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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1268065
審判番号 不服2011-27487  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-20 
確定日 2013-01-28 
事件の表示 特願2006-526493「多モードファイバを含むオプティカルカプラ、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日国際公開、WO2005/029146、平成19年 3月15日国内公表、特表2007-506119、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2004年9月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年9月19日、カナダ国)を国際出願日(国際公開第2005/029146号)とする特許出願であって、平成21年10月27日付け及び平成23年1月4日付けで手続補正がなされたが、同年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2 本件補正についての却下の決定
(1)結論
本件補正を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
(ア)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前の
「以下のものを含むオプティカルカプラ:
(a) 複数の多モードファイバーと、アフューモードファイバーを含むバンドルであって、該バンドルは周縁を有する端部であるバンドル端で終了する融着されたエンド部分を有し、該アフューモードファイバーは少なくとも該バンドル端で該バンドルの中心に実質的に位置し、該アフューモードファイバーは光学信号が送信されるコアを有する信号ファイバーであるバンドル;および
(b)光学信号が送信されるコア、第一の屈折率を有する内側クラッディングおよび、第二の屈折率を有する外側クラッディングを含むラージエリアコアダブルクラッドファイバー(LACDCF)であって、LACDCFの端部であるエンド部分を有し、該内側クラッディングは予め決定された外周囲を有し、該第二の屈折率は該第一の屈折率よりも低いLACDCF;
ここで該バンドルの端部と該LACDCFの端部はアラインされスプライスされ、該バンドルの端部の該周縁が該LACDCFの端部において該内側クラッディングの外周囲内にフィットされ、該アフューモードファイバーのコアは該LACDCFの該コアとモード的にアラインして一致され、アフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保存される、オプティカルカプラ。」

「以下のものを含むオプティカルカプラ:
(a) 複数の多モードファイバーと、1つのアフューモードファイバーを含むバンドルであって、該バンドルはバンドルの端で終了する融着されたエンド部分を有し、該バンドルの端は周縁を有し、該アフューモードファイバーは該バンドルの融着されたエンド部分で中心に実質的に位置し、該アフューモードファイバーは光学信号が送信されるコアを有する信号ファイバーであるバンドル;および
(b)光学信号が送信されるコア、第一の屈折率を有する内側クラッディングおよび、第二の屈折率を有する外側クラッディングを含むラージエリアコアダブルクラッドファイバー(LACDCF)であって、該LACDCFはLACDCF端で終了するエンド部分を有し、該内側クラッディングは予め決定された外周囲を有し、該第二の屈折率は該第一の屈折率よりも低いLACDCF;
ここで該バンドルの端と該LACDCFの端はアラインされ融着スプライスされ、該バンドル端の該周縁が該LACDCF端において該内側クラッディングの外周囲内にフィットされ、該アフューモードファイバーのコアは該LACDCFの該コアとモード的にアラインして一致され、該アフューモードファイバーのコアと該LACDCFのコアとの間の光学シグナルの基本モード送信が保存される、オプティカルカプラ。」
に補正する内容を含むものである。

(イ)上記(ア)の補正の内容においては、補正前の「アフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保存される」との事項を、「該アフューモードファイバーのコアと該LACDCFのコアとの間の光学シグナルの基本モード送信が保存される」に補正するものと認められる。

