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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1268230
審判番号 不服2012-835  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-16 
確定日 2013-01-04 
事件の表示 特願2008-195937「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月27日出願公開、特開2008-284387〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年8月16日に出願した特願2005-236011号の一部を平成20年7月30日に新たな特許出願としたものであって、平成23年10月11日付け(発送:10月18日)で拒絶査定され、これに対し、平成24年1月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされ、当審において、同年4月12日付け(発送:4月17日)で審査官の前置報告書に基づく審尋を行い、同年6月11日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成24年1月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1?4に記載された
「【請求項1】
図柄を表示可能な表示手段を有し、遊技者の始動開始操作に基づいて複数種の小役を含む役の抽選を行い、当該抽選により当選した役に対応する図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に、前記当選した役を入賞とする遊技機であって、
前記役には、当該遊技において前記複数種の小役のいずれの役に対応する図柄も前記表示手段に停止表示させることが可能な第1の状態を制御し、前記複数種の小役のうちのいずれかの図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に当該小役を入賞とする第1の特別役と、入賞することにより、次回以降の遊技状態を第2の状態に変化させ、この第2の状態による遊技の間に前記第1の特別役を複数回成立させて前記第1の状態による遊技を複数可能とする第2の特別役とを備え、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で、前記表示手段に図柄が停止表示された後、遊技媒体の払出が行われる場合には、その遊技媒体の払出が終わった後で、かつ、次回の遊技の始動開始操作までの間に前記第1の状態を再起動させる再起動手段を有し、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で前記表示手段に図柄が停止表示された後、次回の遊技が始まるまでの間に前記再起動手段が第1の状態を再起動させるまでの時間は、少なくとも前記第1の状態の停止と再起動を検知するための検知手段が検知可能で、かつ、約150msec以下の時間間隔を保つことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記時間間隔は約5msec以上の範囲であることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記第2の状態による遊技状態の許容条件を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶されている前記許容条件に前記第2の状態での遊技が到達したか否かを検知する許容条件検知手段と、
この許容条件検知手段による検知結果が前記許容条件に到達した場合に前記第2の状態を終了させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の状態及び第2の状態の開始、終了、及び再起動を示す信号を外部に出力する信号出力手段を備えたことを特徴とする請求項3の記載の遊技機。」
という発明を、
「【請求項1】
図柄を表示可能な表示手段を有し、遊技者の始動開始操作に基づいて複数種の小役を含む役の抽選を行い、当該抽選により当選した役に対応する図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に、前記当選した役を入賞とする遊技機であって、
前記役には、当該遊技において前記複数種の小役のいずれの役に対応する図柄も前記表示手段に停止表示させることが可能な第1の状態を制御し、前記複数種の小役のうちのいずれかの図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に当該小役を入賞とする第1の特別役と、入賞することにより、次回以降の遊技状態を第2の状態に変化させ、この第2の状態による遊技の間に前記第1の特別役を複数回成立させて前記第1の状態による遊技を複数可能とする第2の特別役とを備え、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で、前記表示手段に図柄が停止表示された後、遊技媒体の払出が行われる場合には、その遊技媒体の払出が終わった後で、かつ、次回の遊技の始動開始操作までの間に前記第1の状態を再起動させる再起動手段を有し、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で前記表示手段に図柄が停止表示された後、次回の遊技が始まるまでの間に前記再起動手段が第1の状態を再起動させるまでの時間は、少なくとも前記第1の状態の停止と再起動を検知するための検知手段が検知可能で、かつ、10msec以下の時間間隔を保つことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記時間間隔は約5msec以上の範囲であることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記第2の状態による遊技状態の許容条件を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶されている前記許容条件に前記第2の状態での遊技が到達したか否かを検知する許容条件検知手段と、
この許容条件検知手段による検知結果が前記許容条件に到達した場合に前記第2の状態を終了させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の状態及び第2の状態の開始、終了、及び再起動を示す信号
を外部に出力する信号出力手段を備えたことを特徴とする請求項3の記載の遊技機。」
という発明に変更することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

