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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1268649
審判番号 不服2010-29656  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2013-01-10 
事件の表示 特願2000-132741「液状アルカリ性洗浄剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月16日出願公開、特開2001-316693〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成12年5月1日の特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成21年12月17日 刊行物等提出書
平成22年 1月14日付け 拒絶理由通知
平成22年 3月29日 意見書・手続補正書
平成22年 5月17日付け 拒絶理由通知(最後)
平成22年 7月26日 意見書・手続補正書
平成22年 9月21日付け 補正の却下の決定
同日付け 拒絶査定
平成22年12月28日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成23年 1月12日付け 前置審査移管
平成23年 2月17日付け 前置報告書
平成23年 2月25日付け 前置審査解除
平成24年 5月29日付け 審尋
平成24年 8月 1日 回答書
(なお、平成22年7月26日付けの手続補正は、同年9月21日付けの補正の却下の決定をもって却下された。)

第2 平成22年12月28日付け手続補正の却下の決定

<決定の結論>
平成22年12月28日付けの手続補正を却下する。

<決定の理由>
I.補正の内容
上記平成22年12月28日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲につき下記のとおり補正することを含むものである。

1.本件補正前(平成22年3月29日付け手続補正後のもの)
「【請求項1】 水酸化ナトリウムをNa_(2)O基準で10?35重量%と、化1で示される1種以上のポリオキシエチレンアミノエーテルを0.1?20重量%と、ポリアクリル酸(またはその塩)を0.01?10重量%と、安息香酸(またはその塩)を0.01?10重量%とを含むことを特徴とする液状アルカリ性洗浄剤組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素数10?20の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基、mおよびnはオキシエチレン基の平均付加モル数を表し、m、nは自然数であってm+n=2?120である。)
【請求項2】 ポリアクリル酸(またはその塩)/安息香酸(またはその塩)の比が1より大きいことを特徴とする請求項1に記載の液状アルカリ性洗浄剤組成物。
【請求項3】 消泡剤として、イソステアリルアルコール、0.1?20重量%をさらに含有して成る請求項1記載の液状アルカリ性洗浄剤組成物。
【請求項4】 キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸および/またはグルコン酸ナトリウム、0.05?20重量%をさらに含有してなる請求項1または2記載の液状アルカリ性洗浄剤組成物。」
(以下、項番に従い「旧請求項1」?「旧請求項4」という。)

2.本件補正後
「【請求項1】 水酸化ナトリウムをNa_(2)O基準で29?35重量%と、化1で示されるポリオキシエチレンアミノエーテルを0.1?20重量%と、ポリアクリル酸(またはその塩)を0.01?10重量%と、安息香酸(またはその塩)を0.01?10重量%とを含み、前記ポリエチレンアミノエーテルがポリエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシ牛脂アミノエーテル、ポリオキシステアリルアミノエーテルおよびポリオキシオレイルアミノエーテルから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする液状アルカリ性洗浄剤組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素数12?18の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基、mおよびnはオキシエチレン基の平均付加モル数を表し、m、nは自然数であってm+n=2?90である。)
【請求項2】
消泡剤として、イソステアリルアルコール、0.1?20重量%をさらに含有して成る請求項1記載の液状アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】
キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸および/またはグルコン酸ナトリウムの1種以上を、0.05?20重量%さらに含有して成る請求項1または2記載の液状アルカリ性洗浄剤組成物。」
(以下、項番に従い「新請求項1」?「新請求項3」といい、それらを併せて「新請求項」ということがある。)

II.補正事項に係る検討

1.補正の目的の適否
本件補正は、上記I.のとおり、特許請求の範囲に係る補正事項を含むので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものか否かにつき検討する。
本件補正では、旧請求項2につき削除するとともに、旧請求項1、3及び4につき、項番を繰上げ新請求項1ないし3としている。
そして、旧請求項1における水酸化ナトリウムの重量比に係る「Na_(2)O基準で10?35重量%」なる範囲並びに化1に係るR基の炭素数に係る「10?20」なる範囲及びオキシエチレン基の平均付加モル数に係る「m+n=2?120」なる範囲につき、新請求項1では、それぞれ「Na_(2)O基準で29?35重量%」並びに「12?18」及び「m+n=2?90」と限定されるとともに、旧請求項1における「化1で示される1種以上のポリオキシエチレンアミノエーテル」を、新請求項1では「化1で示されるポリオキシエチレンアミノエーテル」とし、さらに「前記ポリエチレンアミノエーテルがポリエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシ牛脂アミノエーテル、ポリオキシステアリルアミノエーテルおよびポリオキシオレイルアミノエーテルから選択される少なくとも1種以上である」と限定している。
また、旧請求項4における「キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸および/またはグルコン酸ナトリウム、0.05?20重量%をさらに含有してなる」につき、新請求項3では、「キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸および/またはグルコン酸ナトリウムの1種以上を、0.05?20重量%さらに含有して成る」としている。
してみると、新請求項1ないし3に係る各発明は、旧請求項1ないし4に係る各発明との間で、解決しようとする課題及び産業上の利用分野をそれぞれ一にするものであることが明らかであるから、旧請求項1ないし4から新請求項1ないし3とする本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものといえる。

2.独立特許要件
上記1.のとおり、上記特許請求の範囲に係る手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、新請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かにつき検討する。(なお、当該検討にあたり、本件補正により補正された本願明細書を「本願補正明細書」という。)

(1)新請求項に係る発明
新請求項1に係る発明は、新請求項1に記載された事項で特定されるとおりのものであり、再掲すると以下のとおりの記載事項により特定されるものである。
「水酸化ナトリウムをNa_(2)O基準で29?35重量%と、化1で示されるポリオキシエチレンアミノエーテルを0.1?20重量%と、ポリアクリル酸(またはその塩)を0.01?10重量%と、安息香酸(またはその塩)を0.01?10重量%とを含み、前記ポリエチレンアミノエーテルがポリエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシ牛脂アミノエーテル、ポリオキシステアリルアミノエーテルおよびポリオキシオレイルアミノエーテルから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする液状アルカリ性洗浄剤組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素数12?18の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基、mおよびnはオキシエチレン基の平均付加モル数を表し、m、nは自然数であってm+n=2?90である。)」
(以下、「本件補正発明」という。)

