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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1268724
審判番号 不服2009-22883  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2013-01-09 
事件の表示 特願2007-515832「化粧用製品および皮膚用製品における染料の安定化」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月29日国際公開、WO2005/123013、平成20年 1月31日国内公表、特表2008-502623〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年6月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2004年6月15日,独国)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由通知に応答して平成21年4月6日付けで意見書が提出されたが、平成21年7月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年11月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願請求項1?11に係る発明は、願書に最初に添付された請求の範囲(即ち、特許法第184条の5第1項の規定による書面に添付された、外国語でされた国際出願の国際出願日の請求の範囲の翻訳文)の請求項1?11に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められるところ、そのうち請求項8に係る発明(以下、「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。
「【請求項8】
少なくとも1種の有機染料および式I
【化3】

のアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノン化合物を含む化粧用製品または皮膚用製品。」

3.引用例
原査定の拒絶理由に引用された本願優先日前の刊行物である特開2003-95850号公報(以下、「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
(i)「【請求項1】 下記式Iのアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノンを含む、O/W型エマルションの形態の化粧用または皮膚用製剤。
【化1】

」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照)
(ii)「【0104】当然のことながら、必要とされる化粧品組成物はほとんどの場合、通常の補助剤および添加剤を加えずには考えられないということは、当業者であればわかる。例えば、増粘剤、充填剤、芳香剤、色素、乳化剤、ビタミン類およびタンパク質類などの別の有効成分、光保護剤、安定剤、防虫剤、アルコール、自己日焼け(self-tanning)物質、水、塩類、抗菌活性物質、タンパク質分解活性物質または角質溶解活性物質などがある。
【0105】・・・中略・・・。
【0106】従って、組成に応じて本発明の目的に対する化粧用製剤または局所皮膚用製剤は、例えば皮膚保護クリーム、クレンジング乳液、日焼け止めローション、栄養クリーム、デイクリームまたはナイトクリームなどとして用いることができる。場合によっては、本発明による組成物を、医薬製剤用基剤として用いることが可能および有利である。」(段落【0104】?【0106】参照)
(iii)「【0296】場合によっては、本発明による製剤に色素および/または着色顔料を組み込むことが、本発明に関して有利な場合もある。
【0297】色素および着色顔料は、化粧品通達(the Cosmetics Directive)の相当するポジティブ・リストまたは化粧品用着色剤のECリストから選択することができる。ほとんどの場合それらは、食品用に承認されている色素と同一である。有利な着色顔料は、例えば酸化チタン、マイカ、酸化鉄類(例:Fe_(2)O_(3)、Fe_(3)O_(4)、FeO(OH))および/または酸化スズである。有利な色素は、例えばカルミン、ベルリンブルー、酸化クロムグリーン、群青および/またはマンガン・バイオレットである。下記のリストから色素および/または着色顔料を選択することが特に有利である。色指数(CIN)は、文献から引用したものである(the Rowe ColourIndex, 3rd Edition, Society of Dyers and Colourists, Bradford, England,1971)。
【0298】
【表7】

色素として、下記の群から1以上の物質を選択することが好ましい場合もある。すなわち、2,4-ジヒドロキシアゾベンゼン、1-(2′-クロロ-4′-ニトロ-1′-フェニルアゾ)-2-ヒドロキシナフタレン、セレス赤、2-(4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-1-ナフトール-4-スルホン酸、2-ヒドロキシ-1,2′-アゾナフタレン-1′-スルホン酸のカルシウム塩、1-(2-スルホ-4-メチル-1-フェニルアゾ)-2-ナフチルカルボン酸のカルシウム塩およびバリウム塩、1-(2-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2-ヒドロキシナフタレン-3-カルボン酸のカルシウム塩、1-(4-スルホ-1-フェニルアゾ)-2-ナフトール-6-スルホン酸のアルミニウム塩、1-(4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸のアルミニウム塩、1-(4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2-ナフトール-6,8-ジスルホン酸、4-(4-スルホ-1-フェニルアゾ)-1-(4-スルホフェニル)-5-ヒドロキシピラゾロン-3-カルボン酸のアルミニウム、4,5-ジブロモフルオレセインのアルミニウム塩およびジルコニウム塩、2,4,5,7-テトラブロモフルオレセインのアルミニウム塩およびジルコニウム塩、3′,4′,5′,6′-テトラクロロ-2,4,5,7-テトラブロモフルオレセインおよびそれのアルミニウム塩、2,4,5,7-テトラヨードフルオレセインのアルミニウム塩、キノフタロン・ジスルホン酸のアルミニウム、インジゴジスルホン酸のアルミニウム塩、赤色および黒色の酸化鉄(CIN:77491(赤)および77499(黒))、酸化鉄水和物(CIN:77492)、マンガンアンモニウムジホスフェートおよび酸化チタンである。
【0299】油溶性天然色素、例えばパプリカ抽出物、β-カロチンまたはコチニールも有利である。」(段落【0296】-【0299】参照)
(iv)「【0312】
【実施例】以下、実施例(製剤配合表)を参照しながら本発明についてさらに詳細に説明する。
【0313】実施例1?3
O/W型エマルション
【表9】

