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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1268633
審判番号 不服2011-23014  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-26 
確定日 2013-01-11 
事件の表示 特願2006- 94531「IP電話機遠隔操作システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-274107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年3月30日の出願であって、平成23年7月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年10月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年3月15日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「ネットワークと、該ネットワークに接続されたIP電話機と、前記ネットワークに接続された主装置と、前記ネットワークに接続された遠隔操作部とを備え、
前記遠隔操作部は、前記IP電話機を遠隔操作するためのアプリケーションを搭載し、
前記IP電話機は、前記アプリケーションとの間での前記ネットワークを介してのコマンドの受信及び送信を行うためのポートを備え、
前記遠隔操作部は、前記アプリケーションを用いて前記IP電話機を遠隔操作対象IP電話機として認識するための認識要求コマンドを作成し、該認識要求コマンドをブロードキャストアドレスで前記ネットワークに送信するものであり、
前記遠隔操作部は、更に、前記IP電話機から前記端末認識要求コマンドに対する応答として端末認識応答コマンドを受信すると、前記アプリケーションを用いて、受信した端末認識応答コマンドを基に前記IP電話機の認識を行い、前記IP電話機の認識が完了すると、前記IP電話機に対する遠隔操作指示コマンドを作成し、該遠隔操作指示コマンドを前記ネットワークに送信し、前記IP電話機の遠隔操作を前記主装置を介さずに行うものであることを特徴とするIP電話機遠隔操作システム。」

3.引用例発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-134253号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、VoIP(Voice over IP)を利用して通話を行なうIP(InternetProtocol)電話機の管理技術に関し、特に、IPアドレスが動的に割り当てられるIP電話機を管理する技術に関する。」

ロ.「【0020】図1は本発明の一実施形態が適用されたIP電話システムの概略図である。
【0021】図1において、符号101?104はIP電話機、符号20はDHCPサーバ、符号30はコールマネージャ、符号40は保守端末、そして、符号50は、例えばIEEE802.5に基づくLANである。IP電話機101?104は、DHCPクライアントとしての機能を有し、DHCPサーバ20から自身のIPアドレスを入手して、これを予め登録されている自身の電話番号に対応付けて保持する。
【0022】図2は、IP電話機101?104の概略図である。
【0023】図示するように、本実施形態のIP電話機101?104は、LAN50と接続するためのLANインターフェース部101と、ハンドセット等の音声入出力装置や、ダイヤルボタン等を備える操作パネルと接続するための入出力インターフェース部102と、LANインターフェース部101を介してLAN50と送受するパケット(IPパケット)を処理するIP処理部103と、IP処理部103およびLANインターフェース部101を介して、LAN50に接続されたDHCPサーバ20にアクセスし、自身のIPアドレスを入手するDHCP処理部104と、各部を統括的に制御する主制御部105と、RTPを使用してIP処理部103および入出力インターフェース部102間の通話信号の中継を行なうRTP処理部106と、入出力インターフェース部102を介して操作パネルから操作者の指示を受け付ける指示受付部107と、を有する。
【0024】ここで、主制御部105には、自身の電話番号が予め設定されている。また、DHCP処理部104がDHCPサーバ20より入手した自身のIPアドレスが設定される。さらに、主制御部105は、各種情報の設定・管理を行なう設定・管理部1051と、呼制御を行なう呼制御部1052と、を有する。
【0025】設定・管理部1051は、LANインターフェース部101およびIP処理部103を介してLAN50より、電話番号を含んだ保守用のマルチキャストパケットを受信すると、当該電話番号が予め設定されている自身の電話番号であるか否かを調べる。そして、自身の電話番号であるならば、このマルチキャストに含まれる保守内容に従って情報の設定・収集を行なう。それから、送信元IPアドレスを宛先アドレスとする、このマルチキャストパケットに対する応答パケットに結果を格納して、IP処理部103およびLANインターフェース部101を介してLAN50上に送信する。」

