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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1268029
審判番号 不服2011-5969  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-17 
確定日 2013-01-10 
事件の表示 特願2004-330725「ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物およびその成形品」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 1日出願公開、特開2006-137908〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯


本願は、平成16年11月15日の出願であって、平成22年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年11月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年3月17日に審判請求書とともに手続補正書が提出され、同年4月19日に審判請求書の手続補正書が提出され、同年5月20日付けで前置報告がなされ、当審において、平成24年7月2日付けで審尋がなされ、同年8月28日に回答書が提出されたものである。


第2.平成23年3月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定

〔結論〕
平成23年3月17日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1.補正の内容

平成23年3月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成22年11月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、補正前の特許請求の範囲の、


【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)20?95重量部と、ゴム強化樹脂(B)5?80重量部とを含むポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物(ただし、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化樹脂(B)との合計で100重量部)であって、
該ゴム強化樹脂(B)は、ゲル含有量50?99重量%のゴム質重合体に硬質(共)重合体がグラフト重合した構造を有するゴム含有グラフト共重合体(b-1)30?95重量%と硬質(共)重合体(b-2)5?70重量%とを含み、かつ、硬質(共)重合体(b-2)中に(メタ)アクリル系樹脂成分を20?100重量%含有していることを特徴とするポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
ゴム含有グラフト共重合体(b-1)のアセトン可溶分の重量平均分子量は、50,000?600,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム含有グラフト共重合体(b-1)のグラフト率((アセトン不溶分/ゴム質重合体重量-1)×100)は、15?120重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
該(メタ)アクリル系樹脂成分を構成する単量体が、メタクリル酸エステルおよび/又はアクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。」

との記載を、


【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)20?95重量部と、ゴム強化樹脂(B)5?80重量部とを含むポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物(ただし、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化樹脂(B)との合計で100重量部)であって、
該ゴム強化樹脂(B)は、ゲル含有量70?85重量%のゴム質重合体にシアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体よりなる硬質(共)重合体がグラフト重合した構造を有するゴム含有グラフト共重合体(b-1)30?95重量%と硬質(共)重合体(b-2)5?70重量%とを含み、かつ、硬質(共)重合体(b-2)中に(メタ)アクリル系樹脂成分を20?100重量%含有し、
該(メタ)アクリル系樹脂成分を構成する単量体が、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルであることを特徴とするポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
ゴム含有グラフト共重合体(b-1)のアセトン可溶分の重量平均分子量は、50,000?600,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム含有グラフト共重合体(b-1)のグラフト率((アセトン不溶分/ゴム質重合体重量-1)×100)は、15?120重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。」

とするものである。

2.本件補正の目的について

上記特許請求の範囲に係る補正は、補正前の請求項4を削除するとともに、補正前の請求項1において発明を特定するための事項である「ゲル含有量」、(b-1)中の「硬質(共)重合体の単量体成分」及び(b-2)中の「硬質(共)重合体中の(メタ)アクリル系樹脂成分」を限定して補正後の請求項1とするものであり、補正の前と後とで産業上の利用分野及び課題を変更するものではないことから、請求項1についてする本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを包含する。

3.独立特許要件について

そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は以下のとおりである。

ポリ乳酸樹脂(A)20?95重量部と、ゴム強化樹脂(B)5?80重量部とを含むポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物(ただし、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化樹脂(B)との合計で100重量部)であって、
該ゴム強化樹脂(B)は、ゲル含有量70?85重量%のゴム質重合体にシアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体よりなる硬質(共)重合体がグラフト重合した構造を有するゴム含有グラフト共重合体(b-1)30?95重量%と硬質(共)重合体(b-2)5?70重量%とを含み、かつ、硬質(共)重合体(b-2)中に(メタ)アクリル系樹脂成分を20?100重量%含有し、
該(メタ)アクリル系樹脂成分を構成する単量体が、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルであることを特徴とするポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。

(2)先願明細書の記載事項
平成22年9月30日付け拒絶理由通知において引用された、本願の出願日前の平成17年3月4日(優先権主張 平成16年3月5日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、本願の出願後に公開された特願2006-519392号(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、先願明細書の記載内容及び個所は、先願の公開公報である国際公開第2005/085352号公報で示すこととし、下線は当審が付した。

1A「
〔1〕
ポリ乳酸系重合体(A)と、
メチルメタクリレート単量体単位を含有するアクリル系重合体(B)と、 ゴム質重合体にビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体(C)とを含有しており、
グラフト共重合体(C)の屈折率Rcと、ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計屈折率Rabが以下の関係式(1)を満足する熱可塑性樹脂組成物。
-0.004≦Rc-Rab≦+0.008 ・・・(式1)
〔2〕
ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)との組成比が1/99?99/1(質量比)であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕
グラフト共重合体(C)が、ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100質量部に対して1?50質量部配合されてなる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。」(請求の範囲 請求項1?3 )

