• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1268700
審判番号 不服2010-1529  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-25 
確定日 2013-01-07 
事件の表示 特願2005-350830「非反応性の研磨剤固体粒子および有機シラン四級化合物を含有し界面活性剤を含まない洗浄性かつ多機能性液体被覆組成物、および使用法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月25日出願公開、特開2007- 16201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年12月5日(パリ条約による優先権主張2005年7月6日、米国)の出願であって、平成21年9月18日付けで拒絶査定がされ、平成22年1月25日付けで審判請求書及び手続補正書が提出され、平成22年1月26日付けで手続補足書が提出され、平成22年2月10日付けで審判請求書についての手続補正書が提出され、平成23年9月21日付けで前置報告書による審尋がされ、平成24年2月16日付けで回答書が提出されたものである。

第2 本件出願に係る発明について
本件出願に係る発明は、平成22年1月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載のとおりのものであり、その請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という。)。
なお、平成22年1月25日付けの手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?11を引用する請求項12、請求項12を引用する請求項13?19、請求項20?24を引用する請求項25、及び、請求項25を引用する請求項26?30を順に、補正後の請求項1?11、請求項12?18、請求項19?23、及び、請求項24?28とするとともに、補正後の請求項で引用する請求項の番号を整合するように補正するものであるが、この補正は補正前の請求項1?11、20?24を削除する補正にあたるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

「表面に結合できるカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物であって、下記式
【化1】

(ここで、R^(1)=水素及び/又はC_(1)からC_(4)アルキル、R^(2)=C_(1)からC_(8)炭素原子の二価の炭化水素基、R^(3)=水素又はC_(1)からC_(4)アルキル、R^(4)=水素又はC_(1)からC_(10)アルキル、R^(5)=C_(10)からC_(22)の飽和又は不飽和炭化水素基、及びX=ハロゲン化物、カルボン酸塩、スルホン酸塩、水酸化物、硫酸塩、又は燐酸塩を表す)
で定義される、前記四級アンモニウム化合物、
シリカ、珪酸塩、金属酸化物、金属炭酸化物、粘土、炭化物及びプラスチックから成る群から選択され、前記四級アンモニウム化合物と非反応性である研磨剤固体粒子、これらの成分は前記表面を洗浄するため、及び前記表面に多機能性の被覆物を結合させて前記表面を水及び汚れはじき性にするためのものであって、並びに
界面活性剤を含まない組成である液体希釈剤、
から本質的に成る、界面活性剤を含まない、保存安定性の良い、表面処理用の液体洗浄性かつ多機能性被覆組成物。」

第3 拒絶査定
平成21年9月18日付け拒絶査定は「この出願については、平成21年1月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、当該拒絶理由を参照するとその理由は以下のとおりである(なお、本願発明は拒絶理由通知時の請求項1に記載された発明を請求項14,16に記載された事項により特定した発明にあたる。)。

「 理 由
1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
<理由1について>
・請求項1?53
・引用文献等1?4

引 用 文 献 等 一 覧
1.国際公開第2005/042657号
2.特開平02-073896号公報
3.特開昭53-115708号公報
4.特開平03-232000号公報」

第4 当審の判断
当審は、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。

1.刊行物等
刊行物1.国際公開第2005/042657号
刊行物2.特開平02-073896号公報
刊行物3.特開昭53-115708号公報
刊行物4.特開平03-232000号公報
(以上の刊行物は順に、原査定における引用文献1?4である。)
周知例5.米国特許第4,005,028号明細書(1977年1月25日発行)
周知例6.「微粒子工学大系 第II巻 応用技術」柳田博明監修(株式会社フジ・テクノシステム)2002年2月22日発行、第290?293頁「第2節 研磨材・研削材」

2.刊行物等に記載された事項
(刊行物1については、国際公開第2005/042657号に対応する邦文の刊行物である特表2006-526686号公報の記載によって記載事項を摘記する。摘記した箇所については、特表2006-526686号公報の該当する箇所によって表記し、括弧書きで国際公開第2005/042657号の対応する箇所を表記する。
周知例5については、当審による和訳によって記載事項を摘記する。)

