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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q |
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管理番号 | 1268171 |
審判番号 | 不服2011-9460 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-05-06 |
確定日 | 2013-01-04 |
事件の表示 | 特願2005-515395「アンテナ及びその製造方法並びに同アンテナを用いた携帯無線端末」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日国際公開、WO2005/048404〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年7月29日(国内優先権主張 平成15年11月13日)を国際出願日とする出願であって、平成23年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成24年7月26日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年9月26日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月26日付け手続補正書により補正された請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「接地電位を有する接地導体と、 上記接地導体の一部を一端とする単一の給電点と、 上記給電点に供給された高周波電力を入力して帯域の異なるn種(nは3以上の整数である)の周波数の電磁波を空間に放射する複数の伝送線路とを具備し、 上記複数の伝送線路は、上記n種の周波数の電磁波を共通して空間に放射する伝送線路を含み、かつ、上記給電点を起点とする分岐点を(n-1)個以上有する一体のトポロジー構造を成しており、 上記給電点が1つの上記伝送線路の一端と上記接地導体との間に形成されており、 上記給電点において上記n種の周波数に対してインピーダンス整合が行なわれ、 上記接地導体、上記給電点及び上記複数の伝送線路が一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成されることを特徴とするアンテナ。」 3.引用発明及び周知技術 (1)当審の拒絶理由に引用された特表2001-513283号公報(以下、「引用例」という。)には、「共振アンテナ」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【特許請求の範囲】 1.一方の側に導電性のアース面(1)を有し、その反対側はマイクロストリップ回路の形式の導電性構造である誘電率が低い材料からなる基板層(10)から構成された、波長がλである電磁マイクロ波を受信し、送信するためのアンテナにおいて、導電性構造(S)が共振子として、長さ(LR)がλε/4である細長い導体セグメント(3、3a、3b、R、Ra、Rb)を有し、その一端がアース面(8、1)と導電性連結されており、他端が共振状態を調整するための成端キャパシタンスとして機能する少なくとももう1つの別の導体セグメント(2、2a、2b、4、42a、42b、46a、46b、K)と導電連結され、共振子導体セグメント(3、3a、3b,R、Ra、Rb)が同軸の光ファイバの内部導体と連結され、かつ同軸の光ファイバの外部導体がアース面(1)と連結されたことを特徴とするアンテナ。 (・・・中略・・・) 12.同軸の光ファイバの内部導体(13、13a、13b)が隔膜(15、15a、15b)によってアース面(1)および層(10、10a、10b)内の切欠き部内に案内され、かつ共振子導体セグメント(3、3a、3b、R、Ra、Rb)と連結されており、アンテナの入力インピーダンスが共振子導体セグメント(3、3a、3b、R、Ra、Rb)の縦の対称線に沿った結合部位(9)を介して規定されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のアンテナ。」(2?4頁、特許請求の範囲) ロ.「本発明によって、比較的小さいスペースに異なる波長の2つ、またはそれ以上のアンテナを格納することが可能である。本発明の重要な特徴は、マイクロ波を受信するためのマイクロストリップ技術で実現する共振子の長さをλg/4より短くでき、それによって特にコンパクトで小さい構造を達成できることにある。共振子の長さがλε/4より短く選択されることによって、前述したように、振動条件はもはや満たされない。本発明に基づく成端キャパシタンスは別の導体セグメントによって実現される。周波数帯域幅の拡大は電磁漂遊結合(Verkopplung)により補足的なアンテナ素子によって達成可能である。これは共振子とその成端キャパシタンスから特定距離を隔てて配置された別の補足的なマイクロストリップ導体によって行われる。