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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1268948 |
審判番号 | 不服2010-2647 |
総通号数 | 159 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-08 |
確定日 | 2013-01-15 |
事件の表示 | 特願2004-508166「安定化させたポリプロピレン」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 4日国際公開、WO2003/99918、平成17年 9月15日国内公表、特表2005-527679〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成15年5月27日(パリ条約による優先権主張 2002年5月27日 英国、2002年12月24日 英国)を国際出願日とする特許出願であって、平成20年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年10月16日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成21年10月2日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成22年2月8日に拒絶査定に対する審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年3月19日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年9月21日付けで前置報告がなされ、当審において平成23年12月21日付けで審尋がなされ、平成24年1月5日に回答書が提出されたものである。 第2.補正の却下の決定 [結論] 平成22年2月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.手続補正の内容 平成22年2月8日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、平成20年10月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲である、 「 【請求項1】 (A) ポリプロピレン 及び (B) 下記の成分からなる安定化用配合物: (a)ポリプロピレンの重量を基準に50?100ppmの1種のフェノール性抗酸化剤又はフェノール性抗酸化剤の混合物からなる第1安定剤成分; (b)ポリプロピレンの重量を基準に500?1000ppmの1種のホスファイト抗酸化剤又はホスファイト抗酸化剤の混合物からなる第2安定剤成分 を含み、フェノール性抗酸化剤対ホスファイト抗酸化剤の比が重量比で1:10?1:20の範囲内である、ポリプロピレン組成物。 【請求項2】 (A) ポリプロピレン 及び (B) 下記の成分からなる安定化用配合物: (a)ポリプロピレンの重量を基準に50?100ppmの1種のフェノール性抗酸化剤又はフェノール性抗酸化剤の混合物からなる第1安定剤成分; (b)ポリプロピレンの重量を基準に500?1000ppmの1種のホスファイト抗酸化剤又はホスファイト抗酸化剤の混合物からなる第2安定剤成分; (c)ポリプロピレンの重量を基準に100ppm?5000ppmの1種のヒンダードアミン光安定剤又はそのような安定剤の混合物からなる第3安定剤成分 を含み、フェノール性抗酸化剤対ホスファイト抗酸化剤の比が重量比で1:10?1:20の範囲内である、ポリプロピレン組成物。 【請求項3】 前記組成物がポリプロピレン繊維の形態である請求項1又は2に記載のポリプロピレン組成物。 【請求項4】 フェノール性抗酸化剤がヒンダードフェノール抗酸化剤である請求項1?3のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。 【請求項5】 フェノール性抗酸化剤が、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン; 2,2'-メチレンビス (6-t-ブチル-4-メチルフェノール); 4,4'-ブチリデンビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール); 2,2'-イソブチリデンビス (4,6-ジメチルフェノール); 1,1,3-トリス (2'-メチル-4'-ヒドロキシ-5'-t-ブチルフェニル)ブタン; 2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン; 2,2'-メチレンビス[4-メチル-6-(1-メチルシクロヘキシル)フェノール; 4,4'-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール); 2,2'-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)及びトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェノール)プロピオネートの少なくとも一つから選択される請求項1?4のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。 【請求項6】 ホスファイト抗酸化剤が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス (2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;並びにテトラキス(2,4-ジ-ブチルフェニル)-4,4'ビスフェニレンジホスホナイト及びビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの少なくとも一つから選択される請求項1?5のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。 