(2)検討
しかるに、本件補正発明については、下記の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

理由:本件補正発明は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用刊行物:
1.特開平4-359096号公報
2.特開平11-106799号公報
(上記1.及び2.の各刊行物は、いずれも原審における平成22年5月17日付け拒絶理由通知で引用された「引用文献1」及び「引用文献2」である。以下、それぞれ「引用例1」及び「引用例2」という。)

ア.各引用例の記載事項

(ア)引用例1について
上記引用例1には、以下の事項が記載されている。

(ア-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】・・(中略)・・
【請求項2】(a) アルカリ金属の水酸化物:28重量%以上、(b) 重量平均分子量が1000?20万のポリアクリル酸またはその塩:0.5?10重量%、(c) ノニオン界面活性剤:0.1?15重量%、(d) 水性媒体を含有することを特徴とする液状アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】 前記ノニオン界面活性剤が下記化1または化2で表わされる化合物である請求項2記載の液状アルカリ洗浄剤組成物。
【化1】R_(1)-(C_(2)H_(4)O)_(m)-(C_(3)H_(6)O)_(n)-H
(R_(1):C_(10)?C_(22)のアルコール、アミン、アミド残基
m:エチレンオキシドの平均付加モル数を表わし、1?200の数
n:プロピレンオキシドの平均付加モル数を表わし、1?200の数)
【化2】
H-(C_(3)H_(6)O)_(p)-(C_(2)H_(4)O)_(m)-(C_(3)H_(6)O)_(q)H
(m:エチレンオキシドの平均付加モル数を表わし、1?100の数
p,q:プロピレンオキシドの平均付加モル数を表わし、p+q=1?200の数)」

(ア-2)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質表面の洗浄に用いられる液状のアルカリ洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】金属、ガラス等の硬質表面の汚れの洗浄にアルカリ洗浄剤が効果的であることは良く知られている。また、取扱いやすさ、ポンプ輸送、自動洗浄機における定量供給の観点からは、液状のアルカリ洗浄剤が望まれている。
【0003】アルカリ洗浄剤には、アルカリ基剤の他に洗浄効果を高めるために種々の界面活性剤が添加されているが、液状の洗浄剤においてアルカリ基剤濃度を高くすると、これらの界面活性剤が凝集して洗浄剤組成物から分離するため、均一な洗浄剤組成物とならない。
【0004】そこで、これらのアルカリ洗浄剤の安定性を高めるために種々の高分子物質を添加することが提案されているが、いずれもある程度まで高濃度化することが可能であるものの、組成物の粘度が上昇したり、洗浄剤として使用した時に発泡するために十分な洗浄力が発揮されないという問題点があった。」

(ア-3)
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、界面活性剤等の洗浄成分を安定に配合しうる液状のアルカリ洗浄剤組成物を提供するものである。また、本発明は、洗浄力に優れ、しかも低泡性のアルカリ洗浄剤組成物を提供するものである。」

(ア-4)
「【0012】
【発明の実施態様】(a)成分のアルカリ金属の水酸化物は、洗浄主剤としてのアルカリ成分であり、液状洗浄剤組成物中に28重量%以上、好ましくは30?50重量%含まれる。この量が28重量%未満では、アルカリ基剤の高濃度化が不十分であり本来の目的を達成しえないし、組成物の安定性も不良となる。
【0013】(a)成分のアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが用いられ、これらは各々単独で用いてもよく、また、併用してもよい。」

(ア-5)
「【0014】(b)成分のポリアクリル酸またはその塩としては、重量平均分子量(Mw)が1000?20万のものが用いられ、好ましくは1000?8万、さらに好ましくは1000?3万である。重量平均分子が1000未満では液状アルカリ洗浄剤組成物の安定化効果が不十分であり、一方、20万を超えると液状アルカリ洗浄剤組成物が増粘するとともに、2層分離して長期安定性が劣化する。ポリアクリル酸の塩としてはナトリウム塩などの水溶性塩が用いられる。
【0015】(b)成分のポリアクリル酸またはその塩は、本発明の液状アルカリ洗浄剤組成物中に0.5?10重量%配合され、好ましくは1?5重量%である。
(c)成分のノニオン界面活性剤としては、従来から知られている種々のものを用いることができ、例えば、以下のものが挙げられる。
【0016】(1)脂肪酸高級アルコールのエチレンオキシド(EO)付加体またはエチレンオキシド(EO)・プロピレンオキシド(PO)混合付加体
(2)アルキルフェノールのEO付加体またはEO・PO混合付加体
(3)脂肪族高級アミンのEO付加体またはEO・PO混合付加体
【0017】(4)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリアルキレンイミンのEO付加体またはEO・PO混合付加体
(5)エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコールあるいはアルキレンジアミンのEO付加体またはEO・PO混合付加体
【0018】これらノニオン界面活性剤の中でも、以下の化3または化4に示される化合物を用いることにより、洗浄性能に加え低泡性を改善することができる。
【0019】
【化3】R_(1)-(C_(2)H_(4)O)_(m)-(C_(3)H_(6)O)_(n)-H
(R_(1):C_(10)?C_(22)のアルコール、アミン、アミド残基
m:エチレンオキシドの平均付加モル数を表わし、1?200の数
n:プロピレンオキシドの平均付加モル数を表わし、1?200の数)
【0020】
【化4】
H-(C_(3)H_(6)O)_(p)-(C_(2)H_(4)O)_(m)-(C_(3)H_(6)O)_(q)H
(m:エチレンオキシドの平均付加モル数を表わし、1?100の数
p,q:プロピレンオキシドの平均付加モル数を表わし、p+q=1?200の数)
【0021】ここでR_(1)は、炭素数が10?20の高級アルコール、高級アミン、高級アミドの残基である。R_(1)の炭素鎖は飽和でも不飽和でもよく、また、直鎖でも分枝鎖でもよい。好ましくは、R_(1)の炭素数は10?20である。
【0022】上記化3の化合物は、R_(1)のアルコール、アミン、アミド残基に対してエチレンオキシドが付加重合し、さらにプロピレンオキシドが付加重合したものであり、エチレンオキシドの平均付加モル数mは1?200、好ましくは1?100である。プロピレンオキシドの平均付加モル数nは1?200、好ましくは1?100である。
【0023】
・・(中略)・・
【0024】(c)成分のノニオン界面活性剤は、本発明の液状アルカリ洗浄剤組成物中に0.1?15重量%、好ましくは1?10重量%含まれる。この量が0.1重量%未満では洗浄力の向上効果が必ずしも十分でなく、一方、15重量%を超えると組成物の液安定性が劣化する。」

