ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B |
---|---|
管理番号 | 1268707 |
審判番号 | 不服2011-4712 |
総通号数 | 159 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-02 |
確定日 | 2013-01-07 |
事件の表示 | 特願2004-551339「液体食品プラントにおける製品の追跡方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年5月27日国際公開、WO2004/044777、平成18年2月23日国内公表、特表2006-506705〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成15年11月13日(パリ条約に基づく優先権主張2002年11月14日、スウェーデン王国)に国際出願したものであって、同21年11月19日付けで拒絶の理由が通知され、同22年4月26日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年10月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。 これに対し、平成23年3月2日に本件審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、その後、同年7月11日付け審尋に対して同年11月11日に回答書が提出され、同年12月16日付けで当審から拒絶の理由が通知され、平成24年6月11日に面接が行われ、同年同月18日に誤訳訂正書が提出され、同年同月20日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年7月3日付け審尋に対して同年8月1日に回答書が提出された。 第2 当審の拒絶理由 当審において平成23年12月16日付けで通知した拒絶理由は、(理由1)特許法第17条の2第3項、(理由2)同法第36条第6項第1号、(理由3)同法第36条第6項第2号及び(理由4)同法第36条第4項第1号を根拠とするものであり、理由1に関して、平成22年4月26日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとして以下1.のように指摘し、理由2に関して、特許請求の範囲の記載が、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとして以下2.のように指摘し、理由3に関して、特許請求の範囲の記載が、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとして以下3.のように指摘した。 1.理由1についての指摘 「平成22年4月26日付けでした手続補正により補正された次の事項は、当初明細書等に記載されたものではない。 (1)「材料量識別証明(4)と移動元を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連」した「実施作業識別証明(7)」。 (2)「移動元からの材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示」す「実施作業識別証明(7)」。 (3)「材料量識別証明(4)と移動先を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連」した「実施作業識別証明(7)」。 (4)「移動先への材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示」す「実施作業識別証明(7)」。 …(中略)… (6)「特定の時点での実施作業識別証明(7)に関連するデータをユニット識別証明(2)と材料量識別証明(4)との少なくとも一方に関連して表示する」こと。 …(中略)… なお、特許請求の範囲については、平成23年3月2日付け手続補正書によってさらに補正されているが、上記指摘した点については変更されていない。」 (以下、指摘中の(1)ないし(4)及び(6)を「理由1指摘事項1ないし4及び6」という。) 2.理由2についての指摘 「請求項1?5における次の点について、発明の詳細な説明には記載されていない。 (1)理由1(1)?(7)で指摘した点は、発明の詳細な説明に記載されていない。 …(中略)… よって、請求項1?5に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでない。」 (以下、指摘中の(1)を「理由2指摘事項1」という。) 3.理由3についての指摘 「請求項1?5における次の点が不明である。 (請求項1) …(中略)… (2)「材料量識別証明(4)と移動元を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連して移動元からの材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示し」の記載が、日本語として全く意味が不明である。 (3)「材料量識別証明(4)と移動先を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連して移動先への材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示す」の記載が、日本語として全く意味が不明である。 (4)「材料量(3)の少なくとも一部の輸送」の意味が不明である。 (5)「特定の時点での実施作業識別証明(7)に関連するデータをユニット識別証明(2)と材料量識別証明(4)との少なくとも一方に関連して表示」の記載が、日本語として全く意味が不明である。 …(中略)… よって、請求項1?5に係る発明は明確でない。」 (以下、指摘中の(2)ないし(5)を「理由3指摘事項2ないし5」という。) 第3 本件補正について (1)平成24年6月20日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、平成23年3月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関して、次の補正事項AないしJの補正をするものであり、補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すとそれぞれ以下の(2)、(3)のとおりである。 ここで、補正事項Eは理由1指摘事項1ないし4、理由2指摘事項1及び理由3指摘事項2ないし4に関するものであり、補正事項H、Iは理由1指摘事項6、理由2指摘事項1及び理由3指摘事項5に関するものである。 [補正事項A]「液体食品プラントでの製造における液体食品製品の追跡方法であって、プラントの各製造ユニット(1)に移動元と移動先との少なくとも一方を示すユニット識別証明(2)を割当て、そのユニット識別証明(2)をデーターベースに登録することと」の記載を「多数の製造ユニット(1)を有していて、液体食品製品の材料がそれら製造ユニット(1)を通って輸送されていくようになっており、各製造ユニット(1)にユニット識別子(2)が割当てられてデータベースに登録されている液体食品製造用のプラントでの製造における液体食品製品の追跡方法であって」に補正。 [補正事項B]液体食品製品の各材料量について、「製造における」としていたものを「各製造ユニット(1)に搬入される」と補正。 [補正事項C]「材料量識別証明(4)を割当て、その材料量識別証明(4)をデーターベースに登録」の記載を「材料量識別子(4)を割当ててデータベースに登録」に補正。 [補正事項D]各動作について「こと」と表記していたものを「ステップ」に補正。 [補正事項E]「材料量識別証明(4)と移動元を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連して移動元からの材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示し、および/または材料量識別証明(4)と移動先を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連して移動先への材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示す」の記載を「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す」に補正。 [補正事項F]「実施作業識別証明(7)をプラントにおける各実施作業に割当て、その」の記載を削除。 [補正事項G]「実施作業識別証明(7)をデーターベースに登録する」の記載を「実施作業識別子をデータベースに登録する」に補正。 [補正事項H]「特定の時点での実施作業識別証明(7)に関連するデータ」の記載を「実施作業識別子が示す輸送材料量(3)に関するデータ」に補正。 [補正事項I]「ユニット識別証明(2)と材料量識別証明(4)との少なくとも一方に関連して表示する」の記載を「、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び材料量識別子(4)に関連させて、表示できるようにした」に補正。 [補正事項J]「と、を含むこと」の記載を削除。 (2)補正前の請求項1 「液体食品プラントでの製造における液体食品製品の追跡方法であって、 プラントの各製造ユニット(1)に移動元と移動先との少なくとも一方を示すユニット識別証明(2)を割当て、そのユニット識別証明(2)をデーターベースに登録することと、 製造における液体食品製品の各材料量(3)に材料量識別証明(4)を割当て、その材料量識別証明(4)をデーターベースに登録することと、 材料量識別証明(4)と移動元を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連して移動元からの材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示し、および/または材料量識別証明(4)と移動先を示すユニット識別証明(2)との少なくとも一方に関連して移動先への材料量(3)の少なくとも一部の輸送を示す実施作業識別証明(7)をプラントにおける各実施作業に割当て、その実施作業識別証明(7)をデーターベースに登録することと、 特定の時点での実施作業識別証明(7)に関連するデータをユニット識別証明(2)と材料量識別証明(4)との少なくとも一方に関連して表示することと、 を含むことを特徴とする追跡方法。」 (3)補正後の請求項1 「多数の製造ユニット(1)を有していて、液体食品製品の材料がそれら製造ユニット(1)を通って輸送されていくようになっており、各製造ユニット(1)にユニット識別子(2)が割当てられてデータベースに登録されている液体食品製造用のプラントでの製造における液体食品製品の追跡方法であって、 各製造ユニット(1)に搬入される液体食品製品の各材料量(3)に材料量識別子(4)を割当ててデータベースに登録するステップと、 材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子をデータベースに登録するステップとを含み、 実施作業識別子が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び材料量識別子(4)に関連させて、表示できるようにしたことを特徴とする追跡方法。」 