【請求項7】 ヒンダードアミン光安定剤が、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとジメチルサクシネートとからなるポリマー;ポリ((6-((1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ)-s-トリアジン-2,4ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)));及びN^(I),N^(II),N^(III),N^(IV)-テトラキス(2,4-ビス(N-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-n-ブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン-6-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンの少なくとも一つから選択される請求項2?6のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。 【請求項8】 ポリプロピレン組成物中に、請求項1に記載の成分(a)及び成分(b)を含む少なくとも一つの混合物を配合することを含むポリプロピレン組成物の安定化方法。 【請求項9】 ポリプロピレン組成物を安定化するための請求項1に記載の成分(a)及び成分(b)を含む少なくとも一つの混合物を含む配合物の使用。 【請求項10】 請求項1に記載の成分(a)及び成分(b)を含む少なくとも一つの混合物を含むポリプロピレン組成物のための安定化用配合物。 【請求項11】 ポリプロピレン組成物中に、請求項2に記載の成分(a)、成分(b)成分(c)全てを含む少なくとも一つの混合物を配合することを含むポリプロピレン組成物の安定化方法。 【請求項12】 ポリプロピレン組成物を安定化するための請求項2に記載の成分(a)、成分(b)及び成分(c)全てを含む少なくとも一つの混合物を含む配合物の使用。 【請求項13】 請求項2に記載の成分(a)、成分(b)及び成分(c)全てを含む少なくとも一つの混合物を含むポリプロピレン組成物のための安定化用配合物。」 を、 「 【請求項1】 (A) ポリプロピレン 及び (B) 下記の成分からなる粉末添加剤パッケージ: (a)前記ポリプロピレンの重量を基準に50?100ppmの、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン; 4,4'-ブチリデンビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール); 2,2'-イソブチリデンビス (4,6-ジメチルフェノール); 2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン; 4,4'-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール); 2,2'-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)及びトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネートからなる群から選択される1種のフェノール性抗酸化剤又はフェノール性抗酸化剤の混合物からなる第1安定剤成分; (b)前記ポリプロピレンの重量を基準に500?1000ppmの、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス (2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;テトラキス(2,4-ジ-ブチルフェニル)-4,4'ビスフェニレンジホスホナイト;及びビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、並びにその混合物からなる群から選択される1種のホスファイト抗酸化剤又はホスファイト抗酸化剤の混合物からなる第2安定剤成分 を含み、フェノール性抗酸化剤対ホスファイト抗酸化剤の比が重量比で1:10?1:20の範囲内であり、上記粉末添加剤パッケージを粉末形態でポリプロピレンに添加する、ポリプロピレン組成物。 【請求項2】 (A) ポリプロピレン 及び (B) 下記の成分からなる粉末添加剤パッケージ: (a)前記ポリプロピレンの重量を基準に50?100ppmの、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン; 4,4'-ブチリデンビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール); 2,2'-イソブチリデンビス (4,6-ジメチルフェノール); 2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン; 4,4'-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール); 2,2'-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)及びトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネートからなる群から選択される1種のフェノール性抗酸化剤又はフェノール性抗酸化剤の混合物からなる第1安定剤成分; (b)前記ポリプロピレンの重量を基準に500?1000ppmの、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス (2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;テトラキス(2,4-ジ-ブチルフェニル)-4,4'ビスフェニレンジホスホナイト;及びビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、並びにその混合物からなる群から選択される1種のホスファイト抗酸化剤又はホスファイト抗酸化剤の混合物からなる第2安定剤成分; (c)前記ポリプロピレンの重量を基準に100ppm?5000ppmの1種のヒンダードアミン光安定剤又はそのような安定剤の混合物からなる第3安定剤成分 を含み、フェノール性抗酸化剤対ホスファイト抗酸化剤の比が重量比で1:10?1:20の範囲内であり、上記粉末添加剤パッケージを粉末形態でポリプロピレンに添加する、ポリプロピレン組成物。 【請求項3】 前記組成物がポリプロピレン繊維の形態である請求項1又は2に記載のポリプロピレン組成物。 