• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61G
管理番号 1268584
審判番号 無効2010-800223  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-08 
確定日 2013-01-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3844354号発明「座幅調整可能な車椅子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本件特許第3844354号に係る主な手続は、以下のとおりである。
平成15年12月 2日 本件出願(特願2003-403284号)
平成18年 8月25日 設定登録(特許第3844354号)
平成22年12月 8日 無効審判請求
平成23年 3月18日 答弁書
3月18日 訂正請求
5月 6日 弁駁書
5月26日 補正拒否の決定
6月 6日 審理事項通知書
6月23日 被請求人口頭審理陳述要領書
7月 6日 請求人口頭審理陳述要領書
7月21日 口頭審理

第2 本件訂正の内容
平成23年3月18日になされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第3844354号の特許請求の範囲及び明細書を、平成23年3月18日付けの訂正請求書に添付した特許請求の範囲(以下、「訂正特許請求の範囲」という。)及び明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、訂正の内容は、以下の訂正事項1?11のとおりである。(下線部は、訂正箇所を示す。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1のうち、
「この上部水平杆(12)、(12)および下部水平杆(13)、(13)のいずれかに一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)」を、「この上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1のうち、
「このX字状挟動体(3)は、前記したガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿するとともに上部水平杆(12)、(12)と下部水平杆(13)、(13)のいずれかを椅子フレーム(2)の横桁(2b)に係脱自在とした状態で椅子フレーム(2)、(2)間に介在されて前記した支柱(2a)、(2a)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されていて」を、「このX字状挟動体(3)は、前記したガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿するとともに、上部水平杆(12)を椅子フレーム(2)の横桁(2b)に係脱自在とした状態で、椅子フレーム(2)、(2)間に介在され、下部水平杆(13)が支柱(2a)、(2a)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されていて」と訂正する。
(なお、訂正特許請求の範囲における「このX字挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに」との記載は誤記であって、正しくは「このX字状挟動体(3)は、前記したガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿するとともに」と解されるので、上記のように認定した。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1のうち、
「前記した支柱(2a)、(2a)に対するX字状挟動体(3)の連結位置を高低調整することにより」を、「前記した支柱(2a)、(2a)に対する下部水平杆(13)の連結位置を高低調整することにより、」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1のうち、
「ロック機構(15)が、支柱(2a)に透設された複数の位置調整用の係止孔(16)と、上部水平杆(12)または下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と、該各スライドピン(17)を係止方向に付勢するばね(18)と、各スライドピン(17)に片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブ(19)とからなる」を、「ロック機構(15)が、支柱(2a)に透設された複数の位置調整用の係止孔(16)と、下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と、各スライドピン(17)が嵌挿ガイドされるスライダ(20)と、該各スライドピン(17)を係止方向に付勢するばね(18)と、各スライドピン(17)に片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブ(19)とからなり、該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにした」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許明細書【0004】の第4?5行目(特許公報第2頁第37?38行目)に記載の「この上部水平杆および下部水平杆のいずれかに一端を枢着させたスライド杆」を、「この上部水平杆に一端を枢着させたスライド杆」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許明細書【0004】の第6?11行目(特許公報第2頁第39?44行目)に記載の「このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに上部水平杆と下部水平杆のいずれかを椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で椅子フレーム間に介在されて前記した支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、前記した支柱に対するX字状挟動体の連結位置を高低調整することによりこのX字状挟動体の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした」を、「このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに、上部水平杆を椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で、椅子フレーム間に介在され、下部水平杆が支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、前記した支柱に対する下部水平杆の連結位置を高低調整することによりこのX字状挟動体の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした」と訂正する。

(7)訂正事項7
特許明細書【0004】の第11?14行目(特許公報第2頁第44?47行目)に記載の「前記したロック機構が、支柱に透設された複数の位置調整用の係止孔と、上部水平杆または下部水平杆内に設けられて前記各係止孔に係脱する二本のスライドピンと、該各スライドピンを係止方向に付勢するばねと、各スライドピンに片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブとからなる」を、「前記したロック機構が、支柱に透設された複数の位置調整用の係止孔と、下部水平杆内に設けられて前記各係止孔に係脱する二本のスライドピンと、各スライドピンが嵌挿ガイドされるスライダと、該各スライドピンを係止方向に付勢するばねと、各スライドピンに片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブとからなり、該スライダは、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆を複数の支柱間で円滑にスライドできるようにした」と訂正する。

(8)訂正事項8
特許明細書【0005】の第3?4行目(特許公報第3頁第2?3行目)に記載の「この上部水平杆および下部水平杆のいずれかに一端を枢着させたスライド杆」を、「この上部水平杆に一端を枢着させたスライド杆」と訂正する。

(9)訂正事項9
特許明細書【0005】の第5?9行目(特許公報第3頁第4?8行目)に記載の「このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに上部水平杆と下部水平杆のいずれかを椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で椅子フレーム間に介在されて前記した支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、前記した支柱に対するX字状挟動体の連結位置を高低調整することによりこのX字状挟動体の開き角度を変えて座幅を調整できるようにしたから」を、「このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに、上部水平杆が椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で椅子フレーム間に介在され、下部水平杆が支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、前記した支柱に対する下部水平杆の連結位置を高低調整することによりこのX字状挟動体の開き角度を変えて座幅を調整できるようにしたから」と訂正する。

(10)訂正事項10
特許明細書【0008】の第1?4行目(特許公報第3頁第22?25行目)に記載の「ロック機構が、支柱に透設された複数の位置調整用の係止孔と、上部水平杆または下部水平杆内に設けられて前記各係止孔に係脱する二本のスライドピンと、該各スライドピンを係止方向に付勢するばねと、各スライドピンに片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブとからなる」を、「ロック機構が、支柱に透設された複数の位置調整用の係止孔と、下部水平杆内に設けられて前記各係止孔に係脱する二本のスライドピンと、各スライドピンが嵌挿ガイドされるスライダと該各スライドピンを係止方向に付勢するばねと、各スライドピンに片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブとからなり、該スライダは、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆を複数の支柱間で円滑にスライドできるようにした」と訂正する。

(11)訂正事項11
特許明細書【0025】の内容全体(特許公報第5頁第49?第6頁第5行目)を削除する。

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、特許第3844354号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)についての特許を無効とする、仮に本件訂正が認められたとしても、本件訂正により訂正された本件特許発明(以下、「訂正特許発明」という。)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として甲第1号証?13号証の1を提出し、無効とすべき理由を次のように主張する。

本件特許発明及び訂正特許発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証に記載された周知技術並びに甲第8号証?甲第12号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許発明及び訂正特許発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2003-126168号公報
甲第2号証:特開平10-108882号公報
甲第3号証の1:本件特許の包袋の出願情報
甲第3号証の2:本件特許の包袋の平成18年3月6日付け拒絶理由通知書
甲第3号証の3:本件特許の包袋の平成18年5月2日付け意見書
甲第3号証の4:本件特許の包袋の平成18年5月2日付け手続補正書
甲第3号証の5:本件特許の包袋の平成18年6月1日付け拒絶理由通知書
甲第3号証の6:本件特許の包袋の平成18年7月19日付け意見書
甲第3号証の7:本件特許の包袋の平成18年7月19日付け手続補正書
甲第4号証:特開2001-321404号公報
甲第5号証:特開2002-126008号公報
甲第6号証:特開平9-168566号公報
甲第7号証:特開平7-39562号公報
甲第8号証:特開2003-19959号公報
甲第9号証:実願昭47-93730号(実開昭49-51529号)のマイクロフィルム
(なお、平成22年12月8日付け審判請求書の「8.証拠方法(2)証拠の表示」の項の「公開実用昭和49-51529号公報」は、前記審判請求書に添付された甲第9号証からして、誤記であって、正しくは「実願昭47-93730号(実開昭49-51529号)のマイクロフィルム」と解されるので、上記のように認定した。)
甲第10号証:特開平8-333976号公報
甲第11号証:特開平9-224791号公報
甲第12号証:特開平10-14722号公報
甲第13号証:米国特許第4082348号明細書
甲第13号証の1:甲第13号証の部分訳

2.被請求人の主張
被請求人は、本件訂正を認める、本件無効審判の請求は認められない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として乙第1号証、乙第1号証の1を提出し、次のように主張する。

(1)本件訂正は、訂正要件を具備し、認められる。

(2)訂正特許発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証に記載された周知技術並びに甲第8号証?甲第12号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[証拠方法]
乙第1号証:独国実用新案第29721699号公報
乙第1号証の1:乙第1号証の翻訳文

第4 訂正の可否についての判断
1.各訂正事項についての検討
(1)訂正事項1
訂正事項1は、スライド杆(14a)、(14a)が枢着する水平杆を、上部水平杆(12)、(12)に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、「・・・この上部水平杆および下部水平杆のいずれかに一端を枢着させたスライド杆をガイド杆に遊挿した姿勢保持用のガイド部材・・・」(【0004】)との記載、「・・・上部水平杆12に枢着される姿勢保持用のガイド部材14・・・」(【0012】)との記載が存在するから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、椅子フレームの横桁(2b)に係脱自在とする水平杆を、上部水平杆(12)に限定するとともに、「前記したガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿するとともに」、「横桁(2b)に係脱自在とした状態で」及び「椅子フレーム(2)、(2)間に介在され」の後に「、」をそれぞれ挿入し、さらに、支柱(2a)、(2a)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されるX字状挟動体(3)の構成要素を下部水平杆(13)に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、「・・・このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに上部水平杆と下部水平杆のいずれかを椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で椅子フレーム間に介在されて前記した支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて・・・」(【0004】)との記載、「・・・前記上部水平杆12は左右の椅子フレーム2の横桁2bに取り付けられた断面U字状をした受ホルダー2cに上から落し込んで係止するもので、折り畳み時には自動的に離脱する係脱自在なものとしている。下部水平杆13は椅子フレーム2に並設される後部および中間の支柱2a、2a間に後記ロック機構15により高さ調整自在に枢着係止されるものであり、下部水平杆13の椅子フレーム2への係止枢着位置を調整することにより座幅が調整できるものとしている。下部水平杆13の長さは後部と中間の支柱2a、2aの間隔と略等しいものとしている。」(【0013】)との記載が存在するから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、支柱(2a)、(2a)に対する連結位置を高低調整するX字状挟動体(3)の構成要素を下部水平杆(13)に限定するとともに、「連結位置を高低調整することにより」の後に「、」を挿入するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、「・・・下部水平杆13は椅子フレーム2に並設される後部および中間の支柱2a、2a間に後記ロック機構15により高さ調整自在に枢着係止されるものであり、下部水平杆13の椅子フレーム2への係止枢着位置を調整することにより座幅が調整できるものとしている。下部水平杆13の長さは後部と中間の支柱2a、2aの間隔と略等しいものとしている。」(【0013】)との記載が存在するから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、二本のスライドピン(17)を内に設ける水平杆を下部水平杆(13)に限定するとともに、ロック機構の構成要素に、各スライドピン(17)が嵌挿ガイドされるスライダ(20)を付加し、さらに、該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにした点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、「・・・下部水平杆13内にスライド自在に嵌挿される二本のスライドピン17、17・・・先端にU字状ガイド部を設けたスライダ20、20・・・前記スライドピン17、17はスライダ20、20に嵌挿ガイドされたうえ下部水平杆13内に嵌挿されるものである。・・・前記スライダ20、20のU字状ガイド部は支柱2a、2aの直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆13を後部と中間の支柱2a、2a間で円滑にスライドできるようにしている。」(【0015】?【0016】)との記載が存在するから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5?訂正事項11
訂正事項5?訂正事項11は、それぞれ、訂正事項1?4による特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に伴い、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、上記訂正事項1?4と同様の理由で、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2.まとめ
以上のとおり、訂正事項1?11は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第5 訂正特許発明
以上のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正により訂正された本件特許発明である訂正特許発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「A:複数の支柱(2a)、(2a)を上下一対の横桁(2b)、(2b)で繋いだ左右一対の椅子フレーム(2)、(2)を相互間に介在させたX字状挟動体(3)を備えた折り畳み機構(6)により折り畳み自在に連繋した車椅子であって、
B:前記したX字状挟動体(3)を、挟動可能な前部Xリンク(10)および後部Xリンク(11)と、
C:この前部Xリンク(10)および後部Xリンク(11)を連繋している上部水平杆(12)、(12)および下部水平杆(13)、(13)と、
D:この上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿した姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)とよりなるものとして、
E:このX字状挟動体(3)は、前記したガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿するとともに、
F:上部水平杆(12)を椅子フレーム(2)の横桁(2b)に係脱自在とした状態で、椅子フレーム(2)、(2)間に介在され、下部水平杆(13)が支柱(2a)、(2a)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されていて、
G:前記した支柱(2a)、(2a)に対する下部水平杆(13)の連結位置を高低調整することにより、このX字状挟動体(3)の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした車椅子であって、
H:前記したロック機構(15)が、支柱(2a)に透設された複数の位置調整用の係止孔(16)と、
I:下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と、
X:各スライドピン(17)が嵌挿ガイドされるスライダ(20)と、
J:該各スライドピン(17)を係止方向に付勢するばね(18)と、
K:各スライドピン(17)に片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブ(19)とからなり、
Y:該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにしたものであることを特徴とする
L:座幅調整可能な車椅子。」
(なお、「折り畳み機構(7)」は誤記であって、正しくは「折り畳み機構(6)」と解されるので、上記のように認定した。
また、便宜上、請求人及び被請求人に倣って特許請求の範囲の記載を分説した。)

