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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F28D
管理番号 1267988
審判番号 不服2012-4642  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-12 
確定日 2012-12-27 
事件の表示 特願2007-23710号「蓄熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年8月21日出願公開、特開2008-190747号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年2月2日の出願であって、平成23年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審より審尋がなされたが回答がなく、さらに、当審より審判請求時の補正について問い合わせたところ、平成24年10月15日及び同18日付けで説明書がファックスされたものである。

第2 平成24年3月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年3月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
「潜熱を利用して蓄熱を行なう蓄熱材と、
所定量の前記蓄熱材を収容する蓄熱容器と、
前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記蓄熱材内へ供給するための供給手段と、
前記比重の差により、前記蓄熱容器内において前記蓄熱材の上側に層を成す前記熱交換媒体を前記蓄熱容器の内部から外部へ排出するための排出手段と、を含み、
前記供給手段は、前記蓄熱容器内の底面に敷設された金属製の板状体を有し、前記供給手段の金属製の板状体から前記蓄熱材に熱伝導が行なわれ、
さらに、前記供給手段は、1または複数の円配管を有し、かつ前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記1または複数の円配管を流通させて前記蓄熱材内へ供給させ、
前記金属製の板状体は、
全ての前記円配管より下側に敷設されると共に、
少なくとも1以上の前記円配管に接触するように形成されたことを特徴とする蓄熱装置。」
とあったものを、
「潜熱を利用して蓄熱を行なう蓄熱材と、
所定量の前記蓄熱材を収容する蓄熱容器と、
前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記蓄熱材内へ供給するための供給手段と、
前記比重の差により、前記蓄熱容器内において前記蓄熱材の上側に層を成す前記熱交換媒体を前記蓄熱容器の内部から外部へ排出するための排出手段と、を含み、
前記供給手段は、前記蓄熱容器内の底面に敷設された金属製の板状体を有し、前記供給手段の金属製の板状体から前記蓄熱材に熱伝導が行なわれ、
さらに、前記供給手段は、1または複数の円配管を有し、かつ前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記1または複数の円配管を流通させて前記蓄熱材内へ供給させ、
前記金属製の板状体は、
全ての前記円配管より下側に敷設されると共に、
少なくとも1以上の前記円配管に接触するように形成され、
前記円配管は、前記蓄熱容器の外部から前記蓄熱容器の底部中央に向かって形成された後に、前記蓄熱容器の底部周辺に向かって形成されていることを特徴とする蓄熱装置。」と補正しようとするものである。(下線部は補正個所を示す。)

2.当審の判断
本件補正は、円配管について、「前記蓄熱容器の外部から前記蓄熱容器の底部中央に向かって形成された後に、前記蓄熱容器の底部周辺に向かって形成されている」との事項(以下「補正事項」という。)で限定するものである。

ところで、この補正事項に関して、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、段落【0059】に「供給管4の一端には、接続装置41が設けられている。供給管4の他端は、蓄熱容器1aの上層部分の外側面から内部へ貫通して設けられる。供給管4は、蓄熱容器1aの中央部まで延在してから鉛直下方へ延在し、油2とエリスリトール3との間の境界面(界面)を横切って蓄熱容器1aの底部で蓄熱容器1a全体に水平面に沿って広がるように形成される。」(下線は当審で付与。以下同様。)と記載され、図3にも補正事項に関する構造が図示されている(以下「明細書の根拠記載」という。)が、この明細書の根拠記載は、図3に示される第2の実施の形態に関するものであって、この第2の実施の形態は段落【0058】に「第2の実施の形態に係る蓄熱装置100aにおいては、金属製板部材200を設けず、供給管4の代わりに供給管4および供給管4nを含む。」と明記されているとおり、金属製板部材200を設けない実施の形態、すなわち、蓄熱容器の底部に延在して敷設される金属製板部材に代わるものとして供給管を水平面に沿って広がるように形成したものである。このことは、出願当初の特許請求の範囲の請求項3に「前記供給手段は、前記蓄熱容器内に配設された前記排出手段側から前記蓄熱容器の中央底部に向かって形成され、前記蓄熱容器の中央底部から前記蓄熱容器内の周辺に亘って前記金属製の板状体が延在するように形成されたことを特徴とする請求項1記載の蓄熱装置。」と記載されていることにも示されている。

このように、前記明細書の根拠記載は、請求項1の前段で特定されている「前記供給手段は、前記蓄熱容器内の底面に敷設された金属製の板状体を有し、前記供給手段の金属製の板状体から前記蓄熱材に熱伝導が行なわれ」、「前記金属製の板状体は、全ての前記円配管より下側に敷設されると共に、少なくとも1以上の前記円配管に接触するように形成され」るものに適用することは、全く意図されておらず、適用を示唆する記載もないから、前記明細書の根拠記載は本件補正の根拠となるものではない。