第4 当審の拒絶理由に関する請求人の主張 請求人は、平成22年4月26日付けの補正の根拠として、平成22年4月26日付け意見書において以下(1)のように主張し、また、当審の拒絶理由における理由1指摘事項1ないし4及び6に対して、同24年6月20日付け意見書において以下(2)のように主張し、同年8月1日付け回答書において以下(3)のように主張している。 なお、請求人は、理由2指摘事項1及び理由3指摘事項2ないし5について、意見書等において具体的に主張していない。 (1)平成22年4月26日付け意見書 「(1)平成21年11月19日付けで起案された拒絶理由通知書にかんがみ、本意見書と同日付けで手続補正書を提出し、特許請求の範囲を補正いたしました。 補正した請求項1は、旧請求項1と2を組みあわせるとともに、明細書の段落0017-0026及び図1-3の記載に基づいて実施作業識別証明7が示すものを明確にし、また、本発明の追跡方法では、特定の時点での実施作業識別証明7に関連するデータをユニット識別証明(2)と材料量識別証明4との少なくとも一方に関連して表示するようにしていることを明確にしています。」 (2)平成24年6月20日付け意見書 「(2-2)本願発明(補正した請求項1に係る発明)は、次の特徴を有しています。 (A)…(中略)… (B)各製造ユニット1に搬入される液体食品製品の各材料量3に材料量識別子4を割当ててデータベースに登録するステップと、 (C)材料の移動元の各製造ユニット1から材料の移動先の各製造ユニット1への輸送材料量3を示す実施作業識別子をデータベースに登録するステップとを含み、 (D)実施作業識子が示す輸送材料量に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット1におけるユニット識別子2及び材料量識別子4に関連させて、表示できるようにした。 上記(A)?(C)の特徴は、明細書の段落0008及び出願当初の請求項1に記載の特徴と同様のものです。 但し、上記(A)においては、図1及び明細書の段落0012等の記載に基づき、製造ユニットと材料の輸送との関係を明確にしています。「多数の製造ユニット1」は、図1において、Lorry1,T01,P1,P2等のユニット識別子2を与えられているユニットです。また、現在の請求項1では、「ユニット識別証明2を割当て、そのユニット識別証明2をデータベースに登録すること」が方法の一つのステップになっていますが、補正した請求項1では、「各製造ユニット1にユニット識別子2が割当てられてデータベースに登録されている」とし、そのようなデータベースが用意されていることを前提とした方法を記載しました。 上記(B)については、例えばデータベースから得られた追跡レポートを示す図2において、ユニット識別子T01を割り当てられた製造ユニット1に搬入される食品製品の各材料量3に材料量識別子4である561234567等の識別子4が割当てられています。 上記(C)の移動先及び移動元については、例えば図2において、ユニット識別子T01を割り当てられた製造ユニットが、ユニット識別子R01を割り当てられた製造ユニット(移動元)からの材料の移動先であり、また、ユニット識別子P1,P2を割り当てられた製造ユニット(移動先)への材料の移動元になっています。本願発明では、このように材料の移動元から移動先への輸送材料量を示す実施作業識別子をデータベースに登録します。 なお、各製造ユニットは、材料の移動元であったり移動先であったりします。 上記(D)は、例えば図2のような追跡レポートでデータを表示することです。」 なお、本欄における(C)及び(D)は、それぞれ理由1指摘事項1ないし4及び理由1指摘事項6に関するものである。 (3)平成24年8月1日付け回答書 「(3)補正事項2について 図2には、実施作業識別情報(7)は明示されていない。しかし、追跡レポートは、上述のように作業者にタンク(T01)の状態についての情報を提供するために作成されるものである。したがって、タンク(T01)に入り、出て行くバッチのみが、追跡レポートに考慮されている。さらに、もし、追跡レポートが特定のバッチのために作成されたとすれば、実施作業識別情報(7)及び(製造ユニットを特定する)識別情報(2)が、代わりに表示されていたと考えられる。図1および図3には、実施作業識別情報(7)が明確に示されている。 実施作業識別情報(7)は、どの製造ユニットからどの製造ユニットへ特定のバッチが輸送されたかについての情報を提供する。これは、審判官殿が引用された段落[0014]からも明らかである。 この補正事項の根拠は、出願当初明細書等の段落[0014]、図1および図3等にある。 (4)補正事項3について 上述の通り、処理システム内を通してバッチを追跡することが可能であることによって、例えば、図2に示されるような追跡レポートを作成することが可能である。図2は、どのバッチがどこからタンク(T01)へ輸送され、どのバッチがタンク(T01)からどこへ輸送されるかを表わしている。したがって、追跡レポートは、本発明の追跡システムを適用したときに作成することができるレポートの例として見ることが可能である。上述の通り、別の追跡レポートによって、例えば、使用される別の製造ユニットが特定のバッチに対してどの順番で使用されるかを表わすことも可能である。 この補正事項の根拠は、出願当初明細書等の段落[0021]および図2等にある。」 なお、本欄における補正事項2及び補正事項3は、それぞれ理由1指摘事項1ないし4及び理由1指摘事項6に関するものである。 第5 当審の判断 1.理由1について (1)理由1指摘事項1ないし4及び6、すなわち実施作業識別子に関して、当初明細書等の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落0008、0012ないし0014、0017ないし0026、図面の図2には次の記載がある。 