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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1269000
審判番号 不服2012-4319  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-06 
確定日 2013-01-17 
事件の表示 特願2010-248959「電気自動車用充電装置のモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月31日出願公開、特開2012-105375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年11月5日の出願であって、平成23年4月13日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年4月19日)、これに対し、平成23年6月13日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成23年9月1日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年9月6日)、これに対し、平成23年11月7日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年12月2日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成23年12月6日)、これに対し、平成24年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成23年6月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「縦長の本体内に収納されることで電気自動車用充電装置を構成する電気自動車用充電装置のモジュールであって、電気自動車に充電するための充電ケーブルのプラグが挿抜自在に接続されるコンセントと、当該コンセントを収納する箱形の筐体とを備え、当該筐体は、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納されることを特徴とする電気自動車用充電装置のモジュール。」

本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、平成23年11月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「縦長の本体内に収納されることで電気自動車用充電装置を構成する電気自動車用充電装置のモジュールであって、電気自動車に充電するための充電ケーブルのプラグが挿抜自在に接続されるコンセント以外の機能を実現するための手段と、当該手段を収納する箱形の筐体とを備え、当該筐体は、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納されることを特徴とする電気自動車用充電装置のモジュール。」


3.引用例
これに対して、原査定の理由に引用された特開平11-266509号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「充電時間の設定後、充電開始操作により電力供給を開始するとともに、設定された前記充電時間の終了とともに電力供給を停止し、その間に電力量計が出力する検出信号に基づいて充電料金の金額を算出する電気車両用充電装置において、
電力供給系は、一つの電力供給線に複数の分岐線を接続し、各分岐線に挿入された接点を介して電気車両のケーブル接続形式の種類に個々に対応する接続構造を有する電源バッテリ接続手段を接続して構成され、
操作系は、前記充電時間を設定するための充電時間設定手段と、充電開始スイッチと、前記電力供給系の接点のいずれに閉路させるかを選択するためのケーブル接続形式選択手段とを有し、
制御系は、前記充電時間設定手段により前記充電時間を設定することにより前記充電開始スイッチのON動作を有効にするとともに、前記充電開始スイッチのON動作によりケーブル接続形式選択手段を能動状態にするように構成されていることを特徴とする電気車両用充電装置。」(【請求項1】)

b「電源バッテリ接続手段は複数種類あり、電気車両の充電形式の種類に個々に対応する接続構造は、少なくとも一つは電気車両のバッテリに一端部が接続されている又は結合可能なケーブルの他端部に設けられたプラグを結合できるコンセントであり、他の少なくとも一つは、電気車両のバッテリに接続できるコネクタ付きケーブルであり、前記コネクタ付きケーブルは、回転自在に取付けられた巻取ドラムに伸縮自在に巻き取られていることを特徴とする請求項1又は2に記載された電気車両用充電装置。」(【請求項3】)

c「また、旅行途中に現在容量が少なくなったことに気が付いても、余力で走行可能な距離内に当該EV専用の充電装置が設置されていないことが少なくない。近年、電気自動車や電気自転車の実用台数が増えるに連れて、ガソリン車に対するガソリンステーションと同様に、街中の随所に充電ステーションを設け、そこにEV用充電装置を設置することが提案され、また、ガソリンステーションにEV用充電装置を設置することが提案されているが、いずれの場合も、充電には時間がかかり、その間、EVを充電ステーション又はガソリンステーションに束縛されるので、商用、観光その他の用事のための有効時間が削減されるという不都合がある。」(【0002】)

d「次に、本発明のEV用充電装置の実施の形態について、図示の実施例を参照して説明する。図1は本発明装置の正面図、図2は扉を開けた状態の正面図、図3は図1のA-A断面図、図4は図1のB-B断面図である。EV用充電装置Aは、外装を兼ねる筐体1を有し、その筐体の上部正面パネル1Aに透明板で密閉された表示窓2を有し、その表示窓の中に、主電源が投入されているか否かを点灯と滅灯により表示する電源ランプ3aと、充電中か否かを点灯と滅灯により表示する状態表示ランプ3bと、充電により供給した電力量(KWH)を表示する電力量表示部4と、1回の利用で充電した時間を表示するための充電時間表示部5と、充電料金の金額を表示する充電料金表示部6とが設けてある。
また、筐体1の正面下半部には、錠付き扉7が取付けられている。」(【0012】-【0013】)

e「閉状態の扉の背後上部には、操作部材を取付けた操作盤9が筐体正面に近い位置に設けてあり、その操作盤に、後述されるケーブル接続形式選択手段の一部を構成する車種選択ダイヤル10と、後述される充電時間設定手段の一部を構成する時間設定ダイヤル11と、充電開始SW12と、充電停止SW13と、複数個のコンセント14,15が設けられている。コンセント14,15には、それぞれ所定の車種のEVのバッテリに一端部が接続されたケーブルの他端部に接続されているプラグを結合することができる。」(【0014】)