この点に関し、請求人は上記説明書において、段落【0079】の「本発明は、上記の好ましい第1から第4の実施の形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。」との記載を根拠に、蓄熱容器1aと供給管4nとの間に板状体200が設けられた構成を示し、補正後の請求項1に係る発明は図3に記載された実施例の「供給管4および供給管4n」の下面に金属製板部材200を設けたものを特定した旨説明するが、そのような構成のものは、当初明細書等に記載されておらず、上記段落【0058】の記載からみて、当業者が想起し得る構成でもない。

そうすると、底面に敷設された金属製の板状体を有し、金属製の板状体が円配管に接触するように形成されたものにおいて、「前記円配管は、前記蓄熱容器の外部から前記蓄熱容器の底部中央に向かって形成された後に、前記蓄熱容器の底部周辺に向かって形成されている」という構成は、当初明細書等に記載されていたとはいえず、かつ当初明細書に記載した事項から自明であるともいえない。

そして、本件補正は請求人の主張する構成を導入するものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでないから、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえない。

よって、本件補正は出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年10月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「潜熱を利用して蓄熱を行なう蓄熱材と、
所定量の前記蓄熱材を収容する蓄熱容器と、
前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記蓄熱材内へ供給するための供給手段と、
前記比重の差により、前記蓄熱容器内において前記蓄熱材の上側に層を成す前記熱交換媒体を前記蓄熱容器の内部から外部へ排出するための排出手段と、を含み、
前記供給手段は、前記蓄熱容器内の底面に敷設された金属製の板状体を有し、前記供給手段の金属製の板状体から前記蓄熱材に熱伝導が行なわれ、
さらに、前記供給手段は、1または複数の円配管を有し、かつ前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記1または複数の円配管を流通させて前記蓄熱材内へ供給させ、
前記金属製の板状体は、
全ての前記円配管より下側に敷設されると共に、
少なくとも1以上の前記円配管に接触するように形成されたことを特徴とする蓄熱装置。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2005-188916号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、発生した熱を蓄え、離れた場所に熱を輸送することができる熱貯蔵ユニットに関するものである。」(下線は当審で付与。以下、同様。)
イ 「【0026】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る熱貯蔵ユニット1は、可搬式の熱貯蔵ユニットに好適に使用される。例えば、図1に示すように、熱を発生する工場60とその熱を利用する施設70とが互いにはなれている場合に、熱を輸送する熱輸送システム等に適用される。熱貯蔵ユニット1は、熱貯蔵ユニット1に対し蓄熱・放熱をする熱交換器5a・5bの接続口51・52に対して着脱可能となっており、トラック等の輸送機50により、工場60と施設70との間を輸送されるようになっている。工場60は、ごみ焼却場や発電所や製鉄所等であり、そこで発生する熱が熱交換器5aを介して熱貯蔵ユニット1に蓄えられる。また、施設70は、温水プールや病院等の施設であり、熱貯蔵ユニット1に蓄えられた熱が熱交換器5bを介して施設70内の温調設備等に適用される。以下の説明において、工場60側における熱交換について説明する。
【0027】
熱貯蔵ユニット1は、油2(熱交換媒体)と酢酸ナトリウム三水和塩3(蓄熱体)(以下、酢酸ナトリウム3と称する)とが収容された熱貯蔵容器1a(貯蔵容器)と、供給管4と、排出管6とを備えている。油2と酢酸ナトリウム3とは互いに混合せず、油2が酢酸ナトリウム3よりも比重が小さいため、熱貯蔵容器1a内では、上層に油2、下層に酢酸ナトリウム3と互いに分離して収容されるようになっている。また、油2と酢酸ナトリウム3とが互いに混合しないため、油2と酢酸ナトリウム3との間には夫々を分離するための部材等は介在しておらず、油2と酢酸ナトリウム3とは直接接触している。
【0028】
