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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
管理番号 1269118
審判番号 不服2009-19585  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-14 
確定日 2013-01-24 
事件の表示 特願2004-135105「漂白洗浄剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月10日出願公開、特開2005-314575〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続きの経緯
この出願は、平成16年4月30日の出願であって、平成21年3月30日付けの拒絶理由通知に対して同年5月29日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年7月8日付けで拒絶査定がされ、同年10月14日にその拒絶査定不服審判請求がされ、その後、平成24年3月14日付けの当審の拒絶理由通知に対して同年5月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月6日付けの審尋に対して同年9月3日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成24年5月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「(a)過炭酸塩、過ホウ酸塩、及び過燐酸塩から選ばれる無機過酸化物〔以下、(a)成分という〕を過酸化水素として8?25質量%、(b)ビフェニル型蛍光増白剤〔以下、(b)成分という〕を0.01?1質量%、(c)炭素数6?14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、炭素数6?14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物〔以下、(c)成分という〕を5?20質量%、(d)カルボン酸系重合体から選ばれる分散剤〔以下、(d)成分という〕を1?5質量%、(e)下記式
【化1】

で表されるキレート剤〔以下、(e)成分という〕を1?5質量%、並びに、(f)アミラーゼ及びプロテアーゼ〔以下、(f)成分という〕を含有し、界面活性剤の含有量が5質量%以下であり、(a)成分と(c)成分の質量比が(a)成分/(c)成分=30/1?1/1である、漂白洗浄剤組成物。」
(以下、この発明を「本願発明」という。)

第3 当審が通知した拒絶理由
平成24年3月14日付けの当審の拒絶理由通知における[理由]の4.の概要は、「本願発明1?4は、本出願前に頒布された下記の刊行物1?7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、刊行物1、3?7として以下のものが提示されている。

刊行物1:特開平8-157876号公報(原審における「引用文献1」。)
刊行物3:特開平11-217590号公報
刊行物4:特表平9-512290号公報
刊行物5:特開平7-278597号公報
刊行物6:特開平10-95996号公報
刊行物7:特開平8-218096号公報

(なお、上記拒絶理由通知の第2の3(1)アにおいては、「特開平10-95996号公報」は、「刊行物5」として、「特開平7-278597号公報」は、「刊行物6」として記載されているが、それ以降の内容からみて、また、請求人も平成24年5月18日付けの意見書において認識していることから明らかなとおり、上記記載における「刊行物5」は「特開平7-278597号公報」を、また、「刊行物6」は「特開平10-95996号公報」を意図するものである。)

第4 当審の判断
1 刊行物に記載された事項
(1)刊行物1について
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

1a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)過炭酸ナトリウム粒子にホウ酸またはホウ酸塩溶液とケイ酸塩溶液とを別々に噴霧し乾燥して被覆した安定化過炭酸ナトリウムと、
(B)下記化1の一般式(I)または一般式(II)で表わされる漂白活性化剤
【化1】


(R_(1):炭素数10?18のアルキル基またはアルケニル基
R_(2):炭素数7?18のアルキル基またはアルケニル基
M:漂白活性化剤に水溶性を与える陽イオン)
とを含有することを特徴とする漂白性組成物。」
1b:「【0002】
【従来の技術】現在、衣料用の漂白剤や漂白洗剤には、過炭酸ソーダや過硼酸ソーダが漂白基剤として主に利用されている。・・・これらの有機過酸前駆体は過炭酸ソーダのような過酸化水素化合物と反応し漂白効果の高い有機過酸を発生させ、衣類に付着した食物の染みや黄ばみなどの汚れを効果的に落とすことができる。・・・」
1c:「【0016】洗剤成分としては、必要に応じてアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、無機・有機ビルダー、再汚染防止剤、酵素、着色剤、香料、蛍光剤等が用いられ、これらは従来の衣料用等の粒状洗剤と同様に、互いに造粒して、あるいはそのままの形で本発明の漂白性組成物中に粉体混合される。」
1d:「【0019】無機アルカリビルダーとしては、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。他のキレートビルダーとしては、トリポリリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸塩に代表される無機リン化合物、下記化4の一般式(III)?(VI)で示される化合物に代表されるポリホスホン酸類、フィチン酸に代表される有機リン酸塩、(メタ)アクリル酸系高分子、ゼオライトなどが挙げられる。・・・」
1e:「【0021】再汚染防止剤としてはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどがある。蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)としては、サビナーゼ6.0T(ノボ・ノルディスク社)、アルカラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼなどがあり、脂質分解酵素としてはアルカリリパーゼなどがある。」
1f:「【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。これに先立ち、まず保存安定性(有効酸素残存率)の評価方法、および実施例で用いた安定化過炭酸ナトリウムの製造方法を以下に示す。
・・・
【0027】(2)安定化過炭酸ナトリウムおよびその比較対照品の製造方法
以下の(a)?(g)の過炭酸ナトリウムを製造した。このうち、(a)?(e)が本発明の安定化過炭酸ナトリウムであり、(f)、(g)が比較用の過炭酸ナトリウムであり、(h)が対照用の未処理の過炭酸ナトリウムである。
【0028】(a)平均粒径500μmの過炭酸ナトリウム8kgを噴霧ノズル2本を有する流動層式乾燥機の多孔板上に置き、下方より100℃の熱風を送って過炭酸ナトリウムを流動状態に保った。多孔板より40cm上の位置にある噴霧ノズルより90℃の15%ホウ酸水溶液を80g/分の流量で噴霧し、同時に多孔板より40cm上の位置にある別の噴霧ノズルより90℃の水ガラス1号水溶液(SiO_(2)として濃度15%)を20g/分の流量で噴霧した。こうして熱風で流動しつつ、両液の噴霧を33.3分間続けた。〔過炭酸ナトリウムに対するホウ酸の量は5.0%、水ガラスの量は1.25%(SiO_(2)として)に相当する〕。この間過炭酸ナトリウムの温度は50?70℃の範囲に維持された。両液の噴霧を停止した後、更に10分間送風を続け、本発明の安定化過炭酸ナトリウム(a)を得た。
【0029】(b)水ガラス1号水溶液の濃度をSiO_(2)として7.5%とした以外は(a)と同様に実施して本発明の安定化過炭酸ナトリウム(b)を得た〔過炭酸ナトリウムに対するホウ酸の量は5.0%、水ガラスの量は0.62%に相当する〕。
【0030】(c)噴霧を以下のようにした以外は(a)と同様に実施した。噴霧ノズルより90℃の15%ホウ酸水溶液を100g/分の流量で26.7分間噴霧した後、ホウ酸水溶液の噴霧を停止し〔過炭酸ナトリウムに対するホウ酸の量は5.0%に相当する〕、次いで別の噴霧ノズルより90℃の水ガラス1号水溶液(SiO_(2)として濃度15%)を100g/分の流量で6.7分間噴霧して〔過炭酸ナトリウムに対する水ガラスの量は1.3%(SiO_(2)として)に相当する〕、本発明の安定化過炭酸ナトリウム(c)を得た。
【0031】(d)水ガラス1号の水溶液を先ず噴霧し、次いでホウ酸水溶液を噴霧した以外は(c)と同様に実施して安定化過炭酸ナトリウム(d)を得た。なお、得られた上記の本発明の被覆過炭酸ナトリウムの平均粒径はいずれも500?1700μmであった。
【0032】(e)過炭酸ナトリウムを撹拌混合機に入れ、撹拌を行ないながらメタホウ酸ナトリウム25%と珪酸ナトリウム25%水溶液を噴霧してさらに10分間撹拌した後、熱風乾燥して安定化過炭酸ナトリウム(e)を得た。(過炭酸ナトリウムに対するメタホウ酸ナトリウムの量は5%、珪酸ナトリウムの量は1%に相当する。
(f)水ガラス1号水溶液の噴霧を行わなかった以外は、(c)と同様に実施して比較例の被覆過炭酸ナトリウム(f)を得た。
【0033】(g)ホウ酸水溶液の噴霧を行わなかった以外は、(c)と同様に実施して比較例の被覆過炭酸ナトリウム(f)を得た。
(h)(a)で用いた被覆する前の過炭酸ナトリウムを未処理でそのまま用い、対照用の過炭酸ナトリウム(g)とした。
(3)漂白活性化剤
実施例で使用した漂白活性化剤を、以下化5の一般式(VII)と表1で示した。
【0034】
【化5】

