• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1268993
審判番号 不服2012-506  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-11 
確定日 2013-01-17 
事件の表示 特願2007- 42314「電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-298952〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成19年2月22日(優先日:平成18年4月6日、出願番号:特願2006-105350号)の出願であって、平成22年2月19日付けで手続補正がなされ、平成23年10月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年1月11日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年1月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4にそれぞれ記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電荷発生層、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層、及び、該電荷輸送層上に形成された表面保護層を有する電子写真感光体において、
該電荷輸送層が、下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂及び電荷輸送性物質を含有する層であり、
該表面保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性物質を溶剤に溶解させて得られる表面保護層用塗布液を該電荷輸送層上に塗布し、これを硬化させることによって形成された層である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(式(1)中、R^(21)、R^(23)、R^(26)及びR^(28)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す。Xは、下記式(2)で示される2価の基を示す。
【化2】

(式(2)中、R^(31)及びR^(32)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す、あるいは、R^(31)とR^(32)とが結合して形成されるシクロヘキシリデン基を示す。))」

3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-85163号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体に関し、より詳しくは、耐摩耗性等が良好な電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られること等から、複写機、各種プリンター等の分野で広く使われている。電子写真技術の中核となる感光体については、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電物質を使用した感光体が使用されている。
有機系の光導電材料を用いた感光体としては、光導電性微粉末をバインダー樹脂中に分散させたいわゆる分散型感光体と、電荷発生層及び電荷移動層を積層した積層型感光体とが知られている。なかでも、積層型感光体は、それぞれ効率の高い電荷発生物質、及び電荷移動物質を組み合わせることにより高感度な感光体が得られること、材料選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、また感光層を塗布により容易に形成可能で生産性が高く、コスト面でも有利なことから感光体の主流であり、鋭意開発され実用化されている。
【0003】
電子写真感光体は、電子写真プロセス、即ち、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等のサイクルで繰り返し使用されるため、その間様々なストレスを受け劣化する。このような劣化としては、例えば、帯電器として普通用いられるコロナ帯電器から発生する強酸化性のオゾンやNOxが感光層に与える化学的なダメージ、像露光で生成したキャリアー(電流)が感光層内を流れること、除電光または外部からの光による感光層組成物の分解等の化学的、電気的劣化がある。さらに、クリーニングブレード、磁気ブラシ等の摺擦、現像剤、紙との接触等による感光層表面の摩耗、傷の発生、膜の剥がれ等の機械的劣化がある。特に、このような感光層表面に生じる損傷は画像上に現れやすく、直接画像品質を損うため感光体の寿命を制限する大きな要因となっている。
【0004】
表面保護層等の機能層を設けない一般的な感光体の場合、感光層がこのような負荷を受ける。感光層は、通常、バインダー樹脂と光導電性物質とからなり、実質的に強度を決めるのはバインダー樹脂であるが、光導電性物質のドープ量が相当多いため十分な機械強度を持たせるには至っていない。また、高速印刷の要求の高まりから、より高速の電子写真プロセス対応の材料が求められている。この場合、感光体には高感度、高寿命であることの他に、露光されてから現像されるまでの時間が短くなるために応答性が良いことも必要となる。
【0005】
また、これらの電子写真感光体を構成する各層は、通常、支持体上に光導電性物質、バインダー樹脂等を含有する塗布液を、浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等により塗布して形成される。これらの層形成方法では、層に含有させる物質を溶剤に溶解させて得られる塗布溶液として、塗布する等の公知の方法が適用されている。そして多くの工程では、予め塗布溶液を調製し、それを保存することが行われている。
【0006】
感光層のバインダー樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂が用いられている。数あるバインダー樹脂のなかではポリカーボネート樹脂が比較的優れた性能を有しており、これまで種々のポリカーボネート樹脂が開発され実用に供されている(特許文献1?特許文献4参照)。
【0007】
一方、商品名「U-ポリマー」として市販されているポリアリレート樹脂をバインダーとして用いた電子写真用感光体は、ポリカーボネートを用いる場合と比較して感度が向上することが報告されている(特許文献5参照)。また、特定構造の2価フェノール成分を用いたポリアリレート樹脂をバインダー樹脂として用いる場合は、電子写真用感光体を製造する際に用いる塗布溶液の安定性が向上し、さらに、電子写真用感光体の機械的強度、耐磨耗性が改良されることが報告されている(特許文献6及び特許文献7参照)。
【0008】
さらに、特定構造のポリアリレート共重合体を含有する電子写真感光体(特許文献8参照)、ポリエステルポリカーボネート樹脂をバインダーとして用いた電子写真感光体(特許文献9参照)、バインダーとして用いた樹脂の溶解性の向上(特許文献10、特許文献17参照)、バインダーとして用いた樹脂と特定溶媒との組み合わせ技術(特許文献20参照)、機械特性の向上(特許文献11?特許文献13、特許文献16、特許文献18参照)、電気的特性の向上(特許文献14、特許文献15参照)、耐油性の向上(特許文献19参照)等の記述が知られている。
【0009】
【特許文献1】特開昭50-098332号公報
【特許文献2】特開昭59-071057号公報
【特許文献3】特開昭59-184251号公報
【特許文献4】特開平05-021478号公報
【特許文献5】特開昭56-135844号公報
【特許文献6】特開平10-288845号公報
【特許文献7】特開平10?288846号公報
【特許文献8】特開平03-006567号公報
【特許文献9】特開昭59-071057号公報
【特許文献10】特開昭60-052855号公報
【特許文献11】特開昭62-135840号公報
【特許文献12】特開昭62-247374号公報
【特許文献13】特開昭62-267747号公報
【特許文献14】特開平03-033860号公報
【特許文献15】特開平03-119360号公報
【特許文献16】特開平03-171055号公報
【特許文献17】特開平05-006010号公報
