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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1269006
審判番号 不服2012-14252  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-25 
確定日 2013-01-17 
事件の表示 特願2006-296683「外表面を加飾した合成樹脂成形品及びその加飾方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月22日出願公開、特開2008-114373〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年10月31日の出願であって、平成23年8月9日付け、及び平成24年1月23日付けで手続補正書が提出され、同年4月17日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年7月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記の平成24年1月23日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書、及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「丸筒状の部位を有する成形品の、該丸筒状部位の外表面の全周に亘って、スクリーン印刷による厚盛状の印刷層(7)により周方向に沿って連続状に凸状模様(M)を形成する加飾方法であって、
前記厚盛状の印刷層(7)は層厚の平均が0.1mm以上、最大の層厚が0.2mm以上を有するものとし、
スクリーン版(21)を、版面が前記成形品の丸筒状部位の外表面から6?8mmの隙間(S)をおいて位置するようにテンションを懸けてセットし、
丸筒状部位の中心軸回りの回動に同期してスクリーン版(21)を移動させながら、スキージ(22)で前記スクリーン版(21)を印圧し、該スクリーン版(21)をV字状にして該V字の先端を丸筒状部位の外表面に押し付けるようにした状態で印刷インクをスクイーズして印刷層(7)を厚盛状に丸筒状部位の外表面に転写、形成することを特徴とする加飾方法。」

3.引用例
(3-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成12年9月5日に頒布された「特開2000-238231号公報 」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下、同じ。)
・「印刷開始部と印刷終了部が連続する曲面をもつワークに、所定のパターンを形成したスクリーンをスキージにより加圧しながら、スクリーンを移動させるとともにワークを回転させることによりインクを印刷するスクリーン印刷法において、前記ワークに印刷されたインクを固化手段により固化することを特徴とするスクリーン印刷法。」(【請求項2】)
・「以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明のスクリーン印刷法を示す模式図である。棒状あるいは筒状の印刷開始部と印刷終了部が連続する曲面を持つワーク1にスクリーン2をスキージ3により加圧しながらスクリーン2を移動することによりインク4が押し出され、スクリーン2に形成されたパターンにしたがつて、ワーク1に所定のパターンのインク5が形成される。」(段落【0009】)
・「スクリーン2の移動に従って摩擦力でワーク1も回転しながら曲面印刷がなされる。あるいは、スクリーン2の移動に同期してワーク1をモータで回転させてもよい。ワーク1に形成されたインク5は印刷途中で固化手段6により固化される。このとき、スクリーン2の移動とワーク1の回転を続けながらつまり印刷を続けながら固化を行うことができる。」(段落【0010】)
・「図3は本発明の別のスクリーン印刷法を示す模式図であり、スクリーン2の印刷パターン形成部21が分離されており間に印刷パターン無形成部22が存在する。ここでいう印刷パターンとは全体があるひとつづきの線よりなる場合だけでなく、ある模様や形、それらの2次元的配置および断続的繰り返しも当然含まれる。」(段落【0016】)
また、図1から、以下の事項が看取できる。
・連続する曲面が円形であるワーク。
・スクリーンは、スキージにより押し込まれている。
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「印刷開始部と印刷終了部が連続する曲面が円形であるワークに、所定のパターンを形成したスクリーンをスキージにより押し込んで加圧しながら、スクリーンを移動させるとともにワークをスクリーンの移動に同期して回転させることにより、インクが押し出され、スクリーンに形成されたパターンにしたがつて、ワークに所定のパターンのインクを印刷して、全体があるひとつづきの線や断続的繰り返しからなる模様や形の印刷パターンを形成するスクリーン印刷法。」
(3-2)引用例2