なお、段落0021は平成24年6月18日に誤訳訂正がなされている。 ア 特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 液体食品プラントでの製造における追跡方法であって、プラントの各製造ユニット(1)には登録された移動元または移動先のいずれかとされる識別証明(2)が割当てられること、製造において各材料の量(3)には登録された識別証明(4)が割当てられること、およびプラントの各実施作業(7)には、一部は移動元における材料量の識別証明(4)に関する移動元からの輸送、また一部は移動先の材料量の識別証明(4)に関する移動先への輸送のような、登録された識別証明が割当てられることを特徴とする追跡方法。」 イ 明細書の段落0008 「【0008】 これらおよび他の目的は、冒頭に記載された形式の方法に対して、次の特徴、すなわちプラントの各製造ユニットには登録された移動元または移動先のいずれかとされる識別証明が割当てられるという特徴、製造において各材料の量には登録された識別証明が割当てられるという特徴、およびプラントの各実施作業には、一部は移動元における材料量の識別証明に関する移動元からの輸送として、また一部は移動先の材料量の識別証明に関する移動先への輸送として登録された識別証明が割当てられるという特徴を与えるという本発明によって達成された。」 ウ 明細書の段落0012ないし0014 「【0012】 各製造ユニット1はデータベースに登録されている識別証明2を割当てられる。識別証明2は図形や文字、または両者の組合せによって開示される。図1および図3はタンク車であるLORRY1、タンクであるT1,T10などのさまざまな識別証明2を示している。これらの識別証明2はプラントにとって多少ながら不変的であるが、プラントの適所にどの設備があるかに応じて乳業会社やジュース工場で異なる。 【0013】 液体食品の製造において、製品または材料はさまざまな嵩(体積)で取扱われる。これらの材料量3を識別証明することで、データベースに登録された識別証明4を割当てることができる。材料量3は原料ミルク、低温殺菌済みミルクなどの或る種の製品5に関してはリットルまたはキロリットルで示された嵩または量6で定められる。これらの識別証明4も図形または文字、または両者の組合せで与えられる。記号の数字は、その独自の識別証明4が再使用されるべき前にプラントがどれほど長く運転することを意図されているで決まる。図2は、作業ID欄の下側に示された材料量の識別証明4を示している。 【0014】 液体食品プラントで製品が製造されると、基本的にはさまざまな嵩すなわち量の材料量3が輸送される。輸送は、材料の全嵩すなわち材料量3や、その一部の場合を含む。これは実施作業7の数として定められ、さまざまな製造ユニット1の間で行われる輸送として説明することができる。実施作業7は移動元および移動先を有し、移動元および移動先は異なる製品ユニットを含む。実施作業7はデータベースに登録され、独自の実施作業識別証明を割当てられる。実施作業7は移動元の材料量の識別証明4および移動先の材料量の識別証明4に関連して登録される。実施作業7の識別証明は図形または文字、または両者の組合せで識別証明される。」 エ 明細書の段落0017ないし0026 「【0017】 図1では、各製造ユニット1は、それが製造で使用される度にファイルで示される。製造ユニット1は、識別証明4の材料量がどのように輸送されたかに応じて、移動元および移動先の両方とすることができる。輸送、すなわち実施作業7は図1では2つのファイル間の線として示されている。 【0018】 図1の例は、タンクローリ車LORRY1が乳業会社へ進入する箇所の「樹形構造」を示している。タンクローリ車LORRY1のそのタンクは、原料ミルクである内容物を受入れ管R01に通してタンクT01へ排出して空にされる。或る量の原料ミルクを収容したタンクT01から、原料ミルクの容量の一部がさらに低温殺菌装置P1へ導かれる。殺菌後、殺菌済みミルクであるその材料はタンクT10へ送られる。タンクT01に残る材料量は他の低温殺菌装置P2へ送られ、そこからさらにタンクT11へ送られる。 【0019】 タンクT10に残る、また或る量の殺菌済みミルクで構成される材料量は図1に従えばさらに充填管FL601および充填機械FM601へ輸送され、そこで殺菌済みミルクは消費者用パッケージに包装される。 【0020】 プラントで取扱われる識別証明4の付された全材料量3、および識別証明が付された全ての実施作業7は特に適用されるデータベースに登録される。各実施作業7に関して、移動元および移動先がそれぞれのユニットの識別証明2で、また、移動元および移動先のそれぞれの材料量の識別証明4に関して示される。このデータは図1および図3に示す「樹形構造」、または図2に示すような追跡レポートに与えられる。 【0021】 追跡レポート(図2)は質問に対する回答として示される。例としては、タンクT01は出発点として使用されている。このレポートは二つに分かれ、第一の部分はタンクT01の内容物がどこから送られたのかに関する情報を与える。第二の部分では、この内容物がその後どこへ輸送されたかに関する情報が与えられる。一例では、タンクT01は移動先とされ、二番目の例では移動元とされている。 【0022】 レポートのそれぞれの部分には作業IDすなわち材料量の識別証明4と、ユニットの識別証明2として示されたそれぞれ移動元および移動先との欄がある。また、レポートには輸送/実施作業7が行われた時間間隔、輸送された製品5、および量6ならびに実施作業7を意図した者の欄が備えられている。 【0023】 同様にいわゆる「樹形構造」とされた図3は、破線で証明される時間軸線に関してのこの方法の利点を示している。