(ア-6)
「【0025】(d)成分の水性媒体は、水を主成分とし、必要によりエタノール、プロピレングリコール、グリセリン、安息香酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム等の有機溶媒ないしハイドロトロープを含有することもできる。水は、本発明の液状組成物中に60重量%以下の量で含有せしめることが適当であり、好ましくは60?50重量%である。水分量が多くなりすぎると、組成物の安定性が低下する傾向を示す。
【0026】さらに、本発明の液状アルカリ洗浄剤組成物中には、従来からアルカリ洗浄剤に用いられていることができ、例えば、キレート剤、アルカリ金属水酸化物以外の他の界面活性剤、ビルダー、殺菌剤などを配合することができる。
【0027】ここで、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩等のアミノカルボン酸塩;グルコン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩等のヒドロキシカルボン酸塩;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸塩等のヒドロキシホスホン酸塩など挙げられる。キレート剤は、本発明の液状アルカリ剤組成物中に1?30重量%配合することが適当であり、好ましくは5?15重量%である。」

(ア-7)
「【0029】
【実施例】以下に各実施例で用いた評価方法を示す。
(1)安定性の評価方法
調製した液状アルカリ洗浄剤組成物を室温(15?20℃)で保存し、ノニオン界面活性剤が分離するか否かを目視により判定し、以下の基準で評価した。
【0030】
○:1ケ月以上安定
△:1週間以上安定
×:1週間以内に分離
【0031】(2)発泡性の評価方法
図1に示した装置を用いた。タンク11内の洗浄液21はヒータ13で70℃に加温され、ポンプPにより7.6リットル/分で汲み上げられ、スプレー圧1.0kg/cm^(2)で鋼板17にスプレーされる。スプレー後の洗浄液21はいったん洗浄槽15に貯留され、落差1mでタンク11内に戻される。
【0032】本試験では、水道水で希釈して所定濃度の洗浄水を調製し、これに牛脂系圧延油を1wt%添加し、80±10℃で8時間撹拌、加温し、徐冷した。さらに、この撹拌・加温、徐冷操作を2回繰り返し(合計3回)、得られた圧延油含有洗浄水を洗浄液21とし、この5リットルを用い70℃に加温して図1の装置でスプレー循環を繰り返し、タンク11内の泡立が150mmを超えるまでの時間を測定し、以下の基準で評価した。なお、本評価方法では、鋼板17として洗浄済みの鋼板を使用した。
【0033】
○:30分以上
△:5分以上、30分未満
×:5分以内
【0034】(3)洗浄性の評価方法
図1に示した装置を用い、牛脂系圧延油が付着した鋼板を10×10cmに裁断し、2分間スプレー洗浄したのちドライヤーで乾燥し、再度水に浸漬して表面の状態を観察し、鋼板表面の水濡れ面積より洗浄性を評価した。
【0035】
○:水濡れ面積90%以上
×:水濡れ面積90%未満
【0036】実施例1?13
表1?表3の組成の液体洗浄剤組成物を調製して安定性を評価した。なお、表1?表3中の記号は以下のものを示し、また、その中で用いた略号の意味は次の通りである。
【0037】POE(10):ポリオキシエチレンおよびそのエチレンオキシドの平均付加モル数(10)
EO:エチレンオキシド
PO:プロピレンオキシド
【0038】ポリアクリル酸Na
P-1:Mw;1000?3000(アロン200U)
P-2:Mw;6000?8000(アロンT40)
P-3:Mw; 5万?7万 (アロンA20ML)
P-4:Mw;10万?20万(ジュリマーAC10H)
P-5:Mw;60万?80万(ジュリマーAC10SH)
【0039】ノニオン界面活性剤
N-1:リポノックスNC-100(POE(10)ノニルフェニルエーテル)
N-2:プルロニックL62(ポリオキシプロピレンに対してエチレンオキシドが付加したノニオン界面活性剤)
N-3:テトロニック 702(エチレンジアミンに対してプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドが順次付加したノニオン界面活性剤)
N-4:POE(15)C18アルキルエーテル
【0040】H-1?H3:

【0041】H-4,H-5:

【0042】キレート剤
K-1:グルコン酸Na
K-2:エチレンジアミン四酢酸-4Na
【0043】
【表1】


【0044】
【表2】


【0045】
【表3】




【0046】実施例14?23
下記の洗浄剤組成物を15倍に希釈し、発泡性および溶解性を評価した。ここで、ノニオン界面活性剤としては表4中に示したように種々のものを、種々の配合量で用いた。なお、ノニオン界面活性剤等の記号は表1?3と同じである。
組成:NaOH 32wt%
ポリアクリル酸Na(P-2) 4wt%
キレート剤(K-1) 5wt%
キレート剤(K-2) 2wt%
ノニオン界面活性剤(表中) 2?8wt%
水 残余