【特許文献18】特開平08-123049号公報
【特許文献19】特開平09-101621号公報
【特許文献20】特開平11-109661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述したような従来の電子写真用感光体は、トナーによる現像、紙との摩擦、クリーニング部材(ブレード)による摩擦等の実用上の負荷により、電子写真用感光体表面が摩耗、表面に傷が生じる等の課題を有し、実用上は限られた印刷性能にとどまっているのが現状である。
【0011】
例えば、市販のポリアリレート樹脂「U-ポリマー」は、耐磨耗性、感度の点で向上が見られるものの、この樹脂を溶解して調製した塗布液の安定性が低く、塗布製造が困難な場合がある。また、特定構造のポリアリレート樹脂を用いることにより、溶解性や溶液安定性、機械的強度等を向上させることができるものの、電気的特性、特に、応答性に関して不十分なものがある。ビスフェノール成分として、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを用いるポリアリレート共重合体を使用する場合も、機械物性にやや向上は見られるが、電気特性、感度、応答性の面では十分な性能が得られず、基板との接着性が不十分な場合が多い。
さらに、ポリエステルポリカーボネートにおいても、溶解性や溶液安定性は向上するものの、電気的特性または機械的強度が不十分なものがあり、実用上、十分な性能は得られていない。このため、電子写真用感光体に用いられる樹脂として、機械的強度が高く、溶媒に対する溶解性が高く、溶液安定性に優れ、且つ、接着性、応答性に優れたバインダー樹脂が望まれているのが現状である。
【0012】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものである。
即ち、本発明の目的は、実用上の負荷に対する耐摩耗性に優れ、高い機械的強度を保ちつつ電気的特性に優れ、さらに、感光層形成用塗布液の安定性が高いバインダー樹脂を含有する電子写真感光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明者等は鋭意検討の結果、感光層に特定の化学構造を有するポリエステルポリカーボネート樹脂を含有させることにより、十分な機械的特性を有し、感光層形成用塗布液に用いる溶媒に対して高い溶解性及び優れた塗布液安定性を有し、且つ、電気特性に優れる電子写真感光体を得ることができることを見いだし、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けた感光層と、を有し、感光層が、分子中に下記一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)中、R^(9)、R^(10)は、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、またはアルコキシ基を表す。n、mは各々独立に、0?4の整数である。
本発明が適用される電子写真感光体において、感光層に含有されるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂は、樹脂中のポリエステル部の重量割合が10%?90%であることが好ましい。また、ポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂の粘度平均分子量が15,000?300,000であり、ポリエステルポリカーボネート構造のポリカーボネート部の粘度平均分子量が3,000?50,000であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明が適用される電子写真感光体において、感光層が、下記一般式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
(一般式(2)中、Ar^(1)?Ar^(6)は各々独立して、置換基を有してもよいアリーレン基または置換基を有してもよい2価の複素環基を表す。m^(1),m^(2)は、各々独立して0または1を表す。Qは、直接結合または2価の残基を表す。R^(1)?R^(8)は各々独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよい複素環基を表す。n^(1)?n^(4)は各々独立して0?4の整数を表す。また、Ar^(1)?Ar^(6)は互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐摩耗性、耐剥がれ性等の機械的強度に優れ、しかも電気特性や画像特性にも優れた電子写真感光体が得られる。」
(2)「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本実施の形態が適用される電子写真感光体は、所定の導電性基体上に設けた感光層を備え、感光層が、分子中に上述した一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂を含有するものである。感光層の具体的な構成としては、例えば、導電性基体上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とする電荷輸送層とを積層した積層型感光体;導電性基体上に、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層を有する分散型(単層型)感光体等が挙げられる。上述した分子中に上述した一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂は、通常、電荷輸送物質を含有する層に用いられ、好ましくは積層型感光層の電荷輸送層に用いられる。
【0022】
(導電性基体)
本実施の形態が適用される電子写真感光体に使用される導電性基体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(インジウム-スズ酸化物)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が挙げられる。
【0023】
導電性基体の形態としては、例えば、ドラム状、シート状、ベルト状等が挙げられる。また、金属材料を用いた導電性基体の上に、導電性・表面性等の制御または欠陥被覆等を目的として、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものでも良い。
導電性基体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いる場合、予め、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施しても良い。尚、陽極酸化処理を施す場合は、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
導電性基体の表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法または研磨処理により、または、導電性基体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。
【0024】
本実施の形態が適用される電子写真感光体に使用される感光層の具体的な構成としては、例えば、積層型感光体の場合は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有し、静電荷を保持して露光により発生した電荷を輸送する電荷輸送層と、電荷発生物質を含有し、露光により電荷対を発生する電荷発生層と、を有する。また、その他にも必要に応じて、例えば、導電性基体からの電荷注入を阻止する電荷阻止層、レーザー光等の光を拡散させて干渉縞の発生を防止する光拡散層等を有する場合がある。分散型(単層型)感光体の場合は
、感光層は、電荷輸送物質及び電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散されている。
【0025】
(ポリエステルポリカーボネート樹脂)
次に、感光層に含有されるバインダー樹脂について説明する。
本実施の形態が適用される電子写真感光体の感光層に含有される樹脂は、分子中に一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有するものである。
【0026】
【化3】