【請求項4】 前記ヒンダードアミン光安定剤が、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとジメチルサクシネートとからなるポリマー;ポリ((6-((1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ)-s-トリアジン-2,4ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)));及びN^(I),N^(II),N^(III),N^(IV)-テトラキス(2,4-ビス(N-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-n-ブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン-6-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンの少なくとも一つから選択される請求項2又は3に記載のポリプロピレン組成物。 【請求項5】 ポリプロピレン組成物中に、請求項1に記載の成分(a)及び成分(b)を含む少なくとも一つの粉末添加剤パッケージを配合することを含むポリプロピレン組成物の安定化方法。 【請求項6】 ポリプロピレン組成物を安定化するための請求項1に記載の成分(a)及び成分(b)を含む少なくとも一つの粉末添加剤パッケージを含む配合物の使用。 【請求項7】 請求項1に記載の成分(a)及び成分(b)を含む少なくとも一つの粉末添加剤パッケージを含むポリプロピレン組成物のための安定化用配合物。 【請求項8】 ポリプロピレン組成物中に、請求項2に記載の成分(a)、成分(b)成分(c)全てを含む少なくとも一つの粉末添加剤パッケージを配合することを含むポリプロピレン組成物の安定化方法。 【請求項9】 ポリプロピレン組成物を安定化するための請求項2に記載の成分(a)、成分(b)及び成分(c)全てを含む少なくとも一つの粉末添加剤パッケージを含む配合物の使用。 【請求項10】 請求項2に記載の成分(a)、成分(b)及び成分(c)全てを含む少なくとも一つの粉末添加剤パッケージを含むポリプロピレン組成物のための安定化用配合物。 」 とする補正であって、 補正後の特許請求の範囲の請求項1、2に、発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)として「粉末添加剤パッケージを粉末形態でポリプロピレンに添加する」点を付加する補正事項を含んでいる。 2.本件手続補正の適否について 補正前の特許請求の範囲は、ポリプロピレンへの添加手法に係る事項について、何ら特定するものではないから、上記補正事項は、新たな発明特定事項を付加するものであって、補正前の発明特定事項をさらに限定したもの、いわゆる「限定的減縮」にあたるということはできない。 さらに、上記補正事項が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものでもないことは明らかである。 したがって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 平成22年2月8日付けの手続補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成20年10月16日提出の手続補正書によって補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。 「(A) ポリプロピレン 及び (B) 下記の成分からなる安定化用配合物: (a)ポリプロピレンの重量を基準に50?100ppmの1種のフェノール性抗酸化剤又はフェノール性抗酸化剤の混合物からなる第1安定剤成分; (b)ポリプロピレンの重量を基準に500?1000ppmの1種のホスファイト抗酸化剤又はホスファイト抗酸化剤の混合物からなる第2安定剤成分 を含み、フェノール性抗酸化剤対ホスファイト抗酸化剤の比が重量比で1:10?1:20の範囲内である、ポリプロピレン組成物。」 第4.原査定における拒絶の理由の概要 原査定は、「この出願については、平成20年4月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由1および2によって、拒絶をすべきもの」である。 そのうち、平成20年4月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由1は、この出願に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものであり、引用文献として、以下の刊行物が提示されている。 2.特開平11-315177号公報 第5.当審の判断 1.引用刊行物 特開平11-315177号公報(原査定の引用文献2) 2.引用刊行物の記載事項 ア 「【請求項2】下記の成分からなるポリプロピレン樹脂組成物。 (A)ポリプロピレン系樹脂100重量部、(B)(B1)下記式(I)又は式(II)で示されるフェノール系酸化防止剤と(B2)トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ピフェニレンジホスファイト、〔ビス(2,4-ジ第3級-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィノ〕ビフェニルの中から選ばれるリン系酸化防止剤からなり、(B1)と(B2)の重量比が19:1?1:19である酸化防止剤0.001?1重量部、及び 【化3】 (式中、R_(1),R_(2)は水素原子、炭素数1?18のアルキル基又は炭素数3?18のアルケニル基を示す。X_(1)は有機残基を示す。) 【化4】 (式中、R_(3),R_(4)は水素原子、炭素数1?18のアルキル基又は炭素数3?18のアルケニル基を示す。X_(2)は有機残基を示す。) (C)ヒンダードアミン系光安定剤0.05?5重量部 【請求項3】式(II)で表されるフェノール系酸化防止剤が1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸である請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」(請求項2、3) なお、摘示アには、請求項2における(B2)のリン系酸化防止剤として「テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ピフェニレンジホスファイト」との記載があるが、当該記載中の「ピフェニレン」は「ビフェニレン」の誤記と認められる。 