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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A45D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1268953
審判番号 不服2011-11613  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-01 
確定日 2013-01-15 
事件の表示 特願2008-507618号「格納式アプリケータ・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月2日国際公開、WO2006/115510、平成20年9月11日国内公表、特表2008-536615号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年6月28日(パリ条約による優先権主張 2005年4月22日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月6日付けで手続補正がなされた後に、同年1月26日付けで拒絶査定がなされたところ、同査定を不服として同年6月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成23年6月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年6月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
平成23年6月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「口唇ケア製品をユーザの衣服に格納自在に緊定するシステムであって、前記システムは、
中に内部スペースが形成され、口唇ケア物質を収容するアプリケータと、
前記ユーザの身体から離れる前記アプリケータの選択的な動きを可能にする方式で、前記アプリケータを前記ユーザの衣服に着脱自在に取り付ける格納装置アセンブリとを含み、
前記アプリケータは、第1端部にベース部分を含み、第2端部に分与部分を含み、前記内部スペースは、前記ベース部分から取り除くことができないようになっており、
前記格納装置アセンブリは、前記アプリケータの前記ベース部分に直接接続されており、前記アプリケータが前記格納装置アセンブリの下方に自由に吊り下げられたとき、前記ベース部分が、前記分与部分よりも前記格納装置アセンブリの近くに位置付けられ、前記分与部分が前記ベース部分よりも下方に位置付けられるようになっており、
前記ベース部分が、前記格納装置アセンブリを前記アプリケータに結合させるのを容易にする、前記ベース部分を貫いて延びるボアを画定しており、前記ボアが、前記ベース部分の長手軸に対してほぼ垂直に延びており、前記ベース部分が、前記ボアと前記内部スペースとの間の連通を阻止する、システム。」(下線部は補正個所を示す。)

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ベース部分」について、「前記ベース部分が、前記格納装置アセンブリを前記アプリケータに結合させるのを容易にする、前記ベース部分を貫いて延びるボアを画定しており、前記ボアが、前記ベース部分の長手軸に対してほぼ垂直に延びており、前記ベース部分が、前記ボアと前記内部スペースとの間の連通を阻止する」との限定事項を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)、以下検討する。

3-1.引用例に記載された発明
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開平9-289919号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(イ)「【請求項1】 スティック形のリップクリームを保持するためのホルダー部と当該ホルダー部に設けられた係止部とからなるリップクリームホルダー。」(【特許請求の範囲】)
(ロ)「【従来の技術】
一般に、スティック形のリップクリームを持ち歩く時には、そのままポケットやカバンの中等に入れていた。」(段落【0002】)
(ハ)「【発明が解決しようとする課題】
失くし易い上に、おしゃれ感がなかった。また、カバンの中等に入れてしまうと、使用の度に出し入れしなければならず面倒であり、リップクリームは小さいので下の方に入ってしまうと見付けるのも面倒であった。
本発明は、以上の欠点を解決するためになされたものである。」(段落【0003】)
(ニ)「【発明の実施の形態】
本発明を使用する場合には、例えば、ホルダー部にスティック形のリップクリームを入れて保持し、係止部として設けられたネックレス部を首に掛けて携帯する。」(段落【0005】)
(ホ)「また、係止部としてキーホルダー4が設けられているので、外出の際等にリップクリーム8をバッグの持ち手等にぶら下げておけば、使用の度にいちいちバッグから取り出す必要も無く、すぐに使える。また、キーホルダー4に鍵を付けておけるのは勿論、バッグの中等に入れた時でも、リップクリーム8だけをバッグの中等に入れた場合よりも見つけ易い。」(段落【0009】)
(ヘ)「図15には実施例5の斜視を示し、図16には図15中のXVI矢視を示し、図17には図16中のA-A断面を示し、図18には同実施例の使用時の正面を示してある。
これらの図に示したように、本実施例では、スティック形のリップクリーム8に着脱自在に固定してリップクリーム8を保持するためのホルダー部1は、底部1bの有る円筒形状のプラスチック製で、図18に示したように、リップクリーム8の蓋8b付近は覆われない深さになっている。ホルダー部1の内側の2箇所には、図17で、爪状に延びて下方に向けて張り出した押さえ手段2がホルダー部1に一体的に設けられている。押さえ手段2は、ホルダー部1に入れたリップクリーム8の太さに応じて、図17で、ホルダー部1との間の隙間の幅が変化する弾性を有し、内側に戻る弾力がバネの役目をして、ホルダー部1に入れたリップクリーム8を押さえて落ちないように保持する。また、本実施例のホルダー部1には透かし模様が施されて装飾的にデザインされているのでアクセサリー感覚でおしゃれに持つことができる。
また、ホルダー部1には係止部としてキーホルダー4が設けられている。尚、押さえ手段2に実施例1のような、ねじりコイル形のスプリング3等を設けて、より強力に押さえられるようにしてもよい。
」(段落【0014】?【0016】)
(ト)「図19には実施例6の斜視を示し、図20には同実施例の使用時の正面を示してある。これらの図に示したように、本実施例では、スティック形のリップクリーム8を入れて保持するためのホルダー部1は、底部1bの有るプラスチック製で、図19で左方がタコ足形状になって押さえ手段2となっている。押さえ手段2の端になる入口1cは、リップクリーム8の太さより狭くなっており、リップクリーム8の太さに応じて広がる弾性を有していると共に、内側に戻る力で付勢して、リップクリーム8を押さえて落ちないように保持する。
また、ホルダー部1には、係止部としてネックレス部5が設けられている。ホルダー部1は、図20に示したように、リップクリーム8の蓋8b付近を覆わない深さになっている。」(段落【0017】?【0018】)
(チ)「【発明の効果】
本発明のリップクリームホルダーによれば、失くす心配が少ない上、携帯に便利で、かつ、すぐに使うことができる。さらに、装飾的にデザインされたものでは、アクセサリーにもなりおしゃれである。」(段落【0028】)

