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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1268997
審判番号 不服2012-3510  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-23 
確定日 2013-01-17 
事件の表示 特願2006- 80844「車両用電子制御装置のソフトウェアシステムおよびその設計方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月 4日出願公開、特開2007-253792〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成18年3月23日の出願であって,平成23年11月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特開2002-268898号公報」

第3.平成24年2月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成24年2月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の概要
本件補正は,平成23年7月6日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するもので,特許請求の範囲の請求項1については,補正前に
「【請求項1】
車両制御ネットワークに備えられる車両用電子制御装置のソフトウェアシステムにおいて,
車両に関する制御を実行する機能(501?509)が含まれた複数個のコンポーネント(101?106)を備え,該コンポーネントが前記車両用電子制御装置に実装されるようになっており,
前記車両用電子制御装置に実装されたソフトウェアによって起動されるタスク(601?603)に対して前記複数個のコンポーネントの前記機能を実行させる機能トリガ(510?513)が対応付けられ,該タスクが前記機能トリガを発生させることで前記コンポーネントの実行単位となる複数のプログラムもしくは制御ロジックを実行するように構成されていることを特徴とする車両用電子制御装置のソフトウェアシステム。」
とあるのを,次のとおりに補正するものである。

「【請求項1】
車両制御ネットワークに備えられる車両用電子制御装置のソフトウェアシステムにおいて,
車両に関する制御を実行する機能(501?509)が含まれた複数個のコンポーネント(101?106)を備え,該コンポーネントが前記車両用電子制御装置に実装されるようになっており,
前記車両用電子制御装置に実装されたオペレーティングシステムによって起動されるタスク(601?603)に対して前記複数個のコンポーネントの前記機能を実行させる機能トリガ(510?513)が対応付けられ,該タスクが前記機能トリガを発生させることで前記コンポーネントの実行単位となる複数のプログラムもしくは制御ロジックを実行するように構成されていることを特徴とする車両用電子制御装置のソフトウェアシステム。」

