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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1268631
審判番号 不服2011-17289  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-10 
確定日 2013-01-11 
事件の表示 特願2007-527981号「ステープル留め支持構造物」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月2日国際公開、WO2006/023578、平成20年4月10日国内公表、特表2008-510515号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2005年8月16日(パリ条約による優先権主張 2004年8月17日 、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年12月14日付けで拒絶理由が通知され、それに対して平成23年3月15日付けで手続補正がなされ、平成23年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年8月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「医療用デバイスであって:
ポリヒドロキシエチルメタクリレートから作製される支持構造物であって、外科用ステープラーに離脱可能に取り付けられている支持構造物を備える、医療用デバイス。」
(下線部は補正箇所)

上記の補正は、発明を特定するために必要な事項である「水溶性ビニルモノマーを含む少なくとも1つの親水性ポリマー」を、「ポリヒドロキシエチルメタクリレート」に限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号において規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当する。
そして、本件補正は、新規事項を含むものでもない。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という)が、独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載内容
(1)刊行物1:特開2003-603号公報

原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物1には、「外科用組織ステープリング器具及び外科用ステープリング器具へのバットレス材料の取付け組立体」に関して、以下の記載がある。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】外科用ステープリング器具の組織クランプ部材にバットレス材料を解放自在に取り付ける組立体であって、
a.前記組立体が外科用ステープリング器具上に配置されたときに、外科用ステープリング器具の組織クランプ部材の頂面に連結される実質的に剛性のフレームと、
b.前記フレームの第1の側部及び第2の側部に取り付けられていて、前記組立体が外科用ステープリング器具上に配置されたときに、外科用ステープリング器具の組織クランプ部材の底面に当接するバットレス材料とを有していることを特徴とする組立体。」
(下線は当審にて付与。以下同様。)

イ.「【0015】図6に示すように、第1のバットレスストリップ60は、着脱自在なステープルカートリッジ45の第1の組織クランプ表面46に解放自在に取り付けられている。バットレスストリップ60を多種多様なバットレス材料から形成することができ、かかるバットレス材料としては、ニュージャージー州サマービル所在のエシコン・インコーポレイテッド(Ethicon, Inc.)製のビクリル(VICRYL:登録商標)、ミズーリ州セントルイス所在のシャーウッド-デイビス・アンド・ゲックス(Sherwood-Davis and Geck)社製のデキソン(DEXON:登録商標)、及びデラウェア州ウィルミントン所在のデュポン社(DuPont de Nemours & Co.)製のテフロン(登録商標)が挙げられる。加うるに、他の材料としては、動物材料、例えば、なめし牛心膜、生体適合性のあるエラストマー、例えば、英国ガーグレーブ所在のエシコン・インコーポレイテッド製のε-カプロラクトングリコリド(ε-caprolactone glycolide)、又は多くの適当なバットレス材料のうちの何れか一が挙げられる。適当なε-カプロラクトングリコリド材料又はフォームは、特に関心のあるものであり、米国特許第5,468,253号に記載されており、かかる米国特許の記載内容を本明細書の一部を形成するものとしてここに引用する。本発明の目的は、バットレスストリップ60,61を長期間にわたり、最高2年以上にわたって外科用ステープリング器具20の少なくとも一部に解放自在に取り付けることにある。」

ウ.図3には、バットレス材料であるバットレスストリップ60,61が、組織クランプ46,41表面上に取り付けられることが図示されている。

以上のア.、イ.の記載、及びウ.の図面の記載を総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「外科用ステープリング器具の組織クランプ部材の表面に、ビクリル(登録商標)、デキソン(登録商標)、テフロン(登録商標)、動物材料であるなめし牛心膜、生体適合性のあるエラストマーであるε-カプロラクトングリコリドのうちの何れか一つのバットレス材料を解放自在に取り付けることができる外科用ステープリング器具。」

(2)刊行物2:特表2002-523186号公報

原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物2には、「ステント用薬物送達デバイス」に関して、以下の記載がある。