(リ)「【図15】 【図16】 【図17】 【図18】


(ヌ)「【図19】 【図20】



[(リ)【図15】?【図18】に示される実施例5について]
上記(イ)の記載事項「・・スティック形のリップクリームを保持するためのホルダー部と当該ホルダー部に設けられた係止部とからなるリップクリームホルダー。」、上記(ホ)の記載事項「・・係止部としてキーホルダー4が設けられているので、外出の際等にリップクリーム8をバッグの持ち手等にぶら下げておけば・・」、上記(ヘ)の記載事項「・・本実施例では、スティック形のリップクリーム8に着脱自在に固定してリップクリーム8を保持するためのホルダー部1は、底部1bの有る円筒形状のプラスチック製で、図18に示したように、リップクリーム8の蓋8b付近は覆われない深さになっている。・・・・ホルダー部1には係止部としてキーホルダー4が設けられている。・・」、及び上記(リ)の図示内容を併せみれば、実施例5のリップクリームホルダーは、リップクリーム8をバッグの持ち手等にぶら下げるリップクリームホルダーであって、底部1bの有る円筒形状であり、リップクリーム8を内側に入れて保持するホルダー部1と、ホルダー部1をバッグの持ち手等に係止するキーホルダー4とを含むといえる。
そして、前記リップクリームホルダーにおいて、「ホルダー部1」の「底部1b」を除いた部位を『周面部』と定義すれば、ホルダー部1は、第1端部に底部1bを含み、第2端部に『周面部』を含み、底部1bと『周面部』によりホルダー部1の中に内部空間が形成されるといえる。
また、上記(リ)の図示内容からして、前記リップクリームホルダーは、キーホルダー4が、ホルダー部1の底部1bに直接接続されており、前記ホルダー部1が前記キーホルダー4の下方に自由にぶら下げられたとき、前記底部1bが、『周面部』よりも前記キーホルダー4の近くに位置付けられ、前記『周面部』が前記底部1bよりも下方に位置付けられるようになっているといえる。
さらに、上記(リ)の図示内容からして、前記リップクリームホルダーは、底部1bが、穴を有するリングと接続され、前記穴が、前記底部1bの厚み方向に対してほぼ垂直に延びているといえる。

[(ヌ)【図19】及び【図20】に示される実施例6について]
上記(イ)の記載事項「・・スティック形のリップクリームを保持するためのホルダー部と当該ホルダー部に設けられた係止部とからなるリップクリームホルダー。」、上記(ニ)の記載事項「・・本発明を使用する場合には、例えば、ホルダー部にスティック形のリップクリームを入れて保持し、係止部として設けられたネックレス部を首に掛けて携帯する。」、上記(ト)の記載事項「・・本実施例では、スティック形のリップクリーム8を入れて保持するためのホルダー部1は、底部1bの有るプラスチック製で、図19で左方がタコ足形状になって押さえ手段2となっている。押さえ手段2の端になる入口1cは、・・・・リップクリーム8を押さえて落ちないように保持する。また、ホルダー部1には、係止部としてネックレス部5が設けられている。・・」、及び上記(ヌ)の図示内容を併せみれば、実施例6のリップクリームホルダーは、リップクリーム8を首に掛けて携帯するリップクリームホルダーであって、リップクリーム8を内側に入れて保持するホルダー部1と、前記ホルダー部1に付設され首に掛けるネックレス部5とを含むといえる。