基板上の2つ、またはそれ以上の共振子で複数の周波数範囲を受信することが可能であり、その際に共振子を空間的に互い違いに配置することができ、また必要な周波数帯域に同調させることができる。個々のアンテナは1つの平面上にある必要はなく、互いに積層して配置することができる。その際に、層毎に複数のアンテナ装置を備えることも可能なので、2つ以上の異なる周波数帯域を利用することが可能である。それによって、移動式無線電話は様々な移動無線システムと通信することができる。」(7頁12?27行目) ハ.「図4は、成端キャパシタンスが共振子導体セグメントRの一方の側に配置されている平行に配置された2つの導体セグメントK1およびK2によって形成された本発明に基づくアンテナを示している。図5および図6にも合成成端キャパシタンスが3つ、または4つの導体セグメントK1からK4によって形成される本発明に基づくアンテナの別の実施例を示している。」(10頁15?19行目) 上記引用例の記載及び図面(特に図4、図5及び図2)ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例に記載されている「同軸の光ファイバ」は「同軸ケーブル」の誤記と認められるので、以下では「同軸の光ファイバ」の代わりに「同軸ケーブル」を用いる。 上記「共振アンテナ」を構成する「導電性のアース面(1)」はいわゆる「接地電位を有する接地導体」であり、「結合部位(9)」は同軸ケーブルの出力を受ける「給電点」であり、同軸ケーブルの外部導体はアース面に接続されている。したがって、前記「結合部位(9)」は「前記接地導体の一部を一端とする単一の給電点」である。 また上記図4及び図5に記載された「共振アンテナ」はそれぞれ3種類及び4種類の長さのセグメント(即ち、伝送線路)を有しており、当該3ないし4種類の長さは3ないし4種類の周波数で共振することを意味するから、当該図4及び図5に記載された構成は「給電点に供給された高周波電力を入力して帯域の異なるn種(nは3以上の整数である)の周波数の電磁波を空間に放射する複数の伝送線路K1,K2,K3,K4(図5の場合のみ)及びR」を具備しており、前記伝送線路Rは「前記n種の周波数の電磁波を共通して空間に放射する伝送線路」であり、また図4及び図5の場合の分岐点はそれぞれ2個及び3個であるから、該分岐点の数は(n-1)個以上であり、結果として当該共振アンテナは伝送線路Rを共用部とするとともに必要な帯域数に対応した分岐点を有し、これらが一体化された多周波逆F型共振アンテナを成している。 また「給電点」が1つの伝送線路Rの一端と接地導体との間に形成されていることは上記したとおりである。 また上記共振アンテナのそれぞれの伝送線路K1?K4の終端に共振状態調整用の容量を形成しそれぞれの伝送線路に対して共振状態の調整(即ち、インピーダンス整合)を行っているのであるから、当該構成は単一の給電点において上記n種の周波数に対してインピーダンス整合が行なわれていることを示している。 したがって、上記引用例には、例えば図5に記載された構成に関し、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「接地電位を有する接地導体と、 上記接地導体の一部を一端とする単一の給電点と、 上記給電点に供給された高周波電力を入力して帯域の異なるn種(nは3以上の整数である)の周波数の電磁波を空間に放射する複数の伝送線路とを具備し、 上記複数の伝送線路は、上記n種の周波数の電磁波を共通して空間に放射する伝送線路を含み、かつ、上記給電点を起点とする分岐点を(n-1)個以上有する一体構造を成しており、 上記給電点が1つの上記伝送線路の一端と上記接地導体との間に形成されており、 上記給電点において上記n種の周波数に対してインピーダンス整合が行なわれる、 アンテナ。」 (2)同じく当審の拒絶理由に引用された特開2003-152430号公報(以下、「引用例2」という。)には、「二周波共用平板アンテナおよびそれを用いた電気機器」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項1】一端が開放されたスリットを有する導体平板と、 前記導体平板の前記スリットを介して両側に形成された第1および第2の導体平板部にそれぞれ第1および第2の導体が接続された給電線路とを備えたことを特徴とする二周波共用平板アンテナ。」(2頁1欄、請求項1) ロ.「【0015】図2は、導体平板1を示す。第1の放射素子部3Aの長片部30のスリット2側の長さbと第2の放射素子部3Bの長片部32のスリット2側の長さcとは等しく構成されている。スリット2の長さb、あるいは第1の放射素子部3Aの長片部30の長さaは、共振周波数の波長をλとすると、概ねλ/4の奇数倍であり、第1の共振周波数は、給電部7の位置と長さbあるいはaによって決定される。図2に示す(b+c+d)の長さは、概ねλの整数倍であり、第2の共振周波数は、給電部7の位置と長さ(b+c+d)によって決定される。」(4頁5欄、段落15) ハ.「【0029】図14(a),(b)は、導体平板1の共振状態を示す。同図(a)のハッチングで表した第1の放射素子部3Aを共振部とする第1の共振周波数で機能するL字状のアンテナが構成される。