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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1267990
審判番号 不服2012-5366  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-22 
確定日 2012-12-27 
事件の表示 特願2008-258143「電子部品実装装置および電子部品実装装置におけるテープフィーダの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年4月15日出願公開,特開2010- 87451〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概略
本願は,平成20年10月3日に出願され,平成23年11月4日(起案日)付けで拒絶の理由が通知されたところ,平成23年12月20日付けで意見書の提出及び手続補正がなされたが,平成24年1月11日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。これに対し,平成24年3月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされた。

2 平成24年3月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年3月22日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1) 補正後の請求項1に係る発明
平成24年3月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
複数のテープフィーダが装着されたフィーダ装着台車を部品供給部に配置し,前記テープフィーダから搭載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置であって,
前記テープフィーダに設けられ,キャリアテープに保持された前記電子部品を前記搭載ヘッドによる部品取り出し位置に送るテープ送り機構を制御するフィーダ制御部と,
前記フィーダ装着台車に設けられ,当該フィーダ装着台車の動作制御を行うとともに,このフィーダ装着台車に装着された複数のテープフィーダの前記フィーダ制御部を制御する台車制御部と,
前記電子部品実装装置の装置本体部に設けられ,前記装置本体部の動作制御を行うとともに,前記部品供給部に配置されたフィーダ装着台車の前記台車制御部を制御する本体制御部と,
前記フィーダ装着台車に設けられ,前記本体制御部から転送されたフィーダ動作データを含むデータを記憶する記憶部を備え,
前記台車制御部は,各フィーダ制御部との間で信号の授受を行うことにより当該フィーダ装着台車における各テープフィーダの装着状態および動作状態を監視する処理と,前記記憶部からフィーダ動作データを読み出し,同一種類の電子部品を供給するテープフィーダ毎に各フィーダ制御部の記憶部にそのフィーダ動作データを一括して書き込むことにより,当該テープフィーダを対象としたテープ送り用の動作パラメータを設定する処理とを実行することを特徴とする電子部品実装装置。」
と補正された(なお,下線は,請求人が付した本件補正による補正箇所を示す。)
上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「当該テープフィーダを対象としたテープ送り用の動作パラメータを設定する処理」における各フィーダ制御部の記憶部にそのフィーダ動作データを書き込む点に関し,「同一種類の電子部品を供給するテープフィーダ毎に各フィーダ制御部の記憶部にそのフィーダ動作データを一括して書き込む」と限定するのものであり,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして,本願の願書に最初に添付した明細書の「そして台車制御部30は,テープ送り用の動作パラメータ設定処理を実行する(ST7)。すなわち,処理実行部33がデータ記憶部34からフィーダ動作データ34dを読み出し,同一種類の電子部品を供給するテープフィーダ6毎に,一括して動作パラメータ設定処理33cを実行する。これにより,フィーダ制御部40においては,処理実行部43によってデータ記憶部44にテープ送り動作パラメータ44bを書き込んで既存パラメータ値を上書きする処理が行われる。」(段落【0041】)との記載からすると,請求項1に係る補正は,本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてしたものであるから,特許法17条の2第3項の規定に違反するものではない。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則2条18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第6項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用刊行物の記載事項