イ 補正の適否についての判断
(ア)本件補正後の「該アフューモードファイバーのコアと該LACDCFのコアとの間の光学シグナルの基本モード送信が保存される」との事項は、「アフューモードファイバーからLACDCFへの光学シグナルの送信」に限られず、「LACDCFからアフューモードファイバーへの光学シグナルの送信」についても光学シグナルの基本モード送信が保存されることをいうものであることは、文言上明らかである(請求人も、請求の理由において「またアフューモードファイバーのコアと該LACDCFのコアとの間の光学シグナルの基本モード送信が保存されますが、これもどちらの方向に送信しても保持されるのであり」と言及するところである。平成24年1月30日付け手続補正書の3頁14?15行を参照。)
しかるに、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願当初明細書等」という。)には、「アフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保存される」ことの記載はあるものの、「アフューモードファイバーからLACDCFへの光学シグナルの送信」に限られず、「LACDCFからアフューモードファイバーへの光学シグナルの送信」についても光学シグナルの基本モード送信が保存されることは記載されていない。
したがって、本件補正は、本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(イ)また、上記ア(イ)の補正は、光学シグナルの基本モード送信の保存につき、本件補正前にあっては、「アフューモードファイバーからLACDCFへの光学シグナルの送信」についていうものに特定されていたものを、かかる特定を省くものであるから、この点において、特許請求の範囲を拡張するものと認められ、特許請求の範囲を減縮するものとは認められない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものとは認められない。また、本件補正が、同条第4項第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものとも認められない。

ウ 小括
以上のとおりであって、上記ア(ア)の補正内容を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第3項に違反するものであり、また、同条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年1月4日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項14に記載された事項によって特定されるものと認められる。
そして、請求項2ないし請求項8に係る発明は、請求項1に係る発明の特定事項をすべて含むものと認められるところ、請求項1に係る発明は、上記2(2)ア(ア)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
また、請求項10ないし請求項14に係る発明は、請求項9に係る発明の特定事項をすべて含むものと認められるところ、請求項9に係る発明は、次のとおりのものである。
「以下を含む、オプティカルカプラを形成する方法:
(a) 光学信号が送信されるコアを有する中央のアフューモードファイバーと、それを取り囲む複数の多モードファイバーをバンドルし、取り囲む多モードファイバーが中央のアフューモードファイバーのまわりに本質的に対称的に位置するようにし、それによってバンドルの端部であるエンド部分を有するファイバーのバンドルを形成すること;
(b)光学信号が送信されるコア、第一の屈折率を有する内側のクラッディングおよび、内側のクラッディングよりも低い屈折率の第二の屈折率を有する外側のクラッディングを有するラージエリアコアダブルクラッドファイバー(LACDCF)であって、LACDCFの端部で終了するエンド部分を有し、LACDCFの内側クラッディングが予め決定された外周囲を有するLACDCFを提供すること;
(c) 該バンドルのエンド部分を融着し、バンドルの端部の周縁が、該LACDCFの端部で内側クラッディングの外周囲内にフィットするようにすること;および
(d)該バンドルの端部を該LACDCFの端部にアラインしスプライシングし、該アフューモードファイバーのコアを該LACDCFのコアと正確にモード的にアラインして一致させ、該アフューモードファイバーから該LACDCFへの基本モード送信を保存すること。」

(2)特許法36条について
平成21年6月19日付け拒絶理由通知において、「アフューモードファイバー」なる用語は、一般的に用いられている用語でないので、発明の外延が不明確であり、本願は、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨の指摘がなされており、この点についてまず検討する。