例えば、乳業会社では低温殺菌の洗浄を介在させずに運転開始した低温殺菌装置P1を異なる多数の製品5に対して使用することが一般的であるので、「樹形構造」の異なる箇所の或る材料を追跡することは可能である。低温殺菌装置P1を通過した材料量3に製品5およびその各々の量6に応じて異なる材料量の識別証明4を与えることが可能である。 【0024】 また材料量の識別証明4で低温殺菌装置9の洗浄を示すことにより(作業ID)、さまざまに異なる製品5の識別証明4の材料量が他の材料量と接点を有するか否かを簡単且つ信頼性を有して決定することができる。洗浄、すなわちCIP(適所洗浄)に係わる識別証明4の材料量は移動元および移動先を有さない。 【0025】 液体食品プラントでの製品の流れおよび実施作業のシーケンスを与えるこれらの方法により、プラントのどこにあっても製品の内容物を製品の移動元および輸送された移動先の両方で追跡することが迅速且つ信頼性を有して可能になる。 【0026】 前述の説明から明白となるように、本発明は従来技術の方法における問題点や制限を現すことのない乳業会社やジュース工場での追跡方法を実現する。」 オ 図面の図2 上記エの段落0020ないし0022の記載を参照すると、作業ID(材料量の識別証明、材料量識別子4)が付された材料量3を、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット1におけるユニット識別子2に関連させて、表示できることが記載されている。 (2)以上の記載によれば、当初明細書等に記載された発明に関して、「実施作業識別子(実施作業識別証明)」について、以下の事項が把握できる。 ア 上記(1)ウの段落0014及びエの段落0020の記載から、実施作業7(実施作業識別子)は移動元及び移動先のそれぞれの材料量の識別証明(4)(材料量識別子(4))に関連してデータベースに登録される点。 イ 上記(1)オから、材料量識別子(4)が付された材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)に関連させて、表示できるようにした点。 (3)請求項1に記載された「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子」に関して、上記(2)に記した各点から、当初明細書等には、実施作業識別子は、移動元及び移動先のそれぞれの材料量識別子(4)に関連してデータベースに登録されることについては記載があるものの、実施作業識別子が、材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への「輸送材料量(3)」を示すことについては、記載されていないだけでなく、当初明細書等に記載されたすべての事項を総合しても読み取れない。 この点について、請求人は、平成24年8月1日付け回答書において上記第4(3)に示したとおり、(ア)「図2には、実施作業識別情報(7)は明示されていない。しかし、追跡レポートは、上述のように作業者にタンク(T01)の状態についての情報を提供するために作成されるものである。したがって、タンク(T01)に入り、出て行くバッチのみが、追跡レポートに考慮されている。」、(イ)「さらに、もし、追跡レポートが特定のバッチのために作成されたとすれば、実施作業識別情報(7)及び(製造ユニットを特定する)識別情報(2)が、代わりに表示されていたと考えられる。」、(ウ)「図1および図3には、実施作業識別情報(7)が明確に示されている。」、及び(エ)「実施作業識別情報(7)は、どの製造ユニットからどの製造ユニットへ特定のバッチが輸送されたかについての情報を提供する。これは、審判官殿が引用された段落[0014]からも明らかである。」と主張している。 そこで、主張(ア)ないし(エ)について検討する。 主張(ア)について、「図2には、実施作業識別情報(7)は明示されていない。」と自認しているとおり、図2は「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子」が記載されていることの根拠にはなり得ない。 主張(イ)について、「もし、追跡レポートが特定のバッチのために作成されたとすれば」と述べているように仮定に基づく説明である。さらに、「追跡レポートが特定のバッチのために作成」することが、当初明細書等に記載された事項から導かれる技術的事項であるともいえない。 主張(ウ)について、図1及び図3に示される「実施作業識別情報(7)」は、製造ユニット間を結ぶ線を示しているのみであり、「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子」が記載されていることの根拠にはなり得ない。 主張(エ)について、「実施作業識別情報(7)は、どの製造ユニットからどの製造ユニットへ特定のバッチが輸送されたかについての情報を提供する」ことは、「実施作業識別子」が「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す」ことと同じではない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (4)請求項1に記載された「実施作業識別子が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び材料量識別子(4)に関連させて、表示できるようにしたこと」に関して、当初明細書等には、材料量識別子(4)が付された材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)に関連させて、表示できるようにしたことについては記載があるものの、「実施作業識別子」が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び「材料量識別子(4)」に関連させて、表示できるようにしたことについては、記載されていないだけでなく、当初明細書等に記載されたすべての事項を総合しても読み取れない。 