同じく引用された、本願の出願前である平成13年11月6日に頒布された特開2001-310543号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
・「紫外線硬化型インキを使用し、スクリーン印刷方式で100μm?500μmの膜厚で直接印刷することを特徴とするプラスチック容器の印刷方法。」(【請求項1】)
・「この出願発明は、プラスチック製品に顔料濃度の低い紫外線硬化型インキにより、とくに商品名、デザインなどを表示、加飾するに際し、直接印刷し、高速ライン下に紫外線で硬化することによる厚膜のプラスチック製品及びその印刷方法に関する。」(段落【0001】)
・「この出願発明のプラスチック製品の胴部表面への印刷方法において使用される容器は、中空成形、二軸延伸ブロー成形、インジェクション成形等によって得られたプラスチック製容器である。」(段落【0014】)
・「紫外線硬化型のインキを150メッシュ、線径100mμポリエチレンテレフタレート製スクリーン版を使用して無処理ポリエチレンテレフタレート製容器上に乳剤厚300mμの膜厚でスクリーン印刷を行い、120W/cmメタルハライドランプにより紫外線積算光量200mj/cm^(2)を照射し、250μmの厚膜の硬化膜を得た。この製品は、印刷面が厚く形成されているので、手で触ったところ、その形状を認識することができた。」(段落【0023】)
これらの記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「スクリーン印刷方式で加飾するに際し、100μm?500μm、250μmの膜厚で直接印刷する二軸延伸ブロー成形等によって得られた厚膜のプラスチック容器の印刷方法。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「ワーク」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「成形品」に相当し、以下同様に、「(ワークに印刷された)所定のパターンのインク」は、「印刷層(7)」に、「スクリーン」は、「スクリーン版(21)」に、「スキージ」は、「スキージ(22)」に、「(スキージにより押し出される)インク」は、「印刷インク」に、「全体があるひとつづきの線や断続的繰り返しからなる模様や形の印刷パターン」は「連続状」の「凸状模様(M)」に、それぞれ相当する。
また、後者の「印刷開始部と印刷終了部が連続する曲面が円形である」ことは、前者の「丸筒状の部位を有する」ことに包含される。
また、後者の「スクリーン印刷法」は、全体があるひとつづきの線や断続的繰り返しからなる模様や形の印刷パターンを形成するから、「加飾方法」といえる。
また、後者は、「印刷開始部と印刷終了部が連続する曲面が円形であるワークに、所定のパターンを形成したスクリーンをスキージにより押し込んで加圧しながら、スクリーンを移動させるとともにワークをスクリーンの移動に同期して回転させることにより、インクが押し出され、スクリーンに形成されたパターンにしたがつて、ワークに所定のパターンのインクを印刷することにより、全体があるひとつづきの線や断続的繰り返しからなる模様や形の印刷パターンを形成するスクリーン印刷法」であるから、「ワークの、円形の部位の外表面の全周に亘って、スクリーン印刷による所定のパターンのインクにより周方向に沿って全体があるひとつづきの線や断続的繰り返しからなる模様や形の印刷パターンを形成するスクリーン印刷法」であって、「円形の部位の中心軸回りの回動に同期してスクリーンを移動させながら、スキージで前記スクリーンを印圧し、該スクリーンを円形の部位の外表面に押し付けるようにした状態でインクをスクイーズして所定のパターンのインクを円形の部位の外表面に転写、形成するスクリーン印刷法」といえる。
また、後者は、スクリーンにテンションを懸けてセットされていることは明らかであり、スクリーンをスキージにより押し込んで加圧しながら、ワークに印刷するから、セット時にスクリーンとワークとの間には隙間が存在することになり、「スクリーンを、版面がワークの円形の部位の外表面から隙間をおいて位置するようにテンションを懸けてセットし」ているといえ、そして、スクリーンとワークとの間の隙間がなくなるようにスクリーンをスキージにより押し込んで加圧しながら、ワークに印刷するから、スクリーンは、「スクリーンをV字状にして該V字の先端を円形の部位の外表面に押し付けるようにした状態で」あるといえる。
したがって、両者は、
「丸筒状の部位を有する成形品の、該丸筒状部位の外表面の全周に亘って、スクリーン印刷による印刷層により周方向に沿って連続状に凸状模様を形成する加飾方法であって、
スクリーン版を、版面が前記成形品の丸筒状部位の外表面から隙間をおいて位置するようにテンションを懸けてセットし、
丸筒状部位の中心軸回りの回動に同期してスクリーン版を移動させながら、スキージで前記スクリーン版を印圧し、該スクリーン版をV字状にして該V字の先端を丸筒状部位の外表面に押し付けるようにした状態で印刷インクをスクイーズして印刷層を丸筒状部位の外表面に転写、形成する加飾方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明は、印刷層(7)が「厚盛状」であるのに対して、引用発明1は、そのようなものであるか明らかでない点。
