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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A47C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1268593
審判番号 不服2011-27517  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-21 
確定日 2013-01-08 
事件の表示 特願2008-538839号「家具用詰め物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月10日国際公開、WO2007/053035、平成21年 4月 2日国内公表、特表2009-513297号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成18年10月31日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2005年10月31日 ノルウエー)を国際出願日とする特許出願であって、平成23年3月23日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成23年7月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成23年12月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
本件補正は、補正事項として、特許請求の範囲の【請求項2】を、次のように補正することを含むものである。
「 【請求項2】
詰め物が、ユーザーの尻の圧痕形状に適合するように高い弾性の発泡材で形成されたことを特徴とする請求項1記載の詰め物。」

しかしながら、前記補正事項における「詰め物が、ユーザーの尻の圧痕形状に適合するように高い弾性の発泡材で形成された」という記載について、願書に最初に添付した明細書には、段落【0019】に「良い支持及び/又は快適性を得るために、座席内に座っている人により作られる圧力形状が第三の実施例で考慮される。図3Aに示すように、凹部301、302、303は座席用詰め物3内の柔らかい又は硬い詰め物及び支持部を得るために変化しうる。発泡材300の左側と右側の端部を強力に維持することにより、硬い支持部がここで与えられる。その一方で、凹部周辺の発泡材300の潰れ特性は凹部の深さに基づいて変化する。この方法で、凹部301周辺の発泡材が、凹部303周辺の発泡材の前に潰れる。この方法で、発泡材300が円滑な移動と共に種々の柔軟性を得る。図3Aに見られるように、ここでは形状がヒトの尻のパターンに適合している。」と記載され、願書に最初に添付した特許請求の範囲【請求項14】には、「高い弾性をU形で取得する、好ましくはユーザーの尻の圧痕形状に適合させる」と記載されているものの、「詰め物が、ユーザーの尻の圧痕形状に適合するように高い弾性の発泡材で形成された」ことについては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には記載されておらず、これらの記載から自明な事項でもない。

したがって、詰め物が、ユーザーの尻の圧痕形状に適合するように高い弾性の発泡材で形成されたことが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、補正後の請求項2は、補正前の請求項6が繰り上げられたものである旨主張するが(審判請求書 第5頁、第13?15行)、補正前の請求項6には、「高い弾性をU形で取得する、好ましくはユーザーの尻の圧痕形状に適合させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の詰め物。」と記載され、「高い弾性の発泡材で形成された」点は記載されていない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

[理由II]
前記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないものであるが、念のため、本件補正が、他の補正の要件に適合するか、さらに以下に検討する。

1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「座席のためのクッションのようなクッション用の詰め物であって、発泡材料から成り、クッションの少なくとも一部で凹部により修正した弾性値が与えられ、凹部の寸法及び/又は密度が隣接部分で異なり、クッションの一面の方向で発泡材内の柔軟性又は潰れ特性が変化する詰め物において、
フレームが完全に又は部分的に発泡材内に埋込まれ、フレームが、2本のフレームの平行な端部間にウエーブスプリングが延びて成り、
凹部が発泡材への成形の助けにより成形され、種々の深さ、変化する断面および平らな上面または円弧状の上面を有し、発泡材の上面に対して縦方向または傾斜した配置であり、
発泡材の残りの他の外面が、発泡材自体よりも強い成形時の外膜が得られることを特徴とする詰め物。」

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正の請求項1に関する補正事項は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「フレーム」に、「フレームが、2本のフレームの平行な端部間にウエーブスプリングが延びて成り」という限定を加え、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「凹部」に、「発泡材への成形の助けにより成形され、種々の深さ、変化する断面および平らな上面または円弧状の上面を有し、発泡材の上面に対して縦方向または傾斜した配置であり」という限定事項を加え、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「発泡材」に、「発泡材の残りの他の外面が、発泡材自体よりも強い成形時の外膜が得られる」という限定事項を加えるものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、前記補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用刊行物の記載事項
(刊行物1)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平8-238141号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、下記の事項が記載されている。

(ア)「請求項4記載の本発明の車両用シート構造では、クッション材の表皮側表面に開けられた多数の穴の深さ、径、密度の少なくとも一つによって、ばね定数を調整し、シートクッションのばね定数を乗員のヒップポイント位置の中央部を最も低くする一方、車幅方向周辺に向かって高くなるように設定するとともに、ヒップポイント位置を中心に車両前後方向周辺に向かってばね定数が高くなるように設定する。これにより請求項1及び請求項2記載の作用と同様になる。」(段落【0022】)、

(イ)「なお、図中矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示す。図1に示される如く、本実施例の車両用シート10のシートクッション12のウレタンクッション24及びシートバック14のウレタンクッション24には、多数の穴26、28がそれぞれ形成されている。(段落【0026】)、