したがって、上記(イ)?(ヌ)の記載事項及び図示内容のうち、実施例5に関する記載事項及び図示内容を総合し整理すると、引用例1には、
「リップクリーム8をバッグの持ち手等にぶら下げるリップクリームホルダーであって、前記リップクリームホルダーは、
中に内部空間が形成され、リップクリーム8を内側に入れて保持するホルダー部1と、
前記ホルダー部1をバッグの持ち手等に係止するキーホルダー4とを含み、
前記ホルダー部1は、第1端部に底部1bを含み、第2端部に『周面部』を含み、前記内部空間は、前記底部1bと前記『周面部』により形成され、
前記キーホルダー4は、前記ホルダー部1の前記底部1bに直接接続されており、前記ホルダー部1が前記キーホルダー4の下方に自由にぶら下げられたとき、前記底部1bが、前記『周面部』よりも前記キーホルダー4の近くに位置付けられ、前記『周面部』が前記底部1bよりも下方に位置付けられるようになっており、
前記底部1bが、穴を有するリングと接続され、前記穴が、前記底部1bの厚み方向に対してほぼ垂直に延びている、リップクリームホルダー。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

また、同じく上記(イ)?(ヌ)の記載事項及び図示内容のうち、実施例6に関する記載事項及び図示内容を総合し整理すると、引用例1には、
「リップクリーム8を首に掛けて携帯するリップクリームホルダーであって、前記リップクリームホルダーは、
リップクリーム8を内側に入れて保持するホルダー部1と、
前記ホルダー部1に付設され首に掛けるネックレス部5とを含む、リップクリームホルダー。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開平10-248622号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ル)「【請求項1】 紐状体巻き戻し機能を有する本体、該本体に設けられた本体固定具、及び本体内に巻き戻し可能に取付けられた紐状体の先端部に固定された物品把持具を有することを特徴とする物品の係留具」(【特許請求の範囲】)
(ヲ)「【従来の技術】物品の係留具は、物品が落下したり、紛失することを防止するものであり、その代表的なものが懐中時計の鎖である。
人間、中でも外で働いている人間は、常に種々の物品を携帯している。勿論、ハンカチ等の紛失してもあまり問題にならないものもあるが、通常は紛失してはならない。また、紛失しなくとも落下させるだけでも故障するものもある。例えば、鍵や手帳は落下しても問題はないが、紛失すると非常に大きな問題であり、最近多用されている携帯電話等は落下させるだけでも故障の原因となる。」(段落【0002】?【0003】)
(ワ)「【課題を解決するための手段】以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明係留具を完成させたものであり、その特徴とするところは、紐状体巻き戻し機能を有する本体、該本体に設けられた本体固定具、及び本体内に巻き戻し可能に取付けられた紐状体の先端部に固定された物品把持具を有する点にある。
紐状体とは、通常の紐だけでなく、細い鎖、金属線(細いワイヤー)等どのようなものでもよく、要するに係止でき、巻取りできるものである。
巻き戻しとは、回転する芯(円板又は筒状の円板等)に巻かれた紐状体を、該芯を回転させながら引き出すことができ、且つ張力を緩めると自動的に再度芯に巻き取られるようなものを言う。構造的には、伸縮自在の金属性のメジャーのようなものである。勿論、引出し、戻しの原理や機構はこれに限らずどのようなものでもよい。
固定具とは、身体や衣服、ベルト等に本体を固定するためのもので、万年筆のキャップの固定具等のものでよい。その機構としては、挟持力でポケットの端部やベルトを挟持して固定するもの、ベルトやボタンホールを周回させてホック等で固定するもの、安全ピン等どのようなものでもよい。勿論、衣服ではなく、鞄や自動車等に固定してもよい。
本発明でいう物品とは、携帯できるもので紛失又は落下を防止すべきものである。例えば、電卓、時計、キー、携帯電話、財布、定期入等である。このようなものは、ポケットから取り出して使用するが、身体からあまり離すことはないものである。この離す距離が本発明の紐状体の長さとなる。しかし、通常は手で取り扱うものであるため手の届く範囲でよく、紐状体の長さとしては1mもあれば十分である。勿論、紐の長さは限定するものではないが、1.5m以上では落下防止の意味がない。
物品把持具とは、上記した物品を把持するもので、構造としては上記物品を固定できればよい。例えば、洗濯挟みのようなクリップ、キーホルダーのような金属の二重巻体、開閉できるフック、輪に通してホックで止めるベルト、ボルト・ナット方式等である。これらは、通常のものでよく特にその構造や機能は限定するものではない。
」(段落【0005】?【0010】)
(カ)「【発明の実施の形態】以下図面に示す実施の形態により本発明をより詳細に説明する。図1は本発明係留具1の1例を示す斜視図である。本体2の裏面に固定具3が設けられ、本体内部から紐状体4が僅かに突出している。紐状体4の先端部には物品把持具5が取りつけられている。この物品把持具5は、柔軟なベルト状体で先端部にホック6がベルト状体を互いに係合するため設けられている。よって、物品の輪状部にこのベルト状体を通過させてホック6を係止するだけで把持できるものである。固定具3は万年筆の固定具と同様の形状であり、金属の湾曲した板バネ状のものである。よって、背広の胸ポケットや内ポケットに上方から差し込むだけで固定できる。」(段落【0014】)
(ヨ)「【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明では、次のような大きな効果がある。
[1](当審注:丸の中に1を意味する。以下同様。) 物品を紛失したり落下することがない。
[2] 物品に気を取られることがなく他のことに専念できる。
[3] 衣服等に簡単に取付けられ、また簡単に外すこともできる。よって、朝に固定するとその衣服を脱ぐまでまったく手間は不要である。
[4] 本発明装置自体構造が簡単で安価に製造できる。」(段落【0016】)