【0027】
一般式(1)中、R^(9)、R^(10)は、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、またはアルコキシ基を表す。n、mは各々独立に、0?4の整数である。
分子中に一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂(以下、単に、「ポリエステルポリカーボネート樹脂」と言うことがある。)は、ポリカーボネートブロックとポリエステル部分とを有するブロック共重合体であり、ポリカーボネートブロックが(ポリ)エステル構造によって結合された線状構造を有する重合体である。ここで、樹脂全体に対するポリエステル成分の組成比が極端に少ない場合、「ポリエステルブロック」と呼べるまでエステルの繰り返し単位がつながらない可能性が考えられるため、ポリエステル部分という表現を用いている。
【0028】
尤も、基本的にポリカーボネートブロックとポリエステル部分の重量比が(10/90)?(90/10)の範囲であれば、ポリエステルブロックが形成されると考えられるので、本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂は、ポリカーボネートブロックとポリエステルブロックとを含有するブロック共重合体であり、ポリカーボネートブロックの分子量を制御することにより、また、樹脂全体の分子量を制御することにより、マルチブロック共重合体の構造を有するものである。
【0029】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、ポリカーボネートブロックの粘度平均分子量は、通常、3,000?50,000、好ましくは、5,000?30,000、特に好ましくは、8,000?25,000の範囲である。ポリカーボネートブロックの粘度平均分子量が過度に小さい場合、得られる樹脂の構造がランダム共重合体構造を多く含み好ましくない。また、粘度平均分子量が過度に大きい場合は、得られる樹脂の性能が単なる樹脂ブレンドに近くなり好ましくない。
【0030】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、樹脂全体の粘度平均分子量は、通常、15,000?300,000、好ましくは、20,000?200,000、特に好ましくは、25,000?150,000の範囲である。樹脂全体の粘度平均分子量が過度に小さい場合、感光体を形成する等の膜として得たときの機械的強度が低下して好ましくない。また、粘度平均分子量が過度に大きい場合は、塗布液としての粘度が上昇し、適当な膜厚に塗布することが困難となる。
【0031】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、樹脂中に含まれる、ポリカーボネートブロックとポリエステルブロックとの重量比は、通常、(10/90)?(90/10)、好ましくは、(10/90)?(70/30)の範囲である。ポリカーボネートブロックの重量%が過度に小さい場合は、ブロック共重合体のポリカーボネートとしての性能が現れず、感光層の結着性に劣るため好ましくない。また、ポリカーボネートブロックの重量%が過度に大きい場合は、重合の制御が困難になる等好ましくない。
【0032】
本実施の形態で使用するポリエステルポリカーボネート樹脂に含まれるポリカーボネートブロックとポリエステルブロックとの重量比は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いる方法、または、エステル結合部分をのみを加水分解した後にゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する方法により決定できる。
【0033】
一般式(1)中のR^(9)、R^(10)としては、例えば、水素原子、炭素数1?炭素数8のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、感光層用バインダー樹脂としての感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1?炭素数8のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1?炭素数2のアルキル基である。n、mは各々独立に、0?4の整数であるが、特に好ましくは、n=m=0である。
一般式(1)の具体例としては、例えば、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル-2,3’-ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル-3,4’-ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸残基が挙げられる。
これらの中でも、製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸残基が特に好ましい。
これらの一般式(1)として例示した化合物は、必要に応じて複数の化合物を組み合わせて用いることも可能である。
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、ポリエステル部分に含まれる一般式(1)で表されるジカルボン酸成分を誘導するジカルボン酸の具体例としては、例えば、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,3’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸成分の製造の簡便性を考慮すると、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸好ましく、さらに、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸が特に好ましい。
【0034】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、一般式(1)で表されるジカルボン酸成分を誘導するジカルボン酸以外に、以下のジカルボン酸も使用することができる。具体的には、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエン-2,5-ジカルボン酸、p-キシレン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸であり、特に好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸である。これらのジカルボン酸成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0035】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、ポリカーボネートブロックまたはポリエステル部分を形成するために用いられる2価フェノール性化合物として、特に限定されない。具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等の二官能性フェノール化合物;4,4’-ビフェノール、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、3,3’-ジ(t-ブチル)-4,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、3,3’,5,5’-テトラ(t-ブチル)-4,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-4,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、2,4’-ビフェノール、3,3’-ジメチル-2,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、3,3’-ジ(t-ブチル)-2,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、2,2’-ビフェノール、3,3’-ジメチル-2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル、3,3’-ジ(t-ブチル)-2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル等のビフェノール化合物が挙げられる。
【0036】
さらに、ビスフェノール化合物としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基を有しないビスフェノール化合物。
【0037】
ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族環上に置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物。
【0038】
ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン等。
【0039】
ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)シクロヘキサン等。
【0040】
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス
(4-ヒドロキシ-3-(sec-ブチル)フェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)プロパン等。
【0041】
ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基としてアルキル基を有する化合物。
【0042】
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(フェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(ジフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(ジベンジル)メタン等の芳香族環を連結する2価基が置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物。
【0043】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等の芳香族環をエーテル結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族環をスルホン結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族環をスルフィド結合で連結したビスフェノール化合物;フェノールフタルレイン等。
【0044】
(2-ヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、(2-ヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(2-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン等。
【0045】
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)エタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェノール)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノール)メタン、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェノール)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0046】
これらの2価フェノール性化合物の中ではビスフェノール化合物が好ましく、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン等。
【0047】
また、(2-ヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、(2-ヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)エタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エーテルが好ましい。
【0048】
これらの中でも、特に2価フェノール性化合物の製造の簡便性を考慮すれば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン等。
【0049】
(2-ヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、(2-ヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エーテルが特に好ましい。これらの2価フェノール性化合物を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0050】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、ポリカーボネートブロックに用いられる2価フェノール性化合物と、ポリエステル部分に用いられる2価フェノール性化合物とは、異なる構造の2価フェノール性化合物であることが好ましい。一般的に、同じ2価フェノール性化合物からなるポリカーボネートとポリエステルとは相溶性が高く、それらの構造を持つ(マルチ)ブロック共重合体とした場合でも、特性は、単なるポリカーボネート及びポリエステルのブレンドと同等程度のものと考えられる。本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂は、分子構造を(マルチ)ブロック共重合化することで、樹脂ブレンドでは得られない特性の発現を目指すものであり、そのためには、特性の異なるポリカーボネートブロックとポリエステル部分との組み合わせからなるブロック共重合体が好ましい。
【0051】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、ポリカーボネートブロックに用いられる2価フェノール性化合物の好ましい具体例としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられる。これらの中で特に好ましくは、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンが挙げられる。これらはそれぞれ単独でも、複数種組み合わせて用いてもよく、また、一部他の構造の2価フェノール性化合物を含むことも可能である。
【0052】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、ポリカーボネートブロックに用いられる、ホスゲンおよび/またはホスゲン誘導体の具体例としては、例えば、ホスゲン、トリクロロメチルクロロホーメート、オキザリルクロライド、またはジフェニルカーボネート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、ジ-p-クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類等のカーボネート前駆体を挙げることができる。
【0053】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂の製造に際して、そのポリカーボネートオリゴマーを製造する為の公知の方法として、例えば、2価フェノール性化合物とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、2価フェノール性化合物とジアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)等の方法を採用することができる。これらの中でもホスゲン法を用いることが、分子量制御の面から好ましく、カーボネート前駆体としてはホスゲンを用いることが好ましい。
【0054】
本実施の形態において使用するポリエステルポリカーボネート樹脂において、ポリエステル部分に用いられる2価フェノール性化合物の好ましい具体例としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、(2-ヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサンであり、特に好ましくは、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタンである。これらの2価フェノール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0055】
尚、本実施の形態が適用される電子写真感光体における感光層には、前述した分子中に一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂と他の樹脂とを混合して用いることも可能である。ここで混合される他の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体またはその共重合体;ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂または種々の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら樹脂のなかでもポリカーボネート樹脂が好ましい。また、併用する樹脂の混合割合は、特に限定されないが、通常、分子中に一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂の割合を超えない範囲で併用することが好ましい。」
(3)「【0078】
次に、本実施の形態が適用される電子写真感光体の感光層に含有される他の成分について説明する。
(電荷発生層)
本実施の形態が適用される電子写真感光体が積層型感光体である場合、感光層を構成する電荷発生層には電荷発生物質が含有される。電荷発生物質としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料;フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等の各種光導電材料が挙げられる。これらの中でも、特に、有機顔料、更に、フタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。これらの電荷発生物質の微粒子は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。電荷発生物質の使用量は、特に限定されないが、通常、バインダー樹脂100重量部に対して30重量部?500重量部の範囲で使用される。尚、電荷発生層の膜厚は、通常、0.1μm?1μm、好ましくは、0.15μm?0.6μmが好適である。
【0079】
…(略)…
【0080】
(電荷輸送層)
本実施の形態が適用される電子写真感光体が積層型感光体である場合、感光層を構成する電荷輸送層には電荷輸送物質が含有される。電荷輸送物質としては、例えば、2,4,7-トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物;テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物;ジフェノキノン等のキノン類等の電子吸引性物質;カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物またはこれらの化合物が複数結合されたもの;あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましく、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体の複数結合されてなるものが好ましい。
【0081】
電荷輸送物質のなかでも、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が好ましく用いられる。
【0082】
…(略)…
【0094】
本実施の形態が適用される電子写真感光体の感光層を構成する電荷輸送層に含有される電荷輸送物質の具体的例としては、たとえば、特開平9-244278号公報に記載されるアリールアミン系化合物、特開2002-275133号公報に記載されるアリールアミン系化合物等が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独で用いても良いし、いくつかを混合して用いてもよい。これらの電荷輸送物質がバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
【0095】
分子中に一般式(1)で表されるジカルボン酸残基を備えるポリエステルポリカーボネート構造を有する樹脂からなるバインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質30重量部?200重量部、好ましくは40重量部?150重量部の範囲で使用される。また電荷輸送層の膜厚は、通常、5μm?50μm、好ましくは10μm?45μmである。
【0096】
尚、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料、レベリング剤等の添加物を含有させても良い。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0097】
(分散型(単層型)感光層)
分散型感光層の場合には、上述したバインダー樹脂と電荷輸送物質とからなる電荷輸送媒体中に、前述した電荷発生物質が分散される。電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量が過度に少ないと、充分な感度が得られず、過度に多いと、帯電性の低下、感度の低下等の弊害がある。電荷発生物質の使用量は、好ましくは0.5重量%?50重量%、より好ましくは1重量%?20重量%の範囲で使用される