【0047】
【表4】




(イ)引用例2について
上記引用例2には、以下の事項が記載されている。

(イ-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルカリ剤、1分子中に極性基を1?5個有する脂肪族化合物または芳香族化合物、ポリアクリル酸またはその塩、およびアミノカルボン酸またはその塩を含有することを特徴とする液状アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項2】 アルカリ剤をNa_(2)O基準で10?35重量%、1分子中に極性基を1?5個有する脂肪族化合物または芳香族化合物を1?10重量%、ポリアクリル酸またはその塩を0.1?10重量%、およびアミノカルボン酸またはその塩を0.1?10重量%含有することを特徴とする液状アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】 1分子中に極性基を1?5個有する芳香族化合物が、ベンゼン誘導体、ナフタレン誘導体またはアントラセン誘導体であることを特徴とする請求項1または2記載の液状アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項4】 前記芳香族化合物が1分子中に極性基を1個有する化合物であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の液状アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項5】 高級アルコール、界面活性剤、キレート剤の一種以上をさらに含有して成る請求項1?4のいずれか1項に記載の液状アルカリ洗浄剤組成物。」

(イ-2)
「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質表面の汚れの洗浄に用いられる液状アルカリ洗浄剤組成物に関する。」

(イ-3)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、洗浄性および抑泡性を満足し、界面活性剤、キレート剤、アルコール等の成分を高濃度アルカリに安定に配合でき、かつ低粘度の液状アルカリ洗浄性組成物を提供する。」

(イ-4)
「【0010】極性基を1?5個有する脂肪族または芳香族化合物は、安定化剤としての成分であり、高濃度アルカリ剤に難溶性の界面活性剤、アルコール等の洗浄剤成分を均一に分散させる機能を有する。この成分の濃度は液体アルカリ洗浄剤組成物中に0.1?10重量%である。0.1重量%未満では安定な液体アルカリ洗浄剤組成物が得られず、10重量%を越えると粘度上昇がおこり低粘度化ができないため好ましくない。
【0011】前記極性基としては、アルカリ水溶液中で分解しない、あるいは分解されにくいものであって、比較的強い親水性を示すものであれば特に限定されてないが、たとえばCOOM、SO_(3)M、NH_(2)、NO_(2)、NR_(1)H、NR_(2)R_(3)およびOHからなる一群より1種以上を選ぶことができる。ここでMは水素、アルカリ金属、アルカリ土類、炭素数1?4の脂肪族アミン、アンモニウムまたはアルカノールアミンを表し、R_(1),R_(2),R_(3)は同一または異なる基であり、いずれも炭素数1?4の直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表す。この中で特にCOOM、SO_(3)Mを含む基が好ましい。」

(イ-5)
「【0015】アミノカルボン酸またはその塩は、一般的に洗浄助剤として用いられる成分であるが、本発明においては極性基を有する脂肪族化合物、芳香族化合物の安定化作用を補助する成分として用いる。アミノカルボン酸の濃度は液体アルカリ洗浄剤組成物中に0.1?10重量%である。0.1重量%未満では安定化作用を補助する効果が少なく、10重量%を越えると安定化作用は向上するが粘度の上昇を生じるからである。アミノカルボン酸の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸が挙げられる。この成分は、単独または2種以上を併用して用いられる。」

(イ-6)
「【0016】また本発明は、1分子中に極性基を1?5個有する芳香族化合物が、ベンゼン誘導体、ナフタレン誘導体またはアントラセン誘導体であることを特徴とする。
【0017】本発明に従えば、前記極性基を1?5個有する芳香族化合物がベンゼン、ナフタレン、アントラセンの誘導体であることが、界面活性剤、アルコール等の洗浄剤成分を均一に分散させる作用が大きく好ましい。
【0018】ベンゼン誘導体としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、スルファニル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、アミノ安息香酸、安息香酸・・(中略)・・が例示される。また前記化合物が酸の場合は、その塩を含む。
【0019】また本発明は、前記芳香族化合物が1分子中に極性基を1個有する化合物であることを特徴とする。
【0020】本発明に従えば、極性基を1個有する芳香族化合物が、全体的な組成物の物性によって特に好ましい。
【0021】極性基が1個の芳香族化合物としては、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、アニリン、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、アントラセンスルホン酸が例示され、これらが酸の場合はその塩を含む。」

(イ-7)
「【0022】また本発明は、高級アルコール、界面活性剤、キレート剤の一種以上をさらに含有して成ることを特徴とする。
【0023】本発明に従えば、液状アルカリ洗浄剤組成物には、洗浄性および抑泡性を高めるために、さらに界面活性剤、キレート剤、アルコール等の成分を配合することができる。
【0024】界面活性剤は、洗浄性を高めるための成分であり、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
【0025】キレート剤は、洗浄助剤として界面活性剤ともに洗浄性を高める成分であり、ヒドロキシカルボン酸塩、ヒドロキシスルホン酸塩などが挙げられる。キレート剤は2種以上を併用してもよい。
【0026】アルコールは、泡立ちを抑える抑泡成分であり、直鎖もしくは分岐鎖の高級アルコールが用いられる。アルコールは2種以上を併用してもよい。」

イ.検討

(ア)引用例1に記載された発明
上記引用例1には、「(a)アルカリ金属の水酸化物:28重量%以上、(b)重量平均分子量が1000?20万のポリアクリル酸またはその塩:0.5?10重量%、(c)ノニオン界面活性剤:0.1?15重量%、(d)水性媒体を含有することを特徴とする液状アルカリ洗浄剤組成物」が記載され(摘示(ア-1)の【請求項2】参照)、当該「アルカリ金属の水酸化物」として、「水酸化ナトリウム」が使用できることも記載されている(摘示(ア-4)参照)。
そして、上記引用例1には、上記「ノニオン界面活性剤」として「脂肪族高級アミンのEO付加体」、すなわち「脂肪族高級アミン」のエチレンオキシド付加体が使用できることも記載され、当該「脂肪族高級アミン」が「C_(10)?C_(22)の・・アミン」であること及びエチレンオキシドの付加モル数が1?200であることもそれぞれ記載されている(摘示(ア-5)の【0016】及び【0019】参照)。
また、上記引用例1には、上記「水性媒体」が「水を主成分とし、必要によりエタノール、プロピレングリコール、グリセリン、安息香酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム等の有機溶媒ないしハイドロトロープを含有することもできる」ものであることも記載されている(摘示(ア-6)参照)。
してみると、上記引用例1には、上記(ア-1)ないし(ア-7)の記載事項からみて、
「(a)水酸化ナトリウム:28重量%以上、(b)重量平均分子量が1000?20万のポリアクリル酸またはその塩:0.5?10重量%、(c)C_(10)?C_(22)の脂肪族高級アミンのエチレンオキシド1?200モル付加体であるノニオン界面活性剤:0.1?15重量%、(d)水を主成分とし、必要によりエタノール、プロピレングリコール、グリセリン、安息香酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム等の有機溶媒ないしハイドロトロープを含有することもできる水性媒体を含有することを特徴とする液状アルカリ洗浄剤組成物」
に係る発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)本件補正発明との対比・検討