ハ.「【0030】図4は、保守端末40の概略図である。
【0031】図示するように、本実施形態の保守端末40は、LAN50と接続するためのLANインターフェース部401と、LANインターフェース部401を介してLAN50と送受するパケット(IPパケット)を処理するIP処理部402と、キーボード等の入力装置およびディスプレイ等の出力装置からなら入出力部403と、入出力部403に入力された操作者の指示に従い、各IP電話機101?104より情報を収集したり、各IP電話機101?104に情報を設定したりするために必要な処理を行なう主制御部404と、を有する。なお、保守端末40のIPアドレス(ここでは、192.1.18.100)は固定である。また、保守端末40はマルチキャストパケットの受信処理を行なわないものとする。」

ニ.「【0040】図7は、図1に示すIP電話システムでのIP電話機101?104に対する情報の設定および収集処理手順を示したシーケンス図である。
【0041】保守端末40の主制御部404は、入出力部403を介して操作者から、電話番号(ここでは「2000」、「4000」)および設定内容の入力を伴う情報設定の指示を受付けると、入力された電話番号および設定内容を含む保守用のマルチキャストパケットを、IP処理部402およびLANインターフェース部401を介して、LAN50に送出する(S7001)。
【0042】ここで、図8に、保守用のマルチキャストパケットのフォーマット例を示す。図示するように、ペイロード802には、保守情報8021が少なくとも1つ格納される。保守情報8021は、この保守情報が対象とするIP電話機101?104の電話番号と、このIP電話機101?104に対する保守内容とを含む。保守内容は、情報設定の場合は、情報設定命令と設定内容を示すパラメータとを含む。また、情報収集の場合は、情報収集命令と収集対象項目を示すパラメータとを含む。また、IPヘッダ801に格納される宛先アドレスは、マルチキャスト用のIPアドレスに設定される。
【0043】さて、IP電話機101?104各々の設定・管理部1051は、LANインターフェース部101およびIP処理部103を介してLAN50より保守用のマルチキャストパケットを受信すると、このパケットのペイロード802に格納されている保守情報8021各々の電話番号「2000」、「4000」に、自身の電話番号と一致するものがあるか否かを調べる。
【0044】IP電話機101および103の設定・管理部1051は、保守用のマルチキャストパケットに格納されている電話番号「2000」、「4000」が自身の電話番号ではないので、このマルチキャストパケットの送信元である保守端末40への応答は行なわない(S7002、S7003)。
【0045】一方、IP電話機102および104の設定・管理部1051は、保守用のマルチキャストパケットに含まれている電話番号「2000」、「4000」に、自身の電話番号に一致するものがあるので、このパケットのペイロード802に格納されている、自身の電話番号を含む保守情報8021の保守内容(情報設定命令と設定内容を示すパラメータ)に従って、自身に設定されている情報を更新する(S7004、S7005)。それから、更新結果を格納した応答パケットを、保守用のマルチキャストパケットを送信した保守端末40のIPアドレス(192.1.18.100)へ送信する(S7006、S7007)。
【0046】また、保守端末40の主制御部404は、入出力部403を介して操作者から、電話番号(ここでは「3000」)および収集対象項目の入力を伴う情報収集の指示を受付けると、入力された電話番号および収集対象項目を含む保守用のマルチキャストパケットを、IP処理部402およびLANインターフェース部401を介して、LAN50に送出する(S7008)。
【0047】IP電話機101?104各々の設定・管理部1051は、LANインターフェース部101およびIP処理部103を介して、LAN50より保守用のマルチキャストパケットを受信すると、このパケットのペイロード802に格納されている保守情報8021の電話番号「3000」が自身の電話番号であるか否かを調べる。
【0048】IP電話機101、102および104の設定・管理部1051は、保守用のマルチキャストパケットに格納されている電話番号「3000」が自身の電話番号ではないので、このマルチキャストパケットの送信元である保守端末40への応答は行なわない(S7009?S7011)。
【0049】一方、IP電話機103の設定・管理部1051は、保守用のマルチキャストパケットに含まれている電話番号「3000」が自身の電話番号であるので、このパケットのペイロード802に格納されている、自身の電話番号を含む保守情報8021の保守内容(情報収集命令と収集対象項目を示すパラメータ)に従って、自身に設定されている設定情報や自身の状態を示す状態情報を収集する(S7012)。そして、収集した情報を含む応答パケットを、保守用のマルチキャストパケットを送信した保守端末40のIPアドレス(192.1.18.100)へ送信する(S7013)。」