【0035】
【表1】
表1:漂白活性化剤の構造
活性化剤No. R X
A C_(11)H_(23) SO_(3)Na
B C_(13)H_(27) SO_(3)Na
・・・
【0036】実施例1?32
(a)?(h)の過炭酸ナトリウムと(A)?(P)に示した漂白活性化剤を用い、表2に示した漂白剤組成物中での有効酸素残存率を表3に示した。また、表4に示した漂白洗剤組成物中での有効酸素残存率を表5に示した。
【0037】
【表2】
表2:漂白剤組成物
組成(重量%) 漂白剤A 漂白剤B 漂白剤C
過炭酸ナトリウム 50 60 70
漂白活性化剤 10 10 10
LAS-Na 1.0 - 1.0
ノニオン界面活性剤 - 0.5 0.5
NTAー3Na 3.0 - -
アクリル酸系高分子 - 3.0 -
酵素 0.5 - 0.5
硫酸カルシウム半水塩 1.0 - 1.0
香料 0.1 - 0.1
蛍光剤 - 0.1 0.1
炭酸ナトリウム 残部 残部 残部
過炭酸ナトリウム:内容は表3中に記載
漂白活性化剤:内容は表3中に記載
LAS-Na:直鎖アルキル(C_(10)?C_(14))ベンゼンスルホン酸ナトリウム
ノニオン界面活性剤:POE(p=9)第2級アルキル
(C エーテル NTA:ニトリロ三酢酸ナトリウム
アクリル酸系高分子:アクリル酸/マレイン酸共重合体(分子量50000)
酵素:プロテアーゼ(ノボ・インダストリー社製;アルカラーゼ6.0T)
蛍光剤:チノパールCBSーX(チバ・ガイギー社製)
【0038】
【表3】
表3:
有効酸素残存率
過炭酸ナトリウム 漂白活性化剤 漂白剤A 漂白剤B 漂白剤C
実施例1 a A 99 99 98
実施例2 b B 99 99 97
・・・・ 」


(2)刊行物3について
上記刊行物3には、以下の事項が記載されている。

3a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)水中で過酸化水素を放出する成分 4?80重量%、(b)水中で過酸化水素と反応し、有機過酸を発生させる有機過酸前駆体 0.1?20重量%、(c)分子内にN原子を含み、20℃におけるCaキレート安定度定数(pKCa)が4.5以上で、かつ20℃における有機過酸残存率が80%以上である水溶性キレート剤 0.1?40重量%及び(d)アルカリ剤を含有することを特徴とする漂白洗浄剤組成物。
【請求項2】 (c)成分のキレート剤が、下記一般式(1):
【化1】

[W及びXは、水素原子、-R、-R-OH、-COOM、-SO_(3)M又は-PO_(3)M(ここで、Rはアルキル基又はアルケニル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム基を示す)を示し;Y及びZは、水素原子、-R、-R-OH、-COOM、-SO_(3)Mもしくは-PO_(3)M又は-R^(1)-COOM、-R^(1)-SO_(3)Mもしくは-R^(1)-PO_(3)M(ここで、Mは前記と同じ意味を示し、R^(1)はアルキル基、アルケニル基又はアルキレン基を示す)を示す。]で表されるものである請求項1記載の漂白洗浄剤組成物。」
3b:「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、有機過酸前駆体から発生する有機過酸は、水道水等に含まれるCaイオン等の硬度成分と反応して結合した場合、充分な漂白洗浄力が発揮できなくなることがある。このような問題の発生を防止するには、水道水中のCaイオン等の硬度成分をキレート剤で捕捉する方法があるが、有機過酸と結合した硬度成分を引き離すには、キレート剤自体のCa安定度数が大きくなければならない。かかるCa安定度数が大きなキレート剤としては、N原子を含有するEDTA等を挙げることができる。しかし、分子中にN原子を有するEDTA等のキレート剤は、有機過酸との反応性が高く、水溶液中において有機過酸と反応して分解させてしまい、やはり漂白洗浄力を低下させるという問題がある。」
3c:「【0005】そこで本発明は、N原子を含むキレート剤と有機過酸前駆体との併用系であっても、優れた漂白洗浄力を発揮できる漂白洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究の結果、Ca安定度数が大きいことに加えて、さらに有機過酸との反応性が低いキレート剤を見出し、本発明を完成したものである。」
3d:「【0033】
(c)成分の水溶性キレート剤としては、下記一般式(1):
【0034】
【化5】