(2)補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。

(a)補正前の請求項1における「かつ、約150msec以下」という事項を、
「かつ、10msec以下」とする補正。

上記補正事項について検討する。
補正事項(a)については、「再起動手段が第1の状態を再起動させるまでの時間」を限定するものであるから、限定的減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮、を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由(平成23年1月21日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2005-205185号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。また、当審で段落【0135】の「FB用の小役賞に入賞していなでステップS222の判定条件が否定された場合」は「FB用の小役賞に入賞しないでステップS222の判定条件が否定された場合」の誤記と認めた。
(ア)「【0029】
くわえて、表示窓4aの左側には補助表示部20が設けられている。補助表示部20は、各入賞ラインL1?L5に各々対応する5個のLEDからなる。プレイヤーがメダルを投入したり、あるいは、後述するベット操作を行うと、ベット数に応じた数の入賞ラインL1?L5が有効となる。このスロットマシン1では、ベット数が1枚の場合に入賞ラインL1が有効となり、ベット数が2枚の場合に入賞ラインL1?L3が有効となり、ベット数が3枚の場合に入賞ラインL1?L5が有効となる。補助表示部20を構成する各LEDは、対応する入賞ラインL1?L5が有効である場合に点灯し、無効である場合に消灯する。これによって、プレイヤーは、どの入賞ラインL1?L5が有効であるかを知ることができる。
【0030】
パネル表示部Dの内側には、各々の外周面に複数種類の図柄が描かれた3列の左・中・右リールR1、R2、R3が回転自在に設けられている。図2に、左・中・右リールR1、R2、R3の構造を示し、図3に、右リールR3の詳細な構造を示す。各リールR1?R3は、環状の形状をしており、その表面(表示窓4a?4cから視認可能な面)には各種の図柄が印刷されている。また、右リールR3の裏面には、一部を除いて、光を遮光する遮光膜Sが形成されている。遮光膜Sが形成された部分では、裏面側から光を照射しても光が透過しない。一方、各図柄部分は、遮光膜Sが形成されておらず、光を散乱させるための凹凸部材Pが右リールR3の裏面に形成されている。くわえて、各図柄部分は、リール自体が白色半透明になっている。図3に示す例では、図柄「7」の輪郭部分の内部に凹凸部材Pが形成されている。」
(イ)「【0036】
スタートレバー6は、BETボタン15の下方に設けられている。スタートレバー6は、プレイヤーがゲームの開始を指示するために用いられる。プレイヤーがスタートレバー6を押し下げると、リールR1、R2、R3が一斉に回転を開始し、表示窓4a、4b、4c内の図柄が可変表示となる。
【0037】
左・中・右リールストップボタン7a、7b、7cは、スタートレバー6の右横に設けられている。左・中・右リールストップボタン7a、7b、7cは、表示窓4a、4b、4c内で回転する3列の左・中・右リールR1、R2、R3をそれぞれ停止させるために用いられる。」
(ウ)「【0041】
図柄の並び(組合せ)のうち遊技価値を与えるものを「役」といい、無価値な「非入賞」と区別される。遊技価値とは、プレイヤーに付与される特典をいい、プレイヤーに所定数量のメダルを払い出すことの他、ある種類のゲームから他の種類のゲームに移行させることが含まれる。1ゲームの結果として付与される遊技価値の種別を「賞」といい、「賞」を得ることを「入賞」という。賞は、通常ゲームから他の種類のゲームに移行させる開始賞とメダルの払い出しがある小役賞(払出賞)とに大別される。なお、開始賞はメダルの払い出しを伴うものであってもよいし、メダルの払い出しがなくてもよい。
【0042】
スロットマシン1が実行可能なゲームの種類としては、通常ゲーム、レギュラーボーナスゲーム(以下、RBゲームと称する)、ビッグボーナスゲーム(以下、BBゲームと称する)、チャレンジボーナスゲーム(以下、CBゲームと称する)、フリーボーナスゲーム(以下、FBゲームと称する)、及びリプレイゲームを含む。RBゲームの開始賞をRB賞、BBゲームの開始賞をBB賞、CBゲームの開始賞をCB賞、FBゲームの開始賞をFB賞、リプレイゲームの開始賞をリプレイ賞という。なお、RB賞、BB賞、CB賞、及びFB賞は入賞により15枚のメダルが払い出されるが、リプレイ賞に入賞してもメダルの払い出しはない。
【0043】
CBゲームは、通常ゲームと比較して内部抽選におけるFB賞の当選確率が異なるゲーム、又はFBゲームを連続的に行うゲームであり、本実施形態のFB賞の当選確率は、CBゲームの方が通常ゲームと比較して高い。但し、CBゲーム中に獲得するメダル枚数には制限があり、所定枚数を越える前にCBゲームを終了させる。FBゲームは、少なくとも一つのリールについて内部抽選の結果と無関係に停止制御が実行され、1ゲームで作動を終了する。従って、FBゲームでは、少なくとも一つのリールについて蹴り飛ばし制御を実行しない。なお、以下の説明ではCBゲーム中のFBゲームをCB中FB、通常ゲームで入賞したFBゲームを単独FBと称する。」
(エ)「【0091】
次に、CPU31は、第1制御プログラムCP1に従って、ゲーム態様に応じた賞群抽選テーブルの設定を行う(ステップS14)。具体的には、賞群抽選テーブル群TBL1の中から、通常ゲーム、RBゲーム、BBゲーム、CBゲーム、及びFBゲームといった遊技状態(ゲームの種類)に応じたテーブルを選択する。この場合、CPU31はRAM34に記憶したRBゲーム中フラグ、BBゲーム中フラグ、及びCBゲーム中フラグ等を参照して、当該ゲームのゲームの種別を特定し、その結果に基づいてテーブルを選択する。なお、ゲームの種別を示すフラグは、後述するステップS170、S173、S187、S198等によってセットされる。」
(オ)「【0093】
