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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1269143 |
審判番号 | 不服2012-3071 |
総通号数 | 159 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-02-17 |
確定日 | 2013-01-24 |
事件の表示 | 特願2007-126869「光ファイバテープ心線」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月20日出願公開、特開2008-281849〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年5月11日の出願であって、平成23年9月9日付けで手続補正がなされたところ、同年11月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月17日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成24年2月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年2月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成24年2月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前(平成23年9月9日付け手続補正後のもの)の請求項1として、 「複数本の光ファイバを平面状に並行に並べて1次被覆樹脂で一括被覆することで構成された1次テープユニットを複数平面状に並行に並べて2次被覆樹脂で連結されている光ファイバテープ心線であって、 前記光ファイバテープ心線の厚さが280μm以下であり、 前記1次被覆樹脂のヤング率は、1100MPa以上1400MPa以下であることを特徴とする光ファイバテープ心線。」 とあったものを、 「複数本の光ファイバを平面状に並行に並べて紫外線硬化樹脂からなる1次被覆樹脂で一括被覆することで構成された1次テープユニットを複数平面状に並行に並べて紫外線硬化樹脂からなる2次被覆樹脂で連結されている光ファイバテープ心線であって、 前記光ファイバテープ心線の厚さが280μm以下であり、 前記1次被覆樹脂のヤング率は、1100MPa以上1400MPa以下であることを特徴とする光ファイバテープ心線。」 と補正して新たに補正後の請求項1とすることを含むものである。 本件補正は、補正前の請求項1において、「1次被覆樹脂」が「紫外線硬化樹脂からなる」ものであり、かつ、「2次被覆樹脂」が「紫外線硬化樹脂からなる」、との限定を行うものであるから、上記補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 2 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-197211号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数本の光ファイバ素線を並列し一括被覆層により一体化してなるテープ心線ユニットの複数本が並列され、隣合うテープ心線ユニット間にこれらを連結し一体化する合成樹脂製連結部が形成されてなる光ファイバテープ心線であって、該光ファイバテープ心線は前記連結部で分割可能な構成とされてなることを特徴とする分割型光ファイバテープ心線。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、一本の光ファイバテープ心線として取扱いができ、かつ複数の単位テープ心線ユニットに容易に分割することが可能であり、アクセス網光ネットワークを構築するためのアクセス系光ファイバケーブル、光変換光ファイバ心線、屋内配線用光ファイバーブル、構内配線用光ファイバケーブルなどに好適に用いることができる分割型光ファイバテープ心線…に係わり、さらに詳しくは、テープ心線ユニットの配列に乱れがなく、かつ、厚みの薄い分割型光ファイバテープ心線…に関する。」 ウ 「【0012】 【発明の実施の形態】…図1は、本発明の分割型光ファイバテープ心線の一例を示す断面図である。図中符号は10は分割型光ファイバテープ心線である。この分割型光ファイバテープ心線10は、複数本(図面では2本)のテープ心線ユニット15が並列され、隣合うテープ心線ユニット15,15間にこれらを連結し一体化する合成樹脂製連結部16が形成されてなるものである。 【0013】前記テープ心線ユニット15は、複数本(図面では2本)の光ファイバ素線12を並列し一括被覆層13により一体化してなるものである。光ファイバ素線12としては、通常、外径125μmのシングルモード光ファイバの外周上にウレタンアクリレート系あるいはエポキシアクリレート系の紫外線硬化型樹脂を被覆して、外径250μmに作製した光ファイバ素線等が好適に用いられる。