【0035】・・・で表されるものを挙げることができる。
【0036】一般式(1)に該当する水溶性キレート剤としては、下記式で表されるものを挙げることができる。
【0037】
【化6】

【0038】漂白洗浄剤組成物中における(c)成分の含有量は、充分な漂白洗浄力を付与するため、0.1?40重量%であり、好ましくは0.5?30重量%であり、特に好ましくは1?20重量%である。」
3e:「【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0077】実施例1?10、比較例1?6
表1及び下記の各成分を用い、実施例及び比較例の漂白洗浄剤組成物を製造した。
【0078】
【化8】

【0079】
【化9】

【0080】LAS-1:日石洗剤(株)製のアルキルベンゼンスルホン酸である「アルケンL(アルキル鎖の炭素数10?14のもの)」を48%水酸化ナトリウムで中和したもの
AS:三菱化学(株)製ドパノール25サルフェート(C12?15硫酸)のナトリウム塩
AOS:α-C12オレフィンスルホン酸ナトリウム脂肪酸塩:パルミチン酸ナトリウム
AES:ポリオキシエチレンアルキル(C12?15)エーテル硫酸ナトリウム(EO(エチレンオキシド)平均付加モル数2)
AE-1:三菱化学(株)製のノニデッドS-3(C12、C13アルコールにEOを平均3モル付加したもの)
AE-2:日本触媒(株)製のソフタノール70(C12?15の2級アルコールにEOを平均で7モル付加したもの)
ゼオライト:4Aゼオライト(平均粒径3μm)
結晶性ケイ酸塩:SKS-6(δ-Na_(2)Si_(2)O_(5))、結晶性層状シリケート、平均粒子径20μm、ヘキストトクヤマ社製
非晶質ケイ酸塩:JIS1号ケイ酸ナトリウム
炭酸ナトリウム:デンス粒灰
PAA:ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量12000)
AA-MA:ソカランCP5、アクリル酸-マレイン酸共重合体(平均分子量70000)
蛍光染料:チノパールCBS(チバガイギー社製)と、ホワイテックスSA(住友化学(株)製)を重量比で同量配合したもの
香料:特開平8-239700号公報の実施例記載の香料組成物を使用
酵素:サビナーゼ12.0T type-W(プロテアーゼ)、リポラーゼ100T(リパーゼ)、ターマミル60T(アミラーゼ)(以上はノボノルディスク社製)及びKAC500(アルカリセルラーゼ,花王(株)製)を、重量比2:1:1:1で混合したもの。
【0081】[洗浄力試験]下記の方法により、実施例及び比較例の組成物の洗浄力を試験した。結果を表1に示す。
(人工汚染布の調製)メリヤス布(谷頭商店製)を1m×10cmの短冊状に切断したものを、泥溶液に静かに浸したのち引き上げ、これを3回繰り返した。次に、乾燥したのち、メリヤス布を10×10cmに切断し、人工汚染布を得た。なお、泥溶液は、ビリルビン(SIGMA社製)のクロロホルム溶液(0.6g/L)を用いた。
【0082】(洗浄方法)各組成物の水溶液1リットルをビーカーに入れ、そこに10×10cmの人工汚染布5枚を浸漬して洗浄し、その後すすいだ。洗浄条件は以下のとおりである。
洗浄時間 120分
組成物濃度 0.5重量%
水の硬度 4゜DH
水温 20℃
すすぎ 水道水にて5分間溜めすすぎ
(評価方法)洗浄力の評価は、布の460nmにおける反射率を自記色彩計(島津製作所製)にて測定し、下記式から洗浄率(%)を求め、5枚の測定平均値を洗浄力とした。
【0083】
【数2】

【0084】
【表1】

【0085】
【発明の効果】本発明の漂白洗浄剤組成物は、N原子を含むキレート剤と有機過酸前駆体を併用した場合でも、安定でかつ優れた漂白洗浄力を発揮することができる。」

(3)刊行物4について
上記刊行物4には、以下の事項が記載されている。

4a:「【特許請求の範囲】
1. 5?95重量%の洗浄界面活性剤、0?80重量%の洗浄性ビルダー、0.5?40重量%の過酸素漂白剤、0.01?10重量%の漂白活性化剤、0.1?10重量%のキレート剤、および0.05?5重量%のプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼおよびそれらの混合物から成る群より選択される酵素を含んでなる、漂白剤含有洗剤組成物であって、下記式により規定される65より大きい生物学的漂白指数(「BBI)を有する前記洗剤組成物。
式中[C]=[キレート剤のレベル(重量%)×(キレート剤中のキレート化基の数)]÷(キレート剤の分子量)×1000、
[E]=プロテアーゼ13KNPU、アミラーゼ300KNU、リパーゼ165KLU、およびセルラーゼ2000Cevuの標準的活性を仮定した洗剤組成物中の前記酵素の重量%、
[BA]=[(漂白活性化剤の重量%)×(BOBSについて6の係数、カチオン活性化剤について6の係数、2核マンガン錯体の活性化剤について550の係数、およびすべての他の漂白活性化剤について4の係数)]÷(漂白活性化剤の分子量)×1000、そして
[PB]=(過酸素漂白剤の重量%)×(過酸素漂白剤からの有効酸素の重量%)÷100。
・・・
3. 過酸素漂白剤がアルカリ金属過炭酸塩を含んでなる、請求項1に記載の洗剤組成物。
・・・
7. キレート剤がジエチレントリアミンペンタメチレンホスホネート、エチレンジアミンテトラメチレンホスホネート、ジエチレントリアミンペンタアセテート、エチレンジアミンジスクシネート、エチレンジアミンテトラアセテート、およびそれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の洗剤組成物。
・・・」
4b:「発明を実施するための最良の形態
驚くべきことには、より高いレベルのキレート剤および酵素は洗剤組成物におけるより低いレベルの漂白剤を補償することが今回発見された。換言すると、あるレベルの漂白剤により提供される改良された汚れ除去、黒ずみ浄化および白色度の維持のクリーニング利益は、より高いレベルのキレート剤および酵素を使用することによって、漂白剤のより低いレベルにおいて得ることができる。」(第7頁第20行?25行)
4c:「(2)漂白活性化剤を減少させかつキレート剤/酵素を増加させた洗剤組成物
本発明の他の態様によれば、漂白活性化剤の量(レベル)の減少およびキレート剤および/または酵素のレベルの増加により規定される漂白剤含有洗剤組成物が提供される。特に、5?95重量%の洗浄界面活性剤、0?80重量%の洗浄性ビルダー、漂白剤、およびキレート剤および/または酵素を含んでなり、成分の量は下記のように規定される漂白剤含有洗剤組成物が提供される。」(第10頁第10行?15行)
4d:「実施例1
下記の実施例において、「比較A」および「比較B」は本発明の範囲外の洗剤組成物として使用するが、「実施例1」は本発明に従い製造された洗剤において使用する。比較AおよびBの白色度の性能は実施例1と比較して劣っている。さらに、実施例1はより低いレベルのTAEDを使用するので、色の減退が比較Aより少ない。
データ:洗濯洗浄試験