(a)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「水酸化ナトリウム」、「重量平均分子量が1000?20万のポリアクリル酸またはその塩」及び「液状アルカリ洗浄剤組成物」は、それぞれ、本件補正発明における「水酸化ナトリウム」、「ポリアクリル酸(またはその塩)」及び「液状アルカリ性洗浄剤組成物」に相当する。
そして、引用発明における「重量平均分子量が1000?20万のポリアクリル酸またはその塩」の組成比「0.5?10重量%」は、本件補正発明における「ポリアクリル酸(またはその塩)」の組成比「0.01?10重量%」に相当するものといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、
「水酸化ナトリウムと、ポリアクリル酸(またはその塩)を0.01?10重量%とを含む液状アルカリ性洗浄剤組成物」
の点で一致し、以下の4点で相違するものと認められる。

<相違点1>:「水酸化ナトリウム」の組成比につき、本件補正発明では、「Na_(2)O基準で29?35重量%」であるのに対して、引用発明では、「28重量%以上」である点
<相違点2>:本件補正発明では、「化1で示されるポリオキシエチレンアミノエーテルを0.1?20重量%」含まれ、「前記ポリエチレンアミノエーテルがポリエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシ牛脂アミノエーテル、ポリオキシステアリルアミノエーテルおよびポリオキシオレイルアミノエーテルから選択される少なくとも1種以上である」のに対して、引用発明では、「C_(10)?C_(22)の脂肪族高級アミンのエチレンオキシド1?200モル付加体であるノニオン界面活性剤:0.1?15重量%」を含むものである点
<相違点3>:本件補正発明では「水性媒体」を含むことにつき特定されていないのに対して、引用発明では、「水性媒体」を含むことが特定されている点
<相違点4>:本件補正発明では、「安息香酸(またはその塩)を0.01?10重量%」を含むのに対して、引用発明では、「水性媒体」がヒドロトロープとしての安息香酸ナトリウムを含有することができるとされるのみで、「安息香酸(またはその塩)」の含否及び含有量につき特定されていない点

(b)各相違点に係る検討

(b-1)相違点1について
上記相違点1につき検討すると、上記引用例1には、引用発明の水酸化ナトリウムの組成比につき、28重量%以上、好ましくは30?50重量%であることが記載され(摘示(ア-4)参照)、引用発明が、アルカリ基剤の高濃度化と組成物の安定性の両立を意図するものであることも明らかである(摘示(ア-2)及び(ア-4)参照)。
してみると、引用発明において、水酸化ナトリウムの組成比が30?50重量%である場合、すなわちNa_(2)O基準で約23.25?38.75重量%である場合と、本件補正発明におけるNa_(2)O基準で29?35重量%である場合との間で、範囲が重複していることが明らかであるから、実質的な技術的相違が存するものとはいえない。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。

(b-2)相違点2について
上記相違点2について検討すると、引用発明における「C_(10)?C_(22)の脂肪族高級アミンのエチレンオキシド1?200モル付加体」は、当該脂肪族高級アミンが1級アミンであって、エチレンオキシドが2モル以上付加したものである場合、アミン窒素に2個のエチレンオキシド(鎖)が別々に付加したものとなることが当業者に自明である(必要ならば下記参考文献参照のこと。)から、本件補正発明における「化1で示されるポリオキシエチレンアミノエーテル」と化学構造上実質的に同一であることが当業者に自明である。
してみると、上記相違点2についても、実質的な相違点であるとはいえない。

参考文献:藤本武彦著「全訂版 新・界面活性剤入門」1981年10月、三洋化成工業株式会社発行、第109頁

(b-3)相違点3について
上記相違点3につき検討すると、本願補正明細書の記載からみて、本件補正発明の「液状アルカリ性洗浄剤組成物」においても、水などの水性媒体を含有するものであることは明らかである(本願補正明細書【0030】等参照)から、上記相違点3は、実質的な相違点であるものとはいえない。

(b-4)相違点4について
上記相違点4につき検討すると、上記引用例2にも記載されている(特に摘示(イ-4)及び(イ-6)参照のこと。)とおり、硬質表面の洗浄などに有用な高濃度のアルカリ成分と他の洗浄成分とを含有する液状アルカリ性洗浄剤組成物において、当該液状組成物の安定化(及び低粘度化)を意図して、安息香酸(又はその塩)などの極性基を有する(芳香族)化合物を、組成物に対して0.1?10重量%程度の濃度(組成比)で使用することは、当業者の周知技術であるものと認められる。
してみると、引用発明において、高濃度のアルカリ成分を含有する液状洗浄剤組成物の更なる安定化を意図し、上記当業者の周知技術に基づき、安息香酸(又はその塩)などの極性基を有する(芳香族)化合物を、組成物に対して0.1?10重量%程度の濃度(組成比)で使用することは、当業者が適宜なし得ることと認められる。
したがって、上記相違点4は、当業者が適宜なし得ることである。

(c)本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果につき検討すると、上記引用例1には、引用発明につき、「本発明は、界面活性剤等の洗浄成分を安定に配合しうる液状のアルカリ洗浄剤組成物を提供するものである。また、本発明は、洗浄力に優れ、しかも低泡性のアルカリ洗浄剤組成物を提供する」と記載されている(摘示(ア-2)参照)とおり、引用発明の液状アルカリ洗浄剤組成物は、洗浄力に優れ、低泡性のものであり、界面活性剤等の洗浄成分を安定に配合しうるものであるところ、上記(b)(b-4)でも説示したとおり、安息香酸(又はその塩)を組成物に対して0.1?10重量%程度の濃度(組成比)で使用した場合、更に組成物の安定化が図られるのであるから、引用発明に上記当業者の周知技術を組み合わせた場合、更に組成物の安定化が図られた洗浄力に優れ、低泡性の液状のアルカリ洗浄剤組成物が得られるであろうことは、当業者が予期し得ることと認められる。
してみると、本件補正発明の効果は、引用発明と上記周知技術とを組み合わせた場合のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということができない。