また、第1の放射素子部3Aの長片部30と第2の放射素子部3Bの短片部33とが電磁結合8されることによって、同図(b)のハンチングで表した第1の放射素子部3Aと第2の放射素子部3Bとを共振部とする第2の共振周波数で機能するループ状のアンテナが構成される。第1の共振周波数は、給電部7の位置とスリット2の長さb、あるいは第1の放射素子部3Aの長片部30の長さa、および短スリット部21の幅g2によって決定される。第2の共振周波数は、給電部7の位置と図13に示す(b+c+d+h2)の長さによって決定される。」(5頁8欄、段落29) ニ.「【0032】図16は、本発明の第11の実施の形態に係る二周波共用平板アンテナを示す。この導体平板1は、第10の実施の形態において、同図(a)に示すように、第1の放射素子部3Aの長片部30に細径同軸ケーブル5の内導体50を接続するための接続部30aを長スリット部20側に延在し、第2の放射素子部3Bの長片部32に細径同軸ケーブル5の外導体51を接続するための接続部32aを長スリット部20側に延在し、同図(b)に示すように、細径同軸ケーブル5の引き出し方向を右側とし、細径同軸ケーブル5の内導体50を第1の放射素子部3Aの接続部30aにはんだ6によって接続し、外導体51を第2の放射素子部3Bの接続部32aにはんだ6によって接続したものである。この第11の実施の形態によれば、導体平板1へのケーブル5の接続が容易となる。また、接続位置が安定するので、共振周波数の均一化が図れる。さらに、アンテナの設置スペースが細長い場合に、このアンテナを容易に設置することができる。」(5頁8欄?6頁9欄、段落32) ホ.「【0034】図18は、図17に示す二周波共用平板アンテナ単体での共振周波数の測定結果を示す図である。共振周波数の測定には、導体平板1には0.2mm×4mm×40mmのサイズの銅箔を用い、誘電体10には3mm×4mm×40mmのサイズの誘電率3のABS樹脂を用いた。同図から明らかなように、第1の共振周波数として約2.5GHz、第2の共振周波数として約5.5GHzを得られていることが分かる。なお、実際にアンテナをノート型パソコン等の電気機器に内蔵すると、アンテナの共振周波数はアンテナ単体の場合とは異なり、内蔵位置周辺の材質や構造等の環境による影響を受けることによって変化するので、これらを考慮してアンテナ単体での共振周波数はずらして設定される。長スリット部20の幅d、スリット2’の幅g1、短スリット部21の幅g2は、誘電体10の誘電率が高くなればさらに狭くできるので、誘電体10に誘電率のより高いものを用いることにより、さらに小型化が可能となる。」(6頁9欄、段落34) 上記ロ、ハの記載によれば上記第1の周波数で共振するアンテナモードは第2の放射素子部を接地面とし、第1の放射素子の途中を給電点とするλ/4逆F型アンテナである。 したがって、上記引用例2には「逆F型アンテナとループアンテナからなる二周波共用平板アンテナであって、前記二周波共用平板アンテナは単一の給電点と放射素子部3Aと、同軸ケーブルの外導体が接続され実質的なアース部となる放射素子部3Bからなり、これらを一体金属板によって一体且つ平面状に形成する」構成が開示されている。 (3)同じく当審の拒絶理由に引用された特開平11-68453号公報(以下、「引用例3」という。)には、「複合アンテナ」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項1】複数の周波数帯域において使用するために複数のアンテナによって形成される複合アンテナであって、 一端を給電点とする線状の主素子と、前記主素子の他端から折り返して終端を開放端とする線状の副素子とを含む、略コの字状の形状の複数の折返しアンテナを前記複数の使用周波数帯域に対応して備え、 前記複数の折返しアンテナの各主素子を一体化して、アンテナ全体の外形を小さくした、 ことを特徴とする複合アンテナ。」(2頁1欄、請求項1) ロ.「【0030】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の複合アンテナ10の第1の実施の形態を示しており、高周波用の折返しアンテナAと低周波用の折返しアンテナBとによって構成されている。 【0031】アンテナAは、周波数fHの高周波信号の略1/4波長(λH/4)の長さ(電気長)であり、直線状の導体からなる素子11、12及び13によって構成される。素子11は、約0.11λH、若しくはこれよりも短い長さに設定される。素子11の一端は、給電点2となっており、2周波電源1から高周波信号の供給を受ける。2周波電源1の他端は、例えば、無線装置の高周波部のシールドケース3に接地される。素子11の他端には、素子11と略直交するように素子12の一端が接続される。素子12の長さは、0.05λH以下(0.05?0.01λH)に設定される。素子12の他端には、素子12と略直交するように素子13の一端が接続される。素子13の他端は開放される(接続されない)。素子13の電気長は素子11よりも短い。このようにして、λH/4の折返しアンテナAが形成される。 【0032】アンテナBは、周波数fLの高周波信号の略1/4波長(λL/4)の長さであり、直線状の導体からなる素子11、14、15及び16によって構成される。上述したように、素子11の一端は、給電点2となっており、2周波電源1から低周波信号の供給を受ける。