試験方法-白色度
全規模の6サイクルの洗浄装置の試験において・・・3つの組成物(比較AおよびBおよび実施例1)の性能を比較した。・・・最初の完全な洗浄サイクルの開始前に、洗濯装入物ならびにEMPA研究所(スイス国)により商品名「組み合わされたEMPA洗浄試験ストリップNo.103」(洗浄試験ストリップNo.103は8つの綿試験片(スワッチ)のストリップを含んでなり、・・・蛍光増白剤を使用しないで漂白された綿、綿のEMPA標準的汚れ、血液で汚れた綿、ココアで汚れた綿、血液/牛乳/カーボンブラックで汚れた綿、硫黄ブラックで染色された綿、原綿および赤ワインで汚れた綿である)で販売されているような汚れた布帛ストリップを、75gの洗剤製品を含有する「小粒体」型の小出装置と一緒に、洗浄装置のドラムに入れた。引き続く5回の完全な洗浄サイクルの各々について、同一量の洗剤製品および汚れたストリップを使用した。第6の完全な洗浄サイクルの終わりにおいて、洗濯装入物を洗浄装置から取り出し、空気中で乾燥し、次いで3つの典型的にはの布帛の白色度/ディンジネス(dinginess)の評価を行った。

白色度
布帛の各片の白色度/ディンジネスを専門家のパネルにより評価した。比較の組の組み合わ・・・せた平均した結果は下に記載する通りであり、比較組成物Aを共通の参照として使用する。

・・・
実施例3

」(第38頁第3行?第44頁)
4e:「(5)酵素
本発明において使用するために好適な酵素は、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、またはそれらの混合物である。プロテアーゼおよびアミラーゼは好ましい。
プロテアーゼの好適な例は、バシラス・サチリス(B.subtilis)、・・・。商業的に入手可能であるタンパク質に基づく汚れを除去するために好適なタンパク質分解酵素は、商品名・・・SAVINASE(Novo Industries A/S)および・・・で販売されているものを包含する。・・・
アミラーゼは、例えば・・・TERMAMYL・を包含する。」(第27頁第21行?第29頁第2行)

(4)刊行物5について
上記刊行物5には、以下の事項が記載されている。

5a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有することを特徴とする粉末漂白剤組成物。
(a)成分:水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物
1.0?99.5重量%
(b)成分:一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体
0.05?10.0重量%
【化1】

(式中、X,Y,Zは同一又は異なって、-H、-CH_(3)、-COOM、-CH_(2)COOM又は-OHを示し、MはH、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン又は塩基性アミノ酸基を示す。)
(c)成分:α-アミラーゼ活性を有するアルカリプルラナーゼ、もしくはα-アミラーゼ活性を有するアルカリ耐性プルラナーゼ又はその混合物
0.05?5.0重量%
(d)成分:アルカリプロテアーゼ、もしくはアルカリ耐性プロテアーゼ又はその混合物 0.05?5.0重量%
【請求項2】 α-アミラーゼ活性を有するアルカリプルラナーゼ、もしくはα-アミラーゼ活性を有するアルカリ耐性プルラナーゼの、可溶性澱粉に対する至適pHが8?11である請求項1記載の粉末漂白剤組成物。
【請求項3】 更に、下記(e)成分を含有する請求項1又は2記載の粉末漂白剤組成物。
(e)成分:キレート剤」
5b:「【0005】また、アルカリプルラナーゼ又はアルカリ耐性プルラナーゼは、溶液中の微量金属イオン(例えばCaイオン等)よってその活性が阻害されるため、漂白剤に配合する場合はキレート剤(例えば、EDTA等)を併用することが好ましいが、この場合において、含金属染料で染色された色・柄物が変色又は褪色するという問題があった。」
5c:「【0006】本発明が解決しようとする課題は、カレー等の食べこぼし汚れの漂白力に優れ、かつ、色・柄物の変色、褪色を抑制した漂白剤組成物を提供することである。」
5d:「【0023】(c)成分として使用されるプルラナーゼは、・・・。かかる(c)成分は、組成物中、0.05?5重量%、好ましくは0.1?2重量%配合される。(c)成分の配合量が0.05重量%未満の場合、漂白性能が十分でなく、一方、5重量%を超えても(c)成分の配合量が0.05?5重量%の場合と比べて、著しく向上することはないので不経済である。
【0024】また、(d)成分として使用されるプロテアーゼは、プロテアーゼ1g当たり1APU?1,000APUのプロテアーゼ活性を有する。かかる(d)成分の配合量は、組成物中、0.05?5.0重量%、好ましくは0.1?2重量%である。」
5e:「【0034】実施例1?11及び比較例1?4
表1に示す組成で漂白剤組成物を調製し、下記の方法で漂白効果と脱色防止性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0035】(1)漂白効果の評価方法
20℃の水道水に表1の漂白剤を有効酸素が0.05%となるように添加し、下記の調製法で作成したカレー汚染布*を8cm×8cmの大きさで5枚、30分間浸漬し、次式で漂白率を算出した。
【0036】
【数1】

【0037】反射率は日本電色工業(株)製NDR-1001DPで460nmフィルターを使用して測定した。
・・・
【0040】
【表1】

・・・」

(5)刊行物6について
上記刊行物6には、以下の事項が記載されている。

6a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)水中で過酸化水素を放出する物質
(b)下記構造式を有する漂白活性化剤
【化1】