(ウ)「ウレタンクッション24の表皮側表面には、下方へ向けて空間形成手段としての多数の小径穴26と大径穴28とが交互に形成されている。大径穴28は浅く、深さは一定であるが、小径穴26の深さは乗員のヒップポイント位置の中央部P1が最も深く、車幅方向周辺に向かって浅くなっている。
また、ウレタンクッション24のばね定数は、材質が均一で、厚さが一定の場合には、空間が多いほど低下する。このため、このシートクッション12の座面12Aでは、図3に実線で示される如く、ばね定数が、乗員のヒップポイント位置の中央部P1で最も低く、車幅方向周辺に向かって徐々に高くなっている。
一方、図6に示される如く、小径穴26の深さは乗員のヒップポイント位置の中央部P1が最も深く、車両前後方向周辺に向かって浅くなっている。このため、このシートクッション12の座面12Aでは、図7に実線で示される如く、乗員のヒップポイント位置の中央部P1のばね定数K8が最も低く、車両前後方向周辺に向かって徐々に高くなっており、ばね定数K8に比べ前方のばね定数K9及び後方のばね定数K10が高くなっている。」(段落【0028】?【0030】)、

(エ)前記記載事項に関連する図2、図6の記載からみて、ウレタンクッション24は、厚さが一定で、その表皮18側表面は平面をなしているといえる。

前記各記載事項および図面の開示内容からみて、前記刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「車両用シート10のためのシートクッション12のようなクッション用のウレタンクッション24であって、ウレタンから成り、ウレタンクッション24の表皮18側表面で穴26により調整したばね定数が与えられ、穴26の深さ、径、密度の少なくとも一つが中央部P1、車幅方向周辺そして車両前後方向周辺で異なり、ウレタンクッション24の表皮18側表面の方向でウレタン内のばね定数が調整されるウレタンクッション24において、
穴26が、中央部P1が最も深く、車幅方向周辺および車両前後方向周辺に向かって浅くなる深さおよび平面をなす表皮18側表面を有し、ウレタンクッション24の表皮18側表面に対して下方へ向けた配置であるウレタンクッション24」

(刊行物2)
原査定の理由中に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である、実願昭61-136703号(実開昭63-42258号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、下記の事項が記載されている。

(オ)「第1図及び第2図は本考案に係る座席の一例を示す。この座席も第4図に示した座席と同様に、図示していない着座者の尻部を支持するシートクッション1、着座者の背部を支持するシートバック3を有し、シートバック3のパッド4は骨格を構成するシートバックフレーム5及び該フレーム5に各端を係止されたクッションばね6と共に一体に成形された発泡体から成る。」(明細書第6頁第2?9行)

(カ)前記記載事項に関連して、第1図、第2図および第4図の図示内容から、シートバックフレーム5が、フレーム5の対向する2本の平行な部材間にクッションばね6の各端を係止張設して形成されていること、および前記クッションばね6が波形であることが明らかである。

前記記載事項および図面の記載からみて、前記刊行物2には、下記の事項が記載されている。

(キ)「フレーム5が発泡体に一体に成形され、フレーム5が、対向する2本の平行な部材間に波形のクッションばね6の各端を係止張設して形成されている構成」

(刊行物3)
本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である、特開平9-168678号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、下記の事項が記載されている。

(ク)「次に、本発明の製造方法を、前記嵌合孔25と嵌合突起26とが嵌合しているクッション体20を製造する場合について説明する。まず、座席用クッション体の製造に先立ち、ソフト部を成形する。図5にその発泡成形型30を示す。この発泡成形型30は、蓋型31と下型32との間に、ソフト部の外形状を規定するキャビティ33を有している。この発泡成形型30は、図3および図4に示したソフト部22を成形するためのもので、蓋型31の型面所定位置には前記嵌合孔25のための先端が拡大した突起部34が形成されている。」(段落【0020】)

(ケ)「そして、前記発泡成形型30のキャビティ33内に軟質ウレタンフォーム原料P1を注入し、前記キャビティ33内で発泡反応させることにより、図6および図7に示すような、所定形状の発泡体23よりなるソフト部22を成形する。そのソフト部22の表面には、前記軟質ウレタンフォーム原料P1が、その反応時に型面と接触して冷やされることによる薄膜状のスキン層24が形成されている。また、本体側表面となるソフト部表面には、内端が拡大した嵌合孔25が形成されている。」(段落【0021】)