上記補正は,補正前の発明特定事項である「車両用電子制御装置に実装されたソフトウェア」を「車両用電子制御装置に実装されたオペレーティングシステム」に変更するものであるところ,後者は前者の下位概念にあたると考えられる。また,この補正が,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。
したがって,少なくとも請求項1の補正に関する限り,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-268898号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【請求項1】外部信号源および制御対象としての外部機器との間の信号を授受するデバイスドライバ,前記外部信号源からの情報に基づき演算を行い,複数の前記制御対象に制御信号を与えて制御するマイクロプロセッサ,前記デバイスドライバおよび前記マイクロプロセッサを包含すると共に,複数の前記制御対象を制御するためのタスクをイベントにより順次実行する管理手段を備え,前記制御対象を制御するための一つの演算プログラムが一つのタスクとして前記管理手段に実装されたことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】前記管理手段にはタスク周期起動手段が含まれており,前記イベントの発行が少なくとも一つの前記タスク周期起動手段によりなされることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。」
・「【請求項4】前記タスク周期起動手段が複数のイベントを発行し,複数のタスクを起動するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。」
・「【請求項10】前記タスク起動機能の起動が少なくとも一つの前記タスク周期起動手段によりなされ,このタスク周期起動手段が,前記管理手段の起動時において前記管理手段の起動が完了するまでに起動するよう構成されていることを特徴とする請求項8に記載の車両用制御装置。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,内燃機関の制御や自動変速機の制御など,各制御対象を制御するタスクの管理をリアルタイムオペレーティングシステム上で行う車両用制御装置に関するものである。」
・「【0017】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1による車両用制御装置のシステム構成図,図2は動作を説明するフローチャートである。図1に示す車両用制御装置のリアルタイムオペレーティングシステム(以降RTOS,または管理手段と称す)は,マイクロプロセッサよりなる中央処理演算部(以下CPUと称す)1と,このCPU1に実装されRTOSの機能の核となるカーネル2と,カーネル2の起動時にCPU1を初期化するCPU初期化手段3と,CPU1やこれに実装されたカーネル2と後述するそれぞれのタスクとの間,および,外部機器であるアクチュエータ・バルブ類4や外部からの信号源であるセンサ・スイッチ類5との間のデータや信号を授受するためのデバイスドライバ6とから構成されている。
【0018】また,カーネル2はRTOS上に構成された後述するタスクの管理を行うスケジューラ7と,カーネル2がスタートしたとき最初に実行されるRTOS初期化手段8とを有しており,CPU1はRTOSで扱うカウンタを設定するためのタイマ9を有している。10はRTOSのタスク同期化機能(以下イベントまたはイベント機能と称す)を示し,11ないし20はRTOS上で動作する車両制御用のタスクを示すもので,クランク角処理タスク11や内部割り込みタスク12や通信タスク13など少なくとも一つの制御対象が一つのタスクとして構成されており,クランク角処理タスク11やタスクA14などの各タスクはイベント10を受けることによりそのタスク処理が実行され,処理データをデバイスドライバ6とCPU1を介してアクチュエータ類4などの外部機器に出力する。
【0019】このような車両制御用RTOSにおいて,図示しない電源が投入されるとCPU初期化手段3が動作してCPU1を初期化し,続いてRTOS初期化手段8がRTOS自体を初期化する。次にタスク11ないし20が予め決められた手順で起動され,全てのタスク11ないし20がイベント待ちの状態になる。各タスク11ないし20はスケジューラ7に管理され,イベント機能10が発生するイベントに応じたタスクが起動され,処理を実行する。例えば,イベントによりタスクA14が起動された場合,処理を行った後にその処理結果がデバイスドライバ6に伝達され,デバイスドライバ6から制御対象となるアクチュエータ・バルブ類4のいずれかのアクチュエータやバルブに伝達される。
【0020】また,外部システムからの信号源であるセンサ・スイッチ類5からデータや信号が入力されるとCPU1にて割り込み要求が発生し,これをデバイスドライバ6が要求された外部割り込みタスクに送信することにより外部割り込み処理が実行される。この処理は例えばタスクA14やタスクB15や内部割り込みタスク13などで実行され,処理された結果はデバイスドライバ6を経由して外部に接続されたアクチュエータ・バルブ類4のいずれかのアクチュエータやバルブに伝達される。」
・「【0025】実施の形態2.図3はこの発明の実施の形態2によるRTOSを用いた車両用制御装置のシステム構成図であり,この実施の形態による車両用制御装置は図1に示した実施の形態1の車両用制御装置に対して管理手段にタスク周期起動手段(以下アラームと称す)21を付加するようにしたものである。アラーム21は一種のタイマーであり,アラーム21の満了によりイベント10が発行され,タスクが実行されるように構成されている。イベント10の発行に伴うタスクの実行や割り込みは実施の形態1の場合と同様である。」
・「【0029】実施の形態4.図5はこの発明の実施の形態4によるRTOSを用いた車両用制御装置のシステム構成図であり,この実施の形態による車両用制御装置は図4に示した実施の形態3の車両用制御装置に対してタスク周期起動手段としての複数のアラーム28と29とを有しており,アラーム28はイベント30に対応し,アラーム29はイベント31とイベント32,および,イベント31とイベント32との間に存在する図示しない複数のイベントに対応するように構成したものである。
【0030】このように,アラーム29により複数のイベント31?32を発行するように構成することにより,実施の形態3と同様にプログラムの可読性を向上させながら実施の形態3の構成に対してアラームの数を減少させることができ,CPU1が使用するメモリの使用量を減少させることができるものである。」
・「【0036】実施の形態7.図9はこの発明の実施の形態7によるRTOSを用いた車両用制御装置のシステム構成図,図10は動作を説明するフローチャートであり,この実施の形態による車両用制御装置は図4に示した実施の形態3の車両用制御装置に対してRTOS初期化処理8とスケジューラ7の実行との間に初期化処理手段34によるアラーム25ないし27の設定を介在させたもので,初期化処理手段34がアラーム25ないし27を設定し,タスク11ないし20の起動後にスケジューラ7が起動するように構成したものである。
【0037】図10によりこの動作を説明すると次の通りであり,図10において上記の実施の形態1の図2と同一動作のステップには同一符号が付与されている。(a)に示したOS始動の動作は,電源が投入されるかリセット信号が入力されるとプログラムがスタートし,ステップ101においてCPU初期化手段3によるCPU1の初期化が行われ,続いてステップ102においてRTOS初期化手段8によるRTOSの初期化が行われる。続いてステップ401では初期化処理手段34にてアラーム25ないし27を設定する初期化処理が実行され,ステップ103においてスケジューラ7が実行可能な状態とされる。
【0038】ステップ401での初期化処理は図の(b)に示すとおりであり,ステップ402にて初期化処理手段34によるアラーム25ないし27の設定がなされ,続くステップ403においてはタスク11ないし20が起動してイベント待ちの状態におかれる。そしてタスク11ないし20が起動後に上記したようにスケジューラ7が起動する。すなわち,この実施の形態ではアラームの設定がRTOSの立ち上げ中に行われることになり,このためにプログラムの可読性を向上させながらメモリの使用量を減少させることができるものである。」