[刊行物1]
(1-1)「【請求項11】
表面処理用クリーニングおよび多機能コーティング組成物であって、
前記組成物が前記表面上に結合可能な約3重量%までの量の次式で規定する陽イオン有機シラン四級アンモニウム化合物で、

式中、R^(1)=水素および/またはC_(1)?C_(4)アルキル;R^(2)=炭素原子C_(1)?C_(8)の二価炭化水素ラジカル、R^(3)=水素またはC_(1)?C_(4)アルキル、R^(4)=水素またはC_(1)?C_(10)アルキル、R^(5)=C_(10)?C_(22)飽和または不飽和炭化水素ラジカルおよびX=ハライド、カルボン酸塩、スルホン酸塩、水酸化物、硫酸塩またはリン酸塩である陽イオン有機シラン四級アンモニウム化合物と、酸性脱イオン水性溶剤中約8重量%までの量の過酸化水素を含み、
前記成分が前記表面のクリーニングおよび前記表面上での多機能コーティングの結合に有効な量で存在し、それによって、前記表面に(a)撥水性および防汚性および(b)抗菌性を付与するクリーニングおよび多機能コーティング組成物。

【請求項13】
さらに、アルコール、ポリオール、グリコールエーテルおよびそれらの混合物から選択する溶媒を含有することを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
さらに、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから成る群から選択するアルコールを含有することを特徴とする請求項11に記載の組成物。」(特許請求の範囲(第34?45頁 "WHAT IS CLAIMED IS" の CLAIM11,13,14))

(1-2)「本コーティング組成物は、さらに、例えばグリコール、プロピレングリコール・モノメチルエーテル、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールなど、アルコール、ポリオール、グリコールエーテルおよびそれらの混合物のような溶媒を含有できる。さらに、好ましくは、水性溶剤は酸性で、pHは、約2?約5の強度である。本組成物は、好ましくは脱イオン水でも配合する。」(段落【0014】(第6頁第12?17行))

(1-3)「「多機能」は、本明細書で使用する場合、同時または連続的に表面をクリーニングおよびコーティングし、それによって、該コーティングが表面に撥水性、防汚性および/または抗菌性を付与する機能を発揮するように、1回の塗布から2種類以上の明確な結果を達成する方法を意味する。」(段落【0034】)

[刊行物2]
(2-1)「1.オルガノポリシロキサンがエポキシ基を有することを特徴とするオルガノポリシロキサンを含有する、ガラスセラミツク表面用清浄および/または状態調節剤。

4.エポキシ官能ポリオルガノシロキサン5?30重量%の他に、別の成分として
(C)界面活性剤1?20重量%
(E)研磨剤5?25重量%
(H)および水1?89重量%
を含有している請求項1から請求項3までのいづれか1項記載の薬剤。」(特許請求の範囲)

(2-2)「本発明の薬剤によつて、ガラスセラミツク表面の破壊が長期間に亘つて回避される。形成された保護被膜の分離作用のおかげで…表面の容易に保護的な清浄が可能になる。」(第3頁右上欄第2?6行)

(2-3)「研磨成分(E)は、清浄効果を強化するために役立ち、所望の研磨効果に有利ななんらかの微細な粉末であつてよい。適当な研磨剤の例は、酸化アルミニウム,石英,珪酸質チョーク、珪藻土、コロイド状二酸化珪素、メタ珪酸ナトリウムまたはタルクである。」(第5頁左上欄第1?6行)

[刊行物3]
(3-1)「本発明の一つの目的は改良されたガラス-セラミック製品のクリーナー及びコンディショナーを提供することである。…これら及びその他の目的は、水、ポリジメチルシロキサン液体,研磨剤、及び凝集化シリカの酸性混合物から本質的に成り立つ本発明の組成物によって実現される。」(第2頁右上欄第10?20行)

(3-2)「本発明組成物に於て有用なポリジメチルシロキサン液体はポリマー業界に於て周知のものであり、
一般式


をもち」(第3頁右上欄第4?11行)

(3-3)「本発明組成物に於て使用される研磨剤は珪藻土、酸化アルミニウム、粉砕石英、トリポリ、及び滑石、のような微細状研磨剤の何れであつてもよい。…炭化した食物の汚れのような皮殻化した汚れをガラス-セラミツク表面から除去するために用いることができる本発明組成物は好ましくは、組成物重量を基準として20乃至30重量%の研磨剤を含んでいる。」(第4頁右上欄第13行?左下欄第5行)