次に、CPU31は、ステップS14で設定した賞群抽選テーブルTBL1を用いて内部抽選処理を実行する(ステップS15)。即ち、ゲームの種別に応じて賞群抽選テーブルTBL1の種類も変わる。この後、CPU31は、ゲームの種別を示すフラグ(管理情報)に基づいて、通常ゲーム中、BBゲーム中、CBゲーム中、RBゲーム中、及びFBゲーム中を判定する(ステップS16)。通常ゲーム、BBゲームまたはCBゲームであると判定された場合には、CPU31は処理をステップS17に進め、当選フラグのセット処理を実行する。当選フラグのセット処理の内容を示す。具体的には、図7を参照して説明したように、第1に、CPU31は、スタートレバーセンサ43の検出信号がアクティブとなったタイミングで、カウントデータCDをサンプリングしてサンプリングデータSDを取得する。第2に、CPU31は、賞群抽選テーブルを参照して、当選フラグをセットする。なお、BBゲームまたはCBゲームは、RB賞またはFB賞の当選確率が通常ゲームと相違するが、採用される賞の種類は通常ゲームと同じである。従って、当選フラグのセット処理については通常ゲームとBBゲーム及びCBゲームとで一緒である。
【0094】
図11に通常ゲーム、BBゲームまたはCBゲームにおける当選フラグのセット処理の内容を示す。CPU31は、BB当選か否かを判定し(ステップS50)、当選していればBB当選フラグをセットし(ステップS51)、BB賞に不当選であれば処理をステップS52に進める。次に、CPU31は、CB当選か否かを判定し(ステップS52)、当選していればCB当選フラグをセットし(ステップS53)、CB賞に不当選であれば処理をステップS54に進める。次に、CPU31は、単独RB当選か否かを判定し(ステップS54)、当選していれば単独RB当選フラグをセットし(ステップS55)、単独RB賞に不当選であれば処理をステップS56に進める。次に、CPU31は、BB中RB当選か否かを判定し(ステップS56)、当選していればBB中RB当選フラグをセットし(ステップS57)、BB中RBに不当選であれば処理をステップS58に進める。次に、CPU31は、単独FB当選か否かを判定し(ステップS58)、当選していれば単独FB当選フラグをセットし(ステップS59)、単独FB賞に不当選であれば処理をステップS60に進める。次に、CPU31は、CB中FB当選か否かを判定し(ステップS60)、当選していればCB中FB当選フラグをセットし(ステップS61)、CB中FBに不当選であれば処理をステップS62に進める。次に、CPU31は、ベル当選か否かを判定し(ステップS62)、当選していればベル当選フラグをセットし(ステップS63)、ベル賞に不当選であれば処理をステップS64に進める。次に、CPU31は、スイカ当選か否かを判定し(ステップS64)、当選していればスイカ当選フラグをセットし(ステップS65)、スイカ賞に不当選であれば処理をステップS65に進める。次に、CPU31は、チェリー当選か否かを判定し(ステップS66)、当選していればチェリー当選フラグをセットし(ステップS67)、チェリー賞に不当選であれば処理をステップS68に進める。次に、CPU31は、リプレイ当選か否かを判定し(ステップS68)、当選していればリプレイ当選フラグをセットする(ステップS69)。
【0095】
次に、図9に示すステップS16において、RBゲーム中と判定された場合には、CPU31は、処理をステップS18に進めて、当選フラグセット処理を実行する。具体的には、CPU31は、図12に示すようにJAC当選か否かを判定し、JAC賞に当選している場合には、JAC当選フラグをセットする一方、JAC賞に不当選の場合には、JAC当選フラグをセットすることなく処理を終了する。
【0096】
次に、図9に示すステップS16において、FBゲーム中と判定された場合には、CPU31は、処理をステップS19に進めて、当選フラグセット処理を実行する。内部抽選が上述した第1態様である場合、CPU31は、図13に示すように当選か否かを判定し(ステップS81)、当選している場合には、FB小役フラグをセットする(ステップS82)一方、ハズレの場合にはFB小役フラグをセットすることなく処理を終了する。即ち、内部抽選において、当選かハズレかのみを抽選する点で、各賞群の別まで抽選する通常ゲームやCBゲームと異なる。」
(カ)「【0099】
次に、図9に示すステップS20においては、ステップS17でセットされた通常ゲーム、BBゲームまたはCBゲームの当選フラグに基づいてリール停止データ群の選択処理が実行される。図16に通常ゲーム、BBゲームまたはCBゲームにおけるリール停止データ群選択の処理内容を示す。CPU31は、内部抽選データISDの当選フラグを参照して、リプレイ当選フラグ、スイカ当選フラグ、ベル当選フラグ、チェリー当選フラグ、BB当選フラグ、CB当選フラグ、単独RB当選フラグ、及びBB中RB当選フラグがセットされているか否かを順次判定する(ステップS90?ステップS97)。そして、CPU31は、リプレイ当選フラグがセットされていればリプレイ用停止データ群を選択し(ステップS98)、スイカ当選フラグが選択されていればスイカ用停止データ群を選択し(ステップS99)、ベル当選フラグがセットされていればベル用停止データ群を選択し(ステップS100)、チェリー当選フラグがセットされていればチェリー用停止データ群を選択し(ステップS101)、BB当選フラグがセットされていればBB用停止データ群を選択し(ステップS102)、CB当選フラグがセットされていればCB用停止データ群を選択し(ステップS103)、単独RB当選フラグがセットされていれば単独RB用停止データ群を選択し(ステップS104)、BB中RB当選フラグがセットされていればBB中RB用停止データ群を選択する(ステップS105)。
【0100】
次に、図9に示すステップS21においては、ステップS18でセットされたRBゲームの当選フラグに基づいてリール停止データ群の選択処理が実行される。図17にRBゲームにおけるリール停止データ群選択の処理内容を示す。CPU31は、内部抽選データISDの当選フラグを参照して、JAC当選フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS110)。そして、CPU31は、JAC当選フラグがセットされていればJAC用停止データ群を選択し(ステップS111)、JAC当選フラグがセットされていなければ非入賞用停止データを選択する(ステップS112)。ここで、JAC用停止データ群は、図18に示すようにプラム図柄を中央の入賞ラインL1に引き込めるように設定されている。より具体的には、CPU31が、停止操作信号44a?46aを検知したタイミングにおいて、プラム図柄が入賞ラインL1から所定の移動図柄数の範囲内にある場合にプラム図柄を入賞ラインL1上に引き込んで停止させるようにリールR1?R3が制御される。JACゲームは、1枚賭けのみが許容されるから入賞ラインL1は有効化された入賞ラインとなる。また、この例において移動図柄数は「4」に設定されている。従って、0コマから4コマの範囲にあるプラム図柄が入賞ラインL1に引き込まれることになる。
【0101】