f「筐体1の表示窓2の背後の内側及び/又は操作盤9の背後には、充電を実行するための電気回路が備えてある。続いて、この電気回路について説明する。電気回路は、大別して、装置利用者により操作される操作系と、操作により設定された条件に基づき特定の回路構成要素の動作を制御する制御系と、制御に基づき所定の上記電源バッテリ接続手段に対して電力を供給する電力供給系と、制御に基づく充電時間及び供給電力量を計測又は検出する検出系と、計測値又は検出量を利用者に表示する表示系とを構成している。」(【0017】)

g「次に、当該EVの車種に対応した電源バッテリ接続手段により本装置とEVの車載バッテリとを接続する。・・・略・・・(b)一端が車載バッテリと、他端が本装置のコンセントとそれぞれ着脱自在に接続できる充電ケーブルを装備している車種の場合は、その充電ケーブルの一端のプラグを本装置の当該車種に対応するコンセント(14又は15)に結合し、他端のソケットをバッテリに結合する。」(【0030】)

h「続いて、EVのフロントパネルのバッテリ容量表示メータ等に表示されている放電深さから充電可能な時間を推測し、その充電可能な時間のうち、商用又は観光などの目的達成まで駐車する時間を最大とする範囲で、希望充電時間を充電時間設定ダイヤル11の回転操作により設定する。なお、本装置を電源バッテリ接続手段によりEVの車載バッテリとを接続した時に、その車載バッテリの現在の電気容量(放電深さ)を検出して、充電可能な時間を本装置の表示窓2に表示するように、バッテリチェッカー(容量検出計)と表示器を、本装置に備えることも可能である。このようにした場合は、バッテリを本装置に接続すると同時に、充電時間を容易適切に設定することができるので、利用者に便利である。」(【0031】)

上記記載及び図面に基づけば、コンセント以外の機能である表示部としての電力量表示部4と充電時間表示部5と充電料金表示部6、及び、コンセント14,15が、縦長の筐体1が有する収納スペースに収納されている。

上記記載事項からみて、引用例には、
「縦長の筐体内に収納されることで電気車両用充電装置を構成する電気車両用充電装置であって、電気車両に充電するための充電ケーブルのプラグが結合されるコンセントを備え、当該コンセントは、縦長の筐体に設けられる収納スペースに収納される電気車両用充電装置。」
との発明(以下、「引用発明1」という。)、及び、
「縦長の筐体内に収納されることで電気車両用充電装置を構成する電気車両用充電装置であって、電気車両に充電するための充電ケーブルのプラグが結合されるコンセント以外の機能を実現するための表示部としての電力量表示部と充電時間表示部と充電料金表示部を備え、当該表示部は、縦長の筐体に設けられる収納スペースに収納される電気車両用充電装置。」
との発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。


4.対比
(1)本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「縦長の筐体」、「電気車両用充電装置」、「電気車両」は、それぞれ本願発明1の「縦長の本体」又は「造営材若しくは構造物」、「電気自動車用充電装置」、「電気自動車」に相当する。

その機能をも考慮すると、引用発明1の「プラグが結合されるコンセント」は、本願発明1の「プラグが挿抜自在に接続されるコンセント」に相当する。

本願発明1のコンセントは「当該コンセントを収納する箱形の筐体」内にあり、当該筐体は「収納スペースに収納される」ので、当該コンセントは収納スペース内にあることとなり、引用発明1の「当該コンセントは、縦長の筐体に設けられる収納スペースに収納される」と、本願発明1の「当該筐体は、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納される」は、「当該コンセントは、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納される」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「縦長の本体内に収納されることで電気自動車用充電装置を構成する電気自動車用充電装置であって、電気自動車に充電するための充電ケーブルのプラグが挿抜自在に接続されるコンセントを備え、当該コンセントは、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納される電気自動車用充電装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1は、コンセントを収納する箱形の筐体が収納スペースに収納されているのに対し、引用発明1は、コンセントは収納スペースに収納されているが、箱形の筐体内に収納されているとの構成は有していない点。
〔相違点2〕
本願発明1は、電気自動車用充電装置のモジュールであるのに対し、引用発明1は、電気自動車用充電装置ではあるが、モジュールとの構成は有していない点。

(2)本願発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「縦長の筐体」、「電気車両用充電装置」、「電気車両」は、それぞれ本願発明2の「縦長の本体」又は「造営材若しくは構造物」、「電気自動車用充電装置」、「電気自動車」に相当する。