イ 「〔2-2〕特定のフェノール系酸化防止剤と特定のリン系酸化防止剤の併用 本発明では、特定のフェノール系酸化防止剤と特定のリン系酸化防止剤を併用して用いることができる。いわゆる併用効果により、単独使用以上の効果が期待でき、前記した有機過酸化物で分解させたポリプロピレン系樹脂に対して特に有効である。有機過酸化物を使ってポリマーを分解させる時にはより強力な劣化防止剤が必要であるからである。 ・・・ 本発明においては、後述するヒンダードアミン系光安定剤の存在下で前記ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、特定のフェノール系酸化防止剤と特定のリン系酸化防止剤の重量比が19:1?1:19である酸化防止剤0.01?1重量部、更に好ましくは0.02?0.3重量部の割合で配合した樹脂組成物が用いられる。両酸化防止剤の合計量が0.01重量部より少なければ熱劣化による分子量低下が大きくなり、1重量部より多ければ経時的着色度合いの低減に限度が出てくる。 又、特定のフェノール系酸化防止剤の特定のリン系酸化防止剤に対する比率が1:19より小さければ熱劣化による分子量低下が大きくなり、同比率が19:1より多きければ経時的着色度合いの低減に限度が出てくる。」(【0081】?【0084】) 3.引用刊行物に記載された発明 摘示ア、イの記載からみて、引用刊行物には、 「下記の成分からなるポリプロピレン樹脂組成物。 (A)ポリプロピレン系樹脂100重量部、(B)(B1)下記式(I)又は式(II)で示されるフェノール系酸化防止剤と(B2)トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスファイト、〔ビス(2,4-ジ第3級-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィノ〕ビフェニルの中から選ばれるリン系酸化防止剤からなり、(B1)と(B2)の重量比が19:1?1:19である酸化防止剤0.001?1重量部、及び 【化3】 (式中、R_(1),R_(2)は水素原子、炭素数1?18のアルキル基又は炭素数3?18のアルケニル基を示す。X_(1)は有機残基を示す。) 【化4】 (式中、R_(3),R_(4)は水素原子、炭素数1?18のアルキル基又は炭素数3?18のアルケニル基を示す。X_(2)は有機残基を示す。) (C)ヒンダードアミン系光安定剤0.05?5重量部」に係る発明(以下、「引用刊行物発明」という。)が記載されているといえる。 4.本願発明1と引用刊行物発明との対比 本願発明1と引用刊行物発明とを対比すると、引用刊行物発明の「(A)ポリプロピレン系樹脂」、「(B1)下記式(I)又は式(II)で示されるフェノール系酸化防止剤(式(I)、式(II)及び式の説明は省略。)」及び「(B2)トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスファイト、〔ビス(2,4-ジ第3級-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィノ〕ビフェニルの中から選ばれるリン系酸化防止剤」が、それぞれ、本願発明1における「ポリプロピレン」、「フェノール性抗酸化剤又はフェノール性抗酸化剤の混合物からなる第1安定剤成分」及び「ホスファイト抗酸化剤又はホスファイト抗酸化剤の混合物からなる第2安定剤成分」に相当することは明らかであり、引用刊行物発明における(B1)及び(B2)からなる(B)の「酸化防止剤」は、本願発明1の「安定化用配合物」に相当する。 また、引用刊行物発明における(B)の配合量、すなわち、(B1)と(B2)との合計配合量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し0.001?1重量部、すなわち、10?10000ppmであるから、かかる(B)の配合量及び(B1)と(B2)との重量比が19:1?1:19であることからみて、引用刊行物発明における(B1)の配合量、(B2)の配合量、及び、(B1)と(B2)との重量比は、それぞれ、本願発明1における第1安定剤成分の配合量である50?100ppm、第2安定剤成分の配合量である500?1000ppm、及び、フェノール性抗酸化剤対ホスファイト抗酸化剤の比が重量比で1:10?1:20の範囲内であるものと、重複一致している部分を有することは明らかである。 したがって、両者は、 「(A) ポリプロピレン 及び (B) 下記の成分からなる安定化用配合物: (a)ポリプロピレンの重量を基準に50?100ppmの1種のフェノール性抗酸化剤又はフェノール性抗酸化剤の混合物からなる第1安定剤成分; (b)ポリプロピレンの重量を基準に500?1000ppmの1種のホスファイト抗酸化剤又はホスファイト抗酸化剤の混合物からなる第2安定剤成分 を含み、フェノール性抗酸化剤対ホスファイト抗酸化剤の比が重量比で1:10?1:20の範囲内である、ポリプロピレン組成物。」 である点で一致している。 そうすると、本願発明1と引用刊行物発明とは、実質的な相違点がない。 5.まとめ したがって、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 第6.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものである。 したがって、請求項2?13に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-21 |
結審通知日 | 2012-08-22 |
審決日 | 2012-09-04 |
出願番号 | 特願2004-508166(P2004-508166) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C08L)
P 1 8・ 113- Z (C08L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉備永 秀彦 |
特許庁審判長 |
田口 昌浩 |
特許庁審判官 |
富永 久子 小野寺 務 |
発明の名称 | 安定化させたポリプロピレン |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 松本 謙 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 小野 新次郎 |