上記(ル)の記載事項「・・紐状体巻き戻し機能を有する本体・・」、上記(ワ)の記載事項「・・巻き戻しとは、回転する芯(円板又は筒状の円板等)に巻かれた紐状体を、該芯を回転させながら引き出すことができ、且つ張力を緩めると自動的に再度芯に巻き取られるようなものを言う。・・」及び「本発明でいう物品とは、携帯できるもので紛失又は落下を防止すべきものである。・・・・このようなものは、ポケットから取り出して使用するが、身体からあまり離すことはないものである。この離す距離が本発明の紐状体の長さとなる。しかし、通常は手で取り扱うものであるため手の届く範囲でよく・・」を併せみれば、引用例2に記載された物品の係留具は、手の届く範囲で身体から離して物品を使用することができるように、紐状体巻き戻し機能を有する本体を備えるといえる。
また、上記(ワ)の記載事項「固定具とは、身体や衣服、ベルト等に本体を固定するためのもので、万年筆のキャップの固定具等のものでよい。・・」、上記(カ)の記載事項「・・固定具3は万年筆の固定具と同様の形状であり、金属の湾曲した板バネ状のものである。よって、背広の胸ポケットや内ポケットに上方から差し込むだけで固定できる。」、及び上記(ヨ)の記載事項「・・衣服等に簡単に取付けられ、また簡単に外すこともできる。・・」を併せみれば、引用例2に記載された物品の係留具は、物品を衣服に着脱自在に取り付ける固定具を備えるといえる。

したがって、記載事項を総合し整理すると、引用例2には以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているといえる。
「携帯できる物品を衣服に巻き戻し可能に固定する物品の係留具であって、
手の届く範囲で身体から離して前記物品を使用することができるように、紐状体巻き戻し機能を有する本体と、
前記物品を前記衣服に着脱自在に取り付ける固定具とを備える物品の係留具。」

3-2.対比
(1)本願補正発明と引用発明1とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明1の「リップクリーム8」は本願補正発明の「口唇ケア製品」及び「口唇ケア物質」に相当し、以下同様に、「リップクリームホルダー」は「システム」に、「内部空間」は「内部スペース」に、「内側に入れて保持する」は「収容する」に、「ホルダー部1」は「アプリケータ」に、「穴」は「ボア」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「リップクリーム8をバッグの持ち手等にぶら下げるリップクリームホルダー」と、本願補正発明の「口唇ケア製品をユーザの衣服に格納自在に緊定するシステム」は、「口唇ケア製品を他の物品に取り付けるシステム」という点で共通し、引用発明1の「前記ホルダー部1をバッグの持ち手等に係止する」「キーホルダー4」と、本願補正発明の「前記アプリケータを前記ユーザの衣服に着脱自在に取り付ける」「格納装置アセンブリ」は、「アプリケータを他の物品に取り付ける」「取付装置」という点で共通する。