次に、図9に示すステップS22においては、ステップS19でセットされたFBゲームの当選フラグに基づいてリール停止データ群の選択処理が実行される。図19にFBゲームにおけるリール停止データ群選択の処理内容を示す。CPU31は、内部抽選データISDの当選フラグを参照して、FB賞の当選フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS115)。そして、CPU31は、FB当選フラグがセットされていればFB用停止データ群を選択し(ステップS116)、FB当選フラグがセットされていなければ小役用停止データを選択する(ステップS117)。ここで、FB用停止データ群は、図20に示すようにプラム図柄を有効化された入賞ラインに引き込めるように設定されている。より具体的には、CPU31が、停止操作信号44a?46aを検知したタイミングにおいて、プラム図柄が有効化された入賞ラインから所定の移動図柄数の範囲内にある場合にプラム図柄を有効化された入賞ライン上に引き込んで停止させるようにリールR1?R3が制御される。また、ステップS117で選択される小役用停止データ群は、第3停止においてプラム図柄を有効化された入賞ラインに停止させないように設定されている。」
(キ)「【0111】
次に、CPU31は、2回目のボタン停止操作があったか否かを、停止操作信号44a?46aに基づいて判定し(ステップ128)、2回目のボタン停止操作があると、停止ボタン番号の取得(ステップS129)、図柄番号の取得(ステップS130)、ステップS124で特定した停止テーブルの組み合わせから当該リールの第2停止に対応した停止テーブルを決定し(ステップS131)、進みコマ数の取得(ステップS132)、及びリール停止(ステップS133)を実行する。この後、CPU31は、3回目のボタン停止操作があったか否かを、停止操作信号44a?46aに基づいて判定し(ステップS134)、3回目のボタン停止操作があると、停止ボタン番号の取得(ステップS135)、図柄番号の取得(ステップS136)、ステップS124で特定した停止テーブルの組み合わせから当該リールの第3停止に対応した停止テーブルを決定し(ステップS137)、進みコマ数の取得(ステップS138)、及びリール停止(ステップS139)を実行する。以上説明したようにCPU31は、ゲームの種別、内部抽選の結果、及びリールストップボタンの停止操作の順序に応じて複数の停止テーブル中から停止制御に用いる停止テーブルを選択する。
【0112】
図22にプラム図柄を中央の入賞ラインL1に停止させる停止テーブルの組みを示す。例えば、左リールにおいて、取得した図柄番号PNが「18」であったとすると、対応する進みコマ数は「1」であるから、チェリー図柄から1コマずれてプラム図柄が入賞ラインL1上に停止することになる。FBゲームにおいては、第1停止と第2停止において、プラム図柄を引き込む停止テーブルを選択し、第3停止においては、CPU31は停止操作信号を検知したタイミングで有効化された入賞ラインに最も近い図柄を停止させる。ここで、プレイヤーが最後の停止操作で右リールストップボタン7cを操作したとすると、CPU31は、例えば、図23に示す停止テーブルAを参照して右リールR3を停止させる。
【0113】
この場合、停止テーブルAに記憶されている進みコマ数は、全て「0」であるから、有効化された入賞ラインに最も近い図柄が当該入賞ライン上に停止する。上述したようにFBゲームにおいては、小役賞としてFBベル役、FBスイカ役、FBチェリー役を採用するので、図23中太枠のタイミングでリールストップボタン7cが押し下げられると、小役賞に入賞する。FBゲーム中のベル賞、スイカ賞、及びチェリー賞の配当は図24に示すように異ならせてもよい。この場合には、配当の多い図柄を狙ってプレイヤーはリールストップボタンを操作するので、プレイヤーのスキルに応じた配当を付与することが可能となる。なお、右リールR3に割り当てられた図柄の数が少ないほど、配当を多くするように設定してもよい。この場合には、FBゲームで得られる配当数にプレイヤーのスキルをより一層反映させることが可能となる。
【0114】
また、FBゲームにおいて、CPU31がFB賞の抽選を実行する場合には、停止テーブルAを用いても良いし、あるいは停止テーブルBを用いても良い。停止テーブルAを用いる場合には、第3停止の最大引き込み数は「0」であり、所謂ビタ止まりの停止制御がなされる。一方、停止テーブルBは、リールストップボタン7cが操作されたタイミングにおいて、図柄番号PNが「18」、「14」「9」、「5」、及び「1」の場合に右リールR1を1コマ進ませてプラム図柄を有効化された入賞ラインL1に停止させるように進みコマ数が記憶されている。従って、網掛けの部分については、プラム図柄を停止させることができ、最大引き込み数は「1」である。第1停止及び第2停止の最大引き込み数は「4」であるから、第3停止の最大引き込み数は、第1停止及び第2停止と比較して小さく設定されている。即ち、FBゲームでは、CPU31が停止操作信号を検知したタイミングにおいて、CPU31は、プラム図柄が有効化された入賞ラインから所定移動図柄数(4コマ)の範囲内にある場合に、プラム図柄を有効化された入賞ライン上に引き込んで停止させるように第1停止及び第2停止に係わるリールを制御すると共に、停止操作信号を検知したタイミングにおいて有効化された入賞ラインから所定移動図柄数(4コマ)より少ない移動図柄数(1コマ又は0コマ)だけ離れている図柄を有効化された入賞ライン上に停止させるように第3停止に係わるリールを制御する。
【0115】
FBゲームの内部抽選が上述した第1の態様である場合には、FB賞に当選するか否かの抽選を実行しているが、ベル賞、スイカ賞、及びチェリー賞等の小役賞の別については抽選していない。この場合、抽選でFB賞に当選すれば、第1停止及び第2停止において、プラム図柄を有効化された入賞ラインに停止することを許容する一方、FB賞に不当選であれば、第1停止と第2停止のうち少なくとも一方の停止制御でプラム図柄を有効化された入賞ラインに停止させないようにリールを制御する(蹴り飛ばし制御)。例えば、第1停止に係わるリールが左リールR1である場合には、CPU31は図26に示すように有効化された入賞ライン(この例ではL1)からプラム図柄を蹴り飛ばす停止テーブルを選択する。そして、第3停止においては、プラム図柄を有効化された入賞ラインに停止す