エ.「【0022】
(本発明の概要)
従って、本発明の目的は、ステント上に取り付けられることに適合するポリマーからなるデバイスに関する。このポリマー材料の装置は、円筒形、らせん形コイル、又はその他特定のステントに適合する形状又はデザインを有するシース又はスリーブを含む。ステントは金属製であっても非金属製であってもよく、金属と非金属の材料の組み合わせであってもよい。本発明のデバイスとして使用することが望ましいステントの一例は、ここに参照のために援用する米国特許第5,733,303号に記載されたNIRステントである。さらに、本装置は、参照のため援用される米国特許出願第08/874,190号に記載されるステントと共に使用されてもよい。
【0023】
デバイスは生物学的適合性材料からなっていてもよく、生物分解性又は生物分解不可能の材料からなっていてもよい。デバイスは水溶性であってもよい。デバイスは薬剤又は放射能薬剤を含んでいてもよい。デバイスは生体の管の内腔に挿入されて使用する前にステントに取り付けられ、ステントと共に拡張されてもよい。デバイスは生物分解性であることもあり、生物分解可能な材料の分解レートにより制御されるレートにおいて管の内腔で放出される薬物を含む生物学的適合性を有する少なくとも一つの生物分解性材料から構成されてもよい。」

オ.「【0038】
本発明はいかなるステントと共に用いられてもよい。このようなステントの直径は1ミリメートルから50ミリメートル、長さは1ミリメートルから50ミリメートルまでの範囲にある。ステントの大きさはステントが配置される管の内腔により指示される。チューブ状本体21は、好適には約5センチメートルまでの長さを有する。
【0039】
シースは、移植されるステントと共に用いるのに適合するあらゆる大きさであってよい。
本発明のシース10の形成には数多くの適合する材料が使用される。例えば、親水性ポリマー、コポリマー(ブロック又はグラフト)又はそれらの架橋したもの(例えばヒドロゲル)を用いればよく、ポリヒドロキシエチルメタクリレート及びその誘導体;ポリビニルアルコール;ポリエチレンオキサイド;ポリプロピレンオキサイド;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;ポリメタアクリル酸;ポリ-N-ビニル-2-ピロリドン;親水性ポリウレタン;ポリアミノ酸;水溶性セルロースポリマー(例えばカルボキシメチルナトリウムセルロース、ヒドロキシエチルセルロース);コラーゲン;カラゲニン;アルジン酸;デンプン;デキストリン;及びゼラチンが含まれる。」

カ.図11には、ステント20上に取り付けられたシース10が血管内組織に接触する箇所に用いられる点が図示されている。

3.発明の対比
本件補正発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「外科用ステープリング器具」は、本件補正発明の「外科用ステープラー」に相当し、引用発明の「バットレス材料」は、本件補正発明の「支持構造物」に相当し、引用発明の「外科用ステープリング器具の組織クランプ部材」に「解放自在に取り付ける」ことは、本件補正発明の「外科用ステープラーに離脱可能に取り付け」ることに相当する。そして、引用発明の「外科用ステープリング器具」、「バットレス部材」は、外科等の医療行為に用いるものであるから、総じて本件補正発明の「医療用デバイス」に相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「医療用デバイスであって、外科用ステープラーに離脱可能に取り付けられている支持構造物を備える、医療用デバイス。」