【0098】
分散型感光層の膜厚は、通常5μm?50μm、より好ましくは10μm?45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコ-ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。分散型感光層の上に、分散型感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による分散型感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けても良い。また、電子写真感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。」
(4)「【実施例】
【0116】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されない。なお、実施例及び比較例中の部及び%は、特に指定しない限り重量基準である。
【0117】
(粘度平均分子量)
ウベローデ型毛細管粘度計(ジクロロメタンの流下時間t0:136.16秒)を用いて、20.0℃において、樹脂のジクロロメタン溶液(濃度:6.00g/L)の流下時間(t)を測定し、以下の式に基づき、樹脂の粘度平均分子量(Mv)を算出した。結果を表1及び表2に示す。
η_(sp)=(t/t_(0))-1
a=0.438×η_(sp)+1
b=100×(η_(sp)/C)
C=6.00 [g/L]
η=b/a
Mv=3207×η^(1.205)【0118】
…(略)…
【0119】
次に、この電荷発生層上に、電荷輸送層形成用塗布液を、乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体を調製した。電荷輸送層形成用塗布液は、表1及び表2にそれぞれ示す樹脂100重量部、酸化防止剤(イルガノックス1076)8重量部、レベリング剤であるシリコーンオイル0.03重量部、及び、下記に示す化学構造を有する電荷輸送物質(1)を主成分とする異性体か
らなる電荷輸送物質50重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合して調製した。
【0120】
【化5】