ることを許容する。但し、プラム図柄の最大引き込み数は、「0」(停止テーブルA)又は「1」(停止テーブルB)であるから、プレイヤーが所定のタイミングでリールストップボタンを操作しない限り、FB賞に不当選となる。しかしながら、FB賞に不当選であっても、ベル賞、スイカ賞、及びチェリー賞等の小役賞にFBベル役、FBスイカ役、FBチェリー役を採用するから、スキルの低いプレイヤーであってもメダルの払い出しを受けることができる。しかも、第1停止及び第2停止の時点では、プラム図柄が引き込まれるので、最後の停止操作を行うまで、プレイヤーはどの賞に入賞するかが分からない。これにより、FBゲームの趣向性を向上させることができる。」
(ク)「【0118】
次に、図27を参照して上述した通常ゲーム、BBゲームまたはCBゲームの入賞判定処理について説明する。当該処理においては、停止した各リールの各有効ライン上の図柄と各賞に割り当てられた役の図柄の組み合わせとを比較することによりスイカ賞、ベル賞、チェリー賞に入賞したか否かを順次判定し(ステップS140?S141)、入賞図柄組合せテーブルTBL3を参照して入賞した賞に対応した数のメダルの払い出しを行うよう各部の制御を行う(ステップS143?S145)。
【0119】
次に、CPU31は、単独RB入賞か否かを判定し(ステップS146)、単独RB入賞であれば、メダルの払い出しを実行し(ステップS147)、さらにRBゲーム開始処理を実行する(ステップS148)。図28にRB開始処理の処理内容を示す。この処理において、CPU31はRBゲーム中フラグをセットし(ステップS171)、JAC入賞回数を設定する。例えば、8回である。次に、CPU31はJACゲーム回数を設定する。例えば、12回である。
【0120】
図27のステップS146において判定条件が否定された場合には、CPU31は処理をステップS149に進め、BB中RB入賞か否かを判定する。具体的には、BBゲーム中フラグがセットされており、且つ、RB当選フラグがセットされている場合に判定条件が肯定され、それ以外は判定条件が否定される。判定条件が肯定された場合には、CPU31は、RB賞に割り当てられたメダルを払い出し(ステップS147)、RB開始処理を実行する(ステップS151)。ステップS151におけるRB開始処理はステップS148のそれと同様であるので、説明を省略する。
【0121】
一方、ステップS149の判定条件が否定された場合には、CPU31は処理をステップS155に進め、単独FB入賞か否かを判定する。具体的には、CBゲーム中フラグがクリアされており、且つ、FB当選フラグがセットされている場合に判定条件が肯定され、それ以外は判定条件が否定される。判定条件が肯定された場合には、CPU31は、FB賞に割り当てられたメダルを払い出し(ステップS153)、FBゲーム開始処理を実行する。図29にFB開始処理の処理内容を示す。この処理において、CPU31はFBゲーム中フラグをセットし(ステップS173)、FBゲーム回数を「1」に設定する(ステップS174)。
【0122】
単独FB入賞でない場合には、ステップS152の判定条件は否定され、CPU31は処理をステップS155に進め、CB中FB入賞か否かを判定する(ステップS155)。具体的には、CBゲーム中フラグがセットされており、且つ、FB当選フラグがセットされている場合に判定条件が肯定され、それ以外は判定条件が否定される。判定条件が肯定された場合には、CPU31は、FB賞に割り当てられたメダルを払い出し(ステップS156)、FBゲーム開始処理を実行する(ステップS157)。ステップS151におけるRB開始処理はステップS148のそれと同様であるので、説明を省略する。」
(ケ)「【0135】
FB賞に入賞していなければ、CPU31はFB用の小役賞に入賞したか否かを判定する(ステップS222)。FB用の小役賞とは、FBゲームにおいて採用される小役賞のことであり、FBベル役、FBスイカ役、及びFBチェリー役等が該当する。FB用の小役賞に入賞した場合には、CPU31は入賞した賞に応じた枚数のメダルを払い出す(ステップS223)。メダル払出処理が終了するか、あるいは、FB用の小役賞に入賞しないでステップS222の判定条件が否定された場合、CPU31はFBゲーム中か否かをFBゲーム中フラグを参照して判定し(ステップS224)、FBゲーム中であればFBゲーム終了判定処理を実行する(ステップS225)。図37にFBゲーム終了判定処理のフローチャートを示す。この図に示すようにFBゲーム終了判定処理では、FBゲーム回数を「1」だけ減算し(ステップS230)、残りのFBゲーム回数が「0」であるか否かを判定する(ステップS231)。FBゲーム回数が「0」であれば、CPU31はFBゲーム中フラグをクリアする(ステップS232)。上述したようにFBゲーム回数は1回に設定されているので、原則としてFBゲームが継続することはない。但し、FBゲーム中にFB賞の抽選を実行する場合には、FBゲームで再度FB賞に入賞することになる。従って、FBゲームが見かけ上継続する。最もFBゲームの単位は1ゲームであることに変わりがなく、連続してFB賞に入賞したに過ぎない。」
(コ)「【0166】
次に、FBゲームの終了判定処理について図52を参照して説明する。CPU31は、ステップS230?S231に従ってFBゲームが所定回数に達すると(この例では1回)、FBゲーム中フラグをクリアし(ステップS232)、CBゲーム中であるか否かを判定し(ステップS233)、CBゲーム中であればFBゲーム中フラグをセットし(ステップS234)、FBゲーム回数(例えば1回)を設定し(ステップS235)、FBゲーム終了判定処理を終了する。つまり、CPU31は、CBゲーム中に一のFBゲームが終了すると、このFBゲームに連続するように、次のFBゲームを開始させる。一方、CBゲーム中でない場合は、CPU31は、ステップS234からステップS235までの処理を省略して、FBゲーム終了判定処理を終了する。なお、ステップS233でCBゲーム中と判定される場合とは、通常ゲーム中に開始されたFBゲームではなく、CBゲーム中に開始されたFBゲームであって、当ゲームでFBゲーム回数の終了条件を充足して1回のFBゲームが終了したゲームのときで、前述したステップS232でFBゲーム中フラグをクリアしたゲームのことである。したがって、当ゲームでは、ステップS232で一旦FBゲーム中フラグをクリアし、ステップS234で再びFBゲーム中フラグをセットする。ストッロマシン1では、外部に接続するホールコンピュータに対してこのFBゲーム中フラグやCBゲーム中フラグに同期したゲーム種別信号を出力しているため、FBゲームの区切りが明確になるよう、このようなフラグの処理を行う。
【0167】
(7)上述した各実施形態及び変形例において、図53に示すようにBBゲームBBゲームではその開始から終了まで複数のRBゲーム(特別ゲーム期間)を連続して実行してもよい。また、図54に示すようにCB中ゲームも同様にその開始から終了まで複数のFBゲーム(特別ゲーム期間)を連続して実行してもよい。」