1B「
〔0018〕<アクリル系重合体(B)>
アクリル系重合体(B)は、メチルメタクリレート単量体単位を含有する重合体であり、メチルメタクリレートの単独重合体、若しくはメチルメタクリレートとこれと共重合可能な単量体との共重合体を使用することができる。共重合体を使用する場合、メチルメタクリレート単量体単位を50質量%以上、好ましくは70質量%以上含有する共重合体を使用することが好ましい。
〔0019〕 メチルメタクリレートと共重合可能な他の単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアルキルアクリレート;エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどの他のアルキルメタクリレートなどが挙げられる。
また、アクリル系重合体(B)としては、メチルメタクリレートと共重合可能な他の単量体として、スチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、シクロヘキシルマレイミドやフェニルマレイミド、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物などが共重合されているものを使用することもできる。
前述した単量体のうち、高い透明性と耐熱性の観点から、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体を使用することが好ましい。
〔0020〕 アクリル系重合体(B)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の懸濁重合、塊状重合、乳化重合法等の各種方法が適用される。アクリル系重合体(B)の分子量は、特に限定されるものではないが、質量平均分子量6万?30万が好ましい。
〔0021〕 アクリル系重合体(B)としては、市販されているものが使用でき、例えば、三菱レイヨン株式会社のアクリペット「VH」、「MF」、「MD」、「UT-100」などが挙げられる。」

1C「
〔0022〕<グラフト共重合体(C)>
本発明におけるグラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体にビニル系単量体がグラフト重合されたグラフト共重合体である。
本発明のグラフト共重合体に用いられるゴム質重合体としては、大別して、ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン系ゴムと、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとを含有するアクリル系ゴムが挙げられる。これら成分の製造方法は、特に限定はされないが、乳化重合法が最適である。

・・・

〔0034〕 ポリオルガノシロキサン/アクリル系複合ゴムは、トルエンにより90℃で4時間抽出して測定したゲル含量が80質量%以上であることが好ましい。
本発明においては、この複合ゴムとして、ポリオルガノシロキサンゴム成分の主骨格がジメチルシロキサンの繰り返し単位を有し、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分の主骨格がn-ブチルアクリレートの繰り返し単位を有する複合ゴムが好ましく用いられる。
〔0035〕 以上説明したポリオルガノシロキサン/アクリル系複合ゴムの存在下に、1種または2種以上のビニル系単量体をグラフト重合させることにより、ポリオルガノシロキサン/アクリル系複合ゴムとグラフト部から成るポリオルガノシロキサン/アクリル系複合ゴムグラフト共重合体を得ることができる。
グラフト部を構成するビニル系単量体は、特に制限されない。その具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物等の各種のビニル系単量体が挙げられる。これらビニル系単量体は、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。」

(3)先願明細書に記載された発明

先願明細書の特許請求の範囲の請求項1?3には、

「ポリ乳酸系重合体(A)と、
メチルメタクリレート単量体単位を含有するアクリル系重合体(B)と、 ゴム質重合体にビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体(C)とを含有しており、
グラフト共重合体(C)の屈折率Rcと、ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計屈折率Rabが以下の関係式(1)を満足し、
-0.004≦Rc-Rab≦+0.008 ・・・(式1)
ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)との組成比が1/99?99/1(質量比)であり、
グラフト共重合体(C)が、ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100質量部に対して1?50質量部配合されてなる
熱可塑性樹脂組成物。」

なる発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比・検討

(4)-1.対比
本件補正発明と先願発明とを対比する。

先願発明における「ポリ乳酸系重合体(A)」「ゴム質重合体にビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体(C)」「アクリル系重合体(B)」「熱可塑性樹脂組成物」は、それぞれ本件補正発明における「ポリ乳酸樹脂(A)」「ゴム質重合体にビニル系単量体よりなる硬質(共)重合体がグラフト重合した構造を有するゴム含有グラフト共重合体(b-1)」「硬質(共)重合体(b-2)」「ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物」に相当する。

また、先願発明における「メチルメタクリレート単量体単位を含有するアクリル系重合体(B)」は、メチルメタクリレートが重合体成分となっていることから(メタ)アクリル系樹脂成分を含有しており、本件補正発明における「硬質(共)重合体(b-2)中に(メタ)アクリル系樹脂成分を含有」に相当する。

また、本件補正発明において、ゴム含有グラフト共重合体(b-1)と硬質(共)重合体(b-2)とを含むものをゴム強化樹脂(B)としており、先願発明は「グラフト共重合体(C)」と「アクリル系重合体(B)」とを含むものであることから、先願発明は本件補正発明における「ゴム強化樹脂(B)」を含んでいるといえる。

また、先願発明における、「ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)との組成比が1/99?99/1(質量比)である」「グラフト共重合体(C)が、ポリ乳酸系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100質量部に対して1?50質量部配合されてなる」との記載から、先願発明における「ポリ乳酸系重合体(A)」「グラフト共重合体(C)」「アクリル系重合体(B)」のそれぞれの含有割合は、本件補正発明における「ポリ乳酸樹脂(A)」「ゴム強化樹脂(B)」「ゴム含有グラフト共重合体(b-1)」「硬質(共)重合体(b-2)」のぞれぞれの含有割合と重複一致する。