(R:炭素数8?15の直鎖アルキル基であり、Yはカルボン酸又はスルホン酸の塩)
(c)アミラーゼを含有することを特徴とする漂白洗浄剤組成物。
・・・
【請求項6】 更に(d)プロテアーゼを含有する請求項1?5の何れか1項記載の漂白洗浄剤組成物。」
6b:「【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本研究者は鋭意研究の結果、澱粉を分解するアミラーゼと特定の構造を有する漂白活性化剤の組み合わせによって、優れた漂白性能が発揮されることを見いだした。」
6c:「【0019】また、本発明ではアミラーゼ(c)が配合される。アミラーゼは澱粉などの汚れを分解するために必須である。アミラーゼとしては、・・・ターマミル(登録商標、ノボ・イダストリー社)、・・・等が挙げられる。また、β-アミラーゼとしては、・・・市販品としてはアマノ(登録商標 天野製薬社)・・・などが挙げられる。」
6d:「【0024】また、本発明の漂白洗浄剤組成物に配合される成分としては、例えば、界面活性剤、キレート剤、アルカリ剤、蛍光染料、高分子ポリマー、香料などである。・・・キレート剤としては、アルミノケイ酸塩(例えば4A型ゼオライト)、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩〔例えば、SKS-6(ヘキスト社)〕、或いはクエン酸、コハク酸、マレイン酸又はこれらの塩である。・・・た、アルカリ剤としては、ソーダ灰、トリポリ燐酸塩、オルト燐酸塩などが挙げられる。高分子ポリマーは、汚れの分散、再汚染防止効果が高いため、配合することは望ましい。その例としては、分子量が2,000?100,000のポリアクリル酸、アクリル酸-マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。」
6e:「【実施例】以下実施例において本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0026】実施例1
(1)漂白活性化剤の合成
下記の方法で表1に示す漂白活性化剤(a)?(c)を合成した。
・・・
【0030】(2)漂白洗浄試験
カレー汚染布の調製
・・・
【0031】洗浄漂白実験
表1の漂白活性化剤及び表2?4に示す成分から各種洗浄剤組成物を調整し、0.5%の濃度の漂白浴を作成する。漂白浴に、上記で調製したカレー汚染布を各5枚ずつ入れ、5分おきに良くかき混ぜる。漂白時間は1時間とする。この際温度は35℃一定で評価を行う。1時間後、汚染布を取り出し、流水にて1分間濯ぎ、プレス乾燥を行う。その後下記の式にて、洗浄漂白率を算出した。結果を表2?4に示す。なお、反射率は自記色彩計(島津製作所製)にて波長460nmにて測定した。
【0032】
【数1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

・・・」

(6)刊行物7について
上記刊行物7には、以下の事項が記載されている。

7a:「【0003】一方、衣料用の洗剤組成物に蛍光増白剤を配合して洗い上がり感を改善することが知られており、ビフェニル型のチノパールCBS-Xとスチルベン型のホワイテックスSAやホワイテックスSKC等とが一般的に用いられている。・・・」

2 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「(A)過炭酸ナトリウム粒子にホウ酸またはホウ酸塩溶液とケイ酸塩溶液とを別々に噴霧し乾燥して被覆した安定化過炭酸ナトリウムと、
(B)下記化1の一般式(I)または一般式(II)で表わされる漂白活性化剤
【化1】

(R_(1):炭素数10?18のアルキル基またはアルケニル基
R_(2):炭素数7?18のアルキル基またはアルケニル基
M:漂白活性化剤に水溶性を与える陽イオン)
とを含有することを特徴とする漂白性組成物」(摘示1a)が記載されており、また、その実施例として、摘示1f【表2】の「漂白剤B」の欄には、「過炭酸ナトリウム」「漂白活性化剤」「ノニオン界面活性剤」「アクリル酸高分子」、「蛍光剤」を、重量%にしてそれぞれ「60」「10」「0.5」「3.0」「0.1」含む「漂白剤組成物」が記載されている。
また、【表3】を参酌すると、実施例1では、「過炭酸ナトリウム」として「a」を、漂白活性剤として「A」を用いることが記載されている。
そして、摘示1f中の段落【0028】を参酌すると、「a」は、「過炭酸ナトリウム」に対して、「ホウ酸の量は5.0%、水ガラスの量は1.25%(SiO_(2)として)に相当する」量のホウ酸水溶液と水ガラス1号水溶液を噴霧して被覆して得られた「安定化過炭酸ナトリウム(a)」である。
さらに、上記「A」は、摘示1fの「(3)漂白活性剤」の項の記載から見て、その構造が、下記の式にて表されるものである。
【化5】

(R=C_(11)H_(23)、X=SO_(3)Na)
そして、「蛍光剤」は、商品名が「チノパールCBS-X」であるものである。
よって、刊行物1には、
「過炭酸ナトリウムに対して、ホウ酸5.0%、水ガラス1.25%(SiO_(2)として)に相当する量のホウ酸水溶液及び水ガラス1号水溶液を、噴霧して被覆した安定化過炭酸ナトリウム(a)を60重量%、
下記一般式(VII)で表される漂白活性化剤を10重量%、

(式中、RはC_(11)H_(23)、XはSO_(3)Naである。)、
ノニオン界面活性剤を0.5重量%、
アクリル酸系高分子を3.0重量%、及び
商品名「チノパールCBS-X」にて示される蛍光剤を0.1重量%
を含有する漂白剤組成物。」
(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
(a)引用発明における「過炭酸ナトリウムに対して、ホウ酸5.0%、水ガラス1.25%(SiO_(2)として)に相当する量のホウ酸水溶液及び水ガラス1号水溶液を、噴霧して被覆した安定化過炭酸ナトリウム(a)」は、上記ホウ酸と水ガラスの処理剤が全て過炭酸ナトリウムに付着したと仮定すると、上記安定化過炭酸ナトリウム(a)中の過炭酸ナトリウムの含有量は、1/(1+0.05+0.0125)≒94.1%であると推定される。
そして、通常は処理剤は全て付着しないので、上記過炭酸ナトリウム中の過炭酸ナトリウムの含有量は94.1%?100%の間にあると認められる。
そして、過炭酸ナトリウムの構造式は「2Na_(2)CO_(3)・3H_(2)O_(2)」であることから、上記安定化過酸化水素の含有量を、構造式から推定すると、
・炭酸ナトリウム部分の分子量は2Na_(2)CO_(3)=212
・過酸化水素部分の分子量は3H_(2)O_(2)=102
・過酸化水素部分の含有量は、102/(212+102)≒32.5%
であるので、上記「安定化過炭酸ナトリウム(a)を60重量%」含有する場合、過酸化水素としての含有量は、
60×0.941×0.325≒18.3%? 60×0.325≒19.5%
の範囲となると認められる。
よって、引用発明の「過炭酸ナトリウムに対して、ホウ酸5.0%、水ガラス1.25%(SiO_(2)として)に相当する量のホウ酸水溶液及び水ガラス1号水溶液を、噴霧して被覆した安定化過炭酸ナトリウム(a)を60重量%」含有することは、本願発明の「(a)過炭酸塩、過ホウ酸塩、及び過燐酸塩から選ばれる無機過酸化物〔以下、(a)成分という〕を過酸化水素として8?25質量%」含有することに相当する。