ホ.「【0055】なお、上記の各実施形態において、IP電話機やコールマネージャや保守端末やDHCPサーバは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やDSP(Digital Signal Processor)を使用して専用装置として構築してもよいし、あるいは、汎用のコンピュータシステム上にソフトウエア的に構築しても構わない。ここで、汎用のコンピュータシステム上に、IP電話機やコールマネージャやDHCPサーバをソフトウエア的に構築するためのプログラムは、CD-ROM等の記録メディアに格納されて、コンピュータシステムに提供されるようにしてもよい。あるいは、ネットワークを介してコンピュータシステムに提供されるようにしてもよい。さらに、保守端末およびコールマネージャは、同じ装置(例えば同じコンピュータシステム)上に構築するようにしても構わない。」

引用例の図1によれば、引用例のIP電話システムは、LANと、LANに接続されたIP電話機と、LANに接続されたコールマネージャと、LANに接続された保守端末を備えるものである。
引用例の【0031】の記載によれば、保守端末は、IP電話機の情報設定及び情報収集を行う手段を備えるものといえる。
引用例の【0025】の記載によれば、IP電話機は、保守端末が備えるIP電話機の情報設定及び情報収集を行う手段との間での、保守用のマルチキャストパケットの受信及びマルチキャストパケットに対する応答パケットの送信を行うための手段を備えるものといえる。
引用例のニ.及び図7には、IP電話機に対する情報の設定および収集手順が示されている。特に【0041】、【0046】の記載によれば、保守端末は、IP電話機に対する保守用のマルチキャストパケットを作成してLANに送信するものであるといえる。そして、IP電話機の情報設定及び情報収集は、コールマネージャの関与なしに行われるもの、すなわち、コールマネージャを介さずに行われるものであるといえる。

したがって、引用例には、技術常識を考慮すると、
「LANと、該LANに接続されたIP電話機と、前記LANに接続されたコールマネージャと、前記LANに接続された保守端末とを備え、
前記保守端末は、IP電話機の情報設定及び情報収集を行う手段を備え、
前記IP電話機は、前記保守端末のIP電話機の情報設定及び情報収集を行う手段との間での保守用のマルチキャストパケットの受信及びマルチキャストパケットに対する応答パケットの送信を行うための手段を備え、
前記保守端末は、前記IP電話機の情報設定及び情報収集を行う手段を用いて、前記IP電話機に対する保守用のマルチキャストパケットを作成し、該保守用のマルチキャストパケットを前記LANに送信し、前記IP電話機の情報設定及び情報収集を前記コールマネージャを介さずに行うIP電話システム。」
の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「LAN」は、本願発明の「ネットワーク」に相当する。
引用例発明の「コールマネージャ」は、本願発明の「主装置」に相当する。
引用例発明の「IP電話機の情報設定及び情報収集」は、保守端末がIP電話機を操作することによりなされるものであり、また、保守端末とIP電話機とは、離れた場所に設置されることは自明であるから、本願発明の「IP電話機の遠隔操作」に相当するものである。したがって、引用例発明の「保守端末」は、本願発明の「遠隔操作部」に相当するものである。
引用例発明の「IP電話機の情報設定及び情報収集を行う手段」と本願発明の「前記IP電話機を遠隔操作するためのアプリケーション」とは、「前記IP電話機を遠隔操作するための手段」である点で共通している。
引用例発明の「保守用のマルチキャストパケット」及び「マルチキャストパケットに対する応答パケット」は、本願発明の「前記ネットワークを介してのコマンド」に含まれるものである。
そして、本願発明の「アプリケーション」は、「遠隔操作部」に搭載されるものであるから、引用例発明と本願発明とは、「IP電話機は、遠隔操作部との間でのネットワークを介してのコマンドの受信及び送信を行うための手段」を備える点で共通している。
引用例発明の「保守用のマルチキャストパケット」は、本願発明の「遠隔操作指示コマンド」に相当する。
引用例発明の「IP電話システム」は、「IP電話機遠隔操作システム」であるといえる。