[刊行物4]
(4-1)「1)非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤のうちの少なくとも1と、グリコール類と、水と、これらを溶解するアミン変性シリコーン油とを主成分とする混合液から成ることを特徴とする自動車用洗浄剤。
2)混合液にN-メチル-2-ピロリドンと、平均粒径が0.1?100μの研磨剤とを含有させてあることを特徴とする請求項1記載の自動車用洗浄剤。」(特許請求の範囲)

(4-2)「研磨剤には平均粒系4.0μのケイソウ土を採用したが、この他にアルミナ、シリカ、炭酸カルシウム等であっても良い。また、この平均粒径は0.1?100μの範囲内であれば良い。…0.1μ以下では粒系が小さすぎて研磨作用が小さく、前記車体等の表面の汚れ(特に水垢)を落とす効果が小さいからである。」(第3頁左上欄第9?16行)

[周知例5]
(5-1)「研磨洗浄剤
この発明のオルガノシランは、同様に、オーブン等の硬質表面の洗浄を意図した洗浄剤組成物において使用される。そのような組成物は、0.002?5%、好ましくは0.01?1%のオルガノシラン、0.1?10%、好ましくは1?5%の水可溶性の非イオン性、双性イオン性、及び/又は、両性電解質性(ampholytic)の有機洗剤、50?95%、好ましくは50?75%の水不溶性の研磨剤、及び、残部の不活性のフィラー塩から本質的になる。好適な研磨剤は次のものを包含する。:石英,軽石,タルク,硅砂,炭酸カルシウム,陶土,珪酸ジルコニウム,ベントナイト,珪藻土,胡粉,長石,酸化アルミニウム.」(第22欄第43?57行:"ABRASIVE CLEANER The organosilane of this invention…and aluminum oxide.")

(5-2)「例12研磨洗浄剤
(CH_(3)O)(CH_(3))_(2)Si(CH_(2))_(3) N^(+)(C_(2)H_(5))_(2)C_(12)H_(25)Br^(-) 1.0%
5モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたココナツアルコール
2.0%
シリカ 70.0%
硫酸ナトリウム 23.0%
その他(水、香料、染料) 残部 」
(第26欄第45?53行:"EXAMPLE XII Abrasive Cleaner"表の罫線は省略する。)

(5-3)「オルガノシランは次の式を有するものであるか、これからなるシロキサンオリゴマーである。

ここで、…YはN、S,又はPである。」(第2欄第62行?第4欄第5行:"The organosilane has…and Y is N,S or P.")

[周知例6]
(6-1)「2.研磨材・研削材の種類と特性…
2.1研削・研磨に利用される材料…
2.1.1アルミナ質研削・研磨材…
2.1.2炭化ケイ素質研削・研磨材…
2.1.3酸化セリウム系研磨材…
2.1.4シリカ…
2.1.5超砥粒…」(第290頁左欄?第291頁右欄)

3.検討
ア.刊行物1に記載された発明
刊行物1には、
表面処理用クリーニングおよび多機能コーティング組成物であって、前記組成物が前記表面上に結合可能な約3重量%までの量の次式で規定する陽イオン有機シラン四級アンモニウム化合物で、

式中、R^(1)=水素および/またはC_(1)?C_(4)アルキル;R^(2)=炭素原子C_(1)?C_(8)の二価炭化水素ラジカル、R^(3)=水素またはC_(1)?C_(4)アルキル、R^(4)=水素またはC_(1)?C_(10)アルキル、R^(5)=C_(10)?C_(22)飽和または不飽和炭化水素ラジカルおよびX=ハライド、カルボン酸塩、スルホン酸塩、水酸化物、硫酸塩またはリン酸塩である陽イオン有機シラン四級アンモニウム化合物と、酸性脱イオン水性溶剤中約8重量%までの量の過酸化水素を含み、前記成分が前記表面のクリーニングおよび前記表面上での多機能コーティングの結合に有効な量で存在し、それによって、前記表面に(a)撥水性および防汚性および(b)抗菌性を付与するクリーニングおよび多機能コーティング組成物に、さらに、アルコール、ポリオール、グリコールエーテルおよびそれらの混合物、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから成る群から選択する溶媒を含有する組成物が記載されている(摘記(1-1)の請求項11を引用する請求項13、14、及び、摘記(1-2))から、本件補正発明にならって記載すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「表面に結合できる約3重量%までの量のカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物であって、下記式