(b)引用発明の「品名「チノパールCBS-X」にて示される蛍光剤」は、刊行物7の「一方、衣料用の洗剤組成物に蛍光増白剤を配合して・・・ビフェニル型のチノパールCBS-Xと・・・とが一般的に用いられている」との記載から、ビフェニル型蛍光増白剤であると認められるので、引用発明の「商品名「チノパールCBS-X」にて示される蛍光剤0.1重量%」は、本願発明の「(b)ビフェニル型蛍光増白剤〔以下、(b)成分という〕を0.01?1質量%」含有することに相当する。

(c)引用発明の「下記一般式(VII)で表される漂白活性化剤を10重量%、



(式中、RはC_(11)H_(23)、XはSO_(3)Naである。)」含有することは、その構造から見て、本願発明の「(c)炭素数6?14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、炭素数6?14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物〔以下、(c)成分という〕を5?20質量%」含有することに相当することは明らかである。

(d)引用発明の「アクリル酸高分子」は、本願発明の詳細な説明の段落【0029】?【0030】の、「(d)成分である分散剤は、特に制限されないが・・・特にアクリル酸系重合体が好ましい。」との記載から、アクリル酸系重合体であれば逆に分散剤であると認められるので、本願発明の「カルボン酸系重合体」に相当する。
よって、引用発明の「アクリル酸系高分子を3.0重量%」を含有することは、本願発明の「カルボン酸系重合体から選ばれる分散剤〔以下、(d)成分という〕を1?5質量%」含有することに相当する。

(e)引用発明の「ノニオン界面活性剤を0.5重量%」含有することは、本願発明の「界面活性剤の含有量が5質量%以下であ」ることに相当する。

(f)引用発明の「安定化過酸化炭酸ナトリウム(a)」と「漂白活性化剤」の重量比は、60/10=6/1であるから、本願発明の「(a)成分と(c)成分の質量比が(a)成分/(c)成分=30/1?1/1である」ことに相当する。

よって、両者は、
「(a)過炭酸塩、過ホウ酸塩、及び過燐酸塩から選ばれる無機過酸化物〔以下、(a)成分という〕を過酸化水素として8?25質量%、
(b)ビフェニル型蛍光増白剤〔以下、(b)成分という〕を0.01?1質量%、
(c)炭素数6?14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、炭素数6?14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物〔以下、(c)成分という〕を5?20質量%、
(d)カルボン酸系重合体から選ばれる分散剤〔以下、(d)成分という〕を1?5質量%、
を含有し、
界面活性剤の含有量が5質量%以下であり、
(a)成分と(c)成分の質量比が(a)成分/(c)成分=30/1?1/1である、
漂白洗浄剤組成物。」
の点で一致し、次の点で相違すると認められる。

相違点1:本願発明は、
「下記式
【化1】

で表されるキレート剤」「を1?5質量%」含有するのに対し、引用発明は、キレート剤を含有しないものである点

相違点2:本願発明は、「アミラーゼ及びプロテアーゼ」を含有するのに対し、引用発明は、「アミラーゼ及びプロテアーゼ」等の酵素を含有しないものである点

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
刊行物1の摘示1dには、「キレートビルダー」を添加し得ることが記載されている。
そして、刊行物3には、キレート剤は、一般的に、水道水に含まれるCaイオンによる有機過酸前駆体の漂白洗浄力の低下を防止する効果があることが知られているところ(摘示3b)、特に摘示3aの【化1】に示されるCa安定度数が大きいキレート剤及びそれに該当する摘示3dの


」に示される、本願発明において【化1】の式で示されるキレート剤(以下、単に「本願発明のキレート剤」という。)が、従来のキレートよりも漂白洗浄効果が優れる旨の記載がある(摘示3a、3c、3d)。
また、漂白剤において漂白洗浄力を高めることは周知の課題である。
よって、漂白洗浄力を高めることを目的として、引用発明において、刊行物3に記載の上記キレート剤を採用することは当業者が容易になし得るものである。

イ 相違点2について
刊行物1の摘示1fには、漂白剤組成物に「酵素:プロテアーゼ」を含めた具体例まで記載されている(漂白剤A)。

また、刊行物4には、「・・洗浄界面活性剤、・・過酸素漂白剤・・漂白活性化剤、・・キレート剤、・・プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼおよびそれらの混合物から成る群より選択される酵素を含んでなる、漂白剤含有洗剤組成物・・」(摘示4a)について、「あるレベルの漂白剤により提供される改良された汚れ除去、黒ずみ浄化および白色度の維持のクリーニング利益は、より高いレベルのキレート剤および酵素を使用することによって、漂白剤のより低いレベルにおいて得ることができる。」(摘示4b)ことが記載されている。
また、摘示4dの実施例1には、過酸素漂白剤として過炭酸Na塩を含み、Savinase(プロテアーゼ:摘示4e参照)、Carezyme、及びジエチレントリアミンペンタメチレンホスホネート(キレート剤:摘示4a参照)の含有量が多い「実施例1」の漂白剤で処理した布帛が、「比較B」の漂白剤よりも、白色度が向上している結果が示されている。
また、摘示4dの実施例3には、Savinase(プロテアーゼ)とTermamyl(120T)(アミラーゼ:摘示4e)とキレート剤を併用する例も記載されている。
以上の記載から、刊行物4には、過炭酸Na塩などの過酸素漂白剤、漂白活性化剤を含む漂白剤含有洗剤組成物において、キレート剤及びプロテアーゼやアミラーゼ等の酵素を高いレベル(量)で使用することによって、改良された汚れ除去、黒ずみ浄化および白色度の維持のクリーニング利益、すなわち漂白効果を向上させることが記載されていると認められる。