前記一括被覆層13をなす材料としては、紫外線硬化型樹脂が用いられ、例えばウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等の樹脂が好適に用いられる。また、ここで用いられる紫外線硬化型樹脂は、ヤング率の大きい硬質のものを用いるのが好ましい。このようなテープ心線ユニット15の厚みは、0.28?0.4mm程度である。 【0014】合成樹脂製連結部16は、隣合うテープ心線ユニット15,15間に設けられて、隣合うテープ心線ユニット15,15を連結し、一体化するものである。この合成樹脂製連結部16をなす連結部形成用樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が用いられ、例えばウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等の樹脂が好適に用いられる。また、ここで用いられる紫外線硬化型樹脂としては、連結部16をより容易に引き裂くことができることから、ヤング率の小さい軟質のものを用いるのが好ましい。…この分割型光ファイバテープ心線10の厚みは、隣合うテープ心線ユニット15,15間に合成樹脂製連結部16が形成されただけの構成であるので、テープ心線ユニット15の厚みと同様の0.28?0.4mm程度と薄型のものである。」 上記摘記事項の記載を総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「複数本のテープ心線ユニット15が並列され、隣合うテープ心線ユニット15,15間にこれらを連結し一体化する合成樹脂製連結部16が形成されてなる分割型光ファイバテープ心線10であって、 前記テープ心線ユニット15は、複数本の光ファイバ素線12を並列し一括被覆層13により一体化してなるものであり、光ファイバ素線12としては、通常、外径125μmのシングルモード光ファイバの外周上にウレタンアクリレート系あるいはエポキシアクリレート系の紫外線硬化型樹脂を被覆して、外径250μmに作製した光ファイバ素線等が好適に用いられ、前記一括被覆層13をなす材料としては、紫外線硬化型樹脂が用いられ、ここで用いられる紫外線硬化型樹脂は、ヤング率の大きい硬質のものを用いるのが好ましく、このようなテープ心線ユニット15の厚みは、0.28?0.4mm程度であり、 前記合成樹脂製連結部16をなす連結部形成用樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が用いられ、ここで用いられる紫外線硬化型樹脂としては、連結部16をより容易に引き裂くことができることから、ヤング率の小さい軟質のものを用いるのが好ましく、この分割型光ファイバテープ心線10の厚みは、テープ心線ユニット15の厚みと同様の0.28?0.4mm程度と薄型のものであり、 一本の光ファイバテープ心線として取扱いができ、かつ複数の単位テープ心線ユニットに容易に分割することが可能である、分割型光ファイバテープ心線10。」 (2)対比、判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は、「複数本のテープ心線ユニット15が並列され、隣合うテープ心線ユニット15,15間にこれらを連結し一体化する合成樹脂製連結部16が形成されてなる分割型光ファイバテープ心線10であって、前記テープ心線ユニット15は、複数本の光ファイバ素線12を並列し一括被覆層13により一体化してなるものであり、…前記一括被覆層13をなす材料としては、紫外線硬化型樹脂が用いられ、…前記合成樹脂製連結部16をなす連結部形成用樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が用いられ」るものであるから、 (ア)引用発明の「複数本の光ファイバ素線12」、「(紫外線硬化型樹脂が用いられる)一括被覆層13」、「(複数本の光ファイバ素線12を並列し一括被覆層13により一体化してなる)テープ心線ユニット15」、「(紫外線硬化型樹脂が用いられる)合成樹脂製連結部16」及び「分割型光ファイバテープ心線10」は、それぞれ、本願補正発明の「複数本の光ファイバ」、「(紫外線硬化樹脂からなる)1次被覆樹脂」、「複数本の光ファイバを平面状に並行に並べて1次被覆樹脂で一括被覆することで構成された1次テープユニット」、「紫外線硬化樹脂からなる2次被覆樹脂」及び「光ファイバテープ心線」に相当し、 (イ)引用発明は、本願補正発明の「複数本の光ファイバを平面状に並行に並べて紫外線硬化樹脂からなる1次被覆樹脂で一括被覆することで構成された1次テープユニットを複数平面状に並行に並べて紫外線硬化樹脂からなる2次被覆樹脂で連結されている光ファイバテープ心線であって」との事項を備える。 イ 引用発明は、「分割型光ファイバテープ心線10」の厚みが、「テープ心線ユニット15の厚みと同様の0.28(=280μm)?0.4mm程度と薄型のものである」から、光ファイバテープ心線の厚さが280μmである点において、本願補正発明の「光ファイバテープ心線の厚さが280μm以下であり」との事項を満たす。