[相違点]
支持構造物に関して、本件補正発明においては、ポリヒドロキシエチルメタクリレートから作製されるのに対して、引用発明においては、ビクリル(登録商標)、デキソン(登録商標)、テフロン(登録商標)、動物材料であるなめし牛心膜、生体適合性のあるエラストマーであるε-カプロラクトングリコリドのうちの何れか一つからなる点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
上記2.オ.、カ.の記載を総合すると、刊行物2には、ステント20上に取り付けられたシース10に関して、その材料としてポリヒドロキシエチルメタクリレートが用いられ、血管内組織に接触する箇所に設けられることが記載されている。
さらに、ポリヒドロキシエチルメタクリレートが、生体適合性、親水性などの特性を備えており、医療用器具において生体組織と接する部分に用いられることは、本願の優先日前において周知の技術的事項(例えば特開2003-9845号公報、段落【0037】の記載/特開2000-245755号公報、段落【0042】の記載/特開平9-173469号公報、段落【0012】の記載等を参照)である。
よって、引用発明の外科用ステープリング器具の組織クランプ部材の表面に取り付けられるバットレス材料は、生体組織と接する部分に設けられたものであるから、その材料を選択するにあたって、上記刊行物2の記載事項や周知の技術的事項を参酌して、ポリヒドロキシエチルメタクリレートを選択することにより上記相違点に係る本願補正発明とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本件補正発明の奏する効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知の技術的事項に基づいて当業者であれば予測できた範囲内のものである。

したがって、本件補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上述のように却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年3月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下「本件発明」という)

「医療用デバイスであって:
水溶性ビニルモノマーを含む少なくとも1つの親水性ポリマーから作製される支持構造物であって、外科用ステープラーに離脱可能に取り付けられている支持構造物を備える、医療用デバイス。」

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物とその記載内容は、上記「第2.2.」に記載したとおりのものである。

3.発明の対比
本件発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「外科用ステープリング器具」は、本件発明の「外科用ステープラー」に相当し、引用発明の「バットレス材料」は、本件発明の「支持構造物」に相当し、引用発明の「外科用ステープリング器具の組織クランプ部材」に「解放自在に取り付ける」ことは、本件発明の「外科用ステープラーに離脱可能に取り付け」ることに相当する。そして、引用発明の「外科用ステープリング器具」、「バットレス部材」は、外科等の医療行為に用いるものであるから、総じて本件発明の「医療用デバイス」に相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「医療用デバイスであって、外科用ステープラーに離脱可能に取り付けられている支持構造物を備える、医療用デバイス。」

[相違点]
支持構造物に関して、本件発明においては、水溶性ビニルモノマーを含む少なくとも1つの親水性ポリマーから作製されるのに対して、引用発明においては、ビクリル(登録商標)、デキソン(登録商標)、テフロン(登録商標)、動物材料であるなめし牛心膜、生体適合性のあるエラストマーであるε-カプロラクトングリコリドのうちの何れか一つからなる点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について判断する。
上記2.オ.、カの記載を総合すると、刊行物2には、ステント20上に取り付けられたシース10に関して、その材料として親水性のポリマーである、ポリ-N-ビニル-2-ピロリドンを用いること、及びシース10が血管内組織に接触する箇所に設けられることが記載されている。
また、ポリ-N-ビニル-2-ピロリドンが、生体適合性、親水性などの特性を備えており、医療用器具において生体組織と接する部分に用いうることは、本願の優先日前において周知の技術的事項(例えば特開2003-9845号公報、段落【0037】の記載等を参照)である。
そして、ポリ-N-ビニル-2-ピロリドンは、N-ビニル-2-ピロリドンの重合により形成されることは技術常識であるから、ポリ-N-ビニル-2-ピロリドンは、水溶性ビニルモノマーであるN-ビニル-2-ピロリドンを含むものであることは明らかである。
よって、引用発明の外科用ステープリング器具の組織クランプ部材に取り付けられるバットレス材料は、組織クランプの生体組織と接する部分に設けられたものであるから、その材料を選択するにあたって、上記刊行物2の記載事項や周知の技術的事項を参酌し、N-ビニル-2-ピロリドンからなる水溶性ビニルモノマーを含む親水性ポリマーであるポリ-N-ビニル-2-ピロリドンを選択し、上記相違点に係る本願発明とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

5.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-17 
結審通知日 2012-08-20 
審決日 2012-09-03 
出願番号 特願2007-527981(P2007-527981)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二階堂 恭弘津田 真吾  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 松下 聡
高田 元樹
発明の名称 ステープル留め支持構造物  
代理人 大塩 竹志  

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