第6 甲各号証の記載内容
1.甲第1号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2003-126168号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲1ア:「【産業上の利用分野】本発明は巾調節できる車いすに関するものである。」(【0001】)

甲1イ:「【発明が解決しようとする課題】しかし、図10に示すように車椅子(9) を介助者によらず使用者自身が移動させるには主車輪(91)あるいは主車輪に取り付けられたハンドリムを手で掴んで回すので、使用者の体形に応じて車椅子(9) の巾を調節しなければ、車椅子(9) に乗った人が車輪(91)を手で回す時、車輪(91)の巾が広すぎたり狭すぎたりして車輪(91)を回し易い位置に手をおくことが出来ないという問題点があった。」(【0003】)

甲1ウ:「【発明の実施の形態】本発明を図1?図8 に示す一実施例によって説明すれば、図1?3に示す車椅子(1) の本体(2) は左右一対の側枠(3,3) からなり該側枠(3,3) は座梁部(4) 、前後脚柱部(5,6) 、アームレスト部(7) 、背柱部(8) 、フットレスト支持梁(9) および下梁(10)からなり、該側枠(3,3) は前後一対のX枠(11,12) によって結合されている。」(【0009】)

甲1エ:「左右の側枠(3,3) を連結している前後一対のX枠(11,12) は図5に示すようにそれぞれ一対の回動杆(11A,11A) および一対の回動杆(12A,12A) からなり、該一対の回動杆(11A,11A,12A,12A) はそれぞれ中心Cを支点に相互回動可能に結合しており、該一対のX枠(11,12) の上端において一対の円筒状の上側杆(17,17) が、下端においては一対の円筒状の下側杆(18,18) が差し渡され溶接されている。
また図6に示すように該側枠(3) 下部の下梁(10)には前後一対の角柱状の下側杆取付け部(13,13) が溶接され、該下側杆取付部(13,13) には軸穴(13A,13B,13C) が複数個(3個)上下に配列して設けられている。さらに該下側杆取付部(13,13) の一方には抜止め軸孔(13D) が上面から下面にかけて貫通して設けられている。また該側枠(3) の座梁部(4) には前後一対の杆受け(16,16) が取り付けられている。」(【0012】?【0013】)

甲1オ:「該X枠(11,12) により該側枠(3,3) を連結するには、該X枠(11,12) の円筒状の下側杆(18)を下側杆取付部(13,13) のいずれかの軸穴(13A,13B,13C) 例えば軸穴(13A) に合わせ、軸である枢軸(26)を該軸穴(13A,13A) および円筒状の下側杆(18)の内部に挿通して支持する。この時該X枠(11,12) の上側杆(17)は座梁部(4) の杆受け(16,16) に支持される。」(【0015】)

甲1カ:「本実施例の車椅子(1) の巾を調節するには、背布(19)および座布(21)の面ファスナー(20,22) を剥がし、抜止め軸(27)を抜止め軸孔(13D) より引き抜く。さらに枢軸(26)を下側杆(18)および軸穴(13A) より引き抜く。そしてリンクアーム(30)をリンクアーム取付部(14)に固定しているネジ(32)を外して、リンクアーム(30)と側枠(3,3) の連結を解放する。この状態で図8に示すように該X枠(11,12)の回動杆(11A,11A,12A,12A) を中心Cを支点に回動させてX枠(11,12) の巾を調節しつつ、これに合わせて側枠(3,3) を移動させて車椅子(1) の巾を調節する。
このときX枠(11,12) の巾を狭めると、X枠(11,12) の縦巾は大きくなり、X枠(11,12) の巾を広げると、X枠(11,12) の縦巾は小さくなる。そしてX枠(11,12) の下側杆(18,18) を軸穴(13A,13B,13C) のうちの適切な軸穴を選んで位置を合わせ、該枢軸(26)を該軸穴(13A,13B,13C) および該円筒状の下側杆(18,18) の内部に挿通して該X枠(11,12) を支持させる。
このようにして巾を調節しX枠(11,12) を側枠(3,3) に固定したら該抜止め軸(27)を下側杆取付部(13)の抜止め軸孔(13D,26A) に挿通する。さらにリンクアーム(30,30) を回動杆(12A,12A) の中央より上部と後脚柱部(6,6) のリンクアーム取付部(14,14) とに差し渡し、回動杆(12A,12A) に設けられたネジ穴(12B) およびリンクアーム取付部(14,14) のネジ穴(14A,14B,14C) のうち適合するネジ穴を選んでネジ(31,32) にて固定する。このようにして側枠(3,3) 間の巾を調節したら、座布(19)および背布(21)の面ファスナー(20,22) を貼り直して座部および背もたれを整える。
本実施例では軸穴およびネジ孔は3個であり、巾は3段階に調節できるが、該軸穴およびネジ孔は2個あるいは4個以上であってもよい。またX枠は1個または3個以上であってもよい。また軸(26,31,32)は必ずしも枢軸やネジである必要はないが、枢軸やネジであると下側杆やリンクアームが回動可能で図9に示すように車椅子を折り畳むことが出来る。」(【0018】?【0021】)

甲1キ:甲1アの「本発明は巾調節できる車いすに関する」との記載、甲1ウの「図1?3に示す車椅子(1) の本体(2) は左右一対の側枠(3,3) からなり該側枠(3,3) は座梁部(4) 、前後脚柱部(5,6)・・・ および下梁(10)からなり、該側枠(3,3) は前後一対のX枠(11,12) によって結合されている。」との記載、甲1カの「図9に示すように車椅子を折り畳むことが出来る。」との記載及び図1?3,9の図示内容からして、車椅子は、前後脚柱部(5,6)を上下一対の座梁部(4)、下梁(10)で繋いだ左右一対の側枠(3,3)を相互間に介在させたX枠(11,12)を備えた折り畳み機構により折り畳み自在に連結したものといえる。

甲1ク:甲1エの「左右の側枠(3,3) を連結している前後一対のX枠(11,12) は図5に示すようにそれぞれ一対の回動杆(11A,11A) および一対の回動杆(12A,12A) からなり、該一対の回動杆(11A,11A,12A,12A) はそれぞれ中心Cを支点に相互回動可能に結合しており、該一対のX枠(11,12) の上端において一対の円筒状の上側杆(17,17) が、下端においては一対の円筒状の下側杆(18,18) が差し渡され溶接されている。」との記載及び図5の図示内容からして、X枠(11,12)は、挟動可能な前部X枠(11)及び後部X枠(12)と、この前部X枠(11)及び後部X枠(12)を連繋している上側杆(17,17)及び下側杆(18,18)とよりなるといえる。

甲1ケ:甲1エの「図6に示すように該側枠(3) 下部の下梁(10)には前後一対の角柱状の下側杆取付け部(13,13) が溶接され、該下側杆取付部(13,13) には軸穴(13A,13B,13C) が複数個(3個)上下に配列して設けられている。・・・また該側枠(3) の座梁部(4) には前後一対の杆受け(16,16) が取り付けられている。」との記載、甲1オの「該X枠(11,12) により該側枠(3,3) を連結するには、該X枠(11,12) の円筒状の下側杆(18)を下側杆取付部(13,13) のいずれかの軸穴(13A,13B,13C) 例えば軸穴(13A) に合わせ、軸である枢軸(26)を該軸穴(13A,13A) および円筒状の下側杆(18)の内部に挿通して支持する。この時該X枠(11,12) の上側杆(17)は座梁部(4) の杆受け(16,16) に支持される。」との記載及び図6の図示内容からして、X枠(11,12)は、上側杆(17,17)を側枠(3)の座梁部(4)に係脱自在とした状態で、側枠(3,3)間に介在され、下側杆(18,18)を、下梁(10)の下側杆取付部(13,13)に設けられた上下に配列している複数個の軸穴(13A,13B,13C,13D)のうちの一つの位置に合わせ、軸(26)を軸穴(13A,13A)及び下側杆(18)の内部に挿通することにより、下梁(10)に対して係脱自在に連結するとえる。

甲1コ:甲1カの「図8に示すように該X枠(11,12)の回動杆(11A,11A,12A,12A) を中心Cを支点に回動させてX枠(11,12) の巾を調節しつつ、これに合わせて側枠(3,3) を移動させて車椅子(1) の巾を調節する。このときX枠(11,12) の巾を狭めると、X枠(11,12) の縦巾は大きくなり、X枠(11,12) の巾を広げると、X枠(11,12) の縦巾は小さくなる。そしてX枠(11,12) の下側杆(18,18) を軸穴(13A,13B,13C) のうちの適切な軸穴を選んで位置を合わせ、該枢軸(26)を該軸穴(13A,13B,13C) および該円筒状の下側杆(18,18) の内部に挿通して該X枠(11,12) を支持させる。」との記載及び図8の図示内容からして、下梁(10)に対する下側杆(18)の連結位置を高低調整することにより、このX枠(11,12)の開き角度を変えて座幅を調整できるといえる。

以上によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「前後脚柱部を上下一対の座梁部、下梁で繋いだ左右一対の側枠を相互間に介在させたX枠を備えた折り畳み機構により折り畳み自在に連結した車椅子であって、
前記したX枠を、挟動可能な前部X枠及び後部X枠と、
この前部X枠及び後部X枠を連繋している上側杆及び下側杆とよりなるものとして、
このX枠は、上側杆を側枠の座梁部に係脱自在とした状態で、側枠間に介在され、下側杆を、下梁の下側杆取付部に設けられた上下に配列している複数個の軸穴のうちの一つの位置に合わせ、軸を軸穴及び下側杆の内部に挿通することにより、下梁に対して係脱自在に連結し、
前記した下梁に対する下側杆の連結位置を高低調整することにより、このX枠の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした、
座幅調整可能な車椅子。」

2.甲第2号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平10-108882号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲2ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、主に身体障害者や老人等が使用する車椅子に関するものである。」(【0001】)

甲2イ:「【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は上記問題点に鑑み、前輪が方向転換自在な小径車輪で、後輪が手漕ぎ駆動可能な大径車輪である状態と、前輪が大径車輪で、後輪が小径車輪である状態とに適宜変更可能な車椅子とすることを課題としている。」(【0004】)

甲2ウ:「【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために、次のようにした。すなわち、本発明の車椅子は、座席を備える本体フレームの前後両側部に左右一対の小径車輪と大径車輪をそれぞれ設け、前記座席の前側には足載台を備える足部フレームを、後側には背もたれを有する背部フレームを設けた車椅子において、前記足部フレーム及び背部フレームは本体フレームの前後何れ側にも取り付け可能に支持手段を介して着脱可能に設けられてなることを特徴とする。」(【0005】)

甲2エ:「17は背部フレームであり、上端を後方へ屈曲させて手押し走行用のハンドルグリップ18を一体に設け、下端には軸部材19を固着している。そして、前記軸部材19が嵌合可能な筒体20を側部フレーム枠2の後部に固着し、背部フレーム17の支持手段21を構成している。すなわち、背部フレーム17が本体フレーム1に着脱可能となっている。前記筒体20の側部には、ボルト22をその先端部が筒体20の内径部に出入可能に設け、当該筒体20に軸部材19を嵌合させた状態でボルト22の先端部を軸部材19の側面部に押圧させて背部フレーム17の回転及び抜けを防止する固定手段23を構成している。また、前記背部フレーム17は左右一対に設けられており、この背部フレーム17,17間にシート状部材を張設して背もたれ24を形成している。
25は足部フレームであり、パイプ部材を前下方に向けて伸びる傾斜状態に設け、その下端部には足載台26が取り付けられ、上端部には上下方向の軸部材27が固着されている。そして、前記軸部材27が嵌合可能な筒体28を側部フレーム枠2の前部に固着し、足部フレーム25の支持手段29を構成している。すなわち、足部フレーム25が本体フレーム1に着脱可能となっている。また、前記筒体28には側部フレーム枠2の後部に設けられる筒体20と同様に、ボルト30により軸部材27を押圧して足部フレーム25を固定する固定手段31が設けられている。なお32は脚受部材であり、シート状部材を左右の足部フレーム25,25間に張設して形成している。
前記背部フレーム17と足部フレーム25のそれぞれの支持手段21,29、すなわち、軸部材19と27、筒体20と28及び固定手段23と31は同一のものであり、背部フレーム17と足部フレーム25を互いに入れ替えて取り付け可能となっている。したがって、前輪が小径車輪14で後輪が大径車輪12である状態と、前輪が大径車輪12で後輪が小径車輪14である状態とに適宜変更することができる。なお、それぞれの支持手段が異なる場合であっても、本体フレーム1の前後にそれぞれ支持手段を設ければ背部フレーム17と足部フレーム25を入れ替え可能とすることができる。」(【0015】?【0017】)