ア 本願明細書には次の記載がある。
「【0006】
…。これらのファイバーは大きなコア領域を有し、その結果、パワーが大きくても、コア中の強度は適切なままである。…、大きなコアは必ずしもレーザ波長のシングルモードではない。ファイバーコアはアフューモードである。そのモードで増幅されるコア基本モードを注意深く励起しなければならず、それが最良の出力ビームを生じさせる。…。シングルモード接続は単純である。なぜなら、テーパーにされたファイバーバンドルとDCFの間のスプライスが悪くても、接続中の基本モード以外に何も励起することができないからである。アフューモードの場合では、この接続は増幅器を適切に機能させるために重大である。」、
「【0011】
知られているように、シングルモードファイバーは通常9ミクロン以内のモードフィールド直径を持っている。アフューモードファイバーは通常30-50ミクロンのモードフィールド直径を持ち、多モードファイバーは一般に50ミクロン以上のコアモードフィールド直径を持つ。さらに、LACDCFでは、コアは、アフューモードファイバーのコアの直径に類似するモードフィールド直径を持っている。
【0012】
シングルモード接続では、テーパーにするプロセスでは、モードフィールド直径は減少ではなく増加するので、同じモードフィールド直径を有する2つのコアを取り扱う。
米国特許6,434,302に開示されているように、シングルモードファイバーを含んでいるファイバーのバンドルをテーパーすることによって、DCFシングルモードコアのモードに、テーパーされたバンドルのシングルモードコアのモードフィールドを一致させることができる。しかしながら、2つのファイバーコアがシングルモードになるポイントまでバンドルをテーパーにしなければ、これをアフューモードファイバーで達成することは可能ではない。したがって、アフューモードファイバーのバンドルにLACDCFを接続することにおける基本的な相違は、信号を伝搬するアフューモードファイバーは、(シングルモードファイバーの場合のように)単純にテーパーにするだけで接続を達成することができず、LACDCFのモーダルコンテントと一致するように作られなければならないということである。」
「【0017】
…。図1の中で示される実施態様では、アフューモードファイバー10が提供され、これは50ミクロンの直径のコア12および125ミクロンの直径のクラッディング14を有する。このアフューモードファイバー10は2つの多モードファイバー16および18とバンドルされ、該バンドルは融着領域20内で融着される。多モードファイバー16、18は各々、105ミクロンの直径のコア22および125ミクロンの直径のクラッディング24を有する。」
「【0018】
…コア12を有するアフューモードファイバー10は、そのモーダルコンテントがコア12に対応するラージエリアコア28(図1中に示される)を有するLACDCF26と整列され、スプライシングされる。…重要なことは、バンドルおよびアフューモードファイバーがLACDCFと、アフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保持されるようにアラインされることである。本質的に、これは、コア12がラージエリアコア28と正確にモード的にアラインされるべきであることを意味する。これは、アフューモードファイバーの基本モードを発し、ニアフィールド測定装置、たとえば適切なレンズを通してファイバーのエンドフェイスを映し出すカメラで、LACDCFの入力でモーダルコンテントをモニタすることにより行うことができる。その後、ガウスモードフィールドが得られるまで、バンドルとLACDCFをアラインさせる。その後、スプライシングされ、モーダルフィールドは再びチェックされ、モーダルコンテントが変わらないことを確認する。モーダルコンテントがスプライスのために変わっているか損失のある場合には、これはスプライスのストレスによることがある。その後、モーダルコンテントを最適化するためにスプライスを再加熱し再加工する必要がある。モードをモニタする場合、LACDCFファイバーは、測定に影響を与えるモードカップリングを防ぐために、まっすぐ、あるいは若干の張力を加えた状態にあることが好ましい。そのような測定も、最良の結果を生むために、オペレーションの波長で、あるいは非常にそれに近い波長で行われるのがよい。」

イ 以上の記載に照らすと、「アフューモードファイバー」とは、シングルモードファイバではないが、モードの数はいわゆる多モードファイバほどには多くないものであることが、その表現自体から明らかであり、多モードファイバーより小さいコア径ないしモードフィールド直径を有し(【0011】及び【0017】を参照。)、正確にモード的にアラインされてアフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保持される(【0018】を参照。)ものであると理解することができる。
すなわち、「アフューモードファイバー」の用語が一般的に用いられている用語であるかどうかにかかわらず、本願明細書の記載を踏まえるとその意味内容について理解することができるものといえるから、本願特許請求の範囲の記載が特許法36条第6項第2号に違反しているとまではいえない。

(3)特許法29条2項について
ア 上記(1)によれば、本願の請求項1ないし8に係る発明は、アフューモードファイバーとラージエリアコアダブルクラッドファイバー(LACDCF)とを接続するオプティカルカプラであり、同じく請求項9ないし14にないしに係る発明は、アフューモードファイバーとラージエリアコアダブルクラッドファイバー(LACDCF)とを接続するオプティカルカプラを形成する方法に関するものと認められる。