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「複数本の光ファイバを平面状に並行に並べて紫外線硬化樹脂からなる1次被覆樹脂で一括被覆することで構成された1次テープユニットを複数平面状に並行に並べて紫外線硬化樹脂からなる2次被覆樹脂で連結されている光ファイバテープ心線であって、 前記光ファイバテープ心線の厚さが280μm以下である光ファイバテープ心線。」 である点で一致し、次の点で相違する。 1次被覆樹脂のヤング率が、本願補正発明では、1100MPa以上1400MPa以下であるのに対し、引用発明では、そのような値であるのか否か明らかではない点(以下「相違点」という。)。 上記相違点につき検討する。 引用発明は、「(一括被覆層13をなす材料として用いられる)紫外線硬化型樹脂」として、「ヤング率の大きい硬質のものを用いるのが好まし」いものであるところ、引用発明において、前記「(一括被覆層13をなす材料として用いられる)紫外線硬化型樹脂」のヤング率をどの程度とするかは、当業者が当該引用発明を実施する上で設計上適宜に定めるべき事項である。そして、本願明細書の記載をみても、本願補正発明において、1次被覆樹脂のヤング率を、1100MPa以上1400MPa以下とした点に、設計的事項の域を超えるほどの格別の技術的意義があるものとは認められない。 この点に関し、請求人は、平成23年9月9日付け意見書において、「補正後の本願請求項1に係る発明(本願発明)は、…図3に記載されているように、厚さが280μmである実施例1乃至6に記載の光ファイバテープ心線は、1次被覆樹脂のヤング率が1100MPa以上であるため、曲げ剛性を従来品(厚さが300μmである比較例1の光ファイバテープ心線)と同等に保ちつつ、良好な耐側圧性を得ることができています…。更に、実施例1,2,5に記載の光ファイバテープ心線は、1次被覆樹脂のヤング率が1400MPa以下であるため、1次テープユニットの分離性も良好に保つことができています…。」(2.(3)(c))、また、審判請求書において、「補正後の本願請求項1に係る発明(本願発明)は、ヤング率の値によって互いに反対の傾向を示す『曲げ剛性及び耐側圧性』と『1次テープユニット分離性』とを、同時に良好に満たすことができる1次被覆樹脂のヤング率の範囲を実験から導き出し、その範囲を『1100MPa以上1400MPa以下』に規定した発明です。」(3.(3)(c))等と主張する。 しかしながら、引用発明は、「複数の単位テープ心線ユニットに容易に分割することが可能」なものであるから、引用発明の「分割型光ファイバテープ心線10」が、所望の「1次テープユニット分離性」を備えるべきものとすべきことは当業者において明らかである。また、引用発明の「分割型光ファイバテープ心線10」が、所望の「曲げ剛性」、「耐側圧性」を備えるべきものとすべきことも当業者において明らかである。したがって、引用発明において、これらの諸特性を考慮して、その「(一括被覆層13をなす材料として用いられる)紫外線硬化型樹脂」のヤング率を定めることは、当業者にとって格別困難なことではない。 そして、本願発明の奏する効果が、引用発明から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が適宜になし得ることである。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年9月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1において補正前の請求項1として示したとおりのものである。 2 刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用刊行物及び引用発明は、上記第2の2(1)のとおりである。 3 判断 本願発明は、上記第2の2(2)で検討した本願補正発明において、「1次被覆樹脂」が「紫外線硬化樹脂からなる」ものであり、かつ、「2次被覆樹脂」が「紫外線硬化樹脂からなる」、との限定を省いたものである。そうすると、本願発明を減縮したものである本願補正発明が、上記第2の2(2)で検討したとおり、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-20 |
結審通知日 | 2012-11-30 |
審決日 | 2012-12-11 |
出願番号 | 特願2007-126869(P2007-126869) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福島 浩司 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
服部 秀男 小松 徹三 |
発明の名称 | 光ファイバテープ心線 |
代理人 | 松下 亮 |