甲2オ:図4には、車椅子において、背部フレーム17の下端に固着された軸部材19を、本体フレームを構成する側部フレーム枠2に設けられた筒体20に嵌合する態様が示されている。

以上によれば、甲第2号証には、次の技術事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「背部フレーム17を本体フレームの前後何れ側にも取り付け可能に支持手段を介して着脱可能に設けた車椅子において、
本体フレームを構成する側部フレーム枠2の前部及び後部に筒体20,28を固着して、背部フレーム17の支持手段21を構成し、背部フレーム17の下端に固着された軸部材19を筒体20,28に嵌合すること。」

3.甲第4号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2001-321404号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲4ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、例えば車椅子としても歩行器としても利用されうる歩行器兼用車椅子に関するものである。」(【0001】)

甲4イ:「本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、1台で車椅子としても利用でき、また、歩行器としても利用できる歩行器兼用車椅子の提供をその目的とするものである。」(【0005】)

甲4ウ:「【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するためになされた発明は、利用者が着座するための座部を備えており、この座部が上下方向に移動可能とされており、座部が下方に位置するときは車椅子として利用可能であり、座部が上方に位置するときは歩行器として利用可能であるように構成された歩行器兼用車椅子、である。
この歩行器兼用車椅子では、座部が下げられた場合は、利用者が座部に着座した状態で、介護者に押されるか自走することによって移動できる。また、座部が上げられた場合は、利用者がほぼ起立した状態で、必要に応じて体重をある程度座部にかけつつ歩行できる。すなわち、この歩行器兼用車椅子は、車椅子としても歩行器としても利用されうる。従って、車椅子と歩行器との両方が用意される必要がない。
座部の上下移動は、ロッドとこのロッドが挿通される円筒体とによって達成される。ロッド及び円筒体は、それぞれ1本ずつ設けられてもよく、また、2本以上設けられてもよい。このロッドは、歩行器兼用車椅子の後寄りに取り付けられており、略上下に延びている。円筒体は、ロッドに対してスライド可能である。この円筒体に座部が固定されており、円筒体がロッドに対してスライドすることによって座部が上下に移動する。」(【0006】?【0008】)

甲4エ:「図2に示されるように、中央ロッド25及び左右一対の横側ロッド23は歩行器兼用車椅子1の後方位置に存在し、ほぼ上下方向(若干、上ほど後方に傾斜した状態)に延びている。中央ロッド25は中央円筒体29に挿通されている。この中央円筒体29は、中央ロッド25に対してスライド可能である。また、横側ロッド23は、横側円筒体27に挿通されている。この横側円筒体27は、横側ロッド23に対してスライド可能である。中央円筒体29と2本の横側円筒体27とは、3本の横フレーム41によって連結され、一体化されている。従って、中央円筒体29と2本の横側円筒体27とは、一体となって上下にスライドする。」(【0015】)

甲4オ:図2には、歩行器兼用車椅子において、円筒体にロッドが挿通される態様が示されている。

以上によれば、甲第4号証には、次の技術事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「利用者が着座するための座部を備えており、この座部が上下方向に移動可能とされており、座部が下方に位置するときは車椅子として利用可能であり、座部が上方に位置するときは歩行器として利用可能であるように構成された歩行器兼用車椅子において、
座部の上下移動は、ロッドとこのロッドが挿通される円筒体とによって達成され、この円筒体に座部が固定されており、円筒体がロッドに対してスライドすることによって座部が上下に移動すること。」

4.甲第5号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開2002-126008号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲5ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、車椅子の座面昇降装置に関する。」(【0001】)

甲5イ:「本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、特に被介護者をベッドから起こして支え立ちにさせ、その姿勢からゆっくりと車椅子に座らせたり、反対に車椅子からゆっくりと起こして支え立ちにさせるときに、車椅子の座面を簡便な昇降機能によって昇降させることにより、被介護者の体重の一部を車椅子で支え、介護者の体力的負担を軽減することを目的としてなされたものである。すなわち、本発明の解決課題は、介護者、被介護者の双方にとって負担の軽減させるような、円滑に昇降する車椅子の座面昇降装置を提供することにある。」(【0006】)

甲5ウ:「【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明の車椅子の座面昇降装置は、座面下方の前後に相対して設けられた一対のX字状フレームを開閉して左右方向に折り畳めるように構成された車椅子のための座面昇降装置であって、前記一対のX字状フレームの上端部同士を前後方向に連結する連結バーと、前記X字状フレームの交差部を支点として前後のX字状フレームの間に懸架された基底部と、この基底部上に取り付けられて上下方向に伸縮する伸縮部材と、この伸縮部材の上部に取り付けられて左右方向に折り畳み自在に保持された座面支持部と、この座面支持部の左右両端に取り付けられて座面の左右両側縁部を支持する座面側縁部バーと、前記座面側縁部バーと前記連結バーとを連結する四節のリンク機構とを備え、前記伸縮部材を縮めることにより座面側縁部バーが連結バー上に重なって座面が下降状態になり、前記伸縮部材を伸ばすことにより座面側縁部バーが上昇しつつ前方に迫り出して座面が上昇状態となるように構成されたことを特徴とする。」(【0007】)

甲5エ:「基底部40には、例えば油圧や空気圧、ガス圧を利用して伸縮する伸縮部材50が取り付けられている。この例では、油圧ポンプ51、油圧シリンダ52、油圧シリンダ52内を往復して上方に出没するピストン53、油圧ポンプ51を駆動するバッテリ54、油圧ポンプ51と油圧シリンダ52とを連通する給油チューブ55、油圧ポンプ51を操作する適宜の手元スイッチ(図示せず)等が設けられ、油圧シリンダ52とピストン53とによって伸縮部材50が構成されている。油圧シリンダ52は、基底部40の底板41上に設けられた左右方向の回動軸にヒンジ連結されて、前後方向に一定範囲で揺動しうるように保持されている。」(【0019】)

甲5オ:図2には、車椅子において、油圧シリンダ52から上方に突出するピストン53により座面を支持する態様が示されている。

以上によれば、甲第5号証には、次の技術事項(以下、「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「車椅子の座面を簡便な昇降機能によって昇降させることにより、被介護者の体重の一部を車椅子で支え、介護者の体力的負担を軽減する車椅子において、
油圧シリンダ52内を往復して上方に出没するピストン53を有する伸縮部材50により座面を支持すること。」

5.甲第6号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開平9-168566号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲6ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、車椅子に関し、特に身障者、高齢者、患者等を自動車に容易に乗降させることが可能な車椅子に関する。」(【0001】)

甲6イ:「本発明は前述の事情に鑑みてなされたものであって、身障者等を自動車に容易に乗降させることが可能であり、且つ他の種々の用途にも使用することが可能な車椅子を低コストで提供することを目的とする。」(【0004】)

甲6ウ:「【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、車輪を有するメインフレームと、メインフレームの左右一側に設けられた上下伸縮自在な支持ポストと、支持ポストに中間部を前後揺動自在に枢支された揺動アームと、揺動アームの両端部からメインフレームの左右他側に延びる2本の支持軸と、2本の支持軸に両端部を支持された帯状の着座部材とを備えたことを特徴とする。」(【0005】)

甲6エ:「図1?図4に示すように、車椅子Cは平面視でH形に形成されたメインフレーム1を備えており、その四隅に設けた4個のキャスター2…により任意の方向に走行することができる。メインフレーム1の左側面に設けられた支持ポスト3は、メインフレーム1に立設されて内部に図示せぬ油圧ポンプ及び油圧シリンダを収納した固定ポスト4と、固定ポスト4の内部に摺動自在に嵌合して昇降する昇降ポスト5とから構成される。固定ポスト4の下部に設けたペダル6を踏むと油圧ポンプが作動して油圧シリンダが伸長し、昇降ポスト5が固定ポスト4に対して上昇する。固定ポスト4の中間部に設けたレバー7を操作すると自重で油圧シリンダが収縮し、昇降ポスト5が固定ポスト4に対して下降する。」(【0011】)

甲6オ:図1には、車椅子において、支持ポスト3が固定ポストの内部に摺動自在に嵌合して昇降する昇降ポスト5を有する態様が示されている。

以上によれば、甲第6号証には、次の技術事項(以下、「甲6技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「車輪を有するメインフレームと、メインフレームの左右一側に設けられた上下伸縮自在な支持ポストと、支持ポストに中間部を前後揺動自在に枢支された揺動アームと、揺動アームの両端部からメインフレームの左右他側に延びる2本の支持軸と、2本の支持軸に両端部を支持された帯状の着座部材とを備え、身障者等を自動車に容易に乗降させることが可能な車椅子において、
支持ポストは、固定ポストの内部に摺動自在に嵌合して昇降する昇降ポストを有すること。」

6.甲第7号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開平7-39562号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲7ア:「【産業上の利用分野】本発明は、身体障害者、病人、寝たきり老人をベッドやトイレの便座、浴室台、シャワー台等から車椅子に、また車椅子からベッド等に容易に乗り移らせることができる介護用車椅子に関するものである。」(【0001】)

甲7イ:「本発明は上記従来の問題点を解決するもので、患者をベッド等へ移乗させる際に、簡単な操作で座席部を自由に上下動できるとともに、患者を寝たままベッド等へ又は座ったまま浴室台等へ苦痛を与えることなくスムーズにかつ安全に移すことができ操作性に優れ、かつ便利性、安全性に優れるとともに作業性を向上させた構造が簡単でかつ軽量で低原価で量産性に適した介護用車椅子を提供することを目的とする。」(【0004】)

甲7ウ:「【実施例】以下本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例における介護用車椅子の移乗部のスライド時の状態を示す全体斜視図である。・・・以上のように構成された本発明の一実施例における介護用車椅子について、以下それを用いたベッドへの移乗作業における動作を説明する。まず図2、図3を用いて介護用車椅子の座席体1dの高さをベッドの上面の高さに合わせる動作について説明する。図2(a)は本発明の一実施例における介護用車椅子のスタンドを立てる方法を示す側面側から見た要部模式図であり、図2(b)は本発明の一実施例における介護用車椅子のスタンドを立てた状態を示す要部斜視図であり、図3は本発明の一実施例における介護用車椅子の上下動機構の要部斜視図である。図2において、7aは下部フレーム11の後方端部に回動自在に固定されたスタンド7を立てたときに車輪12を床面より浮上させる垂直幹、7bは垂直幹7aの端部に固定され床面に接地して介護用車椅子の転倒や揺れを防止する接地材、7cはスタンド7を使用しないとき邪魔にならないように上側へはね上げて収納するためのスプリング等からなる弾性体、7dはスタンド7の収納時垂直幹7aを支えるスタンドストッパー、7eは移乗部をスライドするとき床面とのすべりを防ぐためゴム等からなるすべり止め、7fはスタンド7をを立てたときロック受け部7hに嵌合してスタンド7の外れを防止するためのロック棒7gを内設したスタンドロック部、7iはスタンド7を収納時にロック解除ペダル7jを踏んでロック受け部7gに嵌合したロック棒7gを押し上げてロックを解除するロック解除棒である。また図3において、10aは座席フレーム1及び下部フレーム11の車輪12側に固定されたガスダンパー10bを備えた座席フレーム支持体10c等からなる上下動駆動部、10dは上下動ハンドル、10eは座席フレーム1を上下動させるためにパンタグラフ機構を構成するクロスバー、10fは座席フレーム1及び下部フレーム11の内側端部に対向して配設された各一対の略コ字形のクロスバー端部案内部、10gは長手方向略中央部で互いに逆方向に螺刻され両端部が上部側の横架材10hに螺合して保持されて回転することによりクロスバー10eを拡狭作動させるシャフト、10iはクロスバー10eを回動自在に保持し両端部にクロスバー案内部10fに遊嵌されたローラを有する下部側の横架材である。ここで、シャフト10gにボールネジを用いてもクロスバー10eを拡狭する機構を達成することができる。まず、介護者は、患者等を乗せた介護用車椅子を移乗部がスライドする側がベッドの側面に接するように横付し、図2(a)に示すように足等でスタンド7の接地材7bを踏み込みながら介護用車椅子を手前に持ち上げるように引いてスタンド7を立てる。介護用車椅子はスタンド7の接地材7bとキャスター13で支えられて、車輪12は浮いた状態になる。スタンド7は自動的にロックされる。次に移乗作業が安定して行えるようにキャスター13の首振り止め13aのロックをする。ベッド側のアームレスト6は移乗に備えて取り外す。また車輪12もベッド上面の高さに応じて外す。次に座席体1dの後部下側に配設された上下動ハンドル10dを回して座席体1dの高さがベッド面の高さと略同一になるように座席体1dの高さを調整する。上下動ハンドル10dは右へ回すと図3に示すようにシャフト10gによってクロスバー10eが互いに引き合いクロスバー端部案内部10fが車輪側方向へ摺動し、パンタグラフ機構によって座席フレーム1を上へ押し上げる。クロスバー端部案内部10fの構造はガイドレールローラ方式でもよいし下部フレーム11に直接スリーブを挿着した方式でもよい。このとき体重の7割以上がかかる腰部のところにガスダンパー10bを備えた座席フレーム支持体10cを配設しているのでスムーズに上下動を行うことができる。また、ガスダンパー10bは常時上に押し上げる方向に力が働いているので上下動ハンドル10dは極めて軽い操作で行うことができる。また逆に左へ回せば上昇時と反対にクロスバー10eは互いに拡がり座席フレーム1を下げることができる。座席フレーム1を下げるときも患者の体重がかかっているので極めてスムーズに下げることができる。以上のように上下動ハンドル10dを回すことにより座席フレーム1を上下動できるので座席フレーム1上に載置された座席体1dの高さを自在に調節できる。・・・」(【0008】)