(i) 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-80575号公報(以下「引用刊行物」という。)には,以下の事項が記載されている。
・「図1は,本実施形態の回路部品供給システムの回路部品供給装置8と,その回路部品供給装置8が供給する回路部品をプリント基板に装着する回路部品装着装置10とが合体した状態を示す正面図である。本回路部品装着装置10は,ベースフレーム12上に設けられた基板搬送装置14により搬送され,予め定められた位置に位置決め保持されるプリント基板16に,回路部品を装着機18によって装着するものである。・・・
回路部品装着装置10は,装着装置側コントローラとして,図8および図9に示すM/Cコントローラ516を備えている。そのM/Cコントローラ516は,吸着ノズル20に供給される空気圧,基板搬送装置14の作動およびXYZθ移動装置26の作動を制御することにより,回路部品をプリント基板16に装着させる。・・・
本実施形態の回路部品供給システム50は,回路部品供給装置8の本体部としての回路部品供給台車52(以下,台車52と略称する)と,台車52に保持されてそれと共に回路部品供給装置8を構成する複数のフィーダ54と,回路部品と各フィーダ54との対応関係を記憶する部品/フィーダ記憶手段を備えた管理端末とを含んでいる。」(段落【0016】ないし【0018】)
・「2つの係合部66は,図1に示すように,回路部品装着装置10のベースフレーム12に設けられた2つの係合装置68に係合させられることにより,回路部品装着装置10と台車52とを機械的に合体させる。」(段落【0020】)
・「フィーダ54は,フィーダ保持装置64に設けられる複数のフィーダ保持ユニット100により,各々1つずつ保持される。本実施形態の台車52においては,フィーダ保持装置64の本体部材(後述のベースプレート106)によりフィーダ保持部材が構成され,フィーダ保持ユニット100によりフィーダ保持部が構成されているのである。」(段落【0025】)
・「台車52は,供給装置側コントローラあるいは保持部材側コントローラとして,SFUコントローラ530(後述。図8参照)を備えている。」(段落【0029】)
・「図2に示すように,フィーダ54は,同一種類の回路部品を複数個収容する部品収容リール150を,2つまで装着できる。部品収容リール150には,回路部品を収容するテープ状収容容器152と,そのテープ状収容容器152内の回路部品が脱落しないようにテープ状収容容器152に接着されるカバーフィルム154とからなる部品収容テープ156が巻き付けられている。」(段落【0030】)
・「フィーダ54は,SFUコントローラ530からの供給命令(後述)に基づいて,1つまたは2つの部品収容リール150に収容されている1種類または2種類の回路部品を,1つずつ独立に供給できる。」(段落【0031】)
・「フィーダ54は,2つまでの部品収容リール150に巻き付けられた部品収容テープ156に収容された回路部品を供給するために,側板198に取り付けられた2つの駆動装置200,201を備えている。一方の駆動装置200は,モータ202と,そのモータ202の回転軸に取り付けられる駆動ギヤ204と,その駆動ギヤ204と噛み合わされる駆動ギヤ204よりも歯数が多い被駆動ギヤ206と,その被駆動ギヤ206と一体的に形成される駆動プーリ208と,その駆動プーリ208の回転力を伝達する駆動ベルト210と,その駆動ベルト210により駆動される被駆動プーリ212と,その被駆動プーリ212と一体的に形成されるスプロケット214とを備えている。・・・また,モータ202はパルスモータであるので,スプロケット214の回転角度は,モータ202に与えられるパルスの数によって制御可能である。このパルスは,フィーダ側コントローラであるF/Dコントローラ540(後述。図8参照)により供給される。」(段落【0032】及び【0033】)
・「図8は,本実施形態の回路部品装着システム500の電気的制御部の構成を示す系統図である。本回路部品装着システム500は,回路部品装着装置10と,その回路部品装着装置10に合体させられる2つの台車52と,各台車52に保持される複数のフィーダ54と,前述の管理端末としてのラップトップコンピュータ502(以下,LTコンピュータ502と略称する)と,ホストコンピュータ504とを備えている。