(d)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び当業者の周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、平成24年8月1日付け回答書において、
a.「(3-2)本願発明は、アルカリ濃度がNa_(2)O換算で、29?35重量%の高濃度アルカリ剤として安定性を前提とした洗浄性、耐発泡性に優れた洗浄剤組成物を提供するものである。
しかし、引用文献1の発明は、アルカリ濃度がNa_(2)O換算で、29?35重量%の高濃度アルカリ剤に対しては、むしろ否定的であり、本願発明を示唆するものではない。
すなわち、引用文献1に記載された洗浄剤は、実施例、比較例の記載より、安定性については、NaOHが40重量%(Na_(2)O換算:31%)で×、34重量%(Na_(2)O換算:26.4%)で○?△、32重量%(Na_(2)O換算:24.8%)で△となっており、アルカリ剤の濃度は上限がNa_(2)O換算で24?26%付近であることを示している。
つまり、安定性の面で、アルカリ剤の濃度上限がNa_(2)O換算で24?26%付近にある引用文献1の発明に基づいて、アルカリ剤の濃度を、この上限を越えてNa_(2)O換算で29?35%とすることはない。
しかも、本願発明は、アルカリ剤の濃度をNa_(2)O換算で29?35重量%として、優れた安定性、洗浄性、抑泡性を達成しているのであり、引用文献1からは予想できない顕著な効果を有していることは明らかである。
(3-3)もっとも、引用文献1には「アルカリ金属の水酸化物は、好ましくは30重量%(注:Na_(2)O換算では23.3%)?50重量%(注:Na_(2)O換算では38.8%)含まれる」という記載がある(段落[0012])。
しかしこれは一般的な記載であり、前記のとおり、引用文献1の発明では、NaOH40重量%(Na_(2)O換算:31%)が最大の濃度であり、しかもこれは比較例で結果は、×であるので、結局、本願発明のように、アルカリ剤の濃度をNa_(2)O換算で29?35重量%することについて示唆があるとは考えられない。」
及び
b.「(3-4)また、引用文献1のノニオン界面活性剤が本願発明のポリオキシエチレンアミノエーテルを示唆する理由として、審査官殿は引用文献1の「ノニオン界面活性剤としては、従来から知られている種々のものを用いることができ、たとえば、以下のものが挙げられる。」(段落[0015])の記載と、「(3)脂肪族高級アミンのEO付加体またはEO・PO混合付加体」の記載をあげている。
しかし、引用文献1には、「ノニオン界面活性剤の中でも、以下の化3または化4に示される化合物」が良いとされている(段落[0018])ので、これを参酌すれば、前記「脂肪族高級アミンのEO付加体」とは、脂肪族高級アミンに一つのEO(エチレンオキサイド)が付加した1鎖型の界面活性剤と解釈する他ない。
すなわち、前記引用文献1の「化3または化4に示される化合物」は、次の構造を有する、いわゆる1鎖型の界面活性剤である。
R_(1)NH-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-(CH_(2)CH_(2)CH_(2)O)_(n)H
(R_(1)が高級アルキル基、m、nは1?200の数)
これは前記「脂肪族高級アミンのEO・PO混合付加体」であるところ、もっとも近い「脂肪族高級アミンのEO付加体」は、同じ1鎖型の
R_(1)NH-CH_(2)CH_(2)OH
であるからであり、審査官殿も、審尋の前置報告書において、「n=0」の場合がこれに当たるとされている。
(3-5)もっとも審査官殿は、そのように判断しながら、「脂肪族高級アミンのEO付加体」として参考文献に記載のノニオン界面活性剤を含むとする。
ここで、参考文献記載のノニオン界面活性剤は、次の構造を有する、いわゆる2鎖型の界面活性剤であり、本願発明の界面活性剤と構造が類似する。

界面活性剤については、1鎖型と2鎖型があり、本願発明に即して言えば、アミノ基に1つのEO付加体が結合したものが1鎖型、2つのEO付加体が結合したものが2鎖型であり、それぞれに界面活性剤としての効果が相違し、使い分けられているのが技術常識である。
そのような技術常識を前提にして考えると、1鎖型界面活性剤が好ましいとされる母集団が2鎖型界面活性剤であるというのは、技術的合理性に欠け、引用文献1に言う「従来からの知られているノニオン型界面活性剤」とは、同じ1鎖型の前記、
R_(1)NH-CH_(2)CH_(2)OH
を指すと考えることが合理的である。
特に、引用文献1では、化3および化4で示されるノニオン界面活性剤が、化学構造式で、1鎖型に限定されていること、かつ明細書においても「エチレンオキサイドが付加重合し、さらにプロピオニルオキサイドが付加重合したものであり」(引用文献1、第4欄、第17?18行目、同第22?24行目)と1鎖型であることが強調されている。
そして、引用文献1には、「従来からの知られているノニオン型界面活性剤」とあるだけで、他に2鎖型の界面活性剤を示唆するような記載は全くない。
(3?6)そうすると、引用文献1の「従来からの知られているノニオン型界面活性剤」として、参考文献の2鎖型の界面活性剤を想到するという審査官殿の判断は、極めて唐突で、引用文献1の記載や前後の文脈、技術常識を軽視したものであって、技術的合理性に欠けるものといわざるを得ない。」
と主張している(回答書「(3)」の欄)。