(2)本願補正発明における「分与部分」、「ベース部分」及び「内部スペース」の関係は、本願明細書の段落【0013】の記載「・・ベース部分14は、ベース壁16と周囲壁18とを含むことができる。・・・・ベース壁16と周囲壁18とは、口唇ケア物質を受ける内部スペース20を画定する。・・」、図1及び図2の図示内容を参酌すると、「分与部分」は「周囲壁18」側の「ベース部分14」の部位であり、「ベース部分」は「ベース壁16」側の「ベース部分14」の部位であって、「分与部分」及び「ベース部分」が「内部スペース」を画定するといえる。
そうすると、引用発明1の「第1端部」は本願補正発明の「第1端部」に相当し、以下同様に、「底部1b」は「ベース部分」に、「第2端部」は「第2端部」に、「『周面部』」は「分与部分」に、「ぶら下げられた」は「吊り下げられた」に、「底部1bの厚み方向」は「ベース部分の長手軸」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1においては、「前記内部空間は、前記底部1bと前記『周面部』により形成され」ていることから、「内部空間」は「底部1b」から取り除くことができないものであり、引用発明1は、本願補正発明と同様、「前記内部スペースは、前記ベース部分から取り除くことができないようになっており」なる構成を備えている。
また、引用発明1においては、「リング」と「内部スペース」との間に「底部1b」が位置することから、「底部1b」が「リング」の「穴」と「内部スペース」との連通を阻止することは明らかであり、引用発明1は、本願補正発明と同様、「前記ベース部分が、前記ボアと前記内部スペースとの間の連通を阻止する」なる構成を備えている。

(3)本願補正発明における「ボア」による「前記格納装置アセンブリを前記アプリケータに結合させるのを容易にする」作用について、その原理が本願明細書には特に記載されていないが、技術常識を勘案すれば、「ボア」の形状的特徴ではなく、「ボア」の存在自体によって上記作用が奏されることは明らかである。
そして、引用発明1においては、「前記底部1bが、穴を有するリングと接続され」ていることから、この「穴」の存在自体によって本願補正発明と同様の作用が奏されると認められるから、本願補正発明と引用発明1は、「前記アプリケータが、前記取付装置を前記アプリケータに結合させるのを容易にする、ボアを備えて」いる点で共通する。

(4)以上から、本件補正発明と引用発明1は、
「口唇ケア製品を他の物品に取り付けるシステムであって、前記システムは、
中に内部スペースが形成され、口唇ケア物質を収容するアプリケータと、
アプリケータを他の物品に取り付ける取付装置とを含み、
前記アプリケータは、第1端部にベース部分を含み、第2端部に分与部分を含み、前記内部スペースは、前記ベース部分から取り除くことができないようになっており、
前記取付装置は、前記アプリケータの前記ベース部分に直接接続されており、前記アプリケータが前記取付装置の下方に自由に吊り下げられたとき、前記ベース部分が、前記分与部分よりも前記取付装置の近くに位置付けられ、前記分与部分が前記ベース部分よりも下方に位置付けられるようになっており、
前記アプリケータが、前記取付装置を前記アプリケータに結合させるのを容易にする、ボアを備えており、前記ボアが、前記ベース部分の長手軸に対してほぼ垂直に延びており、前記ベース部分が、前記ボアと前記内部スペースとの間の連通を阻止する、システム。」の点で一致し、次の点で相違する(対応する引用発明1の用語を( )内に付記する。)。
(相違点1)
本願補正発明は、「口唇ケア製品をユーザの衣服に格納自在に緊定するシステム」であって、取付装置が「前記ユーザの身体から離れる前記アプリケータの選択的な動きを可能にする方式で、前記アプリケータを前記ユーザの衣服に着脱自在に取り付ける格納装置アセンブリ」であるのに対して、
引用発明1は、「口唇ケア製品(リップクリーム8)をバッグの持ち手等にぶら下げるシステム(リップクリームホルダー)」であって、取付装置が「前記アプリケータ(ホルダー部1)をバッグの持ち手等に係止するキーホルダー4」である点。
(相違点2)
本願補正発明においては、「前記ベース部分が」「前記ベース部分を貫いて延びるボアを画定して」いるのに対して、引用発明1においては、「前記底部1bが、穴を有するリングと接続され」ている点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について、以下に検討する。