油2は、酢酸ナトリウム3との直接接触により、酢酸ナトリウム3との間で熱交換する。油2は、後述する排出管6から熱交換器5aに取込まれ、熱交換器5a内で熱供給されると(以下の説明で、熱交換器5aで熱供給された油2を油2aと称す)、供給管4を介して酢酸ナトリウム3内に排出される。排出された油2aは、比重が酢酸ナトリウム3よりも小さいため、上層の油2まで上昇し、油2に取込まれる。この上昇中に、酢酸ナトリウム3との直接接触により、油2aに供給された熱が酢酸ナトリウム3に伝導されるようになっている。
【0029】
酢酸ナトリウム3は、上述した油2aから伝導された熱を蓄える。酢酸ナトリウム3の融点は約58度であり、平時(室温状態)では固体となっている。そして、油2aから直接接触により熱が伝導されることにより、固体から液体に状態変化し、液体状態のときに蓄熱されるようになっている。」
ウ 「【0069】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る熱貯蔵ユニットについて説明する。本実施の形態に係る熱貯蔵ユニットは、供給管を2つ備えており、一方の供給管が他方の供給管を囲繞している点では第3の実施形態と同じであるが、それぞれの供給管の構造が相違している。以下、その相違点についてのみ説明する。尚、第1?第3の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0070】
図11に示すように、本実施の形態に係る熱貯蔵ユニット1は、2つの第1供給管15及び第2供給管16を有している。第1供給管15及び第2供給管16は、収容された油2が位置する熱貯蔵容器1aの上層部分に貫設されており、さらに、熱交換器5aに着脱可能に接続されている。具体的には、1本の供給管11の接続口が熱交換器5aの接続口51に着脱可能に接続されており、供給管11から、第1供給管15及び第2供給管16に枝分かれしている。
【0071】
第1供給管15及び第2供給管16は、油2と酢酸ナトリウム3との境界面を垂直に横切って酢酸ナトリウム3内に進入し、さらに、L字型に折れ曲がり水平に延びている。第1供給管15は、さらに、L字型に折れ曲がり、再び境界面を垂直に横切り、L字型に折れ曲がった先端に油2aを排出する出口15aが設けられている。第1供給管15及び第2供給管16は、内部空間を有しており、熱交換器5aにより熱供給された油2aが流通するようになっている。供給管15・16が水平に延びている部分において、第2供給管16が、第1供給管15を囲繞するようになっている。
【0072】
供給管15・16の水平に延びている部分は、貯蔵容器1aの底面に配置されている。これにより、排出孔16aから排出された油2aと酢酸ナトリウム3との接触時間をより長くすることができ、油2aの熱を十分に酢酸ナトリウム3に伝導することができる。また、酢酸ナトリウム3が液化していくと、油2aは酢酸ナトリウム3よりも比重が小さいため、排出孔16aから排出されると上昇してしまうため、熱貯蔵容器1aの底面近傍の酢酸ナトリウム3に熱伝導しにくくなり、蓄熱に時間を要するが、供給管15・16を底面に配置することにより、底面近傍の酢酸ナトリウム3にも十分に蓄熱することができ、蓄熱時間を短縮することができるようになっている。
【0073】
また、第2供給管16には、貯蔵容器1aの底面側と反対方向に、油2aを酢酸ナトリウム3内に排出する排出孔16aが設けられている。これにより、供給管11に供給された油2aは、第1供給管15を通り出口15aから油2内に排出され、一方で、第2供給管16を通り、排出孔16aから酢酸ナトリウム3内に排出されるようになっている。」
エ 「【0079】
また、本実施の形態の変形例として、図12に示すように、供給管15・16を横方向に等間隔で並設するようにしてもよい。並設することにより、より広範囲に渡って油2aや供給管15・16と酢酸ナトリウム3とを直接接触させることができ、蓄熱時間をより短くすることができる。この場合、波型の伝導板17(熱伝導部材)を、各供給管15・16に連なるように設けることが好ましい。
【0080】
伝導板17は、円弧が交互に逆に連なった波型の形状を有しており、円弧部分に第2供給管16が嵌合し、溶接などにより密着させて底面に配置されている。これにより、第2供給管16と伝導板17との接触面積が大きくなり、伝導板17に伝導される熱量が大きくなるため、供給管15・16の間にある酢酸ナトリウム3に十分に熱を伝導させることができる。これにより、蓄熱時間をより短くすることができる。伝導板17は、銅、アルミ、鉄などの熱伝導性の高い金属で構成されていることが好ましい。なお、伝導板17は、波型形状でなく板状であってもよい。さらに、供給管15・16は、縦方向に並設するようにしてもよいし、隣り合う供給管15・16が等間隔でなくてもよい。」