ホストコンピュータ504は,回路部品装着装置10の管理を行うとともに,回路部品に関する情報である回路部品情報を含む回路部品データベースを記憶している。回路部品データベースの内容は,回路部品情報と,その回路部品が収容されている部品供給テープ156に付けられている部品識別コードの内容とが,対応付けられたものである。なお,部品識別コードはバーコード化され,そのバーコードを印刷した部品バーコードシール506が,部品収容リール150に張り付けられている(図5参照)。また,回路部品情報には,部品収容テープ156内における回路部品の収容位置(例えば回路部品の基準点のテープ状収容容器152に対する相対位置)を表す部品収容位置,部品収容ピッチ,部品残数等の情報が含まれている。」(段落【0040】)
・「回路部品装着装置10は,ホストコンピュータ504との通信,基板搬送装置14の制御,XYZθ移動装置26の制御,吸着ノズル20による回路部品の吸着制御,SFUコントローラ530との通信,F/Dコントローラ540との通信等をM/Cコントローラ516により行う。・・・
2つの台車52の各々は,前述のようにそれぞれSFUコントローラ530を備えており,これによってM/Cコントローラ516との通信,F/Dコントローラ540との通信等を行う。・・・
また,フィーダ54のF/Dコントローラ540は,M/Cコントローラ516との通信,SFUコントローラ530との通信,モータ202,226の制御等を行う。」(段落【0043】)
・「上記最適化によって,一種類の回路部品が,複数のフィーダ54により別々に供給されるように決定されることもある。このような決定は,一種類の回路部品が1枚のプリント基板に複数装着され,かつ,それら同種の回路部品のプリント基板上における位置が互いに離れている場合に,しばしばなされる。」(段落【0057】)
・「手順(2) の処理を経たフィーダ54を,予め定められたフィーダ保持ユニット100に保持させる。・・・なお,各フィーダ54が,予定通りのフィーダ保持ユニット100に保持されているか否かは,後述するように,SFUコントローラ530によって検出できる。」(段落【0063】)
・「LTコンピュータ502を,インターフェイス600,602(および図示しないルータ)を用いて,2つの台車52の各々のSFUネットワーク534に接続し,手順(2) で作成されたそれぞれの回路部品/フィーダ対応テーブルの内容を,各々のSFUコントローラ530に送信する。・・・各SFUコントローラは530は,受信した回路部品/フィーダ対応テーブルの内容(図14参照)と,手順(6) の処理で作成した各台車52に固有のフィーダ/保持ユニット対応テーブルの内容(図16参照)とを記憶する記憶手段を備えており,その記憶手段の記憶内容に基づいて,図17にその一例を示す回路部品/保持ユニット対応テーブルをそれぞれ作成する。・・・
各SFUコントローラ530は,手順(7) で作成した回路部品/保持ユニット対応テーブルの内容を,それぞれM/Cコントローラ516に送信する。M/Cコントローラ516は,受信した2つの回路部品/保持ユニット対応テーブル(図17参照)の内容のそれぞれと,ホストコンピュータ504の回路部品データベースに記憶されている図13に示した内容とから,図18にその一例を示す回路部品/部品残数対応テーブルを,各台車52ごとにそれぞれ作成する。・・・
ここにおいて,M/Cコントローラ516は,装着されるすべての回路部品と,各回路部品を供給するフィーダ54が保持されているフィーダ保持ユニット100の位置とを,この回路部品/部品残数対応テーブルの内容と,図15に示した台車/合体装置対応テーブルの内容とに基づいて得ることができるのである。また,部品収容位置と部品残数との値を知ることもできる。これらの内容に基づいて,装着機18が制御される。・・・さらに,M/Cコントローラ516は,各台車52ごとに作成された2つの回路部品/部品残数対応テーブルを,対応するSFUコントローラ530に送信する。SFUコントローラ530においては,回路部品/部品残数対応テーブルの部品残数の値が,後述するように装着作業中に変更される。・・・
各フィーダ54には,前述のようにいくつかの操作スイッチが設けられており,その一部のものの操作によって回路部品を1つ供給するごとのモータ202,226の回転角度(部品収容ピッチに対応する)を入力することが可能であり,F/Dコントローラ540はその入力情報に基づいてモータ202,226を制御することができる。つまり,F/Dコントローラ540は独自にフィーダ54を制御することが可能なのであるが,その上,部品収容ピッチ等の情報がSFUコントローラ530からも教示され得るようになっており,ユーザはいずれかを任意に利用し得る。後者が利用される場合には,各SFUコントローラ530は,手順(8) でM/Cコントローラ516から送信された回路部品/部品残数対応テーブルの内容に基づいて,自分自身が設けられている台車52に保持されているフィーダ54のそれぞれに,対応する部品収容ピッチと部品残数とを教示する。各フィーダ54のF/Dコントローラ540は,それらの内容を,図19に示すピッチ・残数テーブルとして記憶する。したがって,F/Dコントローラ540は,部品収容ピッチに基づく部品収容テープ156の送り量(モータ202,226の回転角度)の決定や,部品残数の自己監視等の処理を,M/Cコントローラ516から送信された情報に基づいて行うことができる。」(段落【0068】ないし【0071】)