その機能をも考慮すると、引用発明2の「プラグが結合されるコンセント」は、本願発明2の「プラグが挿抜自在に接続されるコンセント」に相当し、引用発明2の「コンセント以外の機能を実現するための表示部としての電力量表示部と充電時間表示部と充電料金表示部」は、本願発明2の「コンセント以外の機能を実現するための手段」に相当する。

本願発明2のコンセント以外の機能を実現するための手段は「当該手段を収納する箱形の筐体」内にあり、当該筐体は「収納スペースに収納される」ので、当該手段は収納スペース内にあることとなり、引用発明2の「当該表示部は、縦長の筐体に設けられる収納スペースに収納される」と、本願発明2の「当該筐体は、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納される」は、「当該手段は、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納される」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「縦長の本体内に収納されることで電気自動車用充電装置を構成する電気自動車用充電装置であって、電気自動車に充電するための充電ケーブルのプラグが挿抜自在に接続されるコンセント以外の機能を実現するための手段を備え、当該手段は、造営材若しくは構造物に設けられる収納スペースに収納される電気自動車用充電装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明2は、コンセント以外の機能を実現するための手段を収納する箱形の筐体が収納スペースに収納されているのに対し、引用発明2は、コンセント以外の機能を実現するための手段は収納スペースに収納されているが、箱形の筐体内に収納されているとの構成は有していない点。
〔相違点2〕
本願発明2は、電気自動車用充電装置のモジュールであるのに対し、引用発明2は、電気自動車用充電装置ではあるが、モジュールとの構成は有していない点。


5.判断
(1)本願発明1の相違点1、2について
電気自動車用充電装置におけるコンセントを、箱形の筐体内に収納されてなるモジュールとし、該モジュールを充電装置本体に対し着脱可能に構成することにより、コンセントの増設/交換等を容易にする技術は、既に本願出願以前に請求人がニュースリリース等で多数公開している周知の技術(必要であれば、URL:http://panasonic-denko.co.jp/corp/news/0909/0909-9.htm,2009年9月17日付けのニュースリリース「コンセントの増設・交換が可能、パブリックエリア向け 電気自動車用充電スタンド「ELSEEV(エルシーヴ)」を開発、来夏発売予定」等を参照)である。
また、上記cにあるように電気自動車の実用台数が増加することにより、電気自動車用充電装置も設置場所によって使用状況が変わるから、引用発明1においても、当該装置の使用状況に応じてコンセントを増設しようとすることは、当業者であれば適宜行い得る設計的事項にすぎない。
そうであれば、引用発明1において、電気自動車用充電装置のコンセントを増設しようとする際に、上記周知の技術に基づいて、コンセントを箱形の筐体内に収納されてなるモジュールにすることにより、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成のようにすることは当業者が容易に考えられたものと認められる。

そして、本願発明1の作用効果も、引用発明1及び上記周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明1は、引用発明1及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明2の相違点1、2について
電気自動車用充電装置におけるコンセントを、箱形の筐体内に収納されてなるモジュールとし、該モジュールを充電装置本体に対し着脱可能に構成することにより、コンセントの増設/交換等を容易にする技術は、既に本願出願以前に請求人がニュースリリース等で多数公開している周知の技術(必要であれば、URL:http://panasonic-denko.co.jp/corp/news/0909/0909-9.htm,2009年9月17日付けのニュースリリース「コンセントの増設・交換が可能、パブリックエリア向け 電気自動車用充電スタンド「ELSEEV(エルシーヴ)」を開発、来夏発売予定」等を参照)であり、コンセントを増設すれば、充電に関連する様々な機能(即ち、コンセント以外の機能を実現するための手段)も当然に増設する必要がある。
また、上記cにあるように電気自動車の実用台数が増加することにより、電気自動車用充電装置も設置場所によって使用状況が変わるから、引用発明2においても、当該装置の使用状況に応じてコンセントを増設しようとすることは、当業者であれば適宜行い得る設計的事項にすぎない。
そうであれば、引用発明2において、コンセントを増設しようとする際に、上記周知の技術に基づいて、コンセントを箱形の筐体内に収納されてなるモジュールにすると共に、コンセント以外の機能を実現するための手段もモジュール化することにより、上記相違点1、2に係る本願発明2の構成のようにすることは当業者が容易に考えられたものと認められる。

そして、本願発明2の作用効果も、引用発明2及び上記周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明2は、引用発明2及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
したがって、本願発明1は、引用発明1及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明2は、引用発明2及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-16 
結審通知日 2012-11-20 
審決日 2012-12-03 
出願番号 特願2010-248959(P2010-248959)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 槙原 進
大河原 裕
発明の名称 電気自動車用充電装置のモジュール  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 北出 英敏  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  

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