上記各記載事項及び図面の記載によれば,引用例には,実質的に次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。
「デバイスドライバとマイクロプロセッサを包含するとともに,外部機器を制御するための演算プログラムである複数のタスクをイベントに応じて起動し実行する管理手段を備えた,内燃機関や自動変速機等の車両用制御装置であって,デバイスドライバは,外部信号源であるセンサ・スイッチ類及び外部機器であるアクチュエータ・バルブ類との間の信号を授受し,マイクロプロセッサは,外部信号源からの情報に基づき演算を行って外部機器に制御信号を与えるもので,タイマーからなるタスク周期起動手段により,対応する一つないし複数のイベントが発行され,タスク周期起動手段は,管理手段の起動時において管理手段の起動が完了するまでに起動するように構成されている車両用制御装置。」

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「タスク」,「演算プログラム」,「イベント」,「タスク周期起動手段」,「車両用制御装置」は,それぞれ本願補正発明の「コンポーネント」,「プログラムもしくは制御ロジック」,「機能トリガ」,「タスク」,「車両用電子制御装置」に相当する。
引用発明は,タイマーからなるタスク周期起動手段により,対応する一つないし複数のイベントが発行されるものであるから,本願補正発明における「タスクに対して複数個のコンポーネントの機能を実行させる機能トリガが対応付けられ」との要件を備える。
引用発明は,タスク周期起動手段が管理手段の起動時において管理手段の起動が完了するまでに起動するように構成されているものであるから,タスク周期起動手段が車両用制御装置に実装されたOS(オペレーティングシステム)によって起動されるものといえる。なお,本願補正発明でいう「オペレーティングシステム」は,引用例1の段落【0037】及び図10に記載された「OS」にあたると解される。
したがって,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にしたがえば,
「車両制御ネットワークに備えられる車両用電子制御装置のソフトウェアシステムにおいて,車両に関する制御を実行する機能が含まれた複数個のコンポーネントを備え,該コンポーネントが前記車両用電子制御装置に実装されるようになっており,前記車両用電子制御装置に実装されたオペレーティングシステムによって起動されるタスクに対して前記複数個のコンポーネントの前記機能を実行させる機能トリガが対応付けられ,該タスクが前記機能トリガを発生させることで前記コンポーネントの実行単位となるプログラムもしくは制御ロジックを実行するように構成されている車両用電子制御装置のソフトウェアシステム。」
の点で実質的に一致し,次の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明では,一つのコンポーネントが複数のプログラムもしくは制御ロジックからなるのに対して,引用発明では,一つのタスクが複数の演算プログラムからなるか否か明らかでない点。

上記相違点について検討する。引用発明のタスクも,本願補正発明と同じく,プログラムもしくは制御ロジックであるところ,プログラムもしくは制御ロジックを適当な単位に分割したり細分化したりすることは,ソフトウエアを設計する上で通常行われている技術事項に過ぎない。上記相違点に係る本願補正発明の構成は,当業者が適宜なし得たことである。
したがって,本願補正発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.小括
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成23年7月6日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)。

第5.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.引用刊行物」に記載したとおりである。

第6.対比・判断
前記「第3」の「1.本件補正の概要」に記載したとおり,本願発明は,本願補正発明を上位概念に変更したものである。したがって,前記「第3」の「3.対比・判断」に記載したとおり,本願補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-14 
結審通知日 2012-11-20 
審決日 2012-12-03 
出願番号 特願2006-80844(P2006-80844)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三宅 達  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
発明の名称 車両用電子制御装置のソフトウェアシステムおよびその設計方法  
代理人 特許業務法人ゆうあい特許事務所  

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