以上、上記(ア)ないし(コ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「各リールR1?R3の表面(表示窓4a?4cから視認可能な面)には各種の図柄が印刷され、プレイヤーがスタートレバー6を押し下げると、リールR1、R2、R3が一斉に回転を開始し、表示窓4a、4b、4c内の図柄が可変表示となるものであり、
CPU31は、スタートレバーセンサ43の検出信号がアクティブとなったタイミングで、カウントデータCDをサンプリングしてサンプリングデータSDを取得し、賞群抽選テーブル群TBL1の中から、通常ゲーム、RBゲーム、BBゲーム、CBゲーム、及びFBゲームといった遊技状態(ゲームの種類)に応じたテーブルを選択し、
賞群抽選テーブルを参照して、
通常ゲーム、BBゲームまたはCBゲームであると判定された場合には、BB当選か否か、CB当選か否か、単独RB当選か否か、BB中RB当選か否か、単独FB当選か否か、CB中FB当選か否か、ベル当選か否か、スイカ当選か否か、チェリー当選か否か、リプレイ当選か否か、を判定して、当選していれば当選フラグをセットし、
RBゲーム中と判定された場合には、JAC当選か否かを判定し、JAC賞に当選している場合には、JAC当選フラグをセットし、
FBゲーム中と判定された場合には、当選か否かを判定し、当選している場合には、FB小役フラグをセットし、
当選フラグを参照して、停止データ群を選択し、
プレイヤーは左・中・右リールストップボタン7a、7b、7cを操作し、
ゲームの種別、内部抽選の結果、及びリールストップボタンの停止操作の順序に応じて複数の停止テーブル中から停止制御に用いる停止テーブルを選択して、進みコマ数の取得、及びリール停止を実行し、
停止した各リールの各有効ライン上の図柄と各賞に割り当てられた役の図柄の組み合わせとを比較することにより入賞したか否か判定し、入賞した賞に対応した数のメダルの払い出しを行うよう各部の制御を行うスロットマシン1であって、
FBゲームの開始賞はFB賞で、FBゲームにおいて小役賞の別については抽選していなく、FBゲーム中と判定された場合には、CPU31は、当選か否かを判定し(ステップS81)、当選している場合には、FB小役フラグをセットし(ステップS82)、所定のタイミングでリールストップボタンが押し下げられると、小役賞としてFBベル役、FBスイカ役、FBチェリー役に入賞するものであり、
CBゲームの開始賞はCB賞で、CB中ゲームは開始から終了まで複数のFBゲーム(特別ゲーム期間)を連続して実行するものであり、
CBゲーム中のFBゲームにおいて、当選している場合には、FBベル役、FBスイカ役、及びFBチェリー役のFB用の小役賞に入賞したか否かを判定し(ステップS222)、FB用の小役賞に入賞した場合には、入賞した賞に応じた枚数のメダルを払い出し(ステップS223)、メダル払出処理が終了するか、あるいは、FB用の小役賞に入賞しないでFB用の小役賞に入賞したか否かの判定条件が否定された場合(ステップS222)、FBゲーム中か否かをFBゲーム中フラグを参照して判定し(ステップS224)、FBゲーム中であればFBゲーム終了判定処理を実行し(ステップS225)、
FBゲーム終了判定処理では、FBゲーム回数を「1」だけ減算し(ステップS230)、残りのFBゲーム回数が「0」であるか否かを判定し(ステップS231)、FBゲームが所定回数に達すると(この例では1回)、一旦FBゲーム中フラグをクリアし(ステップS232)、CBゲーム中であるか否かを判定し(ステップS233)、CBゲーム中であれば再びFBゲーム中フラグをセットし(ステップS234)、FBゲーム回数(例えば1回)を設定し(ステップS235)、FBゲーム終了判定処理を終了するものであり、
外部に接続するホールコンピュータに対してこのFBゲーム中フラグやCBゲーム中フラグに同期したゲーム種別信号を出力して、FBゲームの区切りが明確になるよう、フラグの処理を行う、スロットマシン1」の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