(ここで、R^(1)=水素および/またはC_(1)?C_(4)アルキル;R^(2)=炭素原子C_(1)?C_(8)の二価炭化水素ラジカル、R^(3)=水素またはC_(1)?C_(4)アルキル、R^(4)=水素またはC_(1)?C_(10)アルキル、R^(5)=C_(10)?C_(22)飽和または不飽和炭化水素ラジカルおよびX=ハライド、カルボン酸塩、スルホン酸塩、水酸化物、硫酸塩またはリン酸塩を表す)で定義される、前記四級アンモニウム化合物、酸性脱イオン水性溶剤中約8重量%までの量の過酸化水素を含み、
前記成分が前記表面のクリーニングおよび前記表面上での多機能コーティングの結合に有効な量で存在し、それによって、前記表面に(a)撥水性および防汚性および(b)抗菌性を付与するクリーニングおよび多機能コーティング組成物であって、並びに
アルコール、ポリオール、グリコールエーテルおよびそれらの混合物、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから成る群から選択する溶媒、から成るコーティング組成物。」

イ.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明はカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物の使用量を特定しないものであって当該使用量の点は相違点とならないから、引用発明の「表面に結合できる約3重量%までの量のカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物であって」は、本願発明の「表面に結合できるカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物であって」に相当する。
引用発明の「下記式」と本願発明の「下記式【化1】」とは、同じ化学式であり、各化学式について括弧書きでされた特定事項における引用発明の「C_(1)?C_(4)」、「C_(1)?C_(8)」、「C_(1)?C_(10)」、「C_(10)?C_(22)」が「C_(1)からC_(4)」、「C_(1)からC_(8)」、「C_(1)からC_(10)」、「C_(10)からC_(22)」と同じ意味であり、「炭化水素ラジカル」、「ハライド」が「炭化水素基」、「ハロゲン化物」と同じ意味であることは周知の事項と認められるから、引用発明の「下記式(式の掲載は省略する。)
(ここで、R^(1)=水素および/またはC_(1)?C_(4)アルキル;R^(2)=炭素原子C_(1)?C_(8)の二価炭化水素ラジカル、R^(3)=水素またはC_(1)?C_(4)アルキル、R^(4)=水素またはC_(1)?C_(10)アルキル、R^(5)=C_(10)?C_(22)飽和または不飽和炭化水素ラジカルおよびX=ハライド、カルボン酸塩、スルホン酸塩、水酸化物、硫酸塩またはリン酸塩を表す)で定義される、前記四級アンモニウム化合物」は、本願発明の
「下記式【化1】(式の掲載は省略する。)
(ここで、R^(1)=水素及び/又はC_(1)からC_(4)アルキル、R^(2)=C_(1)からC_(8)炭素原子の二価の炭化水素基、R^(3)=水素又はC_(1)からC_(4)アルキル、R^(4)=水素又はC_(1)からC_(10)アルキル、R^(5)=C_(10)からC_(22)の飽和又は不飽和炭化水素基、及びX=ハロゲン化物、カルボン酸塩、スルホン酸塩、水酸化物、硫酸塩、又は燐酸塩を表す)で定義される、前記四級アンモニウム化合物」に相当する。
引用発明の「表面に(a)撥水性および防汚性…を付与する」、「クリーニング」、「から成る」、「コーティング」は順に、本願発明の「表面に…前記表面を水及び汚れはじき性にする」、「表面を洗浄する…表面処理用の液体洗浄性」、「から本質的に成る」、「被覆」に相当し、両者の「多機能性」は同じ意味(摘記(1-3)、及び、本願明細書段落【0044】の「多機能性の」の定義)と認められるから、引用発明の「前記表面に(a)撥水性および防汚性…を付与するクリーニングおよび多機能コーティング組成物であって、…から成るコーティング組成物。」は、本願発明の「こ(れら)の成分は前記表面を洗浄するため、及び前記表面に多機能性の被覆物を結合させて前記表面を水及び汚れはじき性にするためのものであって、…から本質的に成る…表面処理用の液体洗浄性かつ多機能性被覆組成物。」との事項に相当する。
本願明細書の「好ましい液体希釈剤は水またはアルコールであり…」(段落【0038】)との記載等からみて、本願発明は液体希釈剤としてアルコール等を使用するものと認められるから、引用発明の「アルコール、ポリオール、グリコールエーテルおよびそれらの混合物、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから成る群から選択する溶媒」は、本願発明の「液体希釈剤」に相当する。