しかるに、まず上記a.の主張につき検討すると、上記引用例1における「比較例a」は、40重量%のNaOHを使用しポリアクリル酸Naを使用しない場合に、安定性に劣ることを示した実験例であり(摘示(ア-7)の【0043】【表1】参照)、ポリアクリル酸(塩)を使用する引用発明において、40重量%なる濃度(組成比)でNaOHを使用することを阻害する要因となる記載であるものとは認められない。
また、引用例1の記載(摘示(ア-2)の【0004】及び摘示(ア-4)の【0012】参照)からみて、引用発明の洗浄剤組成物は、アルカリを高濃度化することを意図するものと認められ、アルカリ金属の水酸化物の濃度につき、28重量%以上と規定され、さらに好ましくは30?50重量%とされているものと認められる。
してみると、請求人の上記a.の主張は、引用例1の記載内容を正解しないものであり、根拠を欠くものであるから、当を得ないものである。
次に、上記b.の主張につき検討すると、上記(イ)(b)(b-2)で説示したとおり、引用発明における「C_(10)?C_(22)の脂肪族高級アミンのエチレンオキシド1?200モル付加体」は、当該脂肪族高級アミンが1級アミンであって、エチレンオキシドが2モル以上付加したものである場合、アミン窒素に2個のエチレンオキシド(鎖)が別々に付加したもの、すなわち本件補正発明における【化1】で表される「2鎖型」のものであることが当業者に自明である。
してみると、上記b.の主張についても、根拠を欠くものであり、当を得ないものである。
したがって、審判請求人の上記a.及びb.の各主張は、いずれも当を得ないものであるから、採用する余地がなく、当審の上記(イ)の検討結果を左右するものではない。

(3)独立特許要件に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

III.補正の却下の決定のまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、上記II.2.で説示したとおり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正事項を含むものであって、かつ、上記II.3.で説示したとおり、同法同条第5項で準用する特許法第126条第5項に違反するものである。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願についての当審の判断

1.本願に係る発明
平成22年12月28日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成22年3月29日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によりそれぞれ特定されるとおりのものであり、その内、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は再掲すると以下の事項により特定されるとおりのものである。
「水酸化ナトリウムをNa_(2)O基準で10?35重量%と、化1で示される1種以上のポリオキシエチレンアミノエーテルを0.1?20重量%と、ポリアクリル酸(またはその塩)を0.01?10重量%と、安息香酸(またはその塩)を0.01?10重量%とを含むことを特徴とする液状アルカリ性洗浄剤組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素数10?20の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基、mおよびnはオキシエチレン基の平均付加モル数を表し、m、nは自然数であってm+n=2?120である。)」

2.原審の拒絶査定の概要
原審において、平成22年5月17日付け拒絶理由通知書で以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由

1.・・(中略)・・
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<理由1について>
・・(中略)・・
<理由2について>
・請求項1、3、4
・引用文献等1、2
・備考
引用文献1には、実施例10又は20として、水酸化ナトリウムと、ノニオン界面活性剤としてのアルキルアミンのエチレンオキシド・プロピレンオキシド混合付加体と、ポリアクリル酸ナトリウムと、キレート剤としてのグルコン酸ナトリウムとを本願の請求項1、4に記載の範囲内で含有する液状アルカリ性洗浄剤組成物が開示されている(請求項2、実施例10又は20とその関連の説明等を参照)。
上記液状アルカリ性洗浄剤組成物は、本願の請求項1に記載のポリオキシエチレンアミノエーテルを含有していない点、安息香酸又はその塩を含有していない点で、本願発明と異なる。
しかしながら、引用文献1には、その段落[0016]に、液状アルカリ性洗浄剤組成物に配合されるノニオン界面活性剤としては、脂肪族高級アミンのエチレンオキシド付加体またはエチレンオキシド・プロピレンオキシド混合付加体が用いられうることが開示されているので、上記液状アルカリ性洗浄剤組成物に含有されているアルキルアミンのエチレンオキシド・プロピレンオキシド混合付加体に代えてアルキルアミンのエチレンオキシド付加体を用いることに格別の困難性はない。
また、引用文献2に開示されているように(請求項1,2,5、段落[0010]、[0011]、[0030]等を参照)、アルカリ剤、ポリアクリル酸又はその塩、界面活性剤等を含有する液状アルカリ性洗浄剤組成物に、安定化剤として、極性基を1?5個有する脂肪族化合物もしくはその塩または極性基を1?5個有する芳香族化合物もしくはその塩が1?10重量%用いられること、具体的には、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンカルボン酸、プロピオン酸が用いられていることが公知のことであるから、上記引用文献1に開示の液状アルカリ性洗浄剤組成物の安定化のために、安息香酸を1?10重量%配合してみることは、当業者が容易に想到できる程度のことである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平04-359096号公報
2.特開平11-106799号公報」

<拒絶査定>
「この出願については、平成22年5月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
平成22年7月26日付け手続補正書は、本「拒絶査定」と同時に送達される「補正の却下の決定」により却下されたので、本願は、平成22年5月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。

(なお、仮に、平成22年7月26日付け手続補正書が却下されなかったとしても、この出願は、以下の理由により、拒絶をすべきものである。
即ち、出願人は、意見書において「引用文献1の発明では、本願発明のアミノエーテルとは構造の相違するノニオン界面活性剤を特に選択したものであり、このことは「特定のノニオン界面活性剤を用いることにより、洗浄力に加え、優れた低泡性を実現できる」(段落[0011])との記載から明らかである。引用文献1の発明では、アルカリ金属の水酸化物:28重量%以上とされているものの、実施例に具体的に記載されているのは、水酸化ナトリウムが(Na2O基準)で23?26重量%であるから、本願発明よりも低濃度である。引用文献1には、安息香酸についての記載や示唆はなく、これを含むことが意図されていない。」
旨主張している。
しかしながら、引用文献1に開示の「脂肪族高級アミンのEO付加体」が、本願発明において使用されているポリオキシエチレンアミノエーテルと同じものであることは、平成22年1月14日付けの拒絶理由通知書において参照文献として記載の特開平9-310100号公報の請求項1、段落[0023]等の記載から明らかである(出願人も、この点について、平成22年3月29日付けの意見書において、何らの反論もしていない。)。
また、引用文献1には、段落[0012]に「(a)成分のアルカリ金属の水酸化物は、洗浄主剤としてのアルカリ成分であり、液状洗浄剤組成物中に28重量%以上、好ましくは30?50重量%含まれる。」と記載されており、水酸化ナトリウムがNa2O基準で約23.25?38.75重量%含まれることが明記されている。
また、引用文献2には、苛性ソーダと、ノニオン界面活性剤と、ポリアクリル酸塩と、安息香酸とを、本願の請求項1に記載の範囲内で含有する液状アルカリ性洗浄剤組成物が開示され、また、該安息香酸が、高濃度アルカリ剤に難溶性の界面活性剤、アルコール等の洗浄剤成分を均一に分散させる機能を有する安定剤として配合されることが開示されており、類似の組成を有する引用文献1に開示の高濃度アルカリ剤含有の液状アルカリ洗浄剤組成物に、同様の効果を期待して、安息香酸を配合することに格別の困難性はない。
したがって、上記出願人の主張を採用することができないので、先の拒絶理由通知書に記載の理由2を撤回しない。)」