したがって、両発明は、
「ポリ乳酸樹脂(A)20?95重量部と、ゴム強化樹脂(B)5?80重量部とを含むポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物(ただし、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化樹脂(B)との合計で100重量部)であって、
該ゴム強化樹脂(B)は、ゴム質重合体にビニル系単量体よりなる硬質(共)重合体がグラフト重合した構造を有するゴム含有グラフト共重合体(b-1)30?95重量%と硬質(共)重合体(b-2)5?70重量%とを含み、かつ、硬質(共)重合体(b-2)中に(メタ)アクリル系樹脂成分を含有するポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。」

の点で一致し、以下の点で一応相違するものと認められる。

○相違点(1)本件補正発明は、ゴム質重合体を「ゲル含有量70?85重量%」と特定しているのに対し、先願発明においてはかかる事項について特定していない点

○相違点(2)ゴム質重合体にグラフト重合する単量体に関して、本件補正発明は、「シアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体」と特定しているのに対し、先願発明は、「ビニル系単量体」とのみ特定している点

○相違点(3)本件補正発明は、硬質(共)重合体(b-2)に関して、(メタ)アクリル系樹脂成分の含有割合を「20?100重量%」と特定しているのに対し、先願発明においてはかかる事項について特定していない点

○相違点(4)硬質(共)重合体(b-2)中の(メタ)アクリル系樹脂成分に関して、本件補正発明は、単量体成分を「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」と特定しているのに対し、先願発明は、「メチルメタクリレート単量体単位を含有する」とのみ特定している点

(4)-2.相違点についての検討
○相違点(1)について
先願明細書には、ゴム質重合体は、ゲル含量が80質量%以上であることが記載(摘示1C参照。)されていることから、先願発明は、ゲル含有量70?85重量%を満足する態様を含むものといえる。

○相違点(2)について
先願明細書には、ゴム質重合体にグラフト重合するビニル系単量体として、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物が記載(摘示1C参照。)されていることから、先願発明は、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物を有する態様を含むものといえる。

○相違点(3)(4)について
先願明細書には、「高い透明性と耐熱性の観点から、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体を使用することが好ましい」と記載(摘示1B参照。)されていることから、先願発明におけるアクリル系重合体(B)は、単量体成分が「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」であり、(メタ)アクリル系樹脂成分の含有割合が「20?100重量%」である態様を含むものといえる。

以上のとおりであるから、本件補正発明と先願発明とは同一である。

(5)請求人の主張の検討
(5)-1 審判請求書における主張
請求人は、平成23年4月19日提出の審判請求書において、
先願明細書に記載の「アクリル系重合体」は本件補正発明における硬質(共)重合体(b-2)とは異なる旨の主張をしているが、本件補正発明における(b-2)成分として、本願明細書中に「三菱レイヨン(株)社製「アクリペットVH」」が記載(【0049】参照。)されており、これは、先願明細書に例示されている「三菱レイヨン株式会社製アクリペット「VH」」(摘示1B参照。)と同一であると認められることからすると、この点に関する請求人の主張は採用できない。

(5)-2 回答書における主張
請求人は、平成24年8月28日提出の回答書において、先願明細書において用いられているメタプレンS-2001の重量平均分子量は本件補正後の請求項2に係る発明の規定を満たさない旨の主張をしているが、この主張は本件補正発明に関しての主張ではないため、採用することはできない。

(6)まとめ
よって、本件補正発明は、本願の出願の日前の日本語特許出願であって、本願の出願後に国際公開がされた日本語特許出願(先願)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が先願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


第3.本願発明について


1.本願発明

平成23年3月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成22年11月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「ポリ乳酸樹脂(A)20?95重量部と、ゴム強化樹脂(B)5?80重量部とを含むポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物(ただし、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化樹脂(B)との合計で100重量部)であって、
該ゴム強化樹脂(B)は、ゲル含有量50?99重量%のゴム質重合体に硬質(共)重合体がグラフト重合した構造を有するゴム含有グラフト共重合体(b-1)30?95重量%と硬質(共)重合体(b-2)5?70重量%とを含み、かつ、硬質(共)重合体(b-2)中に(メタ)アクリル系樹脂成分を20?100重量%含有していることを特徴とするポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。 」

2.原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由とされた平成22年9月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由3の概要は、

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)

特願2006-519392号(国際公開第2005/085352号)」
というものである。


3.当審の判断

(1)先願明細書の記載事項
先願明細書には、前記第2.3(2)に記載した事項が記載されている。
(2)先願発明
先願明細書には、前記第2.3(3)に記載した先願発明が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、本件補正発明におけるゲル含有量の範囲を「70?85重量%」から「50?99重量%」へと拡張し、(b-1)(b-2)成分の「シアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体」「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」という特定をそれぞれ削除するものである。

そうすると、本願発明をさらに限定した本件補正発明が前記第2.3に記載したとおり、先願明細書に記載された発明であるから、本願発明もまた先願明細書に記載された発明である。


第4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明についての原査定の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-08 
結審通知日 2012-11-13 
審決日 2012-11-27 
出願番号 特願2004-330725(P2004-330725)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 忠  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 田口 昌浩
加賀 直人
発明の名称 ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物およびその成形品  
代理人 重野 剛  
代理人 重野 剛  

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