また、引用発明は「酸性脱イオン水性溶剤中約8重量%までの量の過酸化水素」を含むこと(事項i)、四級アンモニウム化合物及び過酸化水素を「表面のクリーニングおよび表面上での多機能コーティングの結合に有効な量で存在」するように使用すること(事項ii)、「(b)抗菌性を付与する」こと(事項iii)という構成を有するものであるが、本願明細書の記載を参照すると、これらの事項は、いずれも相違点とはいえないものと認められる。
(なお、これらの事項について補足すると、
事項iについては、本願明細書の「過酸化水素またはその複合体を用いるときは、一般的に、過酸化水素の含量は8重量%迄…の量である。」、「…過酸化水素は約8%迄…の量で、脱イオン化水性媒体中に含有される。水性媒体のpHは約2から約9、好ましくは約3から5の酸性である。」(段落【0021】、【0026】)との記載等からみて、本願発明は酸性の脱イオン水性溶剤中に約8重量%までの量の過酸化水素を使用する場合を包含するものといえるから、引用発明との相違点といえない。
事項iiについては、本願明細書の「前記有機シラン四級は表面に結合可能であり、また、前記組成物の成分は、表面を洗浄するため、および表面に多機能性の被覆物を結合させて、それにより表面を水および汚れはじき性、並びに抗菌性にするための有効量が含有さる。」、「カチオン性の有機シラン四級化合物と過酸化水素の組合せが相乗的な結果をもたらすことが見いだされている。…成分のこの組合せから得られる結合および耐久性は…個々の成分の活性の和を予想外に超えている。」(段落【0017】、【0037】)との記載等からみて、本願発明は、これらの成分の使用に際して、表面の洗浄、多機能コーティングの結合に有効な量とするものといえるから、引用発明との相違点といえない。
事項iiiについては、本願明細書の「本発明は…抗菌性にする…洗浄剤組成物に関する。」(段落【0001】)との記載等からみて、本願発明は抗菌性を付与するものといえるから、引用発明との相違点といえない。)

よって、両者は、
「表面に結合できるカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物であって、下記式
【化1】(式の掲載は省略する。)
(ここで、R^(1)=水素及び/又はC_(1)からC_(4)アルキル、R^(2)=C_(1)からC_(8)炭素原子の二価の炭化水素基、R^(3)=水素又はC_(1)からC_(4)アルキル、R^(4)=水素又はC_(1)からC_(10)アルキル、R^(5)=C_(10)からC_(22)の飽和又は不飽和炭化水素基、及びX=ハロゲン化物、カルボン酸塩、スルホン酸塩、水酸化物、硫酸塩、又は燐酸塩を表す)
で定義される、前記四級アンモニウム化合物、
こ(れら)の成分は前記表面を洗浄するため、及び前記表面に多機能性の被覆物を結合させて前記表面を水及び汚れはじき性にするためのものであって、並びに
液体希釈剤、
から本質的に成る表面処理用の液体洗浄性かつ多機能性被覆組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本願発明は、表面を洗浄する等のための「シリカ、珪酸塩、金属酸化物、金属炭酸化物、粘土、炭化物及びプラスチックから成る群から選択され、前記四級アンモニウム化合物と非反応性である研磨剤固体粒子」を発明特定事項とするのに対して、引用発明はそのことを発明特定事項とするものでない点。