イ しかるに、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-215387号公報及び前置報告書に引用された特開平11-72629号公報には、シングルモードファイバとシングルモードコアを有するダブルクラッドファイバとを接続する技術が記載されるにとどまり、本願の各請求項に係る発明に関する、アフューモードファイバーとLACDCFを接続する技術の記載は認められない。

ウ また、前置報告書に引用された特開2002-270928号公報には、ダブルクラッドファイバの第1端側の端面におけるコア径が15μmであり、この端面にシングルモード伝搬条件以上の15μmのコア径を有する信号光出射用ファイバが接続された光増幅装置が記載されていることが認められる(【0041】?【0063】、図1)ところ、同公報には、この15μmのコア径を有する信号光出射用ファイバについて、
「【0046】…。この15μmというコア径は、シングルモード伝搬条件以上のコア径であるが、コア径がシングルモード伝搬条件を満たすコア径の3倍程度以下であれば、シングルモード伝搬している光は、マルチモード化することなくシングルモードのままで上記コア内を伝搬することが可能である。
【0047】すなわち、光ファイバはその長尺化に伴い、いわゆる長尺カットオフと呼ばれる現象が生じる。これは、光ファイバの実際のカットオフ波長(シングルモード化する実際の波長。以下、「長尺カットオフ波長」という)が、光ファイバの構造から理論的に算出される理論カットオフ波長よりも短いことに起因している。このため、上記長尺カットオフ波長を基準にコア径を設定すれば、シングルモード伝搬条件以上のコア径となるが、この光ファイバは実質的にシングルモード光ファイバとなる。このように、上記信号光出射用ファイバ32のコア径は、上記長尺カットオフ波長を基準にして設定されている。」との記載がある。
これによれば、上記光増幅装置に用いられる信号光出射用ファイバは、長尺カットオフ波長を基準にしてコア径が設定されることにより実質的にシングルモード光ファイバとなるものと認められる。
一方、本願の各請求項に係る発明における「アフューモードファイバー」は、上記(2)のとおり、正確にモード的にアラインされてアフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保持されるものであって、長尺カットオフ波長を基準にしてコア径が設定されることにより実質的にシングルモード光ファイバとなるものである、上記光増幅装置に用いられる信号光出射用ファイバが「アフューモードファイバー」に該当するものとは認め難い。
すなわち、上記特開2002-270928号公報には、本願の各請求項に係る発明に関する、アフューモードファイバーとLACDCFを接続する技術が記載されているものとは認め難く、本願の各請求項に係る「該アフューモードファイバーのコアは該LACDCFの該コアとモード的にアラインして一致され、アフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保存される」(請求項1)ないし「該アフューモードファイバーのコアを該LACDCFのコアと正確にモード的にアラインして一致させ、該アフューモードファイバーから該LACDCFへの基本モード送信を保存する」(請求項9)との事項が記載ないし示唆されているものとは認められない。

エ 以上の検討によれば、本願の各請求項に係る「該アフューモードファイバーのコアは該LACDCFの該コアとモード的にアラインして一致され、アフューモードファイバーからLACDCFへの基本モード送信が保存される」(請求項1)ないし「該アフューモードファイバーのコアを該LACDCFのコアと正確にモード的にアラインして一致させ、該アフューモードファイバーから該LACDCFへの基本モード送信を保存する」(請求項9)との事項を当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本願の各請求項に係る発明について、当業者が上記イ及びウの各公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 むすび
以上のとおりであって、本願については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-01-15 
出願番号 特願2006-526493(P2006-526493)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 561- WY (G02B)
P 1 8・ 572- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 吉野 公夫
松川 直樹
発明の名称 多モードファイバを含むオプティカルカプラ、およびその製造方法  
代理人 辻永 和徳  

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