(4)対比
引用発明の「リールR1?R3」は本願補正発明の「表示装置」に相当する。以下同様に、
「プレイヤー」は「遊技者」に、
「ベル」、「スイカ」、「チェリー」、「JAC」、「FB小役」は「小役」に、
「BB」、「CB」、「RB」、「FB」、「リプレイ」、「ベル」、「スイカ」、「チェリー」、「JAC」、「FB小役」は「役」に、
「スロットマシン1」は「遊技機」に、
「FBゲーム」は「第1の状態」に、
「FB」は「第1の特別役」に、
「CBゲーム」は「第2の状態」に、
「CB」は「第2の特別役」に、
「メダル」は「遊技媒体」に、相当する。

さらに、引用例1の記載等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明のスロットマシン1は、各リールR1?R3の表面(表示窓4a?4cから視認可能な面)には各種の図柄が印刷され、プレイヤーがスタートレバー6を押し下げると、リールR1、R2、R3が一斉に回転を開始し、表示窓4a、4b、4c内の図柄が可変表示となるものであるから、
引用発明のスロットマシン1は本願補正発明の「図柄を表示可能な表示手段を有し」に相当する構成を実質的に具備しているといえる。

b.引用発明のスロットマシン1は、CPU31は、スタートレバーセンサ43の検出信号がアクティブとなったタイミングで、カウントデータCDをサンプリングしてサンプリングデータSDを取得し、賞群抽選テーブル群TBL1の中から、通常ゲーム、RBゲーム、BBゲーム、CBゲーム、及びFBゲームといった遊技状態(ゲームの種類)に応じたテーブルを選択し、
賞群抽選テーブルを参照して、
通常ゲーム、BBゲームまたはCBゲームであると判定された場合には、BB当選か否か、CB当選か否か、単独RB当選か否か、BB中RB当選か否か、単独FB当選か否か、CB中FB当選か否か、ベル当選か否か、スイカ当選か否か、チェリー当選か否か、リプレイ当選か否か、を判定して、当選していれば当選フラグをセットし、
RBゲーム中と判定された場合には、JAC当選か否かを判定し、JAC賞に当選している場合には、JAC当選フラグをセットし、
FBゲーム中と判定された場合には、当選か否かを判定し、当選している場合には、FB小役フラグをセットし、
当選フラグを参照して、停止データ群を選択し、
プレイヤーは左・中・右リールストップボタン7a、7b、7cを操作し、
ゲームの種別、内部抽選の結果、及びリールストップボタンの停止操作の順序に応じて複数の停止テーブル中から停止制御に用いる停止テーブルを選択して、進みコマ数の取得、及びリール停止を実行し、
停止した各リールの各有効ライン上の図柄と各賞に割り当てられた役の図柄の組み合わせとを比較することにより入賞したか否か判定し、入賞した賞に対応した数のメダルの払い出しを行うよう各部の制御を行うスロットマシン1であり、
当選フラグを参照して選択する停止データ群の停止テーブルを用いて制御する時、当選していない役の図柄組み合わせを揃えないことは、スロットマシンの技術分野の技術常識を考慮すると当然のことであるから、
引用発明のスロットマシン1は本願補正発明の「遊技者の始動開始操作に基づいて複数種の小役を含む役の抽選を行い、当該抽選により当選した役に対応する図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に、前記当選した役を入賞とする遊技機であって」に相当する構成を実質的に具備しているといえる。

c.引用発明のスロットマシン1は、FBゲームの開始賞はFB賞で、FBゲームにおいて小役賞の別については抽選していなく、FBゲーム中と判定された場合には、CPU31は、当選か否かを判定し(ステップS81)、当選している場合には、FB小役フラグをセットし(ステップS82)、所定のタイミングでリールストップボタンが押し下げられると、小役賞としてFBベル役、FBスイカ役、FBチェリー役に入賞するものであり、
CBゲームの開始賞はCB賞で、CB中ゲームは開始から終了まで複数のFBゲーム(特別ゲーム期間)を連続して実行するものであり、
リール制御を実行した後入賞したか否か判定するから、
引用発明のスロットマシン1は本願補正発明の「前記役には、当該遊技において前記複数種の小役のいずれの役に対応する図柄も前記表示手段に停止表示させることが可能な第1の状態を制御し、前記複数種の小役のうちのいずれかの図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に当該小役を入賞とする第1の特別役と、入賞することにより、次回以降の遊技状態を第2の状態に変化させ、この第2の状態による遊技の間に前記第1の特別役を複数回成立させて前記第1の状態による遊技を複数可能とする第2の特別役とを備え」に相当する構成を実質的に具備しているといえる。

d.引用発明のスロットマシン1は、CBゲーム中のFBゲームにおいて、当選している場合には、FBベル役、FBスイカ役、及びFBチェリー役のFB用の小役賞に入賞したか否かを判定し(ステップS222)、FB用の小役賞に入賞した場合には、入賞した賞に応じた枚数のメダルを払い出し(ステップS223)、メダル払出処理が終了するか、あるいは、FB用の小役賞に入賞しないでFB用の小役賞に入賞したか否かの判定条件が否定された場合(ステップS222)、FBゲーム中か否かをFBゲーム中フラグを参照して判定し(ステップS224)、FBゲーム中であればFBゲーム終了判定処理を実行し(ステップS225)、
FBゲーム終了判定処理では、FBゲーム回数を「1」だけ減算し(ステップS230)、残りのFBゲーム回数が「0」であるか否かを判定し(ステップS231)、FBゲームが所定回数に達すると(この例では1回)、一旦FBゲーム中フラグをクリアし(ステップS232)、CBゲーム中であるか否かを判定し(ステップS233)、CBゲーム中であれば再びFBゲーム中フラグをセットし(ステップS234)、FBゲーム回数(例えば1回)を設定し(ステップS235)、FBゲーム終了判定処理を終了するものであり、
外部に接続するホールコンピュータに対してこのFBゲーム中フラグやCBゲーム中フラグに同期したゲーム種別信号を出力して、FBゲームの区切りが明確になるよう、フラグの処理を行うものであり、
リール制御を実行した後入賞したか否か判定するものであり、
次回の遊技の始動開始操作はFBゲーム回数を設定した後行うことは明らかであり、
FBゲーム中フラグをクリアする制御は、FBゲームを停止させる制御であるといえると共に、
一旦FBゲーム中フラグをクリアした後、再びFBゲーム中フラグをセットする制御は、FBゲームを再起動させる制御であるといえ、
ホールコンピュータ側がゲーム種別信号を検知してFBゲーム中フラグがクリアされたこと、セットされたこと、を検知していることは明らかであるから、
引用発明のスロットマシン1は本願補正発明の「前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で、前記表示手段に図柄が停止表示された後、遊技媒体の払出が行われる場合には、その遊技媒体の払出が終わった後で、かつ、次回の遊技の始動開始操作までの間に前記第1の状態を再起動させる再起動手段を有し」に相当する構成を実質的に具備しているといえると共に、
引用発明は、本願補正発明と「前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で前記表示手段に図柄が停止表示された後、次回の遊技が始まるまでの間に前記再起動手段が第1の状態を再起動させ」、「第1の状態の停止と再起動を検知するための検知手段」を有している点で共通しているといえる。