相違点2:本願発明は、液体希釈剤が「界面活性剤を含まない組成である」ことを発明特定事項とするのに対して、引用発明はそのことを発明特定事項とするものでない点。

相違点3:本願発明は、「保存安定性の良い」ことを発明特定事項とするのに対して、引用発明はそのことを発明特定事項とするものでない点。

ウ.相違点についての検討
(a)相違点1
処理対象表面の洗浄等の用途で用いられるオルガノシロキサン系の表面処理組成物に汚れを落とし易くするために研磨剤を配合することは、周知の技術と認められる(例えば、摘記(2-1?2)、(3-1?2)、(4-1)、(5-1?3))から、処理対象表面の洗浄と洗浄後の表面の保護(撥水、防汚)を行う組成物であって、洗浄等の用途で用いられるオルガノシロキサン系の表面処理組成物である点において軌を一にする引用発明において、汚れを落とし易くするために研磨剤を配合することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
そして、組成物において、構成成分同士の反応等によって当該組成物の必要な性質が損なわれないように配合すべきことは技術常識と推認されること(例えば、「洗浄と洗剤」辻薦著(地人書館)1992年10月1日発行、第90?91頁には「…陽イオン系のなかでも,四級アンモニウム系のもの…なかでもアルキル基にベンジル基を含んだものの殺菌力は特に強い.…例えば,陰イオン系活性剤とは錯体を作って殺菌力を失う…」と記載され、「化学大辞典5」化学大辞典編集委員会編(共立出版)第571頁「だいしアンモニウムえん」の項には「…一面陰イオン活性剤…などにより殺菌力が低下する欠点がある.…」と記載されている。これらの記載は、四級アンモニウムカチオンの機能である殺菌性がアニオン(陰イオン系活性剤)の存在によって損なわれることを意味するものと解される。)、及び、シリカ、金属酸化物、炭化物等の代表的な周知の研磨剤(例えば、摘記(6-1)、(2-3)、(3-3)、(4-2)、(5-1?3)参照。)について採用する研磨剤を検討することは当業者が普通に行うことと認められること、を考慮すると、シリカ、金属酸化物、炭化物等の代表的な周知の研磨剤を、組成物に添加しても問題がないことを確認して、配合することに格別の困難性は認められない。
よって、引用発明において、汚れを落とし易くするために、シリカ、金属酸化物、炭化物等の代表的な周知の研磨剤を配合して、「シリカ…金属酸化物…炭化物…から成る群から選択され、前記四級アンモニウム化合物と非反応性である研磨剤固体粒子」と規定することは、刊行物2?4、周知例5、6に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(b)相違点2
引用発明は「液体希釈剤」に相当する「アルコール…群から選択する溶媒」を配合するものであるが、刊行物1には当該溶媒に界面活性剤を添加することは記載されておらず、当該溶媒として界面活性剤を含まないものを使用するものと認められる。
仮にそうでないとしても、有機シラン系の化合物と研磨剤とを使用する洗浄のための組成物において界面活性剤を含有させない例は周知と認められる(例えば、特公昭46-42101号公報には、界面活性剤の使用が好ましいとしながらも、界面活性剤を使用しない洗浄用組成物が良好なものであるとの実施例(第2頁の「実施例3(1)?(3)」)が記載されている。米国特許公報第3071479号明細書(1963年1月1日特許)には、付加的な成分として界面活性剤を使用してよいとしながらも(第2欄第70行?第3欄第2行)、界面活性剤を使用しない洗浄用組成物の実施例(EXAMPLE1?4)が記載されている。)ことを考慮すると、引用発明において、周知の研磨剤を配合する際に、洗浄性等を考慮して、組成物の構成成分である液体希釈剤を界面活性剤を使用しないものとすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(c)相違点3
上記(a)において記載したように、シリカ、金属酸化物、炭化物等の代表的な周知の研磨剤を引用発明の組成物に添加しても問題がないことを確認して、配合することは、刊行物2?4、周知例5、6に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことと認められるが、そのような研磨剤を配合すれば、当該組成物の性質が損なわれず持続するため組成物の保存安定性が良くなることは、当業者にとって明らかなことと認められる。 そうすると、四級アンモニウムカチオンを含む組成物である引用発明において、当該組成物の機能を損なわない研磨剤を採用して「保存安定性の良い」ものと規定することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