(コ)前記記載事項に関連して、第3図?第7図に、所定形状の発泡体23よりなるソフト部22を成形する構成が図示されているといえる。

そして、スキン層24は、発泡原料の発泡成形中に型面に接触して冷え、発泡反応が不十分なことで形成されるものであるから、スキン層24は発泡体23内部よりその密度が高く、強度が強くなることは当業者にとって自明であるから、前記各記載事項および図面の記載からみて、前記刊行物3には、以下の点が記載されている。

(サ)「クッション体20のソフト部22における嵌合孔25が軟質ウレタンフォーム原料P1を発泡成形型30のキャビティ33内に注入することにより成形され、発泡体23の残りの他の外面に、発泡体23内部よりも強い薄膜状のスキン層24が形成される構成」

(刊行物4)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である米国特許第4879776号明細書(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに、下記の事項が記載されている。

(シ)「FIGS. 11 and 13 show a wheelchair pad 113 having a generally U-shaped buttock and thigh support area 115 and a general support area 117. (図11、図13は、一般的に、U字型の臀部と大腿部のサポート領域115と、一般的なサポートの領域117とを有する車椅子パッド113を示している。)」(明細書第9欄第54? 56行、()内は、当審による仮訳。)

(ス)前記記載事項に関連して、Fig.11、Fig.13には、車いすのサポート領域において、先端部の断面が小さくなる形状の凹部が図示されている。

前記各記載事項および図面の記載からみて、前記刊行物4には、下記の事項が記載されている。

(セ)「車椅子の臀部と大腿部をサポートする座部において、パッドに、変化する断面を有している凹部が形成されている構成」

3-2.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その、構成、機能または作用等からみて、前記引用発明における「車両用シート10」は本願補正発明の「座席」に相当し、以下、同様に、「シートクッション12」は「クッション」に、「ウレタンクッション24」は「詰め物」に、「ウレタン」は「発泡材料」に、「ウレタンクッション24の表皮18側表面」は「クッションの少なくとも一部」と「クッションの一面」と「発泡材の上面」に、「穴26」は「凹部」に、「調整」は「修正」に、「ばね定数」は「弾性値」に、「深さ、径、密度の少なくとも一つ」は「寸法及び/又は密度」に、「中央部P1、車幅方向周辺そして車両前後方向周辺」は「隣接部分」に、「ばね定数が調整される」は「柔軟性又は潰れ特性が変化する」に、「中央部P1が最も深く、車幅方向周辺および車両前後方向周辺に向かって浅くなる深さ」は「種々の深さ」に、「平面をなす表皮18側表面」は「平らな上面」に、「下方へ向けた」配置は「縦方向」配置に、それぞれ相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下の点で両発明は一致する。

(一致点)
「座席のためのクッションのようなクッション用の詰め物であって、発泡材料から成り、クッションの少なくとも一部で凹部により修正した弾性値が与えられ、凹部の寸法及び/又は密度が隣接部分で異なり、クッションの一面の方向で発泡材内の柔軟性又は潰れ特性が変化する詰め物において、
凹部が、種々の深さおよび平らな上面を有し、発泡材の上面に対して縦方向配置である詰め物」である点。

そして、両者は次の相違点1?4で相違する。
(相違点1)
本願補正発明では、フレームが完全に又は部分的に発泡材内に埋込まれ、フレームが、2本のフレームの平行な端部間にウエーブスプリングが延びて成るのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(相違点2)
凹部(穴26)が、本願補正発明では、発泡材への成形の助けにより成形されるのに対して、引用発明では、ウレタン(発泡材料)から成るウレタンクッション24(詰め物)にどのようにして成形されるのか不明な点。

(相違点3)
凹部(穴26)が、本願補正発明では、変化する断面を有しているのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(相違点4)
本願補正発明では、発泡材の残りの他の外面が、発泡材自体よりも強い成形時の外膜が得られるのに対して、引用発明では、そのような構成を備えているか否か不明な点。

3-3.相違点の判断
以下、前記各相違点について検討する。

相違点1について
前記刊行物2には、フレーム(フレーム5)が完全に又は部分的に発泡材内に埋込まれ(発泡体に一体に成形され)、フレーム(フレーム5)が、2本のフレームの平行な端部間にウエーブスプリングが延びて成る(対向する2本の平行な部材間に波形のクッションばね6の各端を係止張設して成る)構成が開示されており(前記(キ)参照)、引用発明も刊行物2に記載された事項も車両用シートという同一の技術分野に属しており、引用発明の詰め物(ウレタンクッション24)に、前記「フレームが完全に又は部分的に発泡材内に埋込まれ、フレームが、2本のフレームの平行な端部間にウエーブスプリングが延びて成る」フレーム構造を適用して、本願補正発明のように構成する程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものと認められる。