したがって、本願発明と引用例発明とは、
「ネットワークと、該ネットワークに接続されたIP電話機と、前記ネットワークに接続された主装置と、前記ネットワークに接続された遠隔操作部とを備え、
前記遠隔操作部は、前記IP電話機を遠隔操作するための手段を備え、
前記IP電話機は、前記遠隔操作部の前記IP電話機を遠隔操作するための手段との間での前記ネットワークを介してのコマンドの受信及び送信を行うための手段を備え、
前記遠隔操作部は、前記IP電話機を遠隔操作するための手段を用いて、前記IP電話機に対する遠隔操作指示コマンドを作成し、該遠隔操作指示コマンドを前記ネットワークに送信し、前記IP電話機の遠隔操作を前記主装置を介さずに行うものであるIP電話機遠隔操作システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
遠隔操作部の「IP電話機を遠隔操作するための手段」が、本願発明では、「アプリケーション」であるのに対して、引用例発明では、そのように特定されていない点。
[相違点2]
IP電話機の「前記ネットワークを介してのコマンドの受信及び送信を行うための手段」が、本願発明では、「ポート」であるのに対して、引用例発明では、そのように特定されていない点。
[相違点3]
「遠隔操作部」に関し、本願発明は、「前記アプリケーションを用いて前記IP電話機を遠隔操作対象IP電話機として認識するための認識要求コマンドを作成し、該認識要求コマンドをブロードキャストアドレスで前記ネットワークに送信するものであり、前記遠隔操作部は、更に、前記IP電話機から前記端末認識要求コマンドに対する応答として端末認識応答コマンドを受信すると、前記アプリケーションを用いて、受信した端末認識応答コマンドを基に前記IP電話機の認識を行」うのに対して、引用例発明は、そのようなものではない点。
[相違点4]
「前記IP電話機に対する遠隔操作指示コマンドを作成し、該遠隔操作指示コマンドを前記ネットワークに送信」することは、本願発明では、「IP電話機の認識が完了する」と行われるのに対して、引用例発明は、そのようなものではない点。

5.当審の判断
まず、相違点1について検討する。
引用例の【0055】には、IP電話機や保守端末(遠隔操作部に相当)を、汎用コンピュータシステム上のソフトウェアで構築することが示唆されており、そのようなソフトウェアが「アプリケーション」と呼ばれることは技術常識である。
したがって、遠隔操作部の「IP電話機を遠隔操作するための手段」を「アプリケーション」とすることに困難性は認められない。
次に、相違点2について検討する。
ネットワークに接続される機器において、ネットワークを介して通信を行うために「ポート」を設けることは技術常識であり、相違点2は何ら格別のことではない。
次に、相違点3、4について検討する。
ネットワークに接続された管理装置等が、ネットワークに接続された装置を認識するために、認識要求をブロードキャストで送信し、その応答を受信することは、例えば特開平7-87092号公報、特開2000-330925号公報、特開2005-311922号公報に示されているように周知事項であり、引用例発明の保守端末は、ネットワークに接続された管理装置であるから、当該周知事項を適用して、ネットワークに接続されたIP電話機を認識するようにすることに困難性は認められない。そして、ブロードキャストで送信するときに、ブロードキャストアドレスを使用することは常套手段である。
また、相違点1で検討したように、遠隔操作部の「IP電話機を遠隔操作するための手段」を「アプリケーション」による手段としたときには、IP電話機の認識にもアプリケーションを用いることは当然である。
さらに、IP電話機の遠隔操作を行うためには、それ以前にIP電話機の認識が完了する必要があることも当業者には自明のことである。
したがって、相違点3、4に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たものというべきである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-12 
結審通知日 2012-11-14 
審決日 2012-11-27 
出願番号 特願2006-94531(P2006-94531)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松元 伸次  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 山本 章裕
藤井 浩
発明の名称 IP電話機遠隔操作システム  
代理人 池田 憲保  
代理人 佐々木 敬  
代理人 福田 修一  

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