甲7エ:図3には、介護用車椅子において、座席フレーム1及び下部フレーム11の車輪12側に固定されたガスダンパー10bを備えた座席フレーム支持体10c等からなる上下動駆動部10aを有する態様が示されている。

以上によれば、甲第7号証には、次の技術事項(以下、「甲7技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「患者をベッド等へ移乗させる際に、簡単な操作で座席部を自由に上下動できるとともに、患者を寝たままベッド等へ又は座ったまま浴室台等へ苦痛を与えることなくスムーズにかつ安全に移すことができる介護用車椅子において、
座席フレーム1及び下部フレーム11の車輪12側に固定されたガスダンパー10bを備えた座席フレーム支持体10c等からなる上下動駆動部10aを有すること。」

7.甲第8号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(特開2003-19959号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲8ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、手押し車に関し、特に、高齢者用手押し車、ベビーカー、ショッピングカート等の各種手押し車における腰掛けシートの座部やハンドル等の高さを調節するための高さ調節機構に関する。」(【0001】)

甲8イ:「【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、手押し車において、使い勝手の良い、腰掛けシートの座部やハンドル等の高さを調節するための高さ調節機構を提供することである。」(【0011】)

甲8ウ:「【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の技術的課題を解決するために、本発明に係る手押し車のハンドル高さ調節機構は、以下の特徴を有する。
すなわち、手押し車は、車体の骨格を形成するフレームの上部にハンドルを備えてなり、前記フレームは、ハンドルを支持するために略垂直方向に延在する互いに平行な一対のハンドル支持パイプを含み、前記ハンドルは、左右の各ハンドルグリップから略下方に延在する互いに平行な一対のハンドルパイプを備え、各ハンドルパイプの下端部を各ハンドル支持パイプの上端部に摺動自在に外嵌してなる構成である。この手押し車において、前記一対のハンドルパイプを一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプと、該連結水平パイプの中空部内に摺動自在に収納された左右一対のロックピンと、前記各ロックピンに固定され、かつ連結水平パイプの所定個所に軸心方向に形成したスロットから外側に突出する操作ノブとを備え、さらに、各ハンドル支持パイプの対向面側には、ロックピンと協働する複数個の位置決め穴が上下方向に形成されており、連結水平パイプの中空部とハンドルパイプの中空部とは互いに連通しており、ハンドルパイプをハンドル支持パイプに対して高さ位置を調整した上で、各操作ノブを操作して、各ロックピンの先端部を各ハンドル支持パイプの該当位置決め穴に差し込むことにより、ハンドルをその支持パイプに固定するようにしたことを特徴とするものである。
上記構成によれば、ハンドルパイプをハンドル支持パイプに対して大略位置決めした上で、ハンドルをわずかに上下にスライドさせながら、連結水平パイプの中空部に収納された左右一対のロックピンをハンドル支持パイプに向けて押圧することによって、ロックピンがハンドル支持パイプの位置決め穴に挿入される。すなわち、ハンドルをスライドさせながらロックピンを挿入するという簡単な作業で、ハンドルがハンドル支持パイプに対して固定されるので、高齢者や下肢の不自由な人等の身体的弱者でもハンドルの高さ調節を容易に行なうことができる。また、ロックピンが連結水平パイプの中空部から取り外されることがないので、ロックピンの紛失がない。また、ハンドル高さ調節機構がフレームより内側に配設されているので、安全衛生面やデザイン面で優れている。」(【0012】?【0014】)

甲8エ:「上記構成によれば、ハンドルと同様に、高齢者や下肢の不自由な人等の身体的弱者でも、腰掛けシートの座部の高さ調節を容易に行なうことができる。また、ロックピンの紛失の問題が解消されるとともに、安全衛生面やデザイン面で優れている。」(【0017】)

甲8オ:「上記構成によれば、各ロックピンを支持パイプの位置決め穴に付勢する付勢力が、常時、加えられているので、ガイド部をわずかに上下にスライドさせながら位置決めする際に、付勢されたロックピンが位置決め穴に自動的に挿入されるとともに、挿入後においては、ロックピンが位置決め穴から抜けにくくなっている。したがって、高齢者や下肢の不自由な人等の身体的弱者でも高さ調節を確実且つ容易に行なうことができる。」(【0019】)

甲8カ:「図4及び7に示すように、各ハンドル支持パイプ41及び各座部支持パイプ51の相対向する内側面の各所定位置には、フレーム長手方向に点在するハンドル用位置決め穴48c及び座部用位置決め穴58cがそれぞれ複数個設けられている。また、左右のハンドル支持パイプ41の略下部には、腰掛けシート14の背もたれ64が、左右のハンドル支持パイプ41をまたぐように、ハンドル支持パイプ41に固定されている。」(【0023】)

甲8キ:「ロックピン48は、対応するハンドル支持パイプ41側に先細の先端部48aを有するとともに、対称軸側にロックピン48と直交する操作ノブ46を有する。操作ノブ46すなわちロックピン48のスライド量を規制するためのスロット47が連結水平パイプ42に設けられている。」(【0026】)

甲8ク:「すなわち、最下部位置に係止されたハンドル12において、ロックピン48の先端部48aが開口48bを介してハンドル用位置決め穴48cに挿通されて、ハンドル12がハンドル支持パイプ41に係止されている。係止状態を解除するために、操作ノブ46の両方が、連結水平方向に沿って対称軸方向に寄せられる。その結果、ロックピン48の先端部48aが開口48bより内側すなわち対称軸方向に存する。次に、左右の操作ノブ46の両方が対称軸方向に寄せられた状態を保持しながら、ハンドル12がおおよその最上部位置に移動される。左右の操作ノブ46の両方が対称軸方向に保持されていない状態で、ハンドル12が上下にわずかに移動される。そして、ロックピン48の先端部48aが最上部位置のハンドル用位置決め穴48cに合致すると、圧縮バネ49の付勢力によって先端部48aがハンドル用位置決め穴48cに自動的に押し込まれる。すなわち、ロックピン48の先端部48aが開口48bを介してハンドル用位置決め穴48cに挿通されて、ハンドル12が各ハンドル支持パイプ41の最上部位置において係止されている。」(【0031】)

甲8ケ:甲8カの「図4及び7に示すように、各ハンドル支持パイプ41及び各座部支持パイプ51の相対向する内側面の各所定位置には、フレーム長手方向に点在するハンドル用位置決め穴48c及び座部用位置決め穴58cがそれぞれ複数個設けられている。」との記載からして、各ハンドル支持パイプ41に複数のハンドル用位置決め穴48cが透設されているといえる。

甲8コ:甲8ケ及び図8の図示内容からして、図8には、
高さ調節機構が、
各ハンドル支持パイプ41に透設された複数のハンドル用位置決め穴48cと、
一対のハンドルパイプ44を連結する連結水平パイプ42内に設けられて前記各ハンドル用位置決め穴48cに係脱する二本のロックピン48と、
各ロックピン48は連結水平パイプ42により嵌挿ガイドされ、
該各ロックピン48を係止方向に付勢する圧縮バネ49と、
各各ロックピン48に取り付けた一対の操作ノブ46とからなる態様が図示されているといえる。

以上によれば、甲第8号証には、次の技術事項(以下、「甲8技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「車体の骨格を形成するフレームの上部にハンドルを備えてなり、前記フレームは、ハンドルを支持するために略垂直方向に延在する互いに平行な一対のハンドル支持パイプ41を含み、前記ハンドルは、左右の各ハンドルグリップから略下方に延在する互いに平行な一対のハンドルパイプ44を備え、各ハンドルパイプ44の下端部を各ハンドル支持パイプ41の上端部に摺動自在に外嵌してなる構成の手押し車における、使い勝手の良いハンドルの高さ調節機構に関し、
各ハンドル支持パイプ41に透設された複数のハンドル用位置決め穴48cと、
一対のハンドルパイプ44を連結する連結水平パイプ42内に設けられて前記各ハンドル用位置決め穴48cに係脱する二本のロックピン48と、
各ロックピン48は連結水平パイプ42により嵌挿ガイドされ、
該各ロックピン48を係止方向に付勢する圧縮バネ49と、
各ロックピン48に取り付けた一対の操作ノブ46とからなり、
ハンドルパイプ44をハンドル支持パイプ41に対して高さ位置を調整した上で、各操作ノブ46を操作して、各ロックピン48の先端部を各ハンドル支持パイプ41の該当位置決め穴48cに差し込むことにより、ハンドルをその支持パイプ41に固定するようにしたこと。」

8.甲第9号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証(実願昭47-93730号(実開昭49-51529号)のマイクロフィルム)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲9ア:「考案の名称 伸縮自在梯子」(1頁2行)

甲9イ:「内部に空洞を有する筒形の縦棒(1)(1’)内に二段目の縦棒(8)(8’)が嵌挿され、上段の縦棒(15)(15’)は上叙縦棒(8)(8’)内にと次々に納まり、これの固定には足掛り部(3)(10)内にある固定杆(5)(5’)及び(12)(12’)が発条(4)及び(11)の力にて固定穴(9)(9’)等に嵌入上下を固定し、これが復元には戻し金(6)(6’)等を有する構造。」(1頁4?11行)

甲9ウ:「いまその作用を説明するに、最下段の縦棒(1)(1’)から縦棒(8)(8’)を引き上げて行くと固定穴(9)(9’)が固定杆(5)(5’)と重なると、固定杆(5)(5’)は発条(4)の力で固定穴(9)(9’)に嵌入、上下二段を固定する。・・・
次にこれが復元には足掛り部(3)及び(10)の下部の復元穴(7)(7’)より露出している戻し金(6)(6’)及び(13)(13’)の両方を一度に中心部に向け引き寄せることにより固定杆(5)(5’)が固定穴(9)(9’)から外れ、上段部の縦棒(8)(8’)が下段部の縦棒(1)(1’)に落ち込み納る。」(3頁10行?4頁5行)

甲9エ:第1?3図には、甲9イの態様の伸縮自在梯子が示されている。

以上によれば、甲第9号証には、次の技術事項(以下、「甲9技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「伸縮自在梯子において、
内部に空洞を有する筒形の縦棒(1)(1’)内に二段目の縦棒(8)(8’)が嵌挿され、上段の縦棒(15)(15’)は上叙縦棒(8)(8’)内にと次々に納まり、これの固定には足掛り部(3)(10)内にある固定杆(5)(5’)及び(12)(12’)が発条(4)及び(11)の力にて固定穴(9)(9’)等に嵌入上下を固定し、これが復元には足掛り部(3)及び(10)の下部の復元穴(7)(7’)より露出している戻し金(6)(6’)及び(13)(13’)の両方を一度に中心部に向け引き寄せることにより固定杆(5)(5’)が固定穴(9)(9’)から外れ、上段部の縦棒(8)(8’)が下段部の縦棒(1)(1’)に落ち込み納る構造。」

9.甲第10号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証(特開平8-333976号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲10ア:「【産業上の利用分野】本発明は、例えば伸縮可能な梯子や物干しのような伸縮体に関するものである。」(【0001】)

甲10イ:「【発明が解決しようとする課題】このような梯子では、伸張状態から短縮状態とするには、上述したように最下段の横桟部6の下面から突出している操作部32、32を同時に横桟部6内に押し込むことが、円滑な操作のためには必要である。しかし、両操作部32、32は、図3からも明らかなようにかなり離れた位置に設けられている。しかも、このような操作を行う場合、梯子が倒れることを防止するために、片手で梯子を抑えていることが多い。従って、操作部32、32は、あいているもう一方の手でしか操作できないので、一方の操作部32を操作した後に、もう一方の操作部32を操作することしかできず、操作がしにくいという問題点があった。
また、解除手段を設けるために、突出体8、8は、胴部16、頸部18及び端部20をそれぞれ有するものとしなければならない。また、解除手段29、29として、レバーを回転軸30、30によって横桟部6にそれぞれ結合しなければならない。そのため、構成が複雑になるという問題点もあった。」(【0011】?【0012】)