以上のとおりであるから、上記の相違点1、3は格別の相違点とは認められないものであり、相違点2は実質的な相違点でないか又は格別の相違点とは認められないものといえる。

エ.本願発明の効果について
本願発明に係る被覆組成物は、良好な洗浄性、保存安定性、生成する被覆による撥水性、防汚性、抗菌性、等を主な効果とするものと認められる(本願明細書の段落【0023】等参照。)。
しかしながら、有機シラン四級アンモニウムカチオンによって撥水性、防汚性、抗菌性のある被覆が形成されることは、刊行物1に記載されている(摘記(1-1))。
また、保存安定性が良くなることは、「ウ.(c)」において記載した理由により、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
そうすると、本願発明による効果は、刊行物1の記載事項、技術常識に基づいて予測し得た効果と認められる。

オ.請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書、回答書において、以下の主張をしていると認られる。
「先行技術において知られている研磨剤があったとしても、本願発明において使用できるものと使用できないものが存在する。すなわち、全ての研磨剤が本願発明の「研磨剤固体粒子」として使用できるわけではなく、補正後の請求項1に記載したように「シリカ、珪酸塩、金属酸化物、金属炭酸化物、粘土、炭化物及びプラスチックから成る群から選択され、前記四級アンモニウム化合物と非反応性である」との要件を満たす研磨剤のみが、本願発明の「研磨剤固体粒子」として使用できるのである。このため、たとえ当業者が先行技術文献2?4に開示された研磨剤と本願発明のカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物とを組み合わせることについて想到し得たとしても、該研磨剤と本願発明のカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物との配合後の組成物が安定であるものを選択しなければならないところ、そのようなことを予測して「研磨剤個体粒子」を選択することまで当業者が予測し得たとは認められない。」(審判請求書)
「当業者であれば本願発明の有機シラン四級アンモニウム化合物は対象と容易に化学的に結合することを認識しているため、研磨剤固体粒子を配合すると、有機シラン四級アンモニウム化合物がその成分の表面又は配合物の入った容器の内部等と反応することをおそれ、本願発明のようにカチオン性の有機シラン四級アンモニウム化合物と研磨剤固体粒子とを配合しようと動機付けられなかったと考えるのが妥当です。」(回答書)

しかしながら、「第4 3.ウ.(a)」に記載したとおり、組成物において、構成成分同士の反応等によって当該組成物の必要な性質が損なわれないように配合すべきことは技術常識であり、四級アンモニウムカチオンの機能がアニオン(陰イオン系活性剤)等の他の構成成分の存在によって損なわれることがあることは周知の技術的事項(例えば、「洗浄と洗剤」辻薦著(地人書館)1992年10月1日発行、第90?91頁、「化学大辞典5」化学大辞典編集委員会編(共立出版)第571頁「だいしアンモニウムえん」の項参照。)と認められることを考慮すると、シリカ、金属酸化物、炭化物等の代表的な周知の研磨剤について、四級アンモニウムカチオンの機能を損なわないことを確認して、研磨剤を採用することは、当業者が容易に想到し得たことと認められるから、審判請求人の審判請求書における上記の主張は認められない。
また、「第4 3.ウ.(a)」に記載したとおり、洗浄等の用途で用いられるオルガノシロキサン系の表面処理組成物に、汚れを落とし易くするために研磨剤を配合することは周知の技術と認められるから、オルガノシロキサン系の表面処理組成物が有機シラン四級アンモニウム化合物から構成されるものであっても、汚れを落とし易くするために研磨剤を配合することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる(なお、周知例5には、有機シラン四級アンモニウム化合物に研磨剤を配合することが記載されている。)から、審判請求人の回答書における上記の主張は認められない。

カ.まとめ
よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明と認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-10 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-28 
出願番号 特願2005-350830(P2005-350830)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 服部 智大熊 幸治中島 庸子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 松浦 新司
目代 博茂
発明の名称 非反応性の研磨剤固体粒子および有機シラン四級化合物を含有し界面活性剤を含まない洗浄性かつ多機能性液体被覆組成物、および使用法  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 渡邉 義敬  
代理人 池田 幸弘  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