・「M/Cコントローラ516は,前述の制御プログラムを記憶している。その制御プログラムには,M/Cコントローラ516に,前記供給位置/部品識別コード対応関係に基づいて回路部品の装着作業を行わせるための命令が含まれている。
まず,(i)M/Cコントローラ516は,装着すべき回路部品を,装着機18を制御して吸着ノズル20に吸着させ,その吸着した回路部品を供給しているフィーダ54に,供給命令を発する。この命令には,吸着した回路部品を収容する部品収容リール150の部品識別コードが含まれる。これは,1つのフィーダ54に,2つの部品収容リールを装着できるため,それらのいずれに収容されている回路部品を供給するかを特定する必要があるためである。(ii)命令を受信したF/Dコントローラ540は,受信した部品識別コードに基づいて,駆動装置200と駆動装置201とのいずれか一方により,部品収容テープ156を送り,つぎの回路部品の吸着に備える。(iii)F/Dコントローラ540は,SFUコントローラ530に対して,回路部品の供給を行ったことを,その回路部品を収容する部品収容リールの部品識別コードを付して通報する。(iv)SFUコントローラ530は,各F/Dコントローラ540からの報告に基づいて,自身が記憶する回路部品/部品残数対応テーブルの部品残数の値を更新する。」(段落【0076】)
(ii) 以上の記載及び図面の記載からみて,引用刊行物には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「複数のフィーダ54が装着された回路部品供給台車52を係合装置68に係合させることにより合体させ,前記フィーダ54から装着機18によって回路部品を取り出してプリント基板16に装着する回路部品装着装置10を備える回路部品装着システム500であって,
前記フィーダ54に設けられ,部品収容テープ156に収容された前記回路部品を前記装着機18による部品取り出し位置に送る駆動装置200,201を制御するF/Dコントローラ540と,
前記回路部品供給台車52に設けられ,この回路部品供給台車52に装着された複数のフィーダ54に回路部品の供給を命令するSFUコントローラ530と,
前記回路部品装着装置10に設けられ,前記回路部品装着装置10の動作制御を行うとともに,前記回路部品供給台車52の前記SFUコントローラ530を制御するM/Cコントローラ516と,
前記SFUコントローラ530に設けられ,回路部品/フィーダ対応テーブル及びフィーダ/保持ユニット対応テーブルの内容を記憶する記憶手段を備え,
前記SFUコントローラ530は,当該回路部品供給台車52における各フィーダ54が予定通りのフィーダ保持ユニット100に保持されているか否かを検出すること,回路部品の供給を行ったことをF/Dコントローラ540から報告され,M/Cコントローラ516から送信され自身が記憶する回路部品/部品残数テーブルの部品残数の値を更新すること,回路部品/部品残数テーブルの内容に基づいて,各フィーダ54に対応する部品収容ピッチと部品残数を教示することを行うものであって,
各フィーダ54のF/Dコントローラ540は,前記SFUコントローラ530に教示された内容をピッチ・残数テーブルとして記憶し,部品収容ピッチに基づく部品収容テープ156の送り量の決定や,部品残数の自己監視等の処理を行う,
回路部品装着システム500」

(3) 対比及び判断
(i)ア 本願補正発明と引用発明とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明の「フィーダ54」は本願補正発明の「テープフィーダ」に相当し,以下同様に,「回路部品供給台車52」は「フィーダ装着台車」に,「装着機18」は「搭載ヘッド」に,「回路部品」は「電子部品」に,「プリント基板16」は「基板」に,「回路部品装着システム500」は「電子部品実装装置」に,「部品収容テープ156」は「キャリアテープ」に,「駆動装置200,201」は「テープ送り機構」に,「F/Dコントローラ540」は「フィーダ制御部」に,「回路部品装着装置10」は「装置本体部」に,「M/Cコントローラ516」は「本体制御部」に,それぞれ相当するといえる。
イ 引用発明における「SFUコントローラ530」は,回路部品供給台車52に設けられ,フィーダ54に回路部品の供給を命令するものであるから,「フィーダ装着台車に設けられ,・・・このフィーダ装着台車に装着された複数のテープフィーダの前記フィーダ制御部を制御する」点で,本願補正発明の「台車制御部」と軌を一にするといえる。