3.当審の判断
当審は、
本願は、下記の理由により、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである、
と判断する。

理由:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)引用例に記載された事項及び発明
ここで、上記拒絶理由通知及び拒絶査定で引用された引用文献1及び2は、それぞれ、上記第2の補正の却下の決定のII.2.(2)で引用した引用例1及び2である。
したがって、上記引用例1及び2には、上記第2のII.2.(2)ア.(ア)及び(イ)で摘示した各事項が、それぞれ記載されており、上記引用例1には、上記第2のII.2.(2)イ.(ア)に示した「引用発明」が記載されているものと認められる。

(2)本願発明についての検討

ア.対比
本願発明と上記引用発明とを対比すると、下記の4点で相違し、その余で一致することが明らかである。
<相違点1’>:「水酸化ナトリウム」の組成比につき、本願発明では、「Na_(2)O基準で10?35重量%」であるのに対して、引用発明では、「28重量%以上」である点
<相違点2’>:本願発明では、「化1で示されるポリオキシエチレンアミノエーテルを0.1?20重量%」を含むのに対して、引用発明では、「C_(10)?C_(22)の脂肪族高級アミンのエチレンオキシド1?200モル付加体であるノニオン界面活性剤:0.1?15重量%」を含むものである点
<相違点3>:本願発明では「水性媒体」を含むことにつき特定されていないのに対して、引用発明では、「水性媒体」を含むことが特定されている点
<相違点4>:本願発明では、「安息香酸(またはその塩)を0.01?10重量%」を含むのに対して、引用発明では、「水性媒体」がヒドロトロープとしての安息香酸ナトリウムを含有することができるとされるのみで、「安息香酸(またはその塩)」の含否及び含有量につき特定されていない点

イ.各相違点に係る検討
まず、上記相違点1’につき検討すると、上記引用例1には、引用発明の水酸化ナトリウムの組成比につき、28重量%以上、好ましくは30?50重量%であることが記載され(摘示(ア-4)参照)、引用発明が、アルカリ基剤の高濃度化と組成物の安定性の両立を意図するものであることも明らかである(摘示(ア-2)及び(ア-4)参照)。
してみると、引用発明において、水酸化ナトリウムの組成比が30?50重量%である場合、すなわちNa_(2)O基準で約23.25?38.75重量%である場合と、本願発明におけるNa_(2)O基準で10?35重量%である場合との間で、アルカリ含量の高濃度の範囲が重複していることが明らかであるから、実質的な技術的相違が存するものとはいえない。
したがって、上記相違点1’は、実質的な相違点であるとはいえない。
次に、上記相違点2’につき検討すると、引用発明における「C_(10)?C_(22)の脂肪族高級アミンのエチレンオキシド1?200モル付加体」は、当該脂肪族高級アミンが1級アミンであって、エチレンオキシドが2モル以上付加したものである場合、アミン窒素に2個のエチレンオキシド(鎖)が別々に付加したものとなることが当業者に自明である(必要ならば上記参考文献参照のこと。)から、本願発明における「化1で示されるポリオキシエチレンアミノエーテル」と化学構造上実質的に同一であることが当業者に自明である。
してみると、上記相違点2’についても、実質的な相違点であるとはいえない。
さらに、上記相違点3及び4につき検討すると、上記第2のII.2.(2)イ.(イ)(a)で示した「相違点3」及び「相違点4」と同一の事項であるから、上記第2のII.2.(2)イ.(イ)(b)(b-3)及び(b-4)で説示した各理由とそれぞれ同一の理由により、相違点3については実質的な相違点であるとはいえず、相違点4については当業者が適宜なし得ることである。

ウ.本願発明の効果について
本願発明の効果につき検討すると、上記第2のII.2.(2)イ.(イ)(c)でも説示したとおり、上記引用例1には、引用発明につき、「本発明は、界面活性剤等の洗浄成分を安定に配合しうる液状のアルカリ洗浄剤組成物を提供するものである。また、本発明は、洗浄力に優れ、しかも低泡性のアルカリ洗浄剤組成物を提供する」と記載されている(摘示(ア-2)参照)とおり、引用発明の液状アルカリ洗浄剤組成物は、洗浄力に優れ、低泡性のものであり、界面活性剤等の洗浄成分を安定に配合しうるものであるところ、安息香酸(又はその塩)を組成物に対して0.1?10重量%程度の濃度(組成比)で使用した場合、更に組成物の安定化が図られるのであるから、引用発明に上記当業者の周知技術を組み合わせた場合、更に組成物の安定化が図られた洗浄力に優れ、低泡性の液状のアルカリ洗浄剤組成物が得られるであろうことは、当業者が予期し得ることと認められる。
してみると、本願発明の効果は、引用発明と上記周知技術とを組み合わせた場合のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということができない。

エ.検討のまとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び当業者の周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-06 
結審通知日 2012-11-13 
審決日 2012-11-27 
出願番号 特願2000-132741(P2000-132741)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C11D)
P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 服部 智大熊 幸治  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 橋本 栄和
小出 直也
発明の名称 液状アルカリ性洗浄剤組成物  
代理人 西教 圭一郎  
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