…(略)…
【0123】
(ポリエステルポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂の製造例)
以下の製造方法により、18種類の樹脂(樹脂A?樹脂S)を調製した。
【0124】
(ポリカーボネートオリゴマーの調製)
(オリゴマー1の調製)
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、BP-aという。)100部(0.39mol)と、水酸化ナトリウム37.8部(0.945mol)と、脱塩水568部と、ハイドロサルファイトナトリウム0.284部と、塩化メチレン446部(340mL)と、の混合物を、撹拌機付き反応槽にて撹拌した。反応槽の温度を0℃?10℃の間に保ち、これにホスゲン94.3部(0.953mol)を約5時間で吹き込み反応を行った。反応終了後、ポリカーボネートオリゴマーを含有する塩化メチレン溶液のみを捕集し、オリゴマー濃度16.8重量%、末端クロロホーメート基濃度0.479規定、末端フェノール性水酸基濃度0.250規定のポリカーボネートオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。尚、オリゴマー濃度は、塩化メチレン溶液を蒸発乾固させて測定した。
末端クロロホーメート基濃度は、ポリカーボネートオリゴマーとアニリンとを反応させて得られるアニリン塩酸塩を0.2規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。末端フェノール性水酸基濃度は、ポリカーボネートオリゴマーを、塩化メチレン、四塩化チタン、酢酸にそれぞれ溶解させた溶液の発色を波長546nmの光で比色定量した。
【0125】
(オリゴマー2の調製)
上記オリゴマー1の製造と同様の操作を行った。
得られたオリゴマー2の塩化メチレン溶液の分析結果は下記の通りであった。
オリゴマー濃度:17.0重量%
末端クロロホーメート基濃度:0.467規定
末端フェノール性水酸基濃度:0.240規定
【0126】
(オリゴマー3の調製)
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下、BP-fという。)100部(0.373mol)、水酸化ナトリウム52.2部(1.305mol)、水848部、ハイドロサルファイトナトリウム0.4部、塩化メチレン485部(370ml)の混合物を撹拌機付き反応槽に仕込み、撹拌した。反応槽の温度を0?10℃の間に保ち、これにホスゲン112部(1.131mol)を約6時間で吹き込み反応を行った。反応終了後ポリカーボネートオリゴマーを含有する塩化メチレン溶液のみを捕集した。得られたオリゴマーの塩化メチレン溶液の分析結果は下記の通りであった。
オリゴマー濃度:21.2重量%
末端クロロホーメート基濃度:0.356規定
末端フェノール性水酸基濃度:0.140規定
【0127】
製造例1(樹脂A)
100mLビーカーに水酸化ナトリウム1.33gと脱塩水25.1mLを量り取り、撹拌しながら溶解させた。そこにBP-a2.23gと、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.0754gを添加、撹拌、溶解させ、アルカリ水溶液を調製した。次いで、攪拌機を備えた1L反応槽に、予め調製したオリゴマー1を82.34g、ジクロロメタン12.5mLを仕込み、撹拌しながら、重合槽の外温を20℃に保った。次いで、先に調製したアルカリ水溶液を1L反応槽に添加して重合反応を開始した。
【0128】
重合反応を開始したときの反応系内の「全末端クロロホーメート基の当量(以下、CFeqという。)」と「全フェノール性水酸基の当量(以下、OHeqという。)」の比{(CFeq)/(OHeq)}は、0.9094であった。また、{(全フェノール性水酸基の当量)-(全末端クロロホーメート基の当量)}/(理論上のポリカーボネートブロック生成量(kg))[以下、{(OHeq)-(CFeq)}/(PCRwt)]は、0.200であった。
3時間撹拌を続けた後、脱塩水126mLを添加して撹拌を停止し、生成しているポリカーボネートブロックの粘度平均分子量を測定するためジクロロメタン層5mLをサンプリングした。サンプリングした重合液に脱塩水5mL、35%塩酸0.2mLを加え撹拌後、静置した。
【0129】
別途、500mLビーカーに水酸化ナトリウム8.38gと脱塩水319mLを量り取り、撹拌しながら溶解させた。そこに1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(以下、BP-bという。)16.68gを添加、撹拌、溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.3672g、p-tert-ブチルフェノール0.3507gを添加、撹拌、溶解させ、アルカリ水溶液を調製した後、このアルカリ水溶液を反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロライド23.78gとジクロロメタン160mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。
【0130】
反応槽内の溶液を攪拌しながら、滴下ロートよりジクロロメタン溶液を30分かけて滴下した。さらに4時間攪拌を続けた後、ジクロロメタン394mLを加え、撹拌を6時間続けた。その後、酢酸3.04mLを加え30分攪拌した後、攪拌を停止し有機層を分離した。この有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液470mLにて洗浄を2回行い、次に0.1N塩酸470mLにて洗浄を2回行い、さらに脱塩水470mLにて洗浄を2回行った。洗浄後の有機層をメタノール3145mLに注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステルポリカーボネート樹脂(樹脂A)を得た。また、途中でサンプリングした重合液を脱塩水20mLで一度洗い、有機層をメタノール30mLに注いで得られた沈殿物を濾過、乾燥してポリカーボネートブロックAを得た。得られた樹脂Aの粘度平均分子量は49,800であり、ポリカーボネートブロックAの粘度平均分子量は12,400であった。樹脂Aの繰り返し構造を以下に示す。樹脂Aにおいて、ポリカーボネートブロックA/ポリエステル部分(ブロック)の重量比は、3/7である。【0131】
【化6】