そして、刊行物5には、「(a)成分:水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物、・・
(b)成分:一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体・・・
(c)成分:α-アミラーゼ活性を有するアルカリプルラナーゼ、もしくはα-アミラーゼ活性を有するアルカリ耐性プルラナーゼ又はその混合物・・
(d)成分:アルカリプロテアーゼ、もしくはアルカリ耐性プロテアーゼ又はその混合物・・」及び「(e)成分:キレート剤」を含有する「粉末漂白剤組成物」(摘示5a)が、「漂白力に優れ」(摘示5c)ていることが記載されている。
また、【実施例】(摘示5e)には、摘示5aの(a)?(e)成分を含む実施例7?10(漂白率:40?42%)、それに比してアルカリプルラナーゼ(アミラーゼ)、プロテアーゼ及びキレート剤の含有量が低い比較例2(漂白率20%)の粉末漂白剤の漂白率を比較すると、実施例7?10の方が20?22%程度も漂白率が高い結果が示されている。
さらに、摘示5dには、「(c)成分として使用されるプルラナーゼは、・・α-アミラーゼ活性を有し、・・。・・・(c)成分の配合量が0.05重量%未満の場合、漂白性能が十分でなく、・・・。」との記載もある。
以上のことから、刊行物5には、過酸化物、重合体を含む漂白剤組成物において、α-アミラーゼ活性を有するアルカリ(もしくはアルカリ耐性)プルラナーゼ(すなわちアミラーゼ)、プロテアーゼ、及びキレート剤が、漂白剤の漂白力を向上させることが記載されているといえる。

さらに、刊行物6には、「(a)水中で過酸化水素を放出する物質、(b)・・・漂白活性化剤・・・(c)アミラーゼを含有」し、さらに「d)プロテアーゼを含有する」「漂白洗浄剤組成物」(摘示6a)が「カレー等の澱粉を多く含む染み汚れに対して優れた効果を発揮する」(摘示6b)ことが記載されている。
また、【実施例】(摘示6e)には、摘示6aの(a)?(d)成分((a)成分は過炭酸ナトリウムである)を含む試験No.1の漂白洗浄剤(漂白率65%)と、アミラーゼを含有しない点のみで異なる試験No.12の漂白洗浄剤(漂白率35%)の漂白率を比較すると、試験No.1の方が漂白率が30%程度高い結果が示されている(なお、【表1】中の「ターマミル」「アマノ」は、摘示6cからみて「アミラーゼ」であり、また、「ゼオライト」及び「SKS-6」は、摘示6dからみて「キレート剤」であると認められる。)。
以上のことから、刊行物6には、過炭酸ナトリウム塩などの水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物、漂白活性化剤を含有する粉末漂白剤組成物において、キレート剤とともにプロテアーゼとアミラーゼを併用することにより、漂白洗浄剤の漂白力を向上させることが記載されているといえる。

すなわち、刊行物4?6に示されるとおり、過炭酸ナトリウム塩などの過酸化水素を放出する過酸化物を含む漂白剤において、キレート剤とともに、プロテアーゼとアミラーゼを添加して、漂白剤の漂白洗浄効果を向上させることは周知である。

よって、引用発明において、漂白洗浄効果を向上させるため、上記刊行物3に記載のキレート剤を含有させると共に、刊行物4?6に記載されるように、「プロテアーゼ」及び「アミラーゼ」を好適量含有させることは当業者が容易になし得るものである。

ウ 効果について
まず、本願発明のキレート剤を用いることによる漂白効果について検討すると、例えば刊行物3には、過炭酸Na、有機過酸前駆体及び摘示3d及び3eにおいて挙げられているキレート剤(c1?c3)を含む実施例No.1?3の漂白洗浄剤組成物(漂白率61?67%)と、キレート剤を含まない点でのみ異なる比較例6の組成物(漂白率46%)の漂白率を比較すると、15?19%程度向上している。
そして、摘示3dには、本願発明のキレート剤も、上記c1?c3のキレート剤と同様の効果を奏するものとして開示があることから、上記実施例に記載されたキレート剤と同程度に、漂白率を大きく向上させるであろうことは当業者ならば予測しうるものである。

次に、キレート剤、アミラーゼ及びプロテアーゼを用いることの漂白率の向上効果について検討する。
本願実施例(段落【0076】【表1】)における組成物No.1(漂白率96%)と7、8(漂白率85%、80%)の比較において、プロテアーゼとアミラーゼを併用したことにより11?16%向上した結果が示されている。
しかしながら、上記イにおいて述べたとおり、プロテアーゼとアミラーゼの併用によって漂白率が向上することが周知であること、及び特に刊行物6には、実施例の試験No.1の組成物と、アミラーゼを含有しない点のみで異なるNo.12の組成物の比較からみて、プロテアーゼと共にアミラーゼを併用することによって、30%も漂白率が向上することが示唆されていることから、両者の併用により、本願実施例と同程度、漂白率が向上することも当業者ならば予測しうる程度のものであると認められる。

よって、引用発明において、刊行物3に記載のキレート剤と共に、プロテアーゼとアミラーゼを併用することによっても、漂白率が大きく向上するであろうことも当業者が予測しうるものである。

(4)まとめ
よって、本願発明は刊行物1、3?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 請求人の主張について
請求人は、平成24年5月18日付けの意見書において、以下のA.?E.の主張を、また、平成24年9月3日付けの回答書において以下のF.?G.の主張をしている。

A.「刊行物1は、過炭酸塩と漂白活性化剤とを組み合わせて配合する場合の貯蔵安定性の低下を解決しようとするものであり(刊行物1の【0002】)、そのために、特定の方法で被覆した安定化過炭酸ナトリウムを用いるものです。刊行物1では、蛍光剤、酵素、無機・有機ビルダーは任意成分であり、刊行物1の効果のためには必須の成分ではありませんので、これらの任意成分に着目すべき必然性はありません。」

B.「刊行物3には、N原子を含む特定のキレート剤や酵素の記載はありますが、本願(e)成分の特定のキレート剤を用いることや、酵素としてアミラーゼとプロテアーゼとを併用することは、実施例などで具体的に示されていません。」

C.「刊行物4は、界面活性剤含有量が5?95重量%であることが必須の組成物において酵素やキレート剤を用いるものであり、本願発明1のような界面活性剤含有量の組成物における効果を当業者に示唆するものではありません。しかも、刊行物4には、本願e)成分の特定のキレート剤は記載されていません。」