素子11の他端には、素子11を延長するように素子14の一端が接続される。素子14の他端には、素子14と略直交するように素子15の一端が接続される。素子15の長さは、0.05λL以下(0.05?0.01λL)に設定される。素子15の他端には、素子15と略直交するように素子16の一端が接続される。素子16の他端は開放される。このようにして、λL/4の折返しアンテナBが形成される。 【0033】上述した2周波電源1は、例えば、携帯電話等の携帯型無線通信機の高周波回路である。この回路は基板に形成され、金属ケースによってシールドされる。2周波電源1が出力する相対的に低い周波数fLと相対的に高い周波数fHとは、好ましくは、1.4倍以上の周波数関係となるようになされる。 【0034】このようにアンテナA及びBによって構成される複合アンテナは、素子11を共有して一体化した構造であるので、小型の2周波アンテナとして機能する。複合アンテナを構成する各素子11?16は一体構成とすることができ、棒状アンテナ、板状アンテナ、あるいは絶縁基板上に形成された平面状アンテナとして形成することができる。 【0035】この複合アンテナにおいては、素子12及び素子15相互が水平面内においてなす角度を任意に設定することが可能である。 【0036】例えば、図1に示す例では、上記角度は180度であるが、図9に示すように、該角度を0度とすることも可能である。図9においては図1と対応する部分に同一符号が付されており、かかる部分の説明は省略する。後述するように、図1に示す構成の方が、高周波fHにおける上方への輻射特性がよい。その一方、図9に示されるアンテナBの面内にアンテナAが収まる構成の方がアンテナを小型化できる。」(5頁7?8欄、段落30?36) ハ.「【0054】図17(b)は、複合アンテナを一枚の金属の板材によって形成した例を示している。 即ち、上記引用例3には「共用部と分岐点を有する2周波共用折返しアンテナを一枚の金属の板材から一体且つ平面状に形成する」技術手段が開示されている。 (4)例えば特開2003-37416号公報(以下、「周知例1」という。)又は特開2003-152429号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 (周知例1) イ.「【請求項1】 誘電体により構成されたケースを有する電子機器において、単体時の共振周波数が目的とする中心周波数より高く設定された平板型のアンテナと、前記アンテナの一部とケースとの間に間隙が形成されるように該アンテナを前記ケースに装着する手段とを具備し、前記アンテナとケースとの間に形成される間隙の調整によりアンテナ実装時の共振周波数を目的とする中心周波数に合わせることを特徴とする電子機器。」(2頁1欄、請求項1) ロ.「【0013】上記アンテナ7としては、例えば図2に示す逆F型アンテナが用いられる。逆F型のアンテナ7は、例えば方形状のアンテナ基板11を使用し、その上辺に沿って溝12を設けることによりアンテナ基板11の上辺に電波放射素子であるエレメント13を形成し、その他の領域をGND(接地)14としている。また、エレメント13には、基部に近い位置に給電点15が設けられる。この場合、給電点15におけるインピーダンスが例えば50Ωとなるようにその位置を設定する。 【0014】上記アンテナ基板11は、厚さが例えば0.1mm程度の金属板を使用し、その両面をラミネート処理して保護している。アンテナ基板11の幅Lは、ほぼ1/4波長(λ)に設定する。アンテナ基板11の具体的な大きさは、例えば2.4GHz帯の電波を使用する場合、30×30mm程度である。また、溝12の幅は2mm程度、エレメント13の幅1mm程度である。」(3頁3?4欄、段落13?14) (周知例2) イ.「【請求項7】打ち抜きにより、導体平板に帯域幅に応じた幅のスリットを介して一方の側に放射素子部、他方の側にグランド部を形成し、 前記放射素子部の一部に給電線路の第1の導体を接続し、前記グランド部の一部に前記給電線路の第2の導体を接続することを特徴とする平板アンテナの製造方法。」(2頁1欄、請求項7) ロ.「【0008】本発明は、上記目的を達成するため、打ち抜きにより、導体平板に帯域幅に応じた幅のスリットを介して一方の側に放射素子部、他方の側にグランド部を形成し、前記放射素子部の一部に給電線路の第1の導体を接続し、前記グランド部の一部に前記給電線路の第2の導体を接続することを特徴とする平板アンテナの製造方法を提供する。導体平板として例えばリードフレームを用い、そのリードフレームの長手方向に沿って複数の箇所にスリットを打ち抜くことにより、一つのリードフレームから複数の平板アンテナを同時に製造することが可能となる。」(3頁3欄、段落8) 例えば上記周知例1?2に開示されているように「接地導体、給電点及び放射導体を有する逆F型アンテナが一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成されるアンテナ構造」は周知である。 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明の「一体のトポロジー構造を成して」という構成と引用発明の「一体構造を成して」という構成はいずれも「一体構造を成して」という構成である点で一致している。 