以上のことから、引用発明と本願補正発明は、
<一致点>
「図柄を表示可能な表示手段を有し、遊技者の始動開始操作に基づいて複数種の小役を含む役の抽選を行い、当該抽選により当選した役に対応する図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に、前記当選した役を入賞とする遊技機であって、
前記役には、当該遊技において前記複数種の小役のいずれの役に対応する図柄も前記表示手段に停止表示させることが可能な第1の状態を制御し、前記複数種の小役のうちのいずれかの図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に当該小役を入賞とする第1の特別役と、入賞することにより、次回以降の遊技状態を第2の状態に変化させ、この第2の状態による遊技の間に前記第1の特別役を複数回成立させて前記第1の状態による遊技を複数可能とする第2の特別役とを備え、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で、前記表示手段に図柄が停止表示された後、遊技媒体の払出が行われる場合には、その遊技媒体の払出が終わった後で、かつ、次回の遊技の始動開始操作までの間に前記第1の状態を再起動させる再起動手段を有し、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で前記表示手段に図柄が停止表示された後、次回の遊技が始まるまでの間に前記再起動手段が第1の状態を再起動させ、前記第1の状態の停止と再起動を検知するための検知手段を有する遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明は、「前記再起動手段が第1の状態を再起動させるまでの時間は、少なくとも前記第1の状態の停止と再起動を検知するための検知手段が検知可能で、かつ、10msec以下の時間間隔を保つ」ものであるのに対して、
引用発明は、このような構成か不明である点。

(5)判断
<相違点1>について
引用発明において、FBゲーム中フラグをクリアし、再びセットする処理を行うのは、上記記載事項(コ)によると、FBゲームの区切りを明確にし、ゲーム種別信号を区別するためである。そして、このものにおいて、種別信号の区切りを明確にするために、その間隔をどのような時間とするかは、ホールコンピュータの信号分解能力、CPUの処理速度等を考慮して当業者が適宜決定し得るものである。
また、一旦FBゲーム中フラグをクリアした後、再びFBゲーム中フラグをセットするまでの時間をどのようにするかは、設計的事項にすぎず、
遊技機の技術分野において、検知手段が10msec以下の時間間隔の信号を検知可能とすることは、特開平11-464号公報(段落【0040】?【0042】、図3(b)等参照。)、特開2002-18025号公報(1msec以上連続して信号を検出した場合、入力信号を確定する点が記載されているから、1msec以上連続した信号であれば検出可能な点が記載されているといえる。段落【0038】、【0072】等参照。)にも記載されているように周知(以下、「周知技術」という。)であるから、
一旦FBゲーム中フラグをクリアした後、再びFBゲーム中フラグをセットするまでの時間を10msec以下にして上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)本件補正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成24年1月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成23年3月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。

そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項1】
図柄を表示可能な表示手段を有し、遊技者の始動開始操作に基づいて複数種の小役を含む役の抽選を行い、当該抽選により当選した役に対応する図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に、前記当選した役を入賞とする遊技機であって、
前記役には、当該遊技において前記複数種の小役のいずれの役に対応する図柄も前記表示手段に停止表示させることが可能な第1の状態を制御し、前記複数種の小役のうちのいずれかの図柄が遊技者の停止操作に基づいて前記表示手段に停止表示された場合に当該小役を入賞とする第1の特別役と、入賞することにより、次回以降の遊技状態を第2の状態に変化させ、この第2の状態による遊技の間に前記第1の特別役を複数回成立させて前記第1の状態による遊技を複数可能とする第2の特別役とを備え、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で、前記表示手段に図柄が停止表示された後、遊技媒体の払出が行われる場合には、その遊技媒体の払出が終わった後で、かつ、次回の遊技の始動開始操作までの間に前記第1の状態を再起動させる再起動手段を有し、
前記第2の状態における前記第1の状態による遊技で前記表示手段に図柄が停止表示された後、次回の遊技が始まるまでの間に前記再起動手段が第1の状態を再起動させるまでの時間は、少なくとも前記第1の状態の停止と再起動を検知するための検知手段が検知可能で、かつ、約150msec以下の時間間隔を保つことを特徴とする遊技機。」(以下、この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-205185号公報(引用例1)に記載された発明は、前記2.(3)に記載したとおりである。

(2)対比
本願発明は、前記2.(2)で検討した本願補正発明における「再起動手段が第1の状態を再起動させるまでの時間」について、「10msec以下」という記載を、「10msec以下」を含む「約150msec以下」としたものである。

そうすると、本願発明と引用発明との相違点は、前記2.(4)に記載した<相違点1>を以下の<相違点A>に変更したものとなる。

<相違点A>
本願補正発明は、「前記再起動手段が第1の状態を再起動させるまでの時間は、少なくとも前記第1の状態の停止と再起動を検知するための検知手段が検知可能で、かつ、約150msec以下の時間間隔を保つ」ものであるのに対して、
引用発明は、このような構成か不明である点。

(3)判断
<相違点A>について
引用発明において、FBゲーム中フラグをクリアし、再びセットする処理を行うのは、前記2.(3)の記載事項(コ)によると、FBゲームの区切りを明確にし、ゲーム種別信号を区別するためである。そして、このものにおいて、種別信号の区切りを明確にするために、その間隔をどのような時間とするかは、ホールコンピュータの信号分解能力、CPUの処理速度等を考慮して当業者が適宜決定し得るものである。
また、一旦FBゲーム中フラグをクリアした後、再びFBゲーム中フラグをセットするまでの時間をどのようにするかは、設計的事項にすぎない。
遊技機の技術分野において、検知手段が10msec以下の時間間隔の信号を検知可能とすることは、前記2.(5)の「<相違点1>について」でも検討しているように周知であるから、検知手段が約150msec以下の時間間隔の信号を検知可能とすることは、例示するまでもない周知慣用技術である。
一旦FBゲーム中フラグをクリアした後、再びFBゲーム中フラグをセットするまでの時間を約150msec以下にして上記相違点Aに係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。

そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-01 
結審通知日 2012-11-06 
審決日 2012-11-20 
出願番号 特願2008-195937(P2008-195937)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明太田 恒明  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 瀬津 太朗
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  

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