D.「刊行物5では、キレート剤は任意成分であり、しかも、本願(e)成分の特定のキレート剤は記載がありません。また、刊行物5の実施例6と比較例3との対比から、刊行物4では、刊行物4の(b)成分の重合体が漂白率の向上に寄与することが読みとれますので、当業者は、漂白率を向上させる成分としてキレート剤のみに着目するわけではありません。(なお、拒絶理由通知書での摘示内容から、刊行物5と刊行物6は逆であると思われます。ここでは、刊行物6として挙げられた特開平7-278597号を刊行物5としています。)」(審決注:下線部の「刊行物4」は、「刊行物5」との記載の誤記であると認められる。)

E.「刊行物6でも、キレート剤は任意成分であり、しかも、本願(e)成分の特定のキレート剤は記載がありません。(前記の理由により、刊行物5として挙げられた特開平10-95996号を刊行物6としています。)」

F.「審判長殿は、引用発明1A、1Bあるいは引用発明2A、2Bにおいて、漂白効果を高めるために、その効果の高いキレート剤や酵素を併用しようとすることは当業者ならば通常試みることであると指摘されています。
しかしながら、平成21年12月2日付け手続補正書により補正した審判請求書の理由「(2-1)」の項でご説明した通り、一般に酵素の活性中心は金属イオンが担うものが多いため、キレート剤を併用することがこの金属イオンを捕捉して酵素の活性に影響を及ぼすことが懸念されるため、例えば刊行物1においてキレート剤や酵素を使用できることが記載されているとしても、当業者がこれらを組み合わせて使用することを「通常」試みるとは必ずしもいえないものです。しかも、刊行物1、2で漂白効果を高めるために有効であると当業者が認識できる成分は酵素やキレート剤以外にも種々選択が可能ですから、酵素の効果を損なうことが懸念されるキレート剤を、敢えて酵素と組み合わせる態様を当業者が選定すべき理由がありません。 」

G.「また、本願(a)?(e)成分との組み合わせにおいては、酵素としてアミラーゼとプロテアーゼとを併用することで、これらを単独で使用した場合よりも、漂白率を大幅に向上することできます(本願明細書、表1中、組成物No.1と組成物No.7、8との対比)が、刊行物1や刊行物2、更に刊行物3は、このような知見について何ら示唆しておりません。
更に、酵素としてアミラーゼとプロテアーゼとを併用する場合でも、界面活性剤の含有量が本願発明で規定する5質量%を超えると、本願明細書、表1中、組成物No.11のように、漂白率は低くなり、本願発明の効果を十分に得ることはできません。
すなわち、繊維製品に対して高い漂白洗浄効果を発揮する漂白洗浄剤組成物を提供するという、本願発明の課題に対しては、単に酵素やキレート剤を組み合わせるだけでは十分ではなく、酵素の種類や組み合わせ、キレート剤の種類、界面活性剤の含有量などを種々検討して本願発明のように特定する必要がありますが、刊行物1?3からは、このような本願発明の構成、効果の関連は示唆されません。
よって、引用発明1A、1Bや引用発明2A、2Bにおいて、漂白効果を高めることを期待した当業者が、刊行物1?3に基づいて、本願(a)?(e)成分を所定条件で組み合わせる構成に到達できたとはいえず、本願発明は、拒絶の理由4には該当しないものと思料します。」

しかしながら、以下のとおり、請求人の主張は採用できない。

A.について
刊行物1に記載の発明の主たる目的は、その貯蔵安定性にあるものではあるが、漂白性組成物は、元来漂白洗浄するためのものであるから、その漂白洗浄性を向上させようとすることは、当業者なら通常試みることである。
この、刊行物1においても漂白洗浄性を向上させようとしていることは、例えば、刊行物1の実施例(摘示1fの「漂白剤A」)において、摘示1dや1eに記載の洗浄成分である酵素やキレートビルダーを添加していることからみても明からである。

B.について
本願発明のキレート剤や酵素を用いる点について、刊行物3の実施例に記載のないことが、上記キレート剤を引用発明において採用することの阻害要因になるものとも認められない。
よって、上記3(2)アにおいて述べたとおり、引用発明において、刊行物3に記載の本願発明のキレート剤を採用することは当業者が容易になし得るものである。

C?E.について
請求人は、主に、刊行物4?6には、本願発明のキレート剤を用いることについて記載が無い旨主張しているが、当該キレート剤は刊行物3に記載されている。
また、平成24年7月6日付けの審尋において、他の成分と共に、本願発明のキレート剤を用いた場合に、他のキレート剤を用いた場合に比して、格別の効果を有するか否かに関して審尋を行ったところ、請求人は、平成24年9月3日付けの回答書において、本願実施例のNo.1の組成物がNo.7、8、11の組成物より漂白率が高いことを主張している。
しかしながら、No.1、7、8、11の組成物は、特にキレート剤の種類を変化させた例ではなく、本願発明のキレート剤を用いた場合に、他のキレート剤を用いた場合に比べて格別の効果が奏されることの根拠となるものとは認められない。

F.について
上記3(2)イにおいて、刊行物4?6に示したとおり、漂白洗浄効果を向上させるためにキレート剤と酵素を併用することは周知であり、当業者ならば通常試みることである。

G.について
請求人は、本願明細書実施例(段落【0076】表1)における組成物No.1と、組成物No.7、8との比較結果に示されるような、アミラーゼとプロテアーゼの併用による漂白効果の向上については、刊行物1?3からは予測できない旨主張している。
しかしながら、上記3(2)イやウにおいて述べたとおり、アミラーゼとプロテアーゼを併用する漂白率の向上効果については周知であり、また、特に刊行物6の実施例の記載から、それにより、本願発明と同程度の漂白率が向上するであろうことも当業者ならば予測しうるものであると認められる。
また、請求人は、No.1とNo.11との比較をして、界面活性剤を5%以下とすることの効果については当業者が予測できないことも主張しているが、引用発明の蛍光増白剤と界面活性剤の含有量は、本願発明の範囲内であるから、引用発明は、当該事項を有することによる効果を当然有しているものと認められる。
さらに、請求人は、刊行物1?3からは、このような本願発明の構成、効果の関連は示唆されない旨主張するが、上記のとおり、本願発明の効果は、刊行物1、3?6の記載から予測しうるものである。

第5 むすび
以上検討したとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないものであるから、本願は、その余につき検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-15 
結審通知日 2012-11-20 
審決日 2012-12-12 
出願番号 特願2004-135105(P2004-135105)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂井 哲也  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
小石 真弓
発明の名称 漂白洗浄剤組成物  
代理人 義経 和昌  
代理人 古谷 聡  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 持田 信二  

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