…(略)…
【0197】
[感光体ドラムの製造]
<電荷発生層用分散液の製造>
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)9.3゜、10.6゜、13.2゜、15.1゜、15.7゜、16.1゜、20.8゜、23.3゜、26.3゜、27.1゜に強い回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン10部を、1,2-ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い、顔料分散液を製造した。
ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)5部を1,2-ジメトキシエタン95部に溶解し、固形分濃度5%のバインダー溶液1を製造した。
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)5部を1,2-ジメトキシエタン95部に溶解し、固形分濃度5%のバインダー溶液2を製造した。
先に製造した顔料分散液160部に、バインダー溶液1を50部、バインダー溶液2を50部、適量の1,2-ジメトキシエタンと、適量の4-メトキシ-4-メチルペンタノン-2を加え固形分濃度4.0%、1,2-ジメトキシエタン:4-メトキシ-4-メチルペンタノン-2=9:1の電荷発生層用分散液αを調製した。
【0198】
実施例16
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ285mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行うことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。このシリンダーに、先に製造した電荷発生層用分散液αを浸漬塗布し、その乾燥後の膜厚が、約0.3μmとなるように電荷発生層を形成した。
次に、この電荷発生層を形成したシリンダーを、電荷輸送物質(1)50部と、電荷輸送層用バインダー樹脂として樹脂A100部、シリコーンオイル(信越化学社製、商品名KF96)0.05部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液に浸漬塗布することにより、乾燥後の膜厚20μmの電荷輸送層を設けた。このようにして得られた感光体ドラムをA2とする。
【0199】
…(略)…
【0203】
[耐刷試験による膜減り測定]
上記感光体ドラム(A2、…(略)…)を市販のカラーレーザープリンター(エプソン社製 LP3000C)に装着して常温常湿環境下においてモノクロ(黒)モードで24,000枚の画像形成を行った。この際、画像形成する前の感光層の膜厚、24,000枚画像形成後の膜厚を測定し、画像形成10,000枚あたりの膜減り量を計算した。結果を表3に示す。
【0204】
【表3】