そして,引用発明の「SFUコントローラ530」が,「当該回路部品供給台車52における各フィーダ54が予定通りのフィーダ保持ユニット100に保持されているか否かを検出」する点,「回路部品の供給を行ったことをF/Dコントローラ540から報告」される点は,それぞれ,フィーダ54の装着状態を監視する処理,フィーダ54の動作状態を監視する処理といえる。
ウ 本願補正発明の「フィーダ動作データ」,「テープ送り用の動作パラメータ」に関し,本願明細書には,「フィーダ動作データ24dは,テープフィーダ6によって電子部品を保持したキャリアテープ7aをピッチ送りするテープ送り動作における動作パラメータ,すなわちテープ送りの送りピッチや,送り速度を規定するパラメータ値を電子部品の種類毎に示すデータである。」(段落【0024】)と記載されていることからすると,「テープ送り用の動作パラメータ」とは「テープ送りの送りピッチや,送り速度を規定するパラメータ値」で,「フィーダ動作データ」とはこのような「動作パラメータ」を「電子部品の種類毎に示すデータ」であることがわかる。
他方,引用発明においては,SFUコントローラ530が,M/Cコントローラ516から送信され自身が記憶する「回路部品/部品残数テーブル」の内容に基づいて「部品収納ピッチ」を各フィーダ54に教示し,この「部品収納ピッチ」に基づいて「部品収納テープ156の送り量」を決定するものであるから,この「回路部品/部品残数テーブル」,「部品収納ピッチ」が,それぞれ,本願補正発明の「フィーダ動作データ」,「テープ送り用の動作パラメータ」に相当するといえる。
また,当該「回路部品/部品残数テーブル」を記憶するための手段は,「前記フィーダ装着台車に設けられ,前記本体制御部から転送されたフィーダ動作データ・・・を記憶する記憶部」である点で,本願補正発明の「記憶部」に相当するといえる。
エ そうすると,本願補正発明と引用発明とは,
(一致点)
「複数のテープフィーダが装着されたフィーダ装着台車を部品供給部に配置し,前記テープフィーダから搭載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置であって,
前記テープフィーダに設けられ,キャリアテープに保持された前記電子部品を前記搭載ヘッドによる部品取り出し位置に送るテープ送り機構を制御するフィーダ制御部と,
前記フィーダ装着台車に設けられ,このフィーダ装着台車に装着された複数のテープフィーダの前記フィーダ制御部を制御する台車制御部と,
前記電子部品実装装置の装置本体部に設けられ,前記装置本体部の動作制御を行うとともに,前記部品供給部に配置されたフィーダ装着台車の前記台車制御部を制御する本体制御部と,
前記フィーダ装着台車に設けられ,前記本体制御部から転送されたフィーダ動作データを記憶する記憶部を備え,
前記台車制御部は,各フィーダ制御部との間で信号の授受を行うことにより当該フィーダ装着台車における各テープフィーダの装着状態および動作状態を監視する処理を実行する電子部品実装装置」である点
で一致し,
(相違点1)
本願補正発明の「台車制御部」は,「当該フィーダ装着台車の動作制御を行う」ものであるのに対し,引用発明の「SFUコントローラ530」は,回路部品供給台車52の動作制御を行うものではない点
(相違点2)
本願補正発明は,フィーダ装着台車に設けられた「記憶部」に,本体制御部から転送されたフィーダ動作データ「を含むデータ」を記憶するのに対し,引用発明は,SFUコントローラ530に「回路部品/部品残数テーブル」(フィーダ動作データ)を記憶するが,この記憶するための手段に「回路部品/部品残数テーブル」以外のデータを記憶するかは明らかではない点
(相違点3)
本願補正発明は,「台車制御部」が,当該「記憶部」から「フィーダ動作データを読み出し,同一種類の電子部品を供給するテープフィーダ毎に各フィーダ制御部の記憶部にそのフィーダ動作データを一括して書き込むことにより,当該テープフィーダを対象としたテープ送り用の動作パラメータを設定する処理」を行うのに対し,引用発明は,SFUコントローラ530が各フィーダ54に対応する部品収容ピッチと部品残数を教示し,各フィーダ54のF/Dコントローラ540が教示された内容をピッチ・残数テーブルとして記憶し,部品収容ピッチに基づく部品収容テープ156の送り量の決定の処理を行うものであるが,このような一連の処理をSFUコントローラ530が実行するといえるか,同一種類の回路部品を供給するフィーダ54毎に各F/Dコントローラ540の記憶部に一括して書き込むか明らかでない点
で相違する。
(ii)ア 相違点1について