また本願発明は「上記接地導体、上記給電点及び上記複数の伝送線路が一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成される」構造を備えているが引用発明は当該構成を備えていない。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「接地電位を有する接地導体と、 上記接地導体の一部を一端とする単一の給電点と、 上記給電点に供給された高周波電力を入力して帯域の異なるn種(nは3以上の整数である)の周波数の電磁波を空間に放射する複数の伝送線路とを具備し、 上記複数の伝送線路は、上記n種の周波数の電磁波を共通して空間に放射する伝送線路を含み、かつ、上記給電点を起点とする分岐点を(n-1)個以上有する一体構造を成しており、 上記給電点が1つの上記伝送線路の一端と上記接地導体との間に形成されており、 上記給電点において上記n種の周波数に対してインピーダンス整合が行なわれる、 アンテナ。」 <相違点> (1)「一体構造を成して」という構成に関し、本願発明は「一体のトポロジー構造を成して」という構成であるのに対し、引用発明は単に「一体構造を成して」という構成である点。 (2)本願発明は「上記接地導体、上記給電点及び上記複数の伝送線路が一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成される」構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点。 5.検討・判断 (5-1)「一体構造を成して」という構成について 分岐と延長を繰り返す引用発明の例えば図6(n=3の場合の例)の構成とトポロジーを説明した本願図18の構造は同一である。したがって前記図18の構造を「トポロジー(綱構造)」と呼称するならば、前記引用発明の図6の構成もトポロジー構造であり、同様な構成を持つ引用発明の例えば図5の構成もまた「トポロジー構造」である。したがって、このような知見に基づいて、引用発明の「一体構造を成して」という構成を、本願発明のようなより具体的な表現である「一体のトポロジー構造を成して」という構成とする程度のことは、当該構成に実質的な差異がないのであるから、当業者であれば適宜なし得ることである。 (5-2)『本願発明は「上記接地導体、上記給電点及び上記複数の伝送線路が一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成される」構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点』について 本願発明は逆F型アンテナ又はループアンテナを含む複数のアンテナの構成要素である放射素子とアース部と給電部を一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成するものであるが、例えば上記引用例2には「逆F型アンテナとループアンテナからなる二周波共用平板アンテナであって、前記二周波共用平板アンテナは単一の給電点と放射素子部3Aと、同軸ケーブルの外導体が接続され実質的なアース部となる放射素子部3Bからなり、これらを一体金属板によって一体且つ平面状に形成する」構成が開示されており、また例えば上記引用例3には「共用部と分岐点を有する2周波共用折返しアンテナを一枚の金属の板材から一体且つ平面状に形成する」技術手段が開示されている。 また例えば上記周知例1?2に開示されているように「接地導体、給電点及び放射導体を有する逆F型アンテナが一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成されるアンテナ構造」自体も周知である。 そして、これらの公知ないしは周知の技術手段を接地導体、給電点及び放射導体を有する多周波逆F型共振アンテナである引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、これらの技術手段に基づいて、引用発明のアンテナを本願発明のような「上記接地導体、上記給電点及び上記複数の伝送線路が一体金属板によって一体化された構造として同一平面上に形成される」構成とする程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された技術手段ないしは周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-10-30 |
結審通知日 | 2012-11-06 |
審決日 | 2012-11-19 |
出願番号 | 特願2005-515395(P2005-515395) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 伊佐雄 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 矢島 伸一 |
発明の名称 | アンテナ及びその製造方法並びに同アンテナを用いた携帯無線端末 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |