• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B08B
審判 一部無効 4項(134条6項)独立特許用件  B08B
審判 一部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B08B
管理番号 1268580
審判番号 無効2012-800043  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-04-02 
確定日 2012-12-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4652459号発明「ロール及び洗浄装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.本件特許第4652459号の請求項1ないし6に係る発明についての出願は、平成21年3月16日に出願され、平成22年12月24日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
2.これに対して、請求人は、平成24年4月3日(受付)に本件無効審判を請求し、本件特許の請求項1に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求めた。
3.その後、被請求人は、平成24年6月21日付けで答弁書を提出するとともに、訂正請求書(同年8月3日付け手続補正書(方式))を提出して訂正を求めた。
4.そして、当審より請求人に訂正請求書を送付するとともに請求人及び被請求人に平成24年8月21日付けで審尋を通知した。
5.これに対して、被請求人より平成24年9月7日付けで回答書が提出され、請求人からの回答書は提出されなかった。

第2 訂正の可否
1.訂正の内容
平成24年6月21日付けの訂正請求は、本件特許発明の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおりに一群の請求項ごとに訂正しようとするものであって、訂正の内容は以下の訂正事項1ないし12のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とを有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置することを特徴とするロール。」を、
「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bに傾斜面を有する徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とを有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、該流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、前記孔部が前記本体部に開設されている領域に形成されてあり、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置することを特徴とするロール。」と訂正する。
(2)訂正事項2
請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
請求項3の「請求項1又は2」を「請求項1」と訂正する。
(4)訂正事項4
請求項5の「請求項1から4のいずれか1項」を「請求項1、3、4のいずれか1項」と訂正する。
(5)訂正事項5
請求項6の「請求項1から5のいずれか1項」を「請求項1又は3から5のいずれか1項」と訂正する。
(6)訂正事項6
段落【0010】の「前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールは、…(中略)… 、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、…(中略)… 、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置するもので、…(中略)… 、高い耐久性を保持することができる。」を、
「前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールは、…(中略)… 、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bに傾斜面を有する徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、…(中略)…、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、該流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、前記孔部が前記本体部に開設されている領域に形成されてあり、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置するもので、…(中略)… 、高い耐久性を保持することができる。」と訂正する。
(7)訂正事項7
段落【0014】を削除する。
(8)訂正事項8
段落【0016】の「請求項3の発明のロールは、特に、請求項1又は2の」を「請求項3の発明のロールは、特に、請求項1の」と訂正する。
(9)訂正事項9
段落【0018】の「請求項5の発明のロールは、特に、請求項1から4のいずれか1項」を「請求項6の発明のロールは、特に、請求項1、3、4のいずれか1項」と訂正する。
(10)訂正事項10
段落【0019】の「請求項6の発明の洗浄装置は、請求項1から5のいずれか1項」を「請求項6の発明の洗浄装置は、請求項1又は3から5のいずれか1項」と訂正する。
(11)訂正事項11
段落【0020】の「請求項1の発明のロールは、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出すると共に、ロールの回転バランスが保持され、長期間に亘って、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。また、被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。」を、
「請求項1の発明のロールは、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出すると共に、ロールの回転バランスが保持され、長期間に亘って、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。また、被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。また、流体がロール部の両端部からロールの外部に流出するので、ロール部からの液体の吸引性能が大幅に向上する。」と訂正する。
(12)訂正事項12
段落【0021】を削除する。

2.訂正の適否に対する判断
(1)訂正の目的について
(1-1)訂正事項1、2について
訂正事項1は、請求項2の内容を請求項1に付加し、さらに限定して、訂正後の請求項1とするとともに、訂正事項2により、訂正前の請求項2を削除したものである。
そのため、実質的には、訂正後の請求項1に係る発明は、訂正前の請求項2に係る発明の「流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内に形成されてある」を「流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、前記孔部が前記本体部に開設されている領域に形成されてあり」と限定して、また、中空部を「配管を介して真空ポンプに連通される」と限定し、さらに、「前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように形成され」を「前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように前記継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに傾斜面を有する徐変部が形成され」と限定したものといえる。
したがって、訂正事項1、2は、訂正前の請求項1を削除し、訂正前の請求項2に係る発明をさらに減縮し、請求項番号を繰り上げて請求項1としたものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
なお、この点について、当審より審尋したところ、被請求人は、訂正請求は審判合議体の見解とおりのものである旨回答している。
(1-2)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項2を削除したことに伴い、請求項3が引用する請求項から請求項2を除外したものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-3)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項2を削除したことに伴い、請求項5が引用する請求項から請求項2を除外したものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-4)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項2を削除したことに伴い、請求項6が引用する請求項から請求項2を除外したものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-5)訂正事項6について
訂正事項6は、段落【0010】の記載を訂正事項1により訂正された請求項1の記載に整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-6)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項2において、請求項2を削除したことに伴い、これに整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-7)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正事項3により訂正された請求項3の記載に整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-8)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正事項4により訂正された請求項5の記載に整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-9)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正事項5により訂正された請求項6の記載に整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-10)訂正事項11について
訂正事項11は、段落【0020】の記載を訂正事項1により訂正された請求項1に係る発明が奏する効果に整合させるため、段落【0021】に記載されていた請求項2の発明の効果を付加するためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(1-11)訂正事項12について
訂正事項12は、訂正事項2において、請求項2を削除したことに伴い、これに整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(2)訂正事項1ないし12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)独立特許要件について
(1-1)で述べたように、本件訂正は、実質的に、本件特許無効審判の請求の対象とされていた訂正前の請求項1を削除し、本件特許無効審判の請求の対象とされていない訂正前の請求項2に係る発明をさらに減縮し、請求項番号を繰り上げて請求項1とし、請求項2を削除したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件特許無効審判の請求の対象とされていない請求項3ないし6に係る発明は、請求項1(訂正前の請求項2を減縮)に係る発明を直接的又は間接的に引用するものであり、本件訂正により、訂正後の請求項3ないし6についても、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされているものである。
そこで、本件特許無効審判の請求の対象とされていない、訂正後の請求項1、3ないし6に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第134条の2第9項の規定によって読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について検討する。

(3-1)本件特許発明
訂正後の本件特許の請求項1、3ないし6に係る発明(以下「本件特許発明1」、「本件特許発明3」ないし「本件特許発明6」という。)は、特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、3ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bに傾斜面を有する徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とを有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、該流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、前記孔部が前記本体部に開設されている領域に形成されてあり、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置することを特徴とするロール。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、補強部材の内周には切欠き部が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項3に記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片及び補強部材の有する切欠き部は内周の等分箇所に形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれか1項に記載の構成よりなるロールにおいて、本体部の外周にたいする孔部の開口面積の比率が、本体部の端部の近傍よりも略中央部の方が大にて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項6】
請求項1又は3から5のいずれか1項に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段と、継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに配管を介して連通される真空ポンプを有する洗浄装置。」

(3-2)甲各号証の記載内容
請求人の提出した甲第1号証から甲第4号証には、図面と共にそれぞれ次の事項が記載されている。(下線部は当審が付与。)

甲第1号証 :特開平7-120145号公報
甲第2号証 :特開2007-98374号公報
甲第3号証 :特開平8-178866号公報
甲第4号証 :特開平7-113577号公報

ア.甲第1号証
(ア)「【請求項2】軸部の軸方向に空洞部を開設すると共に、この軸部周面に前記空洞部と連通する多数の透孔を、ロール外径表面積に対し面積比0.3?1%程度開設してなる筒状の軸本体と、
この軸本体に繊維絡合体を成すディスク状の不織布シートを多数枚挿嵌し、前記真空ポンプの真空吸引力により前記軸本体の透孔に単位面積当たり吸引風量5?30l/min-cm^(2)が付与され真空を発生する圧縮比に前記不織布シートを圧縮し組織密度を制御し、圧着成形し構成した不織布ロール部と、
不織布ロール部外表面方向にほぼ倒円錐形状に有効な吸液・送液毛細管部を作用せしめ、かつ前記真空吸引力の一部が前記不織布ロールの放射方向表面に於いて重畳作用し、前記真空吸引力が当該不織布ロールの放射方向表面で均一に作用するように配置した前記透孔と、
この不織布ロール部の両端面に圧接され、且つ前記軸本体に嵌着される一対の側板と、
前記軸本体の両端に設けられ、かつ前記空洞部に連通する貫通孔を、少なくともその一方に貫設した一対の軸受け部と、
この軸受け部の貫通孔に配管を介して装備される真空ポンプとで構成される不織布ロールを利用する吸液方法に使用する吸液ロール装置。」(特許請求の範囲の請求項2)
(イ)「【0013】先ず、図4の例(A-B構成)では、不織布ロールA-B間に被処理物Cを挿入して、この被処理物Cにオイル、水、薬液等の塗膜(オイル膜で説明する)を形成する模式図である。」(段落【0013】)
(ウ)「【0015】次いで、図5の例(B-B構成)は、不織布ロールB-B間に被処理物Cを挿入して、この被処理物Cに付着叉はCが保持する(含有を含む)オイル等の流体(以下、流体とする)を不織布ロールB-B間において脱液する構成を示す模式図である。そして、この一例では、被処理物Cに付着叉は保持された流体を、真空ポンプを介して両不織布ロールB-B間で吸収除去する構成である。」(段落【0015】)
(エ)「【0016】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を参照しつつ説明する。図中1は両端に軸受部2、2aを有する筒状の軸本体で、この軸本体1にはその軸方向に向かって空洞部3が開設されており、かつその周面には前記空洞部3に連通する多数の透孔4が開設されている。また軸本体1の一方は開口5を成し、前記空洞部3に連通するとともに、軸受部2にその軸方向に開設された貫通孔6とも連通している。そして、この開口5は、一方の軸受部2の貫通孔及びホース(図示せず)を介して遠心式ポンプ、真空ポンプ等の送液、吸引手段(図示せず)に連通されている。尚、ポンプの一形式として、プランジャー式ポンプ機構を付設する場合を概説すると、プランジャーを空洞部3に嵌装し、少なくとも一方の軸受部2をプランジャー作動軸機構を収容可能な径とするとともに、空洞部3またはこれに連通する貫通孔6に、開閉弁、安全弁等の機構を設ける構造、もしくは開閉弁等の機能部品を含む配管系を接続する構造とする。
【0017】図中7は軸本体1の一端部に止着された側板、9は軸本体1の他端部に止着された側板であり、この両側板7、9間には後述するディスク状で、かつ適宜の密度を有する後述の不織布シートが、圧着状に重畳されている。
【0018】図中8は不織布シート素材(図示せず)を打ち抜き加工等して成形されたディスク状の不織布シートで、この不織布シート8を多数枚成形し、前記軸本体1の一端部に側板9を止着した後、この軸本体1にディスク状の不織布シート8を多数枚装嵌する。そしてプレス成形で圧着して、この多数枚の不織布シート8を圧着状に重畳した後、他端部に側板7を止着することにより不織布ロールが構成される。」(段落【0016】?【0018】)
(オ)「【0020】更に第3図の如く、空洞筒部11を設ける構造とするこもでき、この例では、軸本体1の不織布シート8の軸方向に直接空洞筒部10を設け、この空洞筒部10と前記各透孔4とを、それぞれ連接する構造とする。具体的には、軸本体1の軸部5の空洞筒部用の孔11を有する不織布シート8を圧着状に重畳し、前述の如く、圧着重畳された不織布ロールの軸部1に設けた透孔4に真空ポンプ(図示せず)の真空吸引力により単位面積当たり吸引風量5?30l/min-cm^(2)が付与され真空を発生する圧縮比に前記不織布シート8を圧縮し組織密度を制御し、圧着成形し構成し、かつ軸方向1の外周面に軸方向に向かって長くかつ各透孔4に連通する空洞筒部10を複数設ける。これによって、空洞筒部10により形成された液溜まりによる集液効果を有する送出(供給)用、吸引(吸収)用の不織布ロールA、Bが構成される。この流体溜まり室(空洞筒部10)を設けることにより、液のより均一かつ圧損等による損失の少ない効率的な集液が可能となり、本発明の送出、吸引効果の一層の向上が期待できる。」(段落【0020】)
(カ)「【0022】先ず、送出用、吸引用の不織布ロールA、Bの製造方法を説明する。具体的には、メタルシート洗浄プロセス用途に於けるロール例について、不織布ロールBの寸法が、ロール外径φ250mm、軸方向の有効長1,500mmとなるものについて述べる。…(中略)… また一方に側板9を有する軸本体1の軸部5は、直径がφ175mm、その肉圧が25mmの中空管とし、φ5mmの透孔4を65mm間隔(ピッチ)で、軸部円周方向12列、千鳥状に配列し、周面全体に270個開設した。」(段落【0022】)
(キ)「例えばフィルム処理等に用いられるロール例に於いて、」(段落【0026】)
(ク)上記(オ)、(カ)の記載及び図3の記載によれば、軸本体1は、中央部の軸部と、その両端に設けられた軸受部2及び軸受部2aからなるものと解される。
(ケ)図2、図3には、軸部から軸受部2にかけての開口5は、空洞部3から軸部の貫通孔6に傾斜面を有する徐変部として形成されていることが記載されており、開口5は空洞部3の開口面積が、軸部の略中央部の開口面積より小となるように軸受部2に傾斜面を有する徐変部として形成されているといえる。
(コ)図3には、空洞筒部10が不織布ロール部の両側板7、9間の全範囲であって、透孔4が軸部に開設されている領域より端部の領域にまでも形成されてある点が記載されている。

上記摘記事項、図面の記載及び認定事項を総合して、本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されている。
「メタルシート、フィルム等の被処理物Cの被洗浄面に付着した水、オイル、あるいは薬液等の液体を除去、搾取、洗浄する為の不織布ロールBにおいて、前記不織布ロールBは不織布ロール部及び軸本体1を有し、前記軸本体1は空洞部3が形成された軸部、及び前記軸部の両端に設けられた軸受部2及び軸受部2aを有し、前記軸受部2はホースを介して真空ポンプに連通される貫通孔6が形成され、前記貫通孔6は前記空洞部3と連通されてあり、軸部から軸受部2にかけての開口5は、前記空洞部3の開口面積が、前記軸部の略中央部の開口面積より小となるように前記軸受部2に傾斜面を有する徐変部として形成され、前記軸部の外周には前記空洞部3に連通する透孔4が開設されてあると共に、前記不織布ロール部が形成され、前記不織布ロール部は不織布からなるディスク状の複数の不織布シート8が圧着重畳されると共に、内周に空洞筒部用の孔11が設けられた前記不織布シート8を有し、前記空洞筒部用の孔11が前記軸部の軸方向に圧着重畳することにより複数の空洞筒部10が形成され、該空洞筒部10は不織布ロール部の両側板7、9間の全範囲であって、前記透孔4が前記軸部に開設されている領域より端部の領域にまでも形成されてあり、前記透孔4の前記不織布ロール部側に前記空洞筒部10が位置する不織布ロールB。」

イ.甲第2号証
(ア)「【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分を塗布する為のロールにおいて、前記ロールを構成するロール部は、概円盤状に形成されてあるロール片A、及び前記ロール片Aと回転外径が異なるロール片Bからなり、前記ロール片A、及び前記ロール片Bが複数重ね合わされて積層されてあることを特徴とするロール。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「【0015】
第1の発明は、ロールを構成するロール部は、概円盤状に形成されてあるロール片A、及び前記ロール片Aと回転外径が異なるロール片Bからなり、前記ロール片A、及び前記ロール片Bが複数重ね合わされて積層されてある。その為、ロール部の芯部は、ロール片Aのみが積層されてあるロール部の表面部に比べて、密にロール片A、及びロール片Bが積層されてあり、芯部が強い締付力を有して高い硬度にて形成されてある場合であっても、表面部は芯部よりも低い硬度にて形成することができる。その為、ロールの回転中にロール片A、及びロール片Bは位置ずれを発生することが無く、ロール部の表面部が凹凸になることが無い。また、ロール部の表面部は、ロール部の芯部に比べて、柔軟性に優れていることから、鋼板がロール部に接触する際において、ロールが鋼板により跳ね上げられることが無い。特に、厚みが1mm以上ある一般的に厚板と呼ばれている鋼板が、ロール部に接触する際において、ロールが跳ね上げられることが無く、鋼板先端部から均一に鋼板表面の油分を搾取することができる。」(段落【0015】)
(ウ)「【0022】
次に、ロール1の製作方法について説明する。最初に、ロール片A5、及びロール片B6を概円盤状の平板形状に打ち抜く。なお、ロール片B6の回転外径は、一般的にはロール片A5の回転外径より小さく設定されてある。…(中略)… 。
【0023】
ロール片A5の材質は、不織布及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる二重構造体にて形成されてあり、前記不織布を構成する繊維の材質には、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックスの内、少なくとも1種類以上の前記材質が使用されてある。前記材質は、一般的には人工皮革と呼ばれている。また、ロール片A5の材質は、前記材質以外にも、各種の不織布、織布、編布、合成樹脂発泡体、エラストマー、フィルム状組成物等を使用することもできる。【0024】
一方、ロール片B6は、ロール片A5と同材質でも良いし、異材質でも良く、特に限定されるものではない。異材質としては、例えば、不織布、織布、編布、合成樹脂発泡体、エラストマー、フィルム状組成物、樹脂シート、あるいは金属シート等が少なくとも1種類以上使用できる。なお、前記異材質を用いる場合においては、ロール片B6の単価は、ロール片A5の単価よりも低く設定されることが望ましい。」(段落【0022】?【0024】)

上記摘記事項及び図面の記載からみて、甲第2号証には次の技術的事項が記載されている。
「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分を塗布する為のロールにおいて、前記ロールを構成するロール部は、概円盤状に形成されてある不織布からなるロール片A、及び前記ロール片Aよりも回転外径が小さい不織布からなるロール片Bからなり、前記ロール片A、及び前記ロール片Bが複数重ね合わされて積層されてあるロール。」

ウ.甲第3号証
(ア)「【0008】本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、表面に塗油された粘性の高い油を高速ラインで容易に直接吸引し、塗油された鋼板の表面欠陥検査を可能にした塗油鋼板の表面欠陥検出装置を得ることを目的とする。」(段落【0008】)
(イ)「【0011】
【実施例】次に、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。なお、ここでは被検査対象として鋼板を例に挙げて説明するが、銅板、SUS材、プラスチック、フィルム等にも適応できる。」(段落【0011】)
(ウ)「【0014】図3は上記実施例の不織布ロール4a,4bの詳細を示した断面図である。同図において、4はロール本体、11は中空ロール部、11aは中空ロール部11に内周壁に軸方向に沿って設けられた油溝、11bは中空ロール部11に周壁に貫通して設けられた多数の油吸引孔、12は中空ロール外周に設けられた不織布、13は中空ロール部内面からロール外部に排出油を導く中空ロール軸、14は副室、15は中空ロール部11の内部を負圧にするためのロータリージョイントである。16は中空ロール軸13を回転自在に支持するベアリング、17はベアリング16の外周部に設けられたチョックである。そして、このチョック17には圧力制御部(ピストン)8b(8a)によって押し付け力が付与される。
【0015】図4は図3の副室14の構成を示すために一部が解放された斜視図である。この副室14は、図示のように、軸の長さ方法に沿って設けられたカマボコ状のトンネル形状をなしており、周方向に沿って分布して複数設けられている。」(段落【0014】、【0015】)
(エ)「【0019】次に、図2に着目すると、中空ロール外周に設けられた不織布12に含浸した油は、中空ロール部11の内面に吸引できるように構成されていることが分かる。中空ロール部11の内面に設けられた無数の油吸引孔11aにより中空ロール部11の内面へと含浸した油は浸透するが、油の粘性が高いとロール表面との距離が短い部分に吸引効果が集中し、油ムラを発生させる要因となる。このため、本実施例においては、不織布12と中空ロール部11との接触部にカマボコ状のトンネル形状の副室14を軸方向に沿って且つ周方向に分布配置してある。この副室14を設けたことにより、ロール表面から油吸引孔11aまでの距離が平準化され、均一吸引効果が増大している。中空ロール部11の内面へ浸透した油は中空ロール部11の内面からロール外部に、ロータリージョイント15を通って、放出される。
【0020】図5は副室14の動作を説明した図である。同図の(a)は副室14が無い場合であり、同図の(b)は副室14が有る場合である。副室14の断面で見ると、(a)図の場合には外部から吸引された油は図中矢印のように油吸引路が曲線的になるのに対して、(b)図の場合には、外部から吸引された油は図中矢印のように直線的となり、経路は最短距離になることを示している。」(段落【0019】、【0020】)
(オ)図3には、副室14が不織布ロール4aの軸方向における一方の端部から形成されており、油吸引孔11bが中空ロール部11に開設されている領域より端部の領域にまでも形成されてある点が記載されている。

エ.甲第4号証
(ア)「【0009】【作用】…(中略)… 当該(在来の)ゴムロールと(在来の)吸液ロール(以下、単に一対のロールとする。)間に薬液処理済みの鋼板を通板(導入)する。作用状態にある吸液ロールは、真空吸引力が作用することによって、ロール本体(ロールパッド部、パッド面)の有する毛細管作用及び真空作用によって励起された吸引作用により、当該ロール本体内に吸引された液体は、前記吸引作用によりロール本体の内部に導かれた後、ロール本体の軸部に多数開設した透孔を介して、前記空洞部に導かれ、過渡的かつ定状的な集液貯留状態を生ずる。この過渡的液貯留部に作用するロール回転により生ずる遠心力と前記真空吸引力との間の正常なバランス関係(即ち遠心力<真空吸引力)が維持されている状況下では、前記液貯留部は、定状的な量は保つものの流入と流出がバランスし、軸本体の連通孔及びこれに接続する真空系接続配管系を介して、(在来の)吸液ロール外に排出(排液)される。」(段落【0009】)
(イ)「【0014】
【実施例】以下、本発明の一実例を図面を参照しながら説明する。「本発明の」吸液ロールAは、軸部1a、1bと軸部1cとでなる軸本体1と、当該軸本体1の外壁面に設けた測板2,3を介して、毛細管機能を有し液の吸収を行うポーラスな多孔体組織(ロールパッド部)を成し、前記軸部1cを套嵌するロール本体4と、前記軸受部1a及び/又は軸受部1bに連通された真空系接続配管5と、を主構成要素とし、更に以下で詳述する空洞部の内壁面に形成される液の遮閉層域の生成を阻害し、当該「本発明の」吸液ロールAの真空吸引排液機能を維持又は回復する各例構成を含み備えている。」(段落【0014】)
(ウ)「【0015】尚、図中6、6aは軸本体1の軸受部1a、1bに設けた連通孔、7は軸本体1の1c長手方向に開設した空洞部、8は軸本体1の軸部1cに多数開設し、かつ前記空洞部7に連通する透孔であり、これら連通孔6、(6a)、空洞部7、及び多数の透孔8で、軸本体1の真空吸引通路が構成される。また9は軸受けを示す。」(段落【0015】)
(エ)図2には、軸本体1の軸部1cから両端の軸受部1a、1bにかけての部分は、空洞部7の口面積が、軸部1cの略中央部の開口面積より小となるように軸受部1a、1bに傾斜面を有する徐変部が形成されていることが記載されている。

(3-3)当審の判断
ア.本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「メタルシート、フィルム等の被処理物Cの被洗浄面に付着した水、オイル、あるいは薬液等の液体を除去、洗浄する為の不織布ロールB」は本件特許発明1の「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール」に相当し、以下同様に、
「不織布ロール部」は「ロール部」に、
「軸本体1」は「台座」に、
「空洞部3」は「開口部」に、
「軸部」は「本体部」に、
「ホース」は「配管」に、
「貫通孔6」は「中空部」に、
「透孔4」は「孔部」に、
「ディスク状の複数の」「不織布シート8」は「概円環状の複数の」「ロール片」に、
「圧着重畳される」は「積層される」に、
「空洞筒部用の孔11」は「切欠き部」に、
「空洞筒部用の孔11が前記軸部の軸方向に圧着重畳することにより複数の空洞筒部10が形成され」は「切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され」に、
「空洞筒部10」は「流体導入溝部」にそれぞれ相当する。
また、甲第1号証に記載された発明の「本体部(軸部)の両端に設けられた」「軸受部2及び軸受部2a」と、本件特許発明1の「本体部の両端に連接される」「継ぎ手部A及び継ぎ手部B」とは、「本体部の両端に設けられる」「継ぎ手部」の点で共通し、甲第1号証に記載された発明の「前記軸受部2はホースを介して真空ポンプに連通される貫通孔6が形成され、」「軸部から軸受部2にかけての開口5は、」「前記軸受部2に傾斜面を有する徐変部として形成され」と、本件特許発明1の「前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、」「前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、」「前記継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに傾斜面を有する徐変部が形成され」とは、「前記継ぎ手部は配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、」「前記本体部と前記継ぎ手部にかけての部分は、」「前記継ぎ手部に傾斜面を有する徐変部が形成され」る点で共通する。
さらに、甲第1号証に記載された発明の「空洞筒部10(流体導入溝)は不織布ロール部(ロール部)の両側板7、9間の全範囲であって、前記透孔4が前記軸部に開設されている領域より端部の領域にまでも形成されて」あることと、本件特許発明1の「流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、前記孔部が前記本体部に開設されている領域に形成されて」あることは、「流体導入溝部はロール部の長手方向の所定の範囲内に形成されて」ある点で共通する。

そうすると、本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明とは、本件特許発明1の用語を用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に設けられる継ぎ手部を有し、前記継ぎ手部は配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部から前記継ぎ手部にかけての部分は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように前記継ぎ手部に傾斜面を有する徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片を有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、該流体導入溝部はロール部の長手方向の所定の範囲内に形成されてあり、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置するロール。」

(相違点1)
継ぎ手部について、本件特許発明1では、「本体部の両端に連接」されるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、本体部(軸部)の両端にどのように設けられるものであるか不明な点。
(相違点2)
配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、本体部にかけての部分に傾斜面を有する徐変部が形成される継ぎ手部について、本件特許発明1では、両側の継ぎ手部A及び継ぎ手部Bであって、傾斜部を有する徐変部が本体部と継ぎ手部の接合部の近傍に形成されるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、片側の継ぎ手部(軸受部2)であって、傾斜部を有する徐変部が開口5に形成される点。
(相違点3)
ロール部について、本件特許発明1では、ロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とを有するのに対し、甲第1号証に記載された発明では、ロール片(不織布シート)を有するものの補強部材を有しない点。
(相違点4)
ロール部の長手方向の所定の範囲に形成された流体導入溝部について、本件特許発明1では、流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、孔部が本体部に開設されている領域に形成されてあるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、流体導入溝部(空洞筒部10)はロール部(不織布ロール部)の両側板7、9間の全範囲であって、孔部(透孔4)が本体部(軸部)に開設されている領域より端部の領域にまでも形成されてある点。

(イ)判断
相違点1について
機械部品を製造するに際して、2部材を接合部で連接して一体化することは、例示するまでもなく従来周知の事項であり、甲第1号証に記載された発明において、本体部(軸部)に継ぎ手部(軸受部2及び軸受部2a)を接合部で連接するものとすることは、当業者が適宜採用し得る構造にすぎない。

相違点2について
甲第4号証には、鋼板に用いる吸液ロールに関して、「前記軸受部1a及び/又は軸受部1bに連通された真空系接続配管5」及び「連通孔6、(6a)、空洞部7、及び多数の透孔8で、軸本体1の真空吸引通路が構成される」と記載されており、これらの記載によれば、連通孔6、6aを設けた両側の軸受部1a及び軸受部1bに連通された真空系接続配管5を設けることが示されている。
また、甲第4号証の図2には、軸部1cからその両側の軸受部1a及び軸受部1bにかけての部分に傾斜面を有する徐変部を設けることも示されている。
これらの事項についてみると、甲第4号証に記載の「軸部1c」は、本件特許発明1の「本体部」に相当し、以下同様に、「軸受部1a及び軸受部1b」は「継ぎ手部A及び継ぎ手部B」に、「軸本体1」は「台座」に、「真空系接続配管5」は「真空ポンプ」の「配管」に、「連通孔6、6a」は「中空部」に、「吸液ロール」は「ロール」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲第4号証には、真空ポンプに連通される中空部及び傾斜面を有する徐変部が両側の継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに形成されるロールが示されているということができる。
また、甲第1号証の摘記事項(ア)にも「軸本体の両端に設けられ、かつ前記空洞部に連通する貫通孔を、少なくともその一方に貫設した一対の軸受け部」と記載されており、その「少なくともその一方」との記載からみて、甲第1号証には、両側の軸受部に貫通孔を設けること、すなわち「真空ポンプに連通される中空部及び傾斜面を有する徐変部を両側の継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに形成する」ことが示唆されている。
そして、傾斜面を有する徐変部は本体部と継ぎ手部の間に設けられるのであるから、相違点1で検討したように、本体部(軸部)に継ぎ手部(軸受部2及び軸受部2a)を接合部で連接するものは適宜採用し得る構造であって、そのようなものにおいては、必然的に本体部と継ぎ手部の間、すなわち、接合部の近傍に設けられるものとなる。
したがって、甲第4号証に記載された事項を甲第1号証に記載された発明に適用して相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

相違点3について
甲第2号証に記載された技術的事項(鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分を塗布する為のロールにおいて、前記ロールを構成するロール部は、概円盤状に形成されてある不織布からなるロール片A、及び前記ロール片Aと回転外径が異なる不織布からなるロール片Bからなり、前記ロール片A、及び前記ロール片Bが複数重ね合わされて積層されてあるロール)は、ロールの回転中にロール片A、及びロール片Bが位置ずれを発生することが無く、ロール部の表面部が凹凸になることが無いように、また、ロール部の表面部は、ロール部の芯部に比べて、柔軟性に優れているようにするためのものである。
ところで、甲第2号証に記載された技術的事項についてみると、甲第2号証の「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分を塗布する為のロール」、「概円盤状に形成されてある不織布からなるロール片A」及び「前記ロール片Aと回転外径が異なる不織布からなるロール片B」は、本件特許発明1の「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール」、「不織布からなる概円環状のロール片」及び「該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材」にそれぞれ相当し、甲第2号証の「前記ロール片A、及び前記ロール片Bが複数重ね合わされて積層されてある」ことは本件特許発明1の「ロール部は複数のロール片が積層される」ことに相当する。
してみると、甲第2号証には、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールを構成するロール部は、不織布からなる概円環状の複数のロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とからなり、ロール部は複数のロール片が積層されるロールといいかえることができ、相違点3に係る「ロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とを有するロール部」が示されている。
そして、吸液用のローラに適度の強度と弾力性を持たせることは吸液を円滑に行うために当然考慮すべき事項であるから、甲第1号証に記載された発明において、甲第2号証に記載された技術的事項を適用し、ロール部に補強部材を設けて相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

相違点4について
流体導入溝について、甲第2号証及び甲第4号証には、何ら記載されておらず、示唆もない。
また、甲第3号証には、流体導入溝に相当する副室14が記載されているが、甲第1号証に記載された発明と同様、ロール部の長手方向における一方の端部から形成され、孔部が本体部に開設されている領域より端部の領域までも形成されており、相違点4に係る構成は記載されておらず、また、副室14を設ける範囲を孔部が本体部に開設されている領域とすることを示唆する記載もない。
そして、相違点4に係る構成により、本件特許発明1は、特許明細書の段落【0052】の「ロール部2の両端部の近傍には流体導入溝部14が形成されていない。その為、真空吸引力により発生する流体は、ロール部2の両端部からロール1の外部に流出することがなく、ロール部2に吸収された液体は、流体となって流体導入溝部14、孔部13、開口部10、中空部11の順に確実にロール1の外部に流出する。従って、圧力損失がなく、ロール部2からの液体の吸引性能が大幅に向上する。」と記載された、甲第1号証ないし甲第4号証記載の発明にはない、作用効果を奏するものと認められる。
したがって、甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明に基づいて相違点4に係る構成とすることは当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

以上のように、相違点4に係る構成とすることは当業者が当業者が容易に想到することができたものではなく、本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、他に特許を受けることができない理由を発見しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

イ.本件特許発明3ないし6について
本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項をすべて包含したものである。
したがって、本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1と同様に、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、他に特許を受けることができない理由を発見しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3.むすび
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第9項の規定によって準用する同法第126条第5項から第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件特許無効審判請求についての判断
本件無効審判請求の対象であった請求項1に係る発明は、本件訂正の結果削除され、審判請求の対象が存在しない。
したがって、本件無効審判請求は、不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下すべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法62条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ロール及び洗浄装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のロールに関しては、不織布ロール、ゴムロール等が一般的に使用され、例えば、不織布ロールに関しては、極細繊維が立体的に絡合された不織布の空隙部に高分子弾性体が多孔質構造で充填された繊維質シートからなるディスク状物を多数枚重畳してなる吸液ロール(特許文献1)がある。
【0003】
特許文献1の吸液ロールは、液体を吸引するのに必要な外部装置を備えていない為、不織布層からなるロール部が徐々に吸液飽和状態となる。液体を吸引するのに必要な外部装置を備えていないロールにおける液体除去機能は、コンプレッサー等を介してエアー圧、油圧等の一定の圧力がかかりながら回転しているロールに、液体が付着した被洗浄面が接触することにより、液体を被洗浄面の両端部から流し去るダム機能と、ロールが回転しながら被洗浄面に接触して圧力により圧縮される圧縮ゾーンにおいて、ロール部の空隙部に吸収された液体を被洗浄面に一旦放出し、次いでロールが圧力による圧縮から開放される開放ゾーンにおいて、不織布を形成する繊維質の毛細管現象により被洗浄面の液体がロール部に吸い上げられ、ロール部の空隙部に放出される仕組みからなる吸排機能とから構成されている。前記ダム機能はゴムロール等にも発現する機能であるが、前記吸排機能は不織布ロールに特有の機能である。すなわち、不織布に充填された高分子弾性体が弾性変形する為、ロール部の空隙率が前記圧縮ゾーンで0%となり、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することにより発現する。しかし、液体がロール部の空隙部に吸収、及び空隙部から排出されることを繰り返すと、高分子弾性体は液体と接触することにより、徐々に膨潤して弾性率が低下し、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することができなくなる。その為、空隙率が減少したロール部の空隙部には、繊維質の毛細管現象により吸い上げられた液体の全量を放出することができず、ロール部は吸液飽和状態となり、液体除去機能が長期間に亘って持続しないという問題を有していた。なお、高分子弾性体の弾性率と膨潤度の関係は、弾性率は膨潤度の3/5乗に反比例するというフローリーのゴム弾性の理論が知られている。
【0004】
上記問題を解決するために、吸液機能を備えた軸本体、及びこの軸本体に圧着重畳された不織布シートで構成する不織布ロールと、当該不織布ロールと配管を介し連通される真空ポンプとで構成される、送出、吸液機能を備えた不織布ロールを利用する吸液方法であって、この吸液方法は、吸引抵抗による真空値、及び毛細管の機能を高めることを意図して、前記不織布部をウエットな吸液状態にして使用し、かつこの使用状態で前記軸本体に多数千鳥状等に開設した透孔を介して、前記吸液状態にある不織布部内部に於いて、不織布ロール外表面方向に向かってほぼ倒円錐形状に有効な吸液、送液毛細管部を作用せしめるとともに、前記真空吸引力の一部が前記不織布ロールの外表面に於いて重畳作用するように構成したことにより、前記真空吸引力を当該不織布ロールの外表面で均一作用させる構成とした不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置(特許文献2)が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-262586号公報
【特許文献2】特開平7-120145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置は、不織布ロールの有するダム機能と吸排機能に加えて、ロール部に吸収された液体は、真空ポンプにより、透孔、空洞部、貫通孔を介して不織布ロール外部に排出されるので、吸液に必要な外部装置を備えていない不織布ロールに比べて、ロール部の吸液飽和状態は抑制され、液体除去機能は長期間に亘って持続される。しかしながら、前記不織布ロールは、軸本体の一方の端部からのみ液体を吸引する構成であり、真空吸引力にバラツキが発生しやすい。すなわち、真空ポンプに近い軸本体の一方の端部では真空吸引力が強く、真空ポンプから離れている軸本体の他方の端部では真空吸引力が弱くなる。その為、不織布シートに吸収された液体を均一に吸引することが難しいという課題を有していた。
【0007】
上記の現象は、一般的に摩擦エネルギー損失と呼ばれている。不織布部の内部に吸収された液体は、真空吸引力により、流体となって、透孔、空洞部、貫通孔を介して不織布ロールの外部に排出されるが、流体が流れる際、空洞部の内壁面や流体同士の接触に伴う摩擦によりエネルギーの損失が発生する。空洞部における流体の移動距離が短ければ、エネルギー損失は小さく、真空吸引力も強く作用するが、流体の移動距離が長ければ、エネルギー損失は大きく、真空吸引力が弱くなるのである。
【0008】
また、真空ポンプに近い軸本体の一方の端部は中空状であり、真空ポンプから離れた軸本体の他方の端部は中実状であり、軸本体の両端部において重量差が生じる。その為、不織布ロールの回転バランスが悪く、被洗浄面に不織布シートが均一に摺接し難くいことから、被洗浄面から液体を均一に除去できず、被洗浄面に残滓マークが発生しやすいという課題も有していた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出すると共に、ロールの回転バランスが保持され、長期間に亘って、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる耐久性に優れたロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bに傾斜面を有する徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とを有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、該流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、前記孔部が前記本体部に開設されている領域に形成されてあり、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置するもので、台座は開口部、及び中空部にて中空状に貫通して形成されてあることから、本体部の両端部に連接された継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bは、共に配管を介して真空ポンプに接続することができる。したがって、ロール部に吸収された液体を、台座の両方の端部から同時に吸引することができるので、流体は開口部の長手方向における略中央部より台座の両端部に向けて略同一の距離にて移動することから、流体の摩擦エネルギー損失の発生が極力抑えられ、真空吸引力のバラツキの発生がなく、ロール部に吸収された液体を、迅速且つ均一に吸引してロールの外部に排出する。その為、ロール部の吸液飽和状態が解消され、ロールの耐用年数の長期化を図ることができる。また、ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材を有するので、ロール部の表面部は、芯部に比べて硬度が低く、柔軟性が高いことから、ロールの弾力性が向上し、ロール部と被洗浄面の接触面積が広がり、被洗浄面から効率よく確実に液体が除去、搾取、洗浄される。一方、ロール部の芯部は、ロール片と不織布からなる補強部材が積層されているので、表面部に比べて硬く、ロールの回転中において、ロール片が本体部から位置ズレを生じ、ロール部の表面部に凹凸が発生することが防止される。その為、ロールは被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。
【0011】
台座を構成する継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bは、共に中空部を有し、中空状であることから、台座の両端部において重量差が生じることがなく、ロールの回転バランスが保持される。その為、ロール部は被洗浄面に均一に摺接するので、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。
【0012】
また、台座を構成する本体部と継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bの接合部の近傍に徐変部を形成した場合には、孔部を介してロール部から本体部の開口部に吸引された液体は、開口部に滞留することなく、徐変部の傾斜面に沿って、継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bに形成された中空部に流入し、ロールの外部に排出される。尚、本体部の両端部に傾斜面を有する徐変部が形成されていない場合、本体部と継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bの連接箇所において、還流が発生し、流体が本体部の開口部に滞留することになり、効率よく確実に液体を吸引することが難しくなる。また、真空ポンプに対する負荷も増大する。
【0013】
ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられたロール片を有し、切欠き部が本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、流体導入溝部は孔部と対向して形成されていることから、ロール部に吸収された液体は、真空吸引力により、流体導入溝部を介して、均一に孔部から開口部に流入することができる。その為、ロールは、ロール部に流体導入溝部が形成されておらず、孔部がロール片の内周と略接触するよう形成された形態に比べて、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出することが可能となる。なお、本発明のロールは、ロール片の内周に形成された切欠き部が連なることにより、流体導入溝部が形成されることから、台座に流体導入溝部を加工する必要がなく、低コストで台座を製作することができる。さらに、同一台座にて、必要に応じてロール片を交換するのみで、違う形状の切欠き部を用いて流体導入溝部を形成することができる。
【0014】
(削除)
【0016】
請求項3の発明のロールは、特に、請求項1のロールにおいて、補強部材の内周には切欠き部が形成されてあるもので、ロール部は補強部材が積層されてあっても、連続的に形成された流体導入溝部が確保される為、流体の流れが補強部材により遮断されることがない。その為、流体を均一にロール部から開口部に吸引することができる。
【0017】
請求項4の発明のロールは、特に請求項3のロールにおいて、ロール片及び補強部材の有する切欠き部は内周の等分箇所に形成されてあるもので、ロールは回転時のバランスがよく、回転ブレを発生することがなく、安定した回転が保持される為、長期間に亘り、優れた液体除去性能が発揮される。
【0018】
請求項5の発明のロールは、特に、請求項1、3、4のいずれかのロールにおいて、本体部の外周にたいする孔部の開口面積の比率が、本体部の端部の近傍よりも略中央部の方が大にて形成されてあるもので、本体部の略中央部の近傍において、より多くの流体が流体導入溝部に沿って流れると共に、孔部を介して開口部に流出する。ところで、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面は、さまざまな幅のものがロール部に接触し、通過するが、ロール部の略中央部の近傍は、必ず前記被洗浄面が通過する。従って、ロール部の略中央部の近傍は、最も液体が吸収される箇所である。その為、本体部の略中央部の近傍から、より多くの流体が開口部に流れ込む形態とすることにより、ロール部からの液体の吸収性能が飛躍的に向上する。
【0019】
請求項6の発明の洗浄装置は、請求項1又は3から5のいずれか1項に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段と、継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに配管を介して連通される真空ポンプを有するもので、長期間に亘って、被洗浄面から液体を確実に除去、搾取、洗浄することができるロールが搭載されていることから、優れた液体除去性能が発揮される。その為、被洗浄面に液体が不均一に残る残滓マークの発生が抑制され、被洗浄面の品質の向上につながる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明のロールは、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出すると共に、ロールの回転バランスが保持され、長期間に亘って、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。また、被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。また、流体がロール部の両端部からロールの外部に流出することがなく、ロール部から確実に吸引され、ロールの外部に流出するので、ロール部からの液体の吸引性能が大幅に向上する。
【0021】
(削除)
【0023】
請求項3の発明のロールは、流体の流れが補強部材により遮断されることがなく、流体を均一にロール部から開口部に吸引することができる。
【0024】
請求項4の発明のロールは、回転時のバランスがよく、回転ブレを発生することがなく、安定した回転が保持され、長期間に亘り、優れた液体除去性能を発揮することができる。
【0025】
請求項5の発明のロールは、本体部の略中央部の近傍から、より多くの流体が開口部に流れ込むことから、多量の液体を吸収するロール部の略中央部の近傍において液体が吸引しやすくなり、ロール部からの液体の吸収性能が飛躍的に向上する。
【0026】
請求項6の発明の洗浄装置は、搭載されたロールにより優れた液体除去性能が発揮されることから、被洗浄面に液体が不均一に残る残滓マークの発生が抑制され、被洗浄面の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例におけるロールの正面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】台座の正面図である。
【図4】(a)本体部の非形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(b)本体部の形成領域の外周に積層されるロール片の平面図である。
【図5】本発明の第2の実施例におけるロールの断面図である。
【図6】(a)本体部の非形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(b)本体部の形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(c)本体部の非形成領域の外周に積層される補強部材の平面図、(d)本体部の形成領域の外周に積層される補強部材の平面図である。
【図7】本発明の第3の実施例におけるロールに用いられる台座の正面図である。
【図8】(a)本体部の非形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(b)本体部の形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(c)本体部の集中形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(d)本体部の非形成領域の外周に積層される補強部材の平面図、(e)本体部の形成領域の外周に積層される補強部材の平面図、(f)本体部の集中形成領域の外周に積層される補強部材の平面図である。
【図9】本発明のロールが搭載された洗浄装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
図1から図4を用いて、実施例1のロールについて説明する。
【0030】
図1、及び図2において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4a、4bからなるロール部2より構成されている。台座3は、鉄等の金属材料からなり、外周にロール部2が形成されてあると共に、開口部10を有する本体部7、及び本体部7の両方の端部に連接されると共に、中空部11を有する継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9から形成されている。ロール部2は、複数のロール片4a、4bが台座3を構成する本体部7の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて形成されてある。止め金具5には、スナップリングが使用されている。
【0031】
図2、及び図3において、台座3を構成する本体部7は、長手方向と略平行となるよう外周に複数の円形の孔部13が形成されている。孔部13は、本体部7の外周等分6箇所に設けられていると共に、本体部7の長手方向に亘る全長の内、両端部の近傍における非形成領域L_(2)を除く形成領域L_(1)の範囲内にて開設されている。さらに、孔部13は、本体部7の有する開口部10に連通している。孔部13の形状は円形以外にも、概三角形、概四角形等の多角形状、星型、十字型等の異形断面形状であってもよい。また、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9は、中空部11が設けられてあると共に、一方の端部には、ロータリージョイント(図示せず)が接続されるネジ部12が形成されてあり、他方は本体部7の端部に、溶接による接合部16を介して連接されている。従って、本体部7の有する開口部10と、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の有する中空部11は、必然的に連通することになる。継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に形成された窪み部15には、止め金具5が嵌合挿入される。
【0032】
また、本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍には、傾斜面を有して徐変部71が形成されている。従って、本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍は、開口部10の開口面積が、本体部7の略中央部の開口面積より小さくなる。
【0033】
図4(a)において、ロール片4aは、中心部に穴部18、外周に側縁部19が形成された概円環状の不織布17からなる。不織布17は、複数本の繊維(図示せず)を有する。ロール片4aは、図2、及び図3の如く、台座3を構成する本体部7の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部13が本体部7の外周に開設されていない非形成領域L_(2)の範囲に積層される。
【0034】
図4(b)において、ロール片4bは、中心部に穴部18、外周に側縁部19が形成された概円環状の不織布17からなる。不織布17は、複数本の繊維(図示せず)を有する。また、ロール片4bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部20が形成されている。ロール片4bは、図2、及び図3の如く、台座3を構成する本体部7の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域L_(2)を除く孔部13が外周に開設された形成領域L_(1)の範囲内に積層される。そして、切欠き部20が本体部7の形成領域L_(1)に亘って連なることにより、図2の如く、複数の流体導入溝部14が形成されると共に、孔部13のロール部2側に流体導入溝部14が位置するよう設定される。すなわち、孔部13と、流体導入溝部14は対向するよう形成される。ロール片4bの内周に形成される切欠き部20の数は、本体部7の外周に開設される孔部13の円周上の数に応じて変更される。さらに、切欠き部20の形状は、概U字状以外にも、概V字状、概凹状等であっても構わない。
【0035】
なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4a、4bより形成される。非形成領域L_(2)に位置するロール片4aと形成領域L_(1)に位置するロール片4bは、同一材質の不織布17であり、外径、及び内径の寸法は略同一である。また、特に図示しないが、台座3にたいするロール片4a、4bの位置ズレを防止する為に、ロール片4a、4bの内周に凹状の溝部を形成すると共に、台座3を構成する本体部7の長手方向の外周に凸状のキーを装着して、前記凹状の溝部を凸状のキーに嵌合挿入することにより、ロール片4a、4bを、本体部7の外周に積層してもよい。
【0036】
次に、ロール1の製作方法について説明する。
【0037】
最初に、外周に孔部13が開設され、開口部10を有する略円筒形状の本体部7を用意する。次いで、中空部11、及び傾斜面を有する徐変部71が形成された中空状の継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9を、本体部7の両方の端部に挿入し、圧入、あるいは焼きバメすると共に、溶接による接合部16を介して本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9を一体化し、台座3を形成する。本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の連接方法は、台座3の強度が保持されるのであれば、ネジ止め、ボルト締め等の方法であっても構わない。
【0038】
次に、複数本の繊維を有する平板状の不織布17を用意し、不織布17をトムソン型、あるいはレーザーカッター等を用いて、穴部18、及び側縁部19を有する概円環状のロール片4aと、穴部18、側縁部19、及び内周の等分6箇所に切欠き部20を有する概円環状のロール片4bに打ち抜く。次いで、ロール片4aを複数重ね合わせて、穴部18を台座3にたいして貫通させ、本体部7の外周に孔部13が開設されていない一方の非形成領域L_(2)の範囲の近傍に積層する。次に、ロール片4bを複数重ね合わせて、穴部18を台座3にたいして貫通させ、本体部7の外周に孔部13が開設された形成領域L_(1)の範囲の近傍に積層する。その際、切欠き部20が長手方向に連なるように積層し、切欠き部20が連なることにより形成される流体導入溝部14と、孔部13が対向するようにする。次に、ロール片4aを複数重ね合わせて、穴部18を台座3にたいして貫通させ、本体部7の外周に孔部13が開設されていない他方の非形成領域L_(2)の範囲の近傍に積層する。そして、非形成領域L_(2)の範囲にロール片4a、形成領域L_(1)の範囲にロール片4bが位置するよう台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させ、止め金具5、及びプレート6にて複数のロール片4a、4bを挟み付けて固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4a、4bの内部応力を均一化させ、側縁部19を切削加工及び研磨加工し、台座3を構成する本体部7の外周にロール部2を形成してロール1が製作される。
【0039】
ロール部2の表面部の硬度は、40°?95°程度に設定されるのが望ましい。硬度が40°未満の場合、硬度が低すぎて、被洗浄面の端面が繰り返しロール部2に当接すると、早期にロール部2が摩耗する。また、硬度が95°を超えると、硬度が高すぎて、ロール1の弾力性が劣り、効果的にダム機能、及び吸排機能を発揮することが難しくなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0040】
孔部13の直径、流体導入溝部14の幅、深さについては、特に限定されるものではないが、例えば、孔部13の直径は1?8mm程度、流体導入溝部14の幅は2?30mm程度、深さは0.1?20mm程度に設定されるのが望ましく、流体導入溝部14の幅は、孔部13の直径よりも大きく設定される必要がある。孔部13の直径が1mm未満の場合、径が小さすぎて効率よく流体をロール部2から吸引することができず、8mmを超える場合、径が大きすぎて一孔あたりの流体を吸引する力が弱くなる。また、流体導入溝部14の幅が2mm未満の場合、幅が狭すぎて効率よく流体が流れることができず、30mmを超える場合、広すぎてロール片4bの内周と本体部7の間に隙間部分が増大し、ロール1の回転に伴い、ロール片4bが位置ズレを発生しやすくなる。流体導入溝部14の深さが0.1mm未満の場合、浅すぎて効率よく流体が流れることができず、20mmを超える場合、深すぎてロール片4bの肉厚が薄くなり、ロール1の弾力性が劣ることになる。
【0041】
次に、ロール片4a、4bを構成する不織布17の製造方法について、いくつか述べる。
【0042】
第1の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布17を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。得られた不織布17は、ポリウレタン溶液中に含浸され、不織布17にポリウレタンを充填させる。次いで、ポリウレタンを充填させた不織布17を、水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることにより、不織布17、及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる平板状の二重構造体を形成する。なお、不織布17を形成する繊維には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるスパンデックス繊維等が単独使用、あるいは併用される。
【0043】
第2の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体となるウエッブを形成し、ニードルパンチングにより3次元に絡合された不織布17を得る。得られた不織布17にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより不織布17を形成する繊維の間を結合させるもので、前記の製造方法により得られた不織布17は、一般的にケミカルボンド法不織布と呼ばれている。なお、不織布17を形成する繊維には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維が単独使用、あるいは併用される。また、高分子弾性体には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が単独使用、あるいは併用される。また、架橋剤は、前記高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成し、一段と優れた弾力性を高分子弾性体に付与する目的で配合されるものであり、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂を単独、あるいは併用して用いることができる。
【0044】
第3の方法は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂を溶融紡糸すると共に、得られた合成繊維にたいして100?150kgf程度の高圧水流を噴射することにより、繊維を絡合させる。次いで、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維に付着させ、加熱することにより不織布17を形成するもので、前記の製造方法により得られた不織布17は、一般的に水流絡合法不織布と呼ばれている。
【0045】
上記に示した不織布17の製造方法は代表的な例であり、上記以外にも、例えば、熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維を形成し、繊維を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維を結合して不織布17を形成するスパンボンド法、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維を結合させて不織布17を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維を結合して不織布17を形成するフラッシュ紡糸法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして繊維を接着させて不織布17を形成するファイバーボンド法やサーマルボンド法等により製造された不織布17を用いても構わない。なお、不織布17は、ロール1に形成された場合、被洗浄面の繰り返しの当接に強く、繊維がほつれ難く、織布、編物等の他の布帛をロール1に用いた場合に比べて、ロール1の耐久性の向上につながる。
【0046】
ロール片4a、4bに用いられる不織布17の選択については、ロール1が使用される雰囲気温度、除去対象となる液体の性状等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものである。
【0047】
上記の如く構成されたロール1の動作、作用は下記の通りである。
【0048】
ロール1はロール部2及び台座3を有し、台座3は開口部10が形成された本体部7、及び本体部7の両端に連接される継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9を有し、継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9は中空部が形成され、中空部11は開口部10と連通されてあり、本体部7と継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍は、開口部10の開口面積が、本体部7の略中央部の開口面積より小さくなるよう傾斜面を有する徐変部71が形成され、本体部7の外周には開口部10に連通する孔部13が開設されてあると共に、ロール部2が形成され、ロール部2は不織布17からなる概円環状の複数のロール片4a、4bが積層されると共に、内周に切欠き部20が設けられたロール片4bを有し、切欠き部20が本体部7の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部14が形成され、孔部13のロール部2側に流体導入溝部14が位置するので、液体が付着した被洗浄面は、ロール部2と接触すると、ロール1のダム機能と吸排機能により、液体が除去される。ロール1は、吸排機能により、ロール部2を構成する不織布17が有する繊維の毛細管現象により、ロール部2の内部に液体を放出すると共に、外部に排出する。ロール1は、台座3を構成する継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に中空部11が形成されると共に、本体部7に開口部10が形成され、中空部11と開口部10は連通している。継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9のネジ部12に図示しないロータリージョイントを接続し、配管(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)を接続し、真空ポンプを稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部2に負圧が付加され、ロール部2に吸収された液体は、流体となり、流体は、図2の二点鎖線矢印の如く、流体導入溝部14、及び孔部13を通り、開口部10に流れ込み、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に形成された中空部11からロール1の外部に吸引されて、放出される。従って、ロール部2の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール1は長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができる。なお、真空ポンプを稼働するタイミングとしては、ロール1の稼働時、あるいは非稼動時のいずれでもよい。
【0049】
本発明のロール1は、台座3が開口部10、及び中空部11にて中空状に貫通して形成されてあることから、本体部7の両端部に連接された継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9は、共に配管を介して真空ポンプに接続することができる。従って、ロール部2に吸収された液体を、台座3の両方の端部から同時に吸引することができるので、流体は開口部10の長手方向における略中央部より台座3の両端部に向けて略同一の距離にて移動することから、流体の摩擦エネルギー損失の発生が極力抑えられ、真空吸引力のバラツキの発生がなく、ロール部2に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロール1の外部に排出することができる。
【0050】
台座3を構成する継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9は、共に中空部11を有し、中空状であることから、台座3の両端部において重量差が生じることがなく、ロール1の回転バランスが保持される。その為、ロール部2は被洗浄面に均一に摺接するので、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。
【0051】
台座3を構成する本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍は徐変部71が形成されてあることから、孔部13を介してロール部2から本体部7の開口部10に吸引された液体は、開口部10に滞留することなく、徐変部71の傾斜面に沿って、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に形成された中空部11に流入し、ロール1の外部に排出される。
【0052】
流体導入溝部14は、ロール部2の長手方向における一方の端部の近傍における非形成領域L_(2)と、他方の端部の近傍における非形成領域L_(2)との範囲内における形成領域L_(1)にて形成されているので、ロール部2の両端部の近傍には流体導入溝部14が形成されていない。その為、真空吸引力により発生する流体は、ロール部2の両端部からロール1の外部に流出することがなく、ロール部2に吸収された液体は、流体となって流体導入溝部14、孔部13、開口部10、中空部11の順に確実にロール1の外部に流出する。従って、圧力損失がなく、ロール部2からの液体の吸引性能が大幅に向上する。
【実施例2】
【0053】
図5、及び図6を用いて、実施例2のロールについて説明する。なお、上記実施例1と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0054】
図5において、ロール21は、台座23、止め金具25、プレート26、及び複数のロール片24a、24bと補強部材39a、39bからなるロール部22より構成されている。台座23は、鉄等の金属材料からなり、外周にロール部22が形成される本体部27は開口部30を有する略円筒形状であり、本体部27の両端部に連接される継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29は中空部31を有する中空状であると共に、それぞれの一方の端部にはロータリージョイントが連接されるネジ部32が形成されている。ロール部22は、複数のロール片24a、24bと補強部材39a、39bが台座23を構成する本体部27の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具25、及びプレート26にて挟み付けられて形成されてある。止め金具25には、スナップリングが使用されている。
【0055】
台座23を構成する本体部27は、長手方向と略平行となるよう外周に複数の円形の孔部33が形成されている。孔部33は、本体部27の外周等分6箇所に設けられていると共に、本体部27の長手方向に亘る全長の内、両端部の近傍における非形成領域を除く形成領域の範囲内にて形成されている。さらに、孔部33は、本体部27の有する開口部30に連通している。また、継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29は、中空部31が設けられてあると共に、一方の端部には、ロータリージョイント(図示せず)が接続されるネジ部32が形成されてあり、他方は本体部27の両端部に、溶接による接合部36を介して連接されている。従って、本体部27の有する開口部30と、継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29の有する中空部31は、必然的に連通することになる。
【0056】
また、本体部27と継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29の接合部36の近傍には、傾斜面を有して徐変部81が形成されている。従って、本体部27と継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29の接合部36の近傍は、開口部30の開口面積が、本体部27の略中央部の開口面積より小さくなる。
【0057】
図6(a)において、ロール片24aは、中心部に穴部38が形成された概円環状の不織布37からなる。不織布37は、複数本の繊維を有する。ロール片24aは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部33が本体部27の外周に開設されていない非形成領域の範囲に積層される。
【0058】
図6(b)において、ロール片24bは、中心部に穴部38が形成された概円環状の不織布37からなる。不織布37は、複数本の繊維を有する。また、ロール片24bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部40が形成されている。ロール片24bは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域を除く孔部33が外周に開設された形成領域の範囲内に積層される。
【0059】
図6(c)において、補強部材39aは、中心部に穴部38を有する概円環状にて形成されている。補強部材39aは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部33が本体部27の外周に開設されていない非形成領域の範囲に、ロール片24aと共に積層される。補強部材39aの外径はロール片24aの外径よりも小さく、内径はロール片24aの内径と略同一である。
【0060】
図6(d)において、補強部材39bは、中心部に穴部38を有する概円環状にて形成されている。また、補強部材39bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部40が形成されている。補強部材39bは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域を除く孔部33が外周に開設された形成領域の範囲内に、ロール片24bと共に積層される。補強部材39bの外径はロール片24bの外径よりも小さく、内径はロール片24bの内径と略同一である。
【0061】
ロール片24bと補強部材39bの有する切欠き部40が本体部27の形成領域に亘って連なることにより、図5の如く、複数の流体導入溝部34が形成されると共に、孔部33のロール部22側に流体導入溝部34が位置するよう設定される。すなわち、孔部33と、流体導入溝部34は対向するよう形成される。
【0062】
補強部材39a、39bは、ロール片24a、24bより回転外径が小さく、ロール部22に吸収される液体により膨潤等により劣化しなければ、材質、形状等は、特に限定されるものではない。補強部材39a、39bの材質としては、例えば、平板状の不織布37、織布、編物等の布帛、合成樹脂板、金属板、フィルム状樹脂組成物、合成樹脂発泡体等が用いられる。好適には、液体が浸透しやすい空隙部を有する不織布37が用いられる。前記不織布37の空隙率は、強度等を考慮し、5%以上50%以下であることが望ましい。補強部材39aと補強部材39bは同一の材質であっても、異なる材質であっても構わない。また、ロール片24a、24bと補強部材39a、39bは同一の材質であっても、異なる材質であっても構わない。ロール片24a、24bと補強部材39a、39bが異なる材質である場合、補強部材39a、39bは、ロール片24a、24bよりもコストが安価な材質であれば、ロール21のコストを抑えることができる。
【0063】
ロール片24aにたいする補強部材39aの挿入枚数、及びロール片24bにたいする補強部材39bの挿入枚数は、ロール部22の表面部と芯部における硬度、コスト等を考慮して、適宜、決定すればよい。例えば、2乃至10枚のロール片24a、24bにたいして、1枚の補強部材39a、39bを挿入する。
【0064】
上記の如く構成されたロール21の動作、作用は下記の通りである。
【0065】
ロール21は、本体部27に連接する継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29が共に中空部31を有する中空状であり、ネジ部32にロータリージョイントを挿入し、配管を介して真空ポンプを接続し、真空ポンプを稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部22に負圧が付加され、ロール部22に吸収された液体は、流体となり、流体は、図5の二点鎖線矢印の如く、流体導入溝部34、及び孔部33を通り、開口部30に流れ込み、継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29に形成された中空部31からロール21の外部に吸引されて、放出される。従って、ロール部22の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール21は長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができる。
【0066】
ロール部22は、ロール片24a、24bよりも回転外径が小さい補強部材39a、39bを有するので、ロール部22の表面部は、芯部に比べて硬度が低く、柔軟性が高いことから、ロール21の弾力性が向上し、ロール部22と被洗浄面の接触面積が広がり、被洗浄面から効率よく確実に液体が除去、搾取、洗浄される。一方、ロール部22の芯部は、ロール片24a、24bと補強部材39a、39bが積層されているので、表面部に比べて硬く、ロール21の回転中において、ロール片24a、24bが本体部27から位置ズレを生じ、ロール部22の表面部に凹凸が発生することが防止される。その為、ロール21は被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。
【0067】
補強部材39bの内周には切欠き部40が形成されているので、ロール部22は補強部材39bが積層されてあっても、連続的に形成された流体導入溝部34が確保される為、流体の流れが補強部材39bにより遮断されることがない。その為、流体を均一にロール部22から開口部30に吸引することができる。
【0068】
ロール片24b、及び補強部材39bの有する切欠き部40は、内周の等分6箇所に形成されているので、ロール21は回転時のバランスがよく、回転ブレを発生することがなく、安定した回転が保持される為、長期間に亘り、優れた液体除去性能が発揮される。
【実施例3】
【0069】
図7、及び図8を用いて、実施例3のロールについて説明する。なお、上記実施例1、及び実施例2と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0070】
図7において、台座43は、外周に複数の円形の孔部53が形成された略円筒形状の本体部47の両端部に、中空状の継ぎ手部A48、及び継ぎ手部B49が溶接による接合部56を介し、連接して形成されている。本体部47は、孔部53が外周に開設されていない端部の近傍における非形成領域L_(4)、孔部53が本体部47の外周等分6箇所に設けられていると共に、本体部47の長手方向に略平行に形成された形成領域L_(3)、孔部53が本体部47の外周等分12箇所に設けられていると共に、本体部47の長手方向に略平行に形成された集中形成領域L_(5)からなる。集中形成領域L_(5)は、本体部47の略中央部の近傍に形成され、形成領域L_(3)は、本体部47の長手方向に亘る全長の内、両端部の近傍における非形成領域L_(4)、及び略中央部の近傍における集中形成領域L_(5)を除く範囲内にて形成されている。従って、集中形成領域L_(5)は、本体部47の外周等分12箇所に孔部53が形成されていることから、孔部53の開口面積の比率は、本体部47の外周等分6箇所に孔部53が形成された形成領域L_(3)よりも大きいことになる。継ぎ手部A48、及び継ぎ手部B49に形成された窪み部55には、止め金具25が嵌合挿入される。
【0071】
図8(a)において、ロール片44aは、中心部に穴部58が形成された概円環状の不織布57からなる。不織布57は、複数本の繊維を有する。ロール片44aは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部53が本体部47の外周に開設されていない非形成領域L_(4)の範囲に積層される。
【0072】
図8(b)において、ロール片44bは、中心部に穴部58が形成された概円環状の不織布57からなる。不織布57は、複数本の繊維を有する。また、ロール片44bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。ロール片44bは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域L_(4)と、略中央部の近傍における集中形成領域L_(5)を除く孔部53が外周等分6箇所に開設された形成領域L_(3)の範囲内に積層される。
【0073】
図8(c)において、ロール片44cは、中心部に穴部58が形成された概円環状の不織布57からなる。不織布57は、複数本の繊維を有する。また、ロール片44cは、内周の等分12箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。ロール片44cは、台座43を構成する本体部47の外周等分12箇所に孔部53が開設された長手方向の略中央部の近傍における集中形成領域L_(5)の範囲内に積層される。
【0074】
図8(d)において、補強部材59aは、中心部に穴部58を有する概円環状にて形成されている。補強部材59aは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部53が本体部47の外周に開設されていない非形成領域L_(4)の範囲に、ロール片44aと共に積層される。補強部材59aの外径はロール片44aの外径よりも小さく、内径はロール片44aの内径と略同一である。
【0075】
図8(e)において、補強部材59bは、中心部に穴部58を有する概円環状にて形成されている。また、補強部材59bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。補強部材59bは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域L_(4)と、略中央部の近傍における集中形成領域L_(5)を除く孔部53が外周等分6箇所に開設された形成領域L_(3)の範囲内に、ロール片44bと共に積層される。補強部材59bの外径はロール片44bの外径よりも小さく、内径はロール片44bの内径と略同一である。
【0076】
図8(f)において、補強部材59cは、中心部に穴部58を有する概円環状にて形成されている。また、補強部材59cは、内周の等分12箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。補強部材59cは、台座43を構成する本体部47の外周等分12箇所に孔部53が開設された長手方向の略中央部の近傍における集中形成領域L_(5)の範囲内に、ロール片44cと共に積層される。補強部材59cの外径はロール片44cの外径よりも小さく、内径はロール片44cの内径と略同一である。
【0077】
ロール片44bと補強部材59bの有する切欠き部50が本体部47の形成領域L_(3)に亘って連なり、ロール片44cと補強部材59cの有する切欠き部50が本体部47の集中形成領域L_(5)に亘って連なることにより、複数の流体導入溝部34が形成されると共に、孔部53のロール部22側に流体導入溝部34が位置するよう設定される。すなわち、孔部53と、流体導入溝部34は対向するよう形成される。
【0078】
上記の如く構成された台座43を用いて、本体部47の外周にロール片44a、44b、44cと補強部材59a、59b、59cを積層させてロール部22が形成されたロール21の動作、作用は下記の通りである。
【0079】
ロール21は、本体部47の外周にたいする孔部53の開口面積の比率が、本体部47の端部の近傍における形成領域L_(3)よりも、略中央部の近傍における集中形成領域L_(5)の方が大きく形成されているので、本体部47の略中央部の近傍において、より多くの流体が流体導入溝部34に沿って流れると共に、孔部53を介して開口部30に流出する。ところで、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面は、さまざまな幅のものがロール部22に接触し、通過するが、ロール部22の略中央部の近傍は、必ず前記被洗浄面が通過する。従って、ロール部22の略中央部の近傍は、最も液体が吸収される箇所である。その為、本体部47の略中央部の近傍から、より多くの流体が開口部30に流れ込む形態とすることにより、ロール部22からの液体の吸引性能が飛躍的に向上する。
【実施例4】
【0080】
図9を用いて、実施例4の洗浄装置について説明する。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。また、ロールは、鋼板に付着した油分除去用として用いられるものとする。
【0081】
ロール61a、61bは、洗浄装置60に上下一対で設置され、上部に位置するロール61aの台座63の両端部、すなわち継ぎ手部A68、及び継ぎ手部B69に一定の圧力が加えられ、駆動手段64により矢印の方向に回転駆動し、上部のロール61aと下部のロール61bの間を、両面に油分(図示せず)が付着したピース状の鋼板70が白抜き矢印の方向に送出されている。また、継ぎ手部A68と継ぎ手部B69の端部にはロータリージョイント66が挿入されると共に、配管65を介して真空ポンプ67に連接されている。上部に位置するロール61aは鋼板70の表面から油分を除去し、下部に位置するロール61bは鋼板70の裏面から油分を除去する。油分が付着した鋼板70は、ロール部62と接触し、ロール部62を構成する不織布の有する繊維の毛細管現象により、油分がロール部62に吸い上げられると共に、ロール部62の空隙に放出される。なお、ロール61a、61bは、上記に示した実施例1?3のロール1、21のいずれかと同一である。
【0082】
上記の如くのロール61a、61bの状態において、真空ポンプ67を稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部62に負圧が付加され、ロール部62に吸収された油分は、流体となり、流体は、流体導入溝部、及び孔部を通り、開口部に流れ込み、継ぎ手部A68、及び継ぎ手部B69に形成された中空部から配管65を通り、ロール61a、61bの外部に吸引されて、放出される。流体は、真空ポンプ67にてフィルター(図示せず)を介し、図示しない配管を通り、洗浄油タンクへ再び送出される。従って、ロール部62の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール61a、61bは長期間に亘って、鋼板70に付着した油分を、確実に除去することができる。
【0083】
上記の如く構成された洗浄装置60の動作、作用は下記の通りである。
【0084】
洗浄装置60は、長期間に亘って、鋼板70から油分を確実に除去することができるロール61a、61bが搭載されていることから、優れた油分除去性能が発揮される。その為、鋼板70に油分が不均一に残る残滓マークの発生が抑制され、鋼板70の品質の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のロールは、主に、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する目的以外にも、高い液体の除去性能を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1、21、61a、61b ロール
2、22、62 ロール部
3、23、43、63 台座
4a、4b、24a、24b、44a、44b、44c ロール片
5、25 止め金具
6、26 プレート
7、27、47 本体部
8、28、48、68 継ぎ手部A
9、29、49、69 継ぎ手部B
10、30 開口部
11、31 中空部
12、32 ネジ部
13、33、53 孔部
14、34 流体導入溝部
15、55 窪み部
16、56 接合部
17、37、57 不織布
18、38、58 穴部
19 側縁部
20、40、50 切欠き部
39a、39b、59a、59b、59c 補強部材
60 洗浄装置
64 駆動手段
65 配管
66 ロータリージョイント
67 真空ポンプ
70 鋼板
71、81 徐変部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは配管を介して真空ポンプに連通される中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるように前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bに傾斜面を有する徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片と、該ロール片よりも回転外径が小であり、不織布からなる補強部材とを有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、該流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内であって、前記孔部が前記本体部に開設されている領域に形成されてあり、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置することを特徴とするロール。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、補強部材の内周には切欠き部が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項3に記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片及び補強部材の有する切欠き部は内周の等分箇所に形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれか1項に記載の構成よりなるロールにおいて、本体部の外周にたいする孔部の開口面積の比率が、本体部の端部の近傍よりも略中央部の方が大にて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項6】
請求項1又は3から5のいずれか1項に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段と、継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに配管を介して連通される真空ポンプを有する洗浄装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-10-05 
結審通知日 2012-10-11 
審決日 2012-10-30 
出願番号 特願2009-62235(P2009-62235)
審決分類 P 1 123・ 853- XA (B08B)
P 1 123・ 851- XA (B08B)
P 1 123・ 856- XA (B08B)
最終処分 審決却下  
前審関与審査官 長谷井 雅昭  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長浜 義憲
亀田 貴志
登録日 2010-12-24 
登録番号 特許第4652459号(P4652459)
発明の名称 ロール及び洗浄装置  
代理人 中村 繁元  
代理人 中村 繁元  
代理人 木村 満  
代理人 榊原 靖  
代理人 山口 直樹  
代理人 毛受 隆典  
代理人 竹中 一宣  
代理人 毛受 隆典  
代理人 大矢 広文  
代理人 山口 直樹  
代理人 榊原 靖  
代理人 木村 満  
代理人 竹中 一宣  
代理人 大矢 広文  
代理人 山田 雅哉  
代理人 山田 雅哉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