(5)上記(1)ないし(4)から、引用例、特にその実施例16には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ285mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行うことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成し、このシリンダーに、電荷発生層用分散液αを浸漬塗布し、その乾燥後の膜厚が、約0.3μmとなるように電荷発生層を形成し、次に、この電荷発生層を形成したシリンダーを、電荷輸送物質(1)50部と、電荷輸送層用バインダー樹脂として樹脂A100部、シリコーンオイル(信越化学社製、商品名KF96)0.05部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液に浸漬塗布することにより、乾燥後の膜厚20μmの電荷輸送層を設け、得られた感光体ドラム。
上記樹脂A、電荷発生層用分散液α、電荷輸送物質(1)を以下に示す。
・樹脂A

(但し、ポリカーボネートブロックA/ポリエステル部分(ブロック)の重量比3/7)
・電荷発生層用分散液α
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)9.3゜、10.6゜、13.2゜、15.1゜、15.7゜、16.1゜、20.8゜、23.3゜、26.3゜、27.1゜に強い回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン10部を、1,2-ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い、顔料分散液を製造し、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)5部を1,2-ジメトキシエタン95部に溶解し、固形分濃度5%のバインダー溶液1を製造し、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)5部を1,2-ジメトキシエタン95部に溶解し、固形分濃度5%のバインダー溶液2を製造し、先に製造した顔料分散液160部に、バインダー溶液1を50部、バインダー溶液2を50部、適量の1,2-ジメトキシエタンと、適量の4-メトキシ-4-メチルペンタノン-2を加え固形分濃度4.0%、1,2-ジメトキシエタン:4-メトキシ-4-メチルペンタノン-2=9:1に調製したもの。
・電荷輸送物質(1)



4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「『表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ285mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行うことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成し』た『シリンダー』」、「電荷発生層」、「

」、「電荷輸送層」及び「感光体ドラム」は、それぞれ、本願発明の「導電性支持体」、「電荷発生層」、「電荷輸送性物質」、「電荷輸送層」及び「電子写真感光体」に相当する。
(2)引用発明の「電子写真感光体(感光体ドラム)」は、表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ285mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行うことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成し、このシリンダーに、電荷発生層用分散液αを浸漬塗布し、その乾燥後の膜厚が、約0.3μmとなるように電荷発生層を形成し、次に、この電荷発生層を形成したシリンダーを、電荷輸送物質(1)50部と、電荷輸送層用バインダー樹脂として樹脂A100部、シリコーンオイル(信越化学社製、商品名KF96)0.05部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液に浸漬塗布することにより、乾燥後の膜厚20μmの電荷輸送層を設け、得られたものであるから、引用発明の「電子写真感光体」と本願発明の「電子写真感光体」とは導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電荷発生層、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有するで一致する。
(3)引用発明の「電荷輸送層」は「電荷輸送層用バインダー樹脂としての樹脂A