相違点2について
凹部(クッション体20のソフト部22における嵌合孔25)を、発泡材への成形の助け(軟質ウレタンフォーム原料P1を発泡成形型30のキャビティ33内に注入すること)により成形することは、前記刊行物3に記載されている(前記(サ)参照)。
したがって、前記刊行物3に記載の構成に倣い、引用発明の詰め物(ウレタンクッション24)の凹部(穴26)を、発泡材への成形の助けにより成形して、本願補正発明のように構成する程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものと認められる。

相違点3について
車椅子の臀部と大腿部をサポートする座部において、パッドに、変化する断面を有している凹部が形成されている構成は、前記刊行物4に記載されており(前記(セ)参照)、引用発明のウレタンクッションも、着座した人の臀部や大腿部を支持する部材と言う点においては同一の技術分野に属するものであり、引用発明の詰め物(ウレタンクッション24)の凹部(穴26)に、前記刊行物4に記載された事項を適用して、本願補正発明のように構成する程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものと認められる。

相違点4について
前記刊行物3に、発泡材(発泡体23)の残りの他の外面が、発泡材自体(発泡体23内部)よりも強い成形時の外膜(薄膜状のスキン層24)が得られる(形成される)ことが記載されており、(前記(サ)参照)、前記相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用発明の、発泡材料(ウレタン)に、前記刊行物3に記載された事項を適用して、当業者が必要に応じて適宜なし得たものと認められる。

そして、本願補正発明の構成によってもたらされる明細書に記載の効果も、引用発明、刊行物2?4に記載された事項から、当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び、刊行物2?4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成23年7月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「座席のためのクッションのようなクッション用の詰め物であって、発泡材料から成り、クッションの少なくとも一部で凹部により修正した弾性値が与えられ、凹部の寸法及び/又は密度が隣接部分で異なり、クッションの一面の方向で発泡材内の柔軟性又は潰れ特性が変化する詰め物において、
フレームが完全に又は部分的に発泡材内に埋込まれていることを特徴とする詰め物。」

IV.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記II.3-1.に記載したとおりである。

V.対比・判断
ここで本願発明と引用発明とを対比すると、II.3-2.に記載する相当関係のとおり、引用発明における「車両用シート10」は本願補正発明の「座席」に相当し、以下、同様に、「シートクッション12」は「クッション」に、「ウレタンクッション24」は「詰め物」に、「ウレタン」は「発泡材料」に、「ウレタンクッション24の表皮18側表面」は「クッションの少なくとも一部」と「クッションの一面」に、「穴26」は「凹部」に、「調整」は「修正」に、「ばね定数」は「弾性値」に、「深さ、径、密度の少なくとも一つ」は「寸法及び/又は密度」に、「中央部P1、車幅方向周辺そして車両前後方向周辺」は「隣接部分」に、「ばね定数が調整される」は「柔軟性又は潰れ特性が変化する」に、それぞれ相当する。

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両発明は次の点で一致する。
(一致点)
「座席のためのクッションのようなクッション用の詰め物であって、発泡材料から成り、クッションの少なくとも一部で凹部により修正した弾性値が与えられ、凹部の寸法及び/又は密度が隣接部分で異なり、クッションの一面の方向で発泡材内の柔軟性又は潰れ特性が変化する詰め物」である点。

そして、両発明は、次の点で相違する。
(相違点5)
本願発明では、フレームが完全に又は部分的に発泡材内に埋込まれているのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

相違点5について検討する。
フレーム(フレーム5)が完全に又は部分的に発泡材内に埋込まれる座席のクッションは、前記II.3-1に記載した、刊行物2や、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である、実願昭62-55458号(実開昭63-163654号)のマイクロフィルム(第2図参照)、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である、特開昭55-50316号公報(第1図、第2図参照)にも記載されているように、周知の事項であり、前記相違点5に係る本願発明の構成は、引用発明に、前記周知の事項を適用して、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明による効果も、引用発明、及び、周知の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

VII.付記
審判請求人は、平成24年6月13日付け回答書において補正案を提示し、特許請求の範囲の補正を希望しているので念のため検討する。
前記回答書に記載された補正案の特許請求の範囲の請求項1は、本願の平成23年12月21日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項2の「詰め物が、ユーザーの尻の圧痕形状に適合するように高い弾性の発泡材で形成された」という構成を請求項1に追加するものである。
しかしながら、前記II.の[理由I]で述べたとおり、請求項2の前記事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面には記載されておらず、かつこれらから自明な事項でもないから、前記補正案は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないので、前記補正案を受け入れることはできない。
 
審理終結日 2012-08-02 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-20 
出願番号 特願2008-538839(P2008-538839)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47C)
P 1 8・ 575- Z (A47C)
P 1 8・ 561- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 陽征  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 田合 弘幸
松下 聡
発明の名称 家具用詰め物  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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