甲10ウ:「【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決する本発明は、複数の部材を有し、各部材は、間隔を隔てて平行に配置され、内部が中空の1対の支柱部と、これら支柱部の上端部間に設けられた横桟部とを、それぞれが有している。各部材の支柱部は、その太さを各部材ごとに異ならせてあり、上記各部材は、最も細い支柱部を除いて、上記各支柱部には、それよりも細い支柱部が上下方向に摺動可能に上方から挿通されている。上記各部材は、上記各横桟部が順次接触した短縮状態と、上記各横桟が離れた伸張状態とに変更可能に構成されている。上記最も細い支柱部を有する最上部の部材を除く上記各部材の上記各横桟部内に、上記伸張状態を保持する係止手段と、この係止状態を解除する解除手段とが、設けられている。上記各係止手段は、上記伸張状態における上記各部材の横桟の位置で、その部材の両支柱部及びこれらにそれぞれ挿通されている上記両支柱部をそれぞれ貫通している貫通孔と、上記横桟部内に設けられ上記両支柱部の貫通孔に対して進退可能に設けられた1対の係合ピンと、該係合ピンを上記貫通孔側に押圧する1対の弾性手段とを、有している。上記各解除手段は、上記両係合ピンが上記貫通孔にそれぞれ侵入した状態において、上記各弾性手段の押圧力にそれぞれ抗して、上記両係合ピンにこれを退却させる操作力を上記横桟の下面よりも下方から受けるように構成された操作部を有し、上記各部材のうち最下段のものの上記操作部は、上記各係合ピンに結合され、上記横桟内を中央側に向かってそれぞれ伸延し、それぞれの先端が接近した位置1対のレバーの先端に設けられ、上記横桟部の下面よりも下方に突出している。上記最下段の部材の各係合ピンを、太さをほぼ一様に形成し、上記各レバーを、上記各係合ピンと一体に形成することもできる。」(【0013】)

甲10エ:「【作用】本発明によれば、最下段の部材の横桟部の下面よりも下方に突出し、かつ接近している1対の操作部を、互いに近づけるように操作すると、各係合ピンが貫通孔からそれぞれ抜けて、下から2段目の部材の支柱部が、最下段の部材の支柱部内に降下する。」(【0014】)

甲10オ:「この梯子において、伸張状態とする場合には、上述した従来のものと同様に、短縮状態において、各部材を上方に引き延ばせばよい。また、伸張状態から短縮状態とする場合には、図2に示すように、最下段の部材2-1の横桟部6の下面よりも下方に突出しているレバー36、36を片手で把持し、中央側に両レバー36、36を寄せる。これによって、突出体8a、8aが貫通孔12、12、14、14からそれぞれ抜けて、部材2-2が、その自重によって降下する。上述した従来のものと同様に、部材2-2の操作部36、36が、部材2-1の横桟部6にそれぞれ当接し、部材2-2の横桟部6内に押し込まれ、部材2-3が、その自重によって降下する。以下、同様にして残りの部材が順次降下して、短縮状態となる。」(【0018】)

甲10カ:図1には、伸縮体において、横桟部内6に設けられた係合ピン8aを、支柱部4の貫通孔側に押圧する弾性手段10を有する態様が示されている。

以上によれば、甲第10号証には、次の技術事項(以下、「甲10技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「上端部間に横桟部が設けられた一対の支柱部を有する複数の部材から構成される伸縮体において、
各支柱部にはそれよりも細い支柱部が上下方向に摺動可能に上方から挿通され、
横桟部内に設けられた一対の係合ピンを、両支柱部の貫通孔側に押圧する一対の弾性手段を有し、
最下段の部材の横桟部の下面よりも下方に突出するとともに、各係合ピンに結合されている一対のレバーを片手で把持し、中央側に両レバーを寄せることによって、各係合ピンが貫通孔からそれぞれ抜けて、下から2段目の部材の支柱部が最下段の支柱部内に降下すること。」

10.甲第11号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証(特開平9-224791号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲11ア:「【発明の属する技術分野】本発明は商店で商品を陳列する台に関し、特に、天板の高さを調節することができる陳列台に関する。」(【0001】)

甲11イ:「【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、従来の装置では天板の高さ調節に多くの人手と時間を要するということである。」(【0003】)

甲11ウ:「【課題を解決するための手段、作用及び効果】本発明は、昇降パイプを固定パイプに遊嵌し、2本ずつの固定パイプに挿通した2本のピンの基板からの高さを同一にして端部同士が対向するようにし、かつ、その2本のピンを固定パイプ内に進入する方向に付勢するばねを設けるとともに、その2本のピンをそれらの端部に曲成した把持部を同時に片手で握ることができる間隔に保つストッパを設けた構成としたから、一方の手で天板を支えつつ、他方の手で2本のピンの把持部を握るとばねの弾力に抗してピンの先端が止め孔から外れるため天板を任意の高さに上下動させてピンを放すとばねの弾力によりピンが戻って止め孔に入り高さ調節ができる。」(【0004】)

甲11エ:「また、片手で2本のピンを操作することができ、かつ、固定パイプと昇降パイプは遊嵌しているから、天板を斜めにして一側の高さ調節をした後、他側の高さ調節をして天板を水平にすることにより、一人で高さ調節作業を迅速に行うことができる。」(【0006】)

甲11オ:「各固定パイプ2の対応する内面には挿通孔5を中心として長い門型をなす支持枠7とその内側の短い門型をなすストッパ8が固定され、それぞれの中心に挿通孔5と同心の貫通孔9、10が形成されていて、後端部に直角に屈曲した把持部12が形成されて先端にテーパー13が形成されたピン11が各貫通孔9、10、挿通孔5及びこの挿通孔5に整合した昇降パイプ4の止め孔6を貫通するようになっており、このピン11に形成された溝14にEリング15がはめられ、これに突き当たるワッシャ16と圧縮コイルばね17がピン11に嵌装され、圧縮コイルばね17の弾拡力によりピン11が挿通孔5内に挿入する方向に付勢されて、図2に実線でしめすように、Eリング15がストッパ8に突き当たった位置に保持されることにより、ピン11が止め孔6にはまって天板3を所定の高さに固定しており、このとき、対応するピン11の把持部12は片手aで握ることができる間隔となっている。
次に、本実施の形態の作動を説明すると、一方の手で天板3を支えながら、図2に示すように、他方の手で対応するピン11の把持部12を握って引き寄せることにより、同図に鎖線で示すように、両側のピン11の先端が止め孔6から外れて天板3が昇降自由になるため、天板3を上下動させて任意の止め孔6を挿通孔5に合わせ、ピン11を放すと圧縮コイルばね17の弾拡力によりピン11の先端が止め孔6に進入して天板3が上下動不能に固定される。」(【0009】?【0010】)

甲11カ:図2には、天板の高さを調節することができる陳列台において、ストッパ8を内側に有する支持枠7内に設けたピン11の把持部12を片手で握って引き寄せることにより、両側のピン11の先端が止め孔6から外れる態様が示されている。

以上によれば、甲第11号証には、次の技術事項(以下、「甲11技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「天板の高さを調節することができる陳列台において、
昇降パイプを固定パイプに遊嵌し、2本ずつの固定パイプに挿通するとともに、ストッパを内側に有する支持枠内に設けた2本のピンの基板からの高さを同一にして端部同士が対向するようにし、かつ、その2本のピンを
、固定パイプ内に進入する方向に付勢するばねを設けるとともに、その2本のピンをそれらの端部に曲成した把持部を同時に片手で握ることができる間隔に保つストッパを設けた構成とし、
片手で2本のピンを操作し、一人で高さ調節作業を迅速に行えること。」

11.甲第12号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第12号証(特開平10-14722号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲12ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、商品を載せる天板を適宜の角度に傾斜させることができるようにした商品陳列台に関する。」(【0001】)

甲12イ:「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のこの種の商品陳列台は天板の一端縁を基枠の一端縁に軸支し、その下面に鋸歯状の凹凸列を設けて基枠に軸支した支棒の先端を凹凸の一つに掛け止めることにより天板を所望の角度に傾けるようになっていたため、振動などにより支棒が外れて倒れ易いという課題があった。」(【0003】)

甲12ウ:「【課題を解決するための手段、作用及び効果】本発明はこのような課題を解決するための手段として、基枠の下部に2本の傾動パイプの下端を軸支して平行に連結し、その各傾動パイプに摺動自由に嵌入した伸縮パイプの上端を天板の下面に軸支し、その両伸縮パイプの対応位置に互いに対応する複数の止め孔を長さ方向に間隔をあけて形成し、両傾動パイプの対応位置に形成した挿通孔に通したピンを止め孔に出入りするようにするとともに、その両ピンをその挿通孔に進入する方向に付勢するばねを設け、かつ、その両ピンの対応する後端に曲成した把持部を片手で握ることができる間隔に保つストッパを設けたものであって、2本の傾動パイプにそれぞれ伸縮パイプを嵌入してピンで止めるようにしたから天板が所望の角度に強固に固定されるとともに、両側のピンの把持部を片手で握ることができるから片手で両側のピンを伸縮パイプの止め孔に出し入れすることができて天板の傾斜角度の調節を一人で容易に行うことができる効果がある。」(【0004】)

甲12エ:「次に、本実施の形態の作動を説明すると、一方の手で天板4を支えながら、図3に鎖線で示すように、他方の手で両側のピン29の把持部30を握って引き寄せると、両側のピン29の先端が止め孔23から外れて天板4が傾動自由になるため、天板4を傾動させて任意の止め孔23を挿通孔24にに合わせ、ピン29を放すと圧縮コイルばね35の弾拡力によりピン29の先端が止め孔23内に進入して天板4が傾動不能に固定される。」(【0012】)

甲12オ:図2,3には、商品を載せる天板を適宜の角度に傾斜させることができるようにした商品陳列台において、ストッパ枠25を内側に有するガイド枠26内に設けた両側のピン29の把持部30を引き寄せると、両側のピン29の先端が止め孔23から外れる態様が示されている。

以上によれば、甲第12号証には、次の技術事項(以下、「甲12技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「商品を載せる天板を適宜の角度に傾斜させることができるようにした商品陳列台において、
基枠の下部に2本の傾動パイプの下端を軸支して平行に連結し、その各傾動パイプに摺動自由に嵌入した伸縮パイプの上端を天板の下面に軸支し、その両伸縮パイプの対応位置に互いに対応する複数の止め孔を長さ方向に間隔をあけて形成し、両傾動パイプの対応位置に形成した挿通孔に通すとともに、ストッパ枠を内側に有するガイド枠内に設けたピンを止め孔に出入りするようにするとともに、その両ピンをその挿通孔に進入する方向に付勢するばねを設け、かつ、その両ピンの対応する後端に曲成した把持部を片手で握ることができる間隔に保つストッパを設けたものであって、
両側のピンの把持部を片手で握り片手で両側のピンを伸縮パイプの止め孔に出し入れすることができて天板の傾斜角度の調節を一人で容易に行えること。」

12.甲第13号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第13号証(米国特許第4082348号明細書)には図面と共に次の事項が記載されている。
(なお、『』内に甲第13号証の1(部分訳)を示す。)

甲13ア:「Referring now to the drawings wherein the showings are for purposes of illustrating the preferred embodiment of the invention only and not for purposes of limiting same, the FIGURES show a wheel chair comprised of a pair of spaced apart side frame assemblies A, a pair of pivotally interconnected cross brace assemblies B in operative communication with the side frame assemblies and seat and seat back assemblies C.」(4欄4?11行)
『図面は車椅子を示し、該車椅子は所定の間隔を設けて配置されている一対のサイドフレームアセンブリーAと挟動可能に結合されている一対のX枠アセンブリーBと、シートおよびシートバックアセンブリーCとからなる。』

甲13イ:「Affixed to front arcuate portion 20 of lower frame member 12 so as to extend in an upward direction generally parallel to front and rear frame members 14, 16 is a seat guide assembly generally designated 80. This assembly is comprised of a guide receiver portion 82 which is rigidly affixed to front arcuate portion 20 and which receives one end of an elongated guide member 84. The outer end of the guide member communicates with the seat assembly as will be described in greater detail hereinafter. Seat guide assembly 80 is also constructed from thin walled tubing with guide 84 being closely slidably received within guide receiver member 82.
With particular reference to FIGS. 1-4, cross brace assemblies B are comprised of a first cross brace assembly 90 and a second cross brace assembly 92 which are pivotally connected with each other. Inasmuch as assemblies 90, 92 have the same overall structure, description will hereinafter be made with reference to one of them, it being understood that the other is identical thereto unless otherwise specifically noted. Referring particularly to FIGS. 5-8, cross brace assembly 90 is comprised of a pair of first cross brace portions 94, 96 telescopically received within a second cross brace portion 98. Portions 94, 96 and 98 are preferably constructed from a rigid thin walled tubing dimensioned so that the first portions are closely slidably received into opposite ends of the second portion.
First cross brace portion 94 includes an elongated seat bar member 100 rigidly affixed to the outermost end thereof and a pair of locking member receiving openings 102, 104 adjacent the innermost end thereof. As will be seen from FIGS. 5-8, openings 102, 104 extend completely through first cross brace portion 94 but are spaced 90 DEG apart from each other. The reason for utilizing two openings, as well as their 90 DEG spacing, will be described in further detail hereinafter.」(5欄63行?6欄31行)
『下側フレームメンバー12の前部弧状部分20には、80と番号付けられているシートガイドアセンブリーが、前部および後部フレームメンバー14,16と平行に上方に延長するように取り付けられている。このアセンブリーは、前部弧状部分20に固着され、延長ガイド部材84の一端を受容するガイド受容部分82からなる。上記ガイドメンバーの外端は、後に詳述するように、シートアセンブリーに繋がっている。上記シートガイドアセンブリー80は、ガイド受容メンバー82内に密接スライド可能に受容されている薄肉チューブガイド84から構成される。
特に図1-4を参照して、X枠アセンブリーBは、相互に枢着されている第1X枠アセンブリー90と第2X枠アセンブリー92とからなる。上記第1X枠および第2X枠90,92の全体構造は同じであるから、以下の説明はそのうちの一つのみについて行えば、他の一つは特に説明することなく理解される。特に図5-8を参照して、第1X枠アセンブリー90は、第2X枠部分98内に伸縮自在に受容されている一対の第1X枠部分94,96からなる。第1X枠部分94,96、および第2X枠部分98は、好ましくは第1X枠部分が第2X枠部分の反対側の端部の中に密接にスライド可能に受容されるような寸法にされている硬質薄肉チューブから構成されている。
第1X枠部分94は、それらの最外端に固着されている延長シートバー部材100と、それらの最内端に隣接した穴102,104を受ける一対のロック部材とを含む。図5-8にみるように、穴102,104は、第1X枠部分94の全長にわたって配置されるが、相互に90°の間隔が設けられている。上記2つの穴102,104の役目は、上記90°の間隔を設けた意義と共に、以下に詳記される。』