[相違点2]
本願発明は、「厚盛状の印刷層(7)は層厚の平均が0.1mm以上、最大の層厚が0.2mm以上を有するもの」のに対して、引用発明1は、この点につき明らかでない点。
[相違点3]
本願発明は、隙間(S)が「6?8mm」であるのに対して、引用発明1は、この点につき明らかでない点。

5.当審の判断
上記相違点について以下検討する。
(5-1)相違点1、及び2について
引用発明2は、上記3.(3-2)のとおりであって、引用発明2における「スクリーン印刷方式」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明における「スクリーン印刷」に相当し、以下同様に、「膜厚」は、「層厚」に、「厚膜」は、「厚盛状」に、「二軸延伸ブロー成形等によって得られたプラスチック容器」は「成形品」に、それぞれ相当する。
また、引用発明2は、スクリーン印刷方式で加飾する印刷方法であるから、「加飾方法」であるといえる。
また、引用発明2は、スクリーン印刷方式でプラスチック容器に印刷するから、プラスチック容器の外表面に印刷することは明らかでである。
また、引用発明2は、スクリーン印刷方式で100μm?500μm、250μmの膜厚で直接印刷するから、印刷層を有することは明らかである。
してみると、引用発明2は、「二軸延伸ブロー成形等によって得られたプラスチック容器(成形品)の外表面に、スクリーン印刷方式(スクリーン印刷)による厚膜(厚盛状)の印刷層により形成される加飾方法であって、膜厚(層厚)の印刷層は100μm(0.1mm)?500μm(0.5mm)、250μm(0.25mm)の膜厚(層厚)を有する加飾方法。」を備えるものであって、当然のことながら上記印刷層の膜厚(層厚)には、平均値や最大値が存在することは明らかであるから、本願発明の「厚盛状の印刷層(7)は層厚の平均が0.1mm以上、最大の層厚が0.2mm以上を有する」との発明特定事項を備えている。そして、本願明細書をみても、「層厚の平均が0.1mm以上、最大の層厚が0.2mm以上」とすることについての臨界的意義は示されておらず、単に印刷層の厚盛状の大きさを示した程度のものに過ぎないから、本願発明において、「層厚の平均が0.1mm以上、最大の層厚が0.2mm以上」とすることに格別の臨界的意義はない。
また、引用発明1と引用発明2とは、共にスクリーン印刷による加飾方法という技術分野に属し、スクリーン版を使用し印刷インクを成形品に転写して印刷層を形成するという共通の機能、作用を有するから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、相違点1、及び2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(5-2)相違点3について
一般にスクリーン印刷方法において、スクリーン版と被印刷物との隙間を、6?8mm程度とすることは、本願の出願前に周知の技術事項(例えば、特開2000-251740号公報の段落【0046】、特開2005-14470号公報の段落【0002】、及び特開平11-291446号公報の段落【0003】参照。)である。
そして、本願明細書をみても、「隙間(S)を6?8mm」とすることについての臨界的意義は示されておらず、単にスクリーン版(21)の版面と成形品の外表面との隙間の大きさを示した程度のものに過ぎないから、本願発明において、「隙間(S)を6?8mm」とすることに格別の臨界的意義はない。
また、引用発明1と上記周知の技術事項とは、共にスクリーン印刷方法という技術分野に属し、スクリーン版と被印刷物との間に隙間を設けてセットして印刷インクを被印刷物に転写するという共通の機能、作用を有するから、引用発明1に上記周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、上記周知の技術事項を適用することにより、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明における全体の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2、及び上記周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5-5)むすび
したがって,本願発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-15 
結審通知日 2012-11-21 
審決日 2012-12-04 
出願番号 特願2006-296683(P2006-296683)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 東 治企
長島 和子
発明の名称 外表面を加飾した合成樹脂成形品及びその加飾方法  
代理人 渡辺 一豊  

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