この点について、請求人は、平成24年8月1日付け回答書において上記第4(3)に示したとおり、(ア)「上述の通り、処理システム内を通してバッチを追跡することが可能であることによって、例えば、図2に示されるような追跡レポートを作成することが可能である。」、(イ)「図2は、どのバッチがどこからタンク(T01)へ輸送され、どのバッチがタンク(T01)からどこへ輸送されるかを表わしている。したがって、追跡レポートは、本発明の追跡システムを適用したときに作成することができるレポートの例として見ることが可能である。」、及び(ウ)「上述の通り、別の追跡レポートによって、例えば、使用される別の製造ユニットが特定のバッチに対してどの順番で使用されるかを表わすことも可能である。」と主張している。 そこで、主張(ア)ないし(ウ)について検討する。 主張(ア)及び(イ)について、図2に記載された追跡レポートによれば、左端の「作業ID」欄に示される「材料量識別子」ごとに、「材料」及び「実際量」欄に示される材料及び材料量を表示するものである。すなわち、請求項1に記載されたもののように、「実施作業識別子」が示す「輸送材料量(3)に関するデータ」を表示するものではない。 主張(ウ)について、「別の追跡レポート」は、当初明細書等の記載に基づかないものである。さらに、「使用される別の製造ユニットが特定のバッチに対してどの順番で使用されるかを表わす」ことが、当初明細書等に記載された事項から導かれる技術的事項であるともいえない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (5)小括 したがって、本件補正は、理由1指摘事項1ないし4及び6に関して補正事項E、H、Iのとおり補正したものであるが、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。 (6)付記 なお、補正事項Bに関して、材料量識別子(4)が割り当てられる液体食品製品の各材料量(3)を「各製造ユニット(1)に搬入される」ものとした点については、平成23年12月16日付けで通知した拒絶理由に対してなされたものではないが、一応の見解を示すと、平成24年7月3日付け審尋において指摘したとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 2.理由2について (1)理由2指摘事項1として指摘した点に対して、請求項1について補正事項E、H、Iの補正がなされた後の、「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子」及び「実施作業識別子が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び材料量識別子(4)に関連させて、表示できるようにしたこと」に関して、本件補正後の明細書の段落0012ないし0014及び0017ないし0026、図面の図2には次の記載がある。 以下本件補正後の請求項1及び同明細書を単に「請求項1」及び「明細書」という。 ア 明細書の段落0012ないし0014 「【0012】 各製造ユニット1はデータベースに登録されている識別子2を割当てられる。識別子2は図形や文字、または両者の組合せによって開示される。図1および図3はタンク車であるLORRY1、タンクであるT1,T10などのさまざまな識別子2を示している。これらの識別子2はプラントにとって多少ながら不変的であるが、プラントの適所にどの設備があるかに応じて乳業会社やジュース工場で異なる。 【0013】 液体食品の製造において、製品または材料はさまざまな嵩(体積)で取扱われる。これらの材料量3を識別することで、データベースに登録された識別子4を割当てることができる。材料量3は原料ミルク、低温殺菌済みミルクなどの或る種の製品5に関してはリットルまたはキロリットルで示された嵩または量6で定められる。これらの識別子4も図形または文字、または両者の組合せで与えられる。図2は、作業ID欄の下側に示された材料量の識別子4を示している。 【0014】 液体食品プラントで製品が製造されると、基本的にはさまざまな嵩すなわち量の材料量3が輸送される。輸送は、材料の全嵩すなわち材料量3や、その一部の場合を含む。これは実施作業7の数として定められ、さまざまな製造ユニット1の間で行われる輸送として説明することができる。実施作業7は移動元と移動先との間で行われ、移動元および移動先は異なる製造ユニットを含む。実施作業7はデータベースに登録され、独自の実施作業識別子を割当てられる。実施作業7は移動元の材料量の識別子4および移動先の材料量の識別子4に関連して登録される。実施作業7の識別子は図形または文字、または両者の組合せで与えられる。」 イ 明細書の段落0017ないし0026 「【0017】 図1では、各製造ユニット1は、それが製造で使用される度にファイルで示される。製造ユニット1は、識別子4の材料量がどのように輸送されたかに応じて、移動元および移動先の両方とすることができる。輸送、すなわち実施作業7は図1では2つのファイル間の線として示されている。 【0018】 図1の例は、タンクローリ車LORRY1が乳業会社へ進入する箇所の「樹形構造」を示している。タンクローリ車LORRY1のそのタンクは、原料ミルクである内容物を受入れ管R01に通してタンクT01へ排出して空にされる。或る量の原料ミルクを収容したタンクT01から、原料ミルクの容量の一部がさらに低温殺菌装置P1へ導かれる。殺菌後、殺菌済みミルクであるその材料はタンクT10へ送られる。タンクT01に残る材料量は他の低温殺菌装置P2へ送られ、そこからさらにタンクT11へ送られる。 