甲13ウ:「A retaining bracket 134 is rigidly affixed to the uppermost end of guide member 84 of seat guide assembly 80 and engages the associated seat bar member 100 in a manner which permits pivotal movement between the seat bar members and retaining bracket. 」(7欄61?66行)
『保持ブラケット134は、シートガイドアセンブリー80のガイドメンバー84の上端に固着されており、シートバー部材と保持ブラケットとの間で枢動可能な状態でシートバー部材100に取り付けられている。』

甲13エ:図3には、前部及び後部フレームメンバー(14,16)を上下一対の横桁(10,12)で繋いだ左右一対のサイドフレームアセンブリーAを相互間に介在させたX枠アセンブリーBを備えた折り畳み機構により折り畳み自在に連結した座幅調整可能な車椅子が示されている。

甲13オ:甲13エ及び甲13イの「下側フレームメンバー12の前部弧状部分20には、80と番号付けられているシートガイドアセンブリーが、前部および後部フレームメンバー14,16と平行に上方に延長するように取り付けられている。このアセンブリーは、前部弧状部分20に固着され、延長ガイド部材84の一端を受容するガイド受容部分82からなる。上記ガイドメンバーの外端は、後に詳述するように、シートアセンブリーに繋がっている。上記シートガイドアセンブリー80は、ガイド受容メンバー82内に密接スライド可能に受容されている薄肉チューブガイド84から構成される。」との記載からして、ガイド受容メンバー82はサイドフレームアセンブリーAに固着されているといえる。

以上によれば、甲第13号証には、次の技術事項(以下、「甲13技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「前部及び後部フレームメンバー(14,16)を上下一対の横桁(10,12)で繋いだ左右一対のサイドフレームアセンブリーAを相互間に介在させたX枠アセンブリーBを備えた折り畳み機構により折り畳み自在に連結した座幅調整可能な車椅子において、
延長シートバー部材100に一端を枢着させたガイド部材84と、
このX枠アセンブリーBは、前記したガイドメンバー84を、サイドフレームアセンブリーAに固着されたガイド受容メンバー82内に嵌挿すること。」

第7 訂正特許発明についての判断
1.対比
訂正特許発明と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「前後脚柱部」は、訂正特許発明の「複数の支柱(2a)、(2a)」に相当する。

甲1発明の「座梁部」、「下梁」は、それぞれ訂正特許発明の「横桁(2b)」に相当する。

甲1発明の「側枠」は、訂正特許発明の「椅子フレーム(2)」に相当し、以下同様に、「X枠」は「X字挟動体(3)」に、「前部X枠」は「前部Xリンク(10)」に、「後部X枠」は「後部Xリンク(11)」に、「上側杆」は「上部水平杆(12)、(12)」に、「下側杆」は「下部水平杆(13)、(13)」にそれぞれ相当する。

甲1発明の「下側杆を、下梁の下側杆取付部に設けられた上下に配列している複数個の軸穴のうちの一つの位置に合わせ、軸を軸穴及び下側杆の内部に挿通することにより、下梁に対して係脱自在に連結」する「下側杆取付部」及び「軸」は、「下側杆」を「下梁に対して係脱自在に連結」する「ロック機構」といえる。
そして、甲1発明の「下梁」と訂正特許発明の「支柱(2a)、(2a)」とは「椅子フレーム」を構成する点で共通する。
してみると、甲1発明の「下側杆を、下梁の下側杆取付部に設けられた上下に配列している複数個の軸穴のうちの一つの位置に合わせ、軸を軸穴及び下側杆の内部に挿通することにより、下梁に対して係脱自在に連結し、前記した下梁に対する下側杆の連結位置を高低調整することにより、このX枠の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした」と訂正特許発明の「下部水平杆(13)が支柱(2a)、(2a)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されていて、前記した支柱(2a)、(2a)に対する下部水平杆(13)の連結位置を高低調整することにより、このX字状挟動体(3)の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした」とは、「下部水平杆(13)が椅子フレーム(2)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されていて、前記した椅子フレーム(2)に対する下部水平杆(13)の連結位置を高低調整することにより、このX字状挟動体(3)の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした」点で一致する。

以上によれば、訂正特許発明と甲1発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「複数の支柱(2a)、(2a)を上下一対の横桁(2b)、(2b)で繋いだ左右一対の椅子フレーム(2)、(2)を相互間に介在させたX字状挟動体(3)を備えた折り畳み機構(6)により折り畳み自在に連繋した車椅子であって、
前記したX字状挟動体(3)を、挟動可能な前部Xリンク(10)および後部Xリンク(11)と、
この前部Xリンク(10)および後部Xリンク(11)を連繋している上部水平杆(12)、(12)および下部水平杆(13)、(13)とよりなるものとして、
このX字状挟動体(3)は、上部水平杆(12)、(12)を椅子フレーム(2)の横桁(2b)に係脱自在とした状態で椅子フレーム(2)、(2)間に介在され、下部水平杆(13)が椅子フレーム(2)に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、
前記した椅子フレーム(2)に対する下部水平杆(13)の連結位置を高低調整することにより、このX字状挟動体(3)の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした
座幅調整可能な車椅子。」

そして、両者は以下の点で相違する。
(相違点1)
訂正特許発明では、「X字状挟動体(3)を、・・・
D:この上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿した姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)とよりなるものとして、
E:このX字状挟動体(3)は、前記したガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿する」のに対して、
甲1発明では、「X枠」は上記構成を備えていない点。

(相違点2)
訂正特許発明では、「F:下部水平杆(13)が支柱(2a)、(2a)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されていて、・・・
H:前記したロック機構(15)が、支柱(2a)に透設された複数の位置調整用の係止孔(16)と、
I:下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と、
X:各スライドピン(17)が嵌挿ガイドされるスライダ(20)と、
J:該各スライドピン(17)を係止方向に付勢するばね(18)と、
K:各スライドピン(17)に片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブ(19)とからなり、
Y:該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにしたものである」のに対して、
甲1発明では、「下側杆を、下梁の下側杆取付部に設けられた上下に配列している複数個の軸穴のうちの一つの位置に合わせ、軸を軸穴及び下側杆の内部に挿通することにより、下梁に対して係脱自在に連結し」た点。

2.判断
2-1.相違点1について
(1)請求人は、
甲第2号証には、ガイド部材を椅子フレームの支柱に収納する構成が開示され、水平杆にガイド部材を枢着する点は設計事項にすぎず、
甲第13号証の保持ブラケット134を介して一端がシートバー部材100に枢着されているガイド部材84は、訂正特許発明の上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)に相当し、
甲第13号証のガイド部材84をガイド受容メンバー82に密接スライド可能に受容した構成は、訂正特許発明のスライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿したガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿した構成に相当し、
訂正特許発明の構成要件D,Eに係る構成は、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証に記載されているように本件特許出願前に周知であり、甲1発明に該周知の構成を適用し相違点1に係る訂正特許発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得る旨主張する。

(2)そこで、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証の記載事項について検討する。
(甲第2号証)
甲第2号証には、
「背部フレームを本体フレームの前後何れ側にも取り付け可能に支持手段を介して着脱可能に設けた車椅子において、本体フレームを構成する側部フレーム枠2の前部及び後部に筒体20,28を固着して、背部フレーム17の支持手段21を構成し、背部フレーム17の下端に固着された軸部材19を筒体20,28に嵌合すること。」(甲2技術事項)が記載されており、仮に甲2技術事項の「背部フレーム17の下端に固着された軸部材19」を「姿勢保持用のガイド部材(14)」に対応する部材と仮定しても、該「軸部材19」は、背部フレーム17のガイド部材にすぎず、訂正特許発明の「姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)」の「上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させた」に対応する構成を有していないばかりか、「スライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿した」に対応する構成を有するものでもない。
しかも、甲2技術事項の「背部フレーム17の下端に固着された軸部材19」は、本体フレームを構成する側部フレーム枠2の前部及び後部に固着された筒体20,28に嵌合するものであって、訂正特許発明の「支柱(2a)、(2a)」に対応する部材に嵌挿されるのでもない。
してみると、甲第2号証には、ガイド部材を椅子フレームの支柱に収納する構成や、訂正特許発明の構成要件D,Eに係る構成は記載されていない。

(甲第4号証?甲第7号証)
甲第4号証?甲第6号証には、甲4技術事項?甲6技術事項が記載されており、仮に甲4技術事項の「ロッド」、甲5技術事項の「ピストン53」、甲6技術事項の「昇降ポスト」を、それぞれ「スライド杆(14a)、(14a)」或いは「姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)」に対応する部材と仮定しても、それらは、訂正特許発明の「スライド杆(14a)、(14a)」の「上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させた」に対応する構成を有していないばかりか、訂正特許発明の「姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)」の「スライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿」するとともに「ガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿する」に対応する構成を有するものでもない。

また、甲第7号証には、甲7技術事項が記載されており、訂正特許発明の「姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)」に類似する可能性がある構成としては、「ガスダンパー10bを備えた座席フレーム支持体10c等からなる上下動駆動部10a」(甲7技術事項)が存在するものの、甲第7号証には、その詳細な機構は記載されておらず、甲第7号証に、訂正特許発明の「上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)を遊挿したガイド杆(14b)、(14b)」に対応する構成や、訂正特許発明の「姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)」の「スライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿」するとともに「ガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿する」に対応する構成が記載されていると解すべき根拠も見出せない。

してみると、甲第4号証?甲第7号証には、訂正特許発明の構成要件D,Eに係る構成は記載されていない。

(甲第13号証)
甲第13号証には、「前部及び後部フレームメンバー(14,16)を上下一対の横桁(10,12)で繋いだ左右一対のサイドフレームアセンブリーAを相互間に介在させたX枠アセンブリーBを備えた折り畳み機構により折り畳み自在に連結した座幅調整可能な車椅子において、延長シートバー部材100に一端を枢着させたガイド部材84と、このX枠アセンブリーBは、前記したガイドメンバー84を、サイドフレームアセンブリーAに固着されたガイド受容メンバー82内に嵌挿すること。」(甲13技術事項)が記載されており、仮に請求人が主張するように、甲第13技術事項の「延長シートバー部材100」、「ガイド部材84」が、それぞれ訂正特許発明の「上部水平杆(12)、(12)」、「スライド杆(14a)、(14a)」に対応する部材であって、甲13技術事項が、訂正特許発明の「上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)」に対応する構成を有するとしても、この「ガイド部材84」(スライド杆)は、訂正特許発明の「ガイド杆(14b)、(14b)」に対応する部材に遊挿したものではない。
しかも、甲第13号証の「ガイド部材84」は、サイドフレームアセンブリーAに固着された「ガイド受容メンバー82」に嵌挿されるものであって、訂正特許発明の「支柱」に対応する「前部および後部フレームメンバー(14,16)」に嵌挿されるのでもない。
してみると、甲第13号証には、訂正特許発明の構成要件D,Eに係る構成は記載されていない。

以上によれば、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証には、訂正特許発明の構成要件D,Eに対応する構成は記載されておらず、該構成が本件特許出願前に周知であったとはいえないから、請求人の上記主張には理由がない。

(3)そして、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証?甲第13号証の記載事項を検討しても、甲1発明に甲2技術事項及び甲4技術事項?甲13技術事項を適用した際に、訂正特許発明の「姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)」の「スライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿」するとともに「ガイド部材(14)、(14)を椅子フレーム(2)、(2)の支柱(2a)、(2a)に嵌挿する」構成を当業者が容易に想到し得ると解すべき動機付けを見出すことができない。