上記記載を検討すると、酢酸ナトリウム3は固体から液体に状態変化し、液体状のときに蓄熱されるものであるから、潜熱を利用して蓄熱するものであり、熱貯蔵容器1aに所定量収容されるものである。
また、第4の実施形態の第1供給管15及び第2供給管16は共に熱を供給する油2を熱貯蔵容器1aに供給するものであり、波型の伝導板17は、第2供給管16と接触することにより熱を伝導し、酢酸ナトリウム3へ伝導する熱量を高めるものであるから、第2供給管16と波型の伝導板17を含めて熱供給手段ということができる。
そして、波型の伝導板17は、並設した第2供給管16に密着させて底面に配置されるものであるから、全ての第2供給管16の下側に配置されるものであり、また、金属で構成されることが好ましいものである。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、第4の実施形態の変形例(図12)を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「潜熱を利用して蓄熱を行なう酢酸ナトリウム3と、
所定量の前記酢酸ナトリウム3を収容する熱貯蔵容器1aと、
前記酢酸ナトリウム3と比較して比重の小さい油2を前記熱貯蔵容器1aの外部から前記熱貯蔵容器1a内へ供給するための熱供給手段と、
前記比重の差により、前記熱貯蔵容器1a内において前記酢酸ナトリウム3の上側に層を成す前記油2を前記熱貯蔵容器1aの内部から外部へ排出するための排出管6と、を含み、
前記熱供給手段は、前記熱貯蔵容器1a内の底面に配置された金属製の波型の伝導板17を有し、前記熱供給手段の金属製の波型の伝導板17から前記酢酸ナトリウム3に熱伝導が行なわれ、
さらに、熱供給手段の第2供給管16は、横方向に並設され、かつ前記酢酸ナトリウム3と比較して比重の小さい油2を前記熱貯蔵容器1aの外部から前記並設された第2供給管16を流通させて前記酢酸ナトリウム3内へ供給させ、
前記金属製の波型の伝導板17は、
全ての前記第2供給管16より下側に配置されると共に、
第2供給管16に密着するように形成される熱貯蔵ユニット。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「酢酸ナトリウム3」は本願発明の「蓄熱材」に相当し、以下同様に、
「熱貯蔵容器1a」は「蓄熱容器」に、
「油2」は「熱交換媒体」に、
「熱供給手段」は「供給手段」に、
「排出管6」は「排出手段」に、
「配置」することは「敷設」することに、
「熱貯蔵ユニット」は「蓄熱装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の熱供給手段を構成する「第2供給管16」、「金属製の波型の伝導板17」は、本願発明の供給手段を構成する「円配管」、「金属製の板状体」と「供給配管」、「金属製部材」として共通する。また、引用発明の第2供給管16は横方向に並設されるのであるから、複数の第2供給管を有することは明らかであり、金属製の波型の伝導板17は第2供給管16に密着するものであるから、金属製の波型の伝導板17と第2の供給管は接触するといえる。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「潜熱を利用して蓄熱を行なう蓄熱材と、
所定量の前記蓄熱材を収容する蓄熱容器と、
前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記蓄熱材内へ供給するための供給手段と、
前記比重の差により、前記蓄熱容器内において前記蓄熱材の上側に層を成す前記熱交換媒体を前記蓄熱容器の内部から外部へ排出するための排出手段と、を含み、
前記供給手段は、前記蓄熱容器内の底面に敷設された金属製部材を有し、前記供給手段の金属製部材から前記蓄熱材に熱伝導が行なわれ、
さらに、前記供給手段は、複数の供給配管を有し、かつ前記蓄熱材と比較して比重の小さい熱交換媒体を前記蓄熱容器の外部から前記複数の供給配管を流通させて前記蓄熱材内へ供給させ、
前記金属製部材は、
全ての前記供給配管より下側に敷設されると共に、
前記供給配管に接触するように形成された蓄熱装置。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
供給手段について、本願発明では、供給配管が円配管であり、金属製部材が金属製の板状体であるのに対して、引用発明では、供給配管が第2供給管であるが、その形状が明らかでなく、金属製部材が金属製の波型伝導板である点。

4.相違点の判断
引用発明の供給配管(第2供給管16)は波型の伝導板17の円弧部分に嵌合するもの(記載事項エ(段落【0080】参照。)であるから、略円弧形状をしていることは明らかであり、流体の配管として円配管は周知のものでもあるから、配管の形状を円とすることは、当業者における単なる設計事項にすぎない。
また、引用例には、伝導板17は板状であってもよいこと(記載事項エ(段落【0080】)参照。)が記載されていることから、波型の伝導板に代えて板状のものとすることも、当業者が設計事項として容易になし得たことである。

してみると、引用発明において、供給手段の供給配管を円配管とし、波型の伝導板を板状体として、相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が設計事項として容易に想到することができる程度のものであって、格別創意を要することではない。

また、本願発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものではない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-24 
結審通知日 2012-10-30 
審決日 2012-11-12 
出願番号 特願2007-23710(P2007-23710)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F28D)
P 1 8・ 121- Z (F28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 直欣鈴木 充  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 森川 元嗣
山崎 勝司
発明の名称 蓄熱装置  
代理人 梶 良之  
代理人 須原 誠  

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