブリードを太陽電池セルの電極に対して半田付けする太陽電池装置の製造方法。」
である点で一致し、
a 本願発明1は、太陽電池セルの裏面側「の全面を」予熱した状態で、タブリードを太陽電池セルの電極に対して半田付けするのに対して、引用発明1は、ホットプレートからの加熱がセルの下面の全面であるか明らかではない点(以下「相違点1」という。)、及び、
b 本願発明1は、熱風供給手段から熱風をタブリードに対して「相対的に移動する状態で」付与し、タブリードを太陽電池セルの電極に対して半田付けするのに対して、引用発明1は、タブに対する熱風吹き付けが停止時間中に行われる点(以下「相違点2」という。)、
で相違するものと認められる。

イ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
引用発明1のホットプレートは搬送ベルトの進行方向に対してセルより長いものであって、電気ヒータから構成され、作業中常時通電されているものであるから、これをセルの下面の全面を加熱するものとして上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(イ)上記相違点2について検討する。
引用文献1には、「3は無端ベルトから構成された搬送ベルト(搬送手段)であり、所定時間停止した後、所定距離移動すると云う間欠的な動作により、セル12を図3中向かって右方向に搬送するものである。この搬送ベルト3は・・・セル12の上下面に2条のタブ14、14を当接させ、配置した状態で、この停止時間中、・・・タブ14、14をセル12の上面及び下面に押し付けて浮かないように押さえる。・・・このようにセル12にタブ14を押し付けた状態で、温風ヒータ7、7の電気ヒータと送風機に通電して高温の熱風をタブ14、14に集中して吹き付け、タブ14、14の半田を溶融温度(+186℃?+187℃)以上で加熱する。尚、下面のタブ14、14も上面からの熱風吹き付けに伴う温度上昇による熱伝導と下面のホットプレート6からの加熱によって半田が溶融温度まで加熱される・・・ここで、温風ヒータ7、7からの熱風はタブ14、14に集中的に吹き付けられるので、それ以外の部分のセル12が過剰に加熱され、温度が異常に高くなってセル12に損傷が生じることは無い。」と記載されている(上記(2)ア(エ)を参照。)。
上記記載によれば、引用発明1は、「温風ヒータからの熱風」が「タブに集中的に吹き付けられる」ことで「それ以外の部分のセルが過剰に加熱され、温度が異常に高くなってセルに損傷が生じることは無い」ように搬送ベルト(搬送手段)を、所定時間停止した後、所定距離移動すると云う間欠的な動作とし、停止時間中に半田付けするものであって、このように構成することで、引用発明1は「それ以外の部分のセル12が過剰に加熱され、温度が異常に高くなってセル12に損傷が生じる」との課題を解決するものといえる。
ここで、引用発明1は、タブには「温風ヒータからの熱風」が「集中的に吹き付けられる」ものであって、タブの長さ方向の移動がないことに照らして、タブ全体には「温風ヒータからの熱風」が「集中的に吹き付けられる」ものであると認められる。
しかるところ、引用文献2には、「接続タブの加熱及び冷却を、接続タブの全長に亘って同時に加熱し、また、接続タブの全長に亘って同時に冷却しているため、熱ストレスによる素子の破損や反りの発生が避けられず、モジュール化の各工程でのハンドリングや加圧により破損し歩留りが低下する」という「課題」が記載され(上記(2)イ(イ)を参照。)、当該記載に照らせば、引用発明1は、「熱ストレスによる素子の破損や反りの発生が避けられず、モジュール化の各工程でのハンドリングや加圧により破損し歩留りが低下する」という「課題」を有するものであることを理解することは当業者にとって格別困難なことではない。
そして、引用発明2は、「タブリード線の上に、適宜間隔をおいて配設された装置の複数のノズルにその一端から他端に向かって順次加熱気体(加熱空気)をタブリード線に向かって噴射加熱して半田を溶融させ、そのまま放冷(大気に接触させて自然冷却)して溶融した半田を固化する」との構成により、「熱ストレスによる素子の破損や反りの発生が避けられず、モジュール化の各工程でのハンドリングや加圧により破損し歩留りが低下する」という課題を解決するものといえる。
そうすると、引用発明1において、上記「課題」を解決するために、引用発明2の、「タブリード線の上に、適宜間隔をおいて配設された装置の複数のノズルにその一端から他端に向かって順次加熱気体(加熱空気)をタブリード線に向かって」(相対的に移動する状態で)「噴射加熱して半田を溶融させ、そのまま放冷(大気に接触させて自然冷却)して溶融した半田を固化」して、「素子に不要な熱ストレスの発生を防止し、素子の割れや反りを防止して歩留まりを大巾に向上させる」構成を引用発明1に適用することにより、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(4)まとめ
したがって、本願請求項1に係る発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのむすび
上記2の検討によれば、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年11月8日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、1において、補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明1及び引用発明2
上記第2、3(2)のとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 2 補正の目的」のとおり、本願補正発明は、本願発明に限定を付加したものである。
そして、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加した本願補正発明が、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、上記第2、3(3)での検討と同様の理由により、本願発明は引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明し得るものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-26 
結審通知日 2012-10-30 
審決日 2012-11-13 
出願番号 特願2006-99012(P2006-99012)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 575- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 松川 直樹
星野 浩一
発明の名称 太陽電池装置の製造方法  
代理人 大橋 雅昭  

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