(4)したがって、相違点1に係る訂正特許発明の発明特定事項は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。

2-2.相違点2について
(1)請求人は、
甲第8号証に記載された「ロックピン48」は、訂正特許発明の「スライダピン(17)」に相当し、以下同様に、「圧縮バネ49」は「ばね(18)」に、「操作ノブ46」は「操作ノブ(19)」に相当し、
訂正特許発明の構成I?Kに近似する構成は甲第9証?甲第12号証にも明示されており、周知慣用技術であるから、
女性や老人でも容易に片手で操作できるようにする目的で、甲1発明に甲第8号証?甲第12号証に記載された周知の構成を採用することにより相違点2に係る訂正特許発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得る旨主張する。

(2)そこで、甲第8号証?甲第12号証の記載事項について検討する。
(甲第8号証)
甲第8号証には、
「車体の骨格を形成するフレームの上部にハンドルを備えてなり、前記フレームは、ハンドルを支持するために略垂直方向に延在する互いに平行な一対のハンドル支持パイプ41を含み、前記ハンドルは、左右の各ハンドルグリップから略下方に延在する互いに平行な一対のハンドルパイプ44を備え、各ハンドルパイプ44の下端部を各ハンドル支持パイプ41の上端部に摺動自在に外嵌してなる構成の手押し車における、使い勝手の良いハンドルの高さ調節機構に関し、
各ハンドル支持パイプ41に透設された複数のハンドル用位置決め穴48cと、
一対のハンドルパイプ44を連結する連結水平パイプ42内に設けられて前記各ハンドル用位置決め穴48cに係脱する二本のロックピン48と、
各ロックピン48は連結水平パイプ42により嵌挿ガイドされ、
該各ロックピン48を係止方向に付勢する圧縮バネ49と、
各ロックピン48に取り付けた一対の操作ノブ46とからなり、
ハンドルパイプ44をハンドル支持パイプ41に対して高さ位置を調整した上で、各操作ノブ46を操作して、各ロックピン48の先端部を各ハンドル支持パイプ41の該当位置決め穴48cに差し込むことにより、ハンドルをその支持パイプ41に固定するようにしたこと。」(甲8技術事項)が記載されており、仮に請求人が主張するように、甲8技術事項の「ロックピン48」、「圧縮バネ49」、「操作ノブ46」が、それぞれ訂正特許発明の「スライダピン(17)」、「ばね(18)」、「操作ノブ(19)」に対応する部材であって、さらに、甲8技術事項の「連結水平パイプ42」、「ハンドル支持パイプ41」が、それぞれ訂正特許発明の「スライダ(20)」、「支柱(2a)、(2a)」に対応する部材であるとともに、甲8技術事項の「各ハンドル支持パイプ41に透設された複数のハンドル用位置決め穴48cと、一対のハンドルパイプ44を連結する連結水平パイプ42内に設けられて前記各ハンドル用位置決め穴48cに係脱する二本のロックピン48と、各ロックピン48は連結水平パイプ42により嵌挿ガイドされ、該各ロックピン48を係止方向に付勢する圧縮バネ49と、各ロックピン48に取り付けた一対の操作ノブ46」を「ロック機構」といえるとしても、該「ロック機構」は、「手押し車における、使い勝手の良いハンドルの高さ調節機構」に関するものであって、訂正特許発明の「ロック機構」のように、「車椅子」の「下部水平杆(13)」を「支柱(2a)、(2a)」に対して係脱自在に連結するものではなく、訂正特許発明の「前記したロック機構(15)が、・・・下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と・・・からなり、該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにした」に対応する構成を有するものでもない。
してみると、甲第8号証には、訂正特許発明の構成要件F,I,Yに係る構成は記載されていない。

(甲第9証?甲第12号証)
甲第9号証?甲第12号証には、甲9技術事項?甲12技術事項が記載されており、仮に甲9技術事項の「固定杆(5)(5’)及び(12)(12’)」、「足掛り部(3)(10)」、甲10技術事項の「係合ピン」、「横桟部」、甲11技術事項の「ピン」、「ストッパを内側に有する支持枠」、甲12技術事項の「ピン」、「ストッパ枠を内側に有するガイド枠」を、それぞれ訂正特許発明の「スライダピン(17)」、「スライダ(20)」に対応する部材と仮定し、甲9技術事項?甲12技術事項が「ロック機構」を有しているとともに、それらの「ロック機構」が、訂正特許発明の構成I?Kに近似するとしても、それらは、「伸縮自在梯子」(甲9技術事項)、「伸縮体」(甲10技術事項)、「天板の高さを調節することができる陳列台」(甲11技術事項)、「商品を載せる天板を適宜の角度に傾斜させることができるようにした商品陳列台」(甲12技術事項)の「ロック機構」であって、訂正特許発明の「ロック機構」のように、「車椅子」の「下部水平杆(13)」を「支柱(2a)、(2a)」に対して「係脱自在に連結」するものではなく、訂正特許発明の「前記したロック機構(15)が、・・・下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と・・・からなり、該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにした」に対応する構成を有するものでもない。
してみると、甲第9号証?甲第12号証には、訂正特許発明の構成要件F,I,Yに係る構成は記載されていない。

(3)そして、甲第1号証、甲第8号証?甲第12号証の記載事項を検討しても、甲1発明の「車椅子」とは異なる技術分野の甲8技術事項?甲12技術事項の「ロック機構」に係る構成を甲1発明に適用するとともに、その際に、訂正特許発明の「ロック機構」のように、「車椅子」の「下部水平杆(13)」を「支柱(2a)、(2a)」に対して「係脱自在に連結」し、さらに、「前記したロック機構(15)が、・・・下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と・・・からなり、該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにした」構成を当業が容易に想到し得ると解すべき動機付けを見出すことができない。

(4)したがって、相違点2に係る訂正特許発明の発明特定事項は、甲第1号証に記載された発明及び甲第8号証?甲第12号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

2-3.訂正特許発明の効果について
(1)訂正特許発明によって奏される、
「【発明の効果】
本発明は、左右一対の椅子フレーム間に介在させた折り畳み機構のX字状挟動体を、挟動可能な前部Xリンクおよび後部Xリンクと、この前部Xリンクおよび後部Xリンクを連繋している上部水平杆および下部水平杆と、この上部水平杆に一端を枢着させたスライド杆をガイド杆に遊挿した姿勢保持用のガイド部材とよりなるものとして、このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに、上部水平杆を椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で、椅子フレーム間に介在され、下部水平杆が支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、前記した支柱に対する下部水平杆の連結位置を高低調整することによりこのX字状挟動体の開き角度を変えて座幅を調整できるようにしたから、工具を必要とすることなく極めて簡単に誰でもが短時間で座幅を調整することができるので、車椅子を貸し受ける際に待たされることもない。また利用者自身が座幅を調整することもできるので作業員を常時配置させておく必要がなくなるので管理運営費を大幅に低減できることとなる。しかも座幅の調整機構が椅子フレームから大きく突出されて取り付けられていないので、整備時や取り扱い時に邪魔にならず、円滑に整備作業ができるうえに折り畳み時に手を挟んだり、ぶつけたりすることがない。さらにデザイン的にも優れたものとすることができる。また、姿勢保持用のガイド部材により折り畳み時に椅子フレームとの係止が解かれてもX字状挟動体は不安定となることがないので、円滑に折り畳み操作をすることができるうえに、支柱内に嵌挿収納されるものとしているから、整備や取り扱い操作時に手を挟んだり、ぶつけたりすることがない。・・・
さらに、ロック機構が、支柱に透設された複数の位置調整用の係止孔と、下部水平杆内に設けられて前記各係止孔に係脱する二本のスライドピンと、各スライドピンが嵌挿ガイドされるスライダと該各スライドピンを係止方向に付勢するばねと、各スライドピンに片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブとからなり、該スライダは、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆を複数の支柱間で円滑にスライドできるようにしたから、片手で操作できることとなり、左右のロック機構を同時に解除できることとなる。しかも操作は極めて簡単でワンタッチで行うことができ、女性や老人でも容易に操作できるものである。」(訂正明細書【0005】?【0008】)という訂正明細書に記載された効果は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証に記載された周知技術並びに甲第8号証?甲第12号証に記載された周知技術から当業者が容易に予測し得ない、顕著なものである。

2-4.まとめ
以上によれば、訂正特許発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証及び甲第13号証に記載された周知技術並びに甲第8号証?甲第12号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
したがって、訂正特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正特許発明に係る特許についての無効理由は理由がない。