(相違点1について)
本願補正発明の「口唇ケア製品をユーザの衣服に格納自在に緊定するシステム」には、「格納自在に緊定する」の語句の解釈にあたり、本願明細書の記載を参酌しても、「口唇ケア製品をユーザの衣服に『延び縮み可能に取り付ける』システム」という以上の意味を見出すことができない。
これに対して、引用例1には、口唇ケア製品をユーザの体に掛けて携帯するシステムが記載されている(引用発明2)。
また、引用例2には、上記引用発明3が記載されており、引用発明3の「巻き戻し可能に固定する」は『延び縮み可能に取り付ける』と同義と解され、同「手の届く範囲で身体から離して前記物品を使用することができるように」は、『ユーザの身体から離れる前記物品の選択的な動きを可能にする方式』ということができ、同「本体」及び「固定具」は総称的に『格納装置アセンブリ』ということができるから、引用発明3は、携帯できる物品を衣服に『延び縮み可能に取り付ける』物品の係留具であり、ユーザの身体から離れる前記物品の選択的な動きを可能にする方式で、前記物品を前記ユーザの衣服に着脱自在に取り付ける格納装置アセンブリを備えるということができる。
そして、引用発明1?3は、物品の保持具という共通の技術分野に属するとともに、紛失を防止するという共通の課題を有するものであるから(上記(ハ)及び(ヲ)の記載事項)、引用発明1に引用発明2及び3を適用し、口唇ケア製品(リップクリーム8)をキーホルダー4を用いてバッグの持ち手等にぶら下げることに代えて、口唇ケア製品(リップクリーム8)をユーザの衣服に『延び縮み可能に取り付ける』とともに、ユーザの身体から離れるアプリケータ(ホルダー部1)の選択的な動きを可能にする方式で、前記アプリケータ(ホルダー部1)を前記ユーザの衣服に着脱自在に取り付ける格納装置アセンブリを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
引用発明1においては、ボア(穴)を有するリングが、ベース部分(底部1b)と一体成形された部材、別体の部材のいずれであるのか不明であるが、ボア(穴)を有するリングをベース部分(底部1b)と一体成形することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

そして、本願明細書の記載を参酌しても、本願補正発明が、引用発明1?3から当業者が予測し得る程度を超える格別の作用効果を奏するとする根拠を見出すこともできない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年1月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「口唇ケア製品をユーザの衣服に格納自在に緊定するシステムであって、前記システムは、
中に内部スペースが形成され、口唇ケア物質を収容するアプリケータと、
前記ユーザの身体から離れる前記アプリケータの選択的な動きを可能にする方式で、前記アプリケータを前記ユーザの衣服に着脱自在に取り付ける格納装置アセンブリとを含み、
前記アプリケータは、第1端部にベース部分を含み、第2端部に分与部分を含み、前記内部スペースは、前記ベース部分から取り除くことができないようになっており、
前記格納装置アセンブリは、前記アプリケータの前記ベース部分に直接接続されており、前記アプリケータが前記格納装置アセンブリの下方に自由に吊り下げられたとき、前記ベース部分が、前記分与部分よりも前記格納装置アセンブリの近くに位置付けられ、前記分与部分が前記ベース部分よりも下方に位置付けられるようになっている、システム。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明の「ベース部分」に係る限定事項である「前記ベース部分が、前記格納装置アセンブリを前記アプリケータに結合させるのを容易にする、前記ベース部分を貫いて延びるボアを画定しており、前記ボアが、前記ベース部分の長手軸に対してほぼ垂直に延びており、前記ベース部分が、前記ボアと前記内部スペースとの間の連通を阻止する」との特定を省くものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様に、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-21 
結審通知日 2012-08-24 
審決日 2012-09-04 
出願番号 特願2008-507618(P2008-507618)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
P 1 8・ 575- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 蓮井 雅之
田合 弘幸
発明の名称 格納式アプリケータ・システム  
代理人 浅村 肇  
代理人 橋本 裕之  
代理人 白江 克則  
代理人 浅村 皓  

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