【0019】 タンクT10に残る、また或る量の殺菌済みミルクで構成される材料量は図1に従えばさらに充填管FL601および充填機械FM601へ輸送され、そこで殺菌済みミルクは消費者用パッケージに包装される。 【0020】 プラントで取扱われる識別子4が割り当てられた全材料量3、および識別子が割り当てられた全ての実施作業7は特に適用されるデータベースに登録される。各実施作業7に関して、移動元および移動先がそれぞれのユニットの識別子2で、また、移動元および移動先のそれぞれの材料量の識別子4に関連して示される。このデータは図1および図3に示す「樹形構造」、または図2に示すような追跡レポートに与えられる。 【0021】 追跡レポート(図2)は質問に対する回答として示される。例としては、タンクT01は出発点として使用されている。このレポートは二つに分かれ、第一の部分はタンクT01の内容物がどこから送られたのかに関する情報を与える。第二の部分ではこの内容物がその後どこへ輸送されたかに関する情報が与えられる。第一の部分では、タンクT01は移動先とされ、第二の部分では移動元とされている。 【0022】 レポートのそれぞれの部分には作業IDすなわち材料量の識別子4と、ユニットの識別子2として示されたそれぞれ移動元および移動先との欄がある。また、レポートには輸送/実施作業7が行われた時間間隔、輸送された製品5、および量6ならびに実施作業7を意図した者の欄が備えられている。 【0023】 同様にいわゆる「樹形構造」とされた図3は、破線で示される時間軸線に関してのこの方法の利点を示している。例えば、乳業会社では低温殺菌装置の洗浄を介在させずに運転開始した低温殺菌装置P1を異なる多数の製品5に対して使用することが一般的であるので、「樹形構造」の異なる箇所の或る材料を追跡することは可能である。低温殺菌装置P1を通過した材料量3に製品5およびその各々の量6に応じて異なる材料量の識別子4を与えることが可能である。 【0024】 また材料量の識別子4で低温殺菌装置9の洗浄を示すことにより(作業ID)、さまざまに異なる製品5の識別子4の材料量が他の材料量と接点を有するか否かを簡単且つ信頼性を有して決定することができる。洗浄、すなわちCIP(適所洗浄)に係わる識別子4の材料量は移動元および移動先を有さない。 【0025】 液体食品プラントでの製品の流れおよび実施作業のシーケンスを与えるこれらの方法により、プラントのどこにあっても製品の内容物を製品の移動元および輸送された移動先の両方で追跡することが迅速且つ信頼性を有して可能になる。 【0026】 前述の説明から明白となるように、本発明は従来技術の方法における問題点や制限を現すことのない乳業会社やジュース工場での追跡方法を実現する。」 ウ 図面の図2 上記イの段落0020ないし0022の記載を参照すると、作業ID(材料量の識別子、材料量識別子4)が付された材料量3を、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット1におけるユニット識別子2に関連させて、表示できることが記載されている。 (2)以上の記載によれば、発明の詳細な説明には、「実施作業識別子」に関して以下の事項が記載されていることが把握できる。 ア 上記(1)アの段落0014及びイの段落0020の記載から、実施作業7(実施作業識別子)は移動元及び移動先のそれぞれの材料量の識別子(4)(材料量識別子(4))に関連してデータベースに登録される点。 イ 上記(1)ウから、材料量識別子(4)が付された材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)に関連させて、表示できるようにした点。 (3)上記(2)に記した各点から、発明の詳細な説明には、実施作業識別子は、移動元及び移動先のそれぞれの材料量識別子(4)に関連してデータベースに登録されることについては記載があるものの、実施作業識別子が、材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への「輸送材料量(3)」を示すことについては記載も示唆もされていない。 また、発明の詳細な説明には、材料量識別子(4)が付された材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)に関連させて、表示できるようにしたことについては記載があるものの、「実施作業識別子」が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び「材料量識別子(4)」に関連させて、表示できるようにしたことについては記載も示唆もされていない。 (4)小括 よって、本件補正によって、理由2指摘事項1に関して補正事項E、H、Iのとおり補正があったが、依然として、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しているとはいえない。 (5)付記 なお、補正事項Bに関して、材料量識別子(4)が割り当てられる液体食品製品の各材料量(3)を「各製造ユニット(1)に搬入される」ものとした点については、平成23年12月16日付けで通知した拒絶理由に対してなされたものではないが、一応の見解を示すと、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 3.理由3について (1)理由3指摘事項2ないし5として指摘した点に対して、補正前請求項1について補正事項E、H、Iの補正がなされた後の、「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子」及び「実施作業識別子が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び材料量識別子(4)に関連させて、表示できるようにしたこと」に関して、明細書の段落0012ないし0014には次の記載がある。 