第8 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
そして、訂正特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、訂正特許発明に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
座幅調整可能な車椅子
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座幅を利用者の体格に応じて変更して姿勢を安定させて乗車することができる座幅調整可能な車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、座幅調整可能な車椅子は種々知られているところであり、左右の椅子フレームを枢着するX字状リンクの長さを変更することにより座幅を調整するものがある(例えば、特許文献1、2)。また左右の椅子フレームに連繋されるX字状リンクの取付位置を調整して座幅を調整するものがある(例えば、特許文献3)。さらに左右の椅子フレームを枢着するX字状リンクの一方の揺動杆をスライド自在に支持して座幅を調整するものがある(例えば、特許文献4)。
しかしこれらのものは座幅調整作業に工具を用いなければできないため、駅や美術館等の公共施設に担当作業員を配置させなければならなかった。しかも座幅調整作業が煩雑で手間取るため、車椅子を必要とする客等に車椅子を貸し出す際、利用者の体格に合わせた座幅調整作業に時間がかかり、待ち時間が長くなるという問題があった。さらに座幅調整機構が椅子フレームに直接組みつけられるため、露呈突出される座幅調整機構が邪魔になり、整備作業時や座幅調整作業がし辛いうえに手指をぶつけたり、挟んだりするという問題があった。
【特許文献1】特開2002-253617号公報
【特許文献2】特開2002-85467号公報
【特許文献3】特開2003-126168号公報
【特許文献4】特開2003-126172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、座幅調整に工具を必要とするため担当作業員を配置させねばならないうえに、座幅調整機構が椅子フレームに直接組み付けられて露呈突出しているため、座幅調整や整備時に邪魔になり、手をぶつけたり、折り畳み時に手指を挟んだりすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、複数の支柱を上下一対の横桁で繋いだ左右一対の椅子フレームを相互間に介在させたX字状挟動体を備えた折り畳み機構により折り畳み自在に連繋した車椅子であって、前記したX字状挟動体を、挟動可能な前部Xリンクおよび後部Xリンクと、この前部Xリンクおよび後部Xリンクを連繋している上部水平杆および下部水平杆と、この上部水平杆に一端を枢着させたスライド杆をガイド杆に遊挿した姿勢保持用のガイド部材とよりなるものとして、このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに、上部水平杆を椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で、椅子フレーム間に介在され、下部水平杆が支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、前記した支柱に対する下部水平杆の連結位置を高低調整することによりこのX字状挟動体の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした車椅子であって、前記したロック機構が、支柱に透設された複数の位置調整用の係止孔と、下部水平杆内に設けられて前記各係止孔に係脱する二本のスライドピンと、各スライドピンが嵌挿ガイドされるスライダと、該各スライドピンを係止方向に付勢するばねと、各スライドピンに片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブとからなり、該スライダは、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆を複数の支柱間で円滑にスライドできるようにしたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、左右一対の椅子フレーム間に介在させた折り畳み機構のX字状挟動体を、挟動可能な前部Xリンクおよび後部Xリンクと、この前部Xリンクおよび後部Xリンクを連繋している上部水平杆および下部水平杆と、この上部水平杆に一端を枢着させたスライド杆をガイド杆に遊挿した姿勢保持用のガイド部材とよりなるものとして、このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに、上部水平杆が椅子フレームの横桁に係脱自在とした状態で椅子フレーム間に介在され、下部水平杆が支柱に対してロック機構により係脱自在に連結されていて、前記した支柱に対する下部水平杆の連結位置を高低調整することによりこのX字状挟動体の開き角度を変えて座幅を調整できるようにしたから、工具を必要とすることなく極めて簡単に誰でもが短時間で座幅を調整することができるので、車椅子を貸し受ける際に待たされることもない。また利用者自身が座幅を調整することもできるので作業員を常時配置させておく必要がなくなるので管理運営費を大幅に低減できることとなる。しかも座幅の調整機構が椅子フレームから大きく突出されて取り付けられていないので、整備時や取り扱い時に邪魔にならず、円滑に整備作業ができるうえに折り畳み時に手を挟んだり、ぶつけたりすることがない。さらにデザイン的にも優れたものとすることができる。また、姿勢保持用のガイド部材により折り畳み時に椅子フレームとの係止が解かれてもX字状挟動体は不安定となることがないので、円滑に折り畳み操作をすることができるうえに、支柱内に嵌挿収納されるものとしているから、整備や取り扱い操作時に手を挟んだり、ぶつけたりすることがない。
【0006】
【0007】
【0008】
さらに、ロック機構が、支柱に透設された複数の位置調整用の係止孔と、下部水平杆内に設けられて前記各係止孔に係脱する二本のスライドピンと、各スライドピンが嵌挿ガイドされるスライダと該各スライドピンを係止方向に付勢するばねと、各スライドピンに片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブとからなり、該スライダは、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆を複数の支柱間で円滑にスライドできるようにしたから、片手で操作できることとなり、左右のロック機構を同時に解除できることとなる。しかも操作は極めて簡単でワンタッチで行うことができ、女性や老人でも容易に操作できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の最良の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1中、1は椅子本体であり、該椅子本体1は左右一対の椅子フレーム2と、該椅子フレーム2を折り畳み自在に連繋するX字状挟動体3と、椅子フレーム2の後部に軸支される車輪40と、椅子フレーム2の前部に回動自在に取り付けられるキャスタ41とよりなるものである。また椅子本体1は折り畳み機構6により椅子フレーム2を重ね合わせ状態に折り畳めるようになっており、座幅調整機構7により椅子フレーム2の間隔(座幅)が調整できるようになっている。
【0010】
前記折り畳み機構6は左右一対の椅子フレーム2と該椅子フレーム2を連繋するX字状挟動体3とからなるものであり、座幅調整機構7は折り畳み機構6の椅子フレーム2に連繋されるX字状挟動体3の一方の連繋位置を位置調整自在とすることにより座幅を調整するものとしている。
【0011】
前記椅子フレーム2は複数の支柱2aと、該複数の支柱2aを繋ぐ上下の横桁2bとからなるもので、後部の支柱2aは背凭れを兼ねるため上部の横桁2bより上方に延設されたものとしている。また前部の支柱2aはステップ39を取り付けるため下部の横桁2bよりも下方に延設されるものとしている。また後部の支柱2aには車輪40を高さ調整自在に取り付ける角ラック45が設けられている。後部の支柱2aと、該支柱2aと隣り合わせて並設される中間の支柱2aには後記する下部水平杆13を係止する係止孔16が複数透設されている。また前部から2番目の支柱2aにはキャスタ41を取り付けるための取付パイプ46が設けられている。
【0012】
前記X字状挟動体3は、荷重を担うパイプよりなる前部Xリンク10と挟動動作を円滑にする板材よりなる後部Xリンク11と、該前部Xリンク10と後部Xリンク11の各上端に取り付けられる椅子フレーム連繋用の上部水平杆12と、前部Xリンク10と後部Xリンク11の各下端に取り付けられる椅子フレーム連繋用の下部水平杆13と、上部水平杆12に枢着される姿勢保持用のガイド部材14とからなるものである。
【0013】
そして前記上部水平杆12は左右の椅子フレーム2の横桁2bに取り付けられた断面U字状をした受ホルダー2cに上から落し込んで係止するもので、折り畳み時には自動的に離脱する係脱自在なものとしている。下部水平杆13は椅子フレーム2に並設される後部および中間の支柱2a、2a間に後記ロック機構15により高さ調整自在に枢着係止されるものであり、下部水平杆13の椅子フレーム2への係止枢着位置を調整することにより座幅が調整できるものとしている。下部水平杆13の長さは後部と中間の支柱2a、2aの間隔と略等しいものとしている。
【0014】
また前記ガイド部材14は椅子フレーム2の中間の支柱2a内に嵌挿収納されるもので、支柱2aと略等長としたスライド杆14aと該スライド杆14aを遊挿させるガイド杆14bとからなるものであり、該ガイド杆14bは中間の支柱2a内に嵌挿係止されてスライド杆14aをスライド自在にガイドするようになっている。このように前記ガイド部材14は中間の支柱2a内に収納されるので整備や取り扱い操作時に邪魔になることがないうえに、手を挟んだりぶつけたりすることがないものとなる。
【0015】
15は座幅調整機構7の手動操作用のロック機構であり、該ロック機構15は左右の下部水平杆13に組み込まれるもので、椅子フレーム2の支柱2a、2aの内側に透設された高さ調整用の複数の係止孔16と、該係止孔16に係脱できるよう下部水平杆13内にスライド自在に嵌挿される二本のスライドピン17、17と、該各スライドピン17、17が係止孔16に係止される方向に付勢する二つのばね18、18と、前記スライドピン17、17の基部に双方を片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブ19、19と、先端にU字状ガイド部を設けたスライダ20、20とからなるものである。
【0016】
前記スライドピン17、17はスライダ20、20に嵌挿ガイドされたうえ下部水平杆13内に嵌挿されるものである。13a、13aは下部水平杆13に透設された二つの長孔であり、二つの長孔13a、13aはスライドピン17、17に取り付けられた操作ノブ19、19を下部水平杆13よりスライド自在に外部に張出させるためのものである。前記操作ノブ19、19は相互に約5cmの間隔をもって配置すれば操作できるが、間隔を3cm程とすれば非力な人でもより容易に操作することができる。また前記スライダ20、20のU字状ガイド部は支柱2a、2aの直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆13を後部と中間の支柱2a、2a間で円滑にスライドできるようにしている。
【0017】
22は椅子フレーム2に取り付けられるアームフレームであり、該アームフレーム22は略角枠状をしたのもので、両側の縦杆22a、22aを筒状として後記するアームパイプ30が上方から差込み可能となっている。アームフレーム22の後方の縦杆22a下端にはボス部23が形成されていて、椅子フレーム2のボス部24とボルトにより連繋されるものとなっている。これによりアームフレーム22は椅子フレーム2に対して揺動開閉できるものとしている。また前方の縦杆22aには椅子フレーム2にアームフレーム22をロックするフレームロック機構25が設けられている。
【0018】
前記フレームロック機構25はアームフレーム22に取り付けられるレバー部材26と、椅子フレーム2の縦杆2aに取り付けられる水平なレバー掛止めピン27とからなるもので、該レバー部材26のレバー28は自重でレバー掛止めピン27に係合されるようになっていおり、レバー28のハンドルを手動で引き上げることによりレバー掛止めピン27からレバー28を離脱させるものである。
【0019】
30はアームフレーム22に高さ調整自在に取り付けられるアームパイプであり、該アームパイプ30には複数の位置調節用のボルト孔31が透設されている。またアームフレーム22には一つのボルト孔32が透設されている。33はアームフレーム22とアームパイプ30を高さ調節自在に固定するボルトとナットよりなる止め部材である。これによりアームパイプ30は利用者の体格に応じて肘掛高さを調整できることとなる。また34はアームフレーム22に取り付けられるスカードガードであり、該スカートガード34により乗車している利用者のスカートが車輪40に巻きつくことを防止している。
【0020】
35は車輪40を取り付ける車軸36に嵌挿される間隔調整用にワッシャーである。図12、13に示されるように、車軸36にワッシャー35を介在させることにより車輪40の取付位置を調整して、車輪40とスカードガード34との間隔を調整できるものとしている。37は車輪40にストッパ38を圧接させて車椅子が坂道などで自走しないようにするブレーキ機構である。
【0021】
このように構成されたものは、例えば、公共施設等において、車椅子をレンタルとして貸し出す際には車椅子の座幅を利用者の体格に合わせる調整を行なう。この調整は簡単なため利用者自身が行ってもサポート役の人が行なっても、施設の事務員等が行なってもよい。座幅調整操作はX字状挟動体3が閉じられて左右の椅子フレーム2が重ね合わせられている折り畳み状態において行うものとするが、左右の椅子フレーム2が開いている使用状態で行ってもよいものとする。先ず、下部水平杆13のロック機構15を手動操作してロックを解除する。この解除操作は、左右の椅子フレーム2毎に別々に行なってもよいが、両手を使って左右同時に行なってもよい。左右同時に行なう場合は、椅子フレーム2を折り畳んだ状態として行なうと操作が容易になる。この場合は車椅子本体1を抱きかかえるようにして両手で左右のロック機構15の前後一対の操作ノブ19、19を把持する。
【0022】
それぞれ片方の手で前後の操作ノブ19、19を把持することにより、前後の操作ノブ19、19は自動的に両者の間隔が縮められる方向にスライドされることとなる。このスライドにより前後の操作ノブ19、19に取り付けられている前後のスライドピン17、17はばねの18、18の付勢力に抗して間隔を狭められる方向にスライドされることとなる。これにより後部と中間の支柱2aの係止孔16に嵌合係止されていたスライドピン17、17は係止孔16、16から抜き出されることとなる。
【0023】
このようにして左右のスライドピン17、17が左右の係止孔16、16から抜き出された状態で、左右の下部水平杆13を昇降動させれば、左右の椅子フレーム2を連携するX字状挟動体3の角度は簡単に変更されるので、所望の係止孔位置で操作ノブ19、19の把持を解けばスライドピン17、17はばね18の付勢力により突出して係止孔16、16に枢着自在に係止されることとなって座幅は変更されて利用者の体格に応じたものとなる。
【0024】
前述では左右の同時に下部水平杆13の取付位置を調整したが、左右別々に下部水平杆13の取付位置を変更しても良いものであり、作業時間もさほど変わることはないものである。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の最良の実施形態を示す全体図である。
【図2】本発明の最良の実施形態における椅子フレームとX字状挟動体とを分解して示す側面図である。
【図3】本発明の最良の実施形態における椅子フレームとX字状挟動体とを分解して示す正面図である。
【図4】本発明の最良の実施形態における座幅調整機構を示す一部切欠側面図である。
【図5】本発明の最良の実施形態における第2の水平杆に組み込まれたロック機構を示す断面図である。
【図6】本発明の最良の実施形態における座幅調整機構を拡大して示す正面図である。
【図7】本発明の最良の実施形態におけるロック機構を拡大して示す平面図である。
【図8】本発明の最良の実施形態におけるアームフレームの取り付け状態を示す側面図である。
【図9】本発明の最良の実施形態におけるアームフレームとアームパイプとの取付状態を拡大して示す側面図である。
【図10】本発明の最良の実施形態に用いられるフレームロック機構の側面図である。
【図11】本発明の最良の実施形態に用いられるフレームロック機構の正面図である。
【図12】本発明の最良の実施形態においてワッシャーにより車軸に取り付けられる車輪位置が調整された状態を示す正面図である。
【図13】本発明の最良の実施形態においてワッシャーにより車軸に取り付けられる車輪位置が調整された状態を拡大して示す正面図である。
【符号の説明】
【0027】
2 椅子フレーム
2a 支柱
2b 横桁
3 X字状挟動体
12 上部水平杆
13 下部水平杆
13a 長孔
14 ガイド部材
15 ロック機構
16 係止孔
17 スライドピン
18 ばね
19 操作ノブ
21 ガイド
22 アームフレーム
25 アームパイプ
40 車輪
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱(2a)、(2a)を上下一対の横桁(2b)、(2b)で繋いだ左右一対の椅子フレーム(2)、(2)を相互間に介在させたX字状挟動体(3)を備えた折り畳み機構(7)により折り畳み自在に連繋した車椅子であって、前記したX字状挟動体(3)を、挟動可能な前部Xリンク(10)および後部Xリンク(11)と、この前部Xリンク(10)および後部Xリンク(11)を連繋している上部水平杆(12)、(12)および下部水平杆(13)、(13)と、この上部水平杆(12)、(12)に一端を枢着させたスライド杆(14a)、(14a)をガイド杆(14b)、(14b)に遊挿した姿勢保持用のガイド部材(14)、(14)とよりなるものとして、このX字状挟動体は、前記したガイド部材を椅子フレームの支柱に嵌挿するとともに、上部水平杆(12)を椅子フレーム(2)の横桁(2b)に係脱自在とした状態で、椅子フレーム(2)、(2)間に介在され、下部水平杆(13)が支柱(2a)、(2a)に対してロック機構(15)により係脱自在に連結されていて、前記した支柱(2a)、(2a)に対する下部水平杆(13)の連結位置を高低調整することにより、このX字状挟動体(3)の開き角度を変えて座幅を調整できるようにした車椅子であって、前記したロック機構(15)が、支柱(2a)に透設された複数の位置調整用の係止孔(16)と、下部水平杆(13)内に設けられて前記各係止孔(16)に係脱する二本のスライドピン(17)と、各スライドピン(17)が嵌挿ガイドされるスライダ(20)と、該各スライドピン(17)を係止方向に付勢するばね(18)と、各スライドピン(17)に片手で操作できる範囲内に近接させて取り付けた一対の操作ノブ(19)とからなり、該スライダ(20)は、先端にU字状ガイド部を備え、該U字状ガイド部は、支柱(2a)、(2a)の直径と略等しい円弧を有するものとして下部水平杆(13)を複数の支柱(2a)、(2a)間で円滑にスライドできるようにしたものであることを特徴とする座幅調整可能な車椅子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-08-09 
出願番号 特願2003-403284(P2003-403284)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 賢一  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 寺澤 忠司
関谷 一夫
登録日 2006-08-25 
登録番号 特許第3844354号(P3844354)
発明の名称 座幅調整可能な車椅子  
代理人 綿貫 達雄  
代理人 関根 由布  
代理人 山本 文夫  
代理人 宇佐見 忠男  
代理人 乾 てい子  
代理人 山本 文夫  
代理人 綿貫 達雄  
代理人 関根 由布  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