(但し、ポリカーボネートブロックA/ポリエステル部分(ブロック)の重量比3/7)及び電荷輸送物質(1)を含有する層」といえ、前記樹脂Aのポリエステル部分(ブロック)である「

」は本願発明の「『電荷輸送層』に含有される『下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂』、『

(式(1)中、R^(21)、R^(23)、R^(26)及びR^(28)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す。Xは、下記式(2)で示される2価の基を示す。

(式(2)中、R^(31)及びR^(32)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す、あるいは、R^(31)とR^(32)とが結合して形成されるシクロヘキシリデン基を示す。))』」のうちの、前記R^(21)、R^(23)、R^(26)及びR^(28)が全て水素原子であり、且つ、前記R^(31)及びR^(32)のいずれか一方が水素原子で、他方がメチル基に相当する。したがって、引用発明の「電荷輸送層」と本願発明の「電荷輸送層」とは「下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂及び電荷輸送性物質を含有する層

(式(1)中、R^(21)、R^(23)、R^(26)及びR^(28)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す。Xは、下記式(2)で示される2価の基を示す。

(式(2)中、R^(31)及びR^(32)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す、あるいは、R^(31)とR^(32)とが結合して形成されるシクロヘキシリデン基を示す。))』」で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)から、本願発明と引用発明とは、
「導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電荷発生層、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する電子写真感光体において、
該電荷輸送層が、下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂及び電荷輸送性物質を含有する層である
電子写真感光体。

(式(1)中、R^(21)、R^(23)、R^(26)及びR^(28)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す。Xは、下記式(2)で示される2価の基を示す。

(式(2)中、R^(31)及びR^(32)は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を示す、あるいは、R^(31)とR^(32)とが結合して形成されるシクロヘキシリデン基を示す。))」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願発明では、「該電荷輸送層上に形成された表面保護層を有するものであって、該表面保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性物質を溶剤に溶解させて得られる表面保護層用塗布液を該電荷輸送層上に塗布し、これを硬化させることによって形成された層である」のに対して、
引用発明では、そのようなものでない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)引用例には、「(分散型(単層型)感光層)分散型感光層の場合には、上述したバインダー樹脂と電荷輸送物質とからなる電荷輸送媒体中に、前述した電荷発生物質が分散される。電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量が過度に少ないと、充分な感度が得られず、過度に多いと、帯電性の低下、感度の低下等の弊害がある。電荷発生物質の使用量は、好ましくは0.5重量%?50重量%、より好ましくは1重量%?20重量%の範囲で使用される。分散型感光層の膜厚は、通常5μm?50μm、より好ましくは10μm?45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコ-ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。分散型感光層の上に、分散型感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による分散型感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けても良い。また、電子写真感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。」(上記3(3)【0097】及び【0098】参照。)との記載があり、保護層を設けない分散型(単層型)感光層は電子写真感光体の表面層といえる。
(2)導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電荷発生層、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層、及び、該電荷輸送層上に形成された表面保護層を有する耐摩耗性の高い電子写真感光体であって、該表面保護層が連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性物質を溶剤に溶解させて得られる表面保護層用塗布液を該電荷輸送層上に塗布し、これを硬化させることによって形成された層である、電子写真感光体は、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開2005-173566号公報特に【0006】、【0111】、【0161】ないし【0170】、特開2005-316226号公報特に【0012】、【0032】、【0051】、【0120】ないし【0128】、特開2005-316260号公報特に【0068】、【0071】ないし【0079】、特開2005-164775号公報特に【0132】、【0135】ないし【0140】、特開2005-164776号公報特に【0100】、【0104】ないし【0109】、特開2001-166509号公報特に【0012】、【0078】、【0224】ないし【0226】参照。)。
(3)引用発明において、電荷輸送層は感光体ドラムの表面層といえるから、上記(1)及び(2)からみて、感光体ドラムの表面層である該電荷輸送層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による該電荷輸送層の劣化を防止・軽減する目的で、該電荷輸送層上に、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性物質を溶剤に溶解させて得られる表面保護層用塗布液を該電荷輸送層上に塗布し、これを硬化させることによって形成された表面保護層を形成し、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用例に記載された事項及び周知技術に基づいて容易になし得たことである。
(4)本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果、周知技術の奏する効果及び引用例に記載された事項から予測できた程度のものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-14 
結審通知日 2012-11-20 
審決日 2012-12-03 
出願番号 特願2007-42314(P2007-42314)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石附 直弥  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅野 芳男
瀬良 聡機
発明の名称 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