「【0012】 各製造ユニット1はデータベースに登録されている識別子2を割当てられる。識別子2は図形や文字、または両者の組合せによって開示される。図1および図3はタンク車であるLORRY1、タンクであるT1,T10などのさまざまな識別子2を示している。これらの識別子2はプラントにとって多少ながら不変的であるが、プラントの適所にどの設備があるかに応じて乳業会社やジュース工場で異なる。 【0013】 液体食品の製造において、製品または材料はさまざまな嵩(体積)で取扱われる。これらの材料量3を識別することで、データベースに登録された識別子4を割当てることができる。材料量3は原料ミルク、低温殺菌済みミルクなどの或る種の製品5に関してはリットルまたはキロリットルで示された嵩または量6で定められる。これらの識別子4も図形または文字、または両者の組合せで与えられる。図2は、作業ID欄の下側に示された材料量の識別子4を示している。 【0014】 液体食品プラントで製品が製造されると、基本的にはさまざまな嵩すなわち量の材料量3が輸送される。輸送は、材料の全嵩すなわち材料量3や、その一部の場合を含む。これは実施作業7の数として定められ、さまざまな製造ユニット1の間で行われる輸送として説明することができる。実施作業7は移動元と移動先との間で行われ、移動元および移動先は異なる製造ユニットを含む。実施作業7はデータベースに登録され、独自の実施作業識別子を割当てられる。実施作業7は移動元の材料量の識別子4および移動先の材料量の識別子4に関連して登録される。実施作業7の識別子は図形または文字、または両者の組合せで与えられる。」 (2)請求項1の「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子」の記載について検討する。 請求項1の「液体食品製品の各材料量(3)に材料量識別子(4)を割当てて」との記載によれば、「材料量(3)」が割り当てられる識別子は「材料量識別子」であるところ、「輸送材料量(3)」を示す「実施作業識別子」と「材料量識別子」との関係が不明である。 そこで、明細書の記載を参照すると、段落0013の「液体食品の製造において、製品または材料はさまざまな嵩(体積)で取扱われる。これらの材料量3を識別することで、データベースに登録された識別子4を割当てることができる。」の記載によれば、「材料量」が割り当てられる識別子は「材料量識別子」であり、また、段落0014の「実施作業7はデータベースに登録され、独自の実施作業識別子を割当てられる。実施作業7は移動元の材料量の識別子4および移動先の材料量の識別子4に関連して登録される。」の記載によれば、「実施作業識別子」は、移動元及び移動先の材料量識別子に関連するのであって、(輸送)材料量自体を示すものではない。 したがって、請求項1の記載を字義どおりに解そうとした場合に、「実施作業識別子」と「材料量識別子」との関係が不明であるところ、明細書の記載を参照しても、「実施作業識別子」は「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す」ものではないため、結局、「材料の移動元の各製造ユニット(1)から材料の移動先の各製造ユニット(1)への輸送材料量(3)を示す実施作業識別子」の記載は不明である。 (3)請求項1の「実施作業識別子が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び材料量識別子(4)に関連させて、表示できるようにしたこと」の記載について検討する。 当該記載中には、「実施作業識別子が示す輸送材料量(3)」との記載があるため、上記(2)でした検討と同様の理由によって、「実施作業識別子が示す輸送材料量(3)に関するデータを、材料の移動元及び移動先の各製造ユニット(1)におけるユニット識別子(2)及び材料量識別子(4)に関連させて、表示できるようにしたこと」の記載は不明である。 (4)小括 よって、本件補正によって、理由3指摘事項2ないし5に関して補正事項E、H、Iのとおり補正があったが、依然として、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しているとはいえない。 第6 むすび したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないことから、特許法第17条の2第3項の規定を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が、同法第36条第6項第1号及び第2号に適合しているとはいえず、同条同項に規定する要件を満たしているとはいえないから、本願は、特許法第49条第1号及び第4号に該当し、同条柱書きの規定により拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-14 |
結審通知日 | 2012-08-17 |
審決日 | 2012-08-28 |
出願番号 | 特願2004-551339(P2004-551339) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G05B)
P 1 8・ 55- WZ (G05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関 義彦 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
藤井 眞吾 菅澤 洋二 |
発明の名称 | 液体食品プラントにおける製品の追跡方法 |
代理人 | 吉田 裕 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 森 徹 |
代理人 | 浅村 肇 |