本願明細書には,「台車制御部30は,台車5に設けられ,当該台車5に備えられた台車動作機構5c,例えば台車5を基台1aに空圧により固定するクランプ機構などの動作制御を行うとともに,この台車5に装着された複数のテープフィーダ6のフィーダ制御部40を制御する機能を有している。」(段落【0016】)と記載されていることからして,本願補正発明における「フィーダ装着台車の動作制御」とは,台車を電子部品実装装置の基台に空圧により固定するクランプ機構などの動作に係る制御を想定していることがわかる。
他方,引用発明は,回路部品供給台車52を,係合装置68に係合させることにより回路部品装着装置10に合体させるものであるところ,このような係合装置68を回路部品供給台車52側に設けること,そして,係合装置68への合体動作に係る制御を「SFUコントローラ530」に行わせることは,当業者が適宜になし得ることである。
よって,引用発明において,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できた事項である。
イ 相違点2について
引用発明は,SFUコントローラ530に,回路部品/フィーダ対応テーブル及びフィーダ/保持ユニット対応テーブルの内容を記憶する記憶手段を備えているものであるから,この記憶手段に「回路部品/部品残数テーブル」も記憶させることは,当業者が適宜になし得ることである。
よって,引用発明において,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できた事項である。
ウ 相違点3について
引用発明において,F/Dコントローラ540が教示された部品収容ピッチに基づいて部品収容テープ156の送り量の決定する処理は,SFUコントローラ530の教示に基づいて行われることに照らして,SFUコントローラ530が実行すると解しても技術的に差し支えないし,そうすることも当業者にとって格別困難なことではない。
そして,引用刊行物に「上記最適化によって,一種類の回路部品が,複数のフィーダ54により別々に供給されるように決定されることもある。このような決定は,一種類の回路部品が1枚のプリント基板に複数装着され,かつ,それら同種の回路部品のプリント基板上における位置が互いに離れている場合に,しばしばなされる。」(引用刊行物段落【0057】)と記載されているように,引用発明は同一種類の電子部品を供給することが想定されているところ,データ処理に際し,データ編集,変更の簡素化や効率化のため,同一のデータを一括処理するといったことは,例えば,特開平11-8498号公報(特に,段落【0013】参照。)にも記載されているように周知の技術であって,当業者が適宜に採用できるものである。
そうすると,引用発明において,相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できた事項である。
エ 本願補正発明の奏する効果をみても,引用発明及び上記周知の技術から予測し得る範囲内のものであって,格別ではない。
(iii)ア 請求人は,概ね以下のように主張している。
・本願補正発明によれば,装置本体部の制御装置の制御負荷を軽減して,制御処理時間の遅延を防止することができるという格別の作用効果が得られる,より具体的には,台車自体がフィーダ動作データを記憶することにより,台車制御部から本体制御部へのアクセスを減らし,本体制御部の制御負荷を軽減することができる,更には,1つの台車に同時に装着されるテープフィーダの数が増大して,装置本体部に設けられた本体制御部の制御対象となるフィーダ制御部の数が増大した場合にあっても,本体制御部の制御負荷を軽減することが可能となり,したがって,本体制御部による複数のテープフィーダの制御負荷の増大に起因する制御処理時間の遅延や実装装置の動作速度の低下などの不都合を防止することができるという作用効果が得られる,本体制御部に代わって台車制御部がフィーダを制御することにより,所期の目的を達成し,上記のようなきわめて有用な格別の作用効果が得られる。
・これに対し,引用刊行物の発明は,その段落【0007】等の記載に照して本願補正発明とは技術課題や作用効果がまったく相違している。また引用刊行物には,台車自体に記憶部があることはまったく記載されておらず,また台車制御部から本体制御部へのアクセスを減らす旨の記載もまったくなく,このように本願補正発明とは具体的構成も著しく相違している。
・挿入ピッチの変更に係る上記特開平11-8498号公報の技術を引用刊行物の発明にそのまま適用して本願発明をなすという動機付けはなく,また単に組み合わせても本願補正発明は成立しない。
イ しかし,すでに検討したとおり,引用発明も台車にフィーダ動作データを記憶するものであるから,台車制御部から本体制御部へのアクセスを減らし,本体制御部の制御負荷を軽減することができるといった効果を奏することは明らかで,本願補正発明と同様の作用効果が期待できるものである。
また,引用発明が,本願補正発明と同様に,装置本体部の制御装置の制御負荷を軽減して,制御処理時間の遅延を防止することいった技術的課題を有することは,その構成の類似性に照らせば明らかで,引用刊行物の記載から,当業者が容易に理解できるものである。