実施例4?6
O/W型エマルション
【表10】

実施例7?9
O/W型エマルション
【表11】

実施例10?13
O/W型エマルション
【表12】

」(段落【0313】参照)
(v)「【0046】
【課題を解決するための手段】本発明による製剤は、下記式Iのアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノンを含む。
【0047】
【化2】

この種類の物質は、特にDE-A-19917906に記載されている。化合物Iは特に、油に対する良好な溶解性、化粧用製剤への良好な加工性および皮膚に対する良好な感触を特徴とする。」(段落【0047】参照)

4.対比、判断
引用例には、上記「3.」の摘示からみて、特に(i),(ii)の摘示、及び、摘示(iii)に色素を組み込むことが有利な場合があると説明され、摘示(iv)の実施例3,6,7,8,10,13において化合物I(摘示(v)の記載並びに引用例記載の全主旨からみて、式Iの化合物と解される)とともに「色素(水溶性および/または油溶性)」が配合されていることに鑑み、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。
「下記式Iのアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノン、及び色素(水溶性および/または油溶性)を含む、O/W型エマルションの形態の化粧用または皮膚用製剤。



そこで、本願発明と引用例発明を対比する。
(a)引用例発明の「下記式Iのアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノン」は、その式Iの化学構造式から明らかなように、本願発明の「式Iのアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノン化合物」と一致する。なお、ジエチルアミノ基のエチル基の表示が少しだけ異なっているのは、単に化学構造式の表現の差異にすぎない。
(b)引用例発明の「化粧用または皮膚用製剤」は、「例えば皮膚保護クリーム、クレンジング乳液、日焼け止めローション、栄養クリーム、デイクリームまたはナイトクリームなどとして用いることができる。」(摘示(ii)参照)とされていることからみて、本願発明の「化粧用製品または皮膚用製品」に相当することは明らかである。
(c)引用例発明の「色素(水溶性および/または油溶性)」について検討すると、引用例では色素と着色顔料は別扱いとされている(摘示(iii)の段落【0297】参照)こと、仮に一部に無機系の色素があり得るとしても、引用例の色素の例示(摘示(iii)の段落【0298】?【0299】の表7等参照)は大部分が有機色素であること、そして、水溶性、油溶性である色素は通常染料と称されるとともに、染料は例外なく有機物であること(例えば、化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典5 縮刷版」、共立出版株式会社、昭和53年9月10日、縮刷版第22刷発行、第480?482頁の「せんりょう 染料」の項を参照)、また、引用例発明の「色素」として表7等(摘示(iii)参照)に例示されている色素の多くは、本願明細書段落【0011】や【0019】に「有機染料」として例示される物質と重複している(例えば、リコペン、カンタキサンチン、β-カロチン(本願明細書のβ-カロテン)、コチニール、キノフタロンジスルホン酸(CIN47005、本願明細書のキノリンイエロー-E104)など)ことから、引用例発明の「色素(水溶性および/または油溶性)」は、本願発明の「有機染料」と重複するものと言える。
(d)引用例発明では、「O/W型エマルションの形態」と特定されているが、本願発明では、その使用形態について格別の限定がされているわけではないから、その特定によって両発明に実質的な相違があるわけではない。

そうすると、本願発明と引用例発明との間に発明特定事項の差異は認められないから、本願発明は、引用例に記載された発明であると言える。

ところで、請求人は、意見書や審判請求理由において、引用例には請求項8に記載したような製品は記載されていない旨を主張するが、上記のとおりであり、該主張を採用できないことは明らかである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-09 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-29 
出願番号 特願2007-515832(P2007-515832)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼岡 裕美  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 関 美祝
小川 慶子
発明の名称 化粧用製品および皮膚用製品における染料の安定化  
代理人 石井 貞次  
代理人 藤田 節  
代理人 平木 祐輔  
代理人 新井 栄一  

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