そして,制御処理時間の短縮は広く知られた要請であって,その観点からすれば,引用発明に上記特開平11-8498号公報に記載されるような上記周知の技術を適用することは,当業者にとって格別困難なことではなく,その他の相違点に関しても,すでに検討したとおり,当業者が容易に想到できた事項であるから,結局,本願補正発明は,引用発明に上記周知の技術を適用し,容易に発明をすることができたものである。
よって,請求人の主張は採用することができない。
(iv) 以上総合すると,本願補正発明は,引用発明及び上記周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4) 以上のとおり,本件補正は,平成23年法律第63号改正附則2条18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第6項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1) 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1及び請求項2に係る発明は,平成23年12月20日付けの手続補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりのものであるが,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数のテープフィーダが装着されたフィーダ装着台車を部品供給部に配置し,前記テープフィーダから搭載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置であって,
前記テープフィーダに設けられ,キャリアテープに保持された前記電子部品を前記搭載ヘッドによる部品取り出し位置に送るテープ送り機構を制御するフィーダ制御部と,
前記フィーダ装着台車に設けられ,当該フィーダ装着台車の動作制御を行うとともに,このフィーダ装着台車に装着された複数のテープフィーダの前記フィーダ制御部を制御する台車制御部と,
前記電子部品実装装置の装置本体部に設けられ,前記装置本体部の動作制御を行うとともに,前記部品供給部に配置されたフィーダ装着台車の前記台車制御部を制御する本体制御部と,
前記フィーダ装着台車に設けられ,前記本体制御部から転送されたフィーダ動作データを含むデータを記憶する記憶部を備え,
前記台車制御部は,各フィーダ制御部との間で信号の授受を行うことにより当該フィーダ装着台車における各テープフィーダの装着状態および動作状態を監視する処理と,前記記憶部からフィーダ動作データを読み出し,各フィーダ制御部の記憶部にそのフィーダ動作データを書き込むことにより,当該テープフィーダを対象としたテープ送り用の動作パラメータを設定する処理とを実行することを特徴とする電子部品実装装置。」

(2) 引用刊行物の記載事項
引用刊行物に記載された事項は,上記2(2)のとおりである。

(3) 対比及び判断
本願発明は,本願補正発明から「同一種類の電子部品を供給するテープフィーダ毎に(各フィーダ制御部の記憶部にそのフィーダ動作データを)一括して(書き込む)」との限定を省いたものである(上記2(1))。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項をすべて含み,さらに発明を特定するために必要な事項を付加したものに相当する本願補正発明が,上記2(3)で検討したとおり,引用発明及び上記周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び上記周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
そして,本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができない以上,本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-24 
結審通知日 2012-10-30 
審決日 2012-11-12 
出願番号 特願2008-258143(P2008-258143)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 冨岡 和人
窪田 治彦
発明の名称 電子部品実装装置および電子部品実装装置におけるテープフィーダの制御